説明

電気デバイスの製造方法及びその製造装置並びに電気デバイス

【課題】注液ノズルが発電要素を傷つける恐れのない電気デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】フィルムの三方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部とする工程と、接合した三方の周縁部を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部を含めて発電要素を収納する第1室(41)と、それ以外の第2室(42)とに分割する分割接合部(34)を熱融着により設け、この分割接合部(34)の開口部と反対側端に2つの室(41、42)を連通する連通孔(35)を有させる工程と、2つの室の各開口部(41a、42a)を鉛直方向上方にして第2室の開口部(42a)より電解液を注入する工程と、注入された電解液を連通孔(35)を介して第1室(41)に収納されている発電要素の底部空間(43)に導き、底部空間(43)に導かれた電解液を発電要素の鉛直方向下端(2a)から鉛直方向上端(2d)に向けて含浸させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電気デバイスの製造方法及びその製造装置並びに電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネート型電池は、電極とセパレータとを積層して構成される扁平状の発電要素と、電極層とセパレータの全空孔体積よりも多い量の電解液とを外装材としてのラミネートフィルムで封止したものである。この場合に、ラミネートフィルムの四方の周縁部のうちの三方の周縁部を接合して残り一方の周縁部を開口部として残し、この開口部を鉛直方向上端にして電池の全体を立てた状態とする。そして、開口部から発電要素の鉛直方向下端近傍にまで注液ノズルを挿入し、ノズル先端から電解液を注入することで、注入した電解液を発電要素の内部に含浸させるようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−151052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の技術によれば、注液ノズルを発電要素の鉛直方向下端近傍にまで挿入しなければならないので、発電要素に傷をつける恐れがあり、不良品の増加、生産性の低下の原因となる。
【0005】
そこで本発明は、注液ノズルが発電要素を傷つける恐れのない、電池などの電気デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気デバイスの製造方法は、電極とセパレータとを積層して構成される扁平状の発電要素を有し、二枚の扁平状のフィルムを前記発電要素の外装材とする電気デバイスの製造方法である。さらに、前記フィルムの四方の周縁部のうちの三方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部とする第1接合工程と、前記接合した三方の周縁部を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部を含めて前記発電要素を収納する第1室と、前記発電要素を収納しない第2室とに分割する分割接合部を熱融着により設け、この分割接合部のうち前記開口部と反対側端に前記第1室と前記第2室とを連通する連通孔を有させる分割接合工程と、前記第1室及び第2室の各開口部を鉛直方向上方にして、前記第2室の開口部より所定量の電解液を注入する注液工程と、注入された電解液を前記連通孔を介して前記第1室に収納されている発電要素の底部空間に導き、この底部空間に導かれた電解液を前記発電要素の鉛直方向下端から鉛直方向上端に向けて含浸させる含浸工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電解液を、発電要素の存在しない第2室に注入すればよいので、発電要素を傷つけることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1、第2の実施形態のリチウムイオン二次電池の概略斜視図である。
【図2】発電要素の分解斜視図である。
【図3】従来装置の注液工程での作業を説明するための電池の概略構成図である。
【図4】第1、第2の実施形態の二枚のラミネートフィルム22を接合する前の電池の状態を示す斜視図である。
【図5】第1、第2の実施形態の電池を寝かせた状態を示す平面図である。
【図6】第1、第2の実施形態の真空チャンバ内の電池の状態を説明するための概略構成図である。
【図7】第1実施形態の真空チャンバ内の電池の状態を説明するための概略構成図である。
【図8】第1実施形態の第2室を有する電池の平面図である。
【図9】第1実施形態の第2室の切離しを説明するための電池の平面図である。
【図10】第1実施形態の第2室を切離した後の電池の平面図である。
【図11】第2実施形態の真空チャンバ内の電池の状態を説明するための電池の概略構成図である。
【図12】第2実施形態の第2室を有する電池の平面図である。
【図13】第2実施形態の第1室の封止を説明するための電池の概略構成図である。
【図14】第2実施形態の第2室の切離しを説明するための電池の概略構成図である
【図15】第2実施形態の第2室を切離した後の電池の平面図である。
【図16】第3実施形態の含浸工程での作業を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張している箇所があり、その箇所においては実際の比率と異なっている。
【0010】
(第1実施形態)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1について先に概説する。図1はリチウムイオン二次電池1の概略斜視図、図2は発電要素2の分解斜視図である。
【0011】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、実際に充放電反応が進行する略四角扁平状の発電要素2が、電池外装材であるラミネートフィルム14(扁平状のフィルム)の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周縁部14a、14b、14c、14dを熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成を有している。ここで高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、金属フィルムを高分子フィルム(樹脂フィルム)でサンドイッチした三層構造のものが一般的である。
