説明

電気二重層キャパシタ用電極の製造方法及び該電極を用いた電気二重層キャパシタの製造方法

【課題】成形助剤として水を用い、かつ混練及び解砕工程を省略することで生産効率を上げた電気二重層キャパシタ用電極の製造方法及び該電極を用いた電気二重層キャパシタの製造方法を提供する。
【解決手段】一次混合工程では、活性炭とカーボンブラックとを媒体式粉砕機により混合する。この一次混合工程で用いる媒体式粉砕機としては、通常用いられるボールミルが使用できる。二次混合工程では、一次混合工程の媒体式粉砕機から混合物を取り出し、別途用意した第2の混合機に移す。そして、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンと液状潤滑剤である水とを添加し再び混合する。その後、カレンダー成形を行うが、二次混合工程で得られた混合物は、粘土状やゴム状の塊ではなく篩等の簡便な手段で容易に1〜2mmの粒子になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気二重層キャパシタ用電極の製造方法及び該電極を用いた電気二重層キャパシタの製造方法に関わり、特に成形助剤として水を用い、かつ混練及び解砕工程を省略することで生産効率を上げた電気二重層キャパシタ用電極の製造方法及び該電極を用いた電気二重層キャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分極性電極と電解質界面で形成される電気二重層を利用した電気二重層キャパシタ、特にコイン型形状のものは、メモリバックアップ電源として近年急速に需要が伸びている。一方、電気自動車用電源等の大容量を必要とされる用途に対しても、単位体積あたりの容量が大きく内部抵抗が低い高エネルギー密度かつ高出力密度の電気二重層キャパシタの開発が望まれている。また、メモリバックアップ向けの電気二重層キャパシタについても内部抵抗の低減が望まれている。
【0003】
ここに、電気二重層キャパシタの縦断面図例を図5に示す。また、素子体の構成図を図6に示す。
図5及び図6において、電気二重層キャパシタの単体セル50では、図示しない電解液により含浸された柱状の素子体1が、底部21aを有する円筒状の外装容器21に収容されており、この外装容器21の開口部21bが封口板31により封口されている。
【0004】
このとき、素子体1は、電解液との界面に電気二重層を形成するための一対の長尺帯状の電極体3A、3Bと、この電極体3A、3B相互間に配置されたセパレータ5A、5Bとが積層されて構成されており、これらの電極体3A、3B及びセパレータ5A、5Bを捲回することで素子体1が形成されている。なお、電極体3A、3Bは、一方が正極を構成し、他方が負極を構成している。
【0005】
また、電極体3A、3Bは、それぞれ長尺帯状の金属製の集電箔7A、7Bと、この集電箔7A、7Bの表面に形成された電極層9A、9Bとを有している。この電極層9A、9Bは、電気二重層を形成し蓄電機能を果たすため、主に静電容量の発現に寄与する炭素質材料と、主に導電性を高める働きをする導電材とからなり、ポリテトラフルオロエチレン等のバインダーを用いることにより厚さ1mm程度以下のシート状に成形されている。電極層9A、9Bは、集電箔7A、7Bに接着して使用される。
【0006】
そして、この静電容量の発現に寄与する材料としては、比表面積が数100〜3000m2/g程度の活性炭やポリアセン等の炭素質材料が多く使用され、主に導電性を高める働きをする導電材としては比表面積500〜1500m2/g程度のカーボンブラックが多く使用される。
【0007】
シート状の電極の製造方法としては、炭素質材料とバインダーと液状の成形助剤とを混合・混練した後、押出し出し法で数mmの板状とし、これをロール圧延して薄いシート状にする押出し成形法が知られている(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0008】
あるいは炭素質材料とバインダーと液状の成形助剤を混合・混練した後、得られた粘土状あるいはゴム塊状の混合物を棒状に予備成形したり、あるいは破砕して粒状もしくは粉末状としたりして、これを対向する2本のロールの間隙を通過させることにより直接シート状に成形するカレンダー成形法などが知られている(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7を参照)。
【0009】
これらの成形法のうちカレンダー成形法は、混合物を直接1mm程度以下の薄いシート状に成形できる点で押出し法より優れている。一方、押出し成形法では、押出し時に混合物に強いせん断力が働き、混合物の均一化が進行するのに対し、カレンダー成形法では、成形時に混合物に加わるせん断力が小さいため、混合物の均質化はほとんど進行しない。そこで、カレンダー成形法で電極シートを成形する際には、炭素質材料とバインダー及び成形助剤を事前に充分に均一混合しておくことが必要とされていた。
