説明

電気二重層コンデンサ

【課題】エネルギー密度の高い電気二重層コンデンサが提供される。
【解決手段】本発明の電気二重層コンデンサは、少なくとも一対の正極及び負極と、正極及び負極を分離するセパレーター(seperator)と、正極、セパレーター及び負極が含浸される電解液と、を含み、正極及び負極は、表面積が互いに異なる。電気二重層コンデンサの電極物質の相対比率を調節して電圧変化率及び/または表面積を変化させることで、電解液の可用電圧を上昇させ、結果的にエネルギー密度を高めることができる電気二重層コンデンサを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層コンデンサに関し、さらに詳細には、電極の抵抗特性を制御することで動作電圧領域が広くなり、高エネルギー密度を有し、且つ寿命特性が向上した電気二重層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサ(Electrical Double Layer Capacitor、以下「EDLC」と称する)は、符号の異なる一対の電荷層(電気二重層)の生成を利用したエネルギー保存装置である。このようなEDLCは、半永久的な充電/放電が可能であり、一般的な蓄電池に比べて出力特性が良いため、充放電時間が短く、耐久性及び安全性に優れ、半永久的な寿命を有する。EDLCは、一般的に、分離膜を介して正極、負極の二つの電極を互いに対向するように配置した後、それを電解質に含浸して構成したセルを有する。EDLCの静電容量は、電気二重層に蓄積される電荷量によって決定される。したがって、下の式で示すように、誘電体の特性によって静電容量を変化させることができる。
C=ε・S/d
(ここで、C:静電容量、ε:誘電体誘電率、S:電極の表面積、d:対向する電極と電極間の距離)
【0003】
保存可能なエネルギーは電気二重層を形成する面積に比例するので、活性炭のように高い比表面積を有する物質が電極として適合する。しかし、活性炭は電気伝導度が低いため、電気伝導度の高い物質(導電材)を添加している。
【0004】
具体的に、EDLCの電極は、無数の細孔が形成された表面に電解質イオンが吸着及び脱着されることができる多孔性電極物質と、この多孔性電極物質の粒子同士の間と電極物質と金属集電体との間を電気的に連結する導電材と、これらを結合させるバインダーとを含む。
【0005】
しかし、EDLCは、蓄電池に比べて出力特性は良いが、放電と同時に電圧が漸進的に下降してセルごとに低い動作電圧を有するので、エネルギー保存密度が一般的な蓄電池に比べて低い。
【0006】
一方、エネルギー保存に関しては、エネルギー密度(エネルギー保存量)は、蓄電池と同様にEDLCにおいても、エネルギーの量を比較する良い指標であり得る。エネルギー密度は、次のような式で得られたエネルギーをEDLCの総体積で割ることによって求めることができる。
エネルギー(J)=1/2CV
(C:セル当たりの静電容量F、V:セルに印加可能な電圧)
【0007】
エネルギーは、容量(C)と電圧( V)に比例する。容量(C)は、電極物質によって決定され、電圧(V)は、使用される電解液によって決定される。よって、EDLCのエネルギー密度を高めるために、高い容量(C)を有する電極物質の開発と可用電圧の大きい電解液の開発が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためのものであって、その目的は、EDLCの電極物質の相対比率を調節して電解液の可用電圧を上昇させ、結果的にエネルギー密度を高めることができる電気二重層コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するための本発明の一態様によると、少なくとも一対の正極及び負極と、正極及び負極を分離するセパレーター(seperator)と、正極、セパレーター及び負極が含浸される電解液と、を含み、正極及び負極は、表面積が互いに異なる電気二重層コンデンサが提供される。そして、負極の表面積が正極の表面積より小さいことが好ましい。
【0010】
正極及び負極は互いに厚さが殆ど等しくてもよい。
【0011】
正極と負極は充放電時に電圧変化率が互いに異なってもよい。そして、正極の充放電時の電圧変化率が負極の充放電時の電圧変化率より小さいことが好ましい。
【0012】
正極と負極は質量や厚さが互いに異なってもよい。
【0013】
正極の質量が負極の質量より大きいことが好ましい。
【0014】
正極と負極は充填密度(package density)が互いに異なってもよい。
【0015】