【0012】
こうした積層型の電池1は、缶型電池と区分けするために「ラミネート型電池」といわれる。缶型電池は堅い円筒状の金属製外枠の中に2つの各電極が巻き込んで収納されているものである。一方、ラミネート型電池とは、略四角扁平状の発電要素2の周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素を密封したものをいう。以下では、リチウムイオン二次電池1を、「ラミネート型電池」という。あるいは単に「電池」ともいう。
【0013】
図2に示したように、発電要素2は、負極4、セパレータ12、正極8をこの順に積層した構成を有している。ここで、負極4は四角薄板状の負極集電体5の両面に負極活物質層6、6を配置したものである。同様に正極8は四角薄板状の正極集電体9の両面に正極活物質層10、10を配置したものである。セパレータ12は主に多孔質の熱可塑性樹脂から形成されている。セパレータ12が電解液を保持することで、セパレータ12と一体に電解質層が形成されている。言い換えると、2つの電極間のLiイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層が、液体電解質と樹脂を含む微多孔膜のセパレータ12とで構成されている。
【0014】
これにより、隣接する負極4、セパレータ12(電解液を含む)及び正極8は、一つの単電池層13(単電池)を構成する。単電池層13では、電子とイオンが2つの電極間を移動して電池の充放電反応(電気化学反応)を行う。従って、本実施形態のラミネート型電池1は、単電池層13を積層することで、電気的に並列接続された構成を有するともいえる。また、単電池層13の外周には、隣接する負極集電体5と正極集電体9との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)を設けてもよい。発電要素2の両最外層に位置する最外層負極集電体5には、いずれも片面のみ(図2で最上段の負極集電体5には下面のみ、最下段の負極集電体5には上面のみ)に負極活物質層6を配置している。なお、図2とは負極及び正極の配置を逆にすることで、発電要素2の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片側のみに正極活物質層を配置するようにしてもよい。
【0015】
負極集電体5及び正極集電体9には、各電極(負極または正極)から出入りする電子を外部に取り出す負極タブ15及び正極タブ16の2つの強電タブを取り付け、ラミネートフィルム14の周縁部に挟まれるようにラミネートフィルム14の外部に導出させている。発電要素2は全体として四辺を有する四角扁平状に形成されているので、四辺のうちの一辺のみより2つの強電タブ15、16をまとめて外部に導出させている(図1参照)。強電タブ15、16には、必要に応じて正極端子リード(図示せず)及び負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体5及び正極集電体9に超音波溶接や抵抗溶接により取り付けてもよい。なお、図2において各負極タブ15同士を、また各正極タブ16同士を電気的に接続することはいうまでもない。これで電池1の概説を終える。
【0016】
次に、ラミネート型電池1の従来の製造方法の概略を述べる。まず、電極(4、8)とセパレータ12との積層ズレが生じないように発電要素2の四隅をテープで束ねる。この束ねた発電要素2を2枚のラミネートフィルム14の間に挟んで水平におき、発電要素の4つの周辺部のうち強電タブ15、16を導出させていない一辺を残して熱融着によりラミネートフィルム14を接合する。この接合していない一辺を鉛直方向上方にして電池1の全体を立てた状態で真空チャンバ内に入れ、接合していない一辺より電解液を注入しつつ真空チャンバ内を真空状態に保ち、電解液を電極活物質層(6、10)の空孔とセパレータ12の空孔とに十分に浸透させる。十分に電解液を浸透させた後には、ラミネート型電池1内を真空引きしつつ残った一辺を熱融着により仮止めする。
【0017】
さて、電解液の注入に際しては、次の点が求められている。すなわち、〈1〉電池外装材の内部に所定量の電解液を確実にかつ短時間で注入すること、〈2〉この電解液を電極層(6、10)及びセパレータ12に確実にかつ短時間で含浸させることの2つである。
【0018】
このため、接合していない一辺を鉛直方向上方にして電池1の全体を立てた状態で真空チャンバ61内に置き、図3に示したように電解液を注入する従来の製造方法がある。なお、図3では二枚のラミネートフィルム14、14内部の電解液の動きがよくわかるように、熱融着部14a、14b、14cを除き、二枚のラミネートフィルム14、14は透明であるとして記載している。電池1の従来の製造方法では、図3(a)に示したように、発電要素2の下端である第1端部2aとラミネートフィルム14との間に生じる底部空間18aにまで注液ノズル17の先端17aを挿入し、所定量の電解液を注入する。ここで、所定量とは、電極層(6、10)とセパレータ12の全空孔体積よりも少し多い量のことである。
【0019】
しかしながら、従来の製造方法では、発電要素2の近傍に注液ノズル17を挿入しなければならないため、注液ノズル17が電極層(6、10)を傷つけるという問題点がある。
【0020】
また、注液ノズル17より底部空間18aに注入された電解液は、直ぐに図3(b)に示したように、発電要素2の右端である第2端部2b、左端である第3端部2cの周囲に形成されている空間18b、18cへと移動し、さらに発電要素2の上端である第4端部2dの空間18dへと回り込む。つまり、電解液は、発電要素2の内部に浸み込むよりも早く、発電要素2の4つの端部2a、2b、2c、2dの周囲を全て満たしてしまうのである。この発電要素2の4つの端部を回り込む電解液の移動を図3(b)に白抜き矢印で示している。その後に、発電要素2の上下左右の四方の周辺から発電要素2の面内中央へと電解液が浸み込んでいく(図3(b)の白抜き矢印参照)。このように、発電要素2の四方の周辺から発電要素2の面内中央へと電解液が浸み込んでいくとき、発電要素2の特に面内中央付近で発電要素2内部のセパレータ12にしわが生じる。これは、四方の周辺から発電要素2の面内中央へと電解液が浸み込むため、発電要素2内部に存在する一部のガス(主に空気)の逃げ場がなくなり、発電要素2の面内中央付近に取り残されてしまうためである。しわが生じた部位では、しわが生じてない部位より電極間距離が大きくなる。電極間距離で電気抵抗が定まるので、しわが生じている部位ではしわが生じてない部位より高抵抗となってしまい、しわが生じてない部位より早く劣化する恐れがある。