【0010】
カーボンブラック等の導電材は電気二重層キャパシタの抵抗を下げて、性能、特に高出力性能発現のために必要不可欠なものとなっている。効果的に導電性を付与するカーボンブラックの特性として、1)ストラクチャーが高度に発達していること、2)比表面積が大きいこと、3)一次粒子径が小さいこと、4)結晶構造が発達していること、5)π電子を補足する官能基が少ないこと、が挙げられる(出典:最新カーボンブラック技術大全集、技術情報協会編)。市販の導電性カーボンブラックではケッチェンブラック(ケッチェンブラック・インターナショナル(株)製)が、特徴的に比表面積が大きく優れた導電性能を示すことが知られている。
【0011】
ところが、このような比表面積の大きい導電材は、表面エネルギーが大きく、同時に粒子径が小さくて嵩比重が小さいことから凝集しやすく、通常の混合方法では活性炭等の静電容量を発現する材料と均一に混合することが困難であった。こうした分散不良が起こると、導電材が電極シートから剥がれ落ちやすくなり、電気二重層キャパシタの耐久性能の低下を招いたり、作業環境の悪化を招いたりして好ましくない。そこで、こうした導電材の分散不良をなくして均一に混合するために、液状の成形助剤(混練助剤)を加えた湿式の混練工程を採用することが必要とされていた。
【0012】
また混練された粘土状あるいはゴム塊状の混合物をカレンダー法で成形するためには、混練物を破砕して粒径をそろえる工程が必要とされ、製造工程が煩雑となっていた。更に混練助剤は、環境負荷の小ささを考えると水を使用することが望まれたが、導電材であるカーボンブラックの親水性が低いため、カーボンブラックが混練時に凝集して分散不良が起きやすかった。
【0013】
こうした問題を解決するため、従来より炭素質材料と導電材とバインダーをできるだけ均一に混合してシート状に成形する方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献8、特許文献9、特許文献10では、有機溶剤を成形用助剤として用いた方法が提案されている。しかし有機溶媒を用いると、環境負荷が大きくなったり、電極シート製造中の有機溶媒除去工程において、防爆型の設備が必要になったりするため、出来るだけ有機溶媒を使わない方法が望まれている。
【0014】
一方、特許文献11や特許文献12では助剤を用いない乾式の成形方法が提案されているが、活性炭とカーボンブラックとポリテトラフルオロエチレンは物性が大きく異なり、回転する羽根や棒状のものを用いた場合は前述のようなカーボンブラックが極度に浮遊しやすいため、混合や圧縮が起こる部分へカーボンブラックが混ざりにくく、均一の性状で充分な強度を持つ長尺のシートを製造することはできなかった。
【0015】
また、成形を行うにあたって、あらかじめ活性炭等の炭素質材料とカーボンブラック等の導電材、及びポリテトラフルオロエチレン等のバインダーと成形助剤を混合、混錬して成形を行う方法が提案されている(特許文献13、特許文献14を参照)。しかし、この方法においては、ニーダー等の混錬機器を用いており、その為混錬後の状態が塊状体となるため、その塊状体を粉砕する工程が必須となって、生産性を落としたり、装置からの不純物の混入の原因になったりする。更には、ニーダー等の混錬機器でせん断力をかけすぎると、バインダーであるPTFEの繊維化が進みすぎて、シートが脆くなったりしてかえってロスを大きくしたりすることがある。
【0016】
【特許文献1】特開昭63−107011公報
【特許文献2】特開平11−283887公報
【特許文献3】特開2001−307964公報
【特許文献4】特開平2−235320公報
【特許文献5】特開2001−85280公報
【特許文献6】特開2001−35756公報
【特許文献7】特許第3693254公報
【特許文献8】特開2001−307964公報
【特許文献9】特公平7−44127公報
【特許文献10】特開2001−85280公報
【特許文献11】特許第3028560号公報
【特許文献12】特開2003−225547公報
【特許文献13】特開2001−35756公報