正極と負極は互いに異なる電極物質で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によると、少なくとも一対の正極及び負極と、正極及び負極を分離するセパレーター(seperator)と、正極、セパレーター及び負極が含浸される電解液とを含み、正極及び負極は互いに同じ厚さを有し、表面積が互いに異なる電気二重層コンデンサが提供される。
【0017】
本発明の一実施形態による電気二重層コンデンサは、電極の電極物質の相対比率を調節して電圧変化率及び/または電極の表面積を変化させることにより、電解液の可用電圧を上昇させ、結果的にエネルギー密度を高めることができる電気二重層コンデンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による電気二重層コンデンサの単位セルの断面図である。
【図2】充電時の時間によるセルの電位の変化を示すグラフである。
【図3】正極の表面積が負極より大きいセルの充電電位‐時間グラフである。
【図4】負極の表面積が正極より小さいセルの充電電位‐時間グラフである。
【図5】正極の表面積が大きく、負極の表面積が小さいセルの充電電位‐時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係る電気二重層コンデンサの単位セルの断面図である。
【0020】
本実施形態に係る電気二重層コンデンサは、通常、少なくとも一つのセル(unit cell)を有する。このセルは、正極と負極の二つの電極がセパレーター40を介して互いに対向するように配置された後、電解液に含浸されることにより構成される。電気二重層コンデンサは、電極の伝導性を良くするための集電体10と、活性炭を主材料として組成された電極物質20と、正極と負極とを分離するセパレーター40を含んで構成される。正極、および負極の各々は、集電体10と電極物質20とを含んでおり、集電体10の両面に電極物質20が形成されて構成される。
図1に図示されるように、本実施形態に係る電気二重層コンデンサの正極、および負極は、表面積が互いに異なるように構成される。例えば、図1においては、セパレーター40に対して上側の電極が正極、下側の電極が負極であり、負極の表面積が正極の表面積より小さくなるよう構成されている。
【0021】
具体的に、電極は、電極物質をシートの形に圧出した後、適切な大きさにパンチングまたは切開して構成されたり、または電極物質を薄い箔形の金属集電体上に塗布または固着させた後、適切な大きさにパンチングまたは切開して構成される。
【0022】
電極物質20は、多孔性活性炭粒子を主材料とする。電極物質は炭素(C)を主材料とし、酸素、水素、窒素、硫黄などの異種元素が含まれた多孔性構造を有する。この異種元素のうち酸素や水素などは、主に水蒸気活性化または薬品活性化などの活性化過程で導入され、窒素や硫黄などは、主に原料(石油、石炭など)から由来するものである。電極物質には導電材、バインダーが添加され、分散剤がさらに添加されてもよい。
【0023】
導電材(conducting agent)は、活性炭粒子同士の間または活性炭粒子と金属集電体との間を電気的に連結する。導電材としては、これに限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、微細黒鉛粉末などの粒子状導電材、繊維、ナノ繊維などの繊維状導電材を、単独または混合して提供してもよい。
【0024】
バインダー(binder)は、活性炭粒子同士の間または活性炭粒子と金属集電体との間を結合させる。バインダーとしては、これに限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などを単独または混合して提供してもよい。
【0025】
電極物質には、選択的に分散媒などの添加剤が添加されてもよい。分散媒としては、これに限定されるものではないが、例えば、エタノール、メチルピロリドンなどの有機溶媒または水が使用されてもよい。
【0026】
図2は、セルの充電電位‐時間グラフである。図2の場合、同一表面積を有する正極/負極で構成されたスーパーコンデンサの充電時の電位変化を示す。セル電圧Ecellは、電解液の分解電圧によって決まる。セルの充電は、正極の電圧が電解質の分解電圧に到逹する前に終了させる。
【0027】
ここで、「電圧変化率」は電極の充放電時の単位時間当たりの電圧の変化率であって、次のように示すことができる。
電圧変化率=|最終電圧−最初電圧|/時間
【0028】
電圧変化率は、電極を構成する活物質の表面積に反比例する値である。表面積が大きいほど、同一電位に到逹するまでかかる時間が長くなって、電圧変化率は小さくなり、表面積が小さいほど電圧変化率が大きくなる。
