電気刺激を利用した適応症の治療
【課題】
様々な適応症を治療することが可能なシステム及び方法が必要とされている。
【解決手段】
一実施形態において、方法は、被験者の皮膚の下方にインプラント全体を埋め込む工程を含む。このインプラントは、表面カソード電極及び表面アノード電極の一方の下方に位置する皮下組織から脛骨神経まで延在するのに十分な長さを有する受動電気導体を備える。これらの表面電極は、被験者の皮膚上に離間関係をもたせて位置決めされ、これらの電極の一方は、電流の部分が導体を介して脛骨神経に伝達され、電流が脛骨神経を通り流れ、表面カソード電極及び表面アノード電極の他方に戻るように、電気導体のピックアップ端部の上方に位置決めされる。電流は、電流の部分がインプラントを通り流れて、脛骨神経を刺激するように、表面カソード電極と表面アノード電極との間に印加される。
様々な適応症を治療することが可能なシステム及び方法が必要とされている。
【解決手段】
一実施形態において、方法は、被験者の皮膚の下方にインプラント全体を埋め込む工程を含む。このインプラントは、表面カソード電極及び表面アノード電極の一方の下方に位置する皮下組織から脛骨神経まで延在するのに十分な長さを有する受動電気導体を備える。これらの表面電極は、被験者の皮膚上に離間関係をもたせて位置決めされ、これらの電極の一方は、電流の部分が導体を介して脛骨神経に伝達され、電流が脛骨神経を通り流れ、表面カソード電極及び表面アノード電極の他方に戻るように、電気導体のピックアップ端部の上方に位置決めされる。電流は、電流の部分がインプラントを通り流れて、脛骨神経を刺激するように、表面カソード電極と表面アノード電極との間に印加される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1001] 本出願は、参照により全体としてその開示が本明細書に組み込まれる、2008年6月27日に出願され、「Treatment of Indications Using Electrical Stimulation」と題された、米国非仮出願第12/147,937号の一部継続出願であり、該出願に基づく優先権を主張し、該出願の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[1002] 本発明は、概して医療デバイスに関し、より詳細には、電気刺激治療において使用するためのデバイス及び方法に関する。
【0003】
[1003] 神経細胞は、活動電位又は神経インパルスを伝達するための軸索と、かかるインパルスを受け取るための樹状突起とから構成される。通常は、神経は、ある神経細胞のインパルス送信を行なう軸索から、隣接する神経細胞のインパルス受信を行なう樹状突起へと、活動電位を伝達する。シナプスで、軸索は、神経伝達物質を分泌して、次の神経細胞の樹状突起上のレセプタに新たな電流を生じさせる。
【0004】
[1004] いくつかの病理学的状態においては、活動電位の伝達が弱められるため、通常の機能を回復するためには神経インパルスの活性化が必要となる。神経及び筋肉などの電気興奮性の体組織は、皮膚に対して外部から接触された電極間に印加される電場によって活性化され得る。電流が、カソード電極とアノード電極との間で皮膚を介して流れ、電極の下方に位置する神経及び筋肉中において活動電位を誘発する。この方法は、疼痛を緩和する非貫通経皮的電気神経刺激装置(TENS)、運動用の筋肉を活性化する治療的電気刺激装置、日常生活の作業用の筋肉を活性化する機能的電気刺激装置、及び損傷を受けた骨の再生を促進する刺激装置を含む、様々なタイプの刺激装置における利用で知られている。
【0005】
[1005] 他の病理学的状態においては、有用な目的にかなわない活動電位が伝達されるため、通常の機能を回復するためには不要な神経インパルスを遮断することが必要となる。高周波刺激が、神経軸索の一時的な可逆性遮断を生じさせ得ることが報告されている。一般的には、この周波数範囲は、500〜30,000Hzの間である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[1006] 神経インパルスを活性化又は遮断するための神経の刺激は、典型的には、埋込み型の刺激装置(神経プロテーゼ(neural prosthesis or neuroprosthesis)としても知られている)を用いることにより達成される。神経プロテーゼは、聴力の回復、麻痺した筋肉における動作の回復、尿路の機能を制御する神経における活性の変調、並びに疼痛及び振戦の抑制のために開発されてきた。いくつかの場合においては、神経プロテーゼは、例えば痛覚又は振戦を遮断するためなど、望ましくない神経活性を抑止又は抑制するように設計される。しかし、長期間の使用が意図される神経プロテーゼは全て、電子構成要素及びしばしばバッテリを含む刺激装置の埋込みが必要となる。疼痛及び振戦を抑制する場合においては、活性化された神経が、中枢神経系内の神経回路の活性を反射的に抑止する。望ましくない神経活性を低減させるこの間接的モードは、時として神経変調と呼ばれる。
【0007】
[1007] 表面電気刺激装置は、例えば痙性過緊張を低減するためなど、反射的に使用される。体表面に装着された電極を介した刺激の欠点は、標的とされる組織と共に、多数の非標的組織を同時に活性化させ得る点である。この選択性の欠如により、望ましくない感覚及び/又は望ましくない動作がしばしば引き起こされる。さらに、電極間を流れる電流の殆どが、標的組織よりも電極に近い組織を介して流れるため、体内の深部に位置する組織を十分に刺激することが困難又は不可能となるおそれがある。選択性は、埋め込まれた刺激装置から標的組織の近傍まで電流をルーティングする絶縁ワイヤを体内に埋め込むことによって改善され得る。この方法は、例えば、心臓ペースメーカ、脊柱刺激装置、深部脳刺激装置、及び仙骨神経根刺激装置などにおいて使用される。ワイヤの非絶縁端部を収容するカフ(cuffs)を末梢神経の周囲に配置して、電流の殆どをこの神経の近傍に制限し、周囲組織への電流の拡散を限定することにより、選択性を改善することもできる。埋込み型の刺激装置は、高価であり、しばしば体外のコントローラ及び/又は電源を要する。このような埋込み型の刺激装置内のバッテリは、手術を伴う定期的な交換を要する。
【0008】
[1008] 少数の事例においては、刺激ワイヤが、体組織内に埋め込まれ、皮膚を通過して(貫通経皮的に)体外に位置するコネクタへと続き、このコネクタに外部刺激装置が装着される。外部刺激装置は、典型的には埋込み型の刺激装置よりも安価であるが、貫通経皮ワイヤは、感染症の導入源を与えるため、日常的な洗浄及びメンテナンスが必要となる。これにより、貫通経皮電極の使用は、短期的用途にほぼ限定されてきた。かかる問題を克服し、治療すべき障害に応じて神経インパルスを活性化又は遮断することが可能なシステムが必要とされている。例えば、脛骨神経及び/又は総腓骨神経(common peroneal nerve)の刺激による尿失禁の治療、三叉神経に関連する神経又は上部頸椎に隣接する神経の刺激による頭痛及び/又は顔面痛の治療、人工関節置換処置と組み合わせた又はかかる処置前の治療、創傷治癒の促進、骨折又はひびなどの骨の欠陥の治療、関節痛及び/又は関節炎痛の軽減、並びに/或いは筋萎縮の軽減又は防止など、様々な適応症を治療することが可能なシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1009] 電流により体組織を刺激することによって標的体組織(例えば、骨、軟組織、筋肉、靭帯、神経、等々)を治療するシステム及び方法が、本明細書において説明される。一実施形態において、方法は、被験者の皮膚の下方にインプラント全体を埋め込む工程を含む。このインプラントは、表面カソード電極(若しくは複数の表面カソード電極)又は表面アノード電極(若しくは複数の表面アノード電極)のいずれかの下方に位置する皮下組織から脛骨神経まで延在するのに十分な長さを有する受動電気導体を備える。これらの表面電極は、被験者の皮膚上で離間関係において位置決めされ、これらの電極の一方は、電流の一部が導体を介して脛骨神経に伝達され、電流が脛骨神経を通り流れ、表面カソード電極及び表面アノード電極の他方に戻るように、電気導体のピックアップ端部の上方に位置決めされる。電流は、電流の一部がインプラントを通り流れて、脛骨神経を刺激するように、表面カソード電極と、表面アノード電極と、の間に印加される。いくつかの実施形態において、方法は、総腓骨神経の電気刺激、頭痛及び/又は顔面痛を治療するための三叉神経に関連する神経又は上部頸椎に隣接する神経の刺激、人工関節置換処置と組み合わせて若しくはかかる処置前に加えられる刺激、創傷治癒を促進するための刺激、骨折若しくはひびなどの骨欠陥を治療するための刺激、関節痛及び/又は関節炎痛を軽減するための刺激、及び/又は、筋萎縮を軽減若しくは防止するための刺激を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[1010]埋込み電気導体、表面カソード電極、表面アノード電極、及び埋込み電気復路導体を有する、本発明の一実施形態の三次元概略図である。
【図2】[1011]伸展された状態の膝の筋組織及び神経系の図である。
【図3】[1012]屈曲された状態の膝の筋組織及び神経系の図である。
【図4】[1013]ネコの概略図内に配設された、一実施形態によるインプラントの概略上面図である。
【図5】[1014]第1の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図6】[1015]第2の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図7】[1016]第3の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図8】[1017]第4の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図9】[1018]図5〜図8のシステムの各構成配置に関連する表面しきい値電流を示すグラフである。
【図10】[1019]創傷を治療するための一適用例を示す、システムの側面概略図である。
【図11】[1020]創傷を治療するための別の適用例を示す、システムの上面概略図である。
【図12】[1021]創傷を治療するための別の適用例を示す、システムの上面概略図である。
【図13】[1022]創傷を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図14】[1023]深部創傷を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図15】[1024]骨折を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図16】[1025]骨の欠陥及び/又は筋肉を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図17】[1026]顔の左側内の三叉神経及び一実施形態によるインプラントの図である。
【図18】[1027]上部頸椎に隣接する区域及び一実施形態によるインプラントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1028] 標的体組織を電気的に刺激するために電流をルーティングすることが可能な受動電気導体の使用を含む、システム及び方法が、本明細書において説明される。かかるデバイス及び方法は、周波数及び治療すべき障害に応じて、神経インパルスを活性化又は遮断するように使用することが可能である。
【0012】
[1029] 本明細書において説明されるようなシステムは、例えば、インプラント、電気パルス発生器などの刺激装置、外部電極、及び電源などを含み得る。被験者中の標的体組織を電気的に刺激して、神経インパルスを活性化又は遮断するために、インプラントが用意される。このインプラントは、埋め込まれると、被験者の皮膚上に離間関係において位置決めされた表面カソード電極と、表面アノード電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分のための導電性経路を形成することが可能となり、電流のこの一部分を標的体組織に伝達して、神経インパルスを活性化又は遮断する。かかるインプラントを組み込むシステム及び方法が、本明細書において説明される。
【0013】
[1030] 本明細書において説明されるように、「被験者」は、例えばヒトを含む動物であることが可能である。体組織は、例えば、神経組織(末梢神経系又は中枢神経系中の)、神経、筋肉(骨格筋、呼吸筋、又は心筋)、又は器官(例えば脳、蝸牛、視神経、心臓、膀胱、尿道、腎臓、及び骨など)であることが可能である。
【0014】
[1031] 本明細書において説明されるシステム、方法、及びデバイスは、神経インパルスを活性化又は遮断するための刺激が望ましいものとなり得る様々な症状を治療するために使用され得る。かかる症状には、例えば、運動障害(例えば、痙縮、過緊張、硬直、振戦及び/又は筋力低下、パーキンソン病、ジストニー、脳性麻痺)、筋障害(例えば筋ジストロフィー)、失禁(例えば、膀胱障害)、尿閉、疼痛(例えば、偏頭痛、顔面痛、頸痛、腰痛、他の医学的症状による疼痛)、癲癇(例えば、全身卒中障害及び部分卒中障害)、脳血管障害(例えば、卒中、動脈瘤)、睡眠障害(例えば、睡眠時無呼吸)、自律神経障害(例えば、胃腸障害、心血管障害)、視覚障害、聴覚障害、バランス障害、及び神経精神障害(例えば、抑うつ)などが含まれ得る。さらに、これらのシステム、方法、及びデバイスは、骨成長(例えば骨折の治癒においてなど、必要に応じて)、創傷治癒、又は組織再生を促進するために使用することが可能である。さらに、これらのシステム、方法、及びデバイスは、関節痛及び/又は関節炎痛を抑止又は軽減するためにも使用することが可能である。
【0015】
[1032] さらに、本明細書において説明されるシステム、方法、及びデバイスは、例えば、脊髄損傷、卒中、脳損傷、又は神経障害より生じた長期的な障害による、筋萎縮、静脈血栓、及び関節硬直の防止において使用することが可能である。さらに、本明細書において説明されるシステム、方法、及びデバイスは、人工関節置換若しくは他の外科手術、骨折、又は様々な他の理由など、運動抑止をもたらす急激な又は短期間の障害の場合にも使用することが可能である。かかる使用のいくつかの例が、以下に説明される。
【0016】
[1033] 本明細書において説明される他の治療処置及び方法は、尿失禁の治療における脛骨神経及び/又は総腓骨神経の刺激において使用するため、頭痛及び/又は顔面痛の治療における三叉神経刺激又は頸椎に隣接する神経の刺激において使用するため、人工関節置換処置と組み合わせて使用するため、関節痛及び/又は関節炎痛を軽減するための用途において使用するため、並びに、足病治療用途においてなどの骨に装着される筋肉のリハビリテーションを行なうための用途において使用するためのシステム及び方法を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるシステム及び方法は、不動の肢又は身体部分に動作を与えるために使用される。いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるシステム及び方法は、例えば肢などを通る血流を上昇させるため、筋萎縮を軽減又は除去するため、及び/又は筋肉の成長を促進するために使用することが可能である。いくつかの実施形態においては、ひびの入った肢に施されるギブスなどの装具の中に、患者の体内のインプラントへ電流を印加するために使用することの可能なパルス発生器(以下においてより詳細に説明される)を埋設することが可能である。
【0017】
[1034] 標的体組織を刺激するために、例えば、刺激又は遮断すべき神経のタイプ、神経の分布する組織、神経のサイズ、治療すべき被験者、症状のタイプ、症状の重篤度、及び治療に対する被験者の受容力など、多数の要素に応じて特定の周波数を印加することが可能である。一般的には、遮断のためには、高周波が有効であり、例えば、100〜30,000Hzの間の範囲の、又は代替的には100〜20,000Hzの間の範囲の周波数にて循環波形を印加することが可能である。代替としては、この循環波形は、100〜10,000Hzの間の範囲、又は200〜5,000Hzの間の範囲の周波数にて印加することが可能である。刺激又は活性化のためには、例えば、1〜100Hzの間の範囲、又は代替的には1〜50Hzの間の範囲の周波数など、低周波が一般的に使用される。代替としては、周波数は、1〜20Hzの間の範囲であることが可能である。いくつかの場合においては、周波数は、1〜150Hzの間の範囲であることが可能である。
【0018】
[1035] 図1は、皮膚10、神経鞘14に覆われた神経12、及び筋肉16を含む、被験者の体組織の複数部分の概略図である。さらに、図1は、インプラント18、表面カソード電極20、及び表面アノード電極22を図示する。インプラント18は、被験者内の神経12などの標的体組織を電気的に刺激して、神経インパルスを活性化又は遮断するために用意される。インプラント18は、埋め込まれると、表面カソード電極20と表面アノード電極22との間を流れる電流の少なくとも一部分のための導電性経路を形成する。
【0019】
[1036] 表面カソード電極20及び表面アノード電極22は、被験者の皮膚10上で離間関係において位置決めされると、皮膚10と電気接触し、標的体組織に電流を伝達する。表面カソード電極20及び表面アノード電極22は、導電性プレート、導電性シート、導電性ゲル電極、電極ペースト若しくは電極ゲルにより部分的にコーティングされ得る導電性ゴム電極又は導電性ポリマー電極、又は湿性吸収性パッド電極から選択され得る。例えば、5平方センチメートルのなどの表面積を有する、筋肉を刺激するために使用されるタイプの自動接着性ヒドロゲル電極を使用することが可能である。いくつかの実施形態においては、より広い又はより狭い表面積を有する電極を、代替として使用することが可能である。典型的には80%以上の白金及び20%以下のイリジウムからなる、白金イリジウム電極を使用することも可能である(例えば、85%白金−15%イリジウム合金、90%白金−10%イリジウム合金など)。皮膚10上の表面カソード電極20及び表面アノード電極22の位置は、標的体組織の位置及び性質に応じて様々であってよい。
【0020】
[1037] インプラント18は、埋め込まれた際に、表面カソード電極20の下方に位置する皮下組織から例えば神経12などの標的体組織まで延在するのに十分な長さを有する受動電気導体24を備える。電気導体24は、金属ワイヤ、炭素繊維、導電性ゴム又は他の導電性ポリマー、又はゴム内の導電性塩水から形成することが可能である。心臓ペースメーカのリードにおいて使用されているタイプの、多重撚りの、テフロン(登録商標)絶縁保護された、ステンレス鋼ワイヤ導体を使用することも可能である。医療用途の部品において一般的に使用されているMP35N合金(非磁性のニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金)もまた適している。電気導体24は、ピックアップ端部26及び刺激端部28を有し、ピックアップ端部26と、刺激端部28と、の間において絶縁保護されている。
【0021】
[1038] (埋め込まれた場合の)導体24のピックアップ端部26及び刺激端部28と、周囲の体組織と、の間の界面の電気インピーダンスは、これらの端部26、28の表面積を拡大することにより低減させることができる。これを目的として、ピックアップ端部26及び刺激端部28の一方又は両方が、電気導体24のピックアップ端部26及び刺激端部28と、周囲の体組織と、の間の界面の電気インピーダンスを低減させるのに十分な表面積を有する電気的終端30を形成する。ピックアップ端部26は、標的体組織が刺激されて神経インパルスが活性化又は遮断されるように、電流の十分な部分が、表面カソード電極20と、表面アノード電極22と、の間で体組織を介して流れるのではなく、電気導体24を介して流れることが可能となるのに十分な表面積を有する電気的終端30を形成する。刺激端部28もまた、標的体組織(すなわち神経12)に電流のこの十分な部分を送るために、電気的終端30を形成する。
【0022】
[1039] 終端30は、体組織との高導電率接触を実現し、体組織と、導体24と、の間の電気インピーダンスを低下させるのに十分な表面積を有する。この表面積が最小である場合には、導体を介して終端へ流れる電流の量は、効力のない量にまで低減される。必要な表面積は、体組織と、受領側の終端30又はピックアップ端部26及び刺激端部28と、の界面の電気インピーダンスの知識によって、決定することが可能である。端部26、28の金属終端30の表面積を例えば約0.5cm2にすることにより、有利な結果が得られている。代替的に、端部26、28の終端30が、より広い又はより狭い表面積を有することが可能である。組織と、端部26、28の終端30と、の間の各界面の電気インピーダンスは、表面電極20、22間の全ての皮下組織の電気インピーダンスの約5倍であることが可能である。例えば、組織インピーダンスの典型的な値は、200Ωである。導体24のインピーダンスは、例えば5Ωなど、非常に小さくなるように選択されてよい。かかる場合においては、終端30の2つの界面インピーダンスと、導体インピーダンスと、の合計は、約2000Ωになり、すなわち組織インピーダンスの10倍になり得る。したがって、表面電極20、22間に印加される電流の約10%が、電気導体24を介して標的体組織へ流れる。標的体組織が筋肉16に通じる神経12である場合には、標的筋肉16の有効な筋収縮を生じさせるのに必要とされる表面電極20、22間の電流の量は、表面電極20、22間において直に接している皮下組織中の神経終末部の活性化のしきい値レベルを下回るように留められる。これにより、表面電極20、22の下方における局所的感覚又は局所的筋収縮を殆ど又は全く伴うことなく標的筋肉16を活性化させることが可能となるため、これは有利な関係である。
【0023】
[1040] 種々の形状、材料、及び空間的配置からなる終端30を用いることが可能である。例えば、終端30は、コイル、螺旋、カフ、ロッド、又は、楕円形若しくは多角形の形状のプレート又はシートの形態において、拡大表面を形成することが可能である。一例として、図1は、電気導体24のピックアップ端部26では楕円形の形状のプレート又はシートとして、及び刺激端部28ではカフの形態で、終端30を示す。カフ又はその一部分は、神経12の神経鞘14の全体又は一部を包囲する又は部分的に包囲することが可能である。カフ若しくはその一部分を、神経鞘14の近位に位置決めすることが可能であり、又は、カフ若しくはその一部分の内方表面を、神経鞘14に直接的に接触させることが可能である。
【0024】
[1041] 表面積約0.5cm2及び厚さ1mmである、又は、例えば金属フォイル及びステンレス鋼メッシュから作製され、表面積約0.5cm2及び厚さ0.3mmである、楕円の形状のステンレス鋼プレート又はステンレス鋼シートによって、有利な結果を得ることが可能である。神経カフの形態の導体の終端30については、例えば金属フォイル又はステンレス鋼メッシュから作製され、表面積0.5〜1cm2及び厚さ0.3mmである神経カフを使用することが可能である。さらに、例えば長さ5mm〜15mmの範囲であり、内径4mm〜6mmを有し、厚さ1mmであるシラスティックエラストマーカフもまた適している。
【0025】
[1042] いくつかの実施形態においては、終端30は、電気導体24の非絶縁端部26、28から、又は他の導電性若しくは容量性材料から形成することが可能である。いくつかの実施形態においては、終端30は、電極を含むことが可能である。終端30は、十分な表面を形成するために、ピックアップ端部26又は刺激端部28の長い非絶縁部分をコイル状にする、螺旋状にする、又は織成することにより形成することが可能である。したがって、終端の表面積は、より短い長さの電気導体24の表面積に対して「拡大」される。これは、小スペース内における終端30の有効表面積を増大させ、それにより、体組織とのより高い導電率の接触を実現し、体組織と、導体24と、の間の電気インピーダンスを低下させて、体組織中よりもむしろ導体24中に電流を流すことを可能にする。これにより、十分な電流が導体24中に供給されて、標的組織を刺激する。代替としては、事前作製された終端30(例えば、楕円又は多角形の形状のプレート又はシート)を、ピックアップ端部26及び/又は刺激端部28に直接的に装着することが可能である。さらに、終端30は、標的体組織を通る電流の流れを最大化するために、導電性材料でコーティング又は改良することが可能である。
【0026】
[1043] 終端30の空間的配置は、様々になすことが可能である。例えば、複数の終端30を、体組織の様々な部分に取り付けることが可能である。いくつかの実施形態においては、終端30は、神経12の周囲に配置される包囲カフ32内に封入された密集接触部の形態をとることが可能である。この包囲カフ32は、例えば導電性シリコーンゴムで形成することが可能である。
【0027】
[1044] 電気インピーダンスは、終端30上に導電性コーティング、容量性コーティング、又は酸化物層を設けることによって、さらに低減させることが可能である。このコーティングは、例えば組織が中へと成長し得る複雑な表面を提供することによって、組織と、導体と、の間の電気伝導力を向上させる構造的特性及び電気的特性を有する材料から選択することが可能である(例えば、ポリ−ジエトキシ−チオフェンなどのポリマー、又は、タンタル及び焼結イリジウムを含む適切な酸化物層など)。さらに、終端30は、抗炎症効果、抗菌効果、又は組織内部成長効果をもたらすコーティングを有することが可能である。このコーティングは、例えば、抗炎症剤、抗菌剤、抗生物質、又は組織内部成長促進剤から選択される物質が可能である。
【0028】
[1045] いくつかの実施形態においては、図1に図示されるように、電気復路導体34を備える第2のインプラントを、インプラント18と共に含むことが可能である。電気復路導体34は、標的体組織から、表面アノード電極22の下方に位置する皮下組織まで延在するのに十分な長さのものであることが可能である。電気復路導体34は、標的体組織から表面アノード電極22まで、低インピーダンス導電性経路を形成し、それにより、標的組織を通るように電場を集中させる。電気復路導体34は、例えば金属ワイヤ、炭素繊維、導電性ゴム若しくは他の導電性ポリマー、又はゴム内の導電性塩水から形成することが可能である。電気復路導体34は、集電端部36及び復路端部38を有し、これらの端部36、38の間において絶縁保護される。集電端部36及び復路端部38は共に、電気復路導体34の集電端部36及び復路端部38と、周囲の体組織と、の間の界面の電気インピーダンスを低減させるための電気的終端30(導体24に関して上述したような)を形成する。集電端部36は、電気的終端30(図1においてはカフの形態で示される)を形成し、この電気的終端30は、標的体組織に送られた電流の一部分が体組織を介して戻るよりもむしろ電気復路導体34を介して戻ることが可能となるのに十分な表面積を有する。復路端部38は、電気的終端30(図1においては楕円の形状のプレート又はシートとして示される)を形成し、この電気的終端30は、表面アノード電極22の下方の皮下組織及び皮膚を介して表面アノード電極22に電流を戻す。
