説明

電気光学装置

【課題】エレクトロクロミック素子の劣化や破壊を抑制するための駆動方法を提供することである。
【解決手段】清澄(透明)状態、第1の表示状態、または、第2の表示状態をとることが可能なエレクトロクロミック素子と、第1及び第2の電極駆動信号を加えて、エレクトロクロミック素子のダイ及び第2の電極を駆動する駆動段を含む電気光学装置。電極駆動信号の少なくとも1つが、ポリシリコン薄膜バッファを介して供給される。初期透明化操作において、駆動段によって、ほぼ等しい電圧が電極に対して出力され、これにより、エレクトロクロミック素子がその透明状態になる。引き続き、駆動段によって電極に電圧が加えられ、エレクトロクロミック素子が第1の表示状態または第2の表示状態を呈することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック素子を含む電気光学装置に関するものである。第2の態様における本発明は、やはり、エレクトロクロミック素子の駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電流または電圧が加えられると、材料の色が可逆的に変化する、エレクトロクロミック素子(ECD)は、既知のところである。この現象は、エレクトロクロミズムとして知られている。典型的なECDは、その間にエレクトロクロミック材料と電解質の組合せを挟む、2つの導体から構成される。
【0003】
ECDのタイプには、挿入タイプ、溶液をベースしたタイプ、及び、ナノ構造タイプの3つがある。図1(a)には、挿入タイプの原理が示されている。電極が、それぞれのガラス基板10、11上における透明電極12、13の形態をとり、有機または無機ポリマ14、15によって被覆されている。2つの材料は、通常、相補性のエレクトロクロミズムを示し、従って、一方が酸化され、同時に、もう一方が還元されると、同じ色変化を生じる。色の変化が生じると、印加電圧がなくても、この素子の状態は保たれる。従って、この素子は、不揮発性素子と称することが可能である。しかし、このタイプのECDは、バルク・ポリマ内における対イオンの低移行速度のため、色変化が遅い。強烈な色変化または明るい色を得るのも困難である。
【0004】
図1(b)に示す第2のタイプの場合、2つの相補性エレクトロクロミック分子が溶媒中に溶解される。種A及び種A+は、異なる色状態である。図示のように負電圧が印加されると、種AはA+になる。電子が、電解質中の種Bに移動して、Bイオンを形成し、さらに、正端子に向かって移行する。電力が切断されると、A+及びB+は、すぐに電極を離れ、逆電荷移動が生じる。このタイプのシステムは、極めて製作が簡単で、極めて反応が迅速であり、暗色または明色を生じることが可能である。しかしながら、2種類の有色分子がシステム全体に拡散しており、互いに反応して、脱色(透明)状態を回復するので、このシステムには、有色状態を維持するのに電流が必要になるという欠点がある。従って、エネルギ消費が大きいので、このシステムは、大面積の装置または電池式ディスプレイには利用できない。
【0005】
第3のナノ構造タイプのECDは、不揮発性を示し、急速な色変化が可能である。これは、ガラス上に形成された透明電極上の無色の半導体単一層表面に、酸化状態において無色で、還元状態において有色になる、適合する分子を付着させることによって得られる。一方の電極に、十分な負電位が印加され、もう一方の電極が、大地電位に保持されると、半導体の伝導帯に電子が注入され、吸収分子が還元される(着色プロセス)。その電極に正電位が印加されると、逆プロセスが生じ、分子は脱色(透明)状態になる。この構成が、図1(c)に示されている。この図では、種A及びA+の色状態が異なる。図示のように、負電圧を印加すると、ナノ構造内に吸収された種A(実際には、ビオロゲンとすることが可能な)が、A+になる。電子が、電解質内の種Bに移動して、Bイオンを形成し、次に、正端子に向かって移行する。電源が切断されると、逆電荷移動の発生が可能になるまでに、BイオンがA+に達するのに長時間を要する。実際、こうした素子は、ほぼ数日間にわたってその色変化を保持するのが普通である。
【0006】
このシステムでは、エレクトロクロミック材料の不動性と分子系の迅速性及び着色効率が組み合わせられる。単一分子の単一層は、認知できるほど光を吸収しないので、明らかな色変化に対する分子単一層の光吸収特性を促進するため、ナノ結晶半導体フィルムが用いられる。ナノ結晶層は、極めて多孔性で、より多くの分子単一層の存在を助長する。光がこの層を透過する際、有色分子からなる数百の単一層を横断するので、しっかりと吸収されることになる。
【0007】
エレクトロクロミック素子には、電子ブック及び新聞、大面積ディスプレイ、店内での価格ラベル等としての利用を含む、多くの用途がある。他のテクノロジに対して特に有利な点は、広範囲のさまざまな視角にわたる高コントラスト比の保持である。コントラスト比は、例えば、紙への印刷(従来の新聞または本)に比べるとはるかに改善される。
【0008】
本発明を適用することが可能なエレクトロクロミック・ディスプレイは、望ましい極性及び電圧の不揮発性電荷蓄積状態を有する、複数のナノ構造タイプ・エレクトロクロミック・セルから構成される。こうしたディスプレイは、3つの周知の方法、すなわち、直接駆動、パッシブ・マトリックス駆動、及び、アクティブ・マトリックス駆動の任意の1つによって駆動することが可能である。
【0009】
図2には、7セグメント・ディスプレイ20のセグメントが、コントローラ段22の専用ドライバによって直接駆動される、直接駆動の一例が示されている。駆動手順の説明を簡潔にするため、まず第1に、ディスプレイは、上部電極を共通底部電極に接続して、透明状態になるように清澄化される、すなわち、「脱色」と呼ばれるプロセスである。次に、コントローラを介して、着色する必要のある電極に正電圧が印加される。次に、断路器24によって、コントローラをディスプレイから切り離すことが可能である。この方式は、設計が簡単であり、個別コンポーネントで構成されたコントローラによって駆動することが可能である。しかしながら、電極数に応じて相互接続数が増すので、この駆動方法は、非効率的であり、高解像度の画像表示には適さない。