【特許文献14】特許第3693254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、成形助剤として水を用い、かつ混練及び解砕工程を省略することで生産効率を上げた電気二重層キャパシタ用電極の製造方法及び該電極を用いた電気二重層キャパシタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このため本発明(請求項1)は、電気二重層キャパシタ用電極の製造方法であって、少なくとも2種類の炭素質材料と有機結合材を含む電気二重層キャパシタ用の電極の製造方法であって、前記炭素質材料を媒体式粉砕機により混合する一次混合工程と、該一次混合工程で得られた混合物にポリテトラフルオロエチレンと液状潤滑剤とを添加し、湿式で混合する二次混合工程と、該二次混合工程で得られた混合物を対向する2本のロール間に通過させることによりシート状に成形する成形工程とを備えて構成した。
【0019】
一次混合工程では媒体式粉砕機にて混合することにより、少なくとも2種類の炭素質材料が充分混合された状態を作り出すことができる。このため、従来のように成形前に混練したり解砕したりする工程が不要となり、生産効率が上がる。なお、媒体式粉砕機での混合は、乾式で行うことが好ましい。この混合方法は、ヘンシェルミキサー等の撹拌方式では得られない効果を示す。このように一次混合工程において充分混合された状態にできるので、二次混合工程においてポリテトラフルオロエチレンと液状潤滑財とを添加したときに、局所的な疎水性が高くていわゆるダマになりやすい部分がすくなくなり、分散不良が起き難い。
【0020】
また、本発明(請求項2)は、前記炭素質材料を活性炭と比表面積500〜1500m2/gのカーボンブラックとから構成した。
【0021】
活性炭はカーボンブラックより親水性が高いので、一次混合工程でカーボンブラックが活性炭と充分混合されることにより分散不良を起こしやすいカーボンブラックの部分的な集合体をほとんどなくすことができる。
【0022】
更に、本発明(請求項3)は、前記二次混合工程において、前記液状潤滑剤は水であり、ポリテトラフルオロエチレンと水とが、界面活性剤を含むポリテトラフルオロエチレンの水性分散液として添加されることを特徴とする。
【0023】
液状潤滑剤に水を用いたことで、環境負荷が小さく、防爆設備も不要であり、電気二重層キャパシタ用の電極を安価に製造できる。
【0024】
更に、本発明(請求項4)は、前記ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液は、ポリテトラフルオロエチレンの濃度が水性分散液全質量に対し0.3〜50.0%であり、界面活性剤をポリテトラフルオロエチレンに対して3.0〜12.0%含むことを特徴とする。
【0025】
適正濃度のポリテトラフルオロエチレンの水性分散液を添加することにより、混合工程を経た後の状態が塊状にならず、二次混合工程で使用される混合機から容易に排出可能である。
【0026】
更に、本発明(請求項5)は、前記二次混合工程で得られた混合物中の水分量x(重量割合)が、活性炭の固形分全体に占める重量割合をa、該活性炭の細孔容積をVcm3/gとしたときに数1で示される値であることを特徴とする。
【0027】
数1の範囲よりも水分が少ないと成形したときに脆く、シートになり難い。一方、この数1の範囲よりも水分が多いときは、成形したシートが柔らかすぎて、成形用のロールに張り付いたり、巻き取り時に切れたり、圧延時に皺になって長尺シートができなくなったりする。
【0028】
更に、本発明(請求項6)は、前記二次混合工程により得られる混合物は、全質量の80%以上が直径2mm以下の粒径を有する造粒物であることを特徴とする。
【0029】
二次混合工程で得られた混合物は、粘土状やゴム状の塊ではなく篩等の簡便な手段で容易に直径2mm以下の粒子になることのできる造粒物である。したがって、粉砕工程を経る必要がないので生産性が良く、しかも、粉砕装置からの不純物の混入も防ぐことができる。
【0030】
更に、本発明(請求項7)は、前記二次混合工程では羽根を備える混合機が用いられ、羽根先端の周速度10〜45m/秒の回転速度で羽根を回転させて混合することを特徴とする。
【0031】
このことにより、短時間で均一に混合でき、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル化を促進し、次に行うカレンダー成形を容易かつ収率良く行うことができる。
【0032】
更に、本発明(請求項8)は、正極及び負極と、該正極と該負極との間に介在されるセパレータと、電解液とを備える電気二重層キャパシタの製造方法であって、前記正極及び前記負極は、請求項1〜7のいずれかの方法で製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明によれば、一次混合工程で媒体式粉砕機にて乾式で混合することとしたので、少なくとも2種類の炭素質材料が充分混合された状態を作り出すことができる。このため、従来のように成形前に混練したり解砕したりする工程が不要となり、生産効率が上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態である電極の概略製造工程を図1に示す。なお、製造されたシートが電極層として利用される点は従来と同様なので電気二重層キャパシタの構成については省略する。
