説明

電気光学装置および電子機器

【課題】ガスバリア性の高い狭額縁な電気光学装置を提供する。
【解決手段】電気光学装置100は、画素部100Aと、画素部100Aの外側に配置された配線106,107と、を有する素子基板101と、配線106,107上に形成された平坦化層104と、画素部100Aに形成された素子110を覆い、画素部100Aと平坦化層104との間の領域で素子基板101と接する第1無機封止層121と、第1無機封止層121を覆い、端部が平坦化層104の上面に配置された有機封止層122と、有機封止層122を覆い、平坦化層104の外側まで延在する第2無機封止層123と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜封止構造を備えた電気光学装置として、特許文献1に記載の電気光学装置が知られている。薄膜封止構造とは、有機EL素子などの水分や酸素に弱い素子をガスバリア性の高い1層又は複数層の薄膜で封止する構造である。特許文献1の電気光学装置では、素子が形成された画素部の全面を第1無機封止層、有機封止層および第2無機封止層からなる3層の封止層で封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−176756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1無機封止層および第2無機封止層は、素子基板上に酸化シリコンなどの無機膜を蒸着することにより形成される。そのため、素子基板上に電源線や信号線などによって形成された大きな凹凸が存在すると、その凹凸の部分でクラックなどの欠陥が発生し、ガスバリア性が低下する惧れがある。
【0005】
特許文献1の電気光学装置では、画素部の周囲に配置された配線の凹凸を低減するために、配線の上方全体を有機封止層で覆い、有機封止層上に第2無機封止層を形成している。有機封止層は、スクリーン印刷などの印刷技術で形成されるため、配線の凹凸を低減することが可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、有機封止層を配線の外側まで形成する必要があるので、そのぶん配線の外側に無駄な領域が生じる。有機封止層は、スクリーン印刷などの位置精度の粗い印刷技術で形成されるため、配線の外側には、1mm程度の領域を確保する必要があり、狭額縁化の妨げになる。
【0007】
本発明の目的は、ガスバリア性の高い狭額縁な電気光学装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気光学装置は、画素部と、前記画素部の外側に配置された配線と、を有する素子基板と、前記配線上に形成された平坦化層と、前記画素部に形成された素子を覆い、前記画素部と前記平坦化層との間の領域で前記素子基板と接する第1無機封止層と、前記第1無機封止層を覆い、端部が前記平坦化層の上面に配置された有機封止層と、前記有機封止層を覆い、前記平坦化層の外側まで延在する第2無機封止層と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、配線上に平坦化層が形成されているので、第1無機封止層と第2無機封止層に、配線の凹凸に起因したクラックなどの欠陥が発生しにくい。よって、ガスバリア性の高い電気光学装置が提供される。また、平坦化層の上面に有機封止層の端部が配置されているので、配線よりも外側に、有機封止層の製造マージンを考慮した無駄な領域を設ける必要がない。よって、狭額縁な電気光学装置が提供される。
【0010】
前記第1無機封止層は、前記平坦化層を覆い、前記平坦化層の外側まで延在して前記平坦化層の外側で前記素子基板と接しており、前記第2無機封止層は、前記平坦化層の上および前記平坦化層の外側において、前記第1無機封止層と接していてもよい。
【0011】
この構成によれば、画素部の側方を、第1無機封止層、第2無機封止層および平坦化層で3重に封止することができる。また、第1無機封止層および第2無機封止層に欠陥が発生し、平坦化層に水分や酸素が浸入したとしても、平坦化層の内周側(画素部側)に配置された第1無機封止層によって画素部への水分や酸素の浸入を抑制することができる。よって、ガスバリア性の高い電気光学装置が提供される。
【0012】
前記素子基板と対向する封止基板と、前記素子基板と前記封止基板との対向領域の周縁部に配置され、前記素子基板と前記封止基板とを接合するシール部と、を備え、前記素子基板の法線方向から見て前記シール部と重なる位置に、前記平坦化層の外周端部が配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、シール部を含めた画素部周辺の無駄な領域(額縁領域)を少なくすることができる。また、シール部によって第2無機封止層が補強されるので、第2無機封止層にクラックなどの欠陥が発生することが抑制される。よって、ガスバリア性の高い狭額縁な電気光学装置が提供される。
【0014】
