説明

電気接続箱

【課題】ケースの防水性を確保しつつ、ケース近傍に配設されるワイヤーハーネスを安定して支持固定することができる、新規な構造の電気接続箱を提供すること。
【解決手段】ケース14において表面22を挟んで対向する外周面26aと外周面26bに二つの固定部28a,28bをそれぞれ突設すると共に、前記表面22において前記二つの固定部28a,28bの対向方向で一方の前記固定部28aから他方の前記固定部28bに向かって延びるハーネス収容溝38を設け、ワイヤーハーネス60を前記ハーネス収容溝38に嵌め入れ且つ各前記固定部28a,28bに固定することにより前記表面22に配設するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される電気接続箱に係り、特に、ワイヤーハーネスがケースに固定されるようになっている電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の電装系において電気接続箱が採用されており、車両に配設されたワイヤーハーネスがケース内部に収容された内部回路に接続されて、バッテリーから車載電装品等への効率的な電力分配が行われるようになっている。
【0003】
ところで、電気接続箱に接続されるワイヤーハーネスは、他部材との干渉や、ワイヤーハーネスへ及ぼされる外力により電気接続箱から離脱すること等を防止するために、電気接続箱のケースに固定されることが行われている。例えば、特開平9−18172号公報(特許文献1)に記載のとおり、ワイヤーハーネスに取り付けられた電線固定用のクリップを、電気接続箱のケースに設けられた係止孔に係合させて、ワイヤーハーネスを電気接続箱に固定する構造が広く採用されている。
【0004】
ところが、このような従来構造では、電気接続箱のケースに対して係合孔を設ける必要があり、電気接続箱の防水性の観点から問題があった。また、ワイヤーハーネスに設けられたクリップを電気接続箱の係合孔へ係合する固定構造では、点固定となってしまい、多数の電線が束ねられて構成されたワイヤーハーネスを十分な強度を持ってケースに位置決め固定することが出来なかった。
【0005】
なお、多数のクリップを用いて複数の固定点でワイヤーハーネスをケースに固定することも考えられるが、クリップが多くなると作業工程が煩雑になることに加えて、ケースに設けられる係合孔も増大して防水性の担保が一層難しくなる。また、複数の固定点間のワイヤーハーネスにある程度のたるみを持たせて配設する必要がある場合には、ワイヤーハーネスがたるみの範囲内で自由に移動可能であることから、他部材との干渉を十分に防止することが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−18172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ケースの防水性を確保しつつ、ケース近傍に配設されるワイヤーハーネスを安定して支持固定することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、ワイヤーハーネスを固定する固定部がケースに設けられた電気接続箱において、前記ケースの外周面には、前記ケースの表面を挟んだ対向位置に二つの前記固定部が突設されていると共に、前記ケースの表面において前記二つの固定部の対向方向で一方の前記固定部から他方の前記固定部に向かって延びるハーネス収容溝が設けられており、前記ワイヤーハーネスが前記ハーネス収容溝に嵌め入れられ且つ各前記固定部に固定されることにより前記ケース表面に配設されるようになっていることを、特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ケースの外周面に対向位置して設けられた2つの固定部でワイヤーハーネスが固定されると共に、ワイヤーハーネスにおいて2つの固定部の間の中間部分が、ケース表面に設けられたハーネス収容溝に嵌め入れられる。これにより、ワイヤーハーネスを3箇所でケースに固定して、移動を規制した状態で安定して固定することが出来る。特に、ワイヤーハーネスの中間部分はハーネス収容溝に嵌め入れるだけであることから、簡易な操作で、ワイヤーハーネスを電気接続箱に固定することが出来る。
【0010】
また、2つの固定部とハーネス収容溝は、何れもケースの本体部分に穴等を設けることなく形成することが出来る。これにより、電気接続箱の防水性を高度に確保しつつ、ワイヤーハーネスを電気接続箱に安定して固定することが出来る。
【0011】
特に、2つの固定部の間を延びるワイヤーハーネスの中間部分は、ワイヤーハーネスの強い剛性から、隙間無くケースに沿って配設することが難しい。従って、ワイヤーハーネスの中間部分に弛みが生じ易く、弛みの分だけ変位し易い。しかし、本発明によれば、ケースの表面にハーネス収容溝を形成してそこにワイヤーハーネスの中間部分を嵌まり込ませることによって、弛みを巧く吸収して位置決め保持することが出来る。
【0012】
さらに、弛みや変形による他部材との干渉が問題となるワイヤーハーネスの中間部分をハーネス収容溝に入り込ませることで、ケース表面からのワイヤーハーネスの突出寸法を抑えることが出来る。これにより、他部材との干渉を有利に回避して、ワイヤーハーネスが配索された状態での電気接続箱の小型化を図ることも出来る。なお、ワイヤーハーネスは、全体をハーネス収容溝に嵌め入れても良いし、ハーネス収容溝に部分的に嵌め入れても良い。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ハーネス収容溝の一方の端部が前記一方の固定部側で前記外周面に開口していると共に、前記ハーネス収容溝の他方の端部が前記ケースの表面に開口している一方、前記一方の固定部が前記ハーネス収容溝の底部から外方に突設されていると共に、前記他方の固定部が前記ケースの表面から外方に突設されており、前記ハーネス収容溝の底面が前記ケースの表面から前記一方の固定部に向かって傾斜しているものである。
【0014】
本態様においては、2つの固定部のケースにおける高さ位置が相互に異ならされており、剛性の高いワイヤーハーネスはケースの外周縁部に沿って屈曲させることが困難となる。その結果、2つの固定部に跨って延出するワイヤーハーネスの中間部分の弛みに起因する中間部分の移動範囲が大きくなって、他部材との干渉が起こり易くなるおそれがある。しかし、本態様によれば、ハーネス収容溝の底面を、ケース表面に位置する他方の固定部からケース表面よりも下方に位置する一方の固定部に向けて傾斜して設けたことから、ワイヤーハーネスの中間部分をより弛みなくケースに沿わせて配設することが出来て、一層安定してワイヤーハーネスの中間部分の保持を実現することが出来る。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記ケースの表面における前記一方の固定部側と前記他方の固定部側の少なくとも一方には、前記ハーネス収容溝の側部に沿って延びる支持壁が突設されているものである。
【0016】
本態様によれば、ワイヤーハーネスの固定部に加えられる抜け方向の力を支持壁で補強的に支持することにより、固定部でのワイヤーハーネスの固定を一層安定して行うことが出来る。特に、ワイヤーハーネスの弛み量が少ない固定部の付近に支持壁を設けたことにより、支持壁の高さ寸法が小さくても十分な補強効果を得ることが出来る。なお、本態様において、好ましくは、一方の固定部側と他方の固定部側の両方に支持壁が設けられる。
【0017】
特に、ハーネス収容溝の形成部位において支持壁を設けた場合には、ワイヤーハーネスの径寸法がハーネス収容溝では収容保持出来ない程度に大きな場合でも、ハーネス収容溝の深さを深くすることなく、支持壁と協働してワイヤーハーネスを位置決め保持することが出来る。その結果、電気接続箱の内部にスペース確保が困難で、ハーネス収容溝を深く形成することが出来ない場合でもワイヤーハーネスを安定して保持することが出来る。
【0018】
なお、支持壁は、ワイヤーハーネスを挟む両側に形成しても良いし、ワイヤーハーネスへの外力の加わり方等を考慮して、ワイヤーハーネスがハーネス収容溝から外れ易い部位にのみ設ける等しても良い。
【0019】
本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記支持壁が、前記ハーネス収容溝の少なくとも一方の側部において、該ハーネス収容溝に向かって前記ケース表面からの突出高さが次第に大きくなる傾斜案内面と、前記ハーネス収容溝側において前記ケース表面から垂直に立ち上がる支持壁面とを有する三角断面形状で突設されているものである。
【0020】
本態様によれば、傾斜案内面によって、ワイヤーハーネスをハーネス収容溝の側方からハーネス収容溝に案内することが出来る。また、支持壁面によって、ハーネス収容溝からのワイヤーハーネスの離脱を阻止することが出来る。これにより、傾斜案内面による嵌め入れ作業の補助機能と、支持壁面によるワイヤーハーネスの離脱阻止機能とを、効果的に両立することが出来る。
【0021】
本発明の第五の態様は、前記第二〜第四の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記一方の固定部が、前記ハーネス収容溝の底面と同じ方向に傾斜して延び出す傾斜支持面を備えているものである。
【0022】
本態様によれば、一方の固定部の支持面もハーネス収容溝の底面と同様に傾斜させることによって、ハーネス収容溝の底面と固定部の間のワイヤーハーネスの弛みをより効果的に取り除くことが出来、ワイヤーハーネスをより強固に固定することが出来る。また、ワイヤーハーネスにおけるハーネス収容溝からの延出部分に対して、傾斜支持面により所定の方向性を付与することも出来る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ケースの外周面に2つの固定部を対向位置して設けると共に、それら2つの固定部の間にハーネス収容溝を設けて、ワイヤーハーネスをそれら2つの固定部で固定して、ハーネス収容溝に嵌め入れるようにした。これにより、ワイヤーハーネスを3箇所で安定して固定することが出来る。更に、2つの固定部とハーネス収容溝を、ケースに穴等を設けること無しに形成出来ることから、電気接続箱の防水性を確保しつつ、ワイヤーハーネスを安定して保持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態としての電気接続箱の斜視図。
【図2】図1に示した電気接続箱の背面図。
【図3】図2におけるIII−III断面に相当する説明図。
【図4】図2におけるIV−IV断面に相当する拡大説明図。
【図5】図1に示した電気接続箱へのワイヤーハーネスの取付状態を示す斜視図。
【図6】ワイヤーハーネスの取付状態を説明するための、図3断面に相当する説明図。
【図7】ワイヤーハーネスの要部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
先ず、図1〜図3に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10を示す。図3から明らかなように、電気接続箱10は、合成樹脂製のアッパケース12とロアケース14が、内部回路を構成するプリント基板16を収容して相互に組み付けられた構造とされている。
【0027】
アッパケース12は、ロアケース14に向けて開口する略長手矩形の箱体形状とされている。そして、図示は省略するが、アッパケース12には、複数のヒューズ装着部やコネクタ装着部等が形成されており、プリント基板16から突設された接続端子がそれらヒューズ装着部やコネクタ装着部内に突出されている。
【0028】
一方、ロアケース14は、アッパケース12に向けて開口する略長手矩形の箱体形状とされており、略長手矩形の板形状とされた底板18の外周部分に、外周壁20がアッパケース12に向けて突設された形状とされている。底板18の表面22上には、複数のコネクタ装着部24が形成されている。図示は省略するが、これらコネクタ装着部24内には、プリント基板16に突設された接続端子が突出されている。
【0029】
また、ロアケース14において、ロアケース14の長手方向(図2中、上下方向)で互いに反対側に位置して、表面22を挟んで対向する外周面26a,26bには、一方の固定部としての第一の固定部28aと、他方の固定部としての第二の固定部28bがそれぞれ一体形成されている。これら第一の固定部28aと第二の固定部28bは、ロアケース14の長手方向で同一直線上に形成されている。
【0030】
第一の固定部28aは、外周面26aからロアケース14の長手方向外方に突出された固定板部30aが、幅方向(図2中、左右方向)の両端縁部において補強リブ32,32(図1等参照)で外周面26aと接続された形状とされている。固定板部30aは、外周面26aから突出するに連れてアッパケース12側に接近するように傾斜されており、固定板部30aにおける表面22側の面が傾斜支持面34とされている。傾斜支持面34は、略矩形の平坦面とされている。そして、固定板部30aには、オーバル形状の係合孔36が貫設されている。
【0031】
一方、第二の固定部28bは、第一の固定部28aと略同様の構造とされており、外周面26bからロアケース14の長手方向外方に突出された固定板部30bが、幅方向(図2中、左右方向)の両端縁部において補強リブ32,32で外周面26bと接続された形状とされている。固定板部30bには、オーバル形状の係合孔36が貫設されている。固定板部30bには、平坦面とされた支持面37が形成されている。支持面37は、ロアケース14の表面22と同一平面上に形成されており、表面22から連続して外周面26bに対して垂直に突出されている。これにより、図3に示すように、第一の固定部28aと第二の固定部28bは、電気接続箱10の高さ方向となる、外周壁20の表面22からの突出方向(図3中、右方から左方)で互いの位置が異ならされており、第一の固定部28aが、第二の固定部28bに比して、表面22から遠位に位置されている。
【0032】
さらに、ロアケース14の表面22には、ハーネス収容溝38が形成されている。ハーネス収容溝38は、表面22上に開口して、ロアケース14の長手方向(図2中、上下方向)に一直線状に延びる溝形状とされている。ハーネス収容溝38は、表面22上において、第一の固定部28aと第二の固定部28bの対向方向で第一の固定部28aから第二の固定部28bに向けて延び出されている。これにより、第一の固定部28a、第二の固定部28b、ハーネス収容溝38は、ロアケース14の長手方向で略同一直線上に形成されている。ハーネス収容溝38は、一方の端部が、外周面26a上に開口された側方開口部40とされていると共に、他方の端部が、ロアケース14の長手方向の略中央部分で表面22上に開口された表面開口部42とされている。ハーネス収容溝38の溝幅寸法(図2中、左右方向寸法)は、第一の固定部28aの傾斜支持面34と略等しい略一定の幅寸法とされている。
【0033】
図3に示すように、ハーネス収容溝38の底面44は、表面開口部42において表面22に接続されている一方、側方開口部40において、第一の固定部28aの傾斜支持面34に接続されている。これにより、底面44は、表面22から第一の固定部28aに向けて、表面22に対して傾斜されており、表面開口部42からハーネス収容溝38の溝長さ方向(図3中、上下方向)の略中間部分に亘る傾斜面46と、傾斜面46から第一の固定部28aに至る平坦面48を有している。そして、傾斜面46が、表面開口部42から第一の固定部28a側に行くに連れて、表面22から第一の固定部28aの傾斜支持面34に向けて傾斜されている。従って、前記第一の固定部28aにおける傾斜支持面34は、傾斜面46と同方向に傾斜されている。また、平坦面48が、表面22と略平行に、第一の固定部28aに向けて延び出されて、傾斜支持面34と接続されている。なお、底面44は、表面開口部42から側方開口部40にかけて段差無く形成されており、傾斜面46と平坦面48は、明確な屈曲線を有することなく滑らかに接続されている。
【0034】
さらに、ハーネス収容溝38の底面44は、表面開口部42において表面22と段差無く接続されていると共に、側方開口部40において、第一の固定部28aの傾斜支持面34と段差無く接続されている。これにより、ハーネス収容溝38の底面44において側方開口部40側の端縁部50は、傾斜支持面34に向けて傾斜されて、傾斜支持面34と滑らかに接続されており、傾斜支持面34が、底面44から段差無く連続してロアケース14の外方に延び出されている。
【0035】
また、ロアケース14の表面22において、ハーネス収容溝38の側方に位置する外周部分には、第一の支持壁52aと第二の支持壁52bが一体形成されており、第一の支持壁52aが第一の固定部28a側に、第二の支持壁52bが第二の固定部28b側に形成されている。第一の支持壁52aと第二の支持壁52bは略同様の形状とされていることから、第二の支持壁52bについては図中に第一の支持壁52aと同一の符号を付すことによりその説明を適宜に省略する。