【0021】
そこで本発明の第1実施形態の電池1の製造方法では、ラミネートフィルム22の四方の周縁部のうちの三方の周縁部(23〜25)を熱融着により接合して残り一方の周縁部(26)を開口部とする第1接合工程と、前記接合した三方の周縁部(23〜25)を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部(41a、42a)を含めて発電要素2を収納した第1室(41)と、発電要素2を収納しない第2室(42)とに分割する分割接合部(34)を熱融着により設け、この分割接合部(34)の前記開口部(41a、42a)と反対側端(34a)に第1室(41)と第2室(42)とを連通する連通孔(35)を有させる分割接合工程と、第1室(41)及び第2室(42)の各開口部(41a、42a)を鉛直方向上方にして、第2室(42)の開口部(42a)より所定量の電解液を注入する注液工程と、注入された電解液を連通孔(35)を介して第1室(41)に収納されている発電要素2の底部空間(43)に導き、この底部空間(43)に導かれた電解液を発電要素2の鉛直方向下端(2a)から鉛直方向上端(2d)に向けて含浸させる含浸工程とを含むものとする。以下、詳述する。
【0022】
図4、図5、図6は第1接合工程から含浸工程までの作業を説明するための図である。
【0023】
まず、第1接合工程及び分割接合工程での作業を図4、図5を参照して説明する。ここで、図4は熱融着により二枚のラミネートフィルム22、22を接合する前の電池1の状態を示す斜視図、図5は電池1を水平に寝かせた状態を示す平面図である。なお、図5でも二枚のラミネートフィルム22、22の内部がよくわかるように、熱融着部31〜34を除き、二枚のラミネートフィルム22、22は透明であるとして記載している。
【0024】
ほぼ長方形状のラミネートフィルム22を2枚、同じ大きさで用意し、そのうちの一枚を水平に敷く。ここで、二枚の各ラミネートフィルム22、22の4つの周縁部について、図4に示したように手前を第1周縁部23、右側を第2周縁部24、左側を第3周縁部25、向こう側を第4周縁部26とする。
【0025】
平らに寝かせた一枚のラミネートフィルム22の上に強電タブ15、16を右側に配置した発電要素2を、ラミネートフィルム22の右方に偏らせて置き、強電タブ15、16がラミネートフィルム22の右端である第2周縁部24を外れて右外側に出るようにする(図4参照)。これは、後述するように強電タブ15、16を第2熱融着部32から外部に取り出させるためである(図5参照)。なお、電極(4、8)とセパレータ12との積層ズレが生じないように発電要素2の四隅を粘着テープ51で仮止めしている。
【0026】
次に、もう一枚のラミネートフィルム22を、敷いてあるラミネートフィルム22の上から重ね(図4参照)、敷いてあるラミネートフィルム22の各周縁部23〜26と一致させる。なお、敷いてあるラミネートフィルム22には発電要素2を収容するための凹部27、上から重ねるラミネートフィルム22には凸部28がプレス加工等により形成されている。この二枚のラミネートフィルム22、22に設ける凹部27、凸部28は形成しなくてもかまわない。
【0027】
なお、電池外装体はこの場合に限られない。二枚のラミネートフィルム22、22に代えて、2つ折りした一枚のラミネートフィルム22を用いることができる。具体的には第1実施形態では、第1接合工程において二枚のラミネートフィルム22、22の四方の周縁部のうちの三方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部(41a、42a)としている。一方、2つ折りした一枚のラミネートフィルム22を用いる場合には、第1接合工程において2つ折りした一枚のラミネートフィルム22の四方の周縁部のうち折り目に連接する二方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部(41a、42a)とすればよい。
【0028】
次に、図5に示したように、重ねた二枚のラミネートフィルム22、22の四方の周縁部のうちの三方の周縁部である第1周縁部23、第2周縁部24及び第3周縁部25を所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合する。これによって、第1周縁部23、第2周縁部24及び第3周縁部25に沿って、第1熱融着部31、第2熱融着部32、第3熱融着部33が形成される。熱融着しなかった残り一方の周縁部は開口部(41a、42a)とする。ここでも、発電要素2の4つの端部について、図4、図5に示したように手前を第1端部2a、右側を第2端部2b、左側を第3端部2c、向こう側を第4端部2dとする。
【0029】
さらに、重ねた二枚のラミネートフィルム22、22の内部に、発電要素2を収納する第1室41と、発電要素(2)を収納しない第2室42とに分割形成するため、次のようにする。すなわち、図5において発電要素2の第3端部2cの直ぐ左を第3熱融着部33と平行に、第4周縁部26からこの第4周縁部26と反対側にある第1周縁部23に向けて所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合する。これによって第4熱融着部34(分割接合部)が形成される。そして、第4熱融着部34の第4周縁部26と反対側端34aに第1室41と第2室42とを連通する連通孔35を有させる。第4熱融着部34の第4周縁部26と反対側端34aと第1熱融着部31との間を熱融着せず第1室41と第2室42とを連通する連通孔35として残すのは、第2室42に注入される電解液を連通孔35を介して第1室41に導入するためである。
【0030】
このようにして第4熱融着部34が形成されるとき、第4熱融着部34によって第4周縁部26に第1室41の開口部41aと第2室42の開口部42aとが別々に形成される。このようにして分割接合工程での作業を終了する。
【0031】
なお、図4、図5には、強電タブ15、16を第2熱融着部32から外部に取り出す場合を示しているが、これに限られない。例えば、第1熱融着部31から、または第1室41の開口部41aから強電タブ15、16を外部に取り出すように発電要素2を配置してもかまわない。
【0032】