前記平坦化層は、矩形の前記画素部の4辺に沿って閉じた枠状に形成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、画素部の4辺すべてについて高いガスバリア性を備えた電気光学装置が提供される。
【0016】
前記素子基板上には、前記配線を覆う金属酸化物からなる保護層が設けられ、前記平坦化層は、前記保護層を覆い、前記保護層と前記第1無機封止層とは接触しないように配置されていてもよい。
【0017】
金属酸化物は、耐薬剤性が高いため、配線の上方に形成して保護層として機能させる場合がある。しかし、金属酸化物は、透湿性が高いので、平坦化層と画素部に跨って連続的に形成された場合、平坦化層の内部に侵入した水分や酸素が金属酸化物(保護層)を介して画素部に侵入する惧れがある。そこで、本発明では、金属酸化物からなる保護層を平坦化層の形成領域内に収まるようにパターニングし、平坦化層と画素部に跨って配置されないようにした。この構成によれば、仮に平坦化層に水分や酸素が浸入しても、保護層を介して画素部にそのまま水分や酸素が浸入することが抑制される。よって、ガスバリア性の高い電気光学装置が提供される。
【0018】
前記素子は、画素電極と、前記画素電極上に配置され、流れる電流量に応じて発光する機能層と、前記機能層を挟んで前記画素電極の反対側に配置された対向電極と、を有し、前記第1無機封止層は、前記対向電極を覆い、前記対向電極の外側まで延在して前記対向電極と前記平坦化層との間で前記素子基板と接していてもよい。
【0019】
この構成によれば、特に水分や酸素に対して劣化しやすい有機EL装置において、高いガスバリア性を備えた狭額縁な構造を提供できる。
【0020】
前記画素部には、前記画素電極の形成位置に対応した開口部を有する隔壁層が設けられ、前記機能層は、前記開口部に配置され、前記対向電極は、前記隔壁層および前記機能層を覆い、前記隔壁層の外側まで延在して前記隔壁層と前記平坦化層との間で前記素子基板と接していてもよい。
【0021】
この構成によれば、機能層の側方が隔壁層、対向電極および第1無機封止層によって3重に封止されるので、ガスバリア性の高い電気光学装置が提供される。
【0022】
本発明の電子機器は、本発明の電気光学装置を備えている。
【0023】
この構成によれば、ガスバリア性の高い狭額縁な電気光学装置が備えられているため、長寿命で信頼性に優れた小型の電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の電気光学装置の平面図である。
【図2】図1のA−A′断面図である。
【図3】電気光学装置の等価回路図である。
【図4】第2実施形態の電気光学装置の断面図である。
【図5】電子機器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電気光学装置100の平面図である。電気光学装置100は、例えば、本発明の素子として有機EL素子を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。
【0026】
電気光学装置100は、複数の画素電極111がマトリクス状に形成された素子基板101を備えている。素子基板111には、複数の画素電極111の形成位置に対応した複数の開口部(図示略)を有する隔壁層103が形成されている。隔壁層103の開口部には、図示略の機能層が配置されており、機能層を挟んで画素電極111の反対側に対向電極113が対向配置されている。
【0027】
素子基板101において、複数の画素電極111がマトリクス状に配置される領域が画素部100Aである。画素部100Aの最外周部は、対向電極113が素子基板101と接触する最も画素部中央寄りの位置(本実施形態の場合は隔壁層103の最外周部)と一致している。対向電極113は、複数の画素電極111にわたって連続して形成されており、画素部100Aの全面を覆うように画素部100Aよりも広い面積で形成されている。
【0028】
画素部100Aの外側には、対向電極113と接続される対向電極用配線105が形成されている。対向電極用配線105は、画素部100Aの周囲を囲むように、矩形の画素部100Aの4辺に沿って閉じた枠状に形成されている。対向電極113は、隔壁層103と対向電極用配線105の素子基板101上で露出する部位全体を覆うように形成され、対向電極用配線105の外側で素子基板101と接している。
【0029】
対向電極113の外側には、電源線106や信号線などの対向電極用配線105以外の各種配線が形成された配線部100Bが設けられている。配線部100Bは、画素部100Aを囲むように枠状に設けられている。配線部100Bには、各種配線によって素子基板101上に形成された凹凸を平坦化する平坦化層104が形成されている。平坦化層104は、画素部100Aの4辺に沿って閉じた枠状に形成され、対向電極113と接触しないように対向電極113との間に隙間を空けて形成されている。
【0030】