【0010】
図3には、パッシブ・マトリックス駆動方式が示されている。ディスプレイ構造は同様であるが、エレクトロクロミック・ディスプレイの場合、パッシブ・マトリックス駆動法が、液晶ディスプレイ(LCD)の場合とは異なっている。先行技術文献(例えば、特許文献1参照)に記載のようなLCDの場合、液晶分子を電界と平行に配列するのに十分な電圧が印加されると、パッシブ・マトリックス・ピクセルがアドレス指定される。ディスプレイは、液晶材料の応答時間のため、常に、2つ以上のピクセルを用いることが可能である。アドレス指定されると、ピクセルは、短時間でオンになるが、その間に、ピクセルを不透明にするようなやり方で、液晶分子が整列する。電圧が取り除かれると、ピクセルは、放電コンデンサのような働きをし、電荷の放散につれて、ゆっくりとオフになり、分子はその非変形配向に戻る。この応答時間のため、ディスプレイは、ピクセル・マトリックスを走査し、画像の形成に適したピクセルをオンにすることが可能になる。マトリックス全体の走査時間が、ターン・オフ時間より短いということであれば、複数ピクセル画像の表示が可能である。
【0011】
エレクトロクロミック・ディスプレイの場合、各ピクセルは、その充電状態に応じて、ピクセルの色の強さが決まる(完全に充電されると、不透明になり、完全に放電されると、透明になる)、充電式バッテリとみなすことが可能である。図3を参照すると、まず、アドレス・ライン及びデータ・ラインの働きをする全ての電極に同じ電圧を印加して、ディスプレイ全体が透明にされる(図3(a)参照)。次に(図3(b)参照)、電圧V+が印加される、アドレス指定される1つのラインを除いて、全てのアドレス・ラインが切断される(すなわち、浮遊させられる)。下記のやり方で、データ・ラインにデータ電圧が印加される。直接駆動法と同様、色を示すことになるピクセルに接続されたデータ・ラインに、電圧V−が印加される。透明のままであるべきピクセルに接続されたデータ・ラインは、電源から切断される、すなわち、浮遊させられる。「V+」及び「V−」は、ピクセル・セルの極性を表わし、V+はV−より大きい。次に(図3(c)参照)、選択されたアドレス・ラインが切断され、次のアドレス・ラインがV+に接続され、データ電圧が選択されたデータ・ラインに印加され、……以下同様。
【0012】
パッシブ・マトリックス駆動の欠点は、データ・ラインにおける後続のデータ変動によって生じる、各セルに蓄積された電荷の摂動である。電解質を介した漏洩による画像拡散及び共用電極を介したピクセル間の相互作用によって生じるクロストークが、さらなる問題である。これらの問題のいくつかは、ダイオード素子を挿入して、各エレクトロクロミック素子のしきい値電圧を高めるやり方で、先行技術(例えば、特許文献2参照)において取り扱われている。
【0013】
図4には、先行技術文献(例えば、特許文献3参照)に開示されたアクティブ・マトリックス駆動方式の一例が示されている。この特許では、薄膜トランジスタ(TFT)を利用して、アクティブ・マトリックス・ディスプレイのエレクトロクロミック素子を切り離すことが示唆されている。これらの素子には、それぞれ、出力電極47と、共通電極48が含まれている。2つの電極の間には、ECD電解質49が存在する。データ・ライン40は、直列に接続された2つの選択トランジスタ41によってゲート制御される。これらの選択トランジスタのゲートは、行ライン42と列ライン43に接続されている。ピクセルが選択されると、データ電圧(高または低)が、大電流をエレクトロクロミック素子に送ることが可能な、駆動トランジスタ44のゲートに送られ、コンデンサ45によって蓄積される。次に、このゲート電圧によって、駆動トランジスタ44がオンまたはオフになる。駆動トランジスタを出力電極47から切り離すため、出力ライン46には、オプションのアイソレーション・トランジスタが設けられている。
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,626,841号明細書
【特許文献2】米国特許第4,129,861号明細書
【特許文献3】米国特許第5,049,868号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明に係る具体的態様の目的は、エレクトロクロミック素子の劣化や破壊を抑制するための駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、第1及び第2の電極を備え、第1及び第2の電極間に印加される電圧の所定の安全動作電圧値Vsafeを有する、選択的に第1の表示状態及び第2の表示状態にすることが可能なエレクトロクロミック素子と、前記第1の電極を駆動する第1の電極駆動信号、及び、前記第2の電極を駆動する第2の電極駆動信号を送り出すための駆動段が含まれており、駆動段に、外部コントローラから駆動信号を受信し、緩衝された第2の電極駆動信号として、この駆動信号をエレクトロクロミック素子に供給するためのポリシリコン薄膜トランジスタ・バッファが含まれることと、駆動段が、エレクトロクロミック素子を第1の表示状態にするため、第1の電極駆動信号として第1の電圧V1を印加し、第2の電極駆動信号として第2の電圧V2を印加するように構成され、また、エレクトロクロミック素子を第2の表示状態にするため、第1の電極駆動信号として第3の電圧V3を印加し、第2の電極駆動信号として第4の電圧V4を印加するように構成されていることと、ここで、
2>V1
3>V4
|V1−V2|≦Vsafe、及び、