【0029】
[1046] 複数の表面電極20、22を単一の非導電性基板上に製造して、皮膚10に好都合に装着させ得る電極アレイを形成することが可能である。同様に、埋込み導体24の複数の終端30を基板上に製造して、アレイを形成することが可能である。表面電極アレイの物理的レイアウトを埋込み終端アレイの物理的レイアウトに合致させることにより、表面導体及び埋込み導体の良好な空間的対応を、好都合かつ再現可能な態様において達成することが可能となる。さらに、アレイの各要素の導電率を個別に制御し得る表面電極アレイを使用して、表面電極と、埋込みアレイ中の終端と、の間の導電率を調節することが可能である。
【0030】
[1047] 被験者の身体の外部に配設される刺激装置(図示せず)に作動電力を供給するために、電源(図示せず)を使用することが可能である。刺激装置は、表面カソード電極20及び表面アノード電極22に電流を供給するために、電気ワイヤ又は電気導体42、44を介して表面カソード電極20及び表面アノード電極22に電気的に接続されてよい。電流は、電極20、22間に生じる正味のインピーダンスに応じて抵抗性又は容量性のものであることが可能である。
【0031】
[1048] 刺激装置は、例えばパルス発生器であることが可能である。刺激装置の例が、米国特許出願公開第2006/0184211号(「’211公開」)において説明されている。該公開の開示は、ここで参照により全体として本明細書に組み込まれる。パルス発生器の使用法及び種々の例示的用途もまた、’211公開中に説明されている。一般的には、電源40からの電流の流れは、表面カソード電極20にてカソードワイヤ42を経由して皮膚10中に供給され、表面アノード電極22にてアノードワイヤ44を経由し得る。有線接続により、又は無線周波(RF)などの無線エネルギー供給源を介した無線接続により、刺激装置に電力を供給することが可能である。
【0032】
[1049] 電流の殆どは、表面カソード電極20及び表面アノード電極22の近傍の体組織を介して流れるが、電気導体24、神経12、及び電気復路導体34を通る電流の流れもまた存在する。図1に図示されるように、表面カソード電極20は、電気導体24のピックアップ端部26の上方に位置決めされ、それにより、電流の一部分が、導体24を介して標的体組織へ伝達され、電流は、この標的体組織を通って流れ、体組織を介して表面アノード電極22に戻る。これは、標的体組織と、表面アノード電極22の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体34によっても達成することが可能である。
【0033】
[1050] 電流のこの一部分の完全な電気経路は、以下の通りである。カソードワイヤ42、表面カソード電極20、皮膚10、終端30、ピックアップ端部26、電気導体24、刺激端部28、終端30、神経鞘14、神経12、終端30、集電端部36、電気復路導体34、復路端部38、終端30、皮膚10、表面アノード電極22、及びアノードワイヤ44となる。電流のパルスは、神経12に沿って筋肉16に伝導される活動電位を誘発して、筋肉16を収縮させることが可能である。代替としては、高周波波形の形態の電流が、神経12に沿って筋肉16に伝導される活動電位を遮断して、筋収縮を防ぐことが可能である。
【0034】
[1051] 図1に図示されるインプラント18などのインプラントを使用して、様々な障害を治療することが可能である。以下に述べるように、及び本明細書に組み込まれる’211公開において述べられるように、これらの埋込み受動電気導体は、種々の標的体組織を刺激するように電流をルーティングして、周波数及び治療すべき障害に応じて神経インパルスを活性化又は遮断することが可能である。
【0035】
[1052] 1つの例示的な処置においては、刺激システムを人工関節置換処置(例えば人工膝関節置換又は人工股関節置換)と組み合わせて使用することにより、手術前の筋肉の調整、処置後の痛みの軽減、術後の回復の強化、及び/又は、人工関節置換処置に付随する副作用のいくつかの軽減若しくは防止を行なうことが可能である。
【0036】
[1053] 人工関節置換は、現代の整形外科学において用いられる一般的な手術である。人工関節置換は、関節の疼痛部分、関節炎部分、磨耗部分、又は癌性部分を、関節動作を可能にするような様式で形状設定された人工表面により置換することを含む。常に実現されるわけではないが、多くの場合、人工関節置換処置により、可動域の完全な回復が得られる。人工関節置換は大手術であるため、典型的には、多大な術前作業が必要とされる。この作業には、X線画像を整合させることによるインプラントの設計及び寸法の選択が含まれる。患者の早期授動が、静脈血栓塞栓症及び肺炎などの併発症の機会を低減させる鍵であると考えられている。術後の可能な限り早期に患者に授動を図り、耐えられる場合には歩行補助器を用いて歩行を行なうことが、一般的に実践されることである。関与する関節に応じて、及び患者の術前状態に応じて、入院期間は、例えば1日から2週間までなど、様々であってよく、平均は4〜7日である。
【0037】
[1054] 人工関節置換手術の後の患者の回復機能を助けるために、物理療法もまた広く利用される。段階的運動プログラムを利用することが可能である。初期においては、患者の筋肉は術後まだ治癒しておらず、関節の可動域のための運動及び歩行は激しいものであるべきではない。後に、筋肉が治癒すると、運動の目的は、機能の強化及び回復を含むように拡大される。
【0038】
[1055] 外科手術のストレスは、心臓発作、卒中、静脈血栓塞栓症、肺炎、錯乱の増大、及び尿路感染症(UTI)のような、様々な発生率及び重篤度からなる医学的問題を生じさせる場合がある。術中のリスクには、構成要素の位置異常、短絡、不安定性/位置ずれ、可動域の低下、隣接する骨の骨折、神経損傷、又は血管の損傷が含まれる。いくつかの即時的リスクには、深部又は表層部における感染及び位置ずれが含まれる。いくつかの中期的リスクには、位置ずれ、持続痛、可動域の低下、衰弱、無痛性感染が含まれる。長期的リスクには、支持表面の疲労及び/又は磨耗による構成要素の弛みが含まれ得る。結果として、構成要素が骨の内部に移動する場合があり、これが痛みをもたらす。さらに、磨耗粉の破片が、骨吸収による炎症性反応を生じさせる場合があり、これは弛みを生じさせる場合がある。
【0039】
[1056] 人工膝関節置換又は人工膝関節形成は、変形性関節炎による、最も一般的には骨関節炎による(しかし他の関節炎も含む)疼痛及び障害を軽減するために実施される、一般的な処置である。かかる処置は、膝の疾病を患い痛む関節表面を、膝の連続動作を可能にするように形状設定された金属構成要素及びプラスチック構成要素により置換することを含む。歩行及び/又は起立などの活動に影響を及ぼし得る膝の関節炎による身体能力を奪う程の痛みを治療するために、人工膝関節全置換(TKR)が実施される場合もある。TKR手術は、膝蓋骨からの四頭筋(内側広筋)の一部の切離しによる、膝の前部の露出を伴う。低侵襲手術がTKRにおいて開発されつつあるが、完全に許容し得るものはまだ見出されていない。目標とされるものは、術後の痛みを増大させ得る又は障害を長期に渡らし得る、四頭筋における大きな切開を患者から免じることである。
【0040】
[1057] 人工膝関節部分置換とも呼ばれる人工膝関節単顆置換(UKA)が、ある患者にとっては1つの選択肢となる。かかる処置において、膝は、一般的には3つの「構成要素」、すなわち、内側部(膝の内側部分)、外側部(外側)、及び膝蓋大腿骨部(膝蓋骨と大腿骨との間の関節)に区分される。人工膝関節置換を考慮するに十分に値する酷さの関節炎を抱える殆どの患者は、これらの構成要素の2つ以上において著しい磨耗を被っており、人工膝関節全置換によって最もよく治療される。少数の患者(例えば10〜30%)は、通常は内側部である1つの構成要素に主に限定された磨耗を被っており、人工膝関節単顆置換の候補者となり得る。TKRと比較された場合のUKAの利点には、より小さな切開、より楽な術後のリハビリテーション、より短期間の病院滞在、より少ない失血、より低い感染症リスク、より低い硬直リスク、より低い血塊リスク、及び、必要な場合には修正手術がより容易であることが含まれる。ループス、乾癬、又は著しい奇形は、UKA処置の候補とはならない場合がある。
【0041】
[1058] 術後リハビリテーションは、通常は、四頭筋が治癒しその強度を回復するまでは、松葉杖又は歩行器を用いる、保護された体重支持を利用することを含む。また、持続受動運動(CPM)も一般的に利用される。術後の入院は、患者の健康状態及び病院環境の外で利用可能なサポート量に応じて、例えば平均で1日から7日までと、様々であってよい。通常は、完全な可動域は、初めの2週間の間に回復する。典型的には、6週目で、患者は、杖による完全な体重支持にまで進展している。完全な正常機能に戻ることを含む、手術からの完全な回復は、例えば3ヶ月を要する場合があり、患者によっては、それよりも長い月数にわたって徐々に改善が続くことを認める場合がある。
【0042】
[1059] TKR処置又はUKA処置には、リスク及び併発症が伴う。例えば、脚静脈中の血塊が、人工膝関節置換手術の最も一般的な併発症である。さらに、人工関節周囲骨折が、老齢の患者に関してより頻繁に生じるようになり、術中に又は術後に生じる場合がある。時として、膝は、人工膝関節全置換の後に、正常な可動域(例えば、0〜135度)を回復しない場合がある。0〜110度の動作を達成することが可能な患者もいるが、いくつかの場合では、関節の硬直が引き起こされる可能性がある。いくつかの状況においては、麻酔下における膝の徒手整復を用いることにより、術後の硬直を改善させる。ある患者においては、膝蓋骨が、術後に不安定になり、膝の外方へ位置ずれする。これは、痛みを伴う場合があり、膝蓋骨を再調整するための外科手術を要する場合がある。人工膝関節置換インプラントは、多数の患者において、例えば最長で20年間持続し得るものであり、これは、例えば術後の患者の活動性などによって左右され得る。
【0043】
[1060] 股関節形成とも呼ばれる人工股関節置換は、人工インプラントにより股関節を置換する外科処置である。かかる人工関節置換整形外科手術は、一般的には、関節炎痛を緩和するために、又は股関節骨折治療の一部として重篤な物理的関節損傷を修復するために、実施される。人工股関節置換患者の中には、外科手術後に慢性疼痛を被る場合がある。かかる副作用は通常はX線又はMRIでは検出不能であるため、かかる疼痛の原因を判定することは困難な場合がある。一般的には、かかる疼痛は、置換手術の最中の神経損傷によって引き起こされると考えられている。
【0044】
[1061] 上述の人工股関節置換及び人工膝関節置換などの人工関節置換を試みる代替策として、電気刺激の利用により、かかる人工関節置換手術の必要性を遅らせる、又は延期させることが可能である。例えば、パルス電気刺激デバイスを使用して、人工膝関節全置換手術を延期させることが可能である。いくつかの場合においては、電気刺激の利用により、関節痛及び関節炎痛が大幅に軽減される可能性があり、したがって人工関節置換手術の必要性がなくなる可能性がある。
【0045】
[1062] TKR処置の後に、患者は、年齢をマッチングした健康な対照と比較して、四頭筋の長期的な筋力低下及び運動耐容能の漸減を示す場合がある。外科手術による疼痛及び腫れが、四頭筋の筋力低下に寄与する場合がある。電気刺激を利用することにより、人口関節置換処置後の回復を強化することも可能である。例えば、神経筋電気刺激(NMES)を随意運動プログラムに加えることで、四頭筋の強度を改善することが可能である。さらに、TKRからの回復の最中に電気刺激を加えることにより、膝伸展不全を効果的に軽減し、病院滞在期間を短縮することが可能である。
【0046】
[1063] したがって、本明細書及び’211公開において説明されるような刺激システムは、人工関節置換と組み合わせて利用することが可能である。上述のように、外部刺激装置(例えばパルス発生器)により非貫通経皮的に送られる電気刺激の一部分が、埋込み導体(例えば導体24)のピックアップ端部(例えば26)によってピックアップされ、標的刺激位置付近に位置する導体の刺激端部(例えば28)に送られる。例えば、刺激端部は、股関節又は膝関節などの関節の近傍に位置決めすることが可能であり、又は、関節に付随する筋肉を活性化させる運動点(又は複数の運動点)の付近に位置決めしてもよい。
【0047】
[1064] 非貫通経皮型デバイスと比較した場合、本明細書において説明されるような刺激システムにより、皮膚を介した刺激の送達による皮膚受容器からの不快な感覚を全く伴うことなく、及び(TENSにおけるような)非標的部位を活性化させるリスクを全く伴うことなく、刺激を特定の位置(例えば特定の神経)に送ることができる。さらに、貫通経皮的刺激と比較した場合に、本明細書において説明されるような刺激システムを使用することにより、皮膚を貫通して突出するリードによる炎症及び汚染のリスクを低減又は排除することが可能となる。通常サイズの埋込み型刺激装置と比較すると、本明細書において説明される刺激システムについては、低侵襲処置のみが必要となる。さらに、通常は、本明細書において説明されるような刺激システムは、標的刺激位置から、比較的遠くに位置することのある刺激装置の埋込みが可能な位置(皮下ポケット)までリードを通すことを伴わない。例えば、腕の刺激は、腕から、刺激装置が埋め込まれる胸までリードを通すことが必要となる場合がある。かかる処置の侵襲性に加えて、長いリードが関節を跨ぐことに付随する、リードの移動又はリードの損傷のリスクが存在する。
【0048】
[1065] 人工関節置換処置と組み合わせて使用される、本明細書において説明されるような刺激システムは、様々な種々の利益を達成するために使用することが可能である。例えば、刺激の利用により、人工関節置換処置の必要を遅らせる、又は延期させることが可能である。置換処置の前に筋肉/関節の調整を行なうことが可能となる(例えば可動域を増大させるなど)。関節を刺激することにより、人工関節置換処置後の回復を向上させることも可能である。例えば、疼痛管理及び/又は筋肉性能の管理において、改善を行なうことが可能となる。いくつかの場合においては、関節を刺激することにより、深部静脈血栓の防止を助けることも可能になる。いくつかの場合においては、関節の刺激により、かかる人工関節置換処置の必要性を無くすことが可能となる。例えば、かかる刺激は、人工関節置換がもはや不要になるほどに、関節痛及び/又は関節炎痛を大幅に軽減することが可能である。
【0049】
[1066] 例えば、人工膝関節置換処置に関連する可動域又は筋肉状態の改善のために、本明細書において説明されるような刺激システムを使用して、膝伸筋及び/又は膝屈筋を刺激することが可能である。この例においては、膝の伸展は、図2に図示されるように、大腿神経が分布する大腿四頭筋(縫工筋、中間広筋、外側広筋、及び内側広筋を含む)によって実施される。膝の屈曲は、図3に図示されるように、坐骨神経及び脛骨神経により制御される、ハムストリング(外側ハムストリング及び内側ハムストリング)によって実施され得る。
【0050】
[1067] 運動点刺激を生じさせるために、インプラント(例えばインプラント18)を含む刺激システムを、対象となる神経の付近に埋め込むことが可能である。刺激周波数は、例えば50Hz未満であることが可能である。例えば膝を伸展させるために、単一のインプラントを使用することが可能であり、このインプラントを周期的に作動させることが可能である。例えば、30秒おきに5秒間の刺激を加えることが可能である。刺激中に、膝は伸展され、このサイクルの休止中には、(重力により)元の位置へと弛緩される。さらに、2つ以上のインプラントを使用することも可能である。例えば、1つのインプラントにより膝を伸展させ、他方のインプラントにより膝を屈曲させる。この場合においては、これらのインプラントは、例えば5秒間の刺激による伸展、10秒間の休止、5秒間の屈筋の刺激、10秒間の休止、等々のサイクルなど、同期的に作動させることが可能である。比較的高い周波数の刺激(例えば30Hz超)を用いる場合には、疼痛の緩和を実現することが可能であり、これは、人工膝関節置換処置の任意の複数の段階において有用となり得る。
【0051】
[1068] 別の例示的な用途においては、本明細書において説明されるような刺激システムを使用して、総腓骨(CP)神経(例えば、総腓骨神経(common fibular nerve)、外側膝窩神経、腓骨神経)、及び/又は脛骨神経に対して電気刺激を加えることによって、尿失禁を治療することが可能である。図4〜図8は、カソード電極(又は複数のカソード電極)及びアノード電極(又は複数のアノード電極)がネコF上の様々な位置に位置決めされた、インプラントの様々な構成配置からなる応用例を図示する。ネコ被験体の概略図が、図4〜図8に図示される。
【0052】
[1069] 図4は、ネコFの皮膚下に2つのインプラントが埋め込まれた状態のネコFを示す。第1のインプラント118は、ピックアップ端部126並びに刺激端部又は送達端部128を有する受動導体124と、終端133と、を備える。送達端部128は、ネコFの総腓骨神経(図4には図示せず)の近傍に配設される。第2のインプラント118’は、ピックアップ端部126’並びに刺激端部又は送達端部128’を有する受動導体124’と、終端135と、を備える。送達端部128’は、ネコFの脛骨神経(図4には図示せず)の近傍に配設される。図5〜図8は、例示のために、ネコFの皮膚下に配設されたインプラント118及び118’を示さない。以下の説明中のインプラント118及び118’に対する言及は、図4を参照とする。
【0053】
[1070] 図5は、インプラント118及び118’がネコF内に埋め込まれた状態の、ネコFに装着された刺激システムを示す。第1のカソード電極120が、導体124のピックアップ端部126の上方でネコFの外部表面に装着され、第2のカソード電極121が、導体124’のピックアップ端部126’の上方でネコFの表面に装着される。この例においては、電流が、(例えばパルス発生器により)第1のカソード電極120及び第2のカソード電極121に供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、それぞれCP神経及び脛骨神経の近傍に位置する導体124、124’の刺激端部128、128’に送られる。したがって、この例は、カソード刺激を実現する。この例においては、単一のアノード電極122が、カソード電極121から8cm及びカソード電極120から5cmの位置に位置決めされる。
【0054】
[1071] 図6は、治療すべき神経の近傍の送達端子(例えばインプラントの刺激端部)の上方のカソード電極と、インプラントのピックアップ端子の上方のアノード電極と、を有するシステムを示す。この実施形態においては、第1のカソード電極120が、CP神経の近傍に位置するインプラント118の送達端部128の上方でネコFに装着され、第2のカソード電極121が、脛骨神経の近傍に位置するインプラント118’の送達端部128’の上方でネコFに装着される。第1のアノード電極122が、第1のカソード電極120から7cmの位置でネコFに装着され、第2のアノード電極123が、第2のカソード電極121から7cmの位置でネコFに装着される。この実施形態においては、電流が供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、カソード電極120、121が上方に配設されたインプラント118、118’の刺激端部128、128’に送られる。
【0055】
[1072] 図7は、カソードピックアップ及びアノード伝達構成配置を有するシステムを示す。この実施形態においては、第1のカソード電極120が、インプラント118のピックアップ端部126の上方でネコFに装着され、第2のカソード電極121が、インプラント118’のピックアップ端部126’の上方でネコFに装着される。第1のアノード電極122が、CP神経の近傍に位置するインプラント118の送達端部128の上方でネコFに装着され、第2のアノード電極123が、脛骨神経の近傍に位置するインプラント118’の送達端部128’の上方でネコFに装着される。この実施形態においては、第1のカソード電極120が、第1のアノード電極122から12cmの位置に位置決めされ、第2のカソード電極121が、第2のアノード電極123から15cmの位置に位置決めされる。電流が、カソード電極120、121に供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、アノード電極122、123が上方に配設された送達端部128、128’に送られる。
【0056】
[1073] 図8は、送達端子の上方のカソード電極と、ピックアップ端子の上方のアノード電極とを有するシステムの一例である。この構成配置においては、第1のカソード電極120が、CP神経の近傍に位置するインプラント118の送達端部128の上方に配置され、第2のカソード電極121が、脛骨神経の近傍に位置するインプラント118’の送達端部128’の上方に配置される。第1のアノード電極122が、インプラント118のピックアップ端部126の上方に配置され、第2のアノード電極123が、インプラント118’のピックアップ端部126’の上方に配置される。図7の実施形態と同様に、第1のカソード電極120が、第1のアノード電極122から12cmの位置に位置決めされ、第2のカソード電極121が、第2のアノード電極123から15cmの位置に位置決めされる。この実施形態においては、電流が、アノード電極122、123に供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、カソード電極120、121が上方に配設された送達端部128、128’に送られる。したがって、この構成配置は、アノード刺激の一例である。
【0057】
[1074] 図5〜図8に図示される構成配置のそれぞれに対して、表面しきい値電流を決定することが可能である。図9は、カフ式インプラントがネコF内に埋め込まれた際の、各構成配置に関連付けされるしきい値電流の一例を示すグラフである。図9に示されるように、外部電極が、導体のピックアップ端部及び刺激端部の両方の上方に配置される(図7及び図8に示されるように)場合には、導体のピックアップ端部の上方に外部電極が配置されない構成配置(図5)に対するしきい値の半分のしきい値のみが、必要とされる。
【0058】
[1075] 別の例示的な用途においては、本明細書において説明されるインプラントは、足病治療用途においてなど、骨に装着される筋肉のリハビリテーションを行なうために使用することが可能である。さらに、麻痺した手などの不動の四肢の動作に対して支援を与えるために、インプラントを使用することも可能である。かかる電気刺激は、米国特許第6,961,623号(「’623特許」)において説明されており、該特許の開示は、ここで参照によりその全体として本明細書に組み込まれる。例えば、’623特許は、患者の歯を共に噛み合わせて鳴らすことにより生じる振動により、デバイス又はプロセスを制御するための装置及び方法を説明している。かかるデバイスは、本明細書において説明される刺激システム中の刺激装置(例えばパルス発生器)を作動させるために使用することが可能である。
【0059】
[1076] 本明細書において説明されるようなシステム及びインプラントを使用することが可能な他の用途には、例えば肢内などの血流を上昇させること、及び/又は創傷の回復速度を上昇させることが含まれる。静脈性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、及び圧迫性壊死を含む慢性創傷は、公衆衛生上の大きな問題となり得る。米国内におけるかかる創傷の総有病率は、300〜600万人の範囲に及ぶと推定されている。創傷の治癒が困難であることにより、罹病率及び死亡率の割合が高くなり、生活の質に負の影響を及ぼし得る。脚及び足の潰瘍は、静脈疾患、動脈疾患、静脈/動脈混合疾患、糖尿病性神経障害、外傷、運動抑止、及び血管炎など、多数の原因を有するが、慢性病変の90%超は、静脈疾患、動脈疾患、及び末梢神経障害に関係する。慢性創傷は、治癒を促進し、感染、進行、及び再発を防止するために、介入を要する場合がある。その原因にかかわらず、潰瘍治療は、通常は、圧力除去、無菌包帯、及び局所的抗生物質などの保存的治療から開始する。保存的治療による創傷治癒の促進が上手くいかない場合には、罹患した静脈の硬化療法、皮膚弁の再構築、又は、指若しくは脚の切断などの外科的治療が必要となる場合がある。慢性創傷の管理に対する低侵襲アプローチは、電気刺激を伴う。
【0060】
[1077] 皮膚が損傷を被る場合には、時として、上皮細胞が破壊されるのみならず、大量のコラーゲンを損失する可能性もある。コラーゲンは皮膚の重量の約75%を構成するため、これは重大である。皮膚の治癒を刺激するために、例えば、アロエベラ抽出物などの植物性生薬の局所的塗布、ソフトレーザ、天然蜂蜜、電磁パルス、及び線維芽細胞成長因子の利用など、様々な方法が用いられている。これらの方法により良好な結果が得られているとしても、慣習的なアプローチは、抗菌剤及び防腐剤を用いた、及び時としては吸湿性粉末を用いた感染防止に留まっている。しかし、これらのアプローチは、とりわけ、広範囲の火傷による創傷、糖尿病性潰瘍、虚血性皮膚弁、壊死創傷、皮膚の広い部位などの重篤なケースにおいて、罹患区域への十分な血液供給が促進されない場合には、利益は限定的なものとなり得る。
【0061】
[1078] したがって、本明細書において説明されるようなインプラントを用いて、電気を利用した創傷治癒の刺激を行なうことが可能である。さらに、電気刺激の多数の形態学的効果及び機能的効果が、細胞レベル及び組織レベルの両方において特定されている。
【0062】
[1079] 上述のように、電気刺激は、創傷の近傍において皮膚上に直接的に配置された電極を介した電流の印加を指す。創傷治癒を促進するための技術としての電気刺激は、1)皮膚中のATP濃度を上昇させ、2)DNA合成を増大させ、3)創傷部位に上皮細胞及び線維芽細胞を引き寄せ、4)損傷を被った神経組織の回復を加速させ、5)浮腫を低減させ、6)血流を上昇させ、及び/又は7)病理発生を抑止することができる。
【0063】
[1080] 刺激システム及びインプラントの他の上述の用途と同様に、創傷ケアにおける電気刺激(ES)は、皮膚創傷に直接接触状態において、又は皮膚創傷の近傍において、電極を配置することを伴い、このようにして創傷を通過する電流を生じさせる。皮膚は、電場を有しており、創傷の存在が、この電場を分断させ得る。創傷治癒のための補助的治療としてESを用いることにより、皮膚の電場の修復を助けることが可能となる。慢性創傷の治療において使用される複数の形態のESが存在する。一例においては、低強度の直流電流(LIDC)を印加することが可能であり、これは、典型的には100μA〜1mAの間である低強度の直流電流の印加を伴う。別の例においては、低強度のパルス電流(LIPC)を印加することが可能であり、これは、1秒当たり100パルスのオーダのパルスの繰返しでの、約10mAのパルス直流電流の印加を伴う。別の例においては、高電圧パルス電流(HVPC)を印加することが可能であり、これは、高電圧のパルス直流電流の印加を含む。パルスは、例えば100〜500Vの間の短期間のツインパルスなどが可能である。
【0064】
[1081] 電気刺激は、図10〜図12に図示されるように複数の様式で印加することが可能である。例えば、図10に図示されるように、第1の電極220(正極性又は負極性)が、創傷W中に配置された生理食塩水湿性ガーゼパッド246などの無菌導電性材料に取り付けられる。第2の電極222の導電性表面が、付近にて、無傷の乾燥した皮膚の上に取り付けられる。外部パルス発生器(EPG)248が、第1の電極(及びガーゼパッド246)に接続される。
【0065】
[1082] 図11は、同一の極性を有する2つのゲル電極320、322のそれぞれの導電性表面を、それらが創傷Wを跨ぐように、創傷Wの対向する境界上に無傷の乾燥した皮膚の上に位置決めすることを含む、1つの例示的な適用例を示す上面図である。逆の極性を有する第3のゲル電極324が、付近に、無傷の乾燥した皮膚の上に配置される。第1の電極320及び第2の電極322は、外部パルス発生器(EPG)348の第1の端子に接続され、第3の電極324は、外部パルス発生器348の第2の端子に接続される。
【0066】
[1083] 図12は、創傷Wの外周部の周囲に複数の電気針450及び452を位置決めすることを含む、1つの例示的な適用例を示す上面図である。この実施形態においては、3つの電気針450が、外部パルス発生器(EPG)448の第1の端子に接続され、第1の極性を有し、2つの電気針452が、外部パルス発生器448の第2の端子に接続され、逆の極性を有する。図10〜図12を参照として説明され示される各適用例においては、パルス周波数は、例えば約100パルス/秒に設定することが可能であり、電圧は、例えば適度な強度の、しかし快適な刺痛感覚を(感覚皮膚において)生じさせるか、又はかろうじて視認可能な筋収縮を(脊髄損傷を抱える患者におけるように、無感覚皮膚において)生じさせる電流を送るように、設定することが可能である。
【0067】
[1084] 電極、又は図11に図示されるように創傷の周囲の跨ぐ位置に配置された複数の電極の極性は、創傷の臨床的必要性に応じて決定することが可能である。自己融解を促進するためには、正極性により、負帯電した好中球及びマクロファージを引き付けることが望ましい場合がある。肉芽組織の成長を促すためには、負極性により、正帯電した線維芽細胞を引き付けることが望ましい場合がある。創傷表面再建を刺激するためには、正極性を用いて負帯電した表面細胞を引き付けることが望ましい場合がある。
【0068】
[1085] 負極性による電気刺激は、例えば糖尿病及び非糖尿病の動物の切除創傷中のコラーゲンの沈着を改善するためなどに使用することが可能である。直流電流(DC)刺激は、例えば交流電流(AC)よりも迅速に創傷面積を縮小するためなどに使用することが可能であるが、AC刺激は、DCよりも迅速に創傷体積を縮小することが可能である。DC刺激及びAC刺激は共に、実験的切開部の周囲のコラーゲン含有量を大幅に上昇させることが可能であり、毎秒ごとに極性が切替えられるACを利用しても同様の結果を得ることが可能である。例えば50〜300μAのDC電流は、いくつかの場合においては、上皮形成速度を加速させることが可能であり、電場が、上皮組織細胞及び結合組織細胞の増殖能力及び/又は遊走能力に影響を及ぼし得ることを示唆している。
【0069】
[1086] 創傷治癒のために本明細書において説明されるようなインプラントを使用することにより、他の既知の技術に勝る複数の利点がもたらされ得る。図13は、創傷治癒のためにインプラントを使用する一例を示す。この例においては、電気刺激は、創傷の下方又は中に刺激端部又は刺激電極を配置することにより、創傷を通して送ることが可能である。図13に図示されるように、インプラント518が、導体(例えばリード)524を備え、この導体524は、一方の端部にてピックアップ電極526(すなわちピックアップ端部)に接続され、別の端部にて刺激電極528(すなわち刺激端部)に接続される。刺激電極528は、創傷Wの下方に位置決めされる。外部カソード電極520及び外部アノード電極522が、皮膚の表面に装着される。外部パルス発生器(EPG)548が、外部電極520に電流を送り、この電流の一部分が、ピックアップ電極526によりピックアップされる。ピックアップ電極526は、導体524を介して、創傷Wの付近に配置された刺激電極528にこの電流を送る。刺激は、刺激電極528から創傷W及びアノード電極522を介してEPG548に戻る。したがって、電流は、創傷Wを通過し、創傷Wの深部を刺激する。
【0070】
[1087] 図14は、刺激が創傷のより深い部分に加えられるか、又は深部創傷若しくは内部創傷に加えられる、インプラントの使用の一例を示す。図14に示されるように、インプラント618が、導体(例えばリード)624、導体624の一方の端部に接続されるピックアップ電極626(すなわちピックアップ端部)、及び、導体618の他方の端部に接続される刺激電極628(すなわち刺激端部)を備える。刺激電極628は、深部創傷Wの下方に位置決めされる。外部カソード電極620及び外部アノード電極622が、皮膚の表面に装着される。外部パルス発生器(EPG)648が、外部電極620に電流を送り、この電流の一部分が、ピックアップ電極626によりピックアップされる。ピックアップ電極626は、導体624を介して、創傷Wの付近に配置された刺激電極628に電流を送る。先述の実施形態と同様に、刺激は、創傷Wを通過し、アノード電極622、及びEPG648に進む。他の実施形態は、例えば創傷の他方側に追加の埋込みリード(例えば導体)を備え、一方の端子が創傷の付近に置かれ、他方の端子が表面電極622の下方に置かれてもよいことをさらに指摘しておく。
【0071】
[1088] いくつかの実施形態においては、骨の骨折又はひびの治癒を強化するための用途において、及び/又は骨成長を促進するための用途において、インプラントを使用することがさらに可能である。例えば、骨折区域の骨は、エフィシス(ephysis)又は骨幹(成長又は修復の比較的不活発な領域)に対して電気陰性となり得る。骨折が治癒すると、電気陰性の区域は、もはや見られなくなる。例えば屈曲された骨の圧縮下の領域は、電気陰性となることが可能であり、張力下の領域は、例えば骨の非応力下部分に比較して電気陽性になることが可能である。応力に付随する電気の発生は、時として「骨圧電気」と呼ばれる。環境条件(例えば、化学的、熱的、又は機械的な)における変化が、初めに電気エネルギー又は刺激に変換され、それらが骨細胞に作用して、仮骨形成を引き起こすことが認められている。環境的刺激と仮骨とを結びつけるものは電気であり、したがって、仮骨は、電気により生成され得る。電極を、例えば大腿骨の髄管中などに挿入することが可能であり、電流を印加して、仮骨の隆起部を電極間において経時的に形成させることが可能である。したがって、負電極の領域におけるより大量の新しい骨の形成を実現することが可能である。
【0072】
[1089] 一例においては、距骨の骨折を電気刺激により治療することが可能である。例えば、カソード電極を骨折部位中に外科手術により挿入することが可能であり、アノード電極を足の内側面の上方で皮膚上に配置することが可能である。次いで、カソード電極に一定の電流を印加して、骨折部位に電気刺激を送ることが可能である。使用し得る様々な形態の電気刺激が存在する。例えば、DC刺激、容量結合(又はパルスDC)刺激、又はパルス電磁場刺激(誘導結合刺激)などがある。
【0073】
[1090] DC刺激(DC)印加の一例においては、複数のカソード電極を骨折部位中に外科手術により挿入することが可能である。電流源は、例えば埋め込む又は外部に置くことが可能であり、又は埋込み電極に貫通経皮的に接続させることが可能である。アノード電極は、非結合(例えば骨折又はひび)部位の付近に皮膚上に配置される。各カソード電極により搬送される電流は、カソード電極を構成する材料により変化し得る。
【0074】
[1091] 別の例示的な応用例においては、容量結合刺激(CC)が、非侵襲処置において加えられる。電極が、骨折部位の両側に配置される。必要な場合には、窓が、骨折部位にてギブス中に切り込まれる。電場(例えば1〜10mV/cm)を電極間の組織中において確立させることが可能であり、誘導電流が、幅広い組織体積にわたって分散される。刺激は、例えば1日当たり24時間にわたり加えることが可能である。
【0075】
[1092] パルス電磁場(PEMF)を使用する一例においては、経時変化磁場を伴う誘導結合が加えられる。特定の電流波形が、骨折部位の周囲に置かれたコイルを通り送られる際に、電場が、生成される。いくつかの実施形態においては、例えばパルス電磁場及び複合磁場など、2つの波形を使用することが可能である。いずれの波形についても、電圧勾配(例えば1〜10mV)を生じさせることが可能である。刺激は、例えば1日当たり30分〜10時間などの期間にわたって加えることが可能である。
【0076】
[1093] 本明細書において説明されるようなインプラントの使用により、骨構造中における骨折又はひびなどの骨欠陥区域に対して、電気刺激を低侵襲で効率的に送達することが可能になり得る。先述の実施形態に関して説明したように、及び図15に図示されるように、インプラント718は、患者の皮膚下に埋め込み得る導体724、ピックアップ電極726、及び刺激電極728を備える。刺激電極728は、治療すべき骨折部位Frなどの骨欠陥に隣接して、又は接触して位置決めされる。電極720(例えばカソード電極又はアノード電極)が、患者の皮膚上の外部位置に、及びピックアップ電極726の上方に位置決めされる。別の電極722(例えば、カソード電極又はアノード電極の他方のもの)が、電極720からある離間距離をおいて患者の皮膚の上のある位置に位置決めされる。電極720及び722は、例えばゲル電極であることが可能である。
【0077】
[1094] 外部パルス発生器(EPG)748を使用して、電極720を介して電気刺激を非貫通経皮的に送達することが可能である。次いで、送達される刺激の一部が、ピックアップ電極726によりピックアップされ、導体724を介して標的区域中に埋め込まれた刺激電極728に送られる。
【0078】
[1095] 電極は、例えば、骨折部位を覆って配設されたケース又はギブスなどによって覆われた区域外の患者の皮膚に対して装着することが可能である。いくつかの実施形態においては、ギブス中に開口が形成され、それにより、所望に応じて皮膚へのアクセス及び電極の交換が可能となる。例えば、定期的にゲル電極を交換することが望ましい場合がある。さらに、交換可能であるか、又はギブスと皮膚との間に装着され得る、湿潤電極を使用することも可能である。かかる場合においては、ギブス中の小開口を介して電極の定期的な加湿を行なってよい。
【0079】
[1096] いくつかの実施形態においては、ケース又はギブスは、電極及びEPGを担持する装具の役割を果たすことが可能である。例えば、刺激装置(例えばパルス発生器)を、ひびの入った、又は骨折した肢(例えば腕又は脚)を覆って配設されたギブス内に埋め込む、又はそのギブスに結合することが可能である。かかる一実施形態の一例は、米国特許第6,607,500号において説明されており、該特許の開示は、ここで参照によりその全体として本明細書に組み込まれる。
【0080】
[1097] 図16は、患者の解剖学的構造体の一部分を覆って、例えば骨欠陥の一区域(図示せず)を覆って、配設されたギブスCを含む、システムの一実施形態を示す。この実施形態においては、システムが、インプラント818を含み、このインプラント818は、導体824(例えばリード)、ピックアップ電極826、及び刺激電極828を有する。皮膚Sに装着されたゲル電極820及び822を介して非貫通経皮的に電気刺激を送るために、外部パルス発生器(EPG)848を使用することが可能である。上述のように、送られる刺激の一部分が、ピックアップ電極826によってピックアップされ、導体824を介して、標的区域に埋め込まれた刺激電極828に送られる。この実施形態においては、ゲル電極820、822は、ケース/ギブスCによって覆われた区域の外の皮膚に装着される。いくつかの状況においては、これは、標準的なTENS刺激と比較して、1つの利点をもたらすことが可能である。例えば、外部ゲル電極820及び822は、ギブスの外側に配置されることによりアクセス及び交換を容易にしつつ、依然として標的位置に刺激を送ることが可能である。
【0081】
[1098] したがって、電気刺激は、怪我又は外科手術後の短期的治療適用、及び、上述のような(例えば図15及び図16を参照)骨治癒のため又は麻痺した筋肉における筋萎縮の防止のための長期的適用など、様々に適用される。
【0082】
[1099] さらに、電気刺激は、頭痛及び/又は顔面痛の治療においても使用することが可能である。頭痛及び/又は顔面痛から生じる症候は、最も一般的には、顔中に位置する三叉神経又は上部頸椎に隣接する神経に起因すると考えられる。かかる神経を刺激することにより、頭痛及び/又は顔面痛の症候を減衰又は制御するのを助けることが可能となる。例えば、かかる神経の直接的刺激は、症候を減衰又は制御するために用いることが可能な「ゲートコントロール」機構として作用することが可能である。三叉神経及び特定の上部頸椎神経は、それらの神経線維を介した痛みに関係する信号の脳への伝達に関与している。侵害受容器(すなわち痛覚受容体)は、疼痛などの身体中の生理学的変化を検出し、例えば三叉神経又は特定の上部頸椎神経などを介して、脳に信号を送る。これらの神経の1つが刺激されると、侵害受容器から伝達された信号は、脳への到達が実質的に妨げられ得る。より具体的には、これらの神経の1つに対する比較的低い刺激(例えば約100Hz未満、又はいくつかの実施形態においては約150Hz未満)は、その神経の線維を効果的に活性化させ、侵害受容信号と効果的に競合する(又は侵害受容信号を効果的に「ゲートする」)ことが可能である。これらの神経の1つに対する比較的高い刺激(例えば約100Hz超、又はいくつかの実施形態においては約150Hz超)は、神経線維における興奮を弱め、これらの神経線維を介した信号伝達を禁ずることによって侵害受容信号を効果的に遮断することが可能である。
【0083】
[1100] 図17は、左三叉神経970の刺激により患者における頭痛及び/又は顔面痛を治療するためにインプラントを使用する一例を示す。この例においては、三叉神経970の任意の部分に隣接して、又はその上に刺激端部又は刺激電極を配置することによって、電気刺激を顔の左側中の三叉神経970に送ることが可能となる。図17に図示されるように、インプラント918は、導体(例えばリード)924を備え、この導体924は、ピックアップ電極に接続され(図17には図示せず)、別の端部で刺激電極928(すなわち刺激端部)に接続される。刺激電極928は、三叉神経970に隣接して位置決めされる。より具体的には、刺激電極928は、本明細書においてより詳細に説明されるように、三叉神経970の三叉神経節972に隣接して位置決めされる。いくつかの実施形態においては、ピックアップ電極は、耳の背後に皮下に位置決めされる。ピックアップ電極を、耳の背後に位置する皮膚の実質的に無毛の領域の下方に配設することが望ましい場合がある。このようにすることで、皮膚電極又は同様のデバイスを、ピックアップ電極の上方の皮膚の無毛領域上に配設することが可能となる。
【0084】
[1101] 三叉神経970は、顔面感覚の大部分に関与している。顔は、2つの三叉神経を有し、1つは、顔の右側中に位置し、他方は、顔の左側に位置する(図17に図示される)。偏頭痛、緊張型頭痛、慢性連日性頭痛、群発頭痛、及び顔面痛などの多くの頭痛が、三叉神経970に起因すると考えられる。
【0085】
[1102] 図17に図示されるように、三叉神経970は、三叉神経節972、眼神経974、上顎神経976、及び下顎神経978を含む。「三叉神経枝」と通常呼ばれる、三叉神経970の神経974、976、及び978は、三叉神経節972から延在する。三叉神経節972は、三叉神経枝のそれぞれの中に分布する知覚線維及び神経線維を含む。眼神経974は、頭皮、前頭、眼瞼、眼、鼻、及び血管の一部に知覚情報を搬送する知覚線維を含む。上顎神経976もまた、頬、唇、歯肉、副鼻腔、及び血管の一部に知覚情報を搬送する知覚線維を含む。下顎神経978は、知覚線維及び運動線維の両方を含む。下顎神経978の知覚線維は、唇、歯、歯肉、オトガイ、及び顎の一部に、口からの疼痛感覚及び温度感覚を含む知覚情報を搬送する。下顎神経978の運動線維は、筋肉に咀嚼及び嚥下に関する運動情報を搬送する。したがって、三叉神経枝の中のいずれか1つにより、頭痛及び/又は顔面痛の症候が引き起こされる可能性がある。そのため、これらの三叉神経枝及び/又は三叉神経節のいずれかの部分を刺激することにより、上述のように、頭痛及び/又は顔面痛の症候を軽減、除去、又は制御することが可能である。この例は、左三叉神経970の刺激を例示するが、右三叉神経を刺激して、顔の右側に特有の症候に対して同様の結果を得ることが可能であることを理解されたい。
【0086】
[1103] 図17には図示されないが、外部(すなわち表面)電極(図17には図示されない)は、先述の実施形態に関して上述したように、皮膚の表面に装着することが可能であることを理解されたい。外部パルス発生器(図17には図示されない)が、外部電極(又は複数の外部電極)に電流を送ることが可能であり、この電流の一部分が、ピックアップ電極(図17には図示されない)によってピックアップされ得る。上述のように、外部電極(又は複数の外部電極)は、ピックアップ電極の上方の皮膚の表面上に、及び耳の背後の無毛領域に配設することが可能である。次いで、ピックアップ電極は、導体924を介して、三叉神経970の三叉神経節972に隣接して配置される刺激電極928に電流を送ることが可能である。刺激は、刺激電極928から三叉神経970及び表面電極(又は複数の外部電極)を介して外部パルス発生器に戻る。したがって、電流は、三叉神経970の三叉神経節972を通過及び刺激する。いくつかの実施形態においては、刺激は、例えば約100Hz未満で外部パルス発生器により送られて、三叉神経970を活性化することが可能である。いくつかの実施形態においては、刺激は、例えば約150Hz未満で送られ得る。他の実施形態においては、刺激は100Hz超又は150Hz超で外部パルス発生器により送られて、三叉神経970における神経活性を妨げることが可能である。
【0087】
[1104] 図17の刺激電極928は、三叉神経970の三叉神経節972に隣接して位置するものとして例示され上述されるが、刺激電極928は、三叉神経970の任意の部分に隣接する又は接触することが可能であることを理解されたい。換言すれば、刺激電極928は、眼神経974、上顎神経976、及び/又は下顎神経978の任意の部分に隣接する又は接触することが可能である。これらの三叉神経枝のいずれかを刺激することにより、頭痛及び/又は顔面痛の症候の減衰又は制御がもたらされ得る。
【0088】
[1105] 図18は、上部頸椎に隣接する神経の刺激により患者における頭痛及び/又は顔面痛を治療するためにインプラントを使用する別の例を示す。この例においては、大後頭神経1080の任意の部分に隣接して又は接触して刺激端部又は刺激電極を配置することによって、上部頸椎(C1〜C4)に隣接する大後頭神経1080に電気刺激を送ることが可能である。脊髄で三叉神経と収束する大後頭神経1080は、頭の後部又は首の側部中に皮下に位置する容易にアクセス可能な脊髄神経である。大後頭神経1080に関係する障害は、例えば頸原性頭痛(すなわち後頭神経痛)などの頭痛を引き起こす可能性がある。かかる頭痛は、(大後頭神経1080の位置により)首区域から発し、緊張型頭痛、偏頭痛、及び群発頭痛に関連付けされる症候をしばしば含む。同様に上部頸椎に隣接して位置し、頭痛及び/又は顔面痛の症候に関係する他の神経には、小後頭神経1082、第三後頭神経1084、大耳介神経1086、頸横神経(図18には図示されない)、鎖骨上神経(図18には図示されない)、及び/又はそれらの任意の部分が含まれる。
【0089】
[1106] 図18に図示されるように、インプラント1018が、導体(例えばリード)1024を備え、この導体1024は、ピックアップ電極1026に接続され、別の端部で刺激電極1028(すなわち刺激端部)に接続される。ピックアップ電極1026は、先述の実施形態を参照として上述したように、例えば、患者の耳の背後の皮下に、及び実質的に無毛の皮膚の領域の下方に位置決めすることが可能である。いくつかの実施形態においては、ピックアップ電極1026は、側頭骨の上部部分、側頭骨の前方部分、又は側頭骨の乳様突起部分(例えば乳様突起の一部分など)の上に位置決めすることが可能である。いくつかの実施形態においては、ピックアップ電極1026の上方に位置する皮膚の無毛領域は、少なくとも2cmの直径を有し得る。このようにして、皮膚電極又は同様のデバイスを、ピックアップ電極1026の上方の皮膚の無毛領域上に配設することが可能となる。
【0090】
[1107] 刺激電極1028は、大後頭神経1080に隣接して位置決めされる。しかし、いくつかの実施形態においては、刺激電極1028は、大後頭神経1080に直接接触状態に位置決めされる。図18には図示されないが、いくつかの実施形態においては、刺激電極1028は、大後頭神経1080が大菱筋Tの表面に位置する、後頭骨(図18には図示されない)の上項線に沿った位置に、大後頭神経1080に平行に位置決めすることが可能である。後頭骨は、頭蓋の下方部分であり、これは、上項線を含む一連の項線(すなわちその外部表面上の曲線)を有する。大菱筋Tは、後頭骨に装着され、後頭骨から延在する。
【0091】
[1108] 図18には図示されないが、外部(すなわち表面)電極(図18には図示されない)は、先述の実施形態に関して上述したように、皮膚の表面に装着することが可能であることを理解されたい。外部パルス発生器(図18には図示されない)が、外部電極(又は複数の外部電極)に電流を送ることが可能であり、この電流の一部分が、ピックアップ電極1026によってピックアップされ得る。次いで、ピックアップ電極1026は、導体1024を介して、大後頭神経1080に隣接して配置される刺激電極1028に電流を送ることが可能である。刺激は、刺激電極1028から大後頭神経1080及び表面電極(又は複数の外部電極)を介して外部パルス発生器に戻る。したがって、電流は、大後頭神経1080を通過及び刺激する。いくつかの実施形態においては、刺激は、約100〜150Hz未満で外部パルス発生器により送られて、大後頭神経1080を活性化することが可能である。他の実施形態においては、刺激は、約100〜150Hz超で外部パルス発生器により送られて、大後頭神経1080における神経活性を妨げることが可能である。上述のように、かかる刺激は、頸原性頭痛を患う患者において特に効果的である。
【0092】
[1109] 刺激電極1028は、上部頸椎中に位置する大後頭神経1080に隣接して位置し、これを刺激するために使用されるものとして例示され上述されるが、他の実施形態においては、刺激電極1028は、上部頸椎に隣接する別の神経に隣接して位置し、これを刺激するために使用され得る。かかる神経には、例えば、小後頭神経1082、第三後頭神経1084、大耳介神経1086、頸横神経(図示せず)、鎖骨上神経(図示せず)、及び/又はそれらの任意の部分が含まれ得る。これらの神経のいずれかを刺激することにより、上述されるものと同一の態様で、頭痛及び/又は顔面痛の症候の緩和及び/又は制御を助けることが可能となる。
【0093】
[1110] いくつかの実施形態においては、刺激電極1028(すなわちインプラント1018の刺激部分)は、後頭骨の上項線の約3cm〜4cm下方又は上方に位置する切開部を介して患者内に埋め込むことが可能である。いくつかのかかる実施形態においては、刺激電極1028は、活性刺激プローブとの生理学的反応を確認した後に、低侵襲技術を用いて埋め込むことが可能である。
【0094】
[1111] インプラント918及び1018は、片側インプラントとして例示され上述されるが、他の実施形態においては、インプラント918及び1018は、両側インプラントであることが可能である。このように、両側インプラントが、2つのリード、2つの別個の埋込み部、及び/又は2つの外部パルス発生器を備えることが可能である。
【0095】
[1112] さらに、深部静脈血栓の防止において、電気刺激を使用することも可能である。運動抑止期間の間は、静脈血を心臓に戻すように移動させ、血液の滞留を防止するために、肢の筋肉の収縮を継続することが重要となる場合がある。これは、骨盤骨折の後に、及び人工股関節全置換又は人工膝関節全置換の後にとりわけ適用可能である。脚において血液の滞留が生じると、血塊又は血栓の形成により、塊の小部分(塞栓)が剥がれるおそれがある。塞栓は、肺に滞り、肺塞栓症及び死の可能性をもたらし得る。筋肉(例えば腓腹筋)の頻繁な収縮により血液の滞留を防止するために、電気刺激を利用することが可能である。筋ポンプの形成に加えて、電気刺激は、血漿線維素溶解活性を上昇させ、凝血の可能性を低下させ得る。
【0096】
[1113] さらに、電気刺激は、運動抑止後の硬直及び関節拘縮の管理においても利用することが可能である。電気刺激は、硬直した関節のリハビリテーションにおいて複数の利点をもたらし得る。電気刺激は、筋肉の収縮を増大させ、関節可動域の限界で収縮を保持するために使用することが可能である。電気刺激は、初期の運動抑止期間の間の不快さ又は疼痛を調整することが可能であり、刺激される筋肉の力生成、作業能力、及び持久性を強化することが可能である。外傷性脊髄損傷後に即座に、激しい筋萎縮が引き起こされる可能性がある。かかる場合においては、電気刺激は、多大な損傷後萎縮が生じる前に印加されて、脊髄損傷を抱える患者の二次障害を防ぐ点で有益となり得る。
【0097】