平坦化層104と対向電極113の素子基板101上で露出する面には、第1無機封止層121、有機封止層122および第2無機封止層123からなる薄膜封止層120が形成されている。また、薄膜封止層120の上方には封止基板102が配置され、薄膜封止層120と封止基板102によって、素子基板101の表面全体が封止されている。
【0031】
図2は、図1のA−A′断面図である。
【0032】
電気光学装置100は、画素部100Aと、画素部100Aの周囲に配置された配線部100Bと、を有する素子基板101を備えている。素子基板101は、ガラスやプラスチックなどからなる基板本体と、基板本体上に形成されるスイッチング用TFT、各種回路および層間絶縁膜などを含めた構成をいい、画素電極111や画素電極111よりも上層側(基板本体とは反対側)に配置される層は含まない。
【0033】
素子基板101の画素部100Aには、ITO(インジウム錫酸化物)などからなる複数の画素電極111が形成されている。また、複数の画素電極111を覆って、複数の画素電極111の形成位置に対応した複数の開口部103aを有する隔壁層103が形成されている。画素電極111は、隔壁層103の開口部103aの底面に露出している。
【0034】
隔壁層103の外側には、配線部100Bに形成された電源線106や信号線107などの各種配線、あるいは、素子基板101の内部(層間絶縁膜を介して画素電極111よりも下層側)に形成された各種配線によって形成された素子基板101表面の凹凸を覆って平坦化層104が形成されている。隔壁層103と平坦化層104は、同一材料によって形成することができる。例えば、素子基板101の全面にアクリル樹脂を塗布し、これをパターニングすることにより、隔壁層103と平坦化層104とが一括で形成される。
【0035】
配線部100Bには、電源線106や信号線107以外の配線108,109も存在するが、平坦化層104は、これらの配線の全てを覆っている必要はない。平坦化層104は、少なくとも画素部100Aの近傍に形成された配線や凹凸を覆っていればよい。平坦化層104の外周端部(画素部100Aとは反対側の端部)は、配線部100Bの外周端部(配線部100Bに形成された各種配線のうち最外周部に配置された配線の外周端部)と同じ位置或いは配線部100Bの外周端部よりも画素部100Aに近い位置に配置されていればよい。
【0036】
隔壁層103の開口部103aには、有機発光層を含む機能層112が配置されている。また、機能層112を覆って対向電極113が形成されている。画素電極111と機能層112と対向電極113によって、有機EL素子110が形成されている。
【0037】
対向電極113は、機能層112を挟んで画素電極111の反対側に対向して配置され、複数の画素電極111にわたって連続して設けられている。対向電極113は、隔壁層103と機能層112と平坦化層104の素子基板101上で露出する部位全体を覆い、隔壁層103の外側まで延在して隔壁層103と平坦化層104との間で素子基板101と接している。対向電極113の端部は、平坦化層104と接触しないように、平坦化層104の内周端部(画素部100A側の端部)との間に隙間を空けて形成されている。
【0038】
隔壁層103と平坦化層104の間の素子基板101上には、Al(アルミニウム)などからなる対向電極用配線105が形成されている。対向電極113は、隔壁層103の外側において対向電極用配線105と接触して接続されている。対向電極用配線105は、素子基板101の表面の絶縁層(図示略)に埋め込まれている。対向電極用配線105と対向電極113との接続部は、この絶縁層の厚み方向に壁状に形成され、絶縁層を透過する水分や酸素の浸入が抑制されるようになっている。
【0039】
機能層112は、画素電極111と対向電極113との間に流れる電流量に応じて発光する。対向電極113は、例えば、10nmないし20nmの厚みのMgAg(マグネシウム銀合金)の薄膜で形成されている。対向電極113は機能層112で発光した光Lに対して高い透過率を有し、機能層112で発光した光Lは、概ね対向電極113を透過して素子基板101とは反対側から射出される。
【0040】
対向電極113と平坦化層104を覆って第1無機封止層121が形成されている。第1無機封止層121は、酸化シリコンや窒化シリコンなどの透明性の高い無機材料で形成されている。第1無機封止層121は、対向電極113の素子基板101上で露出する部位全体(すなわち有機EL素子110の素子基板101上で露出する部位全体)を覆い、対向電極113の外側まで延在して対向電極113と平坦化層104との間で素子基板101と接している。また、第1無機封止層121は、平坦化層104の素子基板101上で露出する部位全体を覆い、平坦化層104の外側まで延在して平坦化層104の外側で素子基板101と接している。
【0041】
図2では、第1無機封止層121は、素子基板101の端部まで形成されているが、第1無機封止層121は必ずしも素子基板101の端部まで形成されている必要はない。
【0042】
