説明

電気光学装置および電子機器

【課題】携帯電話など薄型の電子機器に対して、放熱構造を組み込んだ両面表示パネルを実現することは困難であった。
【解決手段】電気光学装置100では、第1の表示パネルD1と第2の表示パネルD2との間に空隙部を形成し、形成した空隙部に熱吸収のための冷却媒体を流すことによって、両方の表示パネルに発生する熱を同時に放熱する。基台Kには、空隙部に冷却媒体を循環して流すための循環手段が構成されている。すなわち、空隙部に冷却媒体を流入させるためのポンプ30、空隙部から流出する冷却媒体が吸熱した熱を放熱するための放熱装置40を備え、ポンプ30がポンプ駆動回路20によって駆動されることによって、冷却媒体が、空隙部、放熱装置40、ポンプ30、空隙部の順に繰り返して循環するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置と、この電気光学装置を表示装置として備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子であるエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)を表示素子として形成した自発光型の表示パネルが、携帯電話などの薄型の電子機器において電気光学装置として多く使われるようになってきた。EL素子は、発光材料によって形成された発光層を陽極と陰極とで挟み、これらの電極間に電流を流すことによって発光層から発光光を射出するものである。従って、薄型の自発光型表示パネルを提供することができることから、薄型の電子機器で用いられるのである。
【0003】
このように、自発光型の表示パネルは、表示素子に電流を流して発光させるものであるが、流す電流が総て光エネルギーに変換されずに通常少なからず発熱する。すると、この発熱によって表示パネルの温度が上昇し、表示素子の寿命が短くなってしまうという不具合が生じることがある。特に、表示パネルが薄くなると、表示パネルが蓄熱できる熱容量が小さくなるために、表示素子の発熱量が小さくても温度上昇が大きくなってしまう虞がある。
【0004】
そこで、このような自発光型の表示パネルにおいて、表示パネルに生ずる熱を放熱して温度上昇を抑制する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、プラズマディスプレイパネル(PDP)の背面に金属パイプを取り付け、この金属パイプに循環する液体を流してパネルが発生する熱を放熱する放熱構造が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−179836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された放熱構造を用いて、例えば自発光素子として有機EL素子を用いた薄型の表示パネルが発生する熱を放熱する場合、表示パネルの厚さに比べて金属パイプの直径つまり厚さが相当に大きくなってしまうことが容易に想定される。この場合、表示パネルの総厚が結局大きくなってしまい、薄型の表示パネルを実現することが困難となってしまう。
【0007】
ところで、近年、例えば携帯電話などのように、筐体の表裏両面に表示パネルを備えた両面表示機能を備えた電子機器が市場に登場している。このような両面表示機能を備えた電子機器において、表裏それぞれの表示パネルに特許文献1に開示された放熱構造を形成した場合、表裏面のそれぞれにおいて表示パネルの総厚が大きいことから、両面表示部分における電子機器の厚さは相当に大きくなってしまうことになる。従って、携帯電話など薄型の電子機器に対して、放熱構造を備えた両面表示パネルを実現することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]発光する表示素子がそれぞれ形成された第1の表示パネルと第2の表示パネルとを有する電気光学装置であって、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとが対向するように配置されて形成された空隙部と、前記空隙部に流体を循環して流す流体循環手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、放熱構造をそれぞれの表示パネル毎に形成することなく、2つの表示パネルの間に形成した空隙部に流体を流すことによって同時に吸熱冷却することができる。従って、表示パネルを重ねて配置することによって両面表示を可能とするように構成された表面表示部分の厚さが厚くならないように抑制することができる。この結果、両面表示部分が薄い電子機器を実現することができる。
【0011】
