説明

電気二重層キャパシタ

内部からの電解液漏れ及び外部からの不要物質の浸入を防ぎつつ、端子と外装容器との間の絶縁を行うことのできる電気二重層キャパシタを提供する。
端子112に対し、鍔部113の上部側まで下側絶縁リング131を嵌め込む。そして、この状態の端子112を、外装容器121の内部側から封口板111の貫通穴111aの中央に挿入する。その後、円筒部112aと貫通穴111aとにより形成された隙間135に、Oリング133を圧入する。さらに、この圧入されたOリング133の上部側に、上側絶縁リング137を嵌め込む。そして、この上側絶縁リング137を押さえ込むようにして、押さえバネ139を端子112に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに係わり、特に、内部からの電解液漏れ及び外部からの不要物質の浸入を防ぎつつ、端子と外装容器との間の絶縁を行うことのできる電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタには、内部の素子体と外部との間の電気エネルギーの入出力を行うために端子部が設けられている。そして、この端子部としては、従来よりモールド型の端子部10Aが知られている。
モールド型の端子部の断面図を図6に示す。
【0003】
図6において、モールド型の端子部10Aの封口板11には、上下が貫通された状態で一対の端子12、13が挿入されており、これらが成形されて蓋体15が構成されている。このとき、封口板11は絶縁樹脂製、端子12、13はアルミニウム製となっており、封口板11側の端子12、13との境界部11aと、これに対する端子12、13側のそれぞれの境界部12a、13aには、モールド成型によりラビリンス構造が施されている。そのため、封口板11と端子12、13との材質の違いに伴う熱収縮差による、封口板11と端子12、13との隙間が最小限とされるようになっている。
さらに、この端子12、13の下部には、図示しない内部の素子体の電極との電気的な接続を行うために、それぞれにリード18、19が接続されている。
【0004】
さらに、蓋体15には、封口板11の上面側の最外縁部が周状に切り欠きされた切欠部16が設けられている。そして、この切欠部16には、この切り欠きされた形状とほぼ同じ形状を有するゴム製のシール材17が嵌着されている。
【0005】
また、外装容器21の最上端部にはカシメ部23が設けられている。そして、このカシメ部23は内側にカシメられることで、蓋体15の上面側をシール材17を挟んで固定するようになっている。また、外装容器21において、カシメ部23からおよそ封口板11の板厚分だけ下側には、外装容器21が内側に凹んだ凹部24が形成されており、この凹部24は蓋体15の下面側を支持するようになっている。
【0006】
かかる構成において、端子12、13は互いに十分に離れ、かつ封口板11は絶縁樹脂製であるため、端子12、13間は十分に絶縁される。また、端子12、13と外装容器21との間も十分に離れているため、これらの間も絶縁される。従って、電気二重層キャパシタの液絡や地絡を防止することができる。
【0007】
なお、この端子部10Aと同様の端子部を有する電解コンデンサとして、特許文献1が知られている。この特許文献1には、内部を高度に脱水する必要のある非水系蓄電素子を封口するときに有効な封口構造が示されている。
【0008】
しかしながら、上述した端子部10Aや特許文献1に示された端子部のように、封口板11と端子12、13との境界にラビリンス構造を施したとしても、封口板11を構成する樹脂材料と、端子12、13を構成する金属材料との熱膨張率や熱圧縮率の違い等のため、封口板11と端子12、13との間からの電解液漏れを完全に防ぐことは困難であった。
【0009】
また、端子部10Aの蓋体15は、外装容器21に対しカシメ固定されるため、外装容器21が一般にアルミニウム製であることを考慮すると、長時間使用した場合の内部圧力の上昇等により、カシメ部23のカシメ力が弱くなって、蓋体15と外装容器21との間から電解液漏れを生じるおそれがあった。加えて、外部から不要物質が浸入するおそれがあった。
【0010】
この点、封口板11と端子12、13の間からの電解液漏れを防ぐ構造として、従来から端子兼用型の端子部10Bが知られている。
端子兼用型の端子部10Bの断面図を図7に示す。なお、図6と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
【0011】
図7において、端子兼用型の端子部10Bは、一体型蓋体35を有している。この一体型蓋体35は、モールド型の端子部10Aでいう封口板11に対応する封口板31と、端子12(又は端子13)に対応する端子32とが一部材で構成されており、これらは同種の金属製となっている。従って、モールド型の端子部10Aと異なり、封口板31は端子32を兼ねている。そして、この一体型蓋体35には、内部の素子体の電極との電気的な接続を行うためのリード18が接続されている。