第1無機封止層121を覆って有機封止層122が形成されている。有機封止層122は、アクリル樹脂などの有機材料、または、有機材料と無機材料との複合材料(ハイブリッド材料)によって形成されている。有機封止層122は、第1無機封止層121の素子基板101上で露出する部位を覆い、端部が平坦化層104の上面に配置されている。
【0043】
有機封止層122を覆って第2無機封止層123が形成されている。第2無機封止層123は、酸化シリコンや窒化シリコンなどの透明性の高い無機材料で形成されている。第2無機封止層123は、有機封止層122の素子基板101上で露出する部位全体を覆い、平坦化層104の外側まで延在している。また、第2無機封止層123は、平坦化層104の上面および側面ならびに平坦化層104の外側の領域において、第1無機封止層121と接している。
【0044】
以上のように構成された素子基板101の外周部には、エポキシ樹脂などからなるガスバリア性の高いシール部125が形成されている。シール部125の内側には、エポキシ樹脂などからなる封止樹脂層124が充填されている。シール部125および封止樹脂層124を挟んで素子基板101上には封止基板102が対向配置され、シール部125によって素子基板101と封止基板102とが接合されている。
【0045】
シール部125は、素子基板101と封止基板102との対向領域の周縁部に沿って閉じた枠状に形成されている。素子基板101の法線方向から見てシール部125と重なる位置には、平坦化層104の外周端部が配置されている。
【0046】
図3は電気光学装置100の等価回路図である。
【0047】
電気光学装置100は、複数の走査線117と、各走査線117に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線118と、各信号線118に並列に延びる複数の電源線106とからなる配線構造を備えている。
【0048】
走査線117と信号線118との各交点付近には、赤色表示を行う赤色サブ画素PR、緑色表示を行う緑色サブ画素PGおよび青色表示を行う青色サブ画素PBが形成されている。赤色サブ画素PR、緑色サブ画素PGおよび青色サブ画素PBは走査線117の延在方向に沿って互いに隣接して配置されており、赤色サブ画素PR、緑色サブ画素PGおよび青色サブ画素PBからなる3つのサブ画素によって、カラー表示を行う1つの画素が形成されている。画素部には、このような構成の複数の画素が走査線117の延在方向および信号線118の延在方向に沿ってマトリクス状に配置されている。
【0049】
信号線118には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路130が接続されている。走査線117には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路140が接続されている。
【0050】
赤色サブ画素PR、緑色サブ画素PGおよび青色サブ画素PBの各々には、走査線117を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT114と、スイッチング用TFT114を介して信号線118から供給される画像信号を保持する保持容量116と、保持容量116によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT115と、駆動用TFT115を介して電源線106に電気的に接続したときに電源線106から駆動電流が流れ込む画素電極111と、画素電極111と対向電極113との間に挟み込まれた機能層112と、が設けられている。
【0051】
電気光学装置100では、走査線117が駆動されてスイッチング用TFT114がオン状態になると、そのときの信号線118の電位が保持容量116に保持され、保持容量116の状態に応じて、駆動用TFT115のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT115のチャネルを介して、電源線106から画素電極111に電流が流れ、さらに機能層112を介して対向電極113に電流が流れる。機能層112は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0052】
上記構成の電気光学装置100によれば、次のような作用効果が奏される。
【0053】
(1)配線部100B上に平坦化層104が形成されているので、第1無機封止層121と第2無機封止層123に、配線106,107の凹凸に起因したクラックなどの欠陥が発生しにくい。よって、ガスバリア性の高い電気光学装置100が提供される。また、平坦化層104の上面に有機封止層122の端部が配置されているので、配線107よりも外側に、有機封止層122の製造マージンを考慮した無駄な領域を設ける必要がない。よって、狭額縁な電気光学装置100が提供される。
【0054】