[適用例2]上記電気光学装置であって、前記表示素子は、前記第1の表示パネルを構成する第1の基板の一方の面、および前記第2の表示パネルを構成する第2の基板の一方の面に、それぞれ形成され、前記空隙部は、前記第1の基板の前記表示素子が形成されていない他方の面と、前記第2の基板の前記表示素子が形成されていない他方の面とが、対向するように配置されて形成されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、発光する表示素子が形成された2枚の基板を流体によって同時に吸熱冷却することができるので、表示素子が発生する熱を効果的に放熱することができる。
【0013】
[適用例3]上記電気光学装置であって、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとを保持する基台を備え、前記流体循環手段は、前記基台に設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、両面表示を行う表示パネルにおいて、それぞれの表示を行う表示素子が形成された2枚の表示パネルを保持する基台に、流体循環手段が設けられているので、表示パネルは流体循環手段と常に一体化していることになる。この結果、別途表示パネルの放熱手段を設ける必要がないので、電気光学装置を単独で表示機器として使用するなど扱いが容易になる。
【0015】
[適用例4]上記電気光学装置であって、前記空隙部は、少なくとも前記第1の表示パネルまたは前記第2の表示パネルのいずれかに形成された凹部によって形成され、前記流体が流れる流路であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、空隙部を表示パネルの総厚内で形成することができるので、2つの表示パネルを互いに当接するように対向配置しても、両面表示部分の総厚の増加を抑制した電気光学装置を得ることができる。
【0017】
[適用例5]上記電気光学装置であって、前記空隙部は、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルの間に挿入したスペーサによって前記流体が流れる流路が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、空隙部をスペーサで形成するので、空隙部の間隔を適切かつ均一に形成することができる。従って、基板全体を略均一に流体によって冷却することができる。
【0019】
[適用例6]上記電気光学装置であって、前記スペーサは、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとが対向するそれぞれの面よりも、高い熱伝導性を有する材料で形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、表示素子が発生する熱を熱伝導性の良いスペーサによって表示パネル全体に均一に分散することができるので、基板全体を略均一に流体によって冷却することができる。
【0021】
[適用例7]上記電気光学装置であって、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとが対向するそれぞれの面のうち、少なくとも一方の面には、当該一方の面よりも高い熱伝導性を有する材料からなる部材層が形成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、表示パネルが対向する面における熱伝導性が向上することから、表示素子が発生する熱を表示パネル全体に素早く分散することができるので、基板全体を略均一に流体によって冷却することができる。
【0023】
[適用例8]上記電気光学装置であって、前記表示素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
【0024】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、発熱を伴う表示素子であることから、上記適用例に示した構成を有する電気光学装置において、表示パネル全体において表示素子の温度を略均一に冷却することが可能となる。この結果、発光寿命が短くなるのを抑制することができる。
【0025】
[適用例9]上記電気光学装置を表示装置として備えた電子機器。
【0026】
上記電気光学装置は、2つの表示パネルを流体によって同時に吸熱冷却することができるので、放熱構造をそれぞれの表示パネル毎に形成する必要がない。従って、上記電気光学装置を表示装置として備えることによって、両面表示を行うことができるとともに、両面表示部分における厚さが大きくなることを抑制した電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。図1は、本実施形態の電気光学装置100の構成概要を示した説明図である。図示するように、電気光学装置100は、第1の表示パネルD1と、第2の表示パネルD2と、各表示パネルを保持するための基台Kとから構成されている。なお、以降の説明において用いる図面は、説明のために必要に応じて誇張して図示している場合もあり、必ずしも実際の大きさや長さを示すものでないことは言うまでもない。
【0028】
第1の表示パネルD1は、第1の基板P1と第1のカラーフィルタとから構成され、第1の基板P1の一端部に設けられた図示しない入力端子に表示信号が入力されると、第1の基板側から第1のカラーフィルタ側に向かって光が射出される第1の表示部を有している。同じく、第2の表示パネルD2は、第2の基板P2と第2のカラーフィルタとから構成され、第2の基板P2の一端部に設けられた図示しない入力端子に表示信号が入力されると、第2の基板側から第2のカラーフィルタ側に向かって光が射出される第2の表示部(不図示)を有している。
【0029】
第1の表示パネルD1と第2の表示パネルD2は、第1の基板P1と第2の基板P2との間で空隙部が形成されるように対向配置され、更にこの空隙部を形成した状態で基台Kに挿入されて保持される。この結果、電気光学装置100は、第1の表示部と第2の表示部とが互いに反対方向に光が射出される表示部となることから、所謂両面表示部分を構成する。
【0030】
図2を用いて、更に詳しく電気光学装置100を説明する。図2は、電気光学装置100の全体構成を示す模式図である。第1の表示パネルD1は、図中吹き出し部に示したように、第1の基板P1の一方の面上に、順に反射層、絶縁層、陽極、有機EL素子、陰極が積層形成されて表示素子が形成されている。従って、第1の表示パネルD1は、陽極と陰極との間に電流が流れることによって発光した有機EL素子の発光光が、反射層で反射され光透過性を有する材料で形成された第1のカラーフィルタ側へ射出する所謂トップエミッション方式の有機ELパネルである。本実施形態では、有機EL素子は白色光を発光する。そして、発光した白色光は、第1のカラーフィルタの透過に際して画素毎に所定の色に変更され、所定のカラー画像を第1の表示部に表示する。なお、本実施形態では第2の表示パネルD2も、第1の表示パネルD1と同様な構成である。
【0031】
さて、このような構成を有する第1の表示パネルD1と第2の表示パネルD2において、有機EL素子が発光すると、発光に伴って熱が発生する。このとき、両面表示を行うべく第1の表示パネルD1と第2の表示パネルD2が同時に発光すると、第1の表示パネルD1と第2の表示パネルD2は、ともに発熱するため、互いに対向配置されている第1の基板P1側および第2の基板P2側からは、表示パネルD1,D2が発生する熱を放熱することが困難となってしまう。従って、有機EL素子の温度が上昇して、有機EL素子の寿命が短くなるという不具合が生じることになる。
【0032】
そこで、本実施形態の電気光学装置100では、対向配置された第1の基板P1と第2の基板P2との間に空隙部を形成し、形成した空隙部に熱吸収のための冷却媒体を流すことによって、第1の表示パネルD1と第2の表示パネルD2に発生する熱を同時に放熱する。なお、図2では、説明のため空隙部を相当な間隔を有して図示しているが、実際には空隙部の形成方法によって定まる形状を有する。この空隙部の形成方法については後述する。
【0033】
基台Kには、空隙部に冷却媒体を循環して流すための循環手段が構成されている。すなわち、空隙部に冷却媒体を流入させるためのポンプ30、空隙部から流出する冷却媒体が吸熱した熱を放熱するための放熱装置40を備え、ポンプ30がポンプ駆動回路20によって駆動されることによって、冷却媒体が、空隙部、放熱装置40、ポンプ30、空隙部の順に繰り返して循環するように構成されている。
【0034】
冷却媒体は、例えばエチレングリコールや油、あるいは水(純水)や空気などが用いられる。もとより、熱吸収が可能な流体(液体あるいは気体)であれば何でもよい。ポンプ30は、例えばダイヤフラムポンプや小型のマイクロポンプなど冷却媒体の種類や循環手段のスペースに適したポンプを使用可能である。なお、冷却媒体が気体の場合は、ポンプ30は送風ファンであってもよい。また、放熱装置40は、図示しない放熱フィンやペルチェ素子によって循環流路を流れる冷却媒体の熱を放熱するように形成されている。
【0035】
本実施形態では、画像データから表示パネルD1,D2の表示素子を発光させる表示信号を生成する表示信号生成回路10を基台Kに有し、この表示信号の出力に呼応してポンプ駆動回路20がポンプ30を駆動するものとする。従って、表示パネルD1もしくは表示パネルD2の少なくとも一方において表示素子(有機EL素子)が発光して表示を行っている間、冷却媒体が循環するように制御される。
【0036】
次に、空隙部の形成方法について、2つの実施例を挙げて説明する。第1実施例は、表示パネルに形成した凹部によって空隙部を形成する方法、第2実施例は、表示パネル間に挿入するスペーサによって空隙部を形成する方法である。
【0037】
(第1実施例)
図3は、表示パネルを構成する基板について、凹部を形成した状態を示す斜視図である。本実施例では一例として第2の表示パネルを構成する第2の基板P2について、表示素子が形成された面(図中裏面側)と反対側の面に凹部を形成する。
【0038】
第2の基板P2は、本実施例では、第2の表示パネルD2がトップエミッション方式の有機ELパネルであることから、光透過性を有しないセラミックや樹脂を材料として形成されているものとする。もとより、ガラスなどの光透過性を有する材料で形成されていても差し支えない。従って、このような材料に対してエッチング可能なエッチング液を用いてマスクエッチングを行い、所定の形状を呈する凹部を形成する。本実施例では、凹部は、図示するように葛折れの形状に形成され、その両端が第2の基板P2の端部まで形成されている。そして、図示しないが、第1の基板P1と第2の基板P2とを当接させた状態で接着等によって固着することによって、凹部は空隙部として形成される。形成された空隙部は、その両端のうちの一方から冷却媒体が流入し、他方から冷却媒体が流出する流路となる。
【0039】
凹部は、第2の基板P2の厚さT1よりも小さい寸法T2の深さに形成される。凹部の深さはできるだけ深いほうが流れる冷却媒体の流量が多くなることから、第2の基板P2の剛性や、第2の基板面に形成する表示素子などの機能層に影響しない範囲において、寸法T2はできるだけ大きい方が好ましい。また葛折れの形状における平面幅や、葛折れの形状が形成される平面領域も、冷却能力を大きくするために可能な限り広い方が好ましい。
【0040】
なお、本実施例では、葛折れの形状は図3に示したものに限るものでないことは勿論である。また、凹部を第2の基板P2に形成することとしたが、第1の基板P1に形成することとしてもよい。更に第1の基板P1と第2の基板P2の両方に形成することとしてもよい。両方に凹部を形成すれば、冷却能力を更に、大きくすることが可能となる。
【0041】
(第2実施例)
図4は、表示パネルを構成する基板に対してスペーサを固着して、凹部つまり空隙部を形成する様子を示す斜視図である。本実施例では、一例として、最初に第2の表示パネルD2を構成する第2の基板P2について、表示素子が形成された面(図中裏面側)と反対側の面に、最初にスペーサを固着して凹部を形成するものとして説明する。もとより、第1の表示パネルを構成する第1の基板P1について、表示素子が形成された面と反対側の面に最初にスペーサを固着して凹部を形成するものとしてもよい。
【0042】
具体的には、図4(a)に示すように、いずれも厚さT3を有する板状の部材であって、それぞれ櫛歯状の形状を有するスペーサSP1とスペーサSP2とを、接着剤等によって第2の基板P2に固着する。この結果、図4(b)に示すように、図3と同様な葛折れの形状を呈する凹部が第2の基板P2の面上に形成される。このとき凹部は、その両端が第2の基板P2の端部まで形成される。そして、図示しないが、第1の基板P1とスペーサSP1,SP2とを当接させた状態でこれらを接着等によって固着することによって、凹部は空隙部として形成される。形成された空隙部は、その両端の一方から冷却媒体が流入し、他方から冷却媒体が流出する流路となる。
【0043】
凹部は、スペーサSP1,SP2の厚さT3分の深さとなる。凹部の深さはできるだけ深いほうが流れる冷却媒体の流量が多くなることから、厚さT3はできるだけ大きい方が好ましい。また葛折れの形状における平面幅や、葛折れの形状が形成される平面領域も、冷却能力を大きくするために可能な限り広い方が好ましい。従って、スペーサSP1,SP2の厚さT3は、第1の表示パネルD1と第2の表示パネルD2とによって構成される両面表示パネルに許容される総厚から特定される最大厚さとすることが好ましい。また、スペーサSP1,SP2の平面幅の寸法は、スペーサSP1,SP2を物理的に形成可能な範囲で、最小幅とすることが好ましい。
【0044】
なお、本実施例では、スペーサSP1,SP2は、熱伝導性の良い金属板(例えば銅板やニッケル板)を材料とし、化学的なエッチングや機械的なプレスによって形成されるものとする。金属板は、冷却媒体に対して耐食性を有する材料であることが好ましい。こうすれば、熱伝導性の良いスペーサによって、発生した熱を表示パネル全体に分散することができるので、表示パネル全体の温度を略均一にすることができる。なお、金属板以外に樹脂板やガラス板など金属板以外の材料を用いても差し支えない。
【0045】
また、本実施例では、第2の表示パネルD2を構成する第2の基板P2について、スペーサSP1,SP2を固着して凹部を形成することとしたが、第1の基板P1にスペーサSP1,SP2を固着して凹部を形成することとしてもよい。
【0046】