【0012】
このとき、一体型蓋体35には、上面側に周状に設けられた切欠部16の他に、封口板31の下面側の最外縁部が周状に切り欠きされた切欠部36が設けられている。そして、この切欠部36には、絶縁部材37が装着されており、この絶縁部材37はさらに封口板31の側部を取り囲むように配設されている。
【0013】
そして、この一体型蓋体35は、その上面側が外装容器21のカシメ部23によりカシメ固定されるとともに、その下面側が絶縁部材37を挟んで凹部24により支持されるようになっている。また、このときに一体型蓋体35の封口板31の側部と外装容器21との間にも、絶縁部材37が介設されるようになっている。
【0014】
かかる構成において、封口板31と端子32とは一部材であるため、封口板31と端子32との間からの電解液漏れや、不要物質の浸入を防止することができる。
【0015】
しかしながら、このような端子部10Bでは、封口板31と外装容器21との間の絶縁距離を確保することができず、一体型蓋体35や外装容器21に結露が生じた場合に、この結露により液絡や地絡を起こすおそれがあった。
【特許文献1】特開平10−275744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、内部からの電解液漏れ及び外部からの不要物質の浸入を防ぎつつ、端子と外装容器との間の絶縁を行うことのできる電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このため本発明は、電解液と、該電解液との界面に電気二重層を形成する電極からなる正極及び負極と、該正極と該負極との間に配置されたセパレータとからなる素子体と、該素子体を収容する外装容器と、該外装容器を封口する封口板と、該封口板を貫通する貫通穴に取り付けられ、前記外装容器に収容された素子体と外部との間の電気エネルギーの入出力を行う端子部とを備えた電気二重層キャパシタであって、前記端子部は、端子と、固定手段と、前記端子の外面を囲む第1の絶縁部材、第2の絶縁部材及びシール部材とから構成され、前記端子は、前記貫通穴に挿入され、前記電極の一方と電気的に接続され、かつ、前記封口板の下部に形成された鍔部と、前記封口板の上部の外面に形成された凹部とを有し、前記第1の絶縁部材は、前記鍔部と前記封口板との間に設けられ、前記第2の絶縁部材は、前記封口板の上部に設けられ、前記シール部材は、前記貫通穴の内面、前記端子の外面、前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材により形成された隙間に設けられ、前記固定手段は、一端が前記凹部に係止され、他端が前記第2の絶縁部材を封口板側に押し付けていることを特徴とする。
【0018】
貫通穴の内面と端子の外面との隙間には、リング状のシール部材が設けられるため、端子と封口板との間の気密性が確保される。また、この端子と封口板との間には、シール部材及び絶縁部材が介設されるため、端子と封口板とは十分に絶縁される。さらに、固定手段により、端子、第1の絶縁部材、第2の絶縁部材及びリング状のシール部材を封口板に固定しているため、端子のがたつきによる端子と封口板との間の気密性の悪化が防止される。
【0019】
以上により、端子と封口板との間の気密性を確保することができるので、これらの間からの電解液漏れを防ぐことができる。また、外部からの不要物質の浸入も防止することができる。さらに、端子と封口板との間が十分に絶縁されるので、結露に伴う液絡や地絡を防止することができる。従って、電気二重層キャパシタの故障を防止することができる。
なお、封口板は、外装容器と一体化されても良い。
【0020】
また、本発明は、前記封口板には、前記貫通穴の周囲の端部が折り曲げられた折曲部が形成され、前記シール部材は、前記折曲部、前記端子の外面、前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材により形成された隙間に設けられることが好ましい。
【0021】
封口板には、貫通穴の周囲の端部が折り曲げられた折曲部が形成される。そのため、折曲部と端子の外面との隙間にリング状のシール部材が設けられ、端子と封口板との間の気密性が確保される。
従って、封口板の板厚が薄くても、内部からの電解液漏れや、外部からの不要物質の浸入を防ぐことができ、かつ絶縁部材により端子と封口板との間の絶縁も十分に行うことができる。
このように、端子等を固定する部分の板厚に応じて、端子部の構造を適宜選択することができ、あらゆる板厚を有する部分に端子を固定することが可能である。
【0022】
さらに、本発明は、前記シール部材の前記隙間中の充填率が0.9以上であることが好ましい。
このことにより、電解液漏れを防ぐことができる。
さらに、本発明は、前記固定手段が押さえバネ、軸用止め輪又はナットであることが好ましい。
【0023】