[1114] 上述のように、さらに、電気刺激は、関節痛及び関節炎痛の管理において利用することも可能である。例えば、電気刺激は、骨関節炎(例えば膝関節の)又はリウマチ様関節炎(例えば手の)に関連する疼痛及び/又は他の症候を軽減することが可能である。より具体的には、電気刺激は、慢性筋骨格痛を大幅に軽減することが可能である。電気刺激は、患者の身体の他の区域の刺激に関して本明細書において説明したものと同様の態様で、罹患した関節に直接的に加えることが可能であり、及び/又は、関節に隣接する筋組織に加えることが可能である。関節に隣接する筋組織の刺激により、その筋肉を効果的に強化することが可能であり、これにより、この筋肉は、関節をさらに良好に支持し、それにより関節における又は関節の周囲の疼痛を軽減する。上述のように、関節及び/又は隣接する筋組織の刺激により、疼痛を緩和又は制御することが可能であり、それにより、例えば人工膝関節全置換又は人工膝関節部分置換などの複雑かつ侵襲的な外科手術を遅らせるか、又は完全に回避させることが可能となる。
【0098】
[1115] さらに、電気刺激は、筋肉性能の管理においても利用することが可能である。例えば、筋肉又はその筋肉に分布する神経の電気刺激は、筋収縮の影響が治癒の妨げにならない場合に、運動抑止期間の間に筋収縮性を維持するために印加されてよい。運動抑止の間の電気刺激は、筋肉の縮小又は萎縮を完全には防ぐことはできないが、動作及び運動の再開が安全である場合には、筋肉の損失を最小限に抑え、筋肉の代謝能力を維持して、回復速度を速めることができる。怪我又は手術後に運動の再開が許可される場合に、電気刺激を利用して、感覚入力を与え、筋漸増を向上させることができる。
【0099】
[1116] 神経遮断(一過性伝導障害)が生じている状況においては、電気刺激を利用して、神経遮断が解消されるまで、麻痺した筋肉を維持することができる。筋力低下した又は麻痺した筋肉の位置に応じて、ブレース又は装具の代替として電気刺激を利用することができる。いくつかの実施形態においては、随意運動による筋肉強度の増強と同様の態様において、電気的に誘起された筋収縮による筋肉強度の増強を行なうことが可能である。いくつかの場合においては、貫通経皮的刺激を利用した筋肉強度の増強は、随意運動による強度の増強とは根本的に異なる。
【0100】
[1117] 電気刺激は、非貫通経皮的に、貫通経皮的に、又は完全埋込み刺激装置を用いて送ることが可能である。一例においては、電気刺激は、等級2(Grade II)の内側、側副、及び前十字靭帯の捻挫を被った運動選手の、下肢ギブス運動抑止期間の間の、大腿四頭筋及びハムストリング筋群の電気刺激の利用を含む。ギブス除去の3週間後に、片脚の垂直跳躍高さは、優位な、怪我を被っていない脚により達せられた高さの92%であり、患者は、競技大会に復帰することが可能であった。この例は、電気刺激が、脱神経萎縮及び加齢性筋萎縮を減衰させ得ることを示す。別の例においては、電気刺激装置をラット中に埋込み、長指伸筋を刺激した。この例は、電気刺激を利用することにより、全ての筋線維が強縮性収縮を受けるようにすることによって、加齢性筋萎縮及び加齢性筋力低下を低減させ得ることを示す。別の例においては、運動抑止により誘起される筋萎縮の防止において貫通経皮的電気刺激を利用することが可能である。いくつかの場合においては、短期間の貫通経皮的電気刺激により、膝関節運動抑止に対して副次的に発生する四頭萎縮を低減させることが可能であり、通常は運動抑止に際して生じる筋タンパク合成の低下の防止を助けることが可能である。いくつかの場合においては、電気刺激は、酸化酵素活性の低下を防止することが可能である。
【0101】
[1118] さらに、上述の処置はそれぞれ、患者において電気刺激を送るための小型埋込み可能刺激装置(又は複数の刺激装置)を用いることによっても実施することが可能である。かかる小型埋込み可能刺激装置は、米国特許第6,735,475号、米国特許第6,941,171号、及び米国特許第6,735,474号において説明されており、該特許の各開示は、ここに参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0102】
[1119] 例えば、小型埋込み可能刺激装置(又は複数の刺激装置)は、患者の治癒を向上させ、疼痛を軽減するために、人工関節置換処置と組み合わせて使用することが可能である。小型埋込み可能刺激装置は、例えば以下のように、他の技術に比較して複数の利点を有する。非貫通経皮デバイスを比較した場合、小型埋込み可能電気刺激装置では、電気刺激は、皮膚を介した刺激の送達による皮膚受容器の不快な感覚を全く伴うことなく、特定の位置に(例えば特定の神経に)送ることが可能である。さらに、皮膚炎を引き起こすことのある、並びに交換及び/又は再位置合わせを要することのある外部ゲル電極も不要となる。上述の刺激システム及びインプラントと同様に、貫通経皮刺激と比較して、小型埋込み可能電気刺激装置では、皮膚を貫通して突出するリードによる炎症又は汚染のリスクを軽減又は排除することが可能となる。さらに、通常サイズの埋込み可能刺激装置と比較して、小型埋込み可能電気刺激装置では、典型的には、低侵襲処置のみが必要となる。
【0103】
[1120] さらに、人工関節置換処置と組み合わせて使用される小型埋込み可能電気刺激装置(又は複数の刺激装置)は、上述のように人工関節置換処置の必要性を遅らせる又は延期させるために使用することも可能である。人工関節置換処置の前に、筋肉/関節の調整を行なうことが可能である(例えば可動域の拡大など)。疼痛管理及び/又は筋肉性能の管理を向上させることが可能である。いくつかの場合においては、関節を刺激することが、深部静脈血栓の防止の助けともなり得る。本明細書において説明されるように埋込み受動導体に基づく電気刺激の利用により、大幅に安価な代替案を実現しつつ、小型刺激装置と同様の利点をもたらすことが可能であることをさらに指摘しておく。
【0104】
[1121] 上記において様々な実施形態を説明したが、これらは例として提示されるに過ぎず、限定的なものではないことを理解されたい。上述の方法及び工程が、特定の順序で行なわれる特定の事象を示唆するが、その特定の工程の順序は、変更することが可能であり、かかる変更は、本発明の変形例にしたがうものであることが、本開示の利益を享受する当業者には認識されよう。さらに、可能な場合には、それらの工程のいくつかを、平行プロセスとして同時に実施してもよく、上述のように逐次的に実施してもよい。実施形態を具体的に示し説明したが、形態及び詳細における様々な変更を行ない得ることが理解されよう。
【0105】
[1122] 種々の実施形態を、特定の特徴及び/又は構成要素の組合せを有するものとして説明したが、他の実施形態が、本明細書において説明される実施形態のいずれかによる任意の特徴及び/又は構成要素の組合せ或いは下位組合せを有することが可能である。例えば、1つ又は複数のインプラント(例えば18、118、118’、518、618、718、818、918、1018)を、体組織(例えば軟組織、筋肉、靭帯、骨構造、等々)を刺激するための処置において使用することが可能である。したがって、本明細書において説明される任意の処置において、必ずしも例示はされないが、(例えば、復路導体34を含む)図1に図示されるように、第2のインプラントを含むことが可能である。本明細書において説明される様々な処置のいずれに対しても、インプラントの任意の実施形態を使用することが可能であることをさらに指摘しておく。例えば、(図1において説明されるように)カフ電極を用いて、又は用いずに、上述の処置のいずれかに対してインプラントを使用することが可能である。
【0106】
[1123] さらに、電極の数量は、特定の治療に応じて変更することが可能である。さらに、電極のタイプを変更することも可能であり、例えば、プレート電極又はカフ電極を使用することが可能である。いくつかの実施形態が、刺激装置(例えばパルス発生器)から、インプラントのピックアップ端部又はピックアップ電極の上方の患者の表面に装着されたカソード電極への電流の印加又は送達を説明するが、代替的には、ピックアップ端部又はピックアップ電極の上方にアノード電極を配置し、ピックアップ端部又はピックアップ電極に電流を送ることが可能であることを理解されたい。例えば、図5〜図8を参照として説明されるように、カソード電極及びアノード電極の様々な構成配置及び組合せ(例えば埋込み導体に対する位置決め)を利用することが可能である。
【0107】
[1124] さらに、本明細書において説明されるようなインプラントの種々の構成要素は、具体的には例示されない様々な種々の形状及び/又はサイズを有することが可能である。例えば、終端(例えば30)、導体(例えば24、124、等々)、ピックアップ端部又はピックアップ電極(例えば26、126、等々)、刺激端部又は刺激電極(送達端部又は送達電極とも呼ばれる)(例えば28、128、等々)はそれぞれ、様々な種々の形状、サイズ、断面、厚さ、等々を有することが可能である。さらに、電極(例えば20、22、120、122、等々)は、様々な種々の形状、サイズ、タイプ、等々であることが可能である。これらの電極に電流を送るための刺激装置が、パルス発生器として説明されたが、いくつかの実施形態においては、代替的に、他のタイプの刺激装置を使用することが可能である。例えば刺激装置への無線接続又は有線接続などを含む、様々な電源を使用することも可能である。
【技術分野】
【0001】
[1001] 本出願は、参照により全体としてその開示が本明細書に組み込まれる、2008年6月27日に出願され、「Treatment of Indications Using Electrical Stimulation」と題された、米国非仮出願第12/147,937号の一部継続出願であり、該出願に基づく優先権を主張し、該出願の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[1002] 本発明は、概して医療デバイスに関し、より詳細には、電気刺激治療において使用するためのデバイス及び方法に関する。
【0003】
[1003] 神経細胞は、活動電位又は神経インパルスを伝達するための軸索と、かかるインパルスを受け取るための樹状突起とから構成される。通常は、神経は、ある神経細胞のインパルス送信を行なう軸索から、隣接する神経細胞のインパルス受信を行なう樹状突起へと、活動電位を伝達する。シナプスで、軸索は、神経伝達物質を分泌して、次の神経細胞の樹状突起上のレセプタに新たな電流を生じさせる。
【0004】
[1004] いくつかの病理学的状態においては、活動電位の伝達が弱められるため、通常の機能を回復するためには神経インパルスの活性化が必要となる。神経及び筋肉などの電気興奮性の体組織は、皮膚に対して外部から接触された電極間に印加される電場によって活性化され得る。電流が、カソード電極とアノード電極との間で皮膚を介して流れ、電極の下方に位置する神経及び筋肉中において活動電位を誘発する。この方法は、疼痛を緩和する非貫通経皮的電気神経刺激装置(TENS)、運動用の筋肉を活性化する治療的電気刺激装置、日常生活の作業用の筋肉を活性化する機能的電気刺激装置、及び損傷を受けた骨の再生を促進する刺激装置を含む、様々なタイプの刺激装置における利用で知られている。
【0005】
[1005] 他の病理学的状態においては、有用な目的にかなわない活動電位が伝達されるため、通常の機能を回復するためには不要な神経インパルスを遮断することが必要となる。高周波刺激が、神経軸索の一時的な可逆性遮断を生じさせ得ることが報告されている。一般的には、この周波数範囲は、500〜30,000Hzの間である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[1006] 神経インパルスを活性化又は遮断するための神経の刺激は、典型的には、埋込み型の刺激装置(神経プロテーゼ(neural prosthesis or neuroprosthesis)としても知られている)を用いることにより達成される。神経プロテーゼは、聴力の回復、麻痺した筋肉における動作の回復、尿路の機能を制御する神経における活性の変調、並びに疼痛及び振戦の抑制のために開発されてきた。いくつかの場合においては、神経プロテーゼは、例えば痛覚又は振戦を遮断するためなど、望ましくない神経活性を抑止又は抑制するように設計される。しかし、長期間の使用が意図される神経プロテーゼは全て、電子構成要素及びしばしばバッテリを含む刺激装置の埋込みが必要となる。疼痛及び振戦を抑制する場合においては、活性化された神経が、中枢神経系内の神経回路の活性を反射的に抑止する。望ましくない神経活性を低減させるこの間接的モードは、時として神経変調と呼ばれる。
【0007】
[1007] 表面電気刺激装置は、例えば痙性過緊張を低減するためなど、反射的に使用される。体表面に装着された電極を介した刺激の欠点は、標的とされる組織と共に、多数の非標的組織を同時に活性化させ得る点である。この選択性の欠如により、望ましくない感覚及び/又は望ましくない動作がしばしば引き起こされる。さらに、電極間を流れる電流の殆どが、標的組織よりも電極に近い組織を介して流れるため、体内の深部に位置する組織を十分に刺激することが困難又は不可能となるおそれがある。選択性は、埋め込まれた刺激装置から標的組織の近傍まで電流をルーティングする絶縁ワイヤを体内に埋め込むことによって改善され得る。この方法は、例えば、心臓ペースメーカ、脊柱刺激装置、深部脳刺激装置、及び仙骨神経根刺激装置などにおいて使用される。ワイヤの非絶縁端部を収容するカフ(cuffs)を末梢神経の周囲に配置して、電流の殆どをこの神経の近傍に制限し、周囲組織への電流の拡散を限定することにより、選択性を改善することもできる。埋込み型の刺激装置は、高価であり、しばしば体外のコントローラ及び/又は電源を要する。このような埋込み型の刺激装置内のバッテリは、手術を伴う定期的な交換を要する。
【0008】
[1008] 少数の事例においては、刺激ワイヤが、体組織内に埋め込まれ、皮膚を通過して(貫通経皮的に)体外に位置するコネクタへと続き、このコネクタに外部刺激装置が装着される。外部刺激装置は、典型的には埋込み型の刺激装置よりも安価であるが、貫通経皮ワイヤは、感染症の導入源を与えるため、日常的な洗浄及びメンテナンスが必要となる。これにより、貫通経皮電極の使用は、短期的用途にほぼ限定されてきた。かかる問題を克服し、治療すべき障害に応じて神経インパルスを活性化又は遮断することが可能なシステムが必要とされている。例えば、脛骨神経及び/又は総腓骨神経(common peroneal nerve)の刺激による尿失禁の治療、三叉神経に関連する神経又は上部頸椎に隣接する神経の刺激による頭痛及び/又は顔面痛の治療、人工関節置換処置と組み合わせた又はかかる処置前の治療、創傷治癒の促進、骨折又はひびなどの骨の欠陥の治療、関節痛及び/又は関節炎痛の軽減、並びに/或いは筋萎縮の軽減又は防止など、様々な適応症を治療することが可能なシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1009] 電流により体組織を刺激することによって標的体組織(例えば、骨、軟組織、筋肉、靭帯、神経、等々)を治療するシステム及び方法が、本明細書において説明される。一実施形態において、方法は、被験者の皮膚の下方にインプラント全体を埋め込む工程を含む。このインプラントは、表面カソード電極(若しくは複数の表面カソード電極)又は表面アノード電極(若しくは複数の表面アノード電極)のいずれかの下方に位置する皮下組織から脛骨神経まで延在するのに十分な長さを有する受動電気導体を備える。これらの表面電極は、被験者の皮膚上で離間関係において位置決めされ、これらの電極の一方は、電流の一部が導体を介して脛骨神経に伝達され、電流が脛骨神経を通り流れ、表面カソード電極及び表面アノード電極の他方に戻るように、電気導体のピックアップ端部の上方に位置決めされる。電流は、電流の一部がインプラントを通り流れて、脛骨神経を刺激するように、表面カソード電極と、表面アノード電極と、の間に印加される。いくつかの実施形態において、方法は、総腓骨神経の電気刺激、頭痛及び/又は顔面痛を治療するための三叉神経に関連する神経又は上部頸椎に隣接する神経の刺激、人工関節置換処置と組み合わせて若しくはかかる処置前に加えられる刺激、創傷治癒を促進するための刺激、骨折若しくはひびなどの骨欠陥を治療するための刺激、関節痛及び/又は関節炎痛を軽減するための刺激、及び/又は、筋萎縮を軽減若しくは防止するための刺激を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[1010]埋込み電気導体、表面カソード電極、表面アノード電極、及び埋込み電気復路導体を有する、本発明の一実施形態の三次元概略図である。
【図2】[1011]伸展された状態の膝の筋組織及び神経系の図である。
【図3】[1012]屈曲された状態の膝の筋組織及び神経系の図である。
【図4】[1013]ネコの概略図内に配設された、一実施形態によるインプラントの概略上面図である。
【図5】[1014]第1の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図6】[1015]第2の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図7】[1016]第3の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図8】[1017]第4の構成配置を示す、図4のネコの概略図内に配設された、一実施形態によるシステムの一部分の概略上面図である。
【図9】[1018]図5〜図8のシステムの各構成配置に関連する表面しきい値電流を示すグラフである。
【図10】[1019]創傷を治療するための一適用例を示す、システムの側面概略図である。
【図11】[1020]創傷を治療するための別の適用例を示す、システムの上面概略図である。
【図12】[1021]創傷を治療するための別の適用例を示す、システムの上面概略図である。
【図13】[1022]創傷を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図14】[1023]深部創傷を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図15】[1024]骨折を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図16】[1025]骨の欠陥及び/又は筋肉を治療するための一適用例を示す、一実施形態によるシステムの側面概略図である。
【図17】[1026]顔の左側内の三叉神経及び一実施形態によるインプラントの図である。
【図18】[1027]上部頸椎に隣接する区域及び一実施形態によるインプラントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1028] 標的体組織を電気的に刺激するために電流をルーティングすることが可能な受動電気導体の使用を含む、システム及び方法が、本明細書において説明される。かかるデバイス及び方法は、周波数及び治療すべき障害に応じて、神経インパルスを活性化又は遮断するように使用することが可能である。
【0012】
[1029] 本明細書において説明されるようなシステムは、例えば、インプラント、電気パルス発生器などの刺激装置、外部電極、及び電源などを含み得る。被験者中の標的体組織を電気的に刺激して、神経インパルスを活性化又は遮断するために、インプラントが用意される。このインプラントは、埋め込まれると、被験者の皮膚上に離間関係において位置決めされた表面カソード電極と、表面アノード電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分のための導電性経路を形成することが可能となり、電流のこの一部分を標的体組織に伝達して、神経インパルスを活性化又は遮断する。かかるインプラントを組み込むシステム及び方法が、本明細書において説明される。
【0013】
[1030] 本明細書において説明されるように、「被験者」は、例えばヒトを含む動物であることが可能である。体組織は、例えば、神経組織(末梢神経系又は中枢神経系中の)、神経、筋肉(骨格筋、呼吸筋、又は心筋)、又は器官(例えば脳、蝸牛、視神経、心臓、膀胱、尿道、腎臓、及び骨など)であることが可能である。
【0014】
[1031] 本明細書において説明されるシステム、方法、及びデバイスは、神経インパルスを活性化又は遮断するための刺激が望ましいものとなり得る様々な症状を治療するために使用され得る。かかる症状には、例えば、運動障害(例えば、痙縮、過緊張、硬直、振戦及び/又は筋力低下、パーキンソン病、ジストニー、脳性麻痺)、筋障害(例えば筋ジストロフィー)、失禁(例えば、膀胱障害)、尿閉、疼痛(例えば、偏頭痛、顔面痛、頸痛、腰痛、他の医学的症状による疼痛)、癲癇(例えば、全身卒中障害及び部分卒中障害)、脳血管障害(例えば、卒中、動脈瘤)、睡眠障害(例えば、睡眠時無呼吸)、自律神経障害(例えば、胃腸障害、心血管障害)、視覚障害、聴覚障害、バランス障害、及び神経精神障害(例えば、抑うつ)などが含まれ得る。さらに、これらのシステム、方法、及びデバイスは、骨成長(例えば骨折の治癒においてなど、必要に応じて)、創傷治癒、又は組織再生を促進するために使用することが可能である。さらに、これらのシステム、方法、及びデバイスは、関節痛及び/又は関節炎痛を抑止又は軽減するためにも使用することが可能である。
【0015】
[1032] さらに、本明細書において説明されるシステム、方法、及びデバイスは、例えば、脊髄損傷、卒中、脳損傷、又は神経障害より生じた長期的な障害による、筋萎縮、静脈血栓、及び関節硬直の防止において使用することが可能である。さらに、本明細書において説明されるシステム、方法、及びデバイスは、人工関節置換若しくは他の外科手術、骨折、又は様々な他の理由など、運動抑止をもたらす急激な又は短期間の障害の場合にも使用することが可能である。かかる使用のいくつかの例が、以下に説明される。
【0016】
[1033] 本明細書において説明される他の治療処置及び方法は、尿失禁の治療における脛骨神経及び/又は総腓骨神経の刺激において使用するため、頭痛及び/又は顔面痛の治療における三叉神経刺激又は頸椎に隣接する神経の刺激において使用するため、人工関節置換処置と組み合わせて使用するため、関節痛及び/又は関節炎痛を軽減するための用途において使用するため、並びに、足病治療用途においてなどの骨に装着される筋肉のリハビリテーションを行なうための用途において使用するためのシステム及び方法を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるシステム及び方法は、不動の肢又は身体部分に動作を与えるために使用される。いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるシステム及び方法は、例えば肢などを通る血流を上昇させるため、筋萎縮を軽減又は除去するため、及び/又は筋肉の成長を促進するために使用することが可能である。いくつかの実施形態においては、ひびの入った肢に施されるギブスなどの装具の中に、患者の体内のインプラントへ電流を印加するために使用することの可能なパルス発生器(以下においてより詳細に説明される)を埋設することが可能である。
【0017】
[1034] 標的体組織を刺激するために、例えば、刺激又は遮断すべき神経のタイプ、神経の分布する組織、神経のサイズ、治療すべき被験者、症状のタイプ、症状の重篤度、及び治療に対する被験者の受容力など、多数の要素に応じて特定の周波数を印加することが可能である。一般的には、遮断のためには、高周波が有効であり、例えば、100〜30,000Hzの間の範囲の、又は代替的には100〜20,000Hzの間の範囲の周波数にて循環波形を印加することが可能である。代替としては、この循環波形は、100〜10,000Hzの間の範囲、又は200〜5,000Hzの間の範囲の周波数にて印加することが可能である。刺激又は活性化のためには、例えば、1〜100Hzの間の範囲、又は代替的には1〜50Hzの間の範囲の周波数など、低周波が一般的に使用される。代替としては、周波数は、1〜20Hzの間の範囲であることが可能である。いくつかの場合においては、周波数は、1〜150Hzの間の範囲であることが可能である。
【0018】
[1035] 図1は、皮膚10、神経鞘14に覆われた神経12、及び筋肉16を含む、被験者の体組織の複数部分の概略図である。さらに、図1は、インプラント18、表面カソード電極20、及び表面アノード電極22を図示する。インプラント18は、被験者内の神経12などの標的体組織を電気的に刺激して、神経インパルスを活性化又は遮断するために用意される。インプラント18は、埋め込まれると、表面カソード電極20と表面アノード電極22との間を流れる電流の少なくとも一部分のための導電性経路を形成する。
【0019】
[1036] 表面カソード電極20及び表面アノード電極22は、被験者の皮膚10上で離間関係において位置決めされると、皮膚10と電気接触し、標的体組織に電流を伝達する。表面カソード電極20及び表面アノード電極22は、導電性プレート、導電性シート、導電性ゲル電極、電極ペースト若しくは電極ゲルにより部分的にコーティングされ得る導電性ゴム電極又は導電性ポリマー電極、又は湿性吸収性パッド電極から選択され得る。例えば、5平方センチメートルのなどの表面積を有する、筋肉を刺激するために使用されるタイプの自動接着性ヒドロゲル電極を使用することが可能である。いくつかの実施形態においては、より広い又はより狭い表面積を有する電極を、代替として使用することが可能である。典型的には80%以上の白金及び20%以下のイリジウムからなる、白金イリジウム電極を使用することも可能である(例えば、85%白金−15%イリジウム合金、90%白金−10%イリジウム合金など)。皮膚10上の表面カソード電極20及び表面アノード電極22の位置は、標的体組織の位置及び性質に応じて様々であってよい。
【0020】
[1037] インプラント18は、埋め込まれた際に、表面カソード電極20の下方に位置する皮下組織から例えば神経12などの標的体組織まで延在するのに十分な長さを有する受動電気導体24を備える。電気導体24は、金属ワイヤ、炭素繊維、導電性ゴム又は他の導電性ポリマー、又はゴム内の導電性塩水から形成することが可能である。心臓ペースメーカのリードにおいて使用されているタイプの、多重撚りの、テフロン(登録商標)絶縁保護された、ステンレス鋼ワイヤ導体を使用することも可能である。医療用途の部品において一般的に使用されているMP35N合金(非磁性のニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金)もまた適している。電気導体24は、ピックアップ端部26及び刺激端部28を有し、ピックアップ端部26と、刺激端部28と、の間において絶縁保護されている。
【0021】
[1038] (埋め込まれた場合の)導体24のピックアップ端部26及び刺激端部28と、周囲の体組織と、の間の界面の電気インピーダンスは、これらの端部26、28の表面積を拡大することにより低減させることができる。これを目的として、ピックアップ端部26及び刺激端部28の一方又は両方が、電気導体24のピックアップ端部26及び刺激端部28と、周囲の体組織と、の間の界面の電気インピーダンスを低減させるのに十分な表面積を有する電気的終端30を形成する。ピックアップ端部26は、標的体組織が刺激されて神経インパルスが活性化又は遮断されるように、電流の十分な部分が、表面カソード電極20と、表面アノード電極22と、の間で体組織を介して流れるのではなく、電気導体24を介して流れることが可能となるのに十分な表面積を有する電気的終端30を形成する。刺激端部28もまた、標的体組織(すなわち神経12)に電流のこの十分な部分を送るために、電気的終端30を形成する。
【0022】
[1039] 終端30は、体組織との高導電率接触を実現し、体組織と、導体24と、の間の電気インピーダンスを低下させるのに十分な表面積を有する。この表面積が最小である場合には、導体を介して終端へ流れる電流の量は、効力のない量にまで低減される。必要な表面積は、体組織と、受領側の終端30又はピックアップ端部26及び刺激端部28と、の界面の電気インピーダンスの知識によって、決定することが可能である。端部26、28の金属終端30の表面積を例えば約0.5cm2にすることにより、有利な結果が得られている。代替的に、端部26、28の終端30が、より広い又はより狭い表面積を有することが可能である。組織と、端部26、28の終端30と、の間の各界面の電気インピーダンスは、表面電極20、22間の全ての皮下組織の電気インピーダンスの約5倍であることが可能である。例えば、組織インピーダンスの典型的な値は、200Ωである。導体24のインピーダンスは、例えば5Ωなど、非常に小さくなるように選択されてよい。かかる場合においては、終端30の2つの界面インピーダンスと、導体インピーダンスと、の合計は、約2000Ωになり、すなわち組織インピーダンスの10倍になり得る。したがって、表面電極20、22間に印加される電流の約10%が、電気導体24を介して標的体組織へ流れる。標的体組織が筋肉16に通じる神経12である場合には、標的筋肉16の有効な筋収縮を生じさせるのに必要とされる表面電極20、22間の電流の量は、表面電極20、22間において直に接している皮下組織中の神経終末部の活性化のしきい値レベルを下回るように留められる。これにより、表面電極20、22の下方における局所的感覚又は局所的筋収縮を殆ど又は全く伴うことなく標的筋肉16を活性化させることが可能となるため、これは有利な関係である。
【0023】
[1040] 種々の形状、材料、及び空間的配置からなる終端30を用いることが可能である。例えば、終端30は、コイル、螺旋、カフ、ロッド、又は、楕円形若しくは多角形の形状のプレート又はシートの形態において、拡大表面を形成することが可能である。一例として、図1は、電気導体24のピックアップ端部26では楕円形の形状のプレート又はシートとして、及び刺激端部28ではカフの形態で、終端30を示す。カフ又はその一部分は、神経12の神経鞘14の全体又は一部を包囲する又は部分的に包囲することが可能である。カフ若しくはその一部分を、神経鞘14の近位に位置決めすることが可能であり、又は、カフ若しくはその一部分の内方表面を、神経鞘14に直接的に接触させることが可能である。
【0024】
[1041] 表面積約0.5cm2及び厚さ1mmである、又は、例えば金属フォイル及びステンレス鋼メッシュから作製され、表面積約0.5cm2及び厚さ0.3mmである、楕円の形状のステンレス鋼プレート又はステンレス鋼シートによって、有利な結果を得ることが可能である。神経カフの形態の導体の終端30については、例えば金属フォイル又はステンレス鋼メッシュから作製され、表面積0.5〜1cm2及び厚さ0.3mmである神経カフを使用することが可能である。さらに、例えば長さ5mm〜15mmの範囲であり、内径4mm〜6mmを有し、厚さ1mmであるシラスティックエラストマーカフもまた適している。
【0025】
[1042] いくつかの実施形態においては、終端30は、電気導体24の非絶縁端部26、28から、又は他の導電性若しくは容量性材料から形成することが可能である。いくつかの実施形態においては、終端30は、電極を含むことが可能である。終端30は、十分な表面を形成するために、ピックアップ端部26又は刺激端部28の長い非絶縁部分をコイル状にする、螺旋状にする、又は織成することにより形成することが可能である。したがって、終端の表面積は、より短い長さの電気導体24の表面積に対して「拡大」される。これは、小スペース内における終端30の有効表面積を増大させ、それにより、体組織とのより高い導電率の接触を実現し、体組織と、導体24と、の間の電気インピーダンスを低下させて、体組織中よりもむしろ導体24中に電流を流すことを可能にする。これにより、十分な電流が導体24中に供給されて、標的組織を刺激する。代替としては、事前作製された終端30(例えば、楕円又は多角形の形状のプレート又はシート)を、ピックアップ端部26及び/又は刺激端部28に直接的に装着することが可能である。さらに、終端30は、標的体組織を通る電流の流れを最大化するために、導電性材料でコーティング又は改良することが可能である。
【0026】
[1043] 終端30の空間的配置は、様々になすことが可能である。例えば、複数の終端30を、体組織の様々な部分に取り付けることが可能である。いくつかの実施形態においては、終端30は、神経12の周囲に配置される包囲カフ32内に封入された密集接触部の形態をとることが可能である。この包囲カフ32は、例えば導電性シリコーンゴムで形成することが可能である。
【0027】
[1044] 電気インピーダンスは、終端30上に導電性コーティング、容量性コーティング、又は酸化物層を設けることによって、さらに低減させることが可能である。このコーティングは、例えば組織が中へと成長し得る複雑な表面を提供することによって、組織と、導体と、の間の電気伝導力を向上させる構造的特性及び電気的特性を有する材料から選択することが可能である(例えば、ポリ−ジエトキシ−チオフェンなどのポリマー、又は、タンタル及び焼結イリジウムを含む適切な酸化物層など)。さらに、終端30は、抗炎症効果、抗菌効果、又は組織内部成長効果をもたらすコーティングを有することが可能である。このコーティングは、例えば、抗炎症剤、抗菌剤、抗生物質、又は組織内部成長促進剤から選択される物質が可能である。
【0028】
[1045] いくつかの実施形態においては、図1に図示されるように、電気復路導体34を備える第2のインプラントを、インプラント18と共に含むことが可能である。電気復路導体34は、標的体組織から、表面アノード電極22の下方に位置する皮下組織まで延在するのに十分な長さのものであることが可能である。電気復路導体34は、標的体組織から表面アノード電極22まで、低インピーダンス導電性経路を形成し、それにより、標的組織を通るように電場を集中させる。電気復路導体34は、例えば金属ワイヤ、炭素繊維、導電性ゴム若しくは他の導電性ポリマー、又はゴム内の導電性塩水から形成することが可能である。電気復路導体34は、集電端部36及び復路端部38を有し、これらの端部36、38の間において絶縁保護される。集電端部36及び復路端部38は共に、電気復路導体34の集電端部36及び復路端部38と、周囲の体組織と、の間の界面の電気インピーダンスを低減させるための電気的終端30(導体24に関して上述したような)を形成する。集電端部36は、電気的終端30(図1においてはカフの形態で示される)を形成し、この電気的終端30は、標的体組織に送られた電流の一部分が体組織を介して戻るよりもむしろ電気復路導体34を介して戻ることが可能となるのに十分な表面積を有する。復路端部38は、電気的終端30(図1においては楕円の形状のプレート又はシートとして示される)を形成し、この電気的終端30は、表面アノード電極22の下方の皮下組織及び皮膚を介して表面アノード電極22に電流を戻す。
【0029】
[1046] 複数の表面電極20、22を単一の非導電性基板上に製造して、皮膚10に好都合に装着させ得る電極アレイを形成することが可能である。同様に、埋込み導体24の複数の終端30を基板上に製造して、アレイを形成することが可能である。表面電極アレイの物理的レイアウトを埋込み終端アレイの物理的レイアウトに合致させることにより、表面導体及び埋込み導体の良好な空間的対応を、好都合かつ再現可能な態様において達成することが可能となる。さらに、アレイの各要素の導電率を個別に制御し得る表面電極アレイを使用して、表面電極と、埋込みアレイ中の終端と、の間の導電率を調節することが可能である。
【0030】
[1047] 被験者の身体の外部に配設される刺激装置(図示せず)に作動電力を供給するために、電源(図示せず)を使用することが可能である。刺激装置は、表面カソード電極20及び表面アノード電極22に電流を供給するために、電気ワイヤ又は電気導体42、44を介して表面カソード電極20及び表面アノード電極22に電気的に接続されてよい。電流は、電極20、22間に生じる正味のインピーダンスに応じて抵抗性又は容量性のものであることが可能である。
【0031】
[1048] 刺激装置は、例えばパルス発生器であることが可能である。刺激装置の例が、米国特許出願公開第2006/0184211号(「’211公開」)において説明されている。該公開の開示は、ここで参照により全体として本明細書に組み込まれる。パルス発生器の使用法及び種々の例示的用途もまた、’211公開中に説明されている。一般的には、電源40からの電流の流れは、表面カソード電極20にてカソードワイヤ42を経由して皮膚10中に供給され、表面アノード電極22にてアノードワイヤ44を経由し得る。有線接続により、又は無線周波(RF)などの無線エネルギー供給源を介した無線接続により、刺激装置に電力を供給することが可能である。
【0032】
[1049] 電流の殆どは、表面カソード電極20及び表面アノード電極22の近傍の体組織を介して流れるが、電気導体24、神経12、及び電気復路導体34を通る電流の流れもまた存在する。図1に図示されるように、表面カソード電極20は、電気導体24のピックアップ端部26の上方に位置決めされ、それにより、電流の一部分が、導体24を介して標的体組織へ伝達され、電流は、この標的体組織を通って流れ、体組織を介して表面アノード電極22に戻る。これは、標的体組織と、表面アノード電極22の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体34によっても達成することが可能である。
【0033】
[1050] 電流のこの一部分の完全な電気経路は、以下の通りである。カソードワイヤ42、表面カソード電極20、皮膚10、終端30、ピックアップ端部26、電気導体24、刺激端部28、終端30、神経鞘14、神経12、終端30、集電端部36、電気復路導体34、復路端部38、終端30、皮膚10、表面アノード電極22、及びアノードワイヤ44となる。電流のパルスは、神経12に沿って筋肉16に伝導される活動電位を誘発して、筋肉16を収縮させることが可能である。代替としては、高周波波形の形態の電流が、神経12に沿って筋肉16に伝導される活動電位を遮断して、筋収縮を防ぐことが可能である。
【0034】
[1051] 図1に図示されるインプラント18などのインプラントを使用して、様々な障害を治療することが可能である。以下に述べるように、及び本明細書に組み込まれる’211公開において述べられるように、これらの埋込み受動電気導体は、種々の標的体組織を刺激するように電流をルーティングして、周波数及び治療すべき障害に応じて神経インパルスを活性化又は遮断することが可能である。
【0035】
[1052] 1つの例示的な処置においては、刺激システムを人工関節置換処置(例えば人工膝関節置換又は人工股関節置換)と組み合わせて使用することにより、手術前の筋肉の調整、処置後の痛みの軽減、術後の回復の強化、及び/又は、人工関節置換処置に付随する副作用のいくつかの軽減若しくは防止を行なうことが可能である。
【0036】
[1053] 人工関節置換は、現代の整形外科学において用いられる一般的な手術である。人工関節置換は、関節の疼痛部分、関節炎部分、磨耗部分、又は癌性部分を、関節動作を可能にするような様式で形状設定された人工表面により置換することを含む。常に実現されるわけではないが、多くの場合、人工関節置換処置により、可動域の完全な回復が得られる。人工関節置換は大手術であるため、典型的には、多大な術前作業が必要とされる。この作業には、X線画像を整合させることによるインプラントの設計及び寸法の選択が含まれる。患者の早期授動が、静脈血栓塞栓症及び肺炎などの併発症の機会を低減させる鍵であると考えられている。術後の可能な限り早期に患者に授動を図り、耐えられる場合には歩行補助器を用いて歩行を行なうことが、一般的に実践されることである。関与する関節に応じて、及び患者の術前状態に応じて、入院期間は、例えば1日から2週間までなど、様々であってよく、平均は4〜7日である。
【0037】
[1054] 人工関節置換手術の後の患者の回復機能を助けるために、物理療法もまた広く利用される。段階的運動プログラムを利用することが可能である。初期においては、患者の筋肉は術後まだ治癒しておらず、関節の可動域のための運動及び歩行は激しいものであるべきではない。後に、筋肉が治癒すると、運動の目的は、機能の強化及び回復を含むように拡大される。
【0038】
[1055] 外科手術のストレスは、心臓発作、卒中、静脈血栓塞栓症、肺炎、錯乱の増大、及び尿路感染症(UTI)のような、様々な発生率及び重篤度からなる医学的問題を生じさせる場合がある。術中のリスクには、構成要素の位置異常、短絡、不安定性/位置ずれ、可動域の低下、隣接する骨の骨折、神経損傷、又は血管の損傷が含まれる。いくつかの即時的リスクには、深部又は表層部における感染及び位置ずれが含まれる。いくつかの中期的リスクには、位置ずれ、持続痛、可動域の低下、衰弱、無痛性感染が含まれる。長期的リスクには、支持表面の疲労及び/又は磨耗による構成要素の弛みが含まれ得る。結果として、構成要素が骨の内部に移動する場合があり、これが痛みをもたらす。さらに、磨耗粉の破片が、骨吸収による炎症性反応を生じさせる場合があり、これは弛みを生じさせる場合がある。
【0039】
[1056] 人工膝関節置換又は人工膝関節形成は、変形性関節炎による、最も一般的には骨関節炎による(しかし他の関節炎も含む)疼痛及び障害を軽減するために実施される、一般的な処置である。かかる処置は、膝の疾病を患い痛む関節表面を、膝の連続動作を可能にするように形状設定された金属構成要素及びプラスチック構成要素により置換することを含む。歩行及び/又は起立などの活動に影響を及ぼし得る膝の関節炎による身体能力を奪う程の痛みを治療するために、人工膝関節全置換(TKR)が実施される場合もある。TKR手術は、膝蓋骨からの四頭筋(内側広筋)の一部の切離しによる、膝の前部の露出を伴う。低侵襲手術がTKRにおいて開発されつつあるが、完全に許容し得るものはまだ見出されていない。目標とされるものは、術後の痛みを増大させ得る又は障害を長期に渡らし得る、四頭筋における大きな切開を患者から免じることである。
【0040】
[1057] 人工膝関節部分置換とも呼ばれる人工膝関節単顆置換(UKA)が、ある患者にとっては1つの選択肢となる。かかる処置において、膝は、一般的には3つの「構成要素」、すなわち、内側部(膝の内側部分)、外側部(外側)、及び膝蓋大腿骨部(膝蓋骨と大腿骨との間の関節)に区分される。人工膝関節置換を考慮するに十分に値する酷さの関節炎を抱える殆どの患者は、これらの構成要素の2つ以上において著しい磨耗を被っており、人工膝関節全置換によって最もよく治療される。少数の患者(例えば10〜30%)は、通常は内側部である1つの構成要素に主に限定された磨耗を被っており、人工膝関節単顆置換の候補者となり得る。TKRと比較された場合のUKAの利点には、より小さな切開、より楽な術後のリハビリテーション、より短期間の病院滞在、より少ない失血、より低い感染症リスク、より低い硬直リスク、より低い血塊リスク、及び、必要な場合には修正手術がより容易であることが含まれる。ループス、乾癬、又は著しい奇形は、UKA処置の候補とはならない場合がある。
【0041】
[1058] 術後リハビリテーションは、通常は、四頭筋が治癒しその強度を回復するまでは、松葉杖又は歩行器を用いる、保護された体重支持を利用することを含む。また、持続受動運動(CPM)も一般的に利用される。術後の入院は、患者の健康状態及び病院環境の外で利用可能なサポート量に応じて、例えば平均で1日から7日までと、様々であってよい。通常は、完全な可動域は、初めの2週間の間に回復する。典型的には、6週目で、患者は、杖による完全な体重支持にまで進展している。完全な正常機能に戻ることを含む、手術からの完全な回復は、例えば3ヶ月を要する場合があり、患者によっては、それよりも長い月数にわたって徐々に改善が続くことを認める場合がある。
【0042】
[1059] TKR処置又はUKA処置には、リスク及び併発症が伴う。例えば、脚静脈中の血塊が、人工膝関節置換手術の最も一般的な併発症である。さらに、人工関節周囲骨折が、老齢の患者に関してより頻繁に生じるようになり、術中に又は術後に生じる場合がある。時として、膝は、人工膝関節全置換の後に、正常な可動域(例えば、0〜135度)を回復しない場合がある。0〜110度の動作を達成することが可能な患者もいるが、いくつかの場合では、関節の硬直が引き起こされる可能性がある。いくつかの状況においては、麻酔下における膝の徒手整復を用いることにより、術後の硬直を改善させる。ある患者においては、膝蓋骨が、術後に不安定になり、膝の外方へ位置ずれする。これは、痛みを伴う場合があり、膝蓋骨を再調整するための外科手術を要する場合がある。人工膝関節置換インプラントは、多数の患者において、例えば最長で20年間持続し得るものであり、これは、例えば術後の患者の活動性などによって左右され得る。
【0043】
[1060] 股関節形成とも呼ばれる人工股関節置換は、人工インプラントにより股関節を置換する外科処置である。かかる人工関節置換整形外科手術は、一般的には、関節炎痛を緩和するために、又は股関節骨折治療の一部として重篤な物理的関節損傷を修復するために、実施される。人工股関節置換患者の中には、外科手術後に慢性疼痛を被る場合がある。かかる副作用は通常はX線又はMRIでは検出不能であるため、かかる疼痛の原因を判定することは困難な場合がある。一般的には、かかる疼痛は、置換手術の最中の神経損傷によって引き起こされると考えられている。
【0044】
[1061] 上述の人工股関節置換及び人工膝関節置換などの人工関節置換を試みる代替策として、電気刺激の利用により、かかる人工関節置換手術の必要性を遅らせる、又は延期させることが可能である。例えば、パルス電気刺激デバイスを使用して、人工膝関節全置換手術を延期させることが可能である。いくつかの場合においては、電気刺激の利用により、関節痛及び関節炎痛が大幅に軽減される可能性があり、したがって人工関節置換手術の必要性がなくなる可能性がある。
【0045】
[1062] TKR処置の後に、患者は、年齢をマッチングした健康な対照と比較して、四頭筋の長期的な筋力低下及び運動耐容能の漸減を示す場合がある。外科手術による疼痛及び腫れが、四頭筋の筋力低下に寄与する場合がある。電気刺激を利用することにより、人口関節置換処置後の回復を強化することも可能である。例えば、神経筋電気刺激(NMES)を随意運動プログラムに加えることで、四頭筋の強度を改善することが可能である。さらに、TKRからの回復の最中に電気刺激を加えることにより、膝伸展不全を効果的に軽減し、病院滞在期間を短縮することが可能である。
【0046】
[1063] したがって、本明細書及び’211公開において説明されるような刺激システムは、人工関節置換と組み合わせて利用することが可能である。上述のように、外部刺激装置(例えばパルス発生器)により非貫通経皮的に送られる電気刺激の一部分が、埋込み導体(例えば導体24)のピックアップ端部(例えば26)によってピックアップされ、標的刺激位置付近に位置する導体の刺激端部(例えば28)に送られる。例えば、刺激端部は、股関節又は膝関節などの関節の近傍に位置決めすることが可能であり、又は、関節に付随する筋肉を活性化させる運動点(又は複数の運動点)の付近に位置決めしてもよい。
【0047】
[1064] 非貫通経皮型デバイスと比較した場合、本明細書において説明されるような刺激システムにより、皮膚を介した刺激の送達による皮膚受容器からの不快な感覚を全く伴うことなく、及び(TENSにおけるような)非標的部位を活性化させるリスクを全く伴うことなく、刺激を特定の位置(例えば特定の神経)に送ることができる。さらに、貫通経皮的刺激と比較した場合に、本明細書において説明されるような刺激システムを使用することにより、皮膚を貫通して突出するリードによる炎症及び汚染のリスクを低減又は排除することが可能となる。通常サイズの埋込み型刺激装置と比較すると、本明細書において説明される刺激システムについては、低侵襲処置のみが必要となる。さらに、通常は、本明細書において説明されるような刺激システムは、標的刺激位置から、比較的遠くに位置することのある刺激装置の埋込みが可能な位置(皮下ポケット)までリードを通すことを伴わない。例えば、腕の刺激は、腕から、刺激装置が埋め込まれる胸までリードを通すことが必要となる場合がある。かかる処置の侵襲性に加えて、長いリードが関節を跨ぐことに付随する、リードの移動又はリードの損傷のリスクが存在する。
【0048】
[1065] 人工関節置換処置と組み合わせて使用される、本明細書において説明されるような刺激システムは、様々な種々の利益を達成するために使用することが可能である。例えば、刺激の利用により、人工関節置換処置の必要を遅らせる、又は延期させることが可能である。置換処置の前に筋肉/関節の調整を行なうことが可能となる(例えば可動域を増大させるなど)。関節を刺激することにより、人工関節置換処置後の回復を向上させることも可能である。例えば、疼痛管理及び/又は筋肉性能の管理において、改善を行なうことが可能となる。いくつかの場合においては、関節を刺激することにより、深部静脈血栓の防止を助けることも可能になる。いくつかの場合においては、関節の刺激により、かかる人工関節置換処置の必要性を無くすことが可能となる。例えば、かかる刺激は、人工関節置換がもはや不要になるほどに、関節痛及び/又は関節炎痛を大幅に軽減することが可能である。
【0049】
[1066] 例えば、人工膝関節置換処置に関連する可動域又は筋肉状態の改善のために、本明細書において説明されるような刺激システムを使用して、膝伸筋及び/又は膝屈筋を刺激することが可能である。この例においては、膝の伸展は、図2に図示されるように、大腿神経が分布する大腿四頭筋(縫工筋、中間広筋、外側広筋、及び内側広筋を含む)によって実施される。膝の屈曲は、図3に図示されるように、坐骨神経及び脛骨神経により制御される、ハムストリング(外側ハムストリング及び内側ハムストリング)によって実施され得る。
【0050】
[1067] 運動点刺激を生じさせるために、インプラント(例えばインプラント18)を含む刺激システムを、対象となる神経の付近に埋め込むことが可能である。刺激周波数は、例えば50Hz未満であることが可能である。例えば膝を伸展させるために、単一のインプラントを使用することが可能であり、このインプラントを周期的に作動させることが可能である。例えば、30秒おきに5秒間の刺激を加えることが可能である。刺激中に、膝は伸展され、このサイクルの休止中には、(重力により)元の位置へと弛緩される。さらに、2つ以上のインプラントを使用することも可能である。例えば、1つのインプラントにより膝を伸展させ、他方のインプラントにより膝を屈曲させる。この場合においては、これらのインプラントは、例えば5秒間の刺激による伸展、10秒間の休止、5秒間の屈筋の刺激、10秒間の休止、等々のサイクルなど、同期的に作動させることが可能である。比較的高い周波数の刺激(例えば30Hz超)を用いる場合には、疼痛の緩和を実現することが可能であり、これは、人工膝関節置換処置の任意の複数の段階において有用となり得る。
【0051】
[1068] 別の例示的な用途においては、本明細書において説明されるような刺激システムを使用して、総腓骨(CP)神経(例えば、総腓骨神経(common fibular nerve)、外側膝窩神経、腓骨神経)、及び/又は脛骨神経に対して電気刺激を加えることによって、尿失禁を治療することが可能である。図4〜図8は、カソード電極(又は複数のカソード電極)及びアノード電極(又は複数のアノード電極)がネコF上の様々な位置に位置決めされた、インプラントの様々な構成配置からなる応用例を図示する。ネコ被験体の概略図が、図4〜図8に図示される。
【0052】
[1069] 図4は、ネコFの皮膚下に2つのインプラントが埋め込まれた状態のネコFを示す。第1のインプラント118は、ピックアップ端部126並びに刺激端部又は送達端部128を有する受動導体124と、終端133と、を備える。送達端部128は、ネコFの総腓骨神経(図4には図示せず)の近傍に配設される。第2のインプラント118’は、ピックアップ端部126’並びに刺激端部又は送達端部128’を有する受動導体124’と、終端135と、を備える。送達端部128’は、ネコFの脛骨神経(図4には図示せず)の近傍に配設される。図5〜図8は、例示のために、ネコFの皮膚下に配設されたインプラント118及び118’を示さない。以下の説明中のインプラント118及び118’に対する言及は、図4を参照とする。
【0053】
[1070] 図5は、インプラント118及び118’がネコF内に埋め込まれた状態の、ネコFに装着された刺激システムを示す。第1のカソード電極120が、導体124のピックアップ端部126の上方でネコFの外部表面に装着され、第2のカソード電極121が、導体124’のピックアップ端部126’の上方でネコFの表面に装着される。この例においては、電流が、(例えばパルス発生器により)第1のカソード電極120及び第2のカソード電極121に供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、それぞれCP神経及び脛骨神経の近傍に位置する導体124、124’の刺激端部128、128’に送られる。したがって、この例は、カソード刺激を実現する。この例においては、単一のアノード電極122が、カソード電極121から8cm及びカソード電極120から5cmの位置に位置決めされる。
【0054】
[1071] 図6は、治療すべき神経の近傍の送達端子(例えばインプラントの刺激端部)の上方のカソード電極と、インプラントのピックアップ端子の上方のアノード電極と、を有するシステムを示す。この実施形態においては、第1のカソード電極120が、CP神経の近傍に位置するインプラント118の送達端部128の上方でネコFに装着され、第2のカソード電極121が、脛骨神経の近傍に位置するインプラント118’の送達端部128’の上方でネコFに装着される。第1のアノード電極122が、第1のカソード電極120から7cmの位置でネコFに装着され、第2のアノード電極123が、第2のカソード電極121から7cmの位置でネコFに装着される。この実施形態においては、電流が供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、カソード電極120、121が上方に配設されたインプラント118、118’の刺激端部128、128’に送られる。
