説明

電気ポットの給湯バルブ

【課題】部品点数が少なく小型コンパクトで、給湯時の湯の流通抵抗も小さい、低コストな給湯バルブを提供する。
【解決手段】上部材10B側止水ボールガイド空間に、傾斜した時に吐出パイプ11b側への湯流出口に嵌合して給湯通路側から吐出パイプ側への湯の流出を止める止水ボール12および該止水ボールを上記転動方向へガイドするガイド部材24を有する傾斜止水弁を設ける一方、下部材10A側転倒止水弁収容空間に、上記止水ボールガイド空間に対して連通口を介して連通されているとともに、転倒した時に同連通口に当接して上記止水ボールガイド空間との連通を閉じる転倒止水弁を設け、上記ガイド部材は、底部プレート24aと、昇り傾斜するガイドレール24cと、上記ガイドレールの他端側を支持する支柱とからなり、上記底部プレート部分に上記止水ボールガイド空間と転倒止水弁収容空間とを連通させる連通口26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気ポット本体が傾倒した時(傾き又は倒れた時)に給湯通路側から吐出パイプ側への湯の供給を遮断して止水する止水機能を備えた電気ポットの給湯バルブの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同給湯バルブは、一般に電気ポットが転倒した時の止水を目的とした転倒止水弁と同電気ポットが所定角度以上傾いた時の止水を目的とした傾斜止水弁との2つの止水弁を備えて構成されるものが多い。
【0003】
電気ポット傾斜時において作動する傾斜止水弁は、例えば電気ポット本体が所定角度以上傾斜した時に吐出パイプ側湯流通口に転動嵌合して給湯通路側から吐出パイプ側への湯の流出を止める球状の止水ボールと該止水ボールの収容空間とを備えてなり、止水ボールを転動させる止水ボール収容空間は、上記吐出パイプ側に連なる湯流通口部に対応して設けられている一方、上記電気ポットの給湯通路側からの湯供給路が、同止水ボール収容空間に対して、側方等適宜位置から流入するように構成されている。
【0004】
また、転倒止水弁は、例えば摺鉢形状の転倒止水弁収容空間内に止水作動可能に設けられた底部が円錐台形状で上部が円柱体形状の転倒止水弁を備え、電気ポット本体転倒時に湯流通口を閉じるように構成されている(例えば、公知例として、特許文献1、特許文献を2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−345646号公報
【特許文献2】特開2002−345654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来例の構成の場合、その何れの場合にあっても、上記傾斜止水弁および傾斜止水弁収容部、転倒止水弁および転倒止水弁収容部、並びにそれらの間の連通路等を設けるに際して、上部材と、該上部材に嵌合される中部材と、該中部材に嵌合される下部材との3つの複雑な構造の成形部材を必要とし、超音波溶着による接合部も少なくとも3ケ所必要となる。しかも、水平方向に相当の長さおよび幅を有し、適用される電気ポット本体の設置部分の構成に個別に対応した複雑な形状に形成しなければならない。
【0007】
そのため、小型コンパクト化の要請に対応し得ず、成形コストや組付コストが高くなる問題があった。
【0008】
また、バルブ内の給湯流路の長さが長く、形状も複雑であるために、流路抵抗が大きく単位時間当たりの給湯量を増大させるのにも限界があった。
【0009】
本願発明は、このような問題を解決するためになされたもので、傾斜止水弁と転倒止水弁部分を上下に積層し、それらの間に転倒止水弁側から傾斜止水弁側下流方向に適切な角度で湯が流入してゆく連通路を最短路で形成することによって、部品点数が少なく小型コンパクトで、給湯時の湯の流通抵抗も小さい、可及的低コストな電気ポットの給湯バルブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記従来の問題を解決し、その目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えている。
【0011】
(1) 請求項1の発明
この発明は、止水ボールガイド空間を形成する上部材と転倒止水弁収容空間を形成する下部材との2つのバルブ成形部材を有し、上部材側止水ボールガイド空間に、電気ポット本体が傾斜した時に吐出パイプ側への湯流出口に転動嵌合して給湯通路側から吐出パイプ側への湯の流出を止める止水ボールおよび該止水ボールを上記転動方向へガイドするガイド部材を有する傾斜止水弁を設ける一方、下部材側転倒止水弁収容空間に、上記止水ボールガイド空間に対して連通口を介して連通されているとともに、電気ポット本体が転倒した時に同連通口に当接して上記止水ボールガイド空間との連通状態を閉じる転倒止水弁を設け、それらを上下に積層一体化してなる電気ポットの給湯バルブであって、上記ガイド部材は、上記上部材側止水ボールガイド空間と下部材側転倒止水弁収容空間とを仕切る底部プレートと、該底部プレートの一端側止水ボール停止位置付近から吐出パイプ側湯流出方向に昇り傾斜して延びるガイドレールと、上記底部プレートの他端側から上記ガイドレールの他端側湯流出口方向に延びて、上記ガイドレールの他端側を支持する支柱とからなり、上記底部プレート部分に上記止水ボールガイド空間と転倒止水弁収容空間とを連通させる連通口が設けられていることを特徴としている。
【0012】
このような構成によると、上部材と下部材の2つの成バルブ形部材の外周同士を相互に接合するだけで、傾斜止水弁部分と転倒止水弁部分を上下に積層一体化することができ、相互の間の連通路が可及的に短かくストレートで、水平面方向の幅が可及的に小さい、極めて小型、コンパクトで、成形、設置も容易な給湯バルブを実現することができる。
【0013】
そのため、単位時間当たりの給湯量の増大も容易で、部品コストも安価になる。
【0014】
しかも、この発明では、上記止水ボールを所定の非止水位置に停止させ、また同止水ボールを上記転動方向へガイドするガイド部材を、上記上部材側止水ボールガイド空間と下部材側転倒止水弁収容空間とを仕切る底部プレートと、該底部プレートの一端側止水ボール停止位置付近から吐出パイプ側湯流出方向に昇り傾斜して延びるガイドレールと、上記底部プレートの他端側から上記ガイドレールの他端側湯流出口方向に延びて、上記ガイドレールの他端側を支持する支柱とからなり、上記底部プレート部分に上記止水ボールガイド空間と転倒止水弁収容空間とを連通させる連通口を設けることにより、上記止水ボールガイド空間を形成する上部材の湯流出口側の空間が、電気ポット非傾斜時において止水ボールが保持されている停止位置側の空間よりも広くなるように構成している。
【0015】
このように構成すると連通口下流側の止水ボールガイド空間を、吐出パイプ側の湯流出口方向に向けて、斜め上方に深くなった奥行のある湯流入空間に形成することができ、支柱部分が通路長の長いガイド壁となることから、連通口から流入して吐出パイプ側に流れて行く湯が安定した層流となって、止水ボール側に一種の水流壁を形成し、止水ボールの挙動を一層安定した停止状態に維持する。
【0016】
また、転倒止水弁収容空間側から止水ボールガイド空間内に流入し、吐出パイプ側湯流出口方向に流出して行く湯の流れ全体に乱れが生じにくくなり、よりスムーズな流れとなる。
【0017】
そのため、その一端側停止位置にある止水ボールの挙動がより安定し、より効果的に給湯量の増大が可能となる。
【0018】
また、このような構成によると、上記上部材側の吐出パイプ側前面壁およびガイド部材側支柱部分の上下方向の長さを長くするだけで、容易に同広い空間を形成することができるので、構成も簡単である。
【0019】
また、上記ガイド部材のガイドレールは、底部プレートの一端側止水ボール停止位置付近から吐出パイプ側湯流出口方向にかけて、所定の昇り傾斜角を有して構成されている。
【0020】
その結果、ガイド部材の底部プレート一端側停止位置に逆への字状の凹部が形成されることになり、給湯時に、止水ボールが同停止位置に一層安定して保持されるようになる。