次に、注液工程での作業を図6、図7を参照して説明する。図6、図7は真空チャンバ61内の電池1の状態を示している。なお、図6、図7では真空チャンバ61内の電池1の状態がよくわかるように、真空チャンバ61は透明であるとして記載している。真空チャンバ61内に収納している電池1についても、二枚のラミネートフィルム22、22の内部がよくわかるように、熱融着部31〜34を除き、二枚のラミネートフィルム22は透明であるとして記載している。
【0033】
分割接合工程が終了した電池1(図5参照)を真空チャンバ61に移し、図6に示したように各開口部41a、42aを鉛直上方にして電池1の全体を立てた状態で保持させる。
【0034】
第2室42の開口部42aから定量注入可能なノズル62を用いて所定量の電解液を注入する。所定量とは、上記のように電極層(6、10)とセパレータ12の全空孔体積よりも少し多い量のことである。所定の空間(体積)を有する第2室42に電解液を注入すればよいので、1つの電池1に必要な量の電解液を一度に短時間で入れることができる。言い換えると、1つの電池1に必要な量の電解液を一度に入れることができるように、第2室42の広さ(体積)を定めておく。第1実施形態の電池1の製造方法によれば、発電要素2が存在しない空間である第2室42に注液すればよいので、電池1の従来の製造方法のように、注液工程でノズル62が発電要素2内部の電極を傷つけることがない。
【0035】
注液工程が終了した後には、蓋(図示しない)をして真空チャンバ61内を密閉状態とする。そして、真空ポンプ63を作動させて(真空引きして)、真空チャンバ61内の空気を抜き大気圧よりも低い減圧状態とする。
【0036】
図6に示したように電池1を立てた状態では、発電要素2の第1端部2aとその鉛直下方にある第1熱融着部31との間に生じる空間43が底部となる。第2室42に注入された電解液は、連通孔35からこの底部の空間43に侵入する。底部空間43へと侵入した電解液は、今度は底部空間43より鉛直上方にある発電要素2内の各電極(6、10)及びセパレータ12へと浸透していく。つまり、第1実施形態の電池1の製造方法によれば、電池1の従来の製造方法とは異なり、電解液は発電要素2の鉛直方向下端である第1端部2aから発電要素2の鉛直方向上端である第4端部2dへと一方向に浸透(含浸)していく。このため、電解液が浸透する前に発電要素2の内部に存在していたガス(主に空気)は、浸透していく電解液によって鉛直上方へと押しやられ、発電要素2の第4端部2dから発電要素2の外部へと排出される。つまり、電解液の浸透方向を一方向に限ることで、発電要素2の内部にガス(空気)が残留することがなくなり、発電要素2内部のセパレータ12にしわが生じることがないのである。発電要素の第4端部2dから排出されたガス(空気)は、第1室41の開口部41aから電池1の外部へと排出される。このようにしてやがては発電要素2全体への電解液の含浸が完了(含浸工程が終了)する。このように、第1実施形態の電池1の製造方法によれば、底部空間43にのみ電解液を供給して、電解液の発電要素2への浸透方向を鉛直下方から鉛直上方への一方向とすることで、発電要素2内部のセパレータ12にしわが生じることを抑制することができる。
【0037】
ここで、第2熱融着部32と発電要素の第2端部2bとが離れていると、第2熱融着部32と発電要素2の第2端部2bとの間に電解液が流れ込む余地のある空間44が生じ、この空間44に底部空間43へと侵入した電解液が直ぐに入り込んでくる。空間44に入り込んだ電解液は、そのまま上昇して、発電要素2の鉛直方向上端である第4端部2dにまで回り込む。同様に、第4熱融着部34と発電要素bの第3端部2cとが離れているときには、第2熱融着部32と発電要素2の第2端部2bとの間にも電解液が流れ込む余地のある空間45が生じ、この空間45に底部空間43へと侵入した電解液が直ぐに入り込む。空間45に入った電解液は、そのまま上昇して、発電要素2の鉛直方向上端である第4端部2dにまで回り込む。この結果、底部空間43にだけ電解液を供給することを予定していたのに、発電要素4の四辺(2a〜2d)の周囲が電解液に囲まれてしまう。そして、発電要素2の四辺(2a〜2d)から内部に向けて電解液が浸透することとなる。これでは電池1の従来の製造方法と変わらなくなり、発電要素2内部のセパレータ12にしわが生じることを抑制することができない。従って、発電要素2の第2端部2bを第2熱融着部32に近づけて設けると共に、第4熱融着部34を発電要素2の第3端部2cに近づけて形成する。これによって、電解液が流れ込む余地のある空間44、45が生じないように、つまり底部空間43にある電解液が入り込まないようにする。
【0038】
図6では、第4熱融着部34の反対側端34aの位置を、発電要素2の鉛直方向下端(2a)の位置よりさらに鉛直下方としているが、これに限られない。連通孔35に求められる要求は次の通りである。すなわち、第1の要求は電解液の第1室41への導入が容易となることである。第2の要求は、電解液の浸透方向を鉛直下方から鉛直上方への一方向としているので、これ以外の浸透方向が加わらないように、あるいは多少加わっても発電要素2の内部にガスが残留しないようにすることである。第1の要求を満たすためには第4熱融着部34の反対側端34aの位置は鉛直上方ほどよく、第2の要求を満たすためには第4熱融着部34の反対側端34aの位置は鉛直下方ほどよいことになる。従って、2つの要求を満たすためには、注液工程のとき、第4熱融着部34の反対側端34aは、発電要素2の鉛直方向下端2aの位置から発電要素2の鉛直方向長さの半分の位置までの間の任意の位置にあればよい。具体的には、適合により第4熱融着部34の反対側端34aの位置を定める。
【0039】
電解液の発電要素2への含浸速度によって、電解液が発電要素2の全体に浸み込むまでの時間が定まる。電解液の発電要素2への含浸速度は予め知り得るので、電解液が発電要素2の全体に浸み込むまでの時間(含浸完了時間)も予め知り得る。この含浸完了時間を目安に含浸工程が終了したか否かを判定する。含浸工程が終了した後には、真空ポンプ63を停止すると共に、蓋を外して真空チャンバ61内を大気圧に戻す。
【0040】
次に、第2接合工程での作業を説明する。図7に示したように、開口部41a、42aを鉛直上方にして電池1を立てた状態で連通孔35を所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合し、第1室41と第2室42とを完全に分離する。これによって、第4熱融着部34が第1熱融着部31まで延設される熱融着延設部38が形成される。次に再び蓋をして真空チャンバ61内を密封状態とした後、真空ポンプ63を作動させて真空引きしつつ、図7に示したように、第1室41の開口部41aを所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合する。これによって、第5熱融着部37が形成される。真空引きしつつ第1室41の開口部41aを所定幅で熱融着するのは、電池1内部に空気を残存させないようにするためである。このように2箇所の熱融着部37、38を追加することで、第1室41が密閉状態にかつ電池1内部から空気を排除した状態に封止される。