|V3−V4|≦Vsafe
であることを特徴とする、電気光学装置が得られる。電圧V1及びV3は、互いに等しいのが有利である可能性がある。
【0017】
この装置には、電気光学素子の2次元アレイを含むことが可能であり、バッファには、行内のエレクトロクロミック素子のそれぞれについて1つずつ、複数のポリシリコン薄膜トランジスタ駆動素子が含まれており、駆動段には、シフト・レジスタと、外部コントローラとバッファ段の間に挿入されたラッチが含まれていて、その結果、あるエレクトロクロミック素子行に関する外部コントローラからの駆動信号(Vdata)をシフト・レジスタに順次ロードして、ラッチし、バッファを介して、ある電気光学素子行に第2の電極駆動信号(Vdat)として渡すことが可能になる。
【0018】
第1、第2、第3、及び、第4の電圧の関係は、次のように表わすことが可能である。
1=V3≒1/2(V2−V4
【0019】
駆動段は、ラッチされた駆動信号(Vdata)がアレイのある行に加えられている間に、次の行の駆動信号(Vdata)がシフト・レジスタにロードされるように構成することが可能である。これには、1つまたは複数のECD素子の充電を行う上において、時間の節約になるという利点がある。
【0020】
バッファは、定電流出力を供給するように構成可能であり、駆動段は、一連の順次書込み操作で、エレクトロクロミック素子にデータ信号を書き込むように構成可能であり、エレクトロクロミック素子の選択された素子における着色の強さは、選択されたエレクトロクロミック素子のそれぞれについて所望の着色の強さが得られるまで、1回以上の書込み操作で順次変更される。この手法によれば、グレースケールのビット数に対応する書込み操作回数で、グレースケールを実現することが可能になる。
【0021】
順次書込み操作は、さまざまな追加着色強さを実現するように構成することが可能である。これらの追加着色強さは、2進法で連続して増減可能である。
【0022】
着色の強さが増大しないフレーム期間中の、第2の電極駆動信号は、浮遊状態を呈するものとする。あるいはまた、着色の強さが増大しないフレーム期間中の、第2の電極駆動信号は、着色の強さが増大する場合のフレーム期間中に想定される第2の電圧値V2よりも低い、第2の電圧値V2になるものとする。
【0023】
安全電圧値Vsafeは、約1.4Vであり、第2の電圧V2は、最大約2.5Vであり、第4の電圧V4は、約0Vであり、第1の電圧V1及び第3の電圧V3は、最大約1.25Vである。
【0024】
駆動段は、第1、第2、第3、及び、第4の電圧V1〜V4の印加前に、エレクトロクロミック素子を初期透明状態にするため、それぞれ、第5及び第6の電圧V5及びV6を第1及び第2の電極に印加するように構成することが可能であり、ここで、V5≒V6。実際、V5はV6に等しい場合もある。
【0025】
第1の表示状態は、エレクトロクロミック素子が第1の色を表示する、第1の着色状態とすることが可能であり、第2の表示状態は、エレクトロクロミック素子が第2の色を表示する、第2の着色状態とすることが可能である。代わりに、第1の表示状態は、エレクトロクロミック素子がある特定の色を表示する、着色状態とすることが可能であり、第2の表示状態は、エレクトロクロミック素子が透明な、透明状態とすることが可能である。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、第1及び第2の電極を備え、第1及び第2の電極間に印加される電圧の所定の安全動作電圧値Vsafeを有する、選択的に第1の表示状態及び第2の表示状態にすることが可能なエレクトロクロミック素子を駆動するための方法であって、第1及び第2の電極間に安全動作電圧未満の第1の電圧を一方向に印加して、エレクトロクロミック素子を第1の表示状態にするか、または、第1及び第2の電極間に安全動作電圧未満の第2の電圧を逆方向に印加して、エレクトロクロミック素子を第2の表示状態にするステップが含まれており、第1及び/または第2の電圧が、ポリシリコン薄膜トランジスタ・バッファを介して印加されることを特徴とする、方法が得られる。
【0027】
第1の表示状態は、透明状態とすることが可能である。第1の電圧は、ほぼゼロ・ボルトとすることが可能である。
【0028】
エレクトロクロミック素子は、2次元アレイをなすように配列された複数のこうしたエレクトロクロミック素子の1つとすることが可能であり、あるエレクトロクロミック素子行の電極に対する駆動信号(Vdata)は、シフト・レジスタに順次ロードして、ラッチし、ポリシリコン薄膜トランジスタ・バッファを介して、その電気光学素子行に渡すことが可能である。ラッチされた駆動信号(Vdata)がアレイのある行に加えられている間に、次の行に対する駆動信号(Vdata)をシフト・レジスタにロードすることが可能である。
【0029】
バッファは、定電流出力を送り出すように構成可能であり、駆動段は、一連の順次書込み操作で電気光学素子にデータ信号を書き込むことが可能であり、エレクトロクロミック素子のうち選択された素子の着色の強さは、選択されたエレクトロクロミック素子のそれぞれについて所望の着色の強さが得られるまで、1回以上の書込み操作で順次変更される。
【0030】
順次書き込み操作によって、さまざまな追加着色強さを実現することが可能である。さらに、順次書込み操作によって、2進法で連続して増減する、追加着色強さを実現することが可能である。
【0031】
バッファは、第1の表示状態を実現するため、第1の電極に第1の値の電圧(Vdat)を印加するか、第2の表示状態を実現するため、第1の電極に第2の値の電圧(Vdat)することが可能であり、また、第2の電極には、第1と第2の電圧値の中間の第3の値の電圧を印加することが可能である。第3の電圧値は、第1の電圧値と第2の電圧値のほぼ中間に位置するものとする。
【0032】