(2)画素部100Aの側方が、第1無機封止層121、第2無機封止層123および平坦化層104で3重に封止されるため、ガスバリア性の高い電気光学装置100が提供される。仮に第1無機封止層121および第2無機封止層123に欠陥が発生し、平坦化層104に水分や酸素が浸入したとしても、平坦化層104の内周側(画素部100A側)に配置された第1無機封止層121によって画素部100Aへの水分や酸素の浸入が抑制される。そのため、水分や酸素の浸入が画素部100Aの端部および平坦化層104の端部で2重に抑制され、非常に高いガスバリア性が得られる。
【0055】
(3)平坦化層104の画素部100A側の端部が、配線107よりも画素部100Aに近い位置に配置されているので、有機封止層122の端部の位置を画素部100Aに近づけることができる。よって、狭額縁な電気光学装置100が提供される。
【0056】
(4)素子基板101の法線方向から見てシール部125と重なる位置に、平坦化層104の外周端部が配置されているので、シール部125を含めた画素部100A周辺の額縁領域を少なくすることができる。また、シール部125によって第2無機封止層123が補強されるので、第2無機封止層123にクラックなどの欠陥が発生することが抑制される。よって、ガスバリア性の高い狭額縁な電気光学装置100が提供される。
【0057】
(5)平坦化層104は、矩形の画素部100Aの4辺に沿って枠状に形成されているので、画素部100Aの4辺すべてについて高いガスバリア性を備えた電気光学装置100が提供される。
【0058】
(6)機能層112の側方が隔壁層103、対向電極113および第1無機封止層121によって3重に封止されるので、ガスバリア性の高い電気光学装置100が提供される。
【0059】
(7)対向電極用配線105が、画素部100Aの4辺に沿って形成されているので、画素部100Aの4辺から対向電極113全体に均一に電荷が供給される。そのため、電圧降下によって画素部100Aの面内で明るさむらが発生する惧れが少ない。また、対向電極用配線105と対向電極113との接続は、電気的接続がなされる強固な接続であるため、対向電極113によるガスバリア性を補強することができる。対向電極用配線105は、素子基板101の表面の絶縁層(図示略)に埋め込まれているため、対向電極用配線105と対向電極113との接続部が絶縁層の厚み方向に壁状に形成され、絶縁層を透過する水分や酸素の浸入を抑えることができる。
【0060】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の電気光学装置200の断面図である。図4は、図1のA−A′断面の他の構成例を示す図である。電気光学装置200において、第1実施形態の電気光学装置100と共通する構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
電気光学装置200において、第1実施形態の電気光学装置100と異なる点は、素子基板101上に、配線部100Bに形成された配線(電源線151や信号線152など)の上方を覆う金属酸化物、例えばITO(インジウム酸化物)からなる保護層150が設けられ、保護層150を覆って平坦化層104が形成されている点である。
【0062】
保護層150は、例えば、画素電極111と同一材料で形成されている。例えば、素子基板101の全面にITOを形成し、これをパターニングすることにより、画素電極111と保護層150とが一括で形成される。
【0063】
保護層150は、平坦化層104と隔壁層103との間に跨らないように形成されている。平坦化層104は、保護層150の素子基板101上で露出する部位全体を覆って形成されており、保護層150と第1無機封止層121とは接触しないように配置されている。このような構成を採用することにより、以下のような作用効果が奏される。
【0064】
すなわち、金属酸化物は、耐薬剤性が高いため、下層の配線151,152の上方に形成して保護層150として機能させる場合がある。しかし、金属酸化物は、透湿性が高いので、平坦化層104と画素部100Aに跨って連続的に形成された場合、平坦化層104の内部に侵入した水分や酸素が金属酸化物(保護層)を介して画素部100Aに侵入する惧れがある。そこで、本実施形態の電気光学装置200では、金属酸化物からなる保護層150を平坦化層104の形成領域内に収まるようにパターニングし、平坦化層104と画素部100Aに跨って配置されないようにした。この構成によれば、仮に平坦化層104に水分や酸素が浸入しても、保護層150を介して画素部100Aにそのまま水分や酸素が浸入することが抑制される。よって、ガスバリア性の高い電気光学装置200が提供される。
【0065】
[電子機器]
図10は、本発明の電気光学装置を備える電子機器の一例を示す模式図である。
【0066】
電子機器300は、例えば携帯電話機300であって、本体部301と、本体部301に開閉可能に設けられた表示体部302とを有する。表示体部302の内部には表示装置303が配置されており、電話通信に関する各種表示が表示画面304において視認可能となっている。本体部301には操作ボタン305が配列されている。