【0041】
このようにして、電池1を完成した後には、真空ポンプ63を停止すると共に、蓋を外して真空チャンバ61内を大気圧に戻し、第2室42を有する電池1を真空チャンバ61の外部に取り出す。
【0042】
次に、第2室切離し工程での作業を説明する。図8は第2室42を有する電池1の平面図である。なお、図8でも二枚のラミネートフィルム22、22の内部がよくわかるように、熱融着部31〜34、37、38を除き、二枚のラミネートフィルム22、22は透明であるとして記載している。電池1には用済みの第2室42が付属している。スペース等の関係で第2室42が無駄なスペースをとり、却って邪魔となるのであれば、図9に示した一点鎖線の位置で切離し、図10のように第2室42が切離された電池1を完成させる。なお、第2室42が邪魔にならなければ第2室42を切離すことなくそのまま用いればよい。
【0043】
ここで、第1実施形態の作用効果を説明する。
【0044】
第1実施形態では、電極(4、8)とセパレータ12とを積層して構成される扁平状の発電要素2を有し、二枚のラミネートフィルム22(扁平状のフィルム)を発電要素2の外装材とする電池1(電気デバイス)の製造方法であって、ラミネートフィルム22の四方の周縁部のうちの三方の周縁部(23〜25)を熱融着により接合して残り一方の周縁部(26)を開口部(41a、42a)とする第1接合工程と、前記接合した三方の周縁部(23〜25)を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部(41a、42a)を含めて発電要素2を収納する第1室41と、発電要素2を収納しない第2室42とに分割する第4熱融着部34(分割接合部)を熱融着により設け、この第4熱融着部34のうち開口部(41a、42a)と反対側端34aに第1室41と第2室42とを連通する連通孔35を有させる分割接合工程と、第1室41及び第2室42の各開口部41a、42aを鉛直方向上方にして、第2室42の開口部42aより所定量の電解液を注入する注液工程と、注入された電解液を連通孔35を介して第1室41に収納されている発電要素2の底部空間43に導き、この底部空間43に導かれた電解液を発電要素2の鉛直方向下端(2a)から鉛直方向上端(2d)に向けて含浸させる含浸工程とを含んでいる。第1実施形態によれば、電解液を発電要素2の存在しない第2室42に注入すればよいので、発電要素2を傷つけることを防止できる。また、扁平状の電池要素2の面方向の一方向から電解液を含浸するので、発電要素2内部のセパレータ12にしわが生じることを抑制することができる。これによって電池1の寿命を向上させることができる。
【0045】
第1実施形態によれば、注液工程のとき、第4熱融着部34(分割接合部)のうち開口部(41a、42a)と反対側端34aは、発電要素2の鉛直方向下端(2a)の位置から発電要素2の鉛直方向長さの半分の位置までの間の任意の位置にあるので、電解液が発電要素2の内部を底部空間43から鉛直方向の上方へと一方向に含浸し、発電要素2の内部に残留しているガスが発電要素2の鉛直方向上端から抜けるため、発電要素2内にガスを残留させることなく電解液を確実に含浸できる。
【0046】
図3(a)に示した電池1の従来の製造方法ではノズル17より逐次注液しつつ真空引きする必要がある。つまり、注液工程より真空引きする必要がある。一方、第1実施形態によれば、第2室42の体積が電解液の注入量よりも大きいので、第2室42への注液は一気に(短時間で)行える。このため、注液工程の後の含浸工程においてだけ含浸を促進するための真空引きを行えばよいこととなる。つまり、第1実施形態によれば、注液工程後の含浸工程でのみ真空引きすればよいので、含浸と真空引きのトータルの時間を従来の製造方法より短縮できる。また、電解液を短時間で注入しても、第2室42の体積が電解液の注入量よりも大きいので、第2室42から電解液が開口部42aの外へオーバーフローすることはない。
【0047】
第1実施形態によれば、含浸工程での電解液の含浸を大気圧より低い減圧状態で行わせるので、電解液の含浸を大気圧状態で行わせる場合より、電解液の含浸速度を高めることができる。
【0048】
第1実施形態によれば、含浸工程の後に大気圧より低い減圧状態で第1室41の開口部41a及び連通孔35を熱融着により接合する第2接合工程と、この第2接合工程の後に第2室42を切離す第2室切離し工程とを含むので、できあがりの電池1をコンパクトにすることができる。
【0049】
さらに、第1実施形態によれば、次のメリットが生じる。すなわち、二枚のラミネートフィルム22は、従来の製造方法に用いられる二枚のラミネートフィルムより第2室42を設ける分だけ大きな面積が必要となる。しかしながら、二枚のラミネートフィルム22、22は電池1全体の価格の中ではもともと安価であるので、第2室42を設ける分だけ面積が増しても大きなコストアップとなることはない。
【0050】
第2室42を切離して仕上げた図10の電池1であれば、電池の従来の製造方法によって製造した電池との区別が見かけ上つかないようにも見える。しかしながら、両者は次のようにして見分けることができる。すなわち、図7において連通孔35を塞ぐため、熱融着することによって熱融着延設部38を設ける際には、第4熱融着部34の反対側端34aや、熱融着延設部38に隣接する第1熱融着部31の一部を重ねて熱融着することとなる。このため、第4熱融着部34の反対側端34aや、熱融着延設部38に隣接する第1熱融着部31の一部に生じる二重の熱融着痕を確認することで、第2室42を切離して仕上げた図10の電池1であるか否かが判明する。このように、第1実施形態の電池の製造方法によって製造された電池1であるか否かは融着痕によって確認できる。
【0051】
(第2実施形態)
図11〜図15は第2実施形態の含浸工程後に行う第2接合工程、初回充電工程、ガス移動工程及び第3接合工程での作業を説明するための電池の概略構成図である。図11〜図15は第1実施形態の図7〜図10と置き換わる。なお、図1、図2、図4〜図6は第1、第2の実施形態に共通である。
【0052】
さて、第1実施形態では、初回充電工程前の第2接合工程で第5熱融着部37及び熱融着延設部38を形成して第1室41と第2室42とに完全に分離し(図7参照)、その後に初回充電工程での作業を行った。一方、第2実施形態では含浸工程後の第2接合工程では、含浸工程中からの真空引きをさらに延長しつつ、図11に示したように第1室41の開口部41a及び第2室42の開口部42aを所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合する。これによって、第5熱融着部37及び第6熱融着部39が形成される。この状態では、連通孔35を残したまま第1室41及び第2室42の全体が密閉状態にかつ電池1内部から空気を排除した状態に封止される。ここで、図11は第2実施形態の真空チャンバ内の電池の状態を説明するための電池の概略構成図である。連通孔35を残したまま第1室41及び第2室42の全体を密閉状態に封止したのは次の理由による。すなわち、初回充電工程で発電要素2の内部、つまり第1室41にガスが発生するので、第1室41に生じたガスを電池1の外部に抜く必要がある。この場合に、第1室41に生じたガスを連通孔35を介して第2室42に導いてやるだけで、初回充電に伴うガス抜きを容易に行うことができるためである。以下詳述する。
【0053】
図11に示したように第1室41の開口部41a及び第2室42の開口部42aを所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合した後には、真空ポンプ63を停止し、蓋を外して真空チャンバ61内を大気圧に戻す。そして、完成した電池1を真空チャンバ61の外部に取り出す。
【0054】
次に、初回充電工程での作業を説明する。図12は完成した電池1の平面図である。なお、二枚のラミネートフィルム22、22の内部がよくわかるように、熱融着部31〜34、37、39を除き、二枚のラミネートフィルム22、22は透明であるとして記載している。第2実施形態では、図12の状態で初回の充電を行う。初回の充電で発電要素2の内部、つまり第1室41にガスが発生する。この第1室41に発生したガスは浮力で鉛直上方に向かうため、電池1を水平に寝かせていれば鉛直方向上方のラミネートフィルム22の直ぐ下に貯まる。
【0055】
次に、初回充電工程の後のガス移動工程での作業を説明する。初回充電工程が終了したときには上記のように鉛直方向上方のラミネートフィルム22の直ぐ下に所定量のガスが貯まっている。このとき、連通孔35のある部位が最も鉛直方向上方にあるようにしておけば、この連通孔35のある部位にガスが集合してくる。従って、ガスが集合した後に、第2室の42ある部位を連通孔35のある部位より鉛直方向上方に持ち上げることで、連通孔35のある部位に集合しているガスを第2室42へと移動させることができる。あるいは、水平に置いてある電池1の上からローラ(図示しない)をかけて第1室41に貯まっているガスを連通孔35を介して第2室42へと移動させてもよい。
【0056】
次に、第3接合工程での作業を説明する。このようにして、第1室41に生じたガスを第2室42へと移動させた後に、図13のように第4熱融着部34が第1熱融着部31まで延設されるように連通孔35を所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合する。これによって、熱融着延設部38が形成され、第1室41が密閉状態にかつ第1室41内部からガスを排除した状態に封止される。
【0057】
次に、第2室切離し工程での作業を説明する。図13は第2室42を有する電池1の平面図である。なお、図13でも二枚のラミネートフィルム22、22の内部がよくわかるように、熱融着部31〜34、37、38、39を除き、二枚のラミネートフィルム22、22は透明であるとして記載している。電池1には用済みの第2室42が付属している。スペース等の関係で第2室42が無駄なスペースをとり、却って邪魔となるのであれば、図14に示した一点鎖線の位置で切離し、図15のように第2室42が切離された電池1を完成させる。なお、第2室42が邪魔にならなければ第2室42を切離すことなくそのまま用いればよい。
【0058】
ここで、第2実施形態の作用効果を説明する。第1室41を密閉状態に封止した後に初回充電を行うと、第1室41の内部にガスが生じる。この第1室41に生じるガスを抜くには第1室41の封止を外してガスを抜き、再び第1室41を密閉状態に封止する作業が必要となる。第2実施形態によれば、含浸工程の後に大気圧より低い減圧状態で第1室41及び第2室42の各開口部41a、42aを接合する第2接合工程と、この第2接合工程の後に発電要素2に初回充電を行う初回充電工程(充電工程)と、この初回充電工程により第1室41に発生したガスを連通孔35を介して第2室42に移動させるガス移動工程と、このガス移動工程の後に連通孔35を熱融着により接合する第3接合工程とを含むので、初回充電によって第1室41の内部に生じるガスを、第1室41の封止を外して抜く必要がなく、初回充電によって第1室41の内部に生じるガスを抜くための操作を容易に行うことができる。
【0059】
第2実施形態によれば、第3接合工程の後に第2室42を切り離す第2室切離し工程を含むので、できあがりの電池1をコンパクトにすることができる。
【0060】
(第3実施形態)
図16は第3実施形態の含浸工程での作業を説明するための概略構成図である。第1、第2の実施形態では、図6で前述したように真空チャンバ61内に第1室41、第2室42の開口部41a、42aを開口した状態の電池1を収納し、電解液を大気圧よりも低い減圧状態のもとで含浸させた。
【0061】
一方、第3実施形態は、注液工程の後に第2室41の開口部41aを熱融着により接合する第4接合工程を含み、含浸工程での電解液の含浸を大気圧より低い減圧状態で行わせるものである。すなわち、真空チャンバ61内での注液工程の終了後に、第4接合工程で、第2室42の開口部42aを所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合して第6熱融着部39を形成する。そして、この状態で図16に示したように、真空引きしつつ電解液を発電要素2へと含浸させる。
【0062】
含浸工程の終了後の作業は第2実施形態と同様である。すなわち、含浸工程の終了後に、図11に示したように第1室41の開口部41aを所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合する。これによって、第5熱融着部37が形成される。この状態では、連通孔35を残したまま第1室41及び第2室42の全体が密閉状態にかつ電池1内部から空気を排除した状態に封止される。後は、第2実施形態と同じに、初回充電工程、第3接合工程、第2室切離し工程での各作業を行って、図15に示す電池を完成させる。