端子部は、従来の端子部に比べ、その部品形状が単純である。
そのため、製造や組立を簡単に行うことができ、安価に製造等を行うことができる。また、端子部は部品形状が単純なので、端子部の設計における自由度が増し、あらゆる蓄電構造に適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、封口板を貫通する貫通穴の内面と端子の外面との隙間にリング状のシール部材を設け、端子と封口板との間にシール部材及び絶縁部材を介設したので、端子と封口板との間の気密性を確保することができ、これらの間からの電解液漏れを防ぐことができる。また、外部からの不要物質の浸入も防止することができる。さらに、端子と封口板との間が十分に絶縁されるので、結露に伴う液絡や地絡を防止することができる。従って、電気二重層キャパシタの故障を防止することができる。
【0025】
さらに、固定手段の採用により、端子及び第2の絶縁部材を上部側に付勢するとともに、第1の絶縁部材を下部側に付勢することができる。そして、その結果、端子部と封口板との気密性を充分に保てる。そのため、本発明の封口構造は高電圧を印加する際に素子中の水分や、電解液の分解によりガスが発生する非水系電解液系電気二重層キャパシタの封口構造として好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態である電気二重層キャパシタの断面図。
【図2】図1中の端子部の分解構成図。
【図3】本発明の第1実施形態である電気二重層キャパシタの別例。
【図4】図3中の端子部の分解構成図。
【図5】本発明の第2実施形態である電気二重層キャパシタの断面図。
【図6】従来の端子部の断面図(モールド型)。
【図7】同上(端子兼用型)。
【図8】本発明の第1実施形態である電気二重層キャパシタの別例。
【図9】図8中の端子部の分解構成図。
【符号の説明】
【0027】
10A、10B、150、250、260、350 端子部
11、31、111、311 封口板
12、13、32、112、212 端子
21、121 外装容器
100、200 電気二重層キャパシタ
101 素子体
102 リード部
103 集電板
105 集電部材
111a、311a 貫通穴
112a 円筒部
113 鍔部
114 凹部
131 下側絶縁リング
133 Oリング
135、355 隙間
137 上側絶縁リング
139 押さえバネ
311c 折曲部
341 スペーサ
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
本発明の第1実施形態である電気二重層キャパシタの断面図を図1に、図1中の端子部の分解構成図を図2に示す。なお、図6、図7と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
【0029】
図1、図2において、電気二重層キャパシタ100の外装容器121の内部には、図示しない電解液と、この電解液との界面に電気二重層を形成する電極からなる正極及び負極と、この正極と負極との間に配置されたセパレータとからなる素子体101とが収容されている。この素子体101は、例えば捲回型の素子体であり、正極、負極及びセパレータを捲き上げて形成している。そのため、外装容器121の形状は、有底の円筒型となっている。ただし、素子体101は捲回型に限らず例えば積層型でも良く、この場合の外装容器121の形状は角型となる。
【0030】
そして、この素子体101の電極には、電極と一体化されていても良いリード部102が設けられている。また、このリード部102には集電板103が接続されている。そして、この集電板103は、後述する端子部150の集電部材105と溶接等により接合されている。
【0031】
さらに、この外装容器121を封口する封口板111には、内部の素子体101と外部との間の電気エネルギーの入出力を行うための端子部150が取り付けられている。
封口板111は、外装容器121の形状に対応して円板状に形成されている。この封口板111は、後述する隙間135にOリング133を圧入するために、例えば板厚が2mm以上となっている。そして、封口板111は、その最外縁部111bと外装容器121との間が溶接等により接合されるようになっている。
【0032】
また、封口板111の中央部には、直径D1を有する貫通穴111aが形成されている。そして、この貫通穴111aの中央には、外装容器121の内部側から端子112が挿入されている。
【0033】
このとき、端子112は、外径D2の円筒部112aを有する中空の部材となっており、その高さは封口板111の板厚よりも十分に長くなっている。また、この端子112の円筒部112aの外径D2は、貫通穴111aの直径D1よりも小さくなっている。
【0034】