【0035】
図1において、ステップ1(図中S1と略す。以下、同旨)の一次混合工程では、活性炭とカーボンブラックとを媒体式粉砕機により混合する。活性炭としてはフェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系又はヤシガラ系等が使用でき、粒径が0.1〜100μm、特には1〜20μmであると、薄膜化しやすく、容量密度も高くなりやすいので好ましい。
【0036】
この一次混合工程で用いる媒体式粉砕機としては、通常用いられるボールミルが使用できる。そして、この媒体式粉砕機は、粉砕が目的ではなく混合のために利用する。そのため、あらかじめ粒度分布を整えた活性炭を用いる場合は粒度分布(通常、数μmから数十μmに中心粒径を持つもの)を変えないものが好ましく、そのためには、ナイロン製のボールを使用することが好ましい。更には、金属芯入りのナイロンボールも用いることができる。ただし、粒度の大きな活性炭に導電材を添加して混合と同時に粉砕を行う場合は、金属やセラミックスのボールを用いても良い。
【0037】
媒体式粉砕機とは、容器が回転又は振動などの運動をすることにより、内部の粉砕媒体を駆動する容器駆動式や容器内部にある撹拌機構により粉砕媒体に運動力を与える媒体撹拌式の粉砕機を言う。容器駆動式としては転動ミル、振動ミル、遊星ミルがあり、転動ミルが一般的にはボールミルと呼ばれている。媒体撹拌式としては通常、容器の形式により、塔型、撹拌槽型、流通管型、アニュラー型などに分けられる(出典:微粒子工学大系、第1巻基本技術、フジテクノシステム編)。そのいずれでも良いが、生産規模や原料組成等によって最適なものを選ぶことができる。
【0038】
ボールミルの運転条件としては、回分式で例を挙げると、ボールの量と仕込み原料の量と空間の量の比率や回転速度及び回転時間などが挙げられるが、これらは扱う活性炭とカーボンブラックの性質や比率によって、最適な条件を設定することができる。このボールミルを用いた一次混合工程によって、カーボンブラックと活性炭とを均一に混合することができ、疎水性が高く分散不良を起こしやすい部分をほとんど減らすことができる。
【0039】
この一次混合工程を媒体式粉砕機以外の装置、例えばヘンシェルミキサーのような粉砕媒体を用いない撹拌式の混合装置を用いると、凝集しやすいカーボンブラックが活性炭と充分混合されず、その結果ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液を混合したときに、カーボンブラックが凝集したいわゆる「ダマ」のような状態になってしまう。
【0040】
カーボンブラックは、導電性能を高めるためには、比表面積が500〜1500m2/gであることが必要である。例えば、ケッチェンブラック・インターナショナル(株)製のケッチェンブラックEC600JDは1270m2/g、EC300Jでは800m2/gである。
【0041】
次に、ステップ2の二次混合工程に進むが、この二次混合工程では、一次混合工程の媒体式粉砕機から混合物を取り出し、別途用意した第2の混合機に移す。そして、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンと液状潤滑剤である水とを添加し再び混合する。ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレンの単独重合体だけでなく、テトラフルオロエチレンに対して他の単量体を0.5モル%以下加えて共重合させて得られる共重合体も含まれる。他の単量体が0.5モル%以下であれば、ポリテトラフルオロエチレンに溶融流動性が付与されず、テトラフルオロエチレン単独重合体同様に繊維化して高強度かつ低抵抗のシート状の電極を作製できる。他の単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、トリフルオロエチレン、(パーフルオロアルキル)エチレン等が例示される。
【0042】
ポリテトラフルオロエチレンは、低分子量であると液状又はゲル状となり繊維化しにくいので、標準比重から計算される分子量が1×106以上の重合体を50重量%以上含んでいることが好ましい。また、ポリテトラフルオロエチレンは、乳化重合により得られるものが繊維化しやすいので好ましい。
【0043】
ここに、ポリテトラフルオロエチレンそのものは水への分散性がないため界面活性剤を用いた水性分散液のものが用いられる。水性分散液は通常コーティング剤、結着剤、樹脂への添加剤、耐熱塗料原料などに使用され、安定剤としてノニオン系の界面活性剤が使われており近年は環境対応の界面活性剤も用いられている。
【0044】
ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液は、混合工程を経た後の状態が塊状にならず、第2の混合機から容易に排出される形態になる必要があることから、ポリテトラフルオロエチレンの濃度が水性分散液全質量に対し0.3〜50.0%であり、界面活性剤がポリテトラフルオロエチレンの全質量に対して3.0〜12.0%の範囲であることが好ましい。これらの数量は、用いる活性炭やカーボンブラックの細孔容積などの物性や、比率、更にはポリテトラフルオロエチレンの比率などによって決まる。
【0045】
二次混合工程で用いる第2の混合機としては、粉と液状物を混合することができる装置であれば特に限定されないが、短時間で均一に混合でき、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル化を促進して次に行うカレンダー成形を容易にして、しかも収率良く行う装置としては例えば三井鉱山(株)製のヘンシェルミキサーがある。
【0046】
この二次混合工程で得られた混合物中の水分量x(重量割合)は、活性炭とカーボンブラックとポリテトラフルオロエチレンの重量割合をa:b:c(a+b+c=1)、活性炭の細孔容積をVcm3/gとしたときに数1で示される。
【0047】
【数1】

【0048】
ただし、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液に含まれる界面活性剤量は水分量に含む。
【0049】
次に、ステップ3においてカレンダー成形を行うが、数1の範囲よりも水分が少ないと成形したときに脆く、シートになり難い。一方、この数1の範囲よりも水分が多いときは、成形したシートが柔らかすぎて、成形用のロールに張り付いたり、巻き取り時に切れたり、圧延時に皺になって長尺シートができなくなったりする。
【0050】
なお、二次混合工程で得られた混合物は、粘土状やゴム状の塊ではなく篩等の簡便な手段で容易に1〜2mmの粒子になることのできる造粒物である。したがって、粉砕工程を経る必要がないので、生産性が良く、しかも、粉砕装置からの不純物の混入も防ぐことができる。
【0051】
ところで、これらの少なくとも2種類の炭素質材料とポリテトラフルオロエチレンの水性分散液を1度に混合した場合はカーボンブラックが疎水性が高いため凝集したいわゆる「ダマ」のような状態になってしまい、そのままシート成形したときにはシート表面にカーボンブラックの凸凹が多数残る状態になってしまう。
【0052】
水系ではなく、有機溶剤を用いると1度に混合した場合でもカーボンブラックの不分散はなくすことができる。しかしながら、この有機溶剤が消防法危険物に該当する場合には混合あるいは混錬装置、更には溶媒除去のための乾燥装置を防爆仕様にしなければならず、装置コストが高くなる。また、引火点の高い有機溶媒を使用した場合には溶媒除去の温度が高くなったり、時間がかかったりして生産コストが高くなる。
【実施例】
【0053】
次に本発明を、実施例及び比較例を挙げて更に具体的に説明する。
まず、以下の実施例において共通する工程を示す。
一次混合工程で用いる媒体式粉砕機として内径190mm、内容積5Lの筒状のボールミルを用いた。ボールは直径3/8インチのナイロン球(アズワン(株)販売品、型番ND−7)もしくは鉄心入りの直径10mmのナイロン球(中央化工機(株)製)を用いた。ボールを約2.4L入れ、この上に活性炭とカーボンブラックを加え、蓋をした後、50rpmで30分間運転した。その後、篩を用いてボールを分離した後混合粉を回収した。この操作を8バッチ繰り返して得た混合粉を二次混合工程に供した。
【0054】
二次混合工程として上記混合粉を、内容積が75Lのヘンシェルミキサー(混合用の羽根を2段搭載)に仕込み、ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン(旭硝子(株)製、FluonPTFEディスパージョンXAD911)をイオン交換水で薄めたものを加えた。このときの羽根の回転数は220rpm(周速度:5m/秒)で3〜5分かけて投入した。この後、羽根の回転数を1760rpm(周速度:41m/秒)で5分間混合した後、排出口をあけて、造粒物を抜き出した。この造粒物はしっとりとした粉であるが粘土の様な塊状ではなく例えば手で軽く握っただけで容易に変形をする性状である。この造粒物を1〜2mmの目開きの篩を用いて製粒して、直径140mmの加熱カレンダーロール2本の間に供給してシート状の成形体を得た。
【0055】
(実施例1)一次混合工程において活性炭(クラレケミカル(株)製、ヤシガラ系活性炭、中心粒径7μm、BET比表面積2170m2、細孔容積1.38cm3/g)238gとカーボンブラック(ケッチェンECP600JD)23gを加えて混合を8バッチ行い、混合粉2061gを得た。