バッファには、行をなすそれぞれのエレクトロクロミック素子のための複数のポリシリコン薄膜トランジスタ段を含むことが可能であり、薄膜トランジスタ段は、それらの段のしきい値電圧の値と関連づけられていて、前記第2の電圧値が、前記しきい値電圧の値だけ、前記第1の電圧値より高くなる。
【0033】
第1及び第2の表示状態は、それぞれ、エレクトロクロミック素子が異なる色を表示する、第1及び第2の着色状態とする。
【0034】
次に、純粋に例証のため、図面に関連して、本発明の実施形態について詳述することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図5には、本発明による電気光学装置の実施形態の1つが示されている。図5において、表示領域50には、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ・テクノロジ(LTPS−TFE)を利用したアクティブ・マトリックス・エレクトロクロミック・ディスプレイ駆動機構が含まれている。
【0036】
エレクトロクロミック・ピクセル素子51は、全ての作用電極が個々の選択トランジスタ52に接続されるように接続される。作用電極は、負の極性を示す、短めの矩形ボックスで示されている。これらの電極は、ピクセル素子が、清澄化された(透明)状態とは逆の、光変調状態にされると生じる、着色に関与する。
【0037】
表示領域50は、外部コントローラ54によって加えられるライン選択信号(Vsel)53、及び、同様に、外部コントローラ54によって加えられるデータ信号(Vdata)55によって駆動される。ライン選択信号(Vsel)及びデータ信号(Vdata)は、それぞれのシフト・レジスタ56、57に送り込まれ、シフト・レジスタ57の並列出力は、ラッチ58にラッチされ、バッファ59を介してTFT52に供給される。従って、マトリクスまたはアレイの1つのラインに関するデータ信号55は、コントローラ54によって、シフト・レジスタ57に対して直列に出力され、その後、シフト・レジスタ57によって、バッファ59に対して並列に出力される。バッファ59は、ラッチされたデータ信号を信号Vdatとして個々のTFT52に渡し、ピクセル素子51のターン・オン時に、ピクセル素子51を駆動するのに十分な電流が得られることを保証する。
【0038】
図5には、個々の電極として、ピクセル素子51の対電極(正の極性を示す、長めの矩形ボックス)が示されているが、実際には、バックパネル上の全てのピクセルによって共用される連続電極Vcomとして実現することも可能である。
【0039】
ピクセル51及び関連するドライバTFT52で見うけられる駆動信号が、図6(b)として含まれる波形図に例示されている。
【0040】
ディスプレイの起動後の最初の作業として、ピクセル素子行が透明状態にされる。これは、この例の場合、ピクセル素子電極にほぼ等しい電圧を印加することによって実施される。従って、これらの電極間の差は、公称ではゼロである。図6(a)には、この作業が、ある特定行のピクセル素子の2つの電極に対するゼロ・ボルトの印加として示されているが、他の等しい電圧を利用することも可能である。代わりに、ECD素子によっては、用いられる材料に基づいて、VdatをVcom未満にすることによって、透明にすることが可能なものもある。
【0041】
図示の例では、起動後、信号Vcom及びVdatは、ある特定行に対する選択電圧Vselの印加に備えて、ゼロ・ボルトになる。Vselの印加によって、その行の全てのピクセル素子が透明になる。次に、Vselが取り除かれて、その行のピクセル素子に対するデータ書き込みに備えて、Vcomに特定の電位60が適用される。信号Vcomの電圧レベルの上昇後、ラッチ58からのその行に関するデータ信号が、バッファ59によってTFT52に供給される。これは、時間期間61に生じる。時間期間61は、ECDが完全にその着色(光変調)状態になるのに十分な時間を与えるように設定され、ほぼ10分程度にすることが可能である。実際には、問題となる行のピクセルに関するそれぞれのデータ信号Vdatの電圧は、それぞれのピクセルが呈することになるのが2つの着色状態のうちのどちらであるかによって、Vcomを超える場合もあれば、Vcom未満の場合もある。これらの状態は、やはり、用いられる材料によって、表示されることになる2つの異なる色、または、一方の状態に関する特定の色(Vdat>Vcom)及び――既述のように――もう一方の状態に関する清澄(透明)状態(Vdat<Vcom)を表わすことが可能である。この状況は、図6(a)に示されており、書き込みサイクルの間に、Vdatは2つの値62及び63のいずれかの値をとり、一方、Vcomはこれら2つの値の中間の値64をとる。電位62と64の間、及び、電位63と64の間の電圧差は、用いられる特定のECDに関してあらかじめ決められた安全動作電圧以下である。この安全動作電圧は、ECDに関連した破壊電圧より十分に低いので、信頼性が向上し、電源電圧の揺らぎを許容するが、同時に、駆動電子部品における電流消費を減少させる。
【0042】
データ信号(Vdat)がエレクトロクロミック素子のデータ・ラインに生じた直後に、Vselが再び上昇して、問題となる行のTFTドライバがオンになり、その結果、Vdatのそれぞれの値を個々のエレクトロクロミック素子に送ることが可能になる。
【0043】
書き込み期間61の終了直前に、Vselがもう一度取り除かれ、その後、信号Vdatも取り除かれる。その行内の各ピクセルの状態は、それらのピクセルのVsel及びVdatを浮遊させることによって(すなわち、行選択ライン及びデータ・ラインが電源から切断される――図3(a)〜図3(c)参照)保持され、さらに、同じプロセスがピクセル素子の次のラインについて反復され、以下同様にディスプレイ全体にわたって反復される。最終結果は、ピクセルの全てが、その所望の状態、すなわち、透明または着色状態になるか、または、2つの異なる色(着色状態)のいずれかになる表示である。最後に、ディスプレイの電源が切られるが、異なる画像表示のため、もう一度ディスプレイが起動されて、透明になるまで、これらのピクセル状態は持続する。画像の存続は、一般に、ほぼ数日程度とすることが可能である。
【0044】
ちなみに、図6(a)には、透明化サイクルに関するVcom及びVdatも示されている。ゼロ電圧として示された実線は、透明化サイクル中にこれらのラインを駆動する望ましいやり方であるが、――既述のように――これらの実線を他の公称では等しい電圧(図6(a)に点線で示された)とみなすことが可能であり、あるいは、ECD素子によっては、VdatをVcomより低くして、ディスプレイを透明にする場合もある。
【0045】
ディスプレイを透明にするため、1回につき1行ずつVselを印加することが可能であるが、結果として、ディスプレイを完全に透明にするには、一連のVselパルスが必要になる。あるいは、全ての行に同時にVselを印加することも可能であるが、その場合、透明化操作が全てのピクセルに同時に施されることになる。
【0046】
バッファ59は、行をなす各ピクセル毎にポリシリコンTFTバッファ段を含む、TFTバッファである。これらの段のそれぞれが、それぞれのピクセル列の全てのピクセルのために役立つ。TFTが用いられるのは、ECDの確実な駆動に十分な電流供給能力を備えているためである。TFTには、ECD製造プロセスと互換性のあるプロセスによって製造できるという利点がある。しかしながら、これに関連した、ポリシリコンTFTの使用に関する問題の1つは、その最低出力電圧がECDにおいて許容し得る最高電圧(EDC降伏電圧)を超える可能性があるという点である。典型的なTFT段の最低出力電圧(TFT段のしきい値電圧の値(VTH)に対応する可能性のある)は、例えば、2.5Vであるが、エレクトロクロミック素子は、この点が異なり、最低出力電圧はこれ未満の場合もあれば、これを超える場合もある(例えば、>5V)。説明したばかりの駆動構成では、例えば、2つの表示状態に関するVdat値の中間までVcomを上昇させることによってこの問題が解決される。従って、Vcomが約1.25Vになると、Vdatは、ECDを危険にさらすことなく、それぞれの表示状態に関して0Vまたは2.5Vの値をとることが可能である。というのも、駆動電圧1.25Vは、ECD素子の典型的な降伏電圧値である、1.4Vの不可逆降伏電圧を下回るためである。実際には、本発明は、ECD素子両端の電圧を、ECD素子の降伏電圧より低い、安全動作電圧(Vsafe)未満に保つようにしようとする。
【0047】
図7には、外部コントローラの視点によるピクセル駆動手順が例示されている。図7には、共通信号Vcom、M行の選択信号(Vsel)、データ信号Vdata、ラッチ信号Vlatch、及び、ピクセル素子に対する局所的なデータ信号Vdatが、縦軸として示されている。横軸は時間である。
【0048】
下記のステップが実施される。
【0049】
第1に、電力を加えずに、ディスプレイがコントローラに接続される。第2に、起動ステップにおいて、電力が加えられる。第3に、信号Vselが、ゼロ・ボルトのVdata及びゼロ・ボルトのVcomと同時に、全ての行に加えられる。このようにして、ディスプレイの全てのピクセル素子が、透明状態にされる。第4に、1−M行のピクセル素子が、行順に書き込まれる。これには、シフト・レジスタ57に刻時して記憶される、ある特定行に関するデータ信号Vdataが含まれ、その後、これらのデータは、ラッチ信号70によってラッチされ、それらのデータ・ラインにおけるVdatとして、その行のそれぞれのTFTドライバ52に利用可能になる。次に、その行に関するVselが、信号71として加えられ、その結果、データ信号Vdatによって、それぞれのピクセル素子が光変調状態(着色状態)になるか、あるいは、現行の透明状態に保持される。ピクセル素子行に完全に充電するのに必要な時間である時間TCの終了時に、関連Vsel信号が、低下し、ピクセル素子は、現在の状態を保つ。シフト・レジスタ57が次のピクセル素子行に関するデータ情報Vdataを受信する間、ラッチされたデータ信号Vdatが保持される。全てのデータ情報がシフト・レジスタに書き込まれると、再び、ラッチ信号70が加えられて、この新しい情報が、この新しい行の駆動TFTのデータ・ラインに新しいデータVdataとしてラッチされる。次に、この行のVselが、時間TCの間に上昇し、ディスプレイの全ての行について、順次同様のステップが実施される。全ての行が書き込まれると、ディスプレイは電源を切られ、コントローラからの接続を切られる。先に説明したように、ディスプレイは電源の供給なくディスプレイ情報を維持する。
【0050】
行当りNのピクセル素子とディスプレイ当りMの行が存在し、かつ、外部コントローラ54からシフト・レジスタへのVdataの転送に要する時間がTTFで、既述のように、ピクセルのラインに完全に充電するのに要する時間がTCの場合、単色ディスプレイにその画像データ全体を書き込むのに要する総時間は、次のようになる。
*(N*TTF+TC)
【0051】
この駆動方式は、単純であるが、ディスプレイが大型で、かつ、TCの値も大きい場合には、長時間を要することになる。図8には、より迅速な方式が例示されている。この方式と図7の方式の差は、ある行に関するデータVdataが、時間TCの間に、すなわち、前の行のデータがディスプレイによって取り入れられている間に、シフト・レジスタ57にロードされるという点である。このため、ディスプレイの各行に関する時間N*TTFが有効に短縮される。この方式が実施可能であるためには、充電時間TCと行データ転送時間N*TTFの間に、下記の関係が得られなければならない。
TC≧N*TTF
【0052】
本発明は、ECDディスプレイにおけるグレースケール制御の利用も想定している。図9には、これを実現するための方式が示されているが、この場合、ディスプレイに充電するための総時間が、3つの「フレーム」または「書き込み期間」に分割される。シフト・レジスタ57へのデータVdataのロード及びこれらのデータのラッチは、図7及び図8に関連して既述のように、ディスプレイの各行毎に実施される。第1のフレームの場合、それぞれの行データに関して、各行のピクセル素子に充電する時間長がTC1である。第2のフレームでは、シフト・レジスタ57のロード及びラッチ58によるラッチが、再び実施されるが、この時間、すなわち、ラッチされたデータVdatに関する充電時間が、TC2であり、TC1より長い。最後に、TC2より長い充電時間TC3にわたって、このプロセスが反復される。こうして、各ピクセルの着色の強さが、一連のフレームにわたって、各ピクセルの充電を続行させるか否かによって決まる、3ビットのグレースケールが生成される。従って、各フレームは、グレースケールにおける「ビット」を構成する。
【0053】
Mのフレームが存在する一般的な場合、それぞれのフレームの充電時間重み付けは、形式の1つでは、次のように表わすことが可能である
TCn=R(n)*TC0
ここで、n=0、1、2、…M−1、R(n)は補正関数であり、TC0は、通常、第1のフレームに当てはまる、最短充電期間である。望ましい実施形態の場合、R(n)=2n、すなわち、それぞれの充電時間TC1、TC2、TC3等が、2進シーケンスに従うので、TC2=2*TC1、TC3=2*TC2等になる。これには、コントローラ設計の複雑性が最も少ないという利点がある。ただし、他の重み付け構成も可能である。例えば、線形重み付けの場合、充電回数は、次のように表わすことが可能である。
TCn=(nk+1)TC0
ここで、kは定数であり、n=0、1、2、…M−1
【0054】
上述のフレーム・ベースの方式は、通常、「フレーム」という用語を用いることによって示唆される可能性のある、動画の表示とは無関係である。本事例の場合、全てのフレームの画像が同じである。各フレーム毎に変化するのは、各行の個々のピクセル素子に供給される電荷量だけである。従って、画像は静止画像であり、本発明の先行実施形態における事例とみなされる。
【0055】
グレースケールの分解能を改良するため、ただの3つより多い数のフレームに頼ることになる。
【0056】
行をなす各ピクセルに関する正しいグレースケール・データを得るため、外部コントローラ54は、必要とされる2進値に基づいて、フレームの適合するものについて、透明または着色(または2つの異なる色)に適したデータ信号を出力するように構成されている。一例として、下記の表1には、10のピクセル素子からなる行について、2、4、1、0、5、7、7、6、3、0(0〜7のスケールからの)のグレースケールを表示するための、3つのフレームにわたるその行に関するデータ出力が記載されている。
【0057】
【表1】

【0058】
Vdataは、「着色」または「透明」に関する適正な電圧値をとるか、または、Vdatを浮遊させて、前のフレームに関する状態が乱されないようにする。
【0059】
グレースケールの駆動を実現する代替方法は、非アクティブ・フレームの間、Vcomに関連したECD素子に低下させた電圧Vdatを印加することである。この状況が、図6(a)に示されており、ここでは、着色状態2に関するVdatの通常値が黒の実線で示され、低下値が破線で示されている。実線として示された高電圧は、高速の色変化を生じさせ、破線として示された低電圧は、緩慢な変化を生じさせる。従って、データ・ラインにおける浮遊状態(表1における状態「F」)を省いて、代わりに、ただ単に、関連フレームの間、「緩速」(低)駆動電圧「CL」として、前の通常(高)「着色」駆動電圧「CH」を継続することが可能である。厳密に言えば、このアプローチは、インアクティブ・フレームの間の、色変化プロセスを中断すべき場合に、実際には、同じ方向において、ただし、はるかに低い速度で、プロセスを続行することを表わしている。速度次第で、この継続される変化は、無視できるほどわずかなものにすることが可能である。
【0060】
この代替グレースケール駆動シナリオが、下記の表2に示されている。
【0061】
【表2】

【0062】
この代替グレースケール駆動方式について可能性のある欠点の1つは、バッファが、3つの駆動状態、すなわち、透明(「0」)、着色高(「CH」)、及び、着色低(「CL」)状態の任意の1つを備えることが必要になるという点である。もう1つの変形方式では、透明状態(「0」)が、着色低(「CL」)状態に置き換えられる。これには、バッファ設計の複雑性が、3つの状態の代わりに、たったの2つの状態に軽減されるという利点がある。この方式が、表3として下記に示されている。
【0063】
【表3】

【0064】
説明したばかりのグレースケール駆動方式の3つのバージョン全てについて、最初に、駆動信号として、全て「0」を加えることによって、ディスプレイが透明になる。
【0065】
グレースケール方式を実施するには、ECDがそのVmaxを超えないようにするため、その出力電圧が制限された定電流源としてバッファ59を実現するのが望ましい。この場合、この電流がそれぞれのピクセル素子に加えられている時間長を制御することによって、これらのピクセル素子に送り込まれる電荷量が線形に調節される。
【0066】
本発明の説明は、アクティブ・マトリックスECDディスプレイに関連して行なわれたが、直接駆動またはパッシブ・マトリックス・タイプのECDにおいて実施することも可能である。
【0067】
アクティブ・マトリックス駆動を利用する場合、これは、TFTタイプ駆動に制限されるわけではなく、代わりに、例えば、CMOS素子をベースにすることも可能である。
【0068】
図9には、グレースケール駆動構成における順次充電時間の値が順次増大する方式が示されているが、充電時間の値が減少する方式も等しく考えられる。これは、充電時間の変化と時間との関係がいかなるものであろうと、例えば、その関係が2進であるか線形であるかにかかわらず、当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】エレクトロクロミック素子の3つの既知形態に関する概略図である。
【図2】既知の直接駆動方式及びパッシブ・マトリックス駆動方式を示す概略図である。
【図3】既知の直接駆動方式及びパッシブ・マトリックス駆動方式を示す概略図である。
【図4】ECDのアクティブ・マトリックス駆動構成の概略図である。
【図5】本発明による電気光学装置の実施形態の1つに関する概略図である。
【図6】本発明の態様におけるアクティブ・マトリックス駆動方法の波形図である。
【図7】本発明の態様におけるアクティブ・マトリックス駆動方法の波形図である。
【図8】図7の駆動方法と同様であるが、ECDのより迅速な充電に適した駆動方法の波形図である。
【図9】本発明による電気光学装置のグレースケール・バージョンを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
50 表示領域
51 エレクトロクロミック・ピクセル素子
52 TFT
54 外部コントローラ
56 シフト・レジスタ
57 シフト・レジスタ
59 バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の電極を備え、前記第1及び第2の電極間に印加される電圧の所定の安全動作電圧値Vsafeを有する、選択的に第1の表示状態及び第2の表示状態にすることが可能なエレクトロクロミック素子と、
前記第1の電極を駆動する第1の電極駆動信号、及び、前記第2の電極を駆動する第2の電極駆動信号を送り出すための駆動段が含まれており、前記駆動段に、外部コントローラから駆動信号を受信し、緩衝された第2の電極駆動信号として、この駆動信号を前記エレクトロクロミック素子に供給するためのポリシリコン薄膜トランジスタ・バッファが含まれることと、前記駆動段が、前記エレクトロクロミック素子をその第1の表示状態にするため、前記第1の電極駆動信号として第1の電圧V1を印加し、前記第2の電極駆動信号として第2の電圧V2を印加するように構成され、また、前記エレクトロクロミック素子を第2の表示状態にするため、前記第1の電極駆動信号として第3の電圧V3を印加し、前記第2の電極駆動信号として第4の電圧V4を印加するように構成されていることと、ここで、
2>V1
3>V4
|V1−V2|≦Vsafe、及び、
|V3−V4|≦Vsafe
であることを特徴とする、
電気光学装置。
【請求項2】
V1=V3であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気光学素子の2次元アレイが含まれることと、前記バッファに、行をなす前記エレクトロクロミック素子のそれぞれについて1つずつ、複数のポリシリコン薄膜トランジスタ駆動素子が含まれることと、前記駆動段には、シフト・レジスタと、前記外部コントローラと前記バッファ段の間に挿入されたラッチが含まれていて、その結果、あるエレクトロクロミック素子行に関する前記外部コントローラからの駆動信号(Vdata)を前記シフト・レジスタに順次ロードして、ラッチし、前記バッファを介して、ある電気光学素子行に前記第2の電極駆動信号(Vdat)として渡すことが可能になることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
1=V3≒1/2(V2−V4)であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記駆動段が、ラッチされた駆動信号(Vdata)が前記アレイのある行に加えられている間に、次の行の駆動信号(Vdata)が前記シフト・レジスタにロードされるように構成されることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記バッファが、定電流出力を供給するように構成され、前記駆動段が、一連の順次書込み操作で、前記エレクトロクロミック素子にデータ信号を書き込むように構成されていることと、前記エレクトロクロミック素子の選択された素子における着色の強さは、前記選択されたエレクトロクロミック素子のそれぞれについて所望の着色の強さが得られるまで、1回以上の書込み操作で順次変更されることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記順次書込み操作が、さまざまな追加着色強さを実現するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記順次書込み操作が、2進法で連続して増減する、追加着色強さを実現するように構成されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
着色の強さが増大しないフレーム期間中の、前記第2の電極駆動信号が、浮遊状態を呈することを特徴とする、請求項6〜8の任意の1つに記載の装置。
【請求項10】
着色の強さが増大しないフレーム期間中の、第2の電極駆動信号が、着色の強さが増大する場合のフレーム期間中に想定される第2の電圧値V2よりも低い、第2の電圧値V2となることを特徴とする、請求項6〜8の任意の1つに記載の装置。
【請求項11】
安全電圧値Vsafeが、約1.4Vであり、第2の電圧V2が、最大約2.5Vであり、第4の電圧V4が、約0Vであり、第1の電圧V1及び第3の電圧V3が、最大約1.25Vであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
駆動段は、第1、第2、第3、及び、第4の電圧V1〜V4の印加前に、前記エレクトロクロミック素子を初期透明状態にするため、それぞれ、第5及び第6の電圧V5及びV6を前記第1及び第2の電極に印加するように構成されていることと、ここで、V5≒V6。であることを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の装置。
【請求項13】
5=V6=0vであることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の表示状態が、前記エレクトロクロミック素子が第1の色を表示する、第1の着色状態であることと、前記第2の表示状態が、前記エレクトロクロミック素子が第2の色を表示する、第2の着色状態であることを特徴とする、請求項10〜13の任意の1つに記載の装置。
【請求項15】
前記第1の表示状態が、前記エレクトロクロミック素子がある特定の色を表示する、着色状態であることと、前記第2の表示状態が、エレクトロクロミック素子が透明な、透明状態であることを特徴とする、請求項10〜13の任意の1つに記載の装置。
【請求項16】
第1及び第2の電極を備え、前記第1及び第2の電極間に印加される電圧の所定の安全動作電圧値Vsafeを有する、選択的に第1の表示状態及び第2の表示状態にすることが可能なエレクトロクロミック素子を駆動するための方法であって、
前記第1及び第2の電極間に前記安全動作電圧未満の第1の電圧を一方向に印加して、前記エレクトロクロミック素子を前記第1の表示状態にするか、または、前記第1及び第2の電極間に前記安全動作電圧未満の第2の電圧を逆方向に印加して、前記エレクトロクロミック素子を前記第2の表示状態にするステップが含まれており、前記第1及び/または第2の電圧が、ポリシリコン薄膜トランジスタ・バッファを介して印加されることを特徴とする、
方法。
【請求項17】
前記第1の表示状態が、透明状態であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の電圧がほぼゼロ・ボルトであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エレクトロクロミック素子が、2次元アレイをなすように配列された複数のこうしたエレクトロクロミック素子の1つであることと、あるエレクトロクロミック素子行の電極に対する駆動信号(Vdata)が、シフト・レジスタに順次ロードされ、ラッチされて、その後、前記ポリシリコン薄膜トランジスタ・バッファを介して、前記電気光学素子行に渡されることを特徴とする、請求項16〜18の任意の1つに記載の方法。
【請求項20】
前記ラッチされた駆動信号(Vdata)が前記アレイのある行に加えられている間に、次の行に対する駆動信号(Vdata)が前記シフト・レジスタにロードされることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バッファによって、定電流出力が送り出されることと、前記駆動段では、一連の順次書込み操作で前記電気光学素子にデータ信号が書き込まれることと、前記エレクトロクロミック素子のうち選択された素子の着色の強さが、前記選択されたエレクトロクロミック素子のそれぞれについて所望の着色の強さが得られるまで、1回以上の書込み操作で順次変更されることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記順次書込み操作によって、さまざまな追加着色強さが実現されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記順次書込み操作によって、2進法で連続して増減する、追加着色強さが実現されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記バッファが、前記第1の表示状態を実現するため、前記第1の電極に第1の値の電圧(Vdat)を印加するか、または、前記第2の表示状態を実現するため、前記第1の電極に第2の値の電圧(Vdat)することと、前記第2の電極には、前記第1と第2の電圧値の中間の第3の値の電圧を印加することを特徴とする、請求項19〜23の任意の1つに記載の方法。
【請求項25】
前記第3の電圧値が、前記第1の電圧値と前記第2の電圧値のほぼ中間に位置することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記バッファに、行をなすそれぞれのエレクトロクロミック素子のための複数のポリシリコン薄膜トランジスタ段が含まれることと、前記薄膜トランジスタ段が、それらの段のしきい値電圧の値に関連していることと、前記第2の電圧値が、前記しきい値電圧の値だけ前記第1の電圧値より高いことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1及び第2の表示状態が、それぞれ、前記エレクトロクロミック素子が異なる色を表示する、第1及び第2の着色状態であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
図面のうち図5にほぼ示された、あるいは、図5に関連して前述の電気光学装置。
【請求項29】
図面のうち図6、7、8、または、9に関連してほぼ前述のエレクトロクロミック素子を駆動するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−17971(P2007−17971A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184262(P2006−184262)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(504000096)エヌテラ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】NTERA LIMITED
【Fターム(参考)】