さらに、この端子112の下部側(すなわち、端子112が貫通穴111aに挿入された状態で、外装容器121の内部側)には、円筒部112aの外径D2より大きな外径を有する鍔部113が形成されている。そして、この鍔部113よりも上部側(すなわち、端子112が貫通穴111aに挿入された状態で、外装容器121の外部側)で円筒部112aの外周には、この外径D2とほぼ同じ内径を有する下側絶縁リング131が嵌め込まれている。
【0035】
この下側絶縁リング131は、封口板111の下面側と鍔部113との間に介設されており、その外径D3は、貫通穴111aの直径D1よりも大きくなっている。また、この下側絶縁リング131の厚みは、例えば封口板111の板厚と同程度となっている。なお、この下側絶縁リング131は、リング状の部材である場合に限られず、円筒部112aの外周を囲い、端子112と封口板111との間の絶縁性を保つことができれば、どのような単体形状を有する部材でも良い。
【0036】
さらに、この下側絶縁リング131の配置より上部側で円筒部112aの外周には、この外径D2とほぼ同じ内径を有するOリング133が嵌め込まれている。このとき、Oリング133は、円筒部112aの外径D2と封口板111の貫通穴111aの直径D1との違いにより生じた、円筒部112aの外周面と貫通穴111aの内周面との間の隙間135に圧入されるようになっている。
なお、Oリング133は、リング状の部材であれば、断面がO形である場合に限られず、角形やX形等のいずれの断面形状を有する部材であっても良い。
【0037】
さらに、円筒部112aの外周には、封口板111の上面に接するように、下側絶縁リング131とほぼ同形状を有する上側絶縁リング137が嵌め込まれている。そして、この上側絶縁リング137と下側絶縁リング131とにより、Oリング133は上下方向から挟装されるようになっている。
【0038】
また、上側絶縁リング137と円筒部112aの外周との間には、押さえバネ139が嵌め込まれている。
このとき、円筒部112aの上部側の外周面には凹部114が形成されており、押さえバネ139の一端が凹部114の凹みに係止されて端子112を上部側に付勢するようになっている。さらに、この押さえバネ139の一端は、この端子112の鍔部113を介して、下側絶縁リング131を上部側(封口板111側)に付勢するようになっている。
【0039】
一方、押さえバネ139の他端は、上側絶縁リング137を下部側(封口板111側)に付勢するようになっている。そのため、下側絶縁リング131及び上側絶縁リング137のそれぞれには上下逆向きの力が加えられるようになっており、この下側絶縁リング131及び上側絶縁リング137が封口板111を挟装することで、端子112が封口板111に対し固定されるようになっている。
【0040】
さらに、端子112の円筒部112aの内周側には、円柱状の集電部材105が埋め込まれている。この集電部材105は、上述した集電板103と接合されるようになっており、端子112と素子体101の電極との間を、集電板103を介して電気的に接続するようになっている。
【0041】
かかる構成において、端子部150の組立方法について説明する。
まず、端子112に対し、この鍔部113の上部側まで下側絶縁リング131を嵌め込む。そして、この状態の端子112を、外装容器121の内部側から封口板111の貫通穴111aの中央に挿入する。その後、円筒部112aと貫通穴111aとにより形成された隙間135に、Oリング133を圧入する。さらに、この圧入されたOリング133の上部側に、上側絶縁リング137を嵌め込む。そして、この上側絶縁リング137を押さえ込むようにして、押さえバネ139を端子112に装着する。
【0042】
また、端子112と素子体101の電極との電気的な接続のために、集電部材105と集電板103とを超音波溶接等により接合した後、集電板103とリード部102とをレーザ溶接して外装容器121に収容し、集電部材105に円筒部112aをレーザ溶接等により接合する。
最後に、このような端子112が取り付けられた封口板111の最外縁部111bを、外装容器121に対し溶接等により接合する。
【0043】
その結果、円筒部112aの外周面と貫通穴111aの内周面との隙間135にはOリング133が圧入されるため、端子112と封口板111との間の気密性が確保される。また、封口板111と外装容器121との間は溶接等により接合されるため、この間の気密性も十分に保たれる。
【0044】
さらに、この端子112と封口板111との間には、下側絶縁リング131及び上側絶縁リング137が介設されるので、端子112と封口板111とは十分に絶縁される。
【0045】
また、押さえバネ139を端子112に嵌め込んで、端子112を封口板111に対し固定しているため、端子112のがたつきによる端子112と封口板111との間の気密性の悪化が防止される。また、このために、鍔部113の外径は、貫通穴111aの外径D1よりも大きい必要がある。
【0046】
以上により、端子112と封口板111との間の気密性や、封口板111と外装容器121との間の気密性を確保することができるので、これらの間からの電解液漏れを防ぐことができる。また、外部からの不要物質の浸入も防止することができる。さらに、端子112と封口板111との間が十分に絶縁されるので、結露に伴う液絡や地絡を防止することができる。従って、電気二重層キャパシタ100の故障を防止することができる。
【0047】
さらに、端子部150は、従来の端子部10A等に比べ、その部品形状が単純であり、その製造や組立を簡単に行うことができるので、安価に製造等を行うことができる。また、端子部150は部品形状が単純なので、端子部150の設計における自由度が増し、あらゆる蓄電構造に適用することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、押さえバネ139を用いて端子112を封口板111に取り付けるとして説明してきたが、これに限られない。
【0049】
例えば、円筒部112aの上端部から、図示しないネジ溝を螺旋形状に連続的に形成して凹部114とし、このネジ溝にナットを螺合させることでネジ締め固定しても良い。この場合も、下側絶縁リング131及び上側絶縁リング137が封口板111を挟装することで、端子112が封口板111に対し固定される。
【0050】
この他に、端子112に形成された凹部114を用いつつ、押さえバネ139の代わりに図示しない軸用止め輪を用いて、端子112を固定しても良い。
【0051】
また、本実施形態においては、端子112は円筒部112aを有する中空の部材であるとして説明してきたが、これに限られず、端子112と集電部材105とを一体とし、端子を中実の部材としても良い。
【0052】
この中実の端子を備えた電気二重層キャパシタの断面図を図3、図8に、図3中の端子部の分解構成図を図4に、図8中の端子部の分解構成図を図9に示す。なお、図1、図2と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
【0053】
図3、図4において、電気二重層キャパシタ200の端子部250の端子212は、中実の部材となっている。そして、この端子212には、集電部材105が埋め込まれる代わりにリード218が接続されており、内部の素子体101の電極と電気的に接続されるようになっている。
【0054】
かかる構成において、端子部250の組立では、端子212が中実であるため、内部の素子体101と端子212との電気的な接続が予め行われる。その他は、図1、図2に示す端子部150と同様の作用、効果を生じることができる。
従って、設計容易な端子部の構造を適宜選択可能となる。
また、図8、図9においても、電気二重層キャパシタ200の端子部260の端子212は、中実の部材となっている。そして、この端子212の鍔部113は、溶接等により集電板103と直接、電気的に接続される。かかる構成によれば、部品数を少なくできるため望ましい。ここで、図8、図9に示すように、鍔部113と集電板103とが予め一体成形されたものを用いても良い。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態である電気二重層キャパシタ100は、円筒部112aの外周面と貫通穴111aの内周面との隙間135にOリング133を圧入する構成であるため、封口板111の板厚が2mm以上であることが望ましいが、第2実施形態である電気二重層キャパシタは、封口板の板厚が2mm未満の場合に適した構成である。
【0056】
本発明の第2実施形態である電気二重層キャパシタの断面図を図5に示す。なお、図1と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
図5において、端子部350は、第1実施形態の封口板111よりも、薄い板厚(2mm未満)を有する封口板311に取り付けられている。そして、この封口板311の中央部には、第1実施形態の封口板111と同様に、直径D1を有する貫通穴311aが形成されている。
【0057】
このとき、貫通穴311aには、その周囲の封口板311が下部側に向けて折り曲げられた折曲部311cが設けられており、この折曲部311cにより、貫通穴311aの内周面が形成されるようになっている。そして、この折曲部311cは、第1実施形態の封口板111が有していた板厚に対応しており、この折曲部311cとして折り曲げる幅はOリング133の断面の外径と一致している。
【0058】
さらに、この貫通穴311aの中央には、第1実施形態と同様に外装容器121の内部側から端子112が挿入されている。また、この端子112には下側絶縁リング131、Oリング133、上側絶縁リング137、押さえバネ139が順に嵌め込まれている。このとき、Oリング133は、端子112の円筒部112aの外周面と、折曲部311cとにより形成された隙間335に圧入されている。
【0059】