【0056】
上記混合粉と、ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン(ポリテトラフルオロエチレン濃度:9.2%、界面活性剤をポリテトラフルオロエチレンに対して5%含む)2479gとから二次混合工程を経て造粒物を4222g得た(活性炭の固形分全体に占める重量割合は0.82、水分量は50%)。これをカレンダーロール(70℃)で圧延し、337〜350μmの厚みで幅が約300mmのシートを約40m得た。このとき途中でシートが切れることなく最後まで行うことができた。分散の良否の判断のために、更に圧延を行い約90μmのシートを得た。このときの光学顕微鏡写真を図2(a)に示す。なお、図2(a)中に表示したスケールは、このスケール長が1mm/divに相当していることを示している。図2(a)を見て分かる通り分散は良好であった。
【0057】
(実施例2)一次混合工程において活性炭(クラレケミカル(株)製、ヤシガラ系活性炭、中心粒径7μm、BET比表面積1877m2、細孔容積0.97cm3/g)272gとカーボンブラック(ケッチェンECP600JD)33gを加えて混合を8バッチ行い、混合粉2416gを得た。
【0058】
上記混合粉と、ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン(ポリテトラフルオロエチレン濃度:12.3%、界面活性剤をポリテトラフルオロエチレンに対して5%含む)2172gとから二次混合工程を経て造粒物を4110g得た(活性炭の固形分全体に占める重量割合は0.8、水分量は42%)。これをカレンダーロール(70℃)で圧延し、315〜327μmの厚みで幅が約300mmのシートを約45m得た。このとき途中でシートが切れることなく最後まで行うことができた。分散の良否の判断のために、更に圧延を行い約90μmのシートを得た。このときの光学顕微鏡写真を図2(b)に示す。なお、図2(b)中に表示したスケールは、このスケール長が1mm/divに相当していることを示している。分散は良好であった。
【0059】
(実施例3)一次混合工程において活性炭(クラレケミカル(株)製、ヤシガラ系活性炭、中心粒径8μm、BET比表面積1707m2、細孔容積0.73cm3/g)272gとカーボンブラック(ケッチェンECP600JD)33gを加えて混合を8バッチ行い、混合粉2407gを得た。
【0060】
上記混合粉と、ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン(ポリテトラフルオロエチレン濃度:17.1%、界面活性剤をポリテトラフルオロエチレンに対して5%含む)1550gとから二次混合工程を経て造粒物を3751g得た(活性炭の固形分全体に占める重量割合は0.8、水分量は33%)。これをカレンダーロール(70℃)で圧延し、198〜215μmの厚みで幅が約300mmのシートを約70m得た。このとき途中でシートが切れることなく最後まで行うことができた。分散の良否の判断のために、更に圧延を行い約90μmのシートを得た。このときの光学顕微鏡写真を図3(a)に示す。なお、図3(a)中に表示したスケールは、このスケール長が5mm/divに相当していることを示している。分散は良好であった。
【0061】
(実施例4)一次混合工程において活性炭(クラレケミカル(株)製、フェノール樹脂系活性炭、中心粒径5μm、BET比表面積2100m2、細孔容積1.00cm3/g)272gとカーボンブラック(ケッチェンECP600JD)33gを加えて混合を8バッチ行い、混合粉2425gを得た。
【0062】
上記混合粉と、ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン(ポリテトラフルオロエチレン濃度:13.2%、界面活性剤をポリテトラフルオロエチレンに対して5%含む)2027gとから二次混合工程を経て造粒物を4281g得た(活性炭の固形分全体に占める重量割合は0.8、水分量は40%)。これをカレンダーロール(70℃)で圧延し、200〜219μmの厚みで幅が約300mmのシートを約60m得た。分散の良否の判断のために、更に圧延を行い約90μmのシートを得た。このときの光学顕微鏡写真を図3(b)に示す。なお、図3(b)中に表示したスケールは、このスケール長が1mm/divに相当していることを示している。分散は良好であった。
【0063】