【0029】
正極と負極の表面積が等しい場合、正極の電圧変化率eと負極の電圧変化率eは等しくなる。正極の充電にかかる時間は、t=(E/e)になる。そして、正極は分解電圧に到逹する前に充電を終了させるので、負極が充電される時間は正極と同様にtになる。したがって、負極に充電される電位は次の通りである。
=e×t=E
【0030】
すなわち、負極と正極の表面積が等しいので、正極と負極の充電にかかる時間は同じであり、電圧変化率は等しく、充電される電気エネルギーも等しくEになり、セル電圧(cell voltage)は次の通りである。
cell=E+E=E×2
【0031】
図3は、正極の表面積が大きいセルの充電電位‐時間を示すグラフである。図3を参照すると、図2の特性を示すEDLCセルの負極は同じようにし、正極の表面積を大きくした場合の動作電位の変化を確認できる。正極の表面積を大きくした場合、正極の電位変化率は小さくなる。既存の正極の充電にかかる時間をtとすると、電圧変化率が小さくなるので、同じ電位に到逹するまでかかる時間がΔtだけ長くなる。正極の充電にかかる時間は次の通りである。
t1=t+Δt
【0032】
このとき、負極と正極は同時に充電されるので、負極の充電時間は正極の充電時間と等しい。したがって、負極の充電時間はt1になる。しかし、負極の表面積は変わらないので(図2と比べたとき)、t1時間の間充電される電位は図2の場合よりも大きくなる。すなわち、全体電位はΔt時間だけさらに充電され、ΔE=(e・Δt)だけ増加する。すなわち、セル電圧は次の通りである。
−1=e×(t+Δt)=E+ΔE
cell=E+E-1=E×2+ΔE
【0033】
正極の表面積を大きくするほど、正極の電圧変化率は負極の電圧変化率に比べて小さくなって、電解液の分解電位下で充電できる時間が長くなり、セル電圧を上昇させることができる。
【0034】
図4は、負極の表面積が小さいセルの充電電位‐時間グラフである。図4を参照すると、負極の表面積を小さくした場合、動作電位が大きくなる(図2と比べたとき)ことが分かる。負極の表面積を小さくすると、負極の電圧変化率が大きくなる。
e´=e+α
【0035】
すなわち、同じ時間の間充電されても、電圧変化率が大きいので、負極の最終充電電位値はより大きくなる。
−2=e´×t=(e+α)×t=E+ΔE
【0036】
したがって、セル電圧は、負極の電圧変化率がαだけ増加して次のようになる。
cell=E+E−2=E×2+ΔE
【0037】
すなわち、負極の表面積が小さくなるほど、負極の電圧変化率が大きくなって、負極の最終充電電位値が増加し、セル電圧がΔE=(α・t)だけ上昇する。
【0038】
図5は、正極の表面積が大きく、負極の表面積が小さいセルの充電電位−時間グラフである。図5を参照すると、正極の表面積が大きくなり、負極の表面積が小さくなるため、セル電圧が増加することが分かる。
【0039】
すなわち、正極の表面積が大きくなるため、正極の充電にかかる時間はΔtだけ増加し、負極の充電時間もΔtだけ増加する。
【0040】
また、負極の表面積が小さくなるので、負極の電圧変化率がαの分だけ増加する。
【0041】
したがって、負極の最終充電電位値は次の通りになる。
−3=(e+α)×(t+Δt)=E+α・t+e・Δt+α・Δt
=E+ΔE
【0042】
すなわち、セル電圧は次の通りである。
cell=E+E−3=E×2+ΔE
【0043】
すなわち、正極の表面積を増加させ、負極の表面積を減少させると、セル電圧が大きくなる。
【0044】
本実施形態の場合、電極の表面積を増加させるために、電極の厚さを同一に維持し、且つ電極物質の相対比率を調節して、使用する電解液の可用電圧を上昇させる。なお、電極の厚さは異なっていてもよい。
【0045】
電極の表面積を変化させるために、電極物質の充填密度(package density)を異なるようにする。すなわち、正極と負極の電極充電密度を異なるようにして、表面積と質量比を異なるようにすることができる。正極と負極の質量が変わることで、電極充電密度が変化し、それによって全体表面積が変化するようになる。
【0046】
そして、電極の表面積を変化させるために、電極物質の材料を変化させることができる。異なる表面積を有する電極物質を使用することで、同一厚さを有しても正極と負極の表面積が異なるようにすることができる。正極と負極の表面積が変わることで、正極と負極の電圧変化率を異なるようにして、セル電圧を増加させることができる。
【0047】