【発明の効果】
【0021】
以上の結果、本願発明によると、低コストかつ小型コンパクトで、給湯能力の大きな電気ポットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の実施の形態に係る電気ポットおよび給湯バルブの構成を示す縦断面図である。
【図2】同電気ポットの給湯バルブの吐出パイプ側から見た斜視図である。
【図3】同給湯バルブの平面図である。
【図4】同給湯バルブの吐出パイプ側から見た分解斜視図である。
【図5】同給湯バルブの吐出パイプとは反対側から見た分解斜視図である。
【図6】同給湯バルブの図3のA−A線切断部の断面図である。
【図7】同図6の給湯バルブの構成における作用を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の電気ポットの給湯バルブの実施の形態について説明する。
【0024】
先ず図1ないし図7には、本願発明の実施の形態にかかる電気ポットおよびその給湯バルブの構成が示されている。
【0025】
(電気ポット本体部の構成)
この実施の形態の電気ポットは、先ず図1に示すように、貯湯用の内容器3を備えた容器本体1と、該容器本体1の上部側開口部を開閉する蓋体2と、上記内容器3を湯沸し時において加熱する加熱手段である図示しない湯沸しヒータ、上記内容器3を保温時において加熱する加熱手段である図示しない保温ヒータ、上記内容器3内の湯を外部へ給湯するための給湯通路5(直管部5a)、AC電源が接続されている状態において上記給湯通路5を介して上記内容器3内の湯を外部に送り出す図示しない電動給湯ポンプ等を備えて構成されている。
【0026】
内容器3は、例えば、ステンレス製の有底円筒形状の内筒3aと、同じくステンレス製の無底円筒形状の外筒3bとの二重壁構造体からなっており、それら相互の間に真空断熱空間を設けた保温性能の高いものとなっている。そして、その図示しない底部には、外周部を除いて上記内筒3aの底面部により構成された1枚板部が形成されている。
【0027】
該1枚板部は少し上方に高く突出して成形されていて、その下面側凹面部には、上記湯沸しヒータと保温ヒータが取り付けられている。
【0028】
該内容器3の上端部は、内筒3aの上端部の一部を内側中心軸方向に向けて口径が小さくなるように絞り加工したヒートキープ構造部3cを有する給水口3dに形成されている。
【0029】
容器本体1は、金属板製の筒状ケースよりなり、その上端側に設けられた合成樹脂製の環状の肩部材4を介して、内容器3の上部側を一体化しているとともに合成樹脂製の皿状の底部材を介して内容器3の底部側を支持固定している(図示省略)。
【0030】
蓋体2は、合成樹脂製の上板2aと該上板2aに対して外周縁が結合された合成樹脂製の下板2bとからなっており、上記肩部材4の後部に設けられたヒンジ受け50に対してヒンジピン6を介して、その後端2c側が上下方向に開閉自在且つ着脱自在に支持されている。
【0031】
上記上板2aおよび下板2b間の空間は、必要に応じて断熱材2eを充填した断熱構造に形成されているとともに、下板2bの一部には、下方から上方に向けて凹んだ蒸気パイプ21の収納部が設けられている。そして、同収納部に収納設置された蒸気パイプ21には、下方から上方側蒸気排出口29に向けて相互にジグザグ構造に連通した蒸気排出通路21a〜21cが形成されている。そして、同通路21a〜21cの下部の蒸気導入部には、転倒止水弁16が配置されている。
【0032】
上記蓋体2における下板2bの下面には、金属製の内カバー部材2dが固定されており、該内カバー部材2dの外周縁には、上記蓋体2の閉蓋時において上記内容器3の給水口3cの上面に圧接される耐熱ラバー製のシールパッキン24が設けられている。
【0033】
なお、符号8は蓋開閉レバーを示している。
【0034】
上記給湯通路5の最上流端側である図示しない上記内容器3の下部位置には、内容器3側湯導入筒、給湯ポンプ側湯吸入口を介して例えば直流型の電動給湯ポンプが配設されており、給湯通路5上流端においては上記湯導入筒を介して湯吸入口より吸入された湯が当該電動給湯ポンプのポンピング作用により、その吐出口から吐出され、同給湯通路を経て、後述する給湯バルブ10の転倒止水弁16側連結パイプ(筒状の嵌合部)に到り、同パイプから転倒止水弁部、連通口部、傾斜止水弁部、吐出パイプ部を経て外部への湯注出口に導かれる。
【0035】
さらに、符号7は、各種スイッチ類の操作面や液晶表示部の表示面を備えた操作パネル、7aは、同操作パネル7の内側に配設されたマイコン制御部や各種スイッチ類、液晶表示装置(駆動部)等を備えたマイコン基板、7bは、同マイコン基板7aの支持部材であり、それらの下部側に上述した給湯バルブ10が少し後傾した状態で設置され、下カバー7cによって下面側が閉じられている。
【0036】
(給湯バルブの構成)
次に図2〜図7を参照して本実施の形態の電気ポットの要部である上記給湯バルブ10部分の構成について具体的に説明する。
【0037】
上記給湯バルブ10は、例えば図2〜図7に示すように、上述した給湯通路5の上方に延びる直管部5aに対して連結される筒状の嵌合部11aを有する合成樹脂製の下部材10Aと、上述した吐出口側に向けて略直角に曲成された吐出パイプ11bを有する合成樹脂製の上部材10Bと、これら下部材10Aと上部材10Bとの間の積層構造の転倒止水弁部および傾斜止水弁部とから構成されている。
【0038】
先ず傾斜止水弁部は、上記上部材10B内に設けられた止水ボールガイド空間23と、該止水ボールガイド空間23内に転動可能な状態で設けられた球状の止水ボール12と、該止水ボール12を上記吐出パイプ11bの湯流入口19部分に嵌合して止水するようにガイドするガイド部材24とからなる一方、転倒止水弁部は、上記下部材10A内に設けられた転倒止水弁収容空間21と、該転倒止水弁収容空間21内に止水作動可能に設けられた底部16aが円錐台形状で上部16bが円柱体形状の転倒止水弁16とからなり、それらを上下方向に積層一体化して構成されている。
【0039】
この実施の形態の場合、上記止水ボールガイド空間23および転倒止水弁収容空間21は、連通口26を有するガイド部材24の底部プレート24aを介し、上下に対応して設けられている。
【0040】
すなわち、ガイド部材24は、その略中央部に連通口26を有する上記底部プレート24aの上部他端側(湯流入口19側)に所定の高さの支柱24bを介し、上記連通口26の上方部に位置する状態で所定の間隔をあけて並設された左右に2本の上下方向に所定の幅の偏平な板状のガイドレール24c,24cを吐出パイプ11b側が高く、止水ボール停止位置P側が低くなるように昇り傾斜させて設置して構成されており、電気ポット本体が傾斜すると、それら2本のガイドレール24c,24c上を止水ボール12が自由に転がって(図6中の矢印参照)、上記吐出パイプ11b側の湯流入口19を閉じるようになっている。
【0041】
このため、上記止水ボールガイド空間23は、これらの各構成部分を収容できるように、上部材10Bの吐出パイプ11b側前面壁の長さを、図示の如く下方に向けて砲台形状に下降させるとともに、ガイド部材24、転倒止水弁16およびその収容空間21等を所定角前傾させて形成されている。
【0042】
これにより、同止水ボールガイド空間23は、その止水ボール停止位置P側が上下に狭く、吐出パイプ11b側が上下に広い湯流通空間となっている。
【0043】
他方、転倒止水弁収容空間21は、上記下部材10Aの中央を上記転倒止水弁16の下部形状に対応させる形で、前傾状態で下方に摺鉢状に膨出させることによって形成され、その底部に上記筒状の嵌合部11aを形成するとともに、その中に上記転倒止水弁16が、上記前傾状態のガイド部材24の前傾状態の底部プレート24aの連通口26との間に所定の距離を開けた同軸前傾状態で収容されている。
【0044】
そして、電気ポット本体が転倒した時には、上記止水弁16が、上記ガイド部材24側連通口26に向けて同軸方向に移動し、その広く、かつフラットな上端面で確実に連通口26を閉じるようになっている。
【0045】
(止水ボール12の保持構造と止水作用)
