説明

電気化学的酸化還元反応で用いる組成、電極、電気化学電池、および電気化学的酸化還元反応で用いる組成を準備する過程

【課題】電気化学的酸化還元反応で用いる組成、電極、電機化学電池、および電気化学的酸化還元反応で用いる組成を準備する過程を提供する。
【解決手段】電気化学的酸化還元反応で用いる組成は、一般的公式MyXO4またはAxMyXO4によって表される材料から成る可能性があり、その式では、A(存在する場合)、MおよびXのそれぞれは、他と関係なく少なくとも1つの成分を表し、Oは酸素を表し、x(存在する場合)およびyのそれぞれは数および少なくとも1つの成分の酸化物を表し、そこでは、該材料および該酸素は共結晶であるか、該組成の結晶構造単位の容積は材料のみの結晶構造単位の容積より大きいかの両方あるいはそのいずれかである。当該電極から成る電気化学的電池のように、当該組成から成る電極もまた記載される。電気化学的酸化還元反応で用いる組成を準備する過程もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、出願日2007年6月18日の米国特許出願第11/764,629号の一部継続である。本出願は、本書記載の出願日の同時係属の米国特許出願第 号にも関連しており、下記出願の一部継続である。(1)出願日2005年5月10日の台湾出願第094115023号への優先権を主張した出願日2005年9月9日で現在放棄されている米国特許出願第11/222,569号の一部継続である出願日2006年8月25日の米国特許出願第11/510,096号の一部継続である出願日2007年5月11日の米国特許出願第11/747,746号、および(2)出願日2006年5月11日の中国特許出願第200610080365.5号への優先権を主張する出願日2006年9月11日の米国特許出願第11/518,805号。前述の特許出願のそれぞれは、参照することにより本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
例えば電気化学電池またはバッテリーなどの多くの電気化学的用途および装置は、電気化学的酸化還元活性を例証することと、電気化学的酸化還元反応に関与することが可能であることの両方またはそのいずれかである組成を用いる。単に一例として、アルカリイオン組成を用いる二次または充電式電池またはバッテリーは、かなりの関心を引き起こしてきた。例えばリチウムイオンバッテリーには、通常リチウムイオン電解質、陽極としての個体還元剤および陰極としての固体酸化剤があり、後者は、通常リチウムイオンが放電段階の電解質から可逆的に挿入され、それからリチウムイオンが充電段階の電解質に可逆的に復帰される電子的に伝導性を有するホストである。陽極および陰極で起こる電気化学的反応は、基本的に可逆的であり、バッテリーを基本的に再充電可能にする。
【0003】
さまざまの固体組成は、電気化学的酸化還元活性電極材と同じくらい使用可能な組成として研究されてきた。当該組成は、スピネル構造、オリビン構造、NASCICON構造と例えば同等のもののすべてまたはそのいずれかを有する組成を含む。これらの組成のいくつかは、不十分な伝導性または実施可能性を示してきて、例えば製造するのに費用がかかる、または難しい、あるいは環境を汚染しているなどのその他の否定的連想と関連してきた。
【0004】
電気化学的酸化還元反応において使用に適する組成、同組成を作成する方法、同組成の用途と関連技術のすべてまたはそのいずれかの開発が、一般的に望ましい。
【特許文献1】米国特許出願第11/764,629号
【特許文献2】台湾出願第094115023号
【特許文献3】米国特許出願第11/222,569号
【特許文献4】米国特許出願第11/510,096号
【特許文献5】米国特許出願第11/747,746号
【特許文献6】中国特許出願第200610080365.5号
【特許文献7】米国特許出願第11/518,805号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気化学的酸化還元反応で用いる組成は、本書に記載される。当該組成は、一般的公式AxMyXO4によって表される材料から成る可能性があり、その一般的公式においては、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、Mは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表し、Xは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、Oは酸素を表し、xは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、yは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表す。当該組成はまた、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物からも成る可能性がある。該組成は、該材料および酸化物が共結晶構造であるようなものである可能性がある。酸化物の超過量は、もしあれば、物質‐酸化物の共結晶構造の周りに縁を形成する可能性がある。該組成は、例えばナノスケールの共結晶粒子から成るナノスケールである可能性がある。
【0006】
電気化学的酸化還元反応で用いる組成は、一般公式MyXO4によって表される物質から成る可能性があり、その式においては、該物質は、AxMyXO4を形成するためにイオンAをインターカレートすることができ、そこでは、A、M、X、O、xおよびyが上記のとおりである。単に一例として、該物質が参照電極の下でイオンAから成る溶液に置かれ、イオン挿入またはインターカレーション過程の影響を受けるとき、それはAxMyXO4を形成する可能性がある。さらに、単に一例として、一般的公式AxMyXO4によって表される物質が参照電極の下でイオンAから成る溶液に置かれ、イオン抽出またはデインターカレーション過程の影響を受けるとき、それはMyXO4を形成する可能性がある。当該組成はまた、上記のとおり酸化物からも成る。該組成は、該物質および酸化物が共結晶構造であるようなものである可能性がある。該組成は、例えばナノスケールの共結晶粒子から成るナノスケールである可能性がある。
【0007】
本書に記載される組成は、さまざまな用途、環境および装置で有用である可能性がある。一例として、例えば陰極などの電極は、本書に記載される組成から成る可能性がある。さらに、一例として、例えばバッテリーなどの電気化学電池は、本書に記載される組成から成る可能性がある。
【0008】
電気化学的酸化還元反応で用いる組成を準備する過程もまた、本書に記載される。当該過程は、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表すMから成る第一材料と、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表すXから成る第二材料から成る溶液を結合させることから成る可能性がある。Xの性質に応じて、このように、第二材料は、リン酸塩、ヒ酸塩、ケイ酸塩および硫酸塩から選択される少なくとも1つから同様に成る。溶液は、第一材料および第二材料の反応を促進するのに十分な界面活性剤から成る可能性がある。第一材料と溶液を結合させることによって、結果として生じる溶液を生み出す可能性がある。
【0009】
本書に記載される準備過程は、結果として生じる溶液と反応溶液のアルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表すイオンAから成る第三材料を結合させることから成る可能性がある。結果として生じる溶液と第三材料は、反応溶液のpHを調節することから成る可能性があり、それは反応を促進する可能性がある。粒子混合物が、反応溶液から得られる可能性がある。形成される材料がA成分から成らないとき、準備過程は、今説明した反応溶液よりむしろ上記の結果として生じる溶液から粒子混合物を得られることからなる可能性がある。
【0010】
粒子混合物を得ることは、粒子混合物を挽くことから成る可能性がある。ミリングは、粒子混合物が、たとえば半結晶性であるように、結果的に共結晶構造の破壊をもたらす可能性がある。
【0011】
本書に記載される準備過程は、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物のある粒子混合物を挽くことから成る可能性がある。ミリングは、半結晶ナノスケール粒子混合物を作り出す可能性があり、それは前駆体を提供するために乾燥される可能性がある。当該過程は、ナノスケールの組成を生み出すために、前駆体を焼成することから成る可能性がある。当該焼成は、不活性ガスの存在下で、または不活性ガスおよび不活性ガスで懸濁される炭素粒子の存在下で前駆体を焼成することから成る可能性がある。ナノスケールの組成は、一般公式AxMyXO4またはMyXO4によって表される材料および共結晶形での酸化物から成る可能性がある。
【0012】
これらおよびさまざまなその他の態様、特徴および実施形態は、本書にさらに記載される。本出願の他のどんな部分も、本出願に関連がある可能性のあるどの請求項にも見られる主題などの同上のものが本書に記載される主題の概要を容易にする範囲で、参照することにより本概要に含まれる。
【0013】
さまざまな態様、特徴、実施形態および実施例の説明は、添付図面を参照することにより本書に記載され、以下に簡潔に説明される。図面は、全体的にせよ部分的にせよ、1つ以上の態様、特徴、実施形態と実施例のすべてまたはそのいずれかを図示する可能性がある。図面は、例証となるものであり、必ずしも正確な縮尺率で描かれているわけではない。
【0014】
電気化学的酸化還元反応での使用に適する組成は、本書に記載される。当該組成を作る過程もまた、本書に記載される。加えて、さまざまな態様、特徴、実施形態および実施例の説明は、本書に記載される。
【0015】
当然のことであるが、黙示的または明示的に特に別段の了解または指定のない限り、本書に単数形で見られる語は、その複数形の対応する語を含み、本書に複数形で見られる語は、その単数形の対応する語を含む。さらに、当然のことであるが、黙示的または明示的に特に別段の了解または指定のない限り、本書に記載されるどの既定の成分も、その成分について列挙されるどの可能性のある候補または代案も、個々にまたは互いに組み合わせて、通例使用される可能性がある。加えて、当然のことであるが、黙示的または明示的に特に別段の了解または指定のない限り、当該候補または代案のどのリストも、単に説明的であるだけで、限定的ではない。なおさらに、当然のことであるが、黙示的または明示的に特に別段の了解または指定のない限り、本書に示されるどの数字または数または量も、およそのものであり、どの数を表す範囲も、「含めて」という語などが使われているかどうかを問わず、その範囲を明確に定める最小数および最大数を含む。一般的に、数字または数または量に関する用語である「およそ」または「約」または記号「〜」は、同上の±5%の範囲内に入る数を含む。なおさらに、当然のことであるが、使用されるどの見出しも、便宜上のものであり、限定のためのものではない。加えて、当然のことであるが、黙示的または明示的に特に別段の了解または指定のない限り、どの寛容で、利用可能または制限のない言葉も、どの比較的寛容から制限的言葉も、解放的でない閉鎖的言葉も、またはそれぞれに、制限がないことがない制限がある閉鎖的言葉を含む。単に一例として、「から成る」という語は、「から成る」、「基本的に〜から成る」と「構成される」のすべてまたはそのいずれかの種類の言葉を含む。
【0016】
本書で参照されるすべての特許、特許出願、特許公開および論文、書物、仕様書、刊行物、文書、有体物などのその他の資料は、本文書と相反する、または矛盾する、あるいは本文書と今または後ほど関連がある請求項の最も広い範囲に関して制限的な影響がある可能性がある同上と関連がある同じまたはどの出願経過も除くすべての目的で、全体としての本参照によって本書に組み入れられる。一例として、組み入れられた材料の使用のいずれかに関連する記述、定義と用語の使用法のすべてまたはそのいずれかと、本文書のそれとの間に不一致または矛盾がある場合、本文書での記述、定義と用語の使用法のすべてまたはそのいずれかが優先するものとする。
【0017】
さまざまな用語は、理解を容易にするために、一般的に本書で記述、定義あるいは使用される可能性がある。当然のことであるが、これらのさまざまな用語の対応する一般的記述、定義と使用のすべてまたはそのいずれかは、これらの用語の対応する言語学的または文法的変種または形式に適用される。同様に当然のことであるが、本書のどの用語の一般的記述、定義と使用のすべてまたはそのいずれか、あるいは対応する一般的記述、定義と使用のすべてまたはそのいずれかも、該用語が非一般的またはより特定的に使用されるとき、適用されない、あるいは完全には適用されない可能性がある。同様に当然のことであるが、特定の実施形態の記述について本書で使用される専門用語とその記述とその定義のすべたまたはそのいずれかは、限定的ではない。さらに当然のことであるが、本書に記載される実施形態または本書に記載される出願は、限定的ではなく、それ自体さまざまである可能性がある。
【0018】
一般的に、「アルカリ金属元素」という用語は、周期律表のIA族の金属のいずれか、すなわち、リチウム、ソジウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムを指している。一般的に、「遷移金属元素」という用語は、周期律表で番号をつけられるとおり、21番から29番元素(スカンジウムから銅)、39番から47番(イットリウムから銀)、57番から79番(ランタンから金)および89番(アクチニウム)から先のすべての既知元素のいずれかを指している。一般的に、「第一周期遷移金属元素」という用語は、21番から29番元素、すなわち、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅のいずれかを指している。「第二周期遷移金属元素」という用語は、39番から47番元素、すなわち、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよび銀のいずれかを指している。「第三周期遷移金属元素」という用語は、57番から79番元素、すなわち、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナおよび金のいずれかを指している。一般的に、「酸化物」という用語は、例えば金属原子などの少なくとも1つの元素の原子が少なくとも1つの酸素原子に結合される無機物を指している。
【0019】
一般的に、「結晶の」という用語は、材料の特性、すなわち、間隙を介して実質的に一定で反復構造で配置または結合される材料の各元素の原子を有するという特性を指している。一般的に、「半結晶の」という用語は、材料の特性、すなわち、結晶物質から部分的に、ならびに例えば無定形物質などの非結晶物質から部分的に成るという特性を指している。一般的に「共結晶の」という用語は、材料の特性、すなわち、結晶凝集体の表面または分子構造に実質的に均一に配分される結晶凝集体および分子を有するという特性を指している。共結晶物質は、このように分子が結晶凝集体と関連がある結晶格子内に配分される混合結晶相から成る可能性がある。共結晶の特性は、例えば共生、沈殿と結晶の自己集合のすべてまたはそのいずれかなどの適切な過程を経て発生する可能性がある。一般的に、「ナノスケール」という用語は、材料の特性、すなわち、個々の粒子の有効直径が約500ナノメートル未満またはそれに等しい、例えば約200ナノメートルから約500ナノメートルを含むまで、または約300ナノメートルから約500ナノメートルまでの粒子から成るという特性を指している。
【0020】
一般的に、「ミリング」という用語は、材料を挽いてすりつぶすことを指している。ボールミルおよびペブルミルは、ミリングに使用される装置の例である。一般的に、「焼成」という用語は、水分の損失、還元、酸化、熱分解の状態と融解以外の相転移のすべてまたはそのいずれかをもたらすために、材料をその融点以下の温度まで加熱することを指している。一般的に、「界面活性剤」という用語は、表面活性剤を指している。
【0021】
一般的に、「電極」という用語は、材料が電気酸化または電気還元される作用電極を指している。陽極および陰極は電極の例である。一般的に、参照電極などその他の特定の電極は、本書でそれ自体は特定される。一般的に、「電気化学電池」は、電気化学的反応が起こる可能性のある電池を指している。電気化学的燃料電池、動力電池およびバッテリーは、電気化学的電池の例である。
【0022】
電気化学的酸化還元反応で使用するのに適する組成は、今記載される。当該組成は、以下にさらに記載される一般的公式I:AxMyXO4によって表される物質から成る可能性がある。
【0023】
一般的公式Iにおいて、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表す。いくつかの適切なアルカリ金属元素の例は、リチウム、ソジウムおよびカリウムを含む。前述のとおり、リチウムイオン組成などのアルカリイオン組成を用いるバッテリーは、かなりの関心の的となってきている。したがって、適切なアルカリ金属元素の一例は、本書でさらに例証されるとおり、リチウムである。
【0024】
一般的公式Iにおいて、Mは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表す。いくつかの適切な遷移金属元素は、第一周期遷移金属元素、第二周期遷移金属元素および第三周期遷移金属元素を含む。適切な第一周期遷移金属元素の一例は、鉄である。さらに、一般的公式Iにおいては、Xは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、Oは酸素を表す。
【0025】
一般的公式Iにおいては、xは、例えば約0.9から約1.1を含めてまでなど、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表す。Aが1つ以上の元素を表すとき、Axのxは、それらの元素のそれぞれと関連のある数のそれぞれの総計である数を表す。例えば、AがLi、NaおよびKを表す場合、Lix1のx1は、第1の数を表し、Nax2のx2は、第2の数を表し、Kx3のx3は、第3の数を表し、そのためAxはLix1Nax2Kx3を表し、その次にAxのxは、x1で表される第1の数、x2で表される第2の数およびx3で表される第3の数の合計を表す。一般的公式Iにおいては、yは、例えば約0.9から約1.1を含めてまでなど、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表す。例えば、MがFeおよびCoを表す場合、Fey1のy1は、第1の数を表し、Coy2のy2は、第2の数を表し、そのためMyは、Fe y1Co y2を表し、その次にMyのyは、y1で表される第1の数およびy2で表される第2の数の合計を表す。本書に記載される一般的公式I、IIおよびIIIにおいてxで表される数およびyで表される数は、例えば誘導結合プラズマ(ICP)に依存する原子発光分光法(AES)などの適切な技術によって決定される可能性がある。参照することにより本書に組み込まれるGladstoneその他、原子発光分光法概論、ICP発光分析、技術注記12を参照。単に便宜または平易化目的で、本書に記載される一般的公式I、IIおよびIIIのxおよびyのそれぞれは、そのより広い意味をまだ保持しているが、数1を表すと見える可能性がある。
【0026】
適切な組成はまた、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物からも成る可能性がある。いくつかの適切な遷移金属元素の例は、第一周期遷移金属元素、第二周期遷移金属元素および第三周期遷移金属元素を含む。適切な第一周期遷移金属元素の例は、チタン、バナジウム、クロムおよび銅を含む。
【0027】
該組成は、上記の一般的公式Iによって表される材料および上記の酸化物が共結晶構造であるというようになる可能性がある。そのような場合、共結晶材料は、一般的公式II:AxMyXO4・zBによって表される可能性があり、そこでA、M、X、O、xおよびyは、一般的公式Iによって表される材料に関連して上に記載されるとおりであり、Bは、上記の酸化物を表し、zは、0より大きく、約0.1未満または等しい数を表し、記号の・は、材料および酸化物の共結晶化度を表す。本書に記載される一般的公式IIおよびIIIでzによって表される数は、例えば上述のAES/ICP技術などの適切な技術を経て決定される可能性がある。zによって表される数は、組成に関係のあるB成分のモルパーセントを表す。単に便宜または平易化目的で、zは、そのより広い意味をまだ保持しているが、特定されていないように見える可能性がある。
【0028】
本書に記載される一般的公式I、IIおよびIIIは、4つの酸素構成物質の存在を示している。一般的公式Iによって表される材料および酸化物が、共結晶を形成する場合、一般的公式Iによって表される材料に関連する結晶格子構造は、一般的公式IIまたは一般的公式IIIによって表される共結晶の形成中に変えられると考えられる。単に一例として、共結晶組成の格子構造は、一般的公式Iによって表される材料の、格子構造、定数および容積それぞれに関して、増加した格子定数a、b、およびcの少なくとも1つの定数および格子容積(axbxc)または増加した単位セル容積使って、拡大される可能性がある。さまざまな共結晶組成の格子構造、すなわち、格子定数a、b、およびcならびに格子容積に関するデータは、本書に記載される。
【0029】
この変化において、例えば上述のAES/ICP技術などの本方法によるこの関連の明確な性質を決定することは難しい、または不可能である可能性があるが、共結晶組成での酸素構成物質の少なくとも一部は一般的公式IIまたは一般的公式IIIのXとよりMとより密接に関連がある可能性があると考えられる。酸素構成物質のいずれかの部分とMまたはX間の結合関係は、事実上共有結合であると考えられる。一般的公式IIおよびIIIのそれぞれは、この意味では一般的であり、MまたはXとの酸素構成物質のいずれか一部の明確な関連に関わらず、共結晶組成を表し、上述のように、例えばwが4を表すそれぞれAxMyXO4・zBまたはAxMyXO4・zB/Cなど、例えばwが2を表すそれぞれAxMyO2XO2・zBまたはAxMy O2XO2・zB/Cなど、あるいは例えばwが0を表すそれぞれAxMy O4X・zBまたはAxMy O4X・zB/Cなど、それぞれAxMyO4-wXOw・zBまたはAxMyO4-wXOw・zB/Cによって別にあらわされる可能性があるものを含み、そこではwは、約0から約4の数を表す。単に一例として、wは、0以上から約4未満までの数を表わす可能性がある。
【0030】
拡大共結晶構造(すなわち、一般的公式Iによって表される材料の結晶構造に関して拡大される)は、イオン挿入過程またはインターカレーション過程のためのより大きな空間を提供し、Aを含むイオン抽出またはデインターカレーションは、当該過程のいずれかを促進する可能性があると考えられる。共結晶複合材料、Fe(II)からFe(III)のLiFe(II)P O4・ZnO/C、のイオン中心(M=Fe)の酸化を含むイオン抽出過程またはデインターカレーション過程、ならびに共結晶複合材料、Fe(III)からFe(II)のFe(II)P O4・ZnO/C、のイオン中心(M=Fe)のイオン挿入過程の例は本書の実施例6に記載される。該例は、LiFe(II) O2P
O2・ZnO/C共結晶複合材料およびそのFe(II)P O4・ZnO/C相対物共結晶複合材料のイオン伝導性を例示すると考えられる。
【0031】
本書に記載される組成は、一般的公式Iによって表される材料および酸化物が共結晶材料を形成するようなものである可能性がある。上述のとおり、当該組成は、材料および酸化物が共結晶形であるとき、一般的公式IIによって表される可能性がある。酸化物の超過量は、あるとすれば、共結晶材料を、例えば実質的に取り囲むなど、少なくとも部分的に取り囲む実質的に一様な縁を形成する可能性がある。当該組成には、例えば炭素粒子の層または被覆などの少なくとも1層がある可能性がある。酸化物の縁がない場合、その結果は、多層構造形となる。どちらの場合も、該組成は、一般的公式III:AxMyXO4・zB/Cによって表される可能性があり、材料および酸化物は共結晶形であるとき、Cによって表される炭素粒子は、層または被覆を形成し、「/」の記号は、共結晶系と炭素層の間の界面を表し、超過酸化物の縁の有無は特定されていない。炭素粒子は、該組成の伝導性を高めるために役立つ可能性がある。
【0032】
一般的公式IIまたはIIIによって表される組成は、ナノスケールであり、ナノスケールの共結晶粒子から成っている可能性がある。個々のナノスケールの共結晶粒子は、約500ナノメートル未満またはそれに等しい、例えば約200ナノメートルから約500ナノメートルを含むまでの有効直径である可能性がある。該組成の粒子の性質は、該組成の比較的より高い放電能力と関連があると考えられる。すなわち、本書に記載されるナノスケール組成は、同じ条件の下、本書に記載される組成のナノスケール版より高い放電能力と関連があると予期されるであろう。本書に記載されるどのナノスケールの組成にも、厚さ約10ナノメートル未満またはそれに等しい、例えば厚さ約5または3ナノメートルの上記の超過酸化物の縁がある可能性がある。
【0033】
上述のとおり、電気化学的酸化還元反応で用いる組成は、一般公式MyXO4によって表される物質から成る可能性があり、その式においては、該物質は、AxMyXO4を形成するためにイオンAをインターカレートすることができ、そこでは、A、M、X、O、xおよびyが上記のとおりである。当該組成について、一般的公式I、IIおよびIIIは、それぞれ対応する一般的公式I:MyXO4;一般的公式II:MyXO4・zB;および一般的公式III:MyXO4・zB/Cの形をとり、そこではM、X、O、B、C、yおよびzは上記のとおりである。単に一例として、当該材料が、参照電極の存在下でイオンAから成る溶液に置かれ、イオン挿入またはインターカレーション過程を受けるとき、それぞれAxMyXO4、AxMyXO4・zBまたはAxMyXO4・zB/Cを形成する可能性がある。さらに、単に一例として、一般的公式AxMyXO4、AxMyXO4・zBまたはAxMyXO4・zB/Cによって表される材料が参照電極の存在下でイオンAから成る溶液に置かれ、イオン抽出またはデインターカレーション過程を受けるとき、それぞれAxMyXO4、AxMyXO4・zBまたはAxMyXO4・zB/Cを形成する可能性がある。
【0034】
本書に記載される組成は、さまざまな用途、環境および装置で有用である可能性がある。一例として、例えば陰極などの電極は、本書に記載される組成から成る可能性がある。さらに、一例として、例えばバッテリーなどの電気化学電池は、本書に記載される組成から成る可能性がある。適切な組成、用途、環境および装置は、今記載されるとおり、組成を準備するための過程の記述後、本書に記載される。
【0035】
電気化学的酸化還元反応で使用する組成を準備する過程は、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表すMから成る第一材料と、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表すXから成る第二材料から成る溶液を結合させることから成る可能性がある。該結合は、例えば徹底混合または攪拌などの混合から成る可能性がある。単に一例として、MはFeを表す。
【0036】
溶液に関しては、Xがリンを表すとき、第二材料は、リン酸塩の形である可能性がある。Xがヒ素を表すとき、第2材料は非酸塩の形である可能性がある。Xがシリコンを表すとき、第二材料は、ケイ酸塩の形である可能性がある。Xが硫黄を表すとき、第二材料は硫酸塩の形である可能性がある。あるいはXが前述の1つ以上の元素を表すとき、第二材料は、それ相当に前述の形の1つ以上である可能性がある。一例として、リン酸塩とヒ酸塩の両方またはそのいずれかから成る溶液は、脱イオン水などの水性媒体において、溶解リン酸とその塩、ヒ酸とその塩の両方またはそのいずれかのそれぞれによって準備される可能性がある。
【0037】
該溶液は、第一材料および第二材料の反応を促進するために十分な界面活性剤とpH調整剤の両方またはそのいずれかから成る可能性がある。当該界面活性剤と作用物の両方またはそのいずれかは、以下にさらに記載されるとおり、殻の形成に適したレベルまで溶液のpHを調整するのに十分である可能性がある。例えば約1mlの界面活性剤など、界面活性剤と作用物の両方またはそのいずれかのどんな適切な量も使用される可能性がある。適切な界面活性剤の例は、イオン、非イオンおよび両性界面活性剤を含む。単に一例として、適切な界面活性剤は、DNP(ジニトロフェニル、陽イオン界面活性剤)、トリトンX‐100(オクチルフェノールエトキシレート、非イオン界面活性剤)、およびBS‐12(ドデシルジメチルベタインまたはココアル・カノイル・アミドベタイン、両性界面活性剤)を含む。例えばNH3またはNH4OHなどの、どの適切なpH調整剤またはその適切な結合も、使用される可能性がある。どの当該界面活性剤と作用物の両方またはそのいずれかも、例えば徹底混合または攪拌などの適切な混合条件の下で溶液に加えられる可能性がある。該溶液は、界面活性剤、pH調整剤とpHの調整のすべてまたはそのいずれかなしに、十分である可能性がある。
【0038】
第一材料と溶液の結合は、結果として生じる溶液を作り出す可能性があり、それは、反応生成物から成る。記述のこの部分において単に便宜または平易化目的で、Mは、金属元素以外であるか、または上述のとおり、1つ以上の元素である可能性があるにもかかわらず、例えばFeなどの単一金属元素と今みなされ、Xは、上述のとおり、リン、ヒ素、シリコンと硫黄のすべてまたはそのいずれかからなる可能性があるにもかかわらず、単にリンから成ると今みなされるであろう。金属およびリン酸塩から成る溶液から成る第一材料は、結合される可能性があり、そのため金属およびリン酸塩は反応し、反応生成物から成る結果として生じる溶液が提供される。例えば約12時間など適切な期間にわたり、該反応は起こる可能性がある。
【0039】
金属およびリン酸塩の反応中、自己集合単分子層殻とよばれる可能性のある保護殻が形成されると考えられる。リン酸塩から成る溶液の遊離酸含有量が少なすぎる場合、保護殻は溶けにくく、溶液の遊離酸含有量が多すぎる場合、保護殻はより容易に溶かされ、そのため殻形成は妨げられることがさらに考えられる。(Xがリン、ヒ素、シリコンと硫黄のすべてまたはそのいずれかから成り、溶液が対応する第二材料または対応する第二材料からなる場合、保護殻は、形成され、同様に遊離酸含有量レベルによって影響を受けるであろうと考えられる。)このように、溶液のpHは、適切な殻形成のために調整される可能性がある。適切なpH範囲は、約1から約2.5である。溶液のpHは十分であり、そのためpH調整は、望ましくなく、行う必要もない。
【0040】
上述のとおりのような適切な界面活性剤とpH調整剤の両方またはそのいずれか、あるいはその適切な結合は、溶液のpHを調整するため、殻形成を促進するためと金属およびリン酸塩の反応を促進するためのすべてまたはそのいずれかで使用される可能性がある。どの当該促進も、界面活性剤または作用物が使用されないときの反応速度に関連する反応速度を高めることと、界面活性剤または作用物が使用されないときの例えば約70℃から約80℃までの温度と関連する例えば約20℃から約35℃の還元温度で反応が起こるのを可能にすることの両方またはそのいずれかから成る可能性がある。1つ以上の適切な界面活性剤は、図1Aおよび1B(まとめて、図1)に図示され、今記載されるように、金属およびリン酸塩の反応を促進する可能性があると考えられる。図1に示されるとおり、金属およびリン酸塩の反応中、金属粒子10は、保護殻12によって少なくとも部分的に取り囲まれる可能性がある。一般的に、殻12は、溶液中の金属粒子10およびリン酸塩の間の接触を妨げる可能性があり、そのためその2つを含む反応は妨げられる。適切な界面活性剤は、金属粒子10からの殻12の分離を促進するために使用され、そのため例えば実質的に連続的に進行することができるなど金属粒子10とリン酸塩の間の反応が促進されると考えられる。殻12は、帯電しているか、または電気的に中性である可能性がある。殻12が帯電している場合、イオン性界面活性剤または両性界面活性剤は、殻の表面に例えば静電気引力によってひきつけられる可能性があり、そのため界面活性剤の拡散層が形成される。殻12が電気的に中性の場合、非イオン性界面活性剤は、例えばファン・デル・ワールス力によって、殻の表面に吸着される可能性がある。殻12と界面活性剤の間のどの当該相互作用も、金属粒子10からの殻の分離を促進する可能性があり、そのため溶液中のリン酸塩との金属粒子の反応は、適切に進行する可能性がある。(Xがリン、ヒ素、シリコンと硫黄のすべてまたはそのいずれかから成り、溶液が対応する第二材料または対応する第二材料からなる場合、保護殻は、形成され、同様に遊離酸含有量レベルによって影響を受けるであろうと考えられる。)
【0041】
上述のとおり、該反応は、反応生成物から成る結果として生じる溶液を提供する可能性がある。反応生成物は、一般的公式、MXO4によって表される可能性がある。単に一例として、MがFeで、XがPのとき、反応順序は、下記の反応Iに示される順序である可能性があり、そこで鉄元素のすぐ右の挿入材料が、その原子価状態を示す。
【化1】

【0042】
本書に記載される準備過程は、上記の結果として生じる溶液およびイオンAから成る第三材料を結合することから成る可能性があり、そこでAは、反応溶液中のアルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表す。記述のこの部分において単に便宜または平易化目的で、Aは、単一アルカリ金属元素以外であるか、または上記のとおり1つ以上の元素である可能性があるにもかかわらず、例えばLiなどの単一金属元素と今言われる。当該例においては、第三材料は、単に一例として、水酸化リチウムと塩化リチウムの両方またはそのいずれかから成る可能性がある。結果として生じる溶液および第三材料を結合することは、例えば徹底混合または攪拌またはミリングなど混合から成る可能性がある。該混合は、例えば約4時間のボールミルによるミリングなど適切な期間の間、または結晶構造を分解、破壊または縮小するのに十分な時間の間の可能性がある。結果として生じる溶液および第三材料を結合することは、反応溶液のpHを調整することから成り、それは反応を促進する可能性がある。適切なpH範囲の例は、約7から約11である。溶液のpHは十分であり、そのためpH調整は、行う必要もない。結果として生じる溶液および第三材料を結合することは、本書にさらに記載されるとおり、さらなる処理に適する反応溶液をもたらす可能性がある。
【0043】
形成される材料がA成分から成らないとき、準備過程は、記載されたばかりの反応溶液以外で、上記の結果として生じる溶液から粒子混合物を得ることから成る可能性がある。どの適切なpH調整と混合の両方またはそのいずれかも、用いられる可能性がある。
【0044】
粒子混合物は、上記のとおり、反応溶液または結果として生じる溶液から得られる可能性がある。この混合物を得ることは、固体混合物を得るために、溶液を濾過することから成る可能性がある。粒子混合物は、実質的には非結晶である可能性がある。粒子混合物は、ある結晶質からなる可能性がある。粒子混合物は、例えば部分的に結晶性であり、部分的に非結晶性である、結晶構造を分解、破壊または縮小し、粒子混合物を半結晶化させるために、十分に挽かれる可能性がある。粒子混合物は、粒子混合物の中の粒子がナノスケールになるように、十分に挽かれる可能性がある。ミリング期間は、粒子混合物の当該「ナノスケール化」を促進するのに十分に長い可能性がある。ミリング過程において、粒子混合物は、溶液中にある可能性がある。単に一例として、ミリングはボールミルによる可能性があり、ミリング期間は約4時間である可能性がある。結果として生じる溶液および第三材料およびミリング過程の結合は、連続して、実質的に同時に起こる可能性がある。単に一例として、結果として生じる溶液および第三材料の結合は、下記の反応IIに示される順序などの反応順序によって表される可能性があり、そのときMはFe、XはP、およびAはLiであり、そこで鉄元素のすぐ右の挿入材料が、その原子価状態を示し、「/」の記号は、Li(I)と
Fe(III)PO4の間の界面と考えられるものを表す。
【化2】

【0045】
第一材料、第二材料と第三材料のすべてまたはそのいずれかは、上記方法または適切な方法でなど連続的に、または実質的に一度に、適切な方法で、結合される。これらの材料の結合は、本書にさらに記載される粒子混合物をもたらす可能性がある。
【0046】
本書に記載される準備過程は、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物のある粒子混合物を結合することから成る可能性がある。該結合は、ミリング過程から成る可能性がある。ミリング過程においては、粒子混合物および酸化物は、溶液中にある可能性がある。ミリングは、半結晶ナノスケール粒子混合物を作り出す可能性がある。当該混合物のナノスケール粒子はMXO4、イオンA、および酸化物から成ると考えられる。単に一例として、MがFe、XはP、およびAはLiで、Bが酸化物成分を表すとき、反応順序は、下記の反応IIIに示される順序である可能性があり、そこで鉄元素のすぐ右の挿入材料が、その原子価状態を示し、「/」の記号は、Li(I)と
Fe(III)PO4の間の界面と考えられるものを表す。
【化3】

【0047】
実施例1‐3に記載されるものなど適切な準備過程の例は、本書に記載される。本書に記載される準備過程の修正は可能である。例えば、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物は、以下にさらに記載される前駆体が提供される前のどんな適切な時期にでも加えられる可能性がある。酸化物は上記のその時期以前に起こる反応に関与するであろうと考えられ、そのためそれは、例えば前駆体を提供するために粒子混合物の乾燥前のまたは乾燥中のどんな時期でも、前駆体が提供されるどんな適切な、または都合の良い時期にも加えられる可能性がある。単に一例として、結果として生じる溶液および上記のとおりイオンAから成る第三材料を結合する以外で、結果として生じる溶液、イオンAから成る第三材料および酸化物が結合される。
【0048】
例えば上記などの半結晶ナノスケール粒子混合物は、前駆体を提供するために乾燥される可能性がある。例えば噴霧乾燥などのどんな十分な乾燥過程も、使用される可能性がある。単に一例として、半結晶ナノスケール粒子混合物は、ナノスケール粒子の小滴を形成するために処理される可能性がある。当該過程は、混合物を遠心分離機にかけることから成る可能性がある。この遠心分離は、空気の温暖または高温環境などの温暖または高温環境で行われる可能性がある。この遠心分離は、回転または「飛散」時間を決定する一定の期間にわたって行われる可能性がある。「飛散」して、回転か進行するとき、増加する表面張力を発達させるように、混合物が遠心分離されるので、小滴は、実質的に球体になる傾向があると考えられる。ナノスケール粒子の小孔に作用する毛細管作用によって、粒子の内部からの水分は、粒子の表面に向かって移動する。粒子の表面が周囲の温暖または高温環境と出会う時、それらの表面の水分は蒸発し、そのため粒子は乾燥されるとさらに考えられる。適切な結果を得るために、時間(例えば「飛散」時間)、温度(例えば室温)、または過程に関連する環境(例えば気温)または過程と関連する設備などの乾燥または遠心分離過程または環境と関連する一定のパラメーターを制御することが可能である可能性がある。本書に記載される半結晶ナノスケール粒子混合物の適切な乾燥に起因する前駆体は、実質的に乾燥した球体の粒子から成る可能性がある。当該粒子は、先に記載されたとおり、MXO4、イオンAおよび酸化物、Bから成る可能性がある。
【0049】
前駆体粒子は、図2に図式的に説明される。粒子は、MXO4から成るマトリックス部分20および例えばマトリックス部分を実質的に取り囲むなど、端または少なくとも部分的に取り囲む可能性のある境界部分22から成る。境界部分22は、Aが存在するとき、イオンAおよび酸化物の成分から成る。一例として、境界部分22は、界面、イオンAが存在するときイオンAから成る可能性があるが最内層24および酸化物成分から成る可能性がある最外層26から成り、そこで最外層は、少なくとも部分的に取り囲まれ、例えば、最内層を実質的に取り囲むなどである。
【0050】
本書に記載される準備過程は、ナノスケール組成を作り出すために、前駆体を焼成することから成る可能性がある。どんな適切な焼成でも使用される可能性がある。単に一例として、焼成は、例えばアルゴンガスまたは窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で、あるいは不活性ガスおよび不活性ガス中に懸濁される炭素粒子の存在下で前駆体を焼成することから成る可能性がある。焼成は、前駆体および炭素粒子が取り入れられる炉で行われる可能性がある。炭素粒子は、前駆体粒子より大きさが小さい可能性がある。単に一例として、個々の炭素粒子は、有効直径約100ナノメートル未満またはそれに等しい可能性がある。不活性ガスは、例えば循環的またはその他の適切なフローパターンなどで、炉に取り入れられ、前駆体および炭素粒子にガス中に懸濁され、混合されるようにならせる可能性がある。焼成は、例えば約800℃などの最高約900℃までのどんな適切な温度でも行われる可能性がある。例えば水分、反応ガスと二酸化炭素のすべてまたはそのいずれかなどの当該過程のどんな不要な生成物も、不活性ガスによって排出される可能性がある。当該過程中に、炭素粒子は、例えばおそらく混合物の隣接する粒子間で発生される剪断応力によって、前駆体粒子の小孔を少なくとも部分的に満たす可能性があると考えられる。
【0051】
M成分の原子価状態を変えるのに十分な作用物は、任意の適切な時間に、任意の適切な方法で加えられる可能性がある。当該作用物は、焼成前または焼成中に加えられる可能性がある。単に一例として、還元剤は、M成分の原子価状態を減少させるために加えられ、酸化剤は、M成分の原子価状態を増加させるために加えられる可能性がある。適切な還元剤の例は、木炭、黒鉛、石炭、炭素粉末などの炭素質材料と、単に一例としての蔗糖または多糖などの有機化合物の両方またはそのいずれかから成ることを含む。炭素材料を含む還元剤はまた、炭素源としての機能も果たし、よって炭素被覆を促進する可能性がある。
【0052】
前駆体粒子は、焼成中にさまざまな過程を受けると考えられる。一例として、例えば約25℃から約400℃までの温度で、約6時間の処理時間の熱処理から成る焼成の初期段階において、前駆体粒子は、表面拡散、バルク拡散、蒸発および凝縮を受けると考えられる。材料の小孔の中の二酸化炭素などのガスは、これらの過程の初期段階中に放出される可能性があると考えられる。これらの過程は、結果的に粒子となり、その個々の粒子は、例えばその中間または境界部分がマトリックス部分を実質的に取り囲むなど少なくとも部分的に取り囲む可能性がある共結晶マトリックス部分と、例えば中間部分を実質的に取り囲むなど少なくとも部分的に取り囲む可能性がある外側部分からなる可能性があると考えられる。マトリックス部分は、MyXO4またはAxMyXO4からなる可能性があり、境界部分は酸化物成分、Bから成る可能性があり、外側部分は、当該超過分が存在するとき酸化成分、B、あるいは炭素が焼成中に存在するとき、炭素の超過分から成る可能性がある。単に一例として、焼成がCによって表される炭素と混合することから成るとき、M、X、A、Bおよび挿入材料が例えば反応IIIに関連して上記のとおりであるとき、化合物はC/B[ Li(I) Fe (II) PO4]によって表される可能性がある。この例において、鉄成分の原子価状態は、IIIからIIへ還元されてきた。
【0053】
さらに一例として、例えば約400℃から約800℃までの温度で、約6時間の処理時間の熱処理から成る焼成の中間段階において、前駆体粒子は、なんらかの再組織化を受けると考えられる。例えば、層状結晶物質の抗生物質は、時間をかけた拡散を受ける材料の結晶粒界へのより速い拡散が続いてあり、そのため斜方晶系結晶構造が形成されると考えられる。同時に、酸化物成分、Bと炭素の両方またはそのいずれかの超過分から成るにせよ、外側部分は、拡散を受け、そのため、それはマトリックス部分および結晶物質の境界部分を密接に取り囲むと考えられる。単に一例として、焼成がCによって表される炭素を混合することから成るとき、M、X、A、Bおよび挿入材料が、例えば反応IIIに関連して上記のとおりであるとき、結果として生じる材料は、C/ [ Li(I) Fe (II) PO4・B]によって表される可能性があり、そこでは「・」の記号は、共結晶構造形であると考えられるものを表す。
【0054】
図3Aの概略図に関して今記載されるとおり、結晶物質のマトリックスは、ポリマー鎖30から成り、それはa‐c平面に沿って配置される8面体構造32および4面体構造34から成ると考えられる。各8面体構造32において、各中央M成分(図示されず)には、8面体構造の隅に示される6つの酸素原子36(そのすべてが図3Aに見えるわけではない)によって形成されるわずかに変形した8面体配位構造がある。各4面体構造において、各中央X(図示されず)成分には、4面体構造の隅に示される4つの酸素原子によって形成される4面体配位構造があり、そのうち2つは、隣接する8面体構造と共有される。A成分が存在するとき、マトリックス内およびこれらのさまざまな幾何学的構造のそばに、A成分のイオン38があり、それはM成分と関連する原子価状態のバランスを保つために役立つ可能性があり、そのため全体構造は実質的に中性であると考えられる。A成分のこれらのイオン38は、マトリックス30の4面体構造34より8面体構造32と密接に関連がある可能性がある。さらに、マトリックス30および記載されたばかりのそのさまざまな成分以外だが密接に関連があるのは、結晶物質の酸化物成分(図示されず)であると考えられる。なおさらに、炭素粒子が焼成中に存在するとき、炭素成分(図示されず)は、マトリックス30に隣接しているが、記載されたばかりの酸化物成分以外に存在すると考えられる。
【0055】
なおさらに一例として、例えば約800℃の温度で、約4時間の処理時間の熱処理から成る焼成の後期段階において、結晶物質は、段階的圧縮を受けると考えられる。結果として生じる材料は、図3Aに図示されるとおり、マトリックス30および共結晶形態のその成分および酸化物成分から成る共結晶構造から成ると考えられる。結果として生じる材料は、一般的公式IIによって表される可能性があり、そのとき炭素粒子は焼成中に存在しない。結果として生じる材料は、一般的公式IIIによって表される可能性があり、そのとき炭素粒子は焼成中に存在し、そのため一般的公式IIによって表される可能性のある基礎共結晶構造は、例えば実質的に取り囲まれるなど、一般的公式IIIのCによって表される炭素粒子の層によって、少なくとも部分的に取り囲まれる。当該共結晶構造40の概略図は図3Bに見られ、そこでは、上記のマトリックス共結晶部分42は、炭素粒子46によって被覆される酸化物成分の超過分から成る境界部分44によって取り囲まれる。別の当該共結晶構造48の概略図は図3Cに見られ、そこでは、上記のマトリックス共結晶部分42は、例えば実質的に取り囲まれるなど、炭素粒子の層または被覆(図示されず)よって、少なくとも部分的に取り囲まれる。
【0056】
単に一例として、結果として生じる材料は、焼成がCによって表される炭素を混合することから成るとき、M、X、A、Bおよび挿入材料が、例えば反応IIIに関連して上記のとおりであるとき、結果として生じる材料は、C/ [ Li(I) Fe (II) PO4・B]によって表される可能性があり、そこでは「・」の記号は、共結晶構造形であると考えられるものを表す。このような場合には、初期、中間および後期焼成段階に関連する反応順序は、以下の反応IVに示されるものである可能性がある。
【化4】

焼成に起因する材料は、本書に記載されるとおり、C/ [ Li(I)x
Fe (II)y PO4・zB]としても表される可能性がある。
【0057】
実施例1‐3に記載されるものなど適切な準備過程の例は、本書に記載される。本書に記載される準備過程の修正は可能である。例えば、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物は、前駆体が提供される前のどんな適切な時期にでも加えられる可能性がある。酸化物は上記のその時期以前に起こる反応に影響を及ぼさないであろうと考えられ、そのためそれは、例えば前駆体を提供するために粒子混合物の乾燥前または乾燥中のどんな時期でも、前駆体が提供される以前のどんな適切な、または都合の良い時期にも加えられる可能性がある。
【0058】
本書に記載される結果として生じるナノスケールの組成は、一般的公式AxMyXO4によって表される材料および共結晶形態の酸化物から成る可能性がある。該組成は、例えば一般的公式IIまたはIIIによって表される可能性がある。該組成は、その構造にわたって実質的に中性である可能性がある。電圧が該組成に加えられるとき、組成のマトリックスが電荷において実質的に中性であるように、中心金属Mは酸化される可能性がある。Aのイオンは放出され、該組成の全体的な原子価状態のバランスを保つために、電子が発生される可能性がある。該組成が不活性環境にあるとき、中心金属Mは還元され、組成の構造を安定化するために、電流が発生される可能性がある。酸化物および炭素粒子の存在は、組成の電気化学的可逆性を高めるのに役立つ可能性があると考えられる。該組成には、十分な構造的安定性および電気化学的可逆性があると考えられる。
【0059】
単に一例として、MyXO4・zB、MyXO4・zB/C、AxMyXO4・zBまたはAxMyXO4・zB/Cによって表されるナノスケールの共結晶組成は、存在する場合、Aは、リチウムおよびソジウムから選択される少なくとも1つの元素を表す。Mは、マグネシウム、鉄、コバルトおよびニッケルから選択される少なくとも1つの元素M1、ならびにチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、金、アンチモンおよびランタンから選択される少なくとも1つの元素M2を表し、そこではM1およびM2は、同じではない。Xはリンを表す。Oは、酸素を表す。酸化物Bは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、金、アンチモンおよびランタンから選択される少なくとも1つの酸化物である。またx、yおよびzは、本書で前に記載されるとおりである。当該組成においては、M1および酸化物Bと関連する少なくとも1つの元素は、異なる可能性がある。さらに、単に一例として、MyがM1ylM2y2の場合、y1およびy2は、y1がy2によって表される数から1引いたものに等しい数を表わすようなものである可能性がある。単に一例として、y2は、約0から約0.2を含むまでである可能性がある。前述のとおり、共結晶組成の酸素構成物質の少なくとも一部は、XよりMと、より密接に関連する可能性がある。
【0060】
MyXO4・zB、MyXO4・zB/C、AxMyXO4・zBまたはAxMyXO4・zB/Cにおいて、本書に記載される複合組成、酸化物成分、Bは、対応するMyXO4またはAxMyXO4材料または粒子上または内で共結晶化されると考えられる。さらに、酸化物成分の超過分が、MyXO4またはAxMyXO4材料または粒子の外側に実質的に均一な縁を形成する一方で、酸化物成分の少なくともある部分および典型的に実質的な部分は、このように共結晶化すると考えられる。X線純化構造分析およびX線吸光光度法は、酸化物成分が、本書に記載の複合組成においてドーパントでも被覆でもないと考えられる。
【0061】
酸化物成分と関連する微細構造ピークを明らかにするX線回析の研究は、例えばAxMyXO4・zBまたはAxMyXO4・zB/Cなどの本書に記載される複合組成と、例えば自然のLiFePO4 、LiFePO4/Cなどの比較材料または金属酸化物で被覆またはドープ塗料を塗られるこれらの比較材料のいずれかを区別すると考えられる。さらに、当該比較材料を用いる電気化学的電池に関して、本書に記載される複合組成を用いる電気化学的電池は、電気化学的電池動作に関連する初期充放電能力、充放電能力保持および充放電率能力の点から見て一般的に高められると考えられる。高められた初期能力は、高められた率能力は、高C率同様低C率での充放電循環中に異常を起す減少した陽イオンに起因する可能性がある一方、複合組成の酸化物成分の改善された能力に起因する可能性があると考えられる。
【0062】
本書に記載される組成および例えば関連方法などの関連技術に関する実施例は、以下に記載される。
【実施例1】
【0063】
実施例1:複合材料 Li1.01Fe0.98PO4・0.012MgO/C
リン酸水素二アンモニウム(0.2モル)およびクエン酸(0.25モル)は、酸性溶液を形成するために、脱イオン水(300ml)中で混合および溶解された。非イオン界面活性剤のトリトンX‐100(10モル)は、該酸性溶液に加えられた。結果として生じた溶液が徹底的に混合された後、約20℃から約30℃の温度でリン酸第二鉄およびリン酸第一鉄から成る混合物を形成するために、塩化第一鉄(2モル)が加えられた。塩化リチウム(2モル)は、徹底的に攪拌される間に、結果として生じる溶液に加えられた。結果として生じる溶液のpHが5になるまで、結果として生じる溶液は、酢酸(99%)で滴定された。結果として生じる溶液は、完全分散のために連続的に攪拌された。48時間の連続攪拌の後、分散溶液は、ポリプロピレンのフィルターを使用して濾過された。リン酸第二鉄リチウムおよびリン酸第一鉄リチウムから成る固体の混合物が、結果として生じた。
【0064】
固体の混合物は、汚染物質を取り除くために、蒸留水で洗われた。結果として生じる固体の混合物、蒸留水(600ml)および酸化マグネシウム(0.02モル)は、溶液中に半結晶ナノスケール粒子混合物を形成するために、ボールミルのジャーに入れられ、その中で挽かれ、分散された。該混合物は、前駆体を形成するために、噴霧乾燥された。
【0065】
前駆体は、酸化アルミニウムのるつぼに入れられ、それは今度は炉に入れられた。炭素粒子もまた、炉に入れられた。炉は、アルゴン担体ガスで満たされた。炉の温度は、約20℃の増分を用いて室温から約800℃までに至り、24時間800℃で維持された。炉内では、炭素粉末からの炭素粒子は、酸化マグネシウムおよび外側の炭素被覆で共結晶化されたリン酸鉄リチウム・マトリックスから成る複合材料Li1.01Fe0.98PO4・0.012MgO/Cを作り出すために、アルゴン担体ガスの中で懸濁され前駆体で混合された。x、yおよびzに対する数、すなわち1.01、0.98および0.012は、それぞれAES/ICP技術によって決定された。該材料は、Li(I)Fe(II) PO4 ・MgO/Cまたは
LiFePO4・MgO/Cによって簡単に表され、本書にLi(I)Fe(II) PO4 ・MgO/Cまたは LiFePO4・MgO/Cと簡単にいわれる可能性のある材料の例である。
【実施例2】
【0066】
実施例2:複合材料 Li1.04Fe0.99PO4・0.005TiO2/C
リン酸水素二アンモニウム(0.2モル)およびクエン酸(0.25モル)は、酸性溶液を形成するために、脱イオン水(300ml)中で混合および溶解された。両性界面活性剤のBS‐12(10モル)は、該酸性溶液に加えられた。結果として生じた溶液が徹底的に混合された後、約20℃から約30℃の温度でリン酸第二鉄およびリン酸第一鉄から成る混合物を形成するために、塩化第一鉄(2モル)が加えられた。塩化リチウム(2モル)は、徹底的に攪拌される間に、結果として生じる溶液に加えられた。結果として生じる溶液のpHが5になるまで、結果として生じる溶液は、酢酸(99%)で滴定された。結果として生じる溶液は、完全分散のために連続的に攪拌された。48時間の連続攪拌の後、分散溶液は、ポリプロピレンのフィルターを使用して濾過された。リン酸第二鉄リチウムおよびリン酸第一鉄リチウムから成る固体の混合物が、結果として生じた。
【0067】
固体の混合物は、汚染物質を取り除くために、蒸留水で洗われた。結果として生じる固体の混合物、蒸留水(600ml)および酸化チタン(0.02モル)は、溶液中に半結晶ナノスケール粒子混合物を形成するために、ボールミルのジャーに入れられ、その中で挽かれ、分散された。該混合物は、前駆体を形成するために、噴霧乾燥された。
【0068】
前駆体は、酸化アルミニウムのるつぼに入れられ、それは今度は炉に入れられた。炭素粒子もまた、炉に入れられた。炉は、アルゴン担体ガスで満たされた。炉の温度は、約20℃の増分を用いて約室温から800℃までに至り、24時間800℃で維持された。炉内では、炭素粉末からの炭素粒子は、酸化チタンおよび外側の炭素被覆で共結晶化されたリン酸鉄リチウム・マトリックスから成る複合材料Li1.04Fe0.99PO4・0.005TiO2/Cを作り出すために、アルゴン担体ガスの中で懸濁され前駆体で混合された。x、yおよびzに対する数、すなわち1.04、0.99および0.005は、それぞれAES/ICP技術によって決定された。該材料は、Li(I)Fe(II) PO4 ・TiO2/Cまたは LiFePO4・TiO2/Cによって簡単に表され、本書にLi(I)Fe(II) PO4 ・TiO2/Cまたは LiFePO4・TiO2/Cと簡単にいわれる可能性のある材料の例である。
【実施例3】
【0069】
実施例3:複合材料 Li1.03Fe0.996PO4・0.02V2O3/C
リン酸水素二アンモニウム(0.2モル)およびクエン酸(0.25モル)は、酸性溶液を形成するために、脱イオン水(300ml)中で混合および溶解された。陽イオン界面活性剤のDNP(10ml)は、該酸性溶液に加えられた。結果として生じた溶液が徹底的に混合された後、約20℃から約30℃の温度でリン酸第二鉄およびリン酸第一鉄から成る混合物を形成するために、塩化第一鉄(2モル)が加えられた。塩化リチウム(2モル)は、徹底的に攪拌される間に、結果として生じる溶液に加えられた。結果として生じる溶液のpHが5になるまで、結果として生じる溶液は、酢酸(99%)で滴定された。結果として生じる溶液は、完全分散のために連続的に攪拌された。48時間の連続攪拌の後、分散溶液は、ポリプロピレンのフィルターを使用して濾過された。リン酸第二鉄リチウムおよびリン酸第一鉄リチウムから成る固体の混合物が、結果として生じた。
【0070】
固体の混合物は、汚染物質を取り除くために、蒸留水で洗われた。結果として生じる固体の混合物、蒸留水(600ml)および三酸化バナジウム(0.02モル)は、溶液中に半結晶ナノスケール粒子混合物を形成するために、ボールミルのジャーに入れられ、その中で挽かれ、分散された。該混合物は、前駆体を形成するために、噴霧乾燥された。
【0071】
前駆体は、酸化アルミニウムのるつぼに入れられ、それは今度は炉に入れられた。炭素粒子もまた、炉に入れられた。炉は、アルゴン担体ガスで満たされた。炉の温度は、約20℃の増分を用いて約室温から800℃までに至り、24時間800℃で維持された。炉内では、炭素粉末からの炭素粒子は、酸化チタンおよび外側の炭素被覆で共結晶化されたリン酸鉄リチウム・マトリックスから成る複合材料Li1.03Fe0.996PO4・0.02V2O3/Cを作り出すために、アルゴン担体ガスの中で懸濁され前駆体で混合された。x、yおよびzに対する数、すなわち1.03、0.996および0.02は、それぞれAES/ICP技術によって決定された。該材料は、Li(I)Fe(II) PO4 ・V2O3/Cまたは LiFePO4・V2O3/Cによって簡単に表され、本書にLi(I)Fe(II) PO4 ・V2O3/Cまたは LiFePO4・V2O3/Cと簡単にいわれる可能性のある材料の例である。
【実施例4】
【0072】
実施例4:追加複合材料
その他の共結晶材料は、実施例1‐3に用いられるのと類似した方法、または本実施例で下記の方法で準備された。当該材料は、以下の表1に記載される材料を含んだ。以下に記載のこれらの材料について、単に便宜上、yに対する数は、簡単に1として表される。下記のこれらの材料および本書の他の場所に記載されるその他の材料について、zに対する数は、小数第3位で四捨五入される可能性がある。太字活字で見られる下記の5つの材料、複合材料I(実施例1の複合材料)、複合材料II、複合材料III、複合材料IVおよび複合材料Vは、本書で検討される実施例のいくつかで使用された。
【表1】

【0073】
これらの複合材料は、実施例1‐3のいずれかに用いられるのと類似した方法で準備される可能性がある。これらの複合材料のいくつかは、今記載されるとおり、反応物質としてLiOH・H2O、鉄粉、H3PO4および酸化物成分、Bを用いて準備されてきた。当該準備において、反応物質の化学量論量は、ゲルの形成を促進するために、少なくとも1つの界面活性剤が錯化剤として加えられた脱イオン水に溶解された。準備される溶液のそれぞれは、微粒子が形成されるまで、噴霧乾燥された。流動N2ガス環境において、CO2を放出するために、粒子は400℃まで加熱され、結果として生じる分解前駆体粒子は、さらに800℃で焼結された。焼結は、Fe2+陽イオンの酸化を防ぐために還元性雰囲気で行われた。
【0074】
複合材料IIおよび複合材料IVの準備において、酸化物成分、それぞれTiO2およびCuOの理論量は、準備されるそれぞれの溶液中で使用された。それらの理論量は、それぞれ0.051モルパーセントおよび0.030モルパーセントであった。複合材料IIおよび複合材料IVに存在するTiO2およびCuOの実際量は、誘導結合プラズマ(ICP)分析によって、それぞれ0.05モルパーセントおよび0.029モルパーセントであると確認された。実際量は、理論量よりわずかに少なく、これらの酸化物成分が処理中に失われた可能性があることを示していた。
【0075】
Cu K放射を利用するX線回析図形は、相純度を決定するために準備されたさまざまな複合材料のために得られた。電界放出のある高分解能透過電子顕微鏡法は、さまざまな複合材料の粉末の表面形態を研究するために使用された。シンクロトロン・ビームの浸透を可能にするためのマイラー窓を用いる現場でのX線研究はまた、さまざまな複合材料を特徴づけるためにも利用された。これらの研究において、電子貯蔵リングは、100‐200mAのビーム電流のある1.5ゲブのエネルギーで操作された。
【0076】
X線は、例えばCr2O3およびV2O3などの複合材料のさまざまな酸化物成分を探知できるほど敏感ではない可能性がある。k3加重Cr、VおよびTiK端EXAFS(拡張X線吸収微細構造)測定のさまざまなフーリエ変換は、さまざまな酸化物成分がさまざまな複合材料の共結晶形成の一部かどうかを確認するために実施された。さまざまなK端EXAFSスペクトルは、BL17Cウィグラー・ビームラインで得られた。
【0077】
CR2032ボタン電池は、さまざまな複合材料を使用して準備され、定電流充放電特性を含む、これらのバッテリーの電気化学的特性を研究するために使用された。一般的に、ボタン電池用の電極は、活性複合材料の85重量パーセント、8重量パーセントのカーボンブラックおよびn‐メチルピロリドン(NMP)中の7重量パーセントのフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)を、スラリーを形成するために分散させること、スラリーをアルミ箔上にスラリーを被覆すること、および真空オーブンで被覆アルミニウム電極を乾燥させることによって作られ、次いで電極を押すことが続く。各ボタン電池は、アルゴンで満たされたグローブボックス(Mbraum、Unilab、ドイツ)内で、リチウム箔を対電極として使用して、組み立てられた。一定のボタン電池の電気化学的特性化研究において、エチレン・カーボネート(EC)および炭酸ジメチル(DMC)の1:1の混合物の中のLiPF6(1M)の電解質が使用された。各サイクリック・ボルタンメトリー(CV)研究において、測定は、電気化学的ワーキングステーションを0.1mV/sのスキャン速度で使用して実施され、各電池は、2.5から4.3Vの電圧範囲にわたりC/10速度で定電流的に充放電された。
【0078】
本実施例は、一般的に、準備される複合材料のいくつか、それらを準備するのに使用されるさまざまな方法、それらを評価するさまざまな技術、およびそれらの技術のために使用されるさまざまなパラメーターを記載する。これらすべてに関する変動は、本書で熟考される。本書の他の実施例においては、さまざまな複合材料、それらの準備方法、それらを評価するために使用される技術およびパラメーターは、当該実施例においてより明確に記載された。
【実施例5】
【0079】
実施例5:複合材料の表面形態およびエネルギー分散分光法スペクトル
さまざまな複合材料、すなわちLi(I) Fe (II) PO4・Cr2O3/C、Li(I) /Fe (II)
PO4・CuO/CおよびLi(I) Fe (II) PO4・Ti O2/Cが準備された。これらの準備中、さまざまなイオン(それぞれリチウム、鉄およびリン酸塩の、ならびにクロム、銅およびチタニウムのイオン)は、水性媒体中で溶解され、原子スケールで混合された。これらの準備は、結果的にCr2O3、CuOおよびTiO2それぞれの実質的に同種の共結晶化である、オリビン格子構造のある組成をもたらしたと考えられる。
【0080】
Li(I) Fe (II) PO4・Cr2O3/C複合材料の粒子の一部分の表面形態を示す写真は、解析的透過型電子顕微鏡写真撮影によって得られた。該写真は、図4Aに見られる。図4Aの右隅に見える線は、30ナノメートルを表し、倍率は300Kである。暗い部分52は、複合材料50のLi(I) Fe (II) PO4・Cr2O3共結晶に当たり、明るい、または半透明の外側部分56)は、複合材料50の炭素成分に当たると考えられる。複合材料の粒子は、形状は実質的に球形であるとみなされた。複合材料の粒子の有効直径は、ナノスケールであることが分かった。
【0081】
Li(I) /Fe (II) PO4・CuO複合材料の粒子の一部分の表面形態を示す写真は、解析的透過型電子顕微鏡写真撮影によって得られた。該写真は、図4Bに見られる。図4Bの右隅に見える線は、15ナノメートルを表し、倍率は600Kである。暗い部分52は、複合材料50のLi(I) Fe (II) PO4・CuO共結晶に当たり、縁部分は、CuOの超過分に当たると考えられる。縁の厚みは、約3ナノメートルと約3.5ナノメートルの間、すなわち、それぞれ3.02ナノメートル、3.35と、3.45ナノメートルであるとして、3箇所で示される。複合材料の粒子は、形状は実質的に球形であるとみなされた。粒子の共結晶マトリックスの有効直径と粒子の縁の厚みの両方は、ナノスケールであることが分かった。
【0082】
写真は、図4C(以下に記載される)の写真に示されるものより少しはっきり見える外郭線および材料の表面の多様な特徴を示すために見られる。写真は、中心部から形成され、約3ナノメートルと約3.5ナノメートルの間の厚みのある実質的に均一なCuO層を示すために見られる。写真は、共結晶化され、複合材料の粒子の中で、沈殿した超過CuOがあるが、無秩序にではなく、粒子の表面に実質的に均一に分配されるCuOを示すと考えられる。
【0083】
Li(I) Fe (II) PO4・Ti O2複合材料の粒子の一部分の表面形態を示す写真は、解析的透過型電子顕微鏡写真撮影によって得られた。該写真は、図4Cに見られる。図4Cの右隅に見える線は、10ナノメートルを表し、倍率は600Kである。暗い部分52は、複合材料50のLi(I) Fe (II) PO4・Ti O2共結晶に当たり、縁部分は、TiO2の超過分に当たると考えられる。複合材料の粒子は、形状は実質的に球形であるとみなされた。粒子の共結晶マトリックスの有効直径と粒子の縁の厚みの両方は、ナノスケールであることが分かった。写真は、共結晶化され、複合材料の粒子の中で、沈殿した超過TiO2があるが、無秩序にではなく、粒子の表面に実質的に均一に分配されるTiO2を示すと考えられる。
【0084】
Li(I) Fe (II) PO4・Ti O2/C複合材料は、エネルギー分散分光法(EDS)を受けた。結果として生じるEDSスペクトル(強度(cst)対エネルギー(keV))は、図4Dに示される。EDSスペクトルの分析は、共結晶材料の個々の結晶の表面に、酸化物成分、ここではイオンのTi4+、と関連する成分の実質的に均一な分配を示すと考えられる。
【0085】
本書に記載される複合材料の酸化物成分が単に被覆である場合、中心材料の外側への酸化物成分のより無秩序な分配は、本書に撮られたようなTEM写真に見られるであろうと考えられる。加えて、本書に記載される複合材料の酸化物成分が単にドーパントの場合、本書に撮られたようなTEM写真に見られないであろうと考えられる。
【0086】
共結晶ではない比較LiFePO4材料の表面形態を示す写真は、図4Eに示される。図4Eの右隅に見える線は、20ナノメートルを表し、倍率は300Kである。図4Bおよび図4Cに示される写真とは異なり、暗いマトリックスだけが、写真に見ることができる。加えて、写真は、比較的はっきり見える外郭線および比較的平らな、または均一の表面を示す。
【0087】
共結晶複合材料の写真は、酸化物成分、B、が材料のオリビン構造相に分配されることを示すと考えられる。これは、これらの酸化物成分がオリビン構造内または構造上で存在することを示す可能性があると考えられる。
【実施例6】
【0088】
実施例6:複合材料の回析パターンおよび構造パラメーター
複合材料Iの粉末と関連する回析パターンは、単色Cu Kα放射を用いて、10秒毎に0.1度のスキャン速度で、10から50度の範囲で2θの軸の粉末X線回析装置によって得られた。複合材料IIおよび複合材料IIIにつき個々にそれぞれ、同じ手順に従った。これらの回析パターンは示されないが、Li(I) Fe (II) PO4・Ti O2/C複合材料、複合材料IIおよび別の複合材料、Li(I) Fe (II) PO4・CuO/C、複合材料IVおよび比較材料に関連して得られる回析パターンは、実施例9に関連して記載され、図6に示される。
【0089】
コンピューター・プログラム(CellRef格子精密化手順)(www.ccp13.ac.uk/software/Unsupported/cellref.html.)が、複合材料I、複合材料IIおよび複合材料IIIのそれぞれの構造パラメーターを決定するための結果を精密化するために使用された。これらの複合材料と関連する構造または格子パラメーターは、Reitveld精密化方法によって決定され、以下の表2に見られる。
【表2】

比較として、LiFePO4と関連するさまざまな格子パラメーターは、以下のとおり報告された。a=10.334Å;b=6.008Å;c=4.693Å;およびV=291.392Å3[A.K.Padhiその他著、J.Electrochem.Soc.144,1188(1997)]、ならびにa=10.328Å;b=6.009 Å;c=4.694Å;およびV=291.31Å3、[Electrochimica Acta
50,2955−2958(2005)]
【0090】
これらの結果は、それぞれ複合材料IのLi(I) Fe (II) PO4部分およびMgO部分、複合材料IIのTi O2部分、ならびに複合材料IIIのV2O3部分の共結晶構造を説明すると考えられる。これらの共結晶構造のそれぞれは、斜方晶系Pmna空間群に示されるオリビン秩序構造からなると考えられる。それぞれ複合材料I、IIおよびIIIの各酸化物成分、ここではMgO、TiO2およびV2O3が、低濃度で使用されるので、材料のLiFePO4部分に関連する格子構造を破壊しないとさらに考えられる。それぞれ複合材料I、IIおよびIIIの酸化物の非酸化性成分のそれぞれ、ここではMg、TiおよびVのイオン半径が、材料のLiFePO4部分の第一鉄イオンの半径とある程度類似しているので、材料のLiFePO4部分に関連する格子構造のゆがみは、わずかであるか、または無視できるほどであるとさらに考えられる。それにもかかわらず、共結晶材料の格子構造は、上に証明されるとおり、LiFePO4の格子構造とは異なる。本書に記載される共結晶材料には、上に証明されるとおり、LiFePO4の格子構造より少なくとも1つの格子定数において一般的に大きい、また格子量において大きい格子構造があると考えられる。本書に記載される複合材料の酸化物成分が、共結晶成分の代わりに、単に被覆とドーパントの両方またはそのいずれかとしての機能を果たす場合、当該拡大は起こらないであろうと考えられる。
【実施例7】
【0091】
実施例7:複合材料のサイクリック・ボルタモグラム
サイクリック電圧電位スキャニングは、今記載されるとおり、さまざまな材料のイオン伝導率を評価するために用いられた。出発材料のLi Fe (II) PO4・ZnO/C複合材料は、適切な酸化物材料、ここではZnOを使用して作られた。該出発材料は、Ag/AgCl参照電極の存在下で、室温で、LiNO3(3M)の水溶液の中に置かれた。リチウムイオンを含むイオン抽出過程またはデインターカレーション過程は、結果的にFe(II)からFe(III)への鉄中心の酸化をもたらし、それは3.0Vの電位と関連した。リチウムイオンを含むイオン挿入過程またはインターカレーション過程は、結果的にFe(III)からFe(II)への鉄中心の還元をもたらし、それは3.6Vの電位と関連した。前述事項に対応するサイクリック・ボルタモグラム(電流(A)対電位(V)対Ag/AgCl参照電極)のグラフ表示は、図5Aに示され、前述事項に対応する反応スキームは以下に示される。
【化5】

【0092】
出発材料のFe (III) PO4・TiO2/C複合材料は、適切な酸化物材料、ここではTiO2を使用し、例えばリチウム構成成分または塩化リチウムまたはLiOH・H2OなどのA‐構成成分を省いて作られた。該出発材料は、Ag/AgCl参照電極の存在下で、室温で、LiNO3(3M)の水溶液の中に置かれた。リチウムイオンを含むイオン挿入過程またはインターカレーション過程は、結果的にFe(III)からFe(II)への鉄中心の還元をもたらし、それは3.02Vの電位と関連した。リチウムイオンを含むイオン抽出過程またはデインターカレーション過程は、結果的にFe(II)からFe(III)への鉄中心の酸化をもたらし、それは3.5Vの電位と関連した。前述事項に対応するサイクリック・ボルタモグラム(電流(A)対電位(V)対Ag/AgCl参照電極)のグラフ表示は、図5Bに示され、前述事項に対応する反応スキームは以下に示される。
【化6】

この特定の例において、該反応は、出発材料としてFe (III) PO4・0.03TiO2/Cを含み、イオン挿入過程での終了材料としてLi(I) 1.03Fe(II) PO4・0.029TiO2/C、複合材料II、を作り出した。(準備過程で使用される酸化物成分の理論量(ここでは0.03 TiO2)と過程の生成物でのICP分析によって決定される実際量(ここでは0.029TiO2)の間の違いに関しては実施例4を参照。)
【0093】
前述事項は、LiFePO4・ZnO/C共結晶複合材料および対応するFePO4・ZnO/C共結晶材料、ならびにLiFePO4・TiO2/C共結晶材料および対応するFe PO4・TiO2/C共結晶材料のイオン伝導率を例示すると考えられる。これらの実施例では鉄であるLiFe(II)PO4部分の酸化還元中心は、還元および酸化過程に含まれ、一方これらの実施例ではそれぞれ亜鉛またはチタンである材料の残りのZnOまたはTiO2部分の酸化物の対象は、当該過程には含まれないと考えられる。還元および酸化過程は、リチウムのフェルミ準位に関してFe2+ /Fe3+酸化還元の高開路電圧(OCV)を誘導する。例えばZnOまたはTiO2などの共結晶材料での少量の酸化物成分は、本書に記載される共結晶複合材料と関連するOCVに影響を及ぼさないか、またはわずかに影響を及ぼすかであり、それは例えばPO43-などの共結晶材料の多価陰イオンによって主に決定されると考えられる。
【0094】
実施例6に関連して上記のとおり、[Li(I) Fe(II) PO4・TiO2]/C複合材料と関連する格子パラメーターは、LiFePO4組成と関連するものとは異なり、一般的により大きい。本書に記載される複合材料と関連する当該の比較的拡大された格子構造は、イオン・インターカレーションおよびデインターカレーション過程にとって比較的より大きい空間を提供する可能性があると考えられる。
【実施例8】
【0095】
実施例8:複合材料から成る電気化学的可逆半電池およびその性能
実施例1からの複合材料、すなわち複合材料Iは、メチルピロリドン(NMP)溶剤(1ml)中で80:10:10の荷重配分比でカーボンブラックおよび二フッ化ビニリデン(PVDF)と混合された。結果として生じる混合物は、150mmの厚みのある陽電極試験片を形成するために、アルミ箔上に被覆され、120℃で乾燥された。陽電極試験片は、ボタン型電気化学的可逆半電池を形成するために、リチウム陰電極と結合された。実施例2および実施例3からの複合材料のそれぞれについて、実施例1からの複合材料が、実施例2からの複合材料および実施例3からの複合材料それぞれに置き換えられたことを除いて、同じ手順が別々に従われた。
【0096】
上記のボタン型電気化学的可逆半電池は、室温で充放電数サイクルにわたり、関連の充放電特性を決定するために試験された。以下のパラメーターが使用された。それぞれ2.5Vから4.3Vまでの範囲の印加充電圧および印加放電圧、それぞれC/10に設定される充電速度および放電速度ならびに室温条件。以下の特性が確認された。それぞれ初回の充放電サイクルおよび10回目の充放電サイクルに関連する充電容量(mAh/g)および放電容量(mAh/g)。上記のボタン型電気化学的可逆半電池のそれぞれに関連する結果は、以下の表3に示される。
【表3】

【0097】
示されるとおり、半電池の1つについて、10回目の放電が約146mAh/gに達したのに対して、初回放電と関連する比電荷容量は、約144mAh/gに達した。該結果は、本書に記載される複合材料を用いる電気化学的可逆半電池が十分な性能および十分な充放電サイクルの安定性を見せることを例示する。
【実施例9】
【0098】
実施例9:複合材料の回析パターンおよび構造パラメーター
Li(I) Fe(II) PO4・TiO2/C複合材料、すなわち複合材料IIおよびLi(I)
Fe(II) PO4・CuO/C複合材料、すなわち複合材料IVは、実施例4に関連して前記のとおり得られた。これらの複合材料のそれぞれについて、複合材料の粉末と関連する回析パターンは、単色Cu Kα放射を用いて、10秒毎に0.1度の試験スキャン速度で、10から50度の範囲で2θの軸の、300Kの温度で粉末X線回析装置によって得られた。複合材料のそれぞれの回析線は、斜方晶系結晶構造に示された。コンピューター・プログラムが、複合材料の構造パラメーターを決定するための結果を精密化するために使用された。これらの複合材料のそれぞれに関連して得られる回析パターン(強度(cts)対2θ(度数))は、比較材料、純粋(非ドープ)Li Fe PO4 /Cと関連するものとともに、図6にグラフ形状で見られる。図6の3つの丸く囲まれた部分は、比較材料(図6で「CM」 として示される)と関連するパターンに対して、複合材料IIおよびIV(図6でそれぞれ「II」および「IV」として示される)と関連するパターンの違いを示す。
【0099】
Li(I) Fe(II) PO4・TiO2/CおよびLi(I) Fe(II) PO4・CuO/Cと関連するそれぞれのパターンには、純粋結晶相の存在を示す急激で、輪郭のはっきりしたブラッグのピークがある。これらのパターンのそれぞれは、材料それぞれの炭素成分に関連する可能性のあるピーク、および不純物と関連する可能性のあるピークを示さない。これらのパターンのそれぞれは、10から50度の2θ範囲で起こる微小な変化のある共結晶構造の形成を明白に示すと考えられる。先に述べた場合において、パターンは、約27度および約41度の2θに位置する微細構造ルチルTiO2のある共結晶相での三燐石Li(I) Fe(II) PO4および金属酸化物TiO2を明白に示す。後に述べた場合において、パターンは、約43度の2θに位置する微細構造CuOのある共結晶相での三燐石Li(I) Fe(II) PO4および金属酸化物CuOを明白に示す。これらのパターンのそれぞれは、LiFePO4/Cと関連するものとは異なる。実施例6と関連して上記のとおり、Li(I) Fe(II) PO4・TiO2/C複合材料と関連する格子パラメーターは、LiFePO4組成と関連するものとは異なる。
【0100】
金属酸化物被覆したLiCoO2において、金属酸化物と関連するピークは、LiCoO2材料での金属酸化物の分配を示していると報告されてきた。電気化学的および固体レター6、A221−A224(2003);Angew.Chem.Int.Ed.40,3367(2001)。酸化ジルコニウムで被覆されるLiCoO2についてのXRDパターンは、LiCoO2と関連する際立ったピークおよび約30度の2θに位置する小さく幅広いピークを示してきた。電気化学的および固体レター6、A221−A224(2003)。このような小さく幅広いピークは、LiCoO2材料の周りを被覆するとして存在する酸化物成分、ここでは酸化ジルコニウムを表すと考えられる。このような小さく幅広いピークは、2つの複合材料と関連して上記の微細構造ピークと区別できると考えられる。2つの該複合材料と関連する微細構造ピークは、ナノ結晶金属酸化物成分、それぞれTiO2またはCuOから成る共結晶複合材料を示すと考えられる。
【0101】
2つの該複合材料および比較材料に関連する構造または格子パラメーターは、一般構造分析システム(GSAS)を用いて、Reitveld精密化方法(ncnr.nist.gov/programs/crystallography/software/gsas.htmlを参照)によって決定され、以下の表4‐6それぞれに見られる。これらの3つの表において、x、yおよびzのパラメーターは、三次元デカルト座標に当てはまる。
【表4】

【表5】

【表6】

【0102】
表4および5に示されるとおり、2つの複合材料のそれぞれでの占有は1と決定され、それは共結晶化材料についての公式での鉄の化学量論指数に近い。得られた値が、材料サンプルのそれぞれTiおよびCuの実際の容量よりずっと高かったので、それぞれTiおよびCuを精密化に含む試みは、不成功であった。複合材料が金属酸化物とドープ処理される場合、鉄部位の占有は、1未満であると予想されるであろう。2つの該複合材料についての占有データは、金属酸化物、TiO2またはCuOそれぞれが、ドーパントとして存在しない複合材料を示すと考えられる。
【0103】
表4‐6に示されるとおり、複合材料と関連する格子パラメーターは、複合材料と関連するものより大きかった。これらの違いは、共結晶材料の中に酸化成分、Bが存在することに起因すると考えられる。当該成分は比較材料には存在せず、それは共結晶ではない。
【0104】
2つの複合材料と関連するFe‐O間距離および比較材料もまた、表4‐6に示される。2つの複合材料においては、4面体構造に結合される。図3Aに関連して前に記載されるとおり、酸素原子の8面体‐4面体の共有利用のある各M中心(ここではFe中心)8面体構造は、4つの他のM中心8面体構造に、ならびに4つのX中心(ここでは、P中心)に結合される。中心Mおよび中心P原子は、上述のとおり、M‐O‐X(ここでは、Fe−O−P)結合に沿った共通の最も近くにあるOを共有する。M‐O結合と関連する共有結合に関して、M‐O‐X原子結合でのMとOの間の共有結合は、M‐O‐X原子結合の誘導効果およびMとXの間の静電反発力によって、より弱いと考えられる。これは、A成分(ここでは、リチウム)のフェルミ準位に関して、M基盤の酸化還元対(ここでは、Fe2+/Fe3+)と関連する高開放電圧(OCV)を誘導すると考えられる。このOCVは、複合材料の結晶において酸化物成分、Bが存在することによって、比較的邪魔されず、変化がないと考えられる。
【実施例10】
【0105】
実施例10:複合材料および比較材料の構造解析
複合材料II、複合材料IVおよび比較材料の純粋LiFePO4/Cは、Fe K端拡張X線吸収微細構造(EXAFS)分光器を使用して分析された。結果として生じるスペクトル(吸収(a.u.)対エネルギー(eV))が、差し込み図に示されるスペクトルの拡大部分とともに図7に示される(そこでは、複合材料IIおよびIVおよび比較材料は、それぞれ「II」、「IV」および「CM」として示される)。EXAFSスペクトルは、2つの主要部分、前端領域および主要端領域から成った。本書で分析される材料のそれぞれと関連して、前端領域のピークは、Fe酸化状態および配位環境を決定するために最も有用な特性とみなされた。このピークは、1sから3dの電子遷移に対応する、急激に上昇する吸収端のより低いエネルギー面にあり、1sから3dの4極電子遷移を表した。本書の複合材料に関連して、Feのd状態と周囲の酸素原子のp状態を混合すること、および理想的8面体からのイオンのFeの配位構造の逸脱によって部分的に可能となったが、この遷移は、通常は双極子の禁制過程である。前端ピークと関連するエネルギーは、Fe酸化状態に影響されやすい。前端ピークと関連する強度は、位置中心対称性に影響されやすく、最も中心に対して対称なFe配位構造は、最低強度と関連があった。前端ピークの強度最少は、8面体の対称性と関連し、前端ピークの強度最少は、4面体配位と関連した。
【0106】
図7に示されるとおり、2つの複合材料および比較材料の前端強度ピークは、約7110eV以上のエネルギーと関連があった。これはFe2+について認められた同じエネルギーであるので、これらの材料の大部分のFeの原子価は+2であると考えられる。これらの前端ピークのエネルギーまたは吸収強度におけるどんな変動も、2つの複合材料での酸化物成分、Bの存在と関連はなかった。これらの成分の微量は、2つの複合材料でのFeの原子価状態に少しの、または重要でない障害を引き起こすと考えられる。
【0107】
図7にまた示されるとおり、約7125eVに相当する吸収ピークの強度は、比較材料についてより2つの複合材料についてのほうが高かった。下記は、2つの複合材料および比較材料についてのスペクトルの相対比較が行われる場合であると考えられる。2つの複合材料と関連するより高い強度は、2つの複合材料でのLiFePO4粒子の表面層でのイオンFeについての非占有d状態の増加する数を反映すると考えられる。さらに、2つの共結晶化複合材料の酸化物成分、Bは、Fe2+から3d電子をより容易に引きつけ、それによってこれらのイオンの3d状態に穴を作り出し、2つの複合材料に増加するp型伝導性を誘導する可能性があると考えられる。
【0108】
Fe K端EXAFSスペクトルのそれぞれは、バックグラウンド除去法、エネルギー較正、標準化および異なる状態につきk3で評価し、結果的にk3χ(k)の関数になる基準補正を用いて処理された。比較目的において、3つのスペクトルは、基準散乱経路を用いて、2つの複合材料および比較材料のそれぞれにつき発生されるEXAFSスペクトルに合わせられた。2つの複合材料および比較材料のそれぞれにつき、ゼロと15Å-1の間の限定k空間範囲にわたるk3χ(k)のフーリエ変換は、図8(そこでは、複合材料IIおよびIVおよび比較材料は、「II」「IV」および「CM」として、それぞれ示される)にグラフを用いて示されるとおり、原子間距離、R(Å) の関数としての対応する放射状構造関数(FT規模)を提供するめに実施される。Fe‐O環境(初回ピークのみ示す)のFEFF適合解析の理論的結果のグラフを用いた表示はまたすべての可能な散乱経路を用いて、図8に示される。3つの材料のそれぞれにつき、放射状構造関数は、2つの強いピークを示し、増加する原子間距離として続いて2つのより弱いピークが続く。ピークと関連する原子間距離は、後方散乱殻の半径に近かった。3つの材料のそれぞれについて、約4.1Åまでの原子間距離に対応する最初の3つのピークは、LiFePO4/のFEFF適合解析の理論的結果のグラフを用いた表示はまたすべての可能な散乱経路を用いて定量的に分析された。
【0109】
FEFF適合解析は、すべての可能な散乱経路を用いて2つの複合材料および比較材料のそれぞれについて実行され、結果的に以下の表7に記載される構造パラメーターが得られた。そこでは、Za-Zbは、中央吸収体および散乱原子(または経路)相関関係を表し、CNは、配位数であり、Rは、原子間距離であり、σ2は、デバイ‐ウォラー障害パラメーターを表し、減少係数は、6/5.0315である。
【表7】

第一殻の最良適合は、表7に示される原子間Fe‐O距離を推定することによって得られた。文字通り、LiFePO4についての最良適合データは、それぞれ1.9912 Å
、2.1223 Å および2.2645 Åの3つの異なるFe‐O距離を推定することによって得られてきた。Electrochimica Acta 50, 5200−5207(2005)を参照。2つの複合材料および比較材料についてのデータの比較は、表7に示されるとおり、非常にわずかの構造転位およびFe‐O配位および原子間Fe‐O距離における最低限の変化などの比較的微細な変化を示す。
【0110】
2つの複合材料の酸化物、Bのそれぞれは、LiFePO4成分を被覆とドープ処理の両方またはそのいずれかよりむしろ本実施例の結果は、LiFePO4成分で共結晶化することを例示すると考えられる。一般的に、純粋LiFePO4材料がドープ処理される場合、いくつかのFe2+関連の特性および放射状構造関数の最初のピークと関連する原子間距離は、異なり、純粋材料と関連するものに対して変えられる。EXAFSピークのエネルギーは、実質的に同じであることを示した。これらの結果は、2つの複合材料および比較材料のFe2+関連の前端ピークの吸収強度は異なったが、Feの酸化状態において重大な障害を示すには、わずかだけで、十分でなかったことが示された。放射状構造関数決定の結果は、2つの複合材料および比較材料についての第1ピークと関連する原子間距離が、実質的に同じであることが示された。2つの複合材料および比較材料についてのデータの比較は、非常にわずかな構造転位などの比較的微細な変化ならびにFe−O配位および原子間Fe−O距離での最低限の変化を示した。
【実施例11】
【0111】
実施例11:複合材料および比較材料の構造解析
複合材料Vおよび3のCr酸化状態のある比較材料、Cr2O3は、Cr
K端拡大X線吸収微細構造(EXAFS)分光法を用いて分析された。Cr K端EXAFSスペクトルは、近くの原子の推定分配から最初から計算される光電子散乱経路のあるIFEFFITに基づくプログラム・パッケージ(B.Ravelその他著、J.Synchrotron Radiat.12,537(2005)を参照)およびFEFF6コード(J.J.Rehrその他著、Phys.Rev.Lett.69,3397(1992)を参照)を用いて処理された。結果として生じるスペクトル(吸収(a.u.)対エネルギー(eV)、図示されず)が得られ、そこではエネルギー尺度は、金属でのCr
K端のエネルギー(5989.0eV)に関連する。両材料についての前端領域のピークは、ほとんど同じで、複合材料でのクロムの平均酸化状態が大部分3であったことを示した。
【0112】
Cr K端EXAFSスペクトルのそれぞれは、実施例10と関連する上記と同様の方法で処理された。複合材料および比較材料のそれぞれについて、3.6 Å-1と13.5 Å-1の間の限定k空間範囲にわたるk3χ(k) のフーリエ変換は、図9にグラフで示されるとおり、原子間距離の関数、R(Å)として、対応する放射状構造関数(FT規模)を提供するために実施された(そこでは、複合材料Vおよび比較材料はそれぞれ「V」および「CM」として示される)。複合材料および比較材料のFEFF適合解析の理論的結果のグラフを用いた表示はまた、図9にも示される(そこでは、複合材料Vへの適合および比較材料への適合は、それぞれ「V適合」および「CM適合」として示される)。
【0113】
複合材料に関して、スペクトルは、Cr原子の近くの最近接配位殻の寄与を表す3つの突出したピークを示す。三方晶結晶構造を持つ比較材料に関しては、スペクトルは、4Å以下の半径でのCr原子の近くの最近接配位殻の寄与を表す3つの突出したピークを示す(C.Engemannその他著、Chemical Phys.237,471(1998)を参照)。Cr原子の近くの最近接配位殻の寄与を表すこれらのスペクトルの第1ピークは、かなり類似している。もっと離れた殻の強いピークの特性は、両方のスペクトルにはない。結果は、複合材料のCrは、大部分結晶Cr2O3の形態であることを例示すると考えられる。
【0114】
Cr2O3結晶構造において、Cr原子は、第1配位殻の6つの酸素原子(3つは1.96Åおよび3つは2.01Å)
および第2配位殻の4つのCr原子(1つは2.65Åおよび3つは2.88Å)に8面体配位され、酸素およびCr近接物のさらなる代わりの殻がある。FEFF適合解析は、最大4.0Åのすべての単独および重要な多重散乱経路を用いて、複合材料および比較材料について実行され、結果的に以下の表8に記載される構造パラメーターが得られ、そこでは、Za-Zbは、中心吸収体および散乱原子(または経路)相関関係を表し、CNは、配位数であり、Rは、原子間距離であり、σ2は、デバイ‐ウォラー障害パラメーターを表し、減少係数は、6/5.0315である。
【表8】

【0115】
複合材料と比較材料のEXAFSスペクトルの間の十分な適合は、図9に示されるとおり、最大2Å以上、特に1.98Åあたりの領域のRで3.6Å-1と13.5Å-1の間のk空間範囲で得られた。複合材料と比較材料についてのFEFF適合解析データの間の十分な適合が得られ、表8に示されるとおり、前者は、1.9857Åの距離で6つの酸素原子を示した。
【0116】
本実施例の結果は、複合材料の中心Crが、比較材料の中心のCrより、理想的な8面体CrO6に近いという結論と一致すると考えられる。
【実施例12】
【0117】
実施例12:複合材料および比較材料の構造解析
複合材料IIIおよび3つの比較材料、V2O3、VO2および V2O5は、共結晶構造を特徴づけるために、VK端拡大X線吸収微細構造(EXAFS)を用いて分析された。結果として生じるスペクトル(吸収(a.u.)対エネルギー(eV)、図示されず)が得られ、そこではエネルギー尺度は、金属でのVK端のエネルギー(5465.0eV)に関連する。両材料についての前端領域のピークは、ほとんど同じで、複合材料でのクロムの平均原子価状態が大部分3であったことを示した。
【0118】
複合材料に関して、スペクトルは、V原子の近くの最近接配位殻の寄与を表す3つの突出したピークを示した。三方晶結晶構造を持つV2O3比較材料に関しては、スペクトルはまた、V原子の近くの最近接配位殻の寄与を表す3つの突出したピークも示した。複合材料のスペクトルは、その他の比較材料のいずれかのスペクトルより、V2O3比較材料のスペクトルに類似していた。もっと離れた殻の強いピークの特性は、複合材料についてのスペクトルおよびV2O3比較材料についてのスペクトルの両方にはなかった。結果は、複合材料のVは、大部分結晶V2O3の形態であることを例示すると考えられる。
【0119】
複合材料とV2O3比較材料と関連するVK端EXAFSスペクトルは、実施例11と関連する上記と同様の方法で処理された。複合材料およびV2O3比較材料のそれぞれについて、3.95Å-1と12.55Å-1の間の限定k空間範囲にわたるk3χ(k)
のフーリエ変換は、図10にグラフで示されるとおり、原子間距離の関数、R(Å)として、対応する放射状構造関数(FT規模)を提供するために実施された(そこでは、複合材料IIIおよびV2O3比較材料はそれぞれ「III」および「CM」として示される)。複合材料およびV2O3比較材料のFEFF適合解析の理論的結果のグラフを用いた表示はまた、図10にも示される(そこでは、複合材料IIIへの適合およびV2O3比較材料への適合は、それぞれ「III適合」および「CM適合」として示される)。
【0120】
FEFF適合解析は、複合材料およびV2O3比較材料について実行され、結果的に以下の表9に記載される構造パラメーターが得られ、そこでは、Za-Zbは、中心吸収体および散乱原子(または経路)相関関係を表し、CNは、配位数であり、Rは、原子間距離であり、σ2は、デバイ‐ウォラー障害パラメーターを表し、減少係数は、6/5.0315である。
【表9】

【0121】
複合材料と比較材料のEXAFSスペクトルの間の十分な適合は、図10に示されるとおり、約2Å、特に1.99Åの領域のRで3.95Å-1と12.55Å-1の間のk空間範囲で得られた。複合材料と比較材料についてのFEFF適合解析データの間の十分な適合が得られ、表9に示されるとおり、前者は、1.9996Åの距離で6つの酸素原子を示した。
【0122】
本実施例の結果は、複合材料の中心Vが、比較材料の中心のVより、理想的な8面体VO6に近いという結論と一致すると考えられる。
【実施例13】
【0123】
実施例13:複合材料および比較材料の構造解析
複合材料IIおよび2つの比較材料、ルチルTiO2および
鋭錐石TiO2は、TiK端拡大X線吸収微細構造(EXAFS)を用いて分析された。複合材料IIについての、結果として生じるスペクトル(吸収(a.u.)対エネルギー(eV)、図示されず)は、約4950eVから約5100eVの範囲でピークを示し、それは、ルチルTiO2と関連する範囲に類似していた。
【実施例14】
【0124】
実施例14:複合材料および比較材料の構造解析
一般的に、隣接酸素原子に関する陽イオンの動きに起因する振動モードは、酸素ホストマトリックスでの陽イオンの点群対称性に影響されやすい。最密酸素原子の格子での陽イオンの局所環境は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光を用いて研究することができる。
【0125】
複合材料IIおよび比較材料、LiFePO4/Cは、室温でFTIR分光を用いて分析された。400cm-1から4000cm-1までの周波数範囲での複合材料について結果として生じるスペクトル(T(%)対周波数(cm-1))は、図11Aに示される。複合材料および400cm-1から1500cm-1までの周波数範囲での比較材料について結果として生じるスペクトル(T(%)対周波数(cm-1))は、図11Bに示される(そこでは、複合材料IIおよび比較材料は、「II」および「CM」としてそれぞれ示される)。
【0126】
無機酸化物について、8面体間隔(例えばLiO6でのアルカリ金属陽イオンなど)での陽イオンの共振周波数は、200cm-1から400cm-1までの周波数範囲にある。オルトリン酸塩について、陽イオンの共振周波数は、520cm-1から580cm-1まで、および1000cm-1から1060cm-1までのそれぞれの2つの主要な周波数範囲にある。複合材料についてのスペクトルは、800cm-1から1200cm-1までの周波数範囲に5つのピークを示し、それはPO4陰イオンの存在を確認すると考えられる。このスペクトルは、2500cm-1から3500cm-1までの周波数での明らかな吸収ピークを示さず、それはFe(OH)2が複合材料に存在しないと考えられる。約547cm-1でのピークおよび約638cm-1でのピークは、異なる結合距離のあるP−O−P群の伸縮振動に起因する、ならびに約966cm-1でのピークは、P−O−P曲げモードに起因すると考えられる。さらに、約463cm-1でのピークは、O−P−OおよびO−P−O群の曲げ調波に起因し、約1043cm-1でのピークは、金属‐(PO43-リンク振動に起因すると考えられる。図11Bに示されるスペクトルは、比較材料のその位置に関して、複合材料についてのシグナルピーク位置の重要な変位を示し、それはこれらの異なる材料の構造での違いを示すと考えられる。
【実施例15】
【0127】
実施例15:複合材料からなる電気化学的可逆半電池およびその性能
ボタン型電気化学的可逆半電池は、さまざまな異なる複合材料、すなわちLiFePO4/TiO2/C、LiFePO4/V2O3/C、LiFePO4/MnO/C、LiFePO4/CoO
/C、LiFePO4/NiO/C、LiFePO4・CuO/C、LiFePO4・ZnO/C、LiFePO4・MgO/C、LiFePO4・Al2O3/CおよびLiFePO4・SiO2/Cを使用して、また比較材料、純粋LiFePO4/Cを使用して実施例8に関連して記載されるのと同様の方法で準備された。本書に記載されるボタン型電気化学的可逆半電池のそれぞれは、室温で、充放電数サイクルにわたる関連の充放電特性を決定するために試験された。以下のパラメーターが使用された。それぞれ2.5Vから4.3Vまでの範囲の印加充電圧および印加放電圧、それぞれC/10に設定される充電速度および放電速度ならびに室温条件。0.2Cの電流密度での初回の充放電サイクルと関連する充電容量(mAh/g)および放電容量(mAh/g)は、決定された。
【0128】
比較材料から成る半電池について得られる結果(電位(V)対容量(mAh/g)は、図12にグラフを使って示され、初回の充電容量は約70mAh/gであり、初回放電容量は約55mAh/gである。複合材料のそれぞれから成る半電池について得られる初回放電容量(mAh/g)は、図13にグラフを使って示され、そこでは、各複合材料は、その酸化物成分によって簡単に特定され、初回放電容量は、約100mAh/g(LiFePO4・Al2O3/Cについて)から約145mAh/g(LiFePO4・TiO2/C)または約155mAh/g(LiFePO4・MnO/C)までのどこかである。複合材料のそれぞれは、比較材料より大きな結晶ユニットおよび比較材料より大きな伝導性を特徴とし、そのためリチウムイオンの動きおよび複合材料のそれぞれと関連する電子移動過程は、比較材料と関連するものより速いと考えられる。当該違いは、比較材料と関連するものより大きな複合材料のそれぞれと関連する放電容量を結果的にもたらすと考えられる。当該違いは、より高い充放電速度が用いられるとき、類似した結果をもたらすであろうと考えられる。
【0129】
複合材料から成る半電池のそれぞれ(時には複合材料半電池といわれる)および比較電池から成る半電池(時には比較材料半電池といわれる)は、C/10の速度で、定電流充放電が行われた。半電池の分極が小さかったにもかかわらず、測定電圧が平衡値に近かったことを示唆すること、定電流測定での高低の充電速度での傾斜した電圧曲線は、動力学的限界に普通起因する。本書での定電流測定は、平衡不定比性の限度に関して決定的な情報を提供するために用いられる。
【0130】
「見本」複合材料半電池および比較材料半電池の定電流充放電の結果(電位(V)対正規化容量(%))は、図14(放電)および図15(充電)にグラフを使用して示される(そこでは、「見本」複合材料および比較材料は「見本」および「CM」として、それぞれ示される)。ここで、「見本」複合材料半電池についての結果は、上記の複合材料半電池のそれぞれについての結果の平均に基づく。放電曲線の平坦域と関連する電圧は、比較材料半電池についてより、見本複合材料半電池についてのほうがわずかに高く、充電曲線の平坦域と関連する電圧は、比較材料半電池についてより、見本複合材料半電池についてのほうがわずかに低い。見本複合材料半電池についての放電曲線の平坦域は、上昇現象を示すが、図14の差し込み図で見ることができるとおり、比較材料半電池についての放電曲線の平坦域はそれを示さない。見本複合材料半電池についての充電曲線の平坦域は、下降現象を示すが、図15の差し込み図で見ることができるとおり、比較材料半電池についての充電曲線の平坦域はそれを示さない。これらの比較上の違いは、2種類の電池の間の分極の違いにではなく、2種類の電池の間の熱力学の違いに起因し、見本複合材料半電池と関連する開回路電圧(OCV)が反映されるこれらの後者の違いは、比較材料半電池と関連するOCVより0.01V高かったと考えられる。
【0131】
見本複合材料半電池と関連する充放電曲線のほぼ定電圧平坦域は、比較材料半電池についてのものより広い。見本複合材料半電池についてのこれらの平坦域のより大きな相対幅は、半電池で使用される材料での共結晶化を示すと考えられる。これらの平坦域の幅は、当該共結晶化と関連する組成範囲の幅を示唆する。このことは、見本複合材料半電池については、半電池の複合材料には共結晶化と関連する広い組成範囲があることを示唆すると考えられる。
【0132】
本実施例の結果は、比較材料半電池においてより高いC速度が複合材料半電池の放電において使用される可能性があるということ、比較材料半電池からより、高い上昇現象を見せる電圧またはパワーが複合材料半電池から放電される可能性があるということ、ならびに比較材料半電池の充電において、比較材料半電池の充電においてより、下降現象を見せる低い電圧またはパワーが、複合材料半電池の充電において使用される可能性があるという結論と一致すると考えられる。これらの違いは、半電池に使用される複合材料の共結晶ユニットの電気化学的挙動に起因すると考えられる。
【0133】
本書に記載される複合材料は、金属酸化物成分で単にドープ処理されるか、被覆されるかの両方またはそのいずれかであるLiFePO4などの比較材料とは異なると考えられる。例えば、当該複合材料は、当該比較材料に対して、イオン拡散性、電子伝導性、充放電特性あるいは格子安定性などの特性を高めてきたと考えられる。本書に記載される複合材料は、電気化学的応用において特に有用であると考えられる。例えば、当該複合材料で作られる電極から成る再充電可能リチウム電池などの電気化学的電池、センサーまたはバッテリーは、十分な充放電容量、十分な充放電容量保持と十分な充放電速度能力のすべてまたはそのいずれかを提供する可能性がある。
【0134】
本書で適用できる可能性のある非常に多くの構造だけでなく、さまざまな修正、過程が明らかになる。どんな特定の理解事項、確信、理論、基礎を成す想定と効果的または予言的実施例のすべてあるいはそのいずれかも限定するものではないことは当然のことであるが、さまざまな態様、特徴または実施形態は、理解事項、確信、理論、基礎を成す想定と効果的または予言的実施例のすべてあるいはそのいずれかに関して説明または記載された可能性がある。さまざまな様態および特徴が本書のさまざまな実施形態および特定の実施例に関して記載された可能性があるが、同上のもののどれも、本適用と関連する可能性のある添付請求項またはその他の請求項の最大限の範囲に関して限定するものではないのは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】界面活性剤によって同上のものが促進される金属およびリン酸塩から成る溶液の反応の概略図である。図1Aおよび図1Bは、本書では図1とまとめて呼ばれる可能性がある。
【図2】前駆体粒子の概略図である。
【図3A】前駆体粒子の処理中に形成される可能性のある物質の構造の概略図である。
【図3B】前駆体粒子の処理中に形成される可能性のある物質の構造の概略図である。
【図3C】前駆体粒子の処理中に形成される可能性のある物質の構造の概略図である。
【図4A】実施例5にさらに記載されるとおり、3つの異なる複合材料および1つの比較材料の粒子の表面形態をそれぞれ示す写真である。
【図4B】実施例5にさらに記載されるとおり、3つの異なる複合材料および1つの比較材料の粒子の表面形態をそれぞれ示す写真である。
【図4C】実施例5にさらに記載されるとおり、3つの異なる複合材料および1つの比較材料の粒子の表面形態をそれぞれ示す写真である。
【図4D】実施例5にさらに記載されるとおり、図4Cに示される複合材料のEDSスペクトルのグラフ表示である。
【図4E】実施例5にさらに記載されるとおり、3つの異なる複合材料および1つの比較材料の粒子の表面形態をそれぞれ示す写真である。
【図5A】本書にさらに記載されるとおり、実施例7に関連して得られるサイクリック・ボルタモグラムのグラフ表示である。図5Aおよび図5Bは、本書では図5とまとめて呼ばれる可能性がある。
【図5B】本書にさらに記載されるとおり、実施例7に関連して得られるサイクリック・ボルタモグラムのグラフ表示である。図5Aおよび図5Bは、本書では図5とまとめて呼ばれる可能性がある。
【図6】実施例9にさらに記載されるとおり、2つの複合材料および1つの比較材料に関連して得られる回析パターンのグラフ表示である。
【図7】実施例10にさらに記載されるとおり、2つの複合材料および1つの比較材料に関連して得られるX線吸収スペクトル(吸収対エネルギー(eV))のグラフ表示であり、その拡大部分は差し込み図に見られる。
【図8】実施例10にさらに記載されるとおり、LiFePO4(第1ピークのみ示す)のFEFF適合解析の理論的結果のグラフ表示を含む2つの複合材料および1つの比較材料に関連して得られる、原子間距離、R(Å)、の関数としての放射状構造関数(FT規模)のグラフ表示である。
【図9】実施例11にさらに記載されるとおり、複合材料および比較材料のFEFF適合解析の理論的結果のグラフ表示を含む、2つの複合材料および1つの比較材料に関連して得られる原子間距離、R(Å)、の関数としての放射状構造関数(FT規模)のグラフ表示である。
【図10】実施例12にさらに記載されるとおり、複合材料および比較材料のFEFF適合解析の理論的結果のグラフ表示を含む、2つの複合材料および1つの比較材料に関連して得られる、原子間距離、R(Å)の関数としての放射状構造関数(FT規模)のグラフ表示である。
【図11A】実施例14にさらに記載されるとおり、特定の周波数範囲での複合材料に関連して得られるフーリエ変換赤外線スペクトラム(透過率(%)対周波数(cm-1))のグラフ表示である。
【図11B】特定の周波数範囲での複合材料および比較材料に関連して得られるフーリエ変換赤外線スペクトラム(透過率(%)対周波数(cm-1))のグラフ表示である。
【図12】実施例15にさらに記載されるとおり、比較材料から成る半電池に関連して得られる充放電結果(電位(V)対容量(mAh/g))のグラフ表示である。
【図13】実施例15にさらに記載されるとおり、異なる複合材料から成るいくつかの半電池に関連して得られる初回の放電容量(mAh/g)のグラフ表示である。
【図14】実施例15にさらに記載されるとおり、モデル複合材料から成る半電池および比較材料から成る半電池に関連して得られる放電結果(電位(V)対正規化容量(%))のグラフ表示であり、その拡大部分は差し込み図に見られる。
【図15】実施例15にさらに記載されるとおり、モデル複合材料から成る半電池および比較材料から成る半電池に関連して得られる充電結果(電位(V)対正規化容量(%))のグラフ表示であり、その拡大部分は差し込み図に見られる。
【符号の説明】
【0136】
10 金属粒子
12 殻
20 マトリックス部分
22 境界部分
24 最内層
26 最外層
30 ポリマー鎖
32 8面体構造
34 面体構造
36 酸素原子
38 イオン
40 共結晶構造
42 マトリックス共結晶部分
44 境界部分
46 炭素粒子
48 共結晶構造
50 複合材料
52 暗い部分
56 外側部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般的公式MyXO4によって表される材料を備え、Mは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表し、Xは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、Oは酸素を表し、yは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、
前記材料は、AxMyXO4を形成するためにイオンAをインターカレートすることができ、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、xは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、
遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物を備え、
前記材料および前記酸化物は、共結晶構造であることを特徴とする電気化学的酸化還元反応で用いる組成。
【請求項2】
一般的公式AxMyXO4によって表される材料を備え、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、Mは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表し、Xは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、Oは酸素を表し、xは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、yは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、
遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物を備え、
前記材料および前記酸化物は、共結晶構造であることを特徴とする電気化学的酸化還元反応で用いる組成。
【請求項3】
リチウム、ソジウムおよびカリウムから選択される少なくとも1つの元素を表すことを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項4】
第一周期遷移金属元素から選択される少なくとも1つの元素を表すことを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項5】
リンおよびヒ素から選択される少なくとも1つの元素を表すことを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項6】
前記酸化物は、第一周期遷移金属、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの元素の酸化物であることを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項7】
前記酸化物は、前記組成に対して約0.1モルパーセント未満またはそれに等しいことを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項8】
前記一般的公式において、Aは、アルカリ金属元素から選択される少なくとも1つの元素であり、Mは、遷移金属元素から選択される少なくとも1つの元素であり、Xは、リンおよびヒ素から選択される少なくとも1つの元素であることを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項9】
さらに炭素を備えることを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項10】
前記酸化物および前記材料のかなりの量は、共結晶部分を形成し、前記酸化物の追加量は、少なくとも部分的に前記共結晶部分を取り囲む外側部分を形成することを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項11】
さらに炭素を備え、前記酸化物および前記材料のかなりの量は、共結晶部分を形成し、前記酸化物の追加量は、少なくとも部分的に前記共結晶部分を取り囲む外側部分を形成し、前記炭素は、少なくとも部分的に前記外側部分を取り囲むことを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項12】
前記組成は、ナノスケールであることを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項13】
Aは、リチウムおよびソジウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、Mは、マグネシウム、鉄、コバルトおよびニッケルから選択される少なくとも1つの元素M1およびチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、金、アンチモンおよびランタンから選択される少なくとも1つの元素M2を表し、M1およびM2は、同じではなく、Xは、リンを表し、Oは、酸素を表し、前記酸化物は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、金、アンチモンおよびランタンから選択される少なくとも1つの酸化物であることを特徴とする請求項1または2の組成。
【請求項14】
共結晶形態での前記材料および前記酸化物は、前記公式MyXO4・zBによって表され、前記Bは、前記酸化物を表し、zは、約0.1未満またはそれに等しいことを特徴とする請求項1の組成。
【請求項15】
共結晶形態での前記材料および前記酸化物は、前記公式AxMyXO4・zBによって表され、前記Bは、前記酸化物を表し、zは、約0.1未満またはそれに等しいことを特徴とする請求項2の組成。
【請求項16】
請求項1または2の組成を備えることを特徴とする電極。
【請求項17】
請求項16の電極を備えることを特徴とする電気化学電池。
【請求項18】
一般的公式MyXO4によって表される材料を備え、Mは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表し、Xは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、Oは酸素を表し、yは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、
前記材料は、AxMyXO4を形成するためにイオンAをインターカレートすることができ、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、xは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、
遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物を備え、
前記組成の結晶構造単位の容積は、前記材料のみの結晶構造単位の容積より大きいことを特徴とする電気化学的酸化還元反応で用いる組成。
【請求項19】
一般的公式AxMyXO4によって表される材料を備え、前記一般公式において、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、Mは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表し、Xは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、Oは酸素を表し、xは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、yは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、
遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素の酸化物を備え、
前記組成の結晶構造単位の容積は、前記材料のみの結晶構造単位の容積より大きいことを特徴とする電気化学的酸化還元反応で用いる組成。
【請求項20】
Mから成る第一材料を結合すること、そこではMは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表し、Xから成る第二材料から成る溶液、そこではXは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、前記第二材料は、結果として生じる溶液を作り出すために、リン酸塩、ヒ酸塩、ケイ酸塩および流酸塩から選択される少なくとも1つの材料から同様になり、
前記結果として生じる溶液から粒子混合物を得ること、
半結晶粒子を得ること、
半結晶粒子混合物を作り出すために、遷移金属元素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの元素の酸化物で前記粒子混合物を挽くこと、
前駆体を提供するために、前記半結晶粒子混合物を乾燥させること、ならびに、
前記酸化物およびOが酸素を表し、yが約0.8から約1.2を含めてまでの数を表すMyXO4によって表される材料から成る組成を作り出すために前駆体を焼成することを備え、そこでは前記組成は、AxMyXO4を形成するためにイオンAをインターカレートすることができ、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、xは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表すことを特徴とする電気化学的酸化還元反応で用いる組成を準備する過程。
【請求項21】
Mから成る第一材料を結合すること、そこではMは、遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモンおよびビスマスから選択される少なくとも1つの元素を表し、Xから成る第二材料から成る溶液、そこではXは、リン、ヒ素、シリコンおよび硫黄から選択される少なくとも1つの元素を表し、前記第二材料は、結果として生じる溶液を作り出すために、リン酸塩、ヒ酸塩、ケイ酸塩および流酸塩から選択される少なくとも1つの材料から同様になり、イオンAからなる第三材料は、結果として生じる溶液を作り出すために、Aは、アルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、ホウ素およびアルミニウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、
前記結果として生じる溶液から粒子混合物を得ること、
半結晶粒子を得ること、
半結晶粒子混合物を作り出すために、遷移金属元素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムおよびシリコンから選択される少なくとも1つの元素の酸化物で前記粒子混合物を挽くこと、
前駆体を提供するために、前記半結晶粒子混合物を乾燥させること、ならびに、
前記酸化物およびAxMyXO4によって表される材料から成る組成を作り出すために前駆体を焼成することを備え、そこではOは酸素を表し、xは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表し、yは、約0.8から約1.2を含めてまでの数を表すことを特徴とする電気化学的酸化還元反応で用いる組成を準備する過程。
【請求項22】
前記結合することおよび前記得ることの少なくとも1つは、pHを調整することから成ることを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項23】
前記結合することは、第一溶液を作り出すために、まず前記第一材料および前記溶液を結合すること、その次に前記第一溶液および前記第三材料を結合することから成ることを特徴とする請求項21の過程。
【請求項24】
前記ミリングは、半結晶ナノスケール粒子混合物を作り出すのに十分であることを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項25】
前記前駆体を焼成することは、不活性ガスおよび不活性ガスで懸濁される炭素粒子の存在下で前記前駆体を焼成することから成ることを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項26】
還元剤を加えることからさらに成ることを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項27】
Aは、リチウム、ソジウムおよびカリウムから選択される少なくとも1つの元素を表すことを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項28】
Mは、第一周期遷移金属元素から選択する少なくとも1つの元素を表すことを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項29】
前記酸化物は、第一周期遷移金属元素およびマグネシウムから選択される少なくとも1つの酸化物であることを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項30】
前記組成での前記材料および前記酸化物は、共結晶であることを特徴とする請求項20または21の過程。
【請求項31】
前記組成は、ナノスケールであることを特徴とする請求項20または21の過程。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−311224(P2008−311224A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−128114(P2008−128114)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(508110010)アドバンスト リチウム エレクトロケミストリー カンパニー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2−1,Singhua Rd.,Taoyuan City,Taoyuan County,330,Taiwan
【Fターム(参考)】