以上、本発明について、実施形態および実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態および実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0047】
(第1変形例)
上記実施例において、少なくとも第1の基板P1および第2の基板P2のいずれかにおいて、表示素子が形成される面と反対側の面に金属層を形成することとしてもよい。形成する金属層の材料は、熱伝導性の良い材料であることが好ましいことは言うまでもない。こうすれば、形成される金属層は第1の基板P1あるいは第2の基板P2の材料に比べて熱伝導量が大きくなり、形成された金属層を介して、発生する熱を表示パネル全体に素早く分散することができる。この結果、空隙部を流れる冷却媒体全体に放熱することができるので、放熱量が多くなり、表示パネルの温度を均一に素早く低下させることが期待できるからである。
【0048】
本変形例を、上記第1実施例に適用した場合を図5に、上記第2実施例に適用した場合を図6に、それぞれ模式図として示した。
【0049】
まず、第1実施例に適用した場合は、図5に示すように、第2の基板P2に形成した凹部の少なくとも内面に金属層を形成する。具体的には、金属層を形成する材料(銅あるいはニッケルなど)をスパッタもしくは蒸着によって凹部内面に付着させて形成する。なお、本変形例において、凹部を第1の基板P1にも形成する場合は、第1の基板P1にも金属層を形成することとしてもよい。もとより、凹部を第1の基板P1に形成しない場合であっても、第1の基板P1において表示素子が形成された面と反対側の面に金属層を形成することとしてもよい。こうすれば、空隙部の内面全面に金属層が形成されることになるので、冷却能力を更に大きくすることが可能となる。
【0050】
次に、第2実施例に適用した場合は、図6に示すように、第1の基板P1において表示素子が形成された面と反対側の面に金属層を、第2の基板P2において表示素子が形成された面と反対側の面に金属層を、それぞれ形成する。具体的には、金属層を形成する材料(銅あるいはニッケルなど)をスパッタもしくは蒸着によってそれぞれの基板面上に付着させて形成する。あるいは金属板を固着して形成する。こうすれば、金属で形成されたスペーサSP1,SP2に対して第1の基板P1と第2の基板P2とを固着することによって形成される空隙部は、内面全面が金属で覆われることになるので、冷却能力を更に大きくすることが可能となる。もとより、金属層は少なくとも第1の基板P1もしくは第2の基板P2のどちらか一方に形成されていてもよい。この場合でも、冷却能力を高めることができる。
【0051】
(第2変形例)
上記実施例では、凹部の形状を葛折れ形状として説明したが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、図7に示した形状としてもよい。図7は、第2の基板P2の表示素子が形成された面と反対側の面に、エッチング等によって所定の深さを有する凹部(図中網掛け部)が形成された状態を示した平面図である。
【0052】
冷却媒体の流路に沿って凹部を説明する。図示するように、図面上ほぼ中央下部から冷却媒体は流入し、流路Aを経由して多数に分岐して形成された流路Bに流入する。そして流路Bを流れた冷却媒体は流路Cによって合流し、その後、左右に分かれて形成された流路E1と流路E2から流出する。このように形成することによって、葛折れ形状の流路に比べて流入から流出までの流路長が短くなることから、放熱効果が向上することが期待できる。また、流路Bによって冷却媒体が第2の表示部を均等に流れることが期待できることから、第2の表示部の熱を均等に放熱して冷却することができる可能性が高くなる。
【0053】
(第3変形例)
上述したように、本発明について電気光学装置100を実施形態として説明したが、実施形態として電気光学装置100を備えた電子機器としてもよい。電子機器の一例として、例えば、両面表示部を有する携帯電話としてもよい。もとより、携帯電話に限らず、両面表示部を有するパーソナルコンピュータや、テレビジョンとしてもよい。
【0054】
実施形態を携帯電話とした場合を図8に示した。図示するように、携帯電話は折れ曲がる2つの筐体部分によって構成され、一方の筐体部分KSに電気光学装置(不図示)が備えられている。そして2つの筐体部分が重なった時の内面に、第1の表示部が、その反対面に第2の表示部が配置され、両面表示パネルを形成している。もとより、流体循環手段は表示パネルと一体に構成され、同じく筐体部分KSに組み込まれている。
【0055】
本変形例の携帯電話において、組み込まれた電気光学装置は両面表示が可能であって且つ上述したように総厚が厚くなることが抑制されていることから、電気光学装置が組み込まれた筐体部分KSの厚さTKは厚くならずに済む。従って、全体の厚さが抑制された携帯電話を提供することができる。