正極と負極の全体表面積が異なると、正極と負極の電圧変化率が変化する。すなわち、上述したように、同じ電極物質を使用したセルの場合、正極の質量が増加すると、正極の全体表面積が増加し、それによって正極の電圧変化率は減少する。また、負極の質量を減少させると、負極の全体表面積が減少し、それによって負極の電圧変化率が増加するようになる。
【0048】
一方、上述したように、正極の質量は負極の質量に比べて大きいことが好ましい。正極の質量を増加させるかまたは負極の質量を減少させることが好ましい。正極の質量を増加させ、且つ負極の質量を減少させることも好ましい。正極の質量を増加させることで正極の表面積を増加させ、それによって電圧変化率を減少させることができる。また、負極の質量を減少させて負極の表面積を減少させ、それによって電圧変化率を増加させることができる。
【実施例】
【0049】
正極と負極の質量比による充放電時の容量変化を確認するために実験を行った。負極の質量をそれぞれ正極質量の50%、100%、200%になるようにし、2.7Vと3.0Vで1000回充放電した後、容量変化を確認した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1を参照すると、正極の質量が負極の質量の50%である場合、60%以上容量が低下することが確認できた。
【0052】
正極の質量と負極の質量が同じである場合、2.5V範囲で1000回充放電したとき、5%未満で容量が低下がみられたが、2.7V範囲で1000回充放電した後は18%、3.0V範囲では23%の容量が低下した。
【0053】
正極の質量が負極の質量の200%である場合、3V範囲でも1000回充放電した後、5%以内で容量が低下した。
【0054】
実験を通じて、負極の質量が正極の質量に比べて相対的に大きい場合、充放電時に容量低下が大きいことを確認することができ、電圧が高くなるほど容量低下が大きいことが確認できた。また、正極の質量が負極の質量の2倍である場合、5%以内で容量が低下して、容量特性が大幅に向上した。
【0055】
本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。よって、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは当該技術分野の通常の知識を有する者には明らかであり、これも添付の特許請求の範囲に記載した技術的思想に属するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の正極及び負極と、
前記正極及び負極を分離するセパレーター(seperator)と、
前記正極、前記セパレーター及び前記負極が含浸される電解液と、
を含み、
前記正極及び負極は、表面積が互いに異なることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
【請求項2】
前記負極の表面積が前記正極の表面積より小さいことを特徴とする請求項1に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項3】
前記正極及び前記負極は互いに厚さが等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項4】
前記正極と前記負極は充放電時に電圧変化率が互いに異なることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項5】
前記正極の充放電時の電圧変化率が前記負極の充放電時の電圧変化率より小さいことを特徴とする請求項4に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項6】
前記正極と前記負極は質量および厚さの少なくとも一方が互いに異なることを特徴とする請求項1または2に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項7】
前記正極の質量が前記負極の質量より大きいことを特徴とする請求項6に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項8】
前記正極と前記負極は充填密度(package density)が互いに異なることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項9】
前記正極と前記負極は互いに異なる電極物質で構成されることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の電気二重層コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate