説明

電気掃除機

【課題】使用者による吸込み口体の移動操作を最小限に抑制しつつ、吸込み口体を前進後退させて掃除をすることができる電気掃除機を提供する。
【解決手段】吸込み口体を動かすための操作体を、操作部に接続される第1の操作部材及びこの部材に対し軸方向に摺動自在に嵌合された第2の操作部材を有して伸縮自在に形成する。この操作体が伸びきった伸張状態及び操作体が縮まりきった収縮状態を検知する伸縮検知手段21を操作体に設ける。吸込み開口を有し操作体が接続された操作部の操作によって動かされる吸込み口体31に、回転可能な駆動輪及びこの駆動輪を回転駆動する正逆回転可能な自走用モータ44を有する駆動装置を取付ける。伸縮検知手段21での伸張状態と収縮状態の検知に基づいて自走用モータ44の回転を駆動輪制御部51で逆転させるようにしたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式の吸込み口体を備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
延長管の先端部に接続された吸込み口体の底面に駆動輪を設けるとともに、吸込み口体の前進・後退に合わせて回転方向が自動的に切換えられる駆動モータを有して駆動輪を回転駆動する駆動手段を吸込み口体に設けて、駆動輪の回転駆動により吸込み口体の前進及び後進を補助する構成の電気掃除機が、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来技術では、吸込み口体の前進と後退を検知する検知ローラが吸込み口体に取付けられていて、この検知ローラによる吸込み口体の移動方向の検知に基づいて駆動モータの回転方向が正転又は逆転されるように構成されている。
【0004】
したがって、特許文献1に記載の電気掃除機は、掃除機本体に至る集塵ホースの先端に接続された手元操作管を握った状態で、この手元操作管の先端部に延長管を介して接続された吸込み口体を、被掃除面である床面に沿って前進・後退させることで、掃除を行う構成である。この掃除操作では吸込み口体が駆動輪の回転駆動で前後に自走されるので、吸込み口体の操作力を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−339589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電気掃除機では、使用者自らが吸込み口体を押し引き操作しない限り、吸込み口体は一方向にのみ自走するだけで、前進及び後退の操作が繰り返し補助されることはない。そのため、掃除に際しては吸込み口体を押し引き操作する必要であるので、不便である、という課題がある。
【0007】
しかも、押し引き操作による吸込み口体の移動速度と吸込み口体の自走速度とが不一致となり易く、この不一致の程度が大きい場合、吸込み口体に対する前進及び後進の補助作用が制動力として働くので、吸込み口体を前進及び後退させる押し引き操作が重くなることがある、という課題がある。これを避けるために、自走する吸込み口体の動きに、使用者による吸込み口体の押し引き操作を適合させなければならない、という不便がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、使用者による吸込み口体の移動操作を最小限に抑制しつつ、吸込み口体を前進後退させて掃除をすることができる電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、吸込み口体を動かすための操作体を、操作部に接続される第1の操作部材及びこの部材に対し軸方向に摺動自在に嵌合された第2の操作部材を有して伸縮自在に形成し、この操作部材が伸びきった伸張状態及び操作部材が縮まりきった収縮状態を検知する伸縮検知手段を操作部材に設け、回転可能な駆動輪及びこの駆動輪を回転駆動する正逆回転可能な自走用モータを有する駆動装置を吸込み口体に取付け、伸縮検知手段での伸張状態と収縮状態の検知に基づいて自走用モータの回転を駆動輪制御部で逆転させるようにしたことを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、自走用モータにより正転及び逆転される駆動輪の回転に伴い吸込み口体が前進・後退され、この前後移動に追従して操作体が伸縮される。これとともに、この操作体が伸縮して伸張状態又は収縮状態になったことを伸縮検知手段が検出することに基づいて、駆動輪制御部が自走用モータの回転を、それまでの回転方向に対して逆転させる。それにより、操作部を大きく動かすことなく吸込み口体を前進・後退させて掃除をすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気掃除機によれば、使用者による吸込み口体の移動操作を最小限に抑制しつつ、吸込み口体を前進後退させて掃除をすることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るアップライト型の電気掃除機を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1の電気掃除機の吸込み口体が後退された使用状態を示す側面図である。(B)は図1の電気掃除機の吸込み口体が前進された使用状態を示す側面図である。
【図3】図1の電気掃除機が備える吸込み口体を示す底面図である。
【図4】(A)は図2(A)の状態で電気掃除機の一部を拡大して示す斜視図である。(B)は図2(B)の状態で電気掃除機の一部を拡大して示す斜視図である。
【図5】(A)は図2(A)の状態で延長管の一部を拡大して示す断面図である。(B)は図2(B)の状態で延長管の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】図1の電気掃除機の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1中符号1は例えばアップライト型の電気掃除機を示している。この電気掃除機1は、掃除機本体2と、ダストカップ4と、本体制御部6(図6参照)と、吸塵ホース9と、操作部10と、吸込み口体31を動かすための操作体例えば延長管11と、反転検出用の伸縮検知手段21(図6参照)と、吸込み口体31と、自走用の駆動輪41(図3参照)と、駆動装置43(図3参照)と、駆動輪制御部51(図3及び図6参照)等を具備している。
【0015】
掃除機本体2は縦長に形成されている。ダストカップ4は掃除機本体2の上下方向中間部に前方から着脱可能に取付けられている。掃除機本体2の下部に電動送風機5が内蔵されている。この電動送風機5に対してダストカップ4は上流側に配置されている。
【0016】
掃除機本体2に、本体制御部6(図6参照)、及び図示しないコードリール装置が内蔵されている。コードリール装置は、電気掃除機1の使用時に掃除機本体2の外部に引き出されて商用交流電源が供給されたコンセントに接続される電源コードを有している。掃除機本体2に電動送風機5をオン・オフするための開閉スイッチ7が設けられている。
【0017】
掃除機本体2はその上端部に延長管ホルダ部8を有している。この延長管ホルダ部8は例えば上向きに突出する筒状をなしていて、その上端は開口されている。又、掃除機本体2は、その後面部に、電動送風機5から排出された空気を掃除機本体2の外に放出するための排気部(図示しない)を有している。
【0018】
掃除機本体2はその下端に図示しない本体吸込み口を有し、この本体吸込み口は、掃除機本体2の後部に上下方向に延びて設けられた吸塵風路(図示しない)の下端に連通されている。この吸塵風路はダストカップ4にその上流側から連通されている。吸塵ホース9は蛇腹管からなり伸縮可能である。吸塵ホース9の一端部は前記吸塵風路に接続されている。この接続部側を除いて吸塵ホース9は掃除機本体2の上端部から外に引き出されている。したがって、ダストカップ4には、電動送風機5の運転に伴い吸塵風路を経由した含塵空気、又は、吸塵ホース9を経由した含塵空気が吸い込まれるようになっている。
【0019】
この吸塵ホース9の他端部に操作部10が連結されている。操作部10は、吸塵ホース9に連通する管部10a、及びこの管部10aの外周に突設されたハンドル部10bを有している。使用者はハンドル部10bを握って電気掃除機1を前後方向等に移動操作することができる。
【0020】
操作体をなす延長管11は、図5(A)(B)に示すように真っ直ぐな第1の操作部材例えば下流側管体として用いられる外管12と、同じく真っ直ぐな第2の操作部材例えば上流側管体として用いられる内管13とを、軸方向に摺動自在に嵌合して伸縮自在に形成されている。
【0021】
内管13は、図5(B)に示すように外管12から最大に引き出された突出位置と、図5(A)に示すように外管12に最大に押込まれた格納位置にわたって、外管12に対して円滑に摺動自在である。突出位置に内管13が配置されることで延長管11は延びきった伸張状態となる。格納位置に内管13が配置されることで延長管11は縮まりきった収縮状態となる。
【0022】
これら突出位置と格納位置への内管13の移動において、その中間位置で内管13の移動を段階的又は任意に調節するための係止手段、言い換えれば、延長管11の長さを調節する構成を、この延長管11は備えていない。したがって、内管13は既述の突出位置又は格納位置のいずれかのみを選択して外管12に対してその軸方向に摺動可能である。又、外管12及び内管13軸方向に直交する方向の断面は、両管が相対的に周方向に回動できないように非円筒形をなしている。
【0023】
延長管11の外管12の後端部(下流側端部)は、操作部10の管部10aの先端部(上流側端部)に着脱可能に嵌合されている。図1中符号15は、管部10aから外管12を外す場合に押込み操作されるホース着脱ボタンを示している。
【0024】
延長管11の内管13の先端部(上流側端部)は延長管ホルダ部8の内側に着脱可能に嵌合されている。内管13の先端部が延長管ホルダ部8に嵌合して保持されることによって、延長管11が図1等に示されるように掃除機本体2の上方に突出した状態に支持されている。この状態で内管13の先端部は延長管ホルダ部8で閉じられるようになっている。
【0025】
したがって、こうした通常の状態で延長管11及びこれに接続された吸塵ホース9を通しての吸塵が妨げられて、後述の吸込み口体31を経由しての吸塵がなされる。又、延長管11が延長管ホルダ部8から外された状態では、この延長管11の先端開口、又は延長管11が外された状態の吸塵ホース9の先端開口を通しての吸塵がなされる。この場合、吸込み口体31を経由する吸塵よりも吸塵ホース9を経由する吸塵の方が、風路抵抗が小さいので、主として吸塵ホース9を経由する吸塵がなされる。
【0026】
延長管11に伸縮検知手段21が設けられている。伸縮検知手段21は、延長管11が伸びきった伸張状態及び延長管11が縮まりきった収縮状態を検知するために設けられていて、例えば図5(A)(B)に示すように第1の検知スイッチ22と、第2の検知スイッチ23と、スイッチ操作部24を備えて構成されている。
【0027】
第1の検知スイッチ22と第2の検知スイッチ23は、いずれも常開の接点構造を有した開閉スイッチであって、内管13にその軸方向に離れて取付けられている。スイッチ操作部24は外管12に設けられている。詳しくは、内管13が前記突出位置に引き出された状態で、スイッチ操作部24で押される位置に第1の検知スイッチ22が配設されて、内管13が前記格納位置に押込まれた状態で、スイッチ操作部24で押される位置に第2の検知スイッチ23が配設されている。
【0028】
そのため、図5(B)に示すように内管13が前記突出位置に引き出された状態で、第1の検知スイッチ22はスイッチ操作部24で押されて閉じられるとともに、第2の検知スイッチ23は、スイッチ操作部24の下方に離れて開かれた状態を保持する。又、図5(A)に示すように内管13が前記格納位置に押込まれた状態で、第1の検知スイッチ22がスイッチ操作部24の上方に離れて開かれた状態を保持するとともに、第2の検知スイッチ23はスイッチ操作部24で押されて閉じる。これら第1の検知スイッチ22と第2の検知スイッチ23の検知情報は本体制御部6に入力されるようになっている。
【0029】
図3に示すように吸込み口体31は、家屋の床面(被掃除面)の掃除に適するものであって、正面から見て左右方向の幅寸法が前後方向の寸法より長く形成された吸込みケース32を備えている。この吸込みケース32の底壁32aに幅方向に延びる吸込み開口33が形成されている。吸込みケース32はその中央部に後方向に突出する一対の本体連結部32bを有している。これらの本体連結部32bに掃除機本体2の下端部2aが図示しない継手機構を介して前後方向に回動可能に連結されている。
【0030】
したがって、掃除機本体2は吸込み口体31の上に前後方向に回動可能に連結されていて、図1に示すように吸込み口体31上に略垂直に起きた起立位置と、図2(A)(B)に示すように後方に斜めに倒れた使用位置とにわたって前記継手機構を中心に移動可能である。前記継手機構はその内部を含塵気流が流通可能に構成されている。この継手機構を介して吸込み口体31内部の含塵気流が流通する通気室と掃除機本体2の前記吸塵風路とが連通されている。吸込み開口33は前記通気室にその下側から臨んで設けられている。
【0031】
吸込み口体31の前記通気室に回転清掃体34(図3参照)が回転自在に収容されている。回転清掃体34の下端部は吸込み開口33を通って底壁32aの下側に突出されている。この回転清掃体34は、例えば、清掃体回転軸の外周に清掃部材として複数の清掃ブレードを取付けた構成であるが、清掃体回転軸の外周に清掃部材としてブラシ毛を取付けた構成でもよく、或いは、清掃体回転軸の外周に清掃ブレードとブラシ毛を交互に取付けた構成であってもよい。回転清掃体34は省略することもできる。
【0032】
図3に示すように吸込み口体31の底壁32aに一対の前側車輪35が取付けられているとともに、本体連結部32bの夫々に後側車輪36が取付けられている。これら前側車輪35と後側車輪36によって、底壁32aと被掃除面である床面との間の距離が設定されている。
【0033】
吸込み口体31内部の含塵気流が流通する通気室から隔離されて、床面検知手段37(図3参照)が吸込みケース32に設けられている。床面検知手段37は、例えば底壁32aから突出する検知ローラ37aと、この検知ローラ37aを下方に付勢する図示しないばねと、検知ローラ37aがばねで所定量以上動くか否かで開閉される図示しないスイッチを備えている。床面検知手段37のスイッチは、被掃除面がフローリングである場合にオフ状態を保持し、被掃除面床面が絨毯面である場合にオンされる。この床面検知手段37の検知情報つまり被掃除面が絨毯面であるかどうかの検知情報は、後述する駆動輪制御部51に送信される。
【0034】
吸込み口体31の前後方向への移動を補助する自走用の駆動輪41(図3参照)が、吸込み口体31内部の含塵気流が流通する通気室から隔離されて、吸込み口体31の底壁32aに回転可能に取付けられている。駆動輪41は例えば左右一対用いられている。これらの駆動軸41は、共通の回転軸41aに連結されていて、吸込み開口33の後側(図3では上側)で、かつ、前側車輪35間に配設されている。駆動輪41の外周は、被掃除面に対するグリップ力をより大きくするために、ゴム製となっているだけではなく、凹凸を有して形成されている。底壁32aに対する駆動輪41の突出高さは、底壁32aに対する前側車輪35の突出高さと略同じである。
【0035】
図3に示すように駆動輪41を回転駆動するための駆動装置43が吸込み口体31に取付けられている。駆動装置43は、吸込み口体31内部の含塵気流が流通する通気室から隔離されて、吸込みケース32の後部に内蔵されている。
【0036】
この駆動装置43は、例えば直流モータからなる自走用モータ44と、伝動機構一例としては歯車列45とを備えている。自走用モータ44のモータ軸44aは正逆回転可能である。歯車列45の入力歯車45aは自走用モータ44のモータ軸44aに連結され、歯車列45の出力歯車45bは前記回転軸41aに連結されている。
【0037】
更に、出力歯車45bに中間歯車46を介して清掃体駆動歯車47が接続されている。この清掃体駆動歯車47は回転清掃体34の清掃体回転軸に連結されている。そのため、駆動輪41の回転に回転清掃体34は連動し、この回転清掃体34は駆動輪41と同方向に回転駆動され、かつ、駆動輪41より高速で回転されるようになっている。したがって、本実施形態の場合、自走用モータ44は、回転清掃体34を回転駆動する清掃体モータを兼ねている。
【0038】
駆動輪制御部51は、吸込み口体31内部の含塵気流が流通する通気室から隔離されて、吸込みケース32の後部に内蔵されている。この駆動輪制御部51は、第1制御部と第2制御部を有している。第1制御部は、前記伸縮検知手段21の検知情報に基づいて自走用モータ44の回転方向を逆転するとともに、電動送風機5の運転停止に基づき延長管11が収縮状態となるように自走用モータ44の回転方向を制御するように構成されている。第2制御部は、前記床面検知手段37の検知情報に基づいて自走用モータ44の回転速度を変化させる制御を行うように構成されている。
【0039】
図6は前記構成を備えた電気掃除機1の電気的構成を示すブロック図である。この図6中符号53はヒューズを示し、又、符号54は本体制御部6及び駆動輪制御部51に対する電源供給線を示し、更に、符号55は本体制御部6と駆動輪制御部51とを接続した信号線を示している。
【0040】
この図6に示すように電動送風機5と本体制御部6は、開閉スイッチ7の負荷側で並列接続されているとともに、本体制御部6と駆動輪制御部51は、開閉スイッチ7の電源側に電源供給線54で接続されていて互に並列に接続されている。又、本体制御部6と駆動輪制御部51はいずれも交流を直流に変換するコンバータ回路を備えている。
【0041】
電気掃除機1が格納された状態など非使用状態では、図1及び図4(A)に示すように収縮状態にある延長管11が接続された掃除機本体2は、吸込み口体31の真上に配置されている。この状態から掃除場所に電気掃除機1が移動されて掃除場所の掃除をする場合、延長管11が接続された掃除機本体2とともに吸込み口体31を前後方向に動かすことによって掃除ができる。
【0042】
この場合、まず、掃除機本体2から引き出された電源コードがコンセントに差し込まれることにより、本体制御部6と駆動輪制御部51が通電状態になる。この初期状態では既述のように延長管11は収縮された状態にあるので、伸縮検知手段21の第2の検知スイッチ23が図5(A)に示すように外管12のスイッチ操作部24で押されて閉じている。
【0043】
この状態で、開閉スイッチ7が押されてオンされると、本体制御部6の第1制御部により伸縮検知手段21の検知情報が読み込まれる。それに従い、第1制御部は、自走用モータ44を正転させる制御信号を駆動輪制御部51に送出する。それにより、駆動輪制御部51が自走用モータ44の回転軸を正転させる制御をするので、自走用モータ44が正転方向に回転駆動され、それに伴い歯車列45を介して駆動輪41が図2(A)中反時計回りに回転駆動される。これとともに、回転清掃体34も反時計回りに回転駆動される。
【0044】
そのため、吸込み口体31が前方へ自走して移動される。この場合、使用者は、操作部10のハンドル部10bを軽く握っているだけで、格別に前方へ押し動かす操作を要しない。こうした吸込み口体31の前方への自走(前進)により、この吸込み口体31とハンドル部10bとの距離が変わるに伴い、吸込み口体31の前進に追従して延長管11の内管13が外管12から引き出される。それにより、延長管11が伸張し、かつ、相対的に掃除機本体2及び延長管11の傾きが大きくなる。
【0045】
こうした伸張により、伸縮検知手段21の第2の検知スイッチ23は外管12のスイッチ操作部24から外れてオフ状態となる。この後、延長管11が伸びきった状態になると、第1の検知スイッチ22がスイッチ操作部24に押されてオンされる。こうした伸縮検知手段21の状態を図5(B)で示すとともに、そのときの電気掃除機1の傾き状態を図2(B)に示す。
【0046】
それにより、伸縮検知手段21の検知情報を読み込む本体制御部6は、その第1制御部によって、自走用モータ44の回転方向をそれまでとは逆方向に回転させる制御信号を駆動輪制御部51に送出する。そのため、駆動輪制御部51が自走用モータ44のモータ軸44aを逆転させる制御をして、自走用モータ44が逆方向に回転駆動されるに伴い、歯車列45を介して駆動輪41が図2(B)中時計回りに回転駆動される。これとともに、回転清掃体34も時計回りに回転駆動される。
【0047】
したがって、吸込み口体31が後方へ自走して移動される。この場合、使用者は、操作部10のハンドル部10bを軽く握っているだけで、格別に後方へ引き戻す操作を要しない。こうした吸込み口体31の後方への自走(後退)により、この吸込み口体31とハンドル部10bとの距離が変わるに伴い、吸込み口体31の後退に追従して延長管11の内管13が外管12に押込まれる。それにより、延長管11が短くなり、かつ、相対的に掃除機本体2及び延長管11の傾きが小さくなる。
【0048】
こうして延長管11の長さが短くなることより、伸縮検知手段21の第1の検知スイッチ22が外管12のスイッチ操作部24から外れてオフ状態となる。この後、図2(A)に示すように延長管11が縮まりきった状態になると、第2の検知スイッチ23がスイッチ操作部24に押されてオンされて、図5(A)の状態に戻る。
【0049】
したがって、この時点以降、開閉スイッチ7が切られるまで、吸込み口体31の前進・後退が自動的に繰り返される。
【0050】
以上のように自走用モータ44により正転及び逆転される駆動輪41の回転に伴い吸込み口体31が前進・後退される。そして、この前後移動に追従して延長管11が伸縮され、かつ、この延長管11の伸縮を伸縮検知手段21が検出することに基づいて、駆動輪制御部51が自走用モータ44の回転をそれまでの回転方向に対して逆転させるので、使用者は、操作部10のハンドル部10bを軽く握っているだけで、掃除場所を変える場合の他は、格別に前方へ大きく押し動かす操作や後方へ大きく引き動かす操作を要することなく、吸込み口体31を前進・後退させて掃除をすることができる。
【0051】
この場合、吸込み口体31の移動力は専ら駆動輪41の回転に依存している。しかも、回転清掃体34の回転も寄与している。そのため、使用者自らが積極的にハンドル部10bを押し引きしない限り、移動操作による吸込み口体31の移動速度と自走による吸込み口体31の移動速度が大きく隔たらないので、円滑に吸込み口体31を前進・後退させることができる。
【0052】
しかも、本実施形態のアップライト型の電気掃除機1は、吸込み口体31とともに、これよりも遥かに重量が重い掃除機本体2も一緒に前進・後退される。しかし、以上のような掃除形態によれば、吸込み口体31の前進・後退に伴い掃除機本体2の重さがハンドル部10bを握った使用者の手に大きく加わることが抑制されるので、手元への負担が軽減された状態で掃除をすることができる。
【0053】
前記掃除において、被掃除面が絨毯面である場合、床面検知手段37の検知ローラ37aが下方へより突出されて、この床面検知手段37は、被掃除面が絨毯面であることを検知し、その情報は駆動輪制御部51に送信される。それにより、駆動輪制御部51の第2制御部が、清掃体モータを兼ねた自走用モータ44の回転を低速に制御する。そのため、駆動輪41及び回転清掃体34が、共に絨毯面の抵抗に適合した速度で回転されながら、吸込み口体31が前後に往復移動を繰り返して掃除が行われる。
【0054】
又、被掃除面がフローリング面である場合、床面検知手段37がフローリング面を検知するので、清掃体モータを兼ねた自走用モータ44の回転が高速に制御されて、駆動輪41及び回転清掃体34が共にフローリング面の抵抗に適合した速度で回転されながら、吸込み口体31が前後に往復移動を繰り返して掃除が行われる。
【0055】
以上のように吸込み口体31の前進・後退を、被掃除面である床面の種類に適合させて掃除をすることができる。
【0056】
又、掃除の中断又は掃除を終了する場合は開閉スイッチ7がオフ操作される。そうすると、電動送風機5への通電は直ちに断たれるので、以下説明する収縮動作が終わるまで、電動送風機5の運転が継続して電力消費を伴うことがない。
【0057】
開閉スイッチ7がオフされ電動送風機5がオフされると、それに基づいて、本体制御部6は延長管11を初期状態にする信号を駆動輪制御部51に送信する。これにより、開閉スイッチ7がオフされた時点で、吸込み口体31が初期位置以外のいかなる移動位置にあっても、直ちに、駆動輪制御部51により、吸込み口体31を後退させる駆動力を駆動輪41に与えるように自走用モータ44の回転が制御されるので、図2(A)に示すように延長管11が収縮状態となって制御動作が完了する。
【0058】
そのため、掃除後に、延長管11を収縮状態にするための手間を要することなく、電気掃除機1をコンパクトな形態で格納することが可能である。
【0059】
本発明は前記一実施形態には制約されない。例えば、駆動輪制御部51は、開閉スイッチ7がオフされることに基づいて以下のように延長管11を初期状態に戻す制御をすることも可能である。
【0060】
つまり、操作体である延長管11が伸張途中の場合に電動送風機5がオフされることに基づいて、駆動輪制御部51は、延長管11を伸張状態(伸びきった状態)とした後に収縮状態(縮まりきった状態)となるようにする信号を駆動輪制御部51に送信する。これにより、この駆動輪制御部51により制御が完了した時点で、図2(A)に示すように延長管11が収縮した初期状態となるため、掃除後に、延長管11を収縮状態にするための手間を要することなく、電気掃除機1をコンパクトな形態で格納することが可能である。
【0061】
更に、開閉スイッチ7は掃除機本体2に設けることに代えて操作部10の例えばハンドル部10bに設けることができ、このようにすれば手元で電動送風機5のオン・オフができるので便利である。又、本発明は、キャニスタ型の電気掃除機等にも適用できる。しかも、延長管11の下流側管体13は掃除機本体2に分離できないように固定されていてもよい。
【0062】
又、前記一実施形態では、被掃除面の種類、言い換えれば、回転清掃体34の回転に対する抵抗を検知する床面検知手段37を、機械的に開閉するスイッチを用いた構成で実現したが、これに代えて、以下の電気的手段で構成することができる。つまり、自走用モータ44の駆動回路に電流センサを挿入し、このセンサが検出するモータ印加電流を、所定の閾値を有した比較器で比較することによって、被掃除面が絨毯面かそれ以外のフローリング面、畳面であるのかを判定し、この判定にしたがって床面による回転清掃体34に対する抵抗の大きさに適合させて、自走用モータ44の回転速度を低速又は高速に制御することも可能である。
【0063】
又、前記一実施形態では、伸縮検知手段21の第1の検知スイッチ22と第2の検知スイッチ23を内管(第2の操作部材)13に配設し、スイッチ操作部24を外管(第1の操作部材)12に設けたが、これらは逆に配設することも可能である。更に、第1、第2の検知スィツチを用いる場合、これらには非接触型のスイッチ、例えば磁気を利用して開閉動作されるリードスイッチなどの近接スイッチを用いることが可能である。
【0064】
又、前記各実施形態では、操作部が接続される操作体が延長管で形成された構成の電気掃除機に実施したが、本発明は、吸込み口体の上側に掃除機本体が連結され、この掃除機本体の上部に棒状の操作体が突設若しくは取外し可能に接続されていて、この操作体の上端部に操作部が接続された構成のアップライト型電気掃除機にも適用可能である。この電気掃除機の操作体は、操作部に接続される第1の操作部材とこれに摺動自在で掃除機本体に接続される第2の操作部材とで伸縮自在に形成されるが、これらの操作部材は吸塵風路として使用されるものではなく、それに伴い、操作部は第1実施形態のように電動送風機の上流側に配設されるものでもない。
【0065】
更に、本発明は、キャニスタ型の電気掃除機にも適用することが可能である、この場合、操作部は、掃除機本体に接続された吸塵ホースの先端部に形成される。
【符号の説明】
【0066】
1…電動送風機、2…掃除機本体、5…電装送風機、10…操作部、11…延長管(操作体)、12…外管(第1の操作部材)、13…内管(第2の操作部材)、21…伸縮検知手段、31…吸込み口体、33…吸込み開口、34…回転清掃体、37…床面検知手段、41…駆動輪、43…駆動装置、44…自走用モータ、51…駆動輪制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機が内蔵された掃除機本体と、
操作部と、
この操作部に接続される第1の操作部材及びこの第1の操作部材に対し軸方向に摺動自在に嵌合された第2の操作部材を有して伸縮自在に形成された操作体と、
この操作体に設けられて、前記操作体が伸びきった伸張状態及び前記延長管が縮まりきった収縮状態を検知する伸縮検知手段と、
吸込み開口を有し前記操作体が接続された前記操作部の操作によって動かされる吸込み口体と、
この吸込み口体に回転可能に取付けられた自走用の駆動輪と、
前記吸込み口体に取付けられ、前記駆動輪を回転駆動する正逆回転可能な自走用モータを有する駆動装置と、
前記伸縮検知手段による前記伸張状態と前記収縮状態の検知に基づいて前記自走用モータの回転を逆転させる駆動輪制御部と、
を具備することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記駆動輪制御部は、前記電動送風機がオンされた状態で前記伸縮検知手段の検知情報に基づいて前記操作体の前記収縮状態と前記伸張状態とが繰り返されるように前記自走用モータの回転方向を制御するとともに、前記電動送風機がオフされることに基づいて前記操作体を前記収縮状態となるように前記自走用モータの回転方向を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記駆動輪制御部は、前記電動送風機がオフされることに基づいて前記操作体の状態に拘らずこの操作体を前記収縮状態となるように前記自走用モータの回転方向を制御することを特徴とする請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記駆動輪制御部は、前記操作体が伸張途中の場合に、前記電動送風機がオフされることに基づいて前記操作体を前記伸張状態とした後にこの操作体を前記収縮状態となるように前記自走用モータの回転方向を制御することを特徴とする請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記吸込み口体に前記自走用モータに連動する回転清掃体を取付けるとともに、被掃除面が絨毯面であるのかどうかを検知する床面検知手段を備え、この床面検知手段が前記絨毯面を検知したことに基づいて、前記駆動輪制御部が前記自走用モータの回転を低速に制御することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記吸込み口体の上に前記掃除機本体が前後方向に回動可能に連結されているとともに、この掃除機本体の上部から前記操作体が突出され、この操作体の上端に前記操作部が接続されていることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のアップライト型の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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