【0055】
[1072] 図7は、カソードピックアップ及びアノード伝達構成配置を有するシステムを示す。この実施形態においては、第1のカソード電極120が、インプラント118のピックアップ端部126の上方でネコFに装着され、第2のカソード電極121が、インプラント118’のピックアップ端部126’の上方でネコFに装着される。第1のアノード電極122が、CP神経の近傍に位置するインプラント118の送達端部128の上方でネコFに装着され、第2のアノード電極123が、脛骨神経の近傍に位置するインプラント118’の送達端部128’の上方でネコFに装着される。この実施形態においては、第1のカソード電極120が、第1のアノード電極122から12cmの位置に位置決めされ、第2のカソード電極121が、第2のアノード電極123から15cmの位置に位置決めされる。電流が、カソード電極120、121に供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、アノード電極122、123が上方に配設された送達端部128、128’に送られる。
【0056】
[1073] 図8は、送達端子の上方のカソード電極と、ピックアップ端子の上方のアノード電極とを有するシステムの一例である。この構成配置においては、第1のカソード電極120が、CP神経の近傍に位置するインプラント118の送達端部128の上方に配置され、第2のカソード電極121が、脛骨神経の近傍に位置するインプラント118’の送達端部128’の上方に配置される。第1のアノード電極122が、インプラント118のピックアップ端部126の上方に配置され、第2のアノード電極123が、インプラント118’のピックアップ端部126’の上方に配置される。図7の実施形態と同様に、第1のカソード電極120が、第1のアノード電極122から12cmの位置に位置決めされ、第2のカソード電極121が、第2のアノード電極123から15cmの位置に位置決めされる。この実施形態においては、電流が、アノード電極122、123に供給され、この電流の一部分が、導体124、124’のピックアップ端部126、126’によりピックアップされ、導体124、124’を介して、カソード電極120、121が上方に配設された送達端部128、128’に送られる。したがって、この構成配置は、アノード刺激の一例である。
【0057】
[1074] 図5〜図8に図示される構成配置のそれぞれに対して、表面しきい値電流を決定することが可能である。図9は、カフ式インプラントがネコF内に埋め込まれた際の、各構成配置に関連付けされるしきい値電流の一例を示すグラフである。図9に示されるように、外部電極が、導体のピックアップ端部及び刺激端部の両方の上方に配置される(図7及び図8に示されるように)場合には、導体のピックアップ端部の上方に外部電極が配置されない構成配置(図5)に対するしきい値の半分のしきい値のみが、必要とされる。
【0058】
[1075] 別の例示的な用途においては、本明細書において説明されるインプラントは、足病治療用途においてなど、骨に装着される筋肉のリハビリテーションを行なうために使用することが可能である。さらに、麻痺した手などの不動の四肢の動作に対して支援を与えるために、インプラントを使用することも可能である。かかる電気刺激は、米国特許第6,961,623号(「’623特許」)において説明されており、該特許の開示は、ここで参照によりその全体として本明細書に組み込まれる。例えば、’623特許は、患者の歯を共に噛み合わせて鳴らすことにより生じる振動により、デバイス又はプロセスを制御するための装置及び方法を説明している。かかるデバイスは、本明細書において説明される刺激システム中の刺激装置(例えばパルス発生器)を作動させるために使用することが可能である。
【0059】
[1076] 本明細書において説明されるようなシステム及びインプラントを使用することが可能な他の用途には、例えば肢内などの血流を上昇させること、及び/又は創傷の回復速度を上昇させることが含まれる。静脈性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、及び圧迫性壊死を含む慢性創傷は、公衆衛生上の大きな問題となり得る。米国内におけるかかる創傷の総有病率は、300〜600万人の範囲に及ぶと推定されている。創傷の治癒が困難であることにより、罹病率及び死亡率の割合が高くなり、生活の質に負の影響を及ぼし得る。脚及び足の潰瘍は、静脈疾患、動脈疾患、静脈/動脈混合疾患、糖尿病性神経障害、外傷、運動抑止、及び血管炎など、多数の原因を有するが、慢性病変の90%超は、静脈疾患、動脈疾患、及び末梢神経障害に関係する。慢性創傷は、治癒を促進し、感染、進行、及び再発を防止するために、介入を要する場合がある。その原因にかかわらず、潰瘍治療は、通常は、圧力除去、無菌包帯、及び局所的抗生物質などの保存的治療から開始する。保存的治療による創傷治癒の促進が上手くいかない場合には、罹患した静脈の硬化療法、皮膚弁の再構築、又は、指若しくは脚の切断などの外科的治療が必要となる場合がある。慢性創傷の管理に対する低侵襲アプローチは、電気刺激を伴う。
【0060】
[1077] 皮膚が損傷を被る場合には、時として、上皮細胞が破壊されるのみならず、大量のコラーゲンを損失する可能性もある。コラーゲンは皮膚の重量の約75%を構成するため、これは重大である。皮膚の治癒を刺激するために、例えば、アロエベラ抽出物などの植物性生薬の局所的塗布、ソフトレーザ、天然蜂蜜、電磁パルス、及び線維芽細胞成長因子の利用など、様々な方法が用いられている。これらの方法により良好な結果が得られているとしても、慣習的なアプローチは、抗菌剤及び防腐剤を用いた、及び時としては吸湿性粉末を用いた感染防止に留まっている。しかし、これらのアプローチは、とりわけ、広範囲の火傷による創傷、糖尿病性潰瘍、虚血性皮膚弁、壊死創傷、皮膚の広い部位などの重篤なケースにおいて、罹患区域への十分な血液供給が促進されない場合には、利益は限定的なものとなり得る。
【0061】
[1078] したがって、本明細書において説明されるようなインプラントを用いて、電気を利用した創傷治癒の刺激を行なうことが可能である。さらに、電気刺激の多数の形態学的効果及び機能的効果が、細胞レベル及び組織レベルの両方において特定されている。
【0062】
[1079] 上述のように、電気刺激は、創傷の近傍において皮膚上に直接的に配置された電極を介した電流の印加を指す。創傷治癒を促進するための技術としての電気刺激は、1)皮膚中のATP濃度を上昇させ、2)DNA合成を増大させ、3)創傷部位に上皮細胞及び線維芽細胞を引き寄せ、4)損傷を被った神経組織の回復を加速させ、5)浮腫を低減させ、6)血流を上昇させ、及び/又は7)病理発生を抑止することができる。
【0063】
[1080] 刺激システム及びインプラントの他の上述の用途と同様に、創傷ケアにおける電気刺激(ES)は、皮膚創傷に直接接触状態において、又は皮膚創傷の近傍において、電極を配置することを伴い、このようにして創傷を通過する電流を生じさせる。皮膚は、電場を有しており、創傷の存在が、この電場を分断させ得る。創傷治癒のための補助的治療としてESを用いることにより、皮膚の電場の修復を助けることが可能となる。慢性創傷の治療において使用される複数の形態のESが存在する。一例においては、低強度の直流電流(LIDC)を印加することが可能であり、これは、典型的には100μA〜1mAの間である低強度の直流電流の印加を伴う。別の例においては、低強度のパルス電流(LIPC)を印加することが可能であり、これは、1秒当たり100パルスのオーダのパルスの繰返しでの、約10mAのパルス直流電流の印加を伴う。別の例においては、高電圧パルス電流(HVPC)を印加することが可能であり、これは、高電圧のパルス直流電流の印加を含む。パルスは、例えば100〜500Vの間の短期間のツインパルスなどが可能である。
【0064】
[1081] 電気刺激は、図10〜図12に図示されるように複数の様式で印加することが可能である。例えば、図10に図示されるように、第1の電極220(正極性又は負極性)が、創傷W中に配置された生理食塩水湿性ガーゼパッド246などの無菌導電性材料に取り付けられる。第2の電極222の導電性表面が、付近にて、無傷の乾燥した皮膚の上に取り付けられる。外部パルス発生器(EPG)248が、第1の電極(及びガーゼパッド246)に接続される。
【0065】
[1082] 図11は、同一の極性を有する2つのゲル電極320、322のそれぞれの導電性表面を、それらが創傷Wを跨ぐように、創傷Wの対向する境界上に無傷の乾燥した皮膚の上に位置決めすることを含む、1つの例示的な適用例を示す上面図である。逆の極性を有する第3のゲル電極324が、付近に、無傷の乾燥した皮膚の上に配置される。第1の電極320及び第2の電極322は、外部パルス発生器(EPG)348の第1の端子に接続され、第3の電極324は、外部パルス発生器348の第2の端子に接続される。
【0066】
[1083] 図12は、創傷Wの外周部の周囲に複数の電気針450及び452を位置決めすることを含む、1つの例示的な適用例を示す上面図である。この実施形態においては、3つの電気針450が、外部パルス発生器(EPG)448の第1の端子に接続され、第1の極性を有し、2つの電気針452が、外部パルス発生器448の第2の端子に接続され、逆の極性を有する。図10〜図12を参照として説明され示される各適用例においては、パルス周波数は、例えば約100パルス/秒に設定することが可能であり、電圧は、例えば適度な強度の、しかし快適な刺痛感覚を(感覚皮膚において)生じさせるか、又はかろうじて視認可能な筋収縮を(脊髄損傷を抱える患者におけるように、無感覚皮膚において)生じさせる電流を送るように、設定することが可能である。
【0067】
[1084] 電極、又は図11に図示されるように創傷の周囲の跨ぐ位置に配置された複数の電極の極性は、創傷の臨床的必要性に応じて決定することが可能である。自己融解を促進するためには、正極性により、負帯電した好中球及びマクロファージを引き付けることが望ましい場合がある。肉芽組織の成長を促すためには、負極性により、正帯電した線維芽細胞を引き付けることが望ましい場合がある。創傷表面再建を刺激するためには、正極性を用いて負帯電した表面細胞を引き付けることが望ましい場合がある。
【0068】
[1085] 負極性による電気刺激は、例えば糖尿病及び非糖尿病の動物の切除創傷中のコラーゲンの沈着を改善するためなどに使用することが可能である。直流電流(DC)刺激は、例えば交流電流(AC)よりも迅速に創傷面積を縮小するためなどに使用することが可能であるが、AC刺激は、DCよりも迅速に創傷体積を縮小することが可能である。DC刺激及びAC刺激は共に、実験的切開部の周囲のコラーゲン含有量を大幅に上昇させることが可能であり、毎秒ごとに極性が切替えられるACを利用しても同様の結果を得ることが可能である。例えば50〜300μAのDC電流は、いくつかの場合においては、上皮形成速度を加速させることが可能であり、電場が、上皮組織細胞及び結合組織細胞の増殖能力及び/又は遊走能力に影響を及ぼし得ることを示唆している。
【0069】
[1086] 創傷治癒のために本明細書において説明されるようなインプラントを使用することにより、他の既知の技術に勝る複数の利点がもたらされ得る。図13は、創傷治癒のためにインプラントを使用する一例を示す。この例においては、電気刺激は、創傷の下方又は中に刺激端部又は刺激電極を配置することにより、創傷を通して送ることが可能である。図13に図示されるように、インプラント518が、導体(例えばリード)524を備え、この導体524は、一方の端部にてピックアップ電極526(すなわちピックアップ端部)に接続され、別の端部にて刺激電極528(すなわち刺激端部)に接続される。刺激電極528は、創傷Wの下方に位置決めされる。外部カソード電極520及び外部アノード電極522が、皮膚の表面に装着される。外部パルス発生器(EPG)548が、外部電極520に電流を送り、この電流の一部分が、ピックアップ電極526によりピックアップされる。ピックアップ電極526は、導体524を介して、創傷Wの付近に配置された刺激電極528にこの電流を送る。刺激は、刺激電極528から創傷W及びアノード電極522を介してEPG548に戻る。したがって、電流は、創傷Wを通過し、創傷Wの深部を刺激する。
【0070】
[1087] 図14は、刺激が創傷のより深い部分に加えられるか、又は深部創傷若しくは内部創傷に加えられる、インプラントの使用の一例を示す。図14に示されるように、インプラント618が、導体(例えばリード)624、導体624の一方の端部に接続されるピックアップ電極626(すなわちピックアップ端部)、及び、導体618の他方の端部に接続される刺激電極628(すなわち刺激端部)を備える。刺激電極628は、深部創傷Wの下方に位置決めされる。外部カソード電極620及び外部アノード電極622が、皮膚の表面に装着される。外部パルス発生器(EPG)648が、外部電極620に電流を送り、この電流の一部分が、ピックアップ電極626によりピックアップされる。ピックアップ電極626は、導体624を介して、創傷Wの付近に配置された刺激電極628に電流を送る。先述の実施形態と同様に、刺激は、創傷Wを通過し、アノード電極622、及びEPG648に進む。他の実施形態は、例えば創傷の他方側に追加の埋込みリード(例えば導体)を備え、一方の端子が創傷の付近に置かれ、他方の端子が表面電極622の下方に置かれてもよいことをさらに指摘しておく。
【0071】
[1088] いくつかの実施形態においては、骨の骨折又はひびの治癒を強化するための用途において、及び/又は骨成長を促進するための用途において、インプラントを使用することがさらに可能である。例えば、骨折区域の骨は、エフィシス(ephysis)又は骨幹(成長又は修復の比較的不活発な領域)に対して電気陰性となり得る。骨折が治癒すると、電気陰性の区域は、もはや見られなくなる。例えば屈曲された骨の圧縮下の領域は、電気陰性となることが可能であり、張力下の領域は、例えば骨の非応力下部分に比較して電気陽性になることが可能である。応力に付随する電気の発生は、時として「骨圧電気」と呼ばれる。環境条件(例えば、化学的、熱的、又は機械的な)における変化が、初めに電気エネルギー又は刺激に変換され、それらが骨細胞に作用して、仮骨形成を引き起こすことが認められている。環境的刺激と仮骨とを結びつけるものは電気であり、したがって、仮骨は、電気により生成され得る。電極を、例えば大腿骨の髄管中などに挿入することが可能であり、電流を印加して、仮骨の隆起部を電極間において経時的に形成させることが可能である。したがって、負電極の領域におけるより大量の新しい骨の形成を実現することが可能である。
【0072】
[1089] 一例においては、距骨の骨折を電気刺激により治療することが可能である。例えば、カソード電極を骨折部位中に外科手術により挿入することが可能であり、アノード電極を足の内側面の上方で皮膚上に配置することが可能である。次いで、カソード電極に一定の電流を印加して、骨折部位に電気刺激を送ることが可能である。使用し得る様々な形態の電気刺激が存在する。例えば、DC刺激、容量結合(又はパルスDC)刺激、又はパルス電磁場刺激(誘導結合刺激)などがある。
【0073】
[1090] DC刺激(DC)印加の一例においては、複数のカソード電極を骨折部位中に外科手術により挿入することが可能である。電流源は、例えば埋め込む又は外部に置くことが可能であり、又は埋込み電極に貫通経皮的に接続させることが可能である。アノード電極は、非結合(例えば骨折又はひび)部位の付近に皮膚上に配置される。各カソード電極により搬送される電流は、カソード電極を構成する材料により変化し得る。
【0074】
[1091] 別の例示的な応用例においては、容量結合刺激(CC)が、非侵襲処置において加えられる。電極が、骨折部位の両側に配置される。必要な場合には、窓が、骨折部位にてギブス中に切り込まれる。電場(例えば1〜10mV/cm)を電極間の組織中において確立させることが可能であり、誘導電流が、幅広い組織体積にわたって分散される。刺激は、例えば1日当たり24時間にわたり加えることが可能である。
【0075】
[1092] パルス電磁場(PEMF)を使用する一例においては、経時変化磁場を伴う誘導結合が加えられる。特定の電流波形が、骨折部位の周囲に置かれたコイルを通り送られる際に、電場が、生成される。いくつかの実施形態においては、例えばパルス電磁場及び複合磁場など、2つの波形を使用することが可能である。いずれの波形についても、電圧勾配(例えば1〜10mV)を生じさせることが可能である。刺激は、例えば1日当たり30分〜10時間などの期間にわたって加えることが可能である。
【0076】
[1093] 本明細書において説明されるようなインプラントの使用により、骨構造中における骨折又はひびなどの骨欠陥区域に対して、電気刺激を低侵襲で効率的に送達することが可能になり得る。先述の実施形態に関して説明したように、及び図15に図示されるように、インプラント718は、患者の皮膚下に埋め込み得る導体724、ピックアップ電極726、及び刺激電極728を備える。刺激電極728は、治療すべき骨折部位Frなどの骨欠陥に隣接して、又は接触して位置決めされる。電極720(例えばカソード電極又はアノード電極)が、患者の皮膚上の外部位置に、及びピックアップ電極726の上方に位置決めされる。別の電極722(例えば、カソード電極又はアノード電極の他方のもの)が、電極720からある離間距離をおいて患者の皮膚の上のある位置に位置決めされる。電極720及び722は、例えばゲル電極であることが可能である。
【0077】
[1094] 外部パルス発生器(EPG)748を使用して、電極720を介して電気刺激を非貫通経皮的に送達することが可能である。次いで、送達される刺激の一部が、ピックアップ電極726によりピックアップされ、導体724を介して標的区域中に埋め込まれた刺激電極728に送られる。
【0078】
[1095] 電極は、例えば、骨折部位を覆って配設されたケース又はギブスなどによって覆われた区域外の患者の皮膚に対して装着することが可能である。いくつかの実施形態においては、ギブス中に開口が形成され、それにより、所望に応じて皮膚へのアクセス及び電極の交換が可能となる。例えば、定期的にゲル電極を交換することが望ましい場合がある。さらに、交換可能であるか、又はギブスと皮膚との間に装着され得る、湿潤電極を使用することも可能である。かかる場合においては、ギブス中の小開口を介して電極の定期的な加湿を行なってよい。
【0079】
[1096] いくつかの実施形態においては、ケース又はギブスは、電極及びEPGを担持する装具の役割を果たすことが可能である。例えば、刺激装置(例えばパルス発生器)を、ひびの入った、又は骨折した肢(例えば腕又は脚)を覆って配設されたギブス内に埋め込む、又はそのギブスに結合することが可能である。かかる一実施形態の一例は、米国特許第6,607,500号において説明されており、該特許の開示は、ここで参照によりその全体として本明細書に組み込まれる。
【0080】
[1097] 図16は、患者の解剖学的構造体の一部分を覆って、例えば骨欠陥の一区域(図示せず)を覆って、配設されたギブスCを含む、システムの一実施形態を示す。この実施形態においては、システムが、インプラント818を含み、このインプラント818は、導体824(例えばリード)、ピックアップ電極826、及び刺激電極828を有する。皮膚Sに装着されたゲル電極820及び822を介して非貫通経皮的に電気刺激を送るために、外部パルス発生器(EPG)848を使用することが可能である。上述のように、送られる刺激の一部分が、ピックアップ電極826によってピックアップされ、導体824を介して、標的区域に埋め込まれた刺激電極828に送られる。この実施形態においては、ゲル電極820、822は、ケース/ギブスCによって覆われた区域の外の皮膚に装着される。いくつかの状況においては、これは、標準的なTENS刺激と比較して、1つの利点をもたらすことが可能である。例えば、外部ゲル電極820及び822は、ギブスの外側に配置されることによりアクセス及び交換を容易にしつつ、依然として標的位置に刺激を送ることが可能である。
【0081】
[1098] したがって、電気刺激は、怪我又は外科手術後の短期的治療適用、及び、上述のような(例えば図15及び図16を参照)骨治癒のため又は麻痺した筋肉における筋萎縮の防止のための長期的適用など、様々に適用される。
【0082】
[1099] さらに、電気刺激は、頭痛及び/又は顔面痛の治療においても使用することが可能である。頭痛及び/又は顔面痛から生じる症候は、最も一般的には、顔中に位置する三叉神経又は上部頸椎に隣接する神経に起因すると考えられる。かかる神経を刺激することにより、頭痛及び/又は顔面痛の症候を減衰又は制御するのを助けることが可能となる。例えば、かかる神経の直接的刺激は、症候を減衰又は制御するために用いることが可能な「ゲートコントロール」機構として作用することが可能である。三叉神経及び特定の上部頸椎神経は、それらの神経線維を介した痛みに関係する信号の脳への伝達に関与している。侵害受容器(すなわち痛覚受容体)は、疼痛などの身体中の生理学的変化を検出し、例えば三叉神経又は特定の上部頸椎神経などを介して、脳に信号を送る。これらの神経の1つが刺激されると、侵害受容器から伝達された信号は、脳への到達が実質的に妨げられ得る。より具体的には、これらの神経の1つに対する比較的低い刺激(例えば約100Hz未満、又はいくつかの実施形態においては約150Hz未満)は、その神経の線維を効果的に活性化させ、侵害受容信号と効果的に競合する(又は侵害受容信号を効果的に「ゲートする」)ことが可能である。これらの神経の1つに対する比較的高い刺激(例えば約100Hz超、又はいくつかの実施形態においては約150Hz超)は、神経線維における興奮を弱め、これらの神経線維を介した信号伝達を禁ずることによって侵害受容信号を効果的に遮断することが可能である。
【0083】
[1100] 図17は、左三叉神経970の刺激により患者における頭痛及び/又は顔面痛を治療するためにインプラントを使用する一例を示す。この例においては、三叉神経970の任意の部分に隣接して、又はその上に刺激端部又は刺激電極を配置することによって、電気刺激を顔の左側中の三叉神経970に送ることが可能となる。図17に図示されるように、インプラント918は、導体(例えばリード)924を備え、この導体924は、ピックアップ電極に接続され(図17には図示せず)、別の端部で刺激電極928(すなわち刺激端部)に接続される。刺激電極928は、三叉神経970に隣接して位置決めされる。より具体的には、刺激電極928は、本明細書においてより詳細に説明されるように、三叉神経970の三叉神経節972に隣接して位置決めされる。いくつかの実施形態においては、ピックアップ電極は、耳の背後に皮下に位置決めされる。ピックアップ電極を、耳の背後に位置する皮膚の実質的に無毛の領域の下方に配設することが望ましい場合がある。このようにすることで、皮膚電極又は同様のデバイスを、ピックアップ電極の上方の皮膚の無毛領域上に配設することが可能となる。
【0084】
[1101] 三叉神経970は、顔面感覚の大部分に関与している。顔は、2つの三叉神経を有し、1つは、顔の右側中に位置し、他方は、顔の左側に位置する(図17に図示される)。偏頭痛、緊張型頭痛、慢性連日性頭痛、群発頭痛、及び顔面痛などの多くの頭痛が、三叉神経970に起因すると考えられる。
【0085】
[1102] 図17に図示されるように、三叉神経970は、三叉神経節972、眼神経974、上顎神経976、及び下顎神経978を含む。「三叉神経枝」と通常呼ばれる、三叉神経970の神経974、976、及び978は、三叉神経節972から延在する。三叉神経節972は、三叉神経枝のそれぞれの中に分布する知覚線維及び神経線維を含む。眼神経974は、頭皮、前頭、眼瞼、眼、鼻、及び血管の一部に知覚情報を搬送する知覚線維を含む。上顎神経976もまた、頬、唇、歯肉、副鼻腔、及び血管の一部に知覚情報を搬送する知覚線維を含む。下顎神経978は、知覚線維及び運動線維の両方を含む。下顎神経978の知覚線維は、唇、歯、歯肉、オトガイ、及び顎の一部に、口からの疼痛感覚及び温度感覚を含む知覚情報を搬送する。下顎神経978の運動線維は、筋肉に咀嚼及び嚥下に関する運動情報を搬送する。したがって、三叉神経枝の中のいずれか1つにより、頭痛及び/又は顔面痛の症候が引き起こされる可能性がある。そのため、これらの三叉神経枝及び/又は三叉神経節のいずれかの部分を刺激することにより、上述のように、頭痛及び/又は顔面痛の症候を軽減、除去、又は制御することが可能である。この例は、左三叉神経970の刺激を例示するが、右三叉神経を刺激して、顔の右側に特有の症候に対して同様の結果を得ることが可能であることを理解されたい。
【0086】
[1103] 図17には図示されないが、外部(すなわち表面)電極(図17には図示されない)は、先述の実施形態に関して上述したように、皮膚の表面に装着することが可能であることを理解されたい。外部パルス発生器(図17には図示されない)が、外部電極(又は複数の外部電極)に電流を送ることが可能であり、この電流の一部分が、ピックアップ電極(図17には図示されない)によってピックアップされ得る。上述のように、外部電極(又は複数の外部電極)は、ピックアップ電極の上方の皮膚の表面上に、及び耳の背後の無毛領域に配設することが可能である。次いで、ピックアップ電極は、導体924を介して、三叉神経970の三叉神経節972に隣接して配置される刺激電極928に電流を送ることが可能である。刺激は、刺激電極928から三叉神経970及び表面電極(又は複数の外部電極)を介して外部パルス発生器に戻る。したがって、電流は、三叉神経970の三叉神経節972を通過及び刺激する。いくつかの実施形態においては、刺激は、例えば約100Hz未満で外部パルス発生器により送られて、三叉神経970を活性化することが可能である。いくつかの実施形態においては、刺激は、例えば約150Hz未満で送られ得る。他の実施形態においては、刺激は100Hz超又は150Hz超で外部パルス発生器により送られて、三叉神経970における神経活性を妨げることが可能である。
【0087】
[1104] 図17の刺激電極928は、三叉神経970の三叉神経節972に隣接して位置するものとして例示され上述されるが、刺激電極928は、三叉神経970の任意の部分に隣接する又は接触することが可能であることを理解されたい。換言すれば、刺激電極928は、眼神経974、上顎神経976、及び/又は下顎神経978の任意の部分に隣接する又は接触することが可能である。これらの三叉神経枝のいずれかを刺激することにより、頭痛及び/又は顔面痛の症候の減衰又は制御がもたらされ得る。
【0088】
[1105] 図18は、上部頸椎に隣接する神経の刺激により患者における頭痛及び/又は顔面痛を治療するためにインプラントを使用する別の例を示す。この例においては、大後頭神経1080の任意の部分に隣接して又は接触して刺激端部又は刺激電極を配置することによって、上部頸椎(C1〜C4)に隣接する大後頭神経1080に電気刺激を送ることが可能である。脊髄で三叉神経と収束する大後頭神経1080は、頭の後部又は首の側部中に皮下に位置する容易にアクセス可能な脊髄神経である。大後頭神経1080に関係する障害は、例えば頸原性頭痛(すなわち後頭神経痛)などの頭痛を引き起こす可能性がある。かかる頭痛は、(大後頭神経1080の位置により)首区域から発し、緊張型頭痛、偏頭痛、及び群発頭痛に関連付けされる症候をしばしば含む。同様に上部頸椎に隣接して位置し、頭痛及び/又は顔面痛の症候に関係する他の神経には、小後頭神経1082、第三後頭神経1084、大耳介神経1086、頸横神経(図18には図示されない)、鎖骨上神経(図18には図示されない)、及び/又はそれらの任意の部分が含まれる。
【0089】
[1106] 図18に図示されるように、インプラント1018が、導体(例えばリード)1024を備え、この導体1024は、ピックアップ電極1026に接続され、別の端部で刺激電極1028(すなわち刺激端部)に接続される。ピックアップ電極1026は、先述の実施形態を参照として上述したように、例えば、患者の耳の背後の皮下に、及び実質的に無毛の皮膚の領域の下方に位置決めすることが可能である。いくつかの実施形態においては、ピックアップ電極1026は、側頭骨の上部部分、側頭骨の前方部分、又は側頭骨の乳様突起部分(例えば乳様突起の一部分など)の上に位置決めすることが可能である。いくつかの実施形態においては、ピックアップ電極1026の上方に位置する皮膚の無毛領域は、少なくとも2cmの直径を有し得る。このようにして、皮膚電極又は同様のデバイスを、ピックアップ電極1026の上方の皮膚の無毛領域上に配設することが可能となる。
【0090】
[1107] 刺激電極1028は、大後頭神経1080に隣接して位置決めされる。しかし、いくつかの実施形態においては、刺激電極1028は、大後頭神経1080に直接接触状態に位置決めされる。図18には図示されないが、いくつかの実施形態においては、刺激電極1028は、大後頭神経1080が大菱筋Tの表面に位置する、後頭骨(図18には図示されない)の上項線に沿った位置に、大後頭神経1080に平行に位置決めすることが可能である。後頭骨は、頭蓋の下方部分であり、これは、上項線を含む一連の項線(すなわちその外部表面上の曲線)を有する。大菱筋Tは、後頭骨に装着され、後頭骨から延在する。
【0091】
[1108] 図18には図示されないが、外部(すなわち表面)電極(図18には図示されない)は、先述の実施形態に関して上述したように、皮膚の表面に装着することが可能であることを理解されたい。外部パルス発生器(図18には図示されない)が、外部電極(又は複数の外部電極)に電流を送ることが可能であり、この電流の一部分が、ピックアップ電極1026によってピックアップされ得る。次いで、ピックアップ電極1026は、導体1024を介して、大後頭神経1080に隣接して配置される刺激電極1028に電流を送ることが可能である。刺激は、刺激電極1028から大後頭神経1080及び表面電極(又は複数の外部電極)を介して外部パルス発生器に戻る。したがって、電流は、大後頭神経1080を通過及び刺激する。いくつかの実施形態においては、刺激は、約100〜150Hz未満で外部パルス発生器により送られて、大後頭神経1080を活性化することが可能である。他の実施形態においては、刺激は、約100〜150Hz超で外部パルス発生器により送られて、大後頭神経1080における神経活性を妨げることが可能である。上述のように、かかる刺激は、頸原性頭痛を患う患者において特に効果的である。
【0092】
[1109] 刺激電極1028は、上部頸椎中に位置する大後頭神経1080に隣接して位置し、これを刺激するために使用されるものとして例示され上述されるが、他の実施形態においては、刺激電極1028は、上部頸椎に隣接する別の神経に隣接して位置し、これを刺激するために使用され得る。かかる神経には、例えば、小後頭神経1082、第三後頭神経1084、大耳介神経1086、頸横神経(図示せず)、鎖骨上神経(図示せず)、及び/又はそれらの任意の部分が含まれ得る。これらの神経のいずれかを刺激することにより、上述されるものと同一の態様で、頭痛及び/又は顔面痛の症候の緩和及び/又は制御を助けることが可能となる。
【0093】
[1110] いくつかの実施形態においては、刺激電極1028(すなわちインプラント1018の刺激部分)は、後頭骨の上項線の約3cm〜4cm下方又は上方に位置する切開部を介して患者内に埋め込むことが可能である。いくつかのかかる実施形態においては、刺激電極1028は、活性刺激プローブとの生理学的反応を確認した後に、低侵襲技術を用いて埋め込むことが可能である。
【0094】
[1111] インプラント918及び1018は、片側インプラントとして例示され上述されるが、他の実施形態においては、インプラント918及び1018は、両側インプラントであることが可能である。このように、両側インプラントが、2つのリード、2つの別個の埋込み部、及び/又は2つの外部パルス発生器を備えることが可能である。
【0095】
[1112] さらに、深部静脈血栓の防止において、電気刺激を使用することも可能である。運動抑止期間の間は、静脈血を心臓に戻すように移動させ、血液の滞留を防止するために、肢の筋肉の収縮を継続することが重要となる場合がある。これは、骨盤骨折の後に、及び人工股関節全置換又は人工膝関節全置換の後にとりわけ適用可能である。脚において血液の滞留が生じると、血塊又は血栓の形成により、塊の小部分(塞栓)が剥がれるおそれがある。塞栓は、肺に滞り、肺塞栓症及び死の可能性をもたらし得る。筋肉(例えば腓腹筋)の頻繁な収縮により血液の滞留を防止するために、電気刺激を利用することが可能である。筋ポンプの形成に加えて、電気刺激は、血漿線維素溶解活性を上昇させ、凝血の可能性を低下させ得る。
【0096】
[1113] さらに、電気刺激は、運動抑止後の硬直及び関節拘縮の管理においても利用することが可能である。電気刺激は、硬直した関節のリハビリテーションにおいて複数の利点をもたらし得る。電気刺激は、筋肉の収縮を増大させ、関節可動域の限界で収縮を保持するために使用することが可能である。電気刺激は、初期の運動抑止期間の間の不快さ又は疼痛を調整することが可能であり、刺激される筋肉の力生成、作業能力、及び持久性を強化することが可能である。外傷性脊髄損傷後に即座に、激しい筋萎縮が引き起こされる可能性がある。かかる場合においては、電気刺激は、多大な損傷後萎縮が生じる前に印加されて、脊髄損傷を抱える患者の二次障害を防ぐ点で有益となり得る。
【0097】
[1114] 上述のように、さらに、電気刺激は、関節痛及び関節炎痛の管理において利用することも可能である。例えば、電気刺激は、骨関節炎(例えば膝関節の)又はリウマチ様関節炎(例えば手の)に関連する疼痛及び/又は他の症候を軽減することが可能である。より具体的には、電気刺激は、慢性筋骨格痛を大幅に軽減することが可能である。電気刺激は、患者の身体の他の区域の刺激に関して本明細書において説明したものと同様の態様で、罹患した関節に直接的に加えることが可能であり、及び/又は、関節に隣接する筋組織に加えることが可能である。関節に隣接する筋組織の刺激により、その筋肉を効果的に強化することが可能であり、これにより、この筋肉は、関節をさらに良好に支持し、それにより関節における又は関節の周囲の疼痛を軽減する。上述のように、関節及び/又は隣接する筋組織の刺激により、疼痛を緩和又は制御することが可能であり、それにより、例えば人工膝関節全置換又は人工膝関節部分置換などの複雑かつ侵襲的な外科手術を遅らせるか、又は完全に回避させることが可能となる。
【0098】
[1115] さらに、電気刺激は、筋肉性能の管理においても利用することが可能である。例えば、筋肉又はその筋肉に分布する神経の電気刺激は、筋収縮の影響が治癒の妨げにならない場合に、運動抑止期間の間に筋収縮性を維持するために印加されてよい。運動抑止の間の電気刺激は、筋肉の縮小又は萎縮を完全には防ぐことはできないが、動作及び運動の再開が安全である場合には、筋肉の損失を最小限に抑え、筋肉の代謝能力を維持して、回復速度を速めることができる。怪我又は手術後に運動の再開が許可される場合に、電気刺激を利用して、感覚入力を与え、筋漸増を向上させることができる。
【0099】
[1116] 神経遮断(一過性伝導障害)が生じている状況においては、電気刺激を利用して、神経遮断が解消されるまで、麻痺した筋肉を維持することができる。筋力低下した又は麻痺した筋肉の位置に応じて、ブレース又は装具の代替として電気刺激を利用することができる。いくつかの実施形態においては、随意運動による筋肉強度の増強と同様の態様において、電気的に誘起された筋収縮による筋肉強度の増強を行なうことが可能である。いくつかの場合においては、貫通経皮的刺激を利用した筋肉強度の増強は、随意運動による強度の増強とは根本的に異なる。
【0100】
[1117] 電気刺激は、非貫通経皮的に、貫通経皮的に、又は完全埋込み刺激装置を用いて送ることが可能である。一例においては、電気刺激は、等級2(Grade II)の内側、側副、及び前十字靭帯の捻挫を被った運動選手の、下肢ギブス運動抑止期間の間の、大腿四頭筋及びハムストリング筋群の電気刺激の利用を含む。ギブス除去の3週間後に、片脚の垂直跳躍高さは、優位な、怪我を被っていない脚により達せられた高さの92%であり、患者は、競技大会に復帰することが可能であった。この例は、電気刺激が、脱神経萎縮及び加齢性筋萎縮を減衰させ得ることを示す。別の例においては、電気刺激装置をラット中に埋込み、長指伸筋を刺激した。この例は、電気刺激を利用することにより、全ての筋線維が強縮性収縮を受けるようにすることによって、加齢性筋萎縮及び加齢性筋力低下を低減させ得ることを示す。別の例においては、運動抑止により誘起される筋萎縮の防止において貫通経皮的電気刺激を利用することが可能である。いくつかの場合においては、短期間の貫通経皮的電気刺激により、膝関節運動抑止に対して副次的に発生する四頭萎縮を低減させることが可能であり、通常は運動抑止に際して生じる筋タンパク合成の低下の防止を助けることが可能である。いくつかの場合においては、電気刺激は、酸化酵素活性の低下を防止することが可能である。
【0101】
[1118] さらに、上述の処置はそれぞれ、患者において電気刺激を送るための小型埋込み可能刺激装置(又は複数の刺激装置)を用いることによっても実施することが可能である。かかる小型埋込み可能刺激装置は、米国特許第6,735,475号、米国特許第6,941,171号、及び米国特許第6,735,474号において説明されており、該特許の各開示は、ここに参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0102】
[1119] 例えば、小型埋込み可能刺激装置(又は複数の刺激装置)は、患者の治癒を向上させ、疼痛を軽減するために、人工関節置換処置と組み合わせて使用することが可能である。小型埋込み可能刺激装置は、例えば以下のように、他の技術に比較して複数の利点を有する。非貫通経皮デバイスを比較した場合、小型埋込み可能電気刺激装置では、電気刺激は、皮膚を介した刺激の送達による皮膚受容器の不快な感覚を全く伴うことなく、特定の位置に(例えば特定の神経に)送ることが可能である。さらに、皮膚炎を引き起こすことのある、並びに交換及び/又は再位置合わせを要することのある外部ゲル電極も不要となる。上述の刺激システム及びインプラントと同様に、貫通経皮刺激と比較して、小型埋込み可能電気刺激装置では、皮膚を貫通して突出するリードによる炎症又は汚染のリスクを軽減又は排除することが可能となる。さらに、通常サイズの埋込み可能刺激装置と比較して、小型埋込み可能電気刺激装置では、典型的には、低侵襲処置のみが必要となる。
【0103】
[1120] さらに、人工関節置換処置と組み合わせて使用される小型埋込み可能電気刺激装置(又は複数の刺激装置)は、上述のように人工関節置換処置の必要性を遅らせる又は延期させるために使用することも可能である。人工関節置換処置の前に、筋肉/関節の調整を行なうことが可能である(例えば可動域の拡大など)。疼痛管理及び/又は筋肉性能の管理を向上させることが可能である。いくつかの場合においては、関節を刺激することが、深部静脈血栓の防止の助けともなり得る。本明細書において説明されるように埋込み受動導体に基づく電気刺激の利用により、大幅に安価な代替案を実現しつつ、小型刺激装置と同様の利点をもたらすことが可能であることをさらに指摘しておく。
【0104】
[1121] 上記において様々な実施形態を説明したが、これらは例として提示されるに過ぎず、限定的なものではないことを理解されたい。上述の方法及び工程が、特定の順序で行なわれる特定の事象を示唆するが、その特定の工程の順序は、変更することが可能であり、かかる変更は、本発明の変形例にしたがうものであることが、本開示の利益を享受する当業者には認識されよう。さらに、可能な場合には、それらの工程のいくつかを、平行プロセスとして同時に実施してもよく、上述のように逐次的に実施してもよい。実施形態を具体的に示し説明したが、形態及び詳細における様々な変更を行ない得ることが理解されよう。
【0105】
[1122] 種々の実施形態を、特定の特徴及び/又は構成要素の組合せを有するものとして説明したが、他の実施形態が、本明細書において説明される実施形態のいずれかによる任意の特徴及び/又は構成要素の組合せ或いは下位組合せを有することが可能である。例えば、1つ又は複数のインプラント(例えば18、118、118’、518、618、718、818、918、1018)を、体組織(例えば軟組織、筋肉、靭帯、骨構造、等々)を刺激するための処置において使用することが可能である。したがって、本明細書において説明される任意の処置において、必ずしも例示はされないが、(例えば、復路導体34を含む)図1に図示されるように、第2のインプラントを含むことが可能である。本明細書において説明される様々な処置のいずれに対しても、インプラントの任意の実施形態を使用することが可能であることをさらに指摘しておく。例えば、(図1において説明されるように)カフ電極を用いて、又は用いずに、上述の処置のいずれかに対してインプラントを使用することが可能である。
【0106】
[1123] さらに、電極の数量は、特定の治療に応じて変更することが可能である。さらに、電極のタイプを変更することも可能であり、例えば、プレート電極又はカフ電極を使用することが可能である。いくつかの実施形態が、刺激装置(例えばパルス発生器)から、インプラントのピックアップ端部又はピックアップ電極の上方の患者の表面に装着されたカソード電極への電流の印加又は送達を説明するが、代替的には、ピックアップ端部又はピックアップ電極の上方にアノード電極を配置し、ピックアップ端部又はピックアップ電極に電流を送ることが可能であることを理解されたい。例えば、図5〜図8を参照として説明されるように、カソード電極及びアノード電極の様々な構成配置及び組合せ(例えば埋込み導体に対する位置決め)を利用することが可能である。
【0107】
[1124] さらに、本明細書において説明されるようなインプラントの種々の構成要素は、具体的には例示されない様々な種々の形状及び/又はサイズを有することが可能である。例えば、終端(例えば30)、導体(例えば24、124、等々)、ピックアップ端部又はピックアップ電極(例えば26、126、等々)、刺激端部又は刺激電極(送達端部又は送達電極とも呼ばれる)(例えば28、128、等々)はそれぞれ、様々な種々の形状、サイズ、断面、厚さ、等々を有することが可能である。さらに、電極(例えば20、22、120、122、等々)は、様々な種々の形状、サイズ、タイプ、等々であることが可能である。これらの電極に電流を送るための刺激装置が、パルス発生器として説明されたが、いくつかの実施形態においては、代替的に、他のタイプの刺激装置を使用することが可能である。例えば刺激装置への無線接続又は有線接続などを含む、様々な電源を使用することも可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の失禁を治療するために脛骨神経を電気的に刺激するための装置であって、
前記被験者の身体中に配設されるように構成されたインプラントであって、当該インプラントは受動電気導体を備え、前記受動電気導体は、埋め込まれた場合に、第1の表面電極及び第2の表面電極と電気接続状態になるように構成される、インプラント
を備え、前記受動電気導体は、
前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップするように構成されたピックアップ部分と、
前記脛骨神経を刺激するために前記脛骨神経に電流の前記一部分を送るように構成された送達部分と、
前記ピックアップ部分と前記送達部分との間に配設された絶縁保護された本体部分と
を含む、装置。
【請求項2】
前記インプラントの前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極又は前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インプラントの前記送達部分が、前記第1の表面電極又は前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ピックアップ部分が電極を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記送達部分が電極を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記電気導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記脛骨神経に前記電流の前記一部分を送るための電気的終端を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
被験者の失禁を治療するために脛骨神経を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と第2の表面電極との間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、前記脛骨神経に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記脛骨神経に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記脛骨神経に送られるように、前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項8】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記脛骨神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記脛骨神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記脛骨神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記脛骨神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記埋め込む工程が、前記被験者の身体内に、前記ピックアップ部分と、前記送達部分と、の間において絶縁保護された前記受動電気導体を埋め込む工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から前記脛骨神経まで延在するのに十分な長さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記脛骨神経に前記電流の前記一部分を送るための電気的終端を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
被験者の創傷を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と、第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、前記創傷に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記創傷に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記創傷に送られ、創傷治癒を刺激するように、前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記創傷に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記創傷と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記創傷に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記創傷と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記創傷が、前記被験者の皮膚の表面上に位置する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記創傷が、前記被験者の皮下組織の下方に位置する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から前記創傷まで延在するのに十分な長さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記創傷に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
被験者の関節の近傍に位置する組織を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と、第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、関節の近傍に位置する組織に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記関節の近傍に位置する前記組織に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記関節に送られるように、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項23】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記関節の近傍に位置する前記組織に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記関節と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記関節の近傍に位置する前記組織に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記関節と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記関節が、膝関節及び股関節の一方である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記関節に電流を印加する前記工程が、関節痛又は関節炎の少なくとも一方を治療するのに十分な前記関節の刺激を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記関節に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
被験者の総腓骨神経を電気的に刺激するための方法であって、
前記患者の総腓骨神経の近傍の第1の位置にて被験者の皮膚の下方にインプラントの第1の端部を配設する工程と、
前記インプラントの前記第1の端部から非ゼロ距離に位置する第2の位置にて前記被験者の皮膚の下方に前記インプラントの第2の端部を配設する工程であって、前記インプラントは、前記第1の端部と、前記第2の端部と、の間において前記被験者の皮膚の下方に延圧する受動電気導体を備える、工程と、
第1の位置にて前記被験者の皮膚の外部表面上に第1の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極に対して離間関係もたせて前記被験者の皮膚の外部表面上に第2の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送ることにより、前記電流の一部分が、前記インプラントの前記第2の端部を介し、前記導体を介し、前記インプラントの前記第1の端部へ、及び前記総腓骨神経中に伝達されて、前記総腓骨神経を刺激するようにする工程と
を含む、方法。
【請求項30】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記総腓骨神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記関節と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記関節に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記総腓骨神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
被験者の筋肉を電気的に刺激するための方法であって、
筋肉、又は前記被験者の前記筋肉に分布する神経の少なくとも一方の近傍の第1の位置にて被験者の皮膚の下方にインプラントの第1の端部を配設する工程と、
前記インプラントの前記第1の端部から非ゼロ距離に位置する第2の位置にて前記被験者の皮膚の下方に前記インプラントの第2の端部を配設する工程であって、前記インプラントは、前記第1の端部と、前記第2の端部と、の間において前記被験者の皮膚の下方に延在する受動電気導体を備える、工程と、
第1の位置にて前記被験者の皮膚の外部表面上に第1の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極に対して離間関係をもたせて前記被験者の皮膚の外部表面上に第2の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送ることにより、前記電流の一部分が、前記インプラントの前記第2の端部を介し、前記導体を介し、前記インプラントの前記第1の端部へ、及び前記筋肉又は前記筋肉中に分布する前記神経の前記一方の中に伝達されて、前記筋肉のリハビリテーションを刺激するようにする工程と
を含む、方法。
【請求項34】
機械的振動を検出することが可能な振動センサを被験者に装着する工程と、
前記被験者の上歯と下歯との急激な接触により誘発される機械的振動を、前記センサにより検出する工程と
をさらに含み、前記送る工程は、前記検出に基づいて開始される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
骨成長を促進するために被験者の骨の骨折又はひびを電気的に刺激するための方法であって、
被験者の標的骨欠陥部の近傍の第1の位置にて前記被験者の皮膚の下方にインプラントの第1の端部を配設する工程と、
前記インプラントの前記第1の端部から非ゼロ距離に位置する第2の位置にて前記被験者の皮膚の下方に前記インプラントの第2の端部を配設する工程であって、前記インプラントは、前記第1の端部と、前記第2の端部と、の間において前記被験者の皮膚の下方に延在する受動電気導体を備える、工程と、
第1の位置にて前記被験者の皮膚の外部表面上に第1の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極に対して離間関係をもたせて前記被験者の皮膚の外部表面上に第2の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送ることにより、前記電流の一部分が、前記インプラントの前記第2の端部を介し、前記導体を介し、前記インプラントの前記第1の端部へ、及び前記標的骨欠陥部中に伝達されて、骨成長を促進するようにする工程と
を含む、方法。
【請求項36】
前記被験者の外部部分上に、及び前記インプラントの前記第2の端部に隣接して装具を位置決めする工程をさらに含み、前記送る工程が、前記装具から、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送る工程を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
被験者の頭痛又は顔面痛の少なくとも一方を治療するために、被験者の頭又は顔の一領域の感覚に関連する神経を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と、第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、前記神経に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記神経に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記神経に送られ、被験者の頭痛又は顔面痛を緩和するように、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項38】
前記神経が、三叉神経、三叉神経枝、三叉神経節、眼神経、眼神経枝、上顎神経、上顎神経枝、下顎神経、下顎神経枝、大後頭神経、大後頭神経枝、小後頭神経、小後頭神経枝、第三後頭神経、第三後頭神経枝、大耳介神経、大耳介神経枝、頸横神経、頸横神経枝、鎖骨上神経、又は鎖骨上神経枝の中の少なくとも1つを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記印加する工程が、約100Hz未満の周波数で前記神経に電流を印加する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記印加する工程が、約150Hz超の周波数で前記神経に電流を印加する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記埋め込む工程が、前記被験者の身体中に前記受動電気導体を埋め込む工程を含み、前記受動電気導体は、前記ピックアップ部分と、前記送達部分と、の間において絶縁保護されている、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から前記神経まで延在するのに十分な長さを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記神経に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
被験者の頭痛又は顔面痛の少なくとも一方を治療するために、被験者の頭又は顔の一領域の感覚に関連する神経を電気的に刺激するための装置であって、
前記被験者の身体中に配設されるように構成されたインプラントであって、当該インプラントは受動電気導体を備え、前記受動電気導体は、埋め込まれた場合に、第1の表面電極及び第2の表面電極と電気接続状態になるように構成される、インプラント
を備え、前記受動電気導体は、
前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップするように構成されたピックアップ部分と、
前記神経を刺激し、前記被験者の頭痛又は顔面痛を緩和するために、前記神経に電流の前記部分を送るように構成された送達部分と、
前記ピックアップ部分と前記送達部分との間に配設された絶縁保護された本体部分と
を含む、装置。
【請求項48】
前記神経が、三叉神経、三叉神経枝、三叉神経節、眼神経、眼神経枝、上顎神経、上顎神経枝、下顎神経、下顎神経枝、大後頭神経、大後頭神経枝、小後頭神経、小後頭神経枝、第三後頭神経、第三後頭神経枝、大耳介神経、大耳介神経枝、頸横神経、頸横神経枝、鎖骨上神経、及び鎖骨上神経枝の中の少なくとも1つを含む、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記ピックアップ部分が、前記第1の電極又は前記第2の電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項47に記載の装置。
【請求項50】
前記ピックアップ部分が、前記第1の電極又は前記第2の電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項47に記載の装置。
【請求項51】
前記ピックアップ部分が電極を含む、請求項47に記載の装置。
【請求項52】
前記送達部分が電極を含む、請求項47に記載の装置。
【請求項53】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記電気導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から、刺激すべき前記神経まで延在するのに十分な長さを有する、請求項47に記載の装置。
【請求項54】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記電気導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記神経に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項47に記載の装置。
【請求項1】
被験者の失禁を治療するために脛骨神経を電気的に刺激するための装置であって、
前記被験者の身体中に配設されるように構成されたインプラントであって、当該インプラントは受動電気導体を備え、前記受動電気導体は、埋め込まれた場合に、第1の表面電極及び第2の表面電極と電気接続状態になるように構成される、インプラント
を備え、前記受動電気導体は、
前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップするように構成されたピックアップ部分と、
前記脛骨神経を刺激するために前記脛骨神経に電流の前記一部分を送るように構成された送達部分と、
前記ピックアップ部分と前記送達部分との間に配設された絶縁保護された本体部分と
を含む、装置。
【請求項2】
前記インプラントの前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極又は前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インプラントの前記送達部分が、前記第1の表面電極又は前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ピックアップ部分が電極を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記送達部分が電極を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記電気導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記脛骨神経に前記電流の前記一部分を送るための電気的終端を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
被験者の失禁を治療するために脛骨神経を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と第2の表面電極との間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、前記脛骨神経に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記脛骨神経に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記脛骨神経に送られるように、前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項8】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記脛骨神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記脛骨神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記脛骨神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記脛骨神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記埋め込む工程が、前記被験者の身体内に、前記ピックアップ部分と、前記送達部分と、の間において絶縁保護された前記受動電気導体を埋め込む工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から前記脛骨神経まで延在するのに十分な長さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記脛骨神経に前記電流の前記一部分を送るための電気的終端を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
被験者の創傷を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と、第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、前記創傷に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記創傷に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記創傷に送られ、創傷治癒を刺激するように、前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記創傷に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記創傷と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記創傷に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記創傷と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記創傷が、前記被験者の皮膚の表面上に位置する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記創傷が、前記被験者の皮下組織の下方に位置する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から前記創傷まで延在するのに十分な長さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記創傷に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
被験者の関節の近傍に位置する組織を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と、第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、関節の近傍に位置する組織に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記関節の近傍に位置する前記組織に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記関節に送られるように、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項23】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記関節の近傍に位置する前記組織に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記関節と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記関節の近傍に位置する前記組織に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記関節と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記関節が、膝関節及び股関節の一方である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記関節に電流を印加する前記工程が、関節痛又は関節炎の少なくとも一方を治療するのに十分な前記関節の刺激を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記関節に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
被験者の総腓骨神経を電気的に刺激するための方法であって、
前記患者の総腓骨神経の近傍の第1の位置にて被験者の皮膚の下方にインプラントの第1の端部を配設する工程と、
前記インプラントの前記第1の端部から非ゼロ距離に位置する第2の位置にて前記被験者の皮膚の下方に前記インプラントの第2の端部を配設する工程であって、前記インプラントは、前記第1の端部と、前記第2の端部と、の間において前記被験者の皮膚の下方に延圧する受動電気導体を備える、工程と、
第1の位置にて前記被験者の皮膚の外部表面上に第1の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極に対して離間関係もたせて前記被験者の皮膚の外部表面上に第2の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送ることにより、前記電流の一部分が、前記インプラントの前記第2の端部を介し、前記導体を介し、前記インプラントの前記第1の端部へ、及び前記総腓骨神経中に伝達されて、前記総腓骨神経を刺激するようにする工程と
を含む、方法。
【請求項30】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記総腓骨神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記関節と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記関節に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記総腓骨神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
被験者の筋肉を電気的に刺激するための方法であって、
筋肉、又は前記被験者の前記筋肉に分布する神経の少なくとも一方の近傍の第1の位置にて被験者の皮膚の下方にインプラントの第1の端部を配設する工程と、
前記インプラントの前記第1の端部から非ゼロ距離に位置する第2の位置にて前記被験者の皮膚の下方に前記インプラントの第2の端部を配設する工程であって、前記インプラントは、前記第1の端部と、前記第2の端部と、の間において前記被験者の皮膚の下方に延在する受動電気導体を備える、工程と、
第1の位置にて前記被験者の皮膚の外部表面上に第1の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極に対して離間関係をもたせて前記被験者の皮膚の外部表面上に第2の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送ることにより、前記電流の一部分が、前記インプラントの前記第2の端部を介し、前記導体を介し、前記インプラントの前記第1の端部へ、及び前記筋肉又は前記筋肉中に分布する前記神経の前記一方の中に伝達されて、前記筋肉のリハビリテーションを刺激するようにする工程と
を含む、方法。
【請求項34】
機械的振動を検出することが可能な振動センサを被験者に装着する工程と、
前記被験者の上歯と下歯との急激な接触により誘発される機械的振動を、前記センサにより検出する工程と
をさらに含み、前記送る工程は、前記検出に基づいて開始される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
骨成長を促進するために被験者の骨の骨折又はひびを電気的に刺激するための方法であって、
被験者の標的骨欠陥部の近傍の第1の位置にて前記被験者の皮膚の下方にインプラントの第1の端部を配設する工程と、
前記インプラントの前記第1の端部から非ゼロ距離に位置する第2の位置にて前記被験者の皮膚の下方に前記インプラントの第2の端部を配設する工程であって、前記インプラントは、前記第1の端部と、前記第2の端部と、の間において前記被験者の皮膚の下方に延在する受動電気導体を備える、工程と、
第1の位置にて前記被験者の皮膚の外部表面上に第1の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極に対して離間関係をもたせて前記被験者の皮膚の外部表面上に第2の表面電極を配置する工程と、
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送ることにより、前記電流の一部分が、前記インプラントの前記第2の端部を介し、前記導体を介し、前記インプラントの前記第1の端部へ、及び前記標的骨欠陥部中に伝達されて、骨成長を促進するようにする工程と
を含む、方法。
【請求項36】
前記被験者の外部部分上に、及び前記インプラントの前記第2の端部に隣接して装具を位置決めする工程をさらに含み、前記送る工程が、前記装具から、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の一方に電流を送る工程を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
被験者の頭痛又は顔面痛の少なくとも一方を治療するために、被験者の頭又は顔の一領域の感覚に関連する神経を電気的に刺激するための方法であって、
前記被験者の身体中にインプラントを埋め込む工程であって、前記インプラントは、ピックアップ部分及び送達部分を有する受動電気導体を備え、前記ピックアップ部分は、第1の表面電極と、第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップし、前記神経に前記電流の前記部分を伝達するように構成される、工程と、
前記身体上に離間関係をもたせて前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極を位置決めする工程であって、前記第1の表面電極は、前記電流の前記部分が前記電気導体を介して前記神経に伝達されるように、前記電気導体の前記ピックアップ部分の上方に位置決めされる、工程と、
前記電流の前記部分が前記インプラントを介して流れて、前記神経に送られ、被験者の頭痛又は顔面痛を緩和するように、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に電流を印加する工程と
を含む、方法。
【請求項38】
前記神経が、三叉神経、三叉神経枝、三叉神経節、眼神経、眼神経枝、上顎神経、上顎神経枝、下顎神経、下顎神経枝、大後頭神経、大後頭神経枝、小後頭神経、小後頭神経枝、第三後頭神経、第三後頭神経枝、大耳介神経、大耳介神経枝、頸横神経、頸横神経枝、鎖骨上神経、又は鎖骨上神経枝の中の少なくとも1つを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する体組織を介して伝達される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記印加する工程の際に、前記電流が前記神経に伝達された後に、前記電流の少なくとも一部分が、前記神経と、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の他方の下方に位置する皮下組織と、の間に延在する埋込み電気復路導体を介して伝達される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記印加する工程が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間に、直流電流、パルス電流、又は交流電流の中の少なくとも1つを印加する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記印加する工程が、約100Hz未満の周波数で前記神経に電流を印加する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記印加する工程が、約150Hz超の周波数で前記神経に電流を印加する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記埋め込む工程が、前記被験者の身体中に前記受動電気導体を埋め込む工程を含み、前記受動電気導体は、前記ピックアップ部分と、前記送達部分と、の間において絶縁保護されている、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から前記神経まで延在するのに十分な長さを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記神経に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
被験者の頭痛又は顔面痛の少なくとも一方を治療するために、被験者の頭又は顔の一領域の感覚に関連する神経を電気的に刺激するための装置であって、
前記被験者の身体中に配設されるように構成されたインプラントであって、当該インプラントは受動電気導体を備え、前記受動電気導体は、埋め込まれた場合に、第1の表面電極及び第2の表面電極と電気接続状態になるように構成される、インプラント
を備え、前記受動電気導体は、
前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間を流れる電流の少なくとも一部分をピックアップするように構成されたピックアップ部分と、
前記神経を刺激し、前記被験者の頭痛又は顔面痛を緩和するために、前記神経に電流の前記部分を送るように構成された送達部分と、
前記ピックアップ部分と前記送達部分との間に配設された絶縁保護された本体部分と
を含む、装置。
【請求項48】
前記神経が、三叉神経、三叉神経枝、三叉神経節、眼神経、眼神経枝、上顎神経、上顎神経枝、下顎神経、下顎神経枝、大後頭神経、大後頭神経枝、小後頭神経、小後頭神経枝、第三後頭神経、第三後頭神経枝、大耳介神経、大耳介神経枝、頸横神経、頸横神経枝、鎖骨上神経、及び鎖骨上神経枝の中の少なくとも1つを含む、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記ピックアップ部分が、前記第1の電極又は前記第2の電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項47に記載の装置。
【請求項50】
前記ピックアップ部分が、前記第1の電極又は前記第2の電極の一方の下方の皮下組織中に位置決めされるように構成される、請求項47に記載の装置。
【請求項51】
前記ピックアップ部分が電極を含む、請求項47に記載の装置。
【請求項52】
前記送達部分が電極を含む、請求項47に記載の装置。
【請求項53】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記被験者の皮膚と電気接触するように構成され、
前記電気導体が、埋め込まれた場合に、前記第1の表面電極の下方に位置する皮下組織から、刺激すべき前記神経まで延在するのに十分な長さを有する、請求項47に記載の装置。
【請求項54】
前記ピックアップ部分が、前記第1の表面電極の下方の皮下組織中に埋め込まれた場合に、前記電流の前記部分が、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、の間の体組織を介して流れるよりもむしろ、前記電気導体を介して流れるように、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、
前記送達部分が、埋め込まれた場合に、前記神経に前記電流の前記部分を送るための電気的終端を形成する、請求項47に記載の装置。
【図1】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2011−526180(P2011−526180A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516572(P2011−516572)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048419
【国際公開番号】WO2009/158389
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(507373704)バイオネス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048419
【国際公開番号】WO2009/158389
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(507373704)バイオネス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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