説明

電気光学装置の制御装置、電気光学装置の制御方法、電気光学装置および電子機器。

【課題】画像の表示変更に掛かる時間を長くすることなく残像を消去できるようにする。
【解決手段】新たな画像の表示が終了すると、残像消去処理を行う。残像消去処理においては、一の走査線112を選択し、データ線114を制御して奇数列の画素を白、偶数列の画素を黒にした後、奇数列の画素を黒、偶数列の画素を白にする。この後、選択している行の画像を再描画する。走査線112を順次排他的に選択し、走査線112を選択する毎に、データ線114を制御して奇数列の画素を白、偶数列の画素を黒にした後、奇数列の画素を黒、偶数列の画素を白にし、選択している行の画像を再描画する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の表示部を初期化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動方式の表示装置の画質を向上させる技術として特許文献1に開示された技術がある。特許文献1に開示された表示装置は、画像を変更する前に画素を白にする第1リセット期間と、画素を黒と白の間の中間調にする第2リセット期間があり、この第2リセット期間を経た後に画素が黒または白にされる。第2リセット期間において中間調にすることにより黒の電気泳動粒子と白の電気泳動粒子が適度に混合して動きやすい状態となり、この状態から画素の階調を黒または白に駆動すると画素は確実に黒または白になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−189466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の表示装置においては、画素を駆動して新たに画像を変更する前に全画素について第1リセット期間と第2リセット期間を設けるため、新たな画像を表示するまでに時間がかかることとなる。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、画像の表示変更に掛かる時間を長くすることなく残像を消去できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る電気光学装置の制御装置は、帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の制御装置であって、前記表示部に表示させる画像を記憶する記憶部に記憶された画像に基づいて、前記表示部に画像を表示させる描画部と、前記表示部内に定められた複数領域を順番に選択し、選択した領域内にある画素を初期化する初期化部と、前記初期化部で画素が初期化された領域の画像を前記記憶部から取得し、取得した画像を当該初期化された領域に表示させる再描画部と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、画像を変更した後に表示部内の定められた複数領域が順番に選択されて初期化され、初期化された領域は再描画されるため、画像の表示変更に掛かる時間を長くすることなく残像を消去できる。
【0007】
また本発明においては、前記初期化部により初期化される領域は面積階調の中間調にされる構成であってもよい。
この構成によれば、初期化される領域は中間調となるため初期化されている領域が知覚されにくくなる。
【0008】
また本発明においては、前記領域は、互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域を有し、前記第1領域の画素の階調を第1階調、前記第2領域の画素の階調を第2階調とした後、前記第1領域の画素の階調を第2階調、前記第2領域の画素の階調を第1階調とする構成であってもよい。
この構成によれば、帯電した粒子が第1電極と第2電極との間で攪拌されて移動しやすくなるため、再描画時に残像を確実に消去することができる。
【0009】
また本発明においては、前記初期化部により初期化される領域内においては、各画素が中間調にされる構成であってもよい。
この構成によれば、初期化される領域内の各画素は中間調となるため初期化されている領域が知覚されにくくなる。
【0010】
また上記目的を達成するために本発明に係わる電気光学装置の制御方法は、帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の制御方法であって、前記表示部に表示させる画像を記憶する記憶部に記憶された画像に基づいて、前記表示部に画像を表示させる描画工程と、前記表示部内に定められた複数領域を順番に選択し、選択した領域内にある画素を初期化する初期化工程と、前記初期化工程で画素が初期化された領域の画像を前記記憶部から取得し、取得した画像を当該初期化された領域に表示させる再描画工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、画像を変更した後に表示部内の定められた複数領域が順番に選択されて初期化され、初期化された領域は再描画されるため、画像の表示変更に掛かる時間を長くすることなく残像を消去できる。
【0011】
また上記目的を達成するために本発明に係わる電気光学装置は、帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置であって、前記表示部に表示させる画像を記憶した記憶部に記憶された画像に基づいて、前記表示部に画像を表示させる描画部と、前記表示部内に定められた複数領域を順番に選択し、選択した領域内にある画素を初期化する初期化部と、前記初期化部で画素が初期化された領域の画像を前記記憶部から取得し、取得した画像を当該初期化された領域に表示させる再描画部と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、画像を変更した後に表示部内の定められた複数領域が順番に選択されて初期化され、初期化された領域は再描画されるため、画像の表示変更に掛かる時間を長くすることなく残像を消去できる。
【0012】
なお、本発明は、電気光学装置のみならず、当該電気光学装置を有する電子機器としても概念することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係わる電気光学装置1の構成を示した図。
【図2】表示部3の部分断面図。
【図3】画素回路110の構成を示した図。
【図4】実施形態の動作を説明するための図。
【図5】残像消去処理の流れを示したフローチャート。
【図6】残像消去処理の動作を説明するための図。
【図7】残像消去処理の動作を説明するための図。
【図8】電子ブックリーダー1000の外観図。
【図9】変形例に係わる初期化処理の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
(実施形態の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係わる電気光学装置1の構成を示した図である。電気光学装置1は、コントローラー2、表示部3、走査線駆動回路4、データ線駆動回路5およびVRAM(Video Random Access Memory)6を備えている。表示部3においては、行方向(X方向)に沿ってm行の走査線112が設けられており、列方向(Y方向)に沿ってn列のデータ線114が設けられている。また表示部3においては、行方向と列方向に沿って画素回路110と画素100がm行×n列でマトリクス状に設けられている。画素回路110は、走査線112およびデータ線114に接続されている。例えば、1行1列目の画素回路110は、1行目の走査線112と1列目のデータ線114に接続されている。VRAM6(記憶部)は、m行×n列で配列された画素100の各々に対応した記憶領域を有するビデオRAMであり、各記憶領域はコントローラー2によってアクセスされる。なお、後述するように表示部3の表示内容を変更する時には、VRAM6には上位装置から変更後の画像が書き込まれる。
【0015】
図2は、表示部3の部分断面図である。表示部3は、図2に示したように大別して第1基板10、電気泳動層20、第2基板30によって構成されている。第1基板10は、絶縁性及び可撓性を有する基板11上に回路の層が形成された基板である。基板11は、本実施形態においてはポリカーボネートで形成されている。なお、基板11としては、ポリカーボネートに限定されることなく、軽量性、可撓性、弾性及び絶縁性を有する樹脂材料を用いることができる。また、基板11は、可撓性を持たないガラスで形成されていてもよい。基板11の表面には、接着層11aが設けられ、接着層11aの表面には回路層12が積層されている。
【0016】
回路層12は、行方向に配列された複数の走査線112と、各走査線112と電気的に絶縁を保つように設けられ列方向に配列された複数のデータ線114とを有している。また、回路層12は、スイッチング素子であるnチャネル型の薄膜トランジスター(thin film transistor:以下「TFT」と略称する)で構成された画素回路110と、画素電極13a(第1電極)を有している。画素回路110の構成については後述する。
【0017】
電気泳動層20は、バインダー22と、バインダー22によって固定された複数のマイクロカプセル21で構成されており、画素電極13a上に形成されている。なお、マイクロカプセル21と画素電極13aとの間には、接着剤により形成された接着層を設けてもよい。
【0018】
バインダー22としては、マイクロカプセル21との親和性が良好で電極との密着性が優れ、且つ絶縁性を有するものであれば特に制限はない。マイクロカプセル21内には、分散媒と電気泳動粒子が格納されている。マイクロカプセル21を構成する材料としては、アラビアゴム・ゼラチン系の化合物やウレタン系の化合物等の柔軟性を有するものを用いるのが好ましい。
【0019】
分散媒としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などのいずれかを用いることができ、また、分散媒は、その他の油類であってもよい。また、これらの物質は単独又は混合して分散媒に用いることができ、さらに界面活性剤などを配合して分散媒としてもよい。
【0020】
電気泳動粒子は、分散媒中で電界によって移動する性質を有する粒子(高分子あるいはコロイド)である。本実施形態においては白の電気泳動粒子と黒の電気泳動粒子がマイクロカプセル21内に格納されている。黒の電気泳動粒子は、例えば、アニリンブラックやカーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子であり、本実施形態では正に帯電されている。白の電気泳動粒子は、例えば、二酸化チタンや酸化アルミニウム等の白色顔料からなる粒子であり、本実施形態では負に帯電されている。
【0021】
第2基板30は、フィルム31と、フィルム31の下面に形成された共通電極層32(第2電極)で構成されている。フィルム31は、電気泳動層20の封止及び保護の役割を担うものであり、例えばポリエチレンテレフタレートのフィルムである。フィルム31は、透明で絶縁性を有している。共通電極層32は、例えば、酸化インジウム膜(ITO膜)などの透明な導電膜で構成されている。なお、本実施形態においてはフィルム31側が、ユーザーが画像を視認する側となる。
【0022】
図1に戻り、走査線駆動回路4は、表示部3の各走査線112と接続されており、1、2、…、m行目の走査線112に走査信号Y1、Y2、…、Ymを供給する。具体的には、走査線駆動回路4は、走査線112を1、2、…、m行目という順番で排他的に選択し、選択した走査線112にH(High)レベルの信号を供給し、選択されていない走査線112にL(Low)レベルの信号を供給する。
【0023】
データ線駆動回路5は、表示部3の各データ線114に接続されており、コントローラー2から供給される信号に応じて、1、2、…、n列目のデータ線114にデータ信号X1、X2、…、Xnを供給する。
【0024】
コントローラー2は、表示部3が備える画素を駆動するための各種信号を出力して各部を制御する制御装置である。コントローラー2は、全体制御部2Aと、描画部2Bと、初期化部2Cと、再描画部2Dを有する。全体制御部2Aは、描画部2Bと、初期化部2Cと、再描画部2Dを制御するものである。描画部2Bは、VRAM6の内容が変更された場合に、VRAM6に書き込まれた画像を走査線駆動回路4とデータ線駆動回路5を制御して表示部3に表示させるものである。初期化部2Cは、表示部3において予め定められた複数の領域を順次排他的に選択し、選択した領域内の画素100を走査線駆動回路4とデータ線駆動回路5を制御して初期化するものである。なお、本実施形態においては、選択される一の領域は1行分の画素100の領域である。再描画部2Dは、初期化部2Cにより画素100が初期化された領域について、VRAM6に書き込まれている画像を取得し、取得した画像が選択されている領域において表示されるように走査線駆動回路4とデータ線駆動回路5を制御するものである。なお、コントローラー2、走査線駆動回路4およびデータ線駆動回路5を合わせて電気光学装置1の制御装置と定義することもできる。
【0025】
図3は、画素回路110の構成を示した図である。なお、図3においては、1行1列目の画素回路110を示している。各画素回路110の構成は同じであるため、ここでは代表して1行1列目の画素回路110について説明し、他の画素回路110については説明を省略する。
【0026】
画素回路110では、TFT131のゲートが走査線112に接続され、TFT131のソースがデータ線114に接続されている。また、TFT131のドレインが画素電極13aに接続されている。画素電極13aは、共通電極層32と対向し、画素電極13aと共通電極層32との間には電気泳動層20が挟まれている。この一の画素電極13aと共通電極層32との間にあるマイクロカプセル21が表示部3において一の画素100となる。なお、画素回路110においては、電気泳動層20と並列に保持容量C1が接続されている。また、共通電極層32の電位は予め定められた電位Vcomにされている。
【0027】
(表示部3に画像を表示する時の動作)
次に、表示部3に画像を表示する時の動作について説明する。まず、上位装置からVRAM6に新たに表示部3に表示する画像が書き込まれる。コントローラー2の描画部2Bは、VRAM6に新たに画像が書き込まれると、走査線駆動回路4を制御すると共に、データ線駆動回路5へVRAM6に書き込まれた画像を表す映像信号を供給する。走査線駆動回路4により一の走査線112が選択され、選択された走査線112がHレベルとなると、当該走査線112にゲートが接続されたTFT131がオン状態になり、画素電極13aがデータ線114に接続される。データ線駆動回路5は、コントローラー2から供給された映像信号に応じて各データ線114に画素の階調を規定するデータ信号を供給する。走査線112がHレベルであるときに、データ線114にデータ信号を供給すると、当該データ信号は、オン状態になったTFT131を介して画素電極13aに印加される。
走査線112がLレベルになると、TFT131はオフ状態になるが、データ信号によって画素電極13aに印加された電圧は、保持容量C1に蓄積され、画素電極13aの電位及び共通電極層32の電位との電位差(電圧)に応じて電気泳動粒子が移動する。
例えば、共通電極層32の電位Vcomに対して画素電極13aの電位が高位(例えば+15V)である場合、負に帯電している白の電気泳動粒子が画素電極13a側に移動し、正に帯電している黒の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動して画素100が黒の表示(反射率が予め定められた反射率以下の状態)となる。また、共通電極層32の電位Vcomに対して画素電極13aの電位が低位(例えば−15V)である場合、正に帯電している黒の電気泳動粒子が画素電極13a側に移動し、負に帯電している白の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動して画素100が白の表示(反射率が予め定められた反射率以上の状態)となる。なお、画素100は記憶性を有するため、画素電極13aへの電圧の印加が停止されても黒または白の表示状態を維持する。
【0028】
(残像を消去する時の動作)
例えば、画像を変更する前に全画面を黒にしてから白にするような処理を行わずに表示部3に表示する画像を図4(a)の画像G10から図4(b)の画像G20に変更した場合、画像G10が表示されていた領域Aには画像G10の残像が残ってしまう。このため、コントローラー2は、VRAM6に書き込まれた画像の描画が終了したことを契機として、残像を消去する残像消去処理を行う。
【0029】
図5は、残像消去処理の流れを示したフローチャートである。残像消去処理においては、まずコントローラー2の初期化部2Cによって走査線駆動回路4が制御されて一の走査線112が選択され、選択された走査線112がHレベルにされる(ステップS100)。なお、本実施形態においては、残像消去処理を開始して最初に選択される走査線112は1行目の走査線112である。一の走査線112が選択されると、コントローラー2によってデータ線駆動回路5が制御され、奇数列のデータ線114がLレベルにされ、偶数列のデータ線114がHレベルにされる(ステップS101)。走査線112がされてHレベルである時に奇数列のデータ線114がLレベルにされ、偶数列のデータ線114がHレベルにされると、奇数列の画素100の画素電極13aが共通電極層32の電圧Vcomに対して低位となり、偶数列の画素100の画素電極13aが共通電極層32の電圧Vcomに対して高位となる。すると、奇数列の画素100は白となり、偶数列の画素100は黒となる。ここで、選択された走査線112に係わる画素群においては、白の画素100と黒の画素100が走査線112の伸びた方向へ交互に並ぶこととなる。一の画素100の領域は微少であるため、選択された走査線112に係わる画素の行は、人間の目には黒と白が混ざったグレーとして視認される。
【0030】
次にコントローラー2の初期化部2Cによってデータ線駆動回路5が制御され、奇数列のデータ線114がHレベルにされ、偶数列のデータ線114がLレベルにされる(ステップS102)。ここで奇数列の画素100の画素電極13aが共通電極層32の電圧Vcomに対して高位となり、偶数列の画素100の画素電極13aが共通電極層32の電圧Vcomに対して低位となって、奇数列の画素100は黒となり、偶数列の画素100は白となる。ここでも白の画素100と黒の画素100が走査線112の伸びた方向へ交互に並び、選択された走査線112に係わる画素群は、人間の目には黒と白が混ざったグレーとして視認される。
【0031】
次にコントローラー2の再描画部2Dは、選択されている走査線112の行の画像をVRAM6にアクセスして取得し、取得した画像を表す映像信号をデータ線駆動回路5へ供給する(ステップS103)。データ線駆動回路5は、供給された映像信号に応じて各データ線114に画素100の階調を規定するデータ信号を供給する。これにより、選択されている行の画像は再描画されることとなる。
【0032】
コントローラー2は、ステップS103が終了すると、選択している走査線112が最後の行の走査線であるか判断する。ここで選択している走査線112が最後の行でない場合(ステップS104でNO)、処理の流れをステップS100に戻し、次の走査線112を選択してステップS101以降の処理を行う。この後、コントローラー2は、順次排他的に走査線112を選択し、一の走査線112を選択する毎にステップS101からステップS103までの処理を行う。コントローラー2は、最後の行の走査線112について第1ステップから第3ステップまでの処理を行い、ステップS104でYESと判断すると、残像消去処理を終了する。
【0033】
図6(a)〜図6(c)と、図7(a)〜図7(c)は、画像G20の左上部分の画素100とその近傍の画素100を拡大して示したものである。なお、図6(a)〜図6(c)と、図7(a)〜図7(c)においてハッチングがされている部分は残像を示している。例えば、i行目においてステップS101の処理が行われると、図6(a)に示したように、i行目の画素100は奇数列の画素100が白、偶数列の画素100が黒となる。次にi行目においてステップS102の処理が行われると、図6(b)に示したようにi行目の画素100は奇数列の画素100が黒、偶数列の画素100が白となる。この後、ステップS103の処理が行われると、図6(c)に示したようにi行目の画素100は残像が消去されて白となる。
【0034】
また、画像G20の先頭の行であるi+4行目においてステップS101の処理が行われると、図7(a)に示したように、i+4行目の画素100は奇数列の画素100が白、偶数列の画素100が黒となる。ここで、画像G20の領域も奇数列の画素100が白、偶数列の画素100が黒となる。次にi+4行目においてステップS102の処理が行われると、図7(b)に示したように、i+4行目の画素100は奇数列の画素100が黒、偶数列の画素100が白となる。ここで、画像G20の領域も奇数列の画素100が黒、偶数列の画素100が白となる。なお、ステップS101とステップS102を行うことで、各画素100においては黒の電気泳動粒子と白の電気泳動粒子が画素電極13aと共通電極層32との間で移動して攪拌され、各電気泳動粒子が移動しやすくなる。
この後、i+4行目においてステップS103の処理が行われると、図7(c)に示したようにi+4行目において画像G20の領域内の画素100は、残像消去処理が行われる前の黒の状態に戻り、残像があった領域の画素100は、残像が消去されて白となる。なお、ステップS103が行われる前に電気泳動粒子は移動しやすい状態となっているため、ステップS103を行うと黒の電気泳動粒子は画素電極13aと共通電極層32のいずれか一方に確実に移動し、白の電気泳動粒子は他方に確実に移動し、黒の電気泳動粒子と白の電気泳動粒子が混合した状態とならず、残像が消去されて画素100が確実に黒または白となるのである。
【0035】
また、本実施形態においては、上位装置からの指示を受けることなく、コントローラー2がVRAM6に書き込まれた画像の描画が終了したことを契機として残像消去処理を行うため、上位装置から残像消去処理の実行を指示する必要がなく、簡易な構成で残像を消去することができる。
【0036】
また、本実施形態においては以下のような効果も得られる。例えば、画素が白の領域に新たに黒の画像を表示する場合、黒の画像の輪郭部分の画素に隣り合う白の画素においても黒の電気泳動粒子が移動してしまい、黒として知覚される領域が黒にした画素の領域より広がって見えてしまうことがある。本実施形態においては、黒の画像の輪郭部分の画素に隣り合う画素は、ステップS101とステップS102によって画素が黒と白にされて黒の電気泳動粒子と白の電気泳動粒子が攪拌されたあと、ステップS103で白にされるので、白の画素において黒の電気泳動粒子が確実に画素電極13a側に移動し、黒として知覚される領域が黒にした画素の領域より広がって見えることがない。
【0037】
[電子機器]
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を適用した電子機器の例について説明する。図8は、当該電気光学装置を用いた電子ブックリーダーの外観を示した図である。電子ブックリーダー1000は、板状のフレーム1001と、ボタン9A〜9Fと、上述した実施形態または変形例に係る電気光学装置を備えている。ただし、図においては電気光学装置のうち、表示部3のみが露出している。電子ブックリーダー1000においては、電子書籍の内容が表示部3に表示され、ボタン9A〜9Fを操作することにより電子書籍のページがめくられる。
なお、このほかにも、上述した実施形態や変形例に係る電気光学装置が適用可能な電子機器としては、時計や、電子ペーパー、電子手帳、電卓、携帯電話機等などが挙げられる。
【0038】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0039】
上述した実施形態においては、VRAM6に書き込まれた画像の描画が終了したことを契機として残像消去処理が実行されるが、残像消去処理を実行するタイミングは、このタイミングに限定されるものではない。例えば、コントローラー2が時間を計り、予め定められた周期で残像消去処理を実行してもよい。電気泳動方式の表示装置は記憶性を有するため、画像を表示した後に画素電極13aに電圧を印加しなくても表示した画像を維持できるものの、画像を表示してから時間が経過すると時間の経過とともに電気泳動粒子が移動し、表示した画像の階調が変化してしまう。しかしながら、上述したように一定の周期で残像消去処理を実行すれば、移動した電気泳動粒子が再び画素電極13a側または共通電極層32側に移動するため、画像の階調を元の階調に戻すことができる。
また、一定の周期で残像消去処理を実行するのではなく、最後の行についてステップS103の処理が終了したら1行目に戻ってすぐに残像消去処理を開始するというように、常時残像消去処理が実行されている状態にしてもよい。
【0040】
上述した実施形態の残像消去処理においてはステップS101からステップS103が行われるが、ステップS101またはステップS102の一方がなくてもよい。
また上述した実施形態においては、ステップS101では選択した行の画素100について奇数列の画素100を白、偶数列の画素100を黒とし、ステップS102では奇数列の画素100を黒、偶数列の画素100を白としているが、ステップS101においては選択した行の画素100を全て白とし、ステップS102においては選択した行の画素100を全て黒としてもよい。また、ステップS101においては選択した行の画素100を全て黒とし、ステップS102においては選択した行の画素100を全て白としてもよい。この変形例でも電気泳動粒子が攪拌されるため、ステップS103において画素100が確実に黒または白となる。
【0041】
上述した実施形態の残像消去処理においては、走査線112は1行目から選択されるが、残像消去処理において最初に選択される走査線112は1行目のものに限定されるものではない。例えば、新たに描画された画像がa行目からb行目までの範囲にある場合、残像消去処理において最初に選択する走査線112をa行目のものとしてもよい。
また、図4(a)の画像G10がc行目からd行目までに表示されている状態から、画像G10を消去して図4(b)のように画像G20をa行目からb行目までに表示した場合、c行目の走査線112から選択してもよい。
また、図4(a)の画像G10がc行目からd行目までに表示されている状態から、画像G10を消去して図4(b)のように画像G20をa行目からb行目まで表示した場合、c行目からb行目までについて残像消去処理を行い、他の行については残像消去処理を行わないようにしてもよい。なお、コントローラー2は、表示画像を変更した場合、変更前の画像と変更後の画像との間で画素毎に排他的論理和をとり、結果が真となった画素100の行を特定し、特定した行において行番号が最も小さい行から残像消去処理を実行するようにしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、ステップS101とステップS102では選択されている行の画素100は白または黒にされるが、ステップS101とステップS102においては、選択されている行の画素100の階調を白と黒の間の中間調にしてもよい。また、ステップS102において選択されている行の画素100の階調を中間調とした場合、ステップS102を設けないようにしてもよい。
【0043】
上述した実施形態においては、ステップS101とステップS102では奇数列の階調と偶数列の階調を異なる階調としているが、走査線112の伸びる方向へ1画素毎に交互に階調を異ならせる構成に限定されるものではない。例えば、ステップS101では図9(a)に示したように1列目から2列ずつ交互に黒、白、黒、白、・・・となるように画素100を駆動し、ステップS102では図9(b)に示したように1列目から2列ずつ交互に白、黒、白、黒、・・・となるように画素100を駆動するようにしてもよい。また、2列ずつ交互に白の画素と黒の画素を並べるのではなく、走査線112の伸びる方向に連続する同じ階調の画素100の数を3つ以上としてもよい。また、1列を黒にした後に3列を白というように、走査線112の伸びる方向に連続する同じ階調の画素100の数が白と黒とで異なる数であってもよい。
【0044】
上述した実施形態の残像消去処理においては、走査線112は1行目からm行目まで順次排他的に選択されていくが、残像消去処理における走査線112の選択の順番は実施形態の順番に限定されるものではない。例えば、m行目から始めて1行目まで順番に選択してもよい。また、奇数行の走査線112を順次排他的に選択した後、偶数行の走査線112を順次排他的に選択する構成であってもよい。
また、上述した実施形態の残像消去処理においては、走査線112は順次排他的に選択されていくが、2行以上同時に選択していく構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…電気光学装置、2…コントローラー、2A…全体制御部、2B…描画部、2C…初期化部、2D…再描画部、3…表示部、4…走査線駆動回路、5…データ線駆動回路、6…VRAM、9A〜9F…ボタン、10…第1基板、11…基板、11a…接着層、12…回路層、13a…画素電極、20…電気泳動層、21…マイクロカプセル、22…バインダー、30…第2基板、31…フィルム、32…共通電極層、100…画素、112…走査線、110…画素回路、114データ線、131…TFT、1000…電子機器、1001…フレーム、C1…補助容量、G10,G20…画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の制御装置であって、
前記表示部に表示させる画像を記憶する記憶部に記憶された画像に基づいて、前記表示部に画像を表示させる描画部と、
前記表示部内に定められた複数領域を順番に選択し、選択した領域内にある画素を初期化する初期化部と、
前記初期化部で画素が初期化された領域の画像を前記記憶部から取得し、取得した画像を当該初期化された領域に表示させる再描画部と
を有することを特徴とする電気光学装置の制御装置。
【請求項2】
前記初期化部により初期化される領域は面積階調の中間調にされること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の制御装置。
【請求項3】
前記領域は、互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域を有し、前記第1領域の画素の階調を第1階調、前記第2領域の画素の階調を第2階調とした後、前記第1領域の画素の階調を第2階調、前記第2領域の画素の階調を第1階調とすること
を特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の制御装置。
【請求項4】
前記初期化部により初期化される領域内においては、各画素が中間調にされること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の制御装置。
【請求項5】
帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の制御方法であって、
前記表示部に表示させる画像を記憶する記憶部に記憶された画像に基づいて、前記表示部に画像を表示させる描画工程と、
前記表示部内に定められた複数領域を順番に選択し、選択した領域内にある画素を初期化する初期化工程と、
前記初期化工程で画素が初期化された領域の画像を前記記憶部から取得し、取得した画像を当該初期化された領域に表示させる再描画工程と
を有することを特徴とする電気光学装置の制御方法。
【請求項6】
帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置であって、
前記表示部に表示させる画像を記憶した記憶部に記憶された画像に基づいて、前記表示部に画像を表示させる描画部と、
前記表示部内に定められた複数領域を順番に選択し、選択した領域内にある画素を初期化する初期化部と、
前記初期化部で画素が初期化された領域の画像を前記記憶部から取得し、取得した画像を当該初期化された領域に表示させる再描画部と
を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−194345(P2012−194345A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57951(P2011−57951)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】