上記のように構成された止水ボールガイド空間23内において、上記止水ボール12は、図1の電気ポット本体が安定した鉛直状態に置かれている時には、図6のような昇り傾斜したガイドレール24c,24cを降りたガイドレール24c,24cの基端24dと底部プレート24aの壁端(図示右端)との相対的な傾斜角によって形成される凹部(逆への字状の凹部)内に落し込まれて、しかも、同本来の適正な設置状態では、上記のようにガイドレール24c,24c部分も若干の昇り勾配を有している。
【0046】
したがって、同状態では、図7に示すように、上記転倒止水弁収容空間21側から、上記連通口26を介して止水ボールガイド空間23内に湯が供給され(大きな矢印を参照)、その後、同止水ボールガイド空間23側から吐出パイプ11bの湯流入口19側に湯が流れてゆく場合にも、上記ガイドレール基端24d部分が仕切壁(カバー壁)となって、止水ボール12は、その流れの(カルマン渦の)影響を受けることなく、安定した停止状態を維持する。
【0047】
しかも、この実施の形態の場合、図6および図7から理解されるように、止水ボールガイド空間23は、上部材10Bの前部を転倒止水弁収容空間21側からの湯の流入方向を最終的な吐出パイプ11bの湯吐出方向に合わせて、斜め上方に深く膨出させることによって奥行のある湯流入空間を形成しているので、上記連通口26から吐出パイプ11bの湯流入口19側に流れて行く湯(小さな矢印参照)が安定した層流となって、一種の水流壁WPを形成し、止水ボール12の挙動を一層安定した停止状態に維持する。
【0048】
この時、上述したガイド部材24のガイドレール24c,24cも整流板として機能し、より有効に層流化に寄与するとともに、止水ボール12の停止位置Pは上下に狭い空間となっていて、余計な水流が入り込まなくなっている。したがって、この点からも止水ボール12の挙動は、より安定する。
【0049】
それらの結果、吐出パイプ11b側に流す湯の量を十分に大きなものにすることが可能となる。
【0050】
なお、以上の構成では、下部材10A側の転倒止水弁収容空間21内への転倒止水弁16の設置を容易にするために、下部材10Aの上面側にガイド部材24の底部プレート24aを着脱自在に嵌合できるようにしており、そのための嵌合口28が形成されている(図4参照)。
【0051】
また、組み付け性を考えて、上記吐出パイプ11bは、その嵌合部31bを介して上部材10B側の吐出パイプ嵌合部31bに嵌合して連結されるようになっている。
【0052】
以上のように、この発明では、上部材と下部材の2つのバルブ成形部材を有し、上部材側に、電気ポット本体が傾斜した時に吐出パイプ側への湯流出口に転動嵌合して給湯通路側から吐出パイプ側への湯の流出を止める止水ボールおよび該止水ボールを上記転動方向へガイドするガイド部材を有するガイド空間を備えた傾斜止水弁を設ける一方、下部材側に、上記傾斜止水弁の上記止水ボールガイド空間に対して所定の連通口を介して連通されているとともに、電気ポット本体が転倒した時に同連通口に当接して上記止水ボールガイド空間との連通状態を閉じる転倒止水弁を備えた転倒止水弁収容空間を設け、それらを上下に積層一体化して給湯バルブが構成されている。
【0053】
したがって、このような構成によると、上部材と下部材の2つの部材の外周縁部同士を、例えば超音波溶着等の方法で、1回相互に接合するだけで、傾斜止水弁部分と転倒止水弁部分を簡単に上下に積層一体化することができ、相互の間の連通路が可及的に短かくストレートで、水平面方向の幅が可及的に小さい、極めて小型、コンパクトで、成形、設置も容易な給湯バルブを実現することができる。
【0054】
そのため、単位時間当たりの給湯量の増大も容易で、部品コストも安価になる。
【0055】
また、その場合において、上記止水ボールガイド空間を形成する上部材の湯流出口側の空間は、電気ポット非傾斜時において止水ボールが保持されている停止位置側の空間よりも広く形成されている。
【0056】