【0063】
第3実施形態によれば、注液工程の後に第2室42の開口部42aを熱融着により接合する第4接合工程を含み、含浸工程での電解液の含浸を大気圧より低い減圧状態で行わせるので、第2室42よりも発電要素2を収納した第1室41の方が圧力が低くなり、この2室41、42の圧力差の分だけ電解液の発電要素2への含浸速度を速めることができる。
【実施例】
【0064】
(実施例)
第2実施形態に対する実施例を図4、図5、図11〜図15参照して説明する。負極4、正極8及びセパレータ12からなる発電要素2を作製した。図4に示したようにこの発電要素2を正負の強電タブ15、16を右側にした状態で、発電要素2の形状にあわせて凹部27をプレス加工した一方のラミネートフィルム22に収納した。次に、発電要素2の形状にあわせて凸部28をプレス加工した他方のラミネートフィルム22を一方のラミネートフィルム22の上に重ねた。図5に示したように二枚のラミネートフィルム22、22の第1周縁部23、第2周縁部24及び第3周縁部25を熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合した。これによって第1熱融着部31、第2熱融着部32及び第3熱融着部33を形成した。ここで、第3周縁部25は、発電要素2の第3端部2cよりも左側に100mm長いところとした。発電要素2の第3端部2cから左側に5mmのところで、第3熱融着部33と平行に、第4周縁部26からこの第4周縁部26と反対側の第1周縁部23に向けて所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合した。そして、第4熱融着部34の第4周縁部26と反対側端34aに50mmを残して熱融着しない部分を設け、この部分を第1室41と第2室42とを連通する連通孔35とした。熱融着しなかった第4周縁部26には、第4熱融着部34によって第1室41の開口部41aと第2室42の開口部42aとが構成されている。
【0065】
続いて、図6に示したように真空チャンバ61内に第1室41、第2室42の各開口部41a、42aを鉛直方向上方にして電池1の全体を立てた状態とし、ノズル62を用いて第2室42の開口部42aから電解液を第2室42内に所定量注入した。電解液の注入完了後には真空チャンバ61を密閉状態として真空チャンバ61内を大気圧より低い状態に減圧することで、電解液を発電要素2内の電極(4、8)及びセパレータ12に含浸させた。含浸完了(終了)後も真空チャンバ61内を減圧しつつ、図11に示したように第1室41及び第2室42の各開口部41a、42aを所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合した。これによって、第1室41及び第2室42の全体を密閉状態にかつ第1室41及び第2室42の内部から空気を排除した状態に封止した。その後、真空チャンバ61内を大気圧に戻して電池1を真空チャンバ61から取り出した。
【0066】
図12のように取り出した電池1を開回路電圧(open circuit voltage)で4.2Vまで充電した。この充電中に第1室41内にガスが発生し、鉛直上方に移動して上側のラミネートフィルム22の直下に貯まる。この貯まったガスを電池1の上面からローラ(図示しない)で押し出して第1室41から第2室42に移動させた。
【0067】
その後、図13のように第1室41と第2室42を連通している連通孔35の部位を所定幅で熱融着することにより二枚のラミネートフィルム22、22を接合した。これによって、第1室41を密閉状態にかつ第1室41内部からガスを排除した状態に封止した。そして、用済みの第2室42を切離し、図15に示す電池1を完成させた。
【0068】
実施形態では、電池1の製造方法で説明したが、電池1の製造装置として構成することもできる。
【0069】
実施形態では、電気デバイスとして、ラミネートフィルムを外装材とするリチウムイオン二次電池を例示したが、これに限られない。他のタイプの二次電池、さらには一次電池にも適用できる。また、電池だけでなく電気二重層キャパシタような電気化学キャパシタにも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 電池(電気デバイス)
2 発電要素
2a 第1端部(鉛直方向下端)
2d 第4端部(鉛直方向上端)
22 ラミネートフィルム(フィルム)
23 第1周縁部
24 第2周縁部
25 第3周縁部
26 第4周縁部
31 第1熱融着部
32 第2熱融着部
33 第3熱融着部
34 第4熱融着部(分割接合部)
34a 反対側端
35 連通孔
37 第5熱融着部
38 熱融着延設部
39 第6熱融着部
41 第1室
41a 開口部
42 第2室
42a 開口部
43 底部空間
61 真空チャンバ
62 ノズル
63 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極とセパレータとを積層して構成される扁平状の発電要素を有し、
二枚の扁平状のフィルムを前記発電要素の外装材とする電気デバイスの製造方法であって、
前記フィルムの四方の周縁部のうちの三方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部とする第1接合工程と、
前記接合した三方の周縁部を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部を含めて前記発電要素を収納する第1室と、前記発電要素を収納しない第2室とに分割する分割接合部を熱融着により設け、この分割接合部のうち前記開口部と反対側端に前記第1室と前記第2室とを連通する連通孔を有させる分割接合工程と、
前記第1室及び前記第2室の各開口部を鉛直方向上方にして、前記第2室の開口部より所定量の電解液を注入する注液工程と、
注入された電解液を前記連通孔を介して前記第1室に収納されている発電要素の底部空間に導き、この底部空間に導かれた電解液を前記発電要素の鉛直方向下端から鉛直方向上端に向けて含浸させる含浸工程と
を含むことを特徴とする電気デバイスの製造方法。
【請求項2】
電極とセパレータとを積層して構成される扁平状の発電要素を有し、
2つ折りした一枚の扁平状のフィルムを前記発電要素の外装材とする電気デバイスの製造方法であって、
前記フィルムの四方の周縁部のうち折り目に連接する二方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部とする第1接合工程と、