また、貫通穴311aには、折曲部311cの過度の折れ曲がりを防止するために、貫通穴311aの外周側から折曲部311cを周回するようにスペーサ341が取り付けられている。このスペーサ341は、例えばリング状の部材であり、その内径は貫通穴311aの直径D1より封口板311の板厚分だけ大きい。また、このスペーサ341の厚みは、折曲部311cとして折り曲げた幅と同程度となっている。そのため、このスペーサ341は、Oリング133の外周側において、下側絶縁リング131と封口板311との間に挟装されるようになっている。
【0060】
さらに、封口板311は、外装容器121への取り付けに際し、その最外縁部311bが外装容器121の最上端部とともに捲回されるようになっている。なお、この封口板311の取り付けに際しては、第1実施形態と同様に溶接等により接合されても良い。
【0061】
かかる構成において、本実施形態の端子部350の組立では、端子112の貫通穴311aへの挿入に先立って、貫通穴311aの外周にスペーサ341が取り付けられる。その後、端子112に下側絶縁リング131を嵌め込んだ後に、これを貫通穴311aへ挿入させ、Oリング133、上側絶縁リング137、押さえバネ139を順に嵌め込む。このとき、スペーサ341により折曲部311cの剛性が増加されているため、折曲部311cが過度に折れ曲がることなく、隙間335にはOリング133が圧入される。
【0062】
その後、端子112が取り付けられた封口板311の最外縁部311bを外装容器121の最上端部とともに捲回することで、封口板311により外装容器121が封止される。
【0063】
その結果、円筒部112aの外周面と折曲部311cとの隙間335には、第1実施形態と同様にOリング133が圧入されるため、端子112と封口板311との間の気密性が確保される。また、封口板311の最外縁部311bは、外装容器121の最上端部とともに捲回されているため、この間の気密性も十分に保たれる。
【0064】
さらに、端子112と封口板311との間には、第1実施形態と同様に下側絶縁リング131及び上側絶縁リング137が介設されるので、端子112と封口板111との間は十分に絶縁される。
【0065】
また、スペーサ341により折曲部311cの剛性が増加されるため、端子112のがたつきによる端子112と封口板311との間の気密性の悪化が防止される。
【0066】
以上により、封口板311の板厚が薄くても、内部からの電解液漏れや、外部からの不要物質の浸入を防ぐことができ、かつ端子112と外装容器121との間の絶縁も十分に行うことができる。
【0067】
このことにより、端子112等を取り付ける部分の板厚に応じて、第1実施形態の端子部150を採用するか、本実施形態の端子部350を採用するかを適宜選択することができる。従って、あらゆる板厚を有する部分に端子112を取り付けることが可能である。
【0068】
なお、本実施形態においては、封口板311の折曲部311cは、貫通穴311aの周囲の封口板311が下部側に向けて折り曲げられるとして説明してきたが、これに限られない。すなわち、貫通穴311aの周囲の封口板311を、上部側に向けて折り曲げても良い。そして、この場合にはスペーサ341を外装容器121の外部側に配設すれば良い。
【0069】
また、本実施形態においては、端子112は中空の部材であるとして説明してきたが、第1実施形態と同様にこれを中実の部材としても良い。さらに、押さえバネ139による端子112の固定の代わりに、ネジ締め固定あるいは軸用止め輪による固定を用いても良い。
【実施例】
【0070】
以上のような電気二重層キャパシタ100、200、300の最適例について説明する。
外装容器121は、その材質は特に限定されないが、例えば金属材料や樹脂材料が好ましい。また、封口板111も、その材質は特に限定されないが、例えば金属材料や樹脂材料が好ましい。
【0071】
さらに、端子112の材質は、自身の抵抗を低くするためにアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が最適である。また、集電部材105の材質についても、自身の抵抗を低くするためや、集電板103との接合等のために、集電板103と同じ材料を使用することが望ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が最適である。
【0072】
さらに、下側絶縁リング131の材質は、絶縁材であれば特に限定されないが、耐熱性能等からポリフェニレンサルファイド+グラスファイバー、四フッ化エチレン樹脂+グラスファイバーが好ましい。また、上側絶縁リング137についても同様である。さらに、押さえバネ139は、ステンレス鋼板製が好ましいが、他の材質でも良い。
【0073】
そして、Oリング133の材質は、電気二重層キャパシタ100、200、300に要求される性能により決定されることが望ましく、例えばフッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム等が好ましい。
【0074】