(比較例1)実施例1の組成の活性炭とカーボンブラックとポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンを一次混合工程無しで直接ヘンシェルミキサーに仕込み二次混合工程のみで造粒物を得た。この造粒物をロール(70℃)で圧延し、310〜330μmの厚みで幅が約300mmのシートを約40m得た。分散の良否の判断のために、更に圧延を行い約90μmを得た。このときの光学顕微鏡写真を図4(a)に示す。なお、図4(a)中に表示したスケールは、このスケール長が1mm/divに相当していることを示している。図4(a)を見て分かる通り無数の凸凹が見られ、分散は不良であった。
【0064】
(比較例2)一次混合工程はヘンシェルミキサーを用い、羽根の回転数を1760rpm(周速度:41m/秒)で60分間混合した。それ以外は実施例1と同様に行った。このときの光学顕微鏡写真を図4(b)に示す。なお、図4(b)中にスケールは表示されていないが、図4(a)と同一のスケールである。図4(b)を見て分かる通り無数の凸凹が見られ、分散は不良であった。
【0065】
(比較例3)一次混合工程はQミキサー(三井鉱山(株)製)を用い、周速度:100m/秒で5分間混合した。それ以外は実施例1と同様に行った。このときの光学顕微鏡写真を図4(c)に示す。なお、図4(c)中にスケールは表示されていないが、図4(a)と同一のスケールである。図4(c)を見て分かる通り無数の凸凹が見られ、分散は不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態である電極の概略製造工程
【図2】光学顕微鏡写真(実施例1、2)
【図3】光学顕微鏡写真(実施例3、4)
【図4】光学顕微鏡写真(比較例1、2、3)
【図5】電気二重層キャパシタの縦断面図例
【図6】素子体の構成図
【符号の説明】
【0067】
1 素子体
3A、3B 電極体
5A、5B セパレータ
7A、7B 集電箔
9A、9B 電極層
21 外装容器
31 封口板
50 単体セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の炭素質材料と有機結合材を含む電気二重層キャパシタ用の電極の製造方法であって、前記炭素質材料を媒体式粉砕機により混合する一次混合工程と、該一次混合工程で得られた混合物にポリテトラフルオロエチレンと液状潤滑剤とを添加し、湿式で混合する二次混合工程と、該二次混合工程で得られた混合物を対向する2本のロール間に通過させることによりシート状に成形する成形工程とを備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。
【請求項2】
前記炭素質材料が活性炭と比表面積500〜1500m2/gのカーボンブラックとからなる請求項1記載の電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。
【請求項3】
前記二次混合工程において、前記液状潤滑剤は水であり、ポリテトラフルオロエチレンと水とが、界面活性剤を含むポリテトラフルオロエチレンの水性分散液として添加される請求項1又は請求項2記載の電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液は、ポリテトラフルオロエチレンの濃度が水性分散液全質量に対し0.3〜50.0%であり、界面活性剤をポリテトラフルオロエチレンに対して3.0〜12.0%含む請求項3記載の電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。
【請求項5】
前記二次混合工程で得られた混合物中の水分量x(重量割合)が、活性炭の固形分全体に占める重量割合をa、該活性炭の細孔容積をVcm3/gとしたときに数1で示される値である請求項3又は請求項4記載の電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。
【数1】

【請求項6】
前記二次混合工程により得られる混合物は、全質量の80%以上が直径2mm以下の粒径を有する造粒物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。
【請求項7】
前記二次混合工程では羽根を備える混合機が用いられ、羽根先端の周速度10〜45m/秒の回転速度で羽根を回転させて混合する請求項1〜6のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。
【請求項8】
正極及び負極と、該正極と該負極との間に介在されるセパレータと、電解液とを備える電気二重層キャパシタの製造方法であって、前記正極及び前記負極は、請求項1〜7のいずれかの方法で製造することを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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