【0056】
(その他の変形例)
上記実施例では、第1の表示パネルD1、第2の表示パネルD2は、トップエミッション方式の有機ELパネルであるものとしたが、これに限らず、逆に発光光が基板側に射出されるボトムエミッション方式の有機ELパネルであってもよい。このとき、カラーフィルタに替わる板状部材によって、表示素子が覆われる構造を有する場合は、この板状部材に凹部を形成するようにすることが好ましい。
【0057】
また、上記実施例では、表示素子として有機EL素子を形成する場合を説明したが、自発光素子として機能するものであれば、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば無機EL素子であってもよい。更に、プラズマディスプレイPDPや、発光ダイオードLEDを表示素子としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態の電気光学装置の構成概要を示した説明図。
【図2】電気光学装置の全体構成を示す模式図。
【図3】表示パネルを構成する基板について、凹部を形成した状態を示す斜視図。
【図4】表示パネルを構成する基板に対してスペーサを固着して、凹部を形成する様子を示す斜視図で、(a)は固着前の状態、(b)は固着後の状態を示す。
【図5】第1変形例を第1実施例に適用した場合を示す説明図。
【図6】第1変形例を第2実施例に適用した場合を示す説明図。
【図7】第2変形例で、形成される凹部の状態を示した平面図。
【図8】実施形態が携帯電話の場合を示す説明図。
【符号の説明】
【0059】
10…表示信号生成回路、20…ポンプ駆動回路、30…ポンプ、40…放熱装置、100…電気光学装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光する表示素子がそれぞれ形成された第1の表示パネルと第2の表示パネルとを有する電気光学装置であって、
前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとが対向するように配置されて形成された空隙部と、
前記空隙部に流体を循環して流す流体循環手段と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記表示素子は、前記第1の表示パネルを構成する第1の基板の一方の面、および前記第2の表示パネルを構成する第2の基板の一方の面に、それぞれ形成され、
前記空隙部は、前記第1の基板の前記表示素子が形成されていない他方の面と、前記第2の基板の前記表示素子が形成されていない他方の面とが、対向するように配置されて形成されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置であって、
前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとを保持する基台を備え、
前記流体循環手段は、前記基台に設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記空隙部は、少なくとも前記第1の表示パネルまたは前記第2の表示パネルのいずれかに形成された凹部によって形成され、前記流体が流れる流路であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記空隙部は、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルの間に挿入したスペーサによって前記流体が流れる流路が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置であって、
前記スペーサは、前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとが対向するそれぞれの面よりも、高い熱伝導性を有する材料で形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記第1の表示パネルと前記第2の表示パネルとが対向するそれぞれの面のうち、少なくとも一方の面には、当該一方の面よりも高い熱伝導性を有する材料からなる部材層が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記表示素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の電気光学装置を表示装置として備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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