また、このOリング133については、その充填率が電解液漏れ等に大きく影響を及ぼすことが判明した。ここで、Oリング133の断面形状は一定であるから、Oリング133の充填率は、Oリング133の断面積を、Oリング133が圧入される空間(すなわち、隙間135や隙間355)の断面積で割ったものに相当する。
【0075】
そして、この充填率を0.7〜0.9程度にして使用することがOリングの通常であるが、発明者の実験によれば、本発明の電気二重層キャパシタ100、200、300ではOリング133の充填率を0.9以上にすることで、電解液漏れを防ぐことができた。なお、このことは、O形以外の断面形状を有するリング状のシール部材を用いた場合も同様である。
さらに、Oリング133のつぶし代は、JIS B 2406で規定された値の範囲が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、キャパシタの内部からの電解液漏れ及び外部からの不要物質の浸入を防ぎつつ、端子と外装容器との間の絶縁を行うことのできる電気二重層キャパシタに適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液と、
該電解液との界面に電気二重層を形成する電極からなる正極及び負極と、該正極と該負極との間に配置されたセパレータとからなる素子体と、
該素子体を収容する外装容器と、
該外装容器を封口する封口板と、
該封口板を貫通する貫通穴に取り付けられ、前記外装容器に収容された素子体と外部との間の電気エネルギーの入出力を行う端子部とを備えた電気二重層キャパシタであって、
前記端子部は、端子と、固定手段と、前記端子の外面を囲む第1の絶縁部材、第2の絶縁部材及びシール部材とから構成され、
前記端子は、前記貫通穴に挿入され、前記電極の一方と電気的に接続され、かつ、前記封口板の下部に形成された鍔部と、前記封口板の上部の外面に形成された凹部とを有し、
前記第1の絶縁部材は、前記鍔部と前記封口板との間に設けられ、
前記第2の絶縁部材は、前記封口板の上部に設けられ、
前記シール部材は、前記貫通穴の内面、前記端子の外面、前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材により形成された隙間に設けられ、
前記固定手段は、一端が前記凹部に係止され、他端が前記第2の絶縁部材を封口板側に押し付けていることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記封口板には、前記貫通穴の周囲の端部が折り曲げられた折曲部が形成され、
前記シール部材は、前記折曲部、前記端子の外面、前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材により形成された隙間に設けられた請求項1記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記シール部材の前記隙間中の充填率が0.9以上である請求項1又は請求項2記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記固定手段が押さえバネ、軸用止め輪又はナットである請求項1、2又は3記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記正極、負極及びセパレータが、重ねて捲回され又は平面にて積層された請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
前記端子が、前記電極の一方とリード部を介して電気的に接続された請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項7】
前記鍔部の外径が前記貫通穴の外径よりも大きく形成された請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
前記端子は中空にて形成され、該中空内部に集電部材が配設された請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項9】
前記端子が中実である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項10】
前記リード部には集電板が接続され、該集電板は、前記端子と接続された請求項6〜9のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/038837
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514845(P2005−514845)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015521
【国際出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)