前記接合した二方の周縁部を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部を含めて前記発電要素を収納する第1室と、前記発電要素を収納しない第2室とに分割する分割接合部を熱融着により設け、この分割接合部のうち前記開口部と反対側端に前記第1室と前記第2室を連通する連通孔を有させる分割接合工程と、
前記第1室及び前記第2室の各開口部を鉛直方向上方にして、前記第2室の開口部より所定量の電解液を注入する注液工程と、
注入された電解液を前記連通孔を介して前記第1室に収納されている発電要素の底部空間に導き、この底部空間に導かれた電解液を前記発電要素の鉛直方向下端から鉛直方向上端に向けて含浸させる含浸工程と
を含むことを特徴とする電気デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記注液工程のとき、前記分割接合部のうち前記開口部と反対側端は、前記発電要素の鉛直方向下端の位置から前記発電要素の鉛直方向長さの半分の位置までの間の任意の位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載の電気デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2室の体積は前記電解液の注入量よりも大きいことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の電気デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記含浸工程での電解液の含浸を大気圧より低い減圧状態で行わせることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の電気デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記含浸工程の後に大気圧より低い減圧状態で前記第1室の開口部及び前記連通孔を熱融着により接合する第2接合工程と、
この第2接合工程の後に前記第2室を切離す第2室切離し工程と
を含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の電気デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記含浸工程の後に大気圧より低い減圧状態で前記第1室及び前記第2室の各開口部を接合する第2接合工程と、
この第2接合工程の後に前記発電要素に充電を行う充電工程と、
この充電工程により前記第1室に発生したガスを前記連通孔を介して前記第2室に移動させるガス移動工程と、
このガス移動工程の後に前記連通孔を熱融着により接合する第3接合工程と
を含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の電気デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第3接合工程の後に前記第2室を切り離す第2室切離し工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の電気デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記注液工程の後に前記第2室の開口部を熱融着により接合する第4接合工程を含み、
前記含浸工程での電解液の含浸を大気圧より低い減圧状態で行わせることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の電気デバイスの製造方法。
【請求項10】
電極とセパレータとを積層して構成される扁平状の発電要素を有し、
二枚の扁平状のフィルムを前記発電要素の外装材とする電気デバイスの製造装置であって、
前記フィルムの四方の周縁部のうちの三方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部とする第1接合手段と、
前記接合した三方の周縁部を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部を含めて前記発電要素を収納する第1室と、前記発電要素を収納しない第2室とに分割する分割接合部を熱融着により設け、この分割接合部のうち前記開口部と反対側端に前記第1室と前記第2室を連通する連通孔を有させる分割接合手段と、
前記第1室及び前記第2室の各開口部を鉛直方向上方にして、前記第2室の開口部より所定量の電解液を注入する注液手段と、
注入された電解液を前記連通孔を介して前記第1室に収納されている発電要素の底部空間に導き、この底部空間に導かれた電解液を前記発電要素の鉛直方向下端から鉛直方向上端に向けて含浸させる含浸手段と
を含むことを特徴とする電気デバイスの製造装置。
【請求項11】
電極とセパレータとを積層して構成される扁平状の発電要素を有し、
2つ折りした一枚の扁平状のフィルムを前記発電要素の外装材とする電気デバイスの製造装置であって、
前記フィルムの四方の周縁部のうち折り目に連接する二方の周縁部を熱融着により接合して残り一方の周縁部を開口部とする第1接合手段と、
前記接合した二方の周縁部を除いたフィルム中央部の領域を、前記開口部を含めて前記発電要素を収納する第1室と、前記発電要素を収納しない第2室とに分割する分割接合部を熱融着により設け、この分割接合部のうち前記開口部と反対側端に前記第1室と前記第2室を連通する連通孔を有させる分割接合手段と、
前記第1室及び前記第2室の開口部を鉛直方向上方にして、前記第2室の開口部より所定量の電解液を注入する注液手段と、
注入された電解液を前記連通孔を介して前記第1室に収納されている発電要素の底部空間に導き、この底部空間に導かれた電解液を前記発電要素の鉛直方向下端から鉛直方向上端に向けて含浸させる含浸手段と
を含むことを特徴とする電気デバイスの製造装置。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の電気デバイスの製造方法によって製造されることを特徴とする電気デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−105564(P2013−105564A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247299(P2011−247299)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】