このように構成されていると、止水ボールガイド空間内に流入し、吐出パイプ側に流出して行く湯の流れに乱れが生じにくくなり、よりスムーズな流れとなる。
【0057】
そのため、停止位置にある止水ボールの挙動が安定し、効果的に給湯量の増大が可能となる。
【0058】
また、上記止水ボールガイド空間の湯流出口側の広い空間は、上記転倒止水弁収容空間、転倒止水弁、連通口の各々を吐出パイプ側に前傾させることによって広く形成されている。
【0059】
このような構成によると、上部材側の吐出パイプ側前面壁の上下方向の長さを長くするだけで、容易に同広い空間を形成することができる。
【0060】
また、上記ガイド部材は、上記連通口を覆う状態で、上記吐出パイプ側湯流出口方向に延びて設けられ、上下方向に所定の幅を有して整流板として機能するようになっている。
【0061】
このような構成によると、連通口側から流入してくる湯が同ガイド部材で整流され、よりスムーズな流れとなって、吐出パイプ側に流出するようになり、給湯量の増大、止水ボールの挙動の安定化に有効となる。
【0062】
さらに、上記ガイド部材は、その基端側から吐出パイプ側湯流出口方向にかけて、所定の昇り傾斜角を有して構成されている。
【0063】
このような構成によると、ガイド部材の基端側に逆への字状の凹部が形成されることになり、給湯時に、止水ボールが停止位置に一層安定して保持されるようになる。
【0064】
これらの結果、本願発明によると、低コストかつ小型コンパクトで、給湯能力の大きな電気ポットを提供することができる。
【0065】
(その他の実施の形態)
なお、上記実施の形態において、吐出パイプ11bの上下方向に延びるパイプの内側面に上下方向の細溝を設けると、同部分を流れる吐出流がよりスムーズな流れとなり、注出時の湯飛びを防止することができる。
【符号の説明】
【0066】
10は給湯バルブ、10Aは下部材、10Bは上部材、11bは吐出パイプ、12は止水ボール、16は転倒止水弁、21は転倒止水弁収容空間、23は止水ボールガイド空間、24はガイド部材、24aは底部プレート、24bは支柱、24cはガイドレール、26は連通口である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水ボールガイド空間を形成する上部材と転倒止水弁収容空間を形成する下部材との2つのバルブ成形部材を有し、上部材側止水ボールガイド空間に、電気ポット本体が傾斜した時に吐出パイプ側への湯流出口に転動嵌合して給湯通路側から吐出パイプ側への湯の流出を止める止水ボールおよび該止水ボールを上記転動方向へガイドするガイド部材を有する傾斜止水弁を設ける一方、下部材側転倒止水弁収容空間に、上記止水ボールガイド空間に対して連通口を介して連通されているとともに、電気ポット本体が転倒した時に同連通口に当接して上記止水ボールガイド空間との連通状態を閉じる転倒止水弁を設け、それらを上下に積層一体化してなる電気ポットの給湯バルブであって、上記ガイド部材は、上記上部材側止水ボールガイド空間と下部材側転倒止水弁収容空間とを仕切る底部プレートと、該底部プレートの一端側止水ボール停止位置付近から吐出パイプ側湯流出方向に昇り傾斜して延びるガイドレールと、上記底部プレートの他端側から上記ガイドレールの他端側湯流出口方向に延びて、上記ガイドレールの他端側を支持する支柱とからなり、上記底部プレート部分に上記止水ボールガイド空間と転倒止水弁収容空間とを連通させる連通口が設けられていることを特徴とする電気ポットの給湯バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9968(P2013−9968A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181299(P2012−181299)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2008−44506(P2008−44506)の分割
【原出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】