【0067】
表示体部302の一端部には、アンテナ306が伸縮自在に取り付けられている。表示体部302の上部に設けられた受話部307の内部には、スピーカ(図示略)が内蔵されている。本体部301の下端部に設けられた送話部308の内部には、マイク(図示略)が内蔵されている。
【0068】
ここで、表示装置303としては、例えば第1実施形態に示した電気光学装置が用いられている。そのため、表示装置303はガスバリア性の高い狭額縁な表示装置となる。よって、電子機器300は、長寿命で信頼性に優れた小型の電子機器となる。
【0069】
なお、本発明の電子機器としては、携帯電話機以外にも、例えば電子ブック、パーソナルコンピュータ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、テレビ電話、頭部装着型ディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)などを挙げることができ、これらの表示部として本発明の電気光学装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100…電気光学装置、100A…画素部、100B…配線部、101…素子基板、102…封止基板、103…隔壁層、103a…開口部、104…平坦化層、105…対向電極用配線、106…電源線(配線)、107…信号線(配線)、110…有機EL素子(素子)、111…画素電極、112…機能層、113…対向電極、121…第1無機封止層、122…有機封止層、123…第2無機封止層、125…シール部、150…保護層、151…電源線(配線)、152…信号線(配線)、200…電気光学装置、300…電子機器(携帯電話機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素部と、前記画素部の外側に配置された配線と、を有する素子基板と、
前記配線上に形成された平坦化層と、
前記画素部に形成された素子を覆い、前記画素部と前記平坦化層との間の領域で前記素子基板と接する第1無機封止層と、
前記第1無機封止層を覆い、端部が前記平坦化層の上面に配置された有機封止層と、
前記有機封止層を覆い、前記平坦化層の外側まで延在する第2無機封止層と、を備えている電気光学装置。
【請求項2】
前記第1無機封止層は、前記平坦化層を覆い、前記平坦化層の外側まで延在して前記平坦化層の外側で前記素子基板と接しており、
前記第2無機封止層は、前記平坦化層の上および前記平坦化層の外側において、前記第1無機封止層と接している請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記素子基板と対向する封止基板と、
前記素子基板と前記封止基板との対向領域の周縁部に配置され、前記素子基板と前記封止基板とを接合するシール部と、を備え、
前記素子基板の法線方向から見て前記シール部と重なる位置に、前記平坦化層の外周端部が配置されている請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記平坦化層は、矩形の前記画素部の4辺に沿って閉じた枠状に形成されている請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記素子基板上には、前記配線を覆う金属酸化物からなる保護層が設けられ、
前記平坦化層は、前記保護層を覆い、
前記保護層と前記第1無機封止層とは接触しないように配置されている請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記素子は、画素電極と、前記画素電極上に配置され、流れる電流量に応じて発光する機能層と、前記機能層を挟んで前記画素電極の反対側に配置された対向電極と、を有し、
前記第1無機封止層は、前記対向電極を覆い、前記対向電極の外側まで延在して前記対向電極と前記平坦化層との間で前記素子基板と接している請求項4又は5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記画素部には、前記画素電極の形成位置に対応した開口部を有する隔壁層が設けられ、
前記機能層は、前記開口部に配置され、
前記対向電極は、前記隔壁層および前記機能層を覆い、前記隔壁層の外側まで延在して前記隔壁層と前記平坦化層との間で前記素子基板と接している請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えている電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−16371(P2013−16371A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148898(P2011−148898)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】