【0036】
図4に示すように、第一の支持壁52aは、支持壁面54と傾斜案内面56とを有する略一定の略直角三角形の断面形状をもって、ハーネス収容溝38の延出方向に沿って一直線状に延び出されている。支持壁面54は、表面22に対して垂直に立ち上がる突壁形状とされており、特に第一の支持壁52aにおける支持壁面54は、ハーネス収容溝38においてロアケース14の外側に位置する側面58から連続して表面22上に突出されている。また、傾斜案内面56は、一方の端縁部が支持壁面54と接続されていると共に、他方の端縁部が表面22に接続されて、表面22の外周部分からハーネス収容溝38側に行くに連れて表面22からの突出寸法が次第に大きくなる傾斜面とされている。これにより、第一の支持壁52aは、傾斜案内面56を斜辺とする略直角三角形の断面形状をもって延び出されている。
【0037】
図2に示したように、第一の支持壁52aは、ハーネス収容溝38の側部に沿って、ハーネス収容溝38に隣接して延び出されている。第一の支持壁52aは、ハーネス収容溝38と略等しい長さ寸法(図2中、上下方向寸法)をもって形成されており、ロアケース14の長手方向(図2中、上下方向)で一方の端部がハーネス収容溝38の側方開口部40と略等しく位置されていると共に、他方の端部がハーネス収容溝38の表面開口部42と略等しく位置されている。一方、第二の支持壁52bは、第一の支持壁52aよりも短い長さ寸法をもって、ロアケース14の長手方向で第二の固定部28b側の端部から、ハーネス収容溝38の側部の延出方向(図2中、上下方向)に沿って延び出されている。これら第一の支持壁52aと第二の支持壁52bが、ハーネス収容溝38の側部となるロアケース14の外周部分において、ハーネス収容溝38の側部の延出方向で略同一直線上に互いに所定間隔を隔てて形成されている。
【0038】
このような構造とされた電気接続箱10は、図5および図6に示すように、ワイヤーハーネス60が取り付け可能とされている。ワイヤーハーネス60は、第一の固定部28aと第二の固定部28bの2箇所において、ハーネスクランプ62,62を用いてロアケース14に固定されている。
【0039】
ハーネスクランプ62は、従来公知のものが適宜に採用可能であることから、概要を説明する。本実施形態におけるハーネスクランプ62は、図7に示すように、基部64の一方の側に帯状のバンド部66が連結されていると共に、バンド部66と反対側に係止部68が突出された形状とされている。バンド部66は撓み変形可能とされており、一方の端部が基部64に連結されている。そして、他方の端部がワイヤーハーネス60を回り込んで基部64の挿通孔70に挿通されると共に、挿通孔70内に形成された図示しない係止爪と係合されることによって、ハーネスクランプ62がワイヤーハーネス60に取り付けられるようになっている。一方、係止部68は、基部64から突出する略板形状とされている。また、係止部68の基部64からの突出基端部分には、薄肉の略円板形状とされて、係止部68に向けて凹となる笠形状の付勢部72が設けられている。
【0040】
このようなハーネスクランプ62の2つが、ワイヤーハーネス60に取り付けられており、一方のハーネスクランプ62の係止部68が、第一の固定部28aの係合孔36に差し込まれて固定板部30aに係止される。なお、ハーネスクランプ62の付勢部72が傾斜支持面34に押し付けられて圧縮変形されることによって、付勢部72の復元力で基部64が傾斜支持面34から離隔する方向に付勢されて、係止部68が固定板部30aに押し付けられるようになっている。これにより、ハーネスクランプ62が第一の固定部28aに取り付けられて、ワイヤーハーネス60がハーネスクランプ62を介して第一の固定部28aに固定される。同様にして、他方のハーネスクランプ62が第二の固定部28bに固定されることにより、ワイヤーハーネス60が、第二の固定部28bに固定される。
【0041】
そして、ワイヤーハーネス60において、第一の固定部28aへの固定箇所と第二の固定部28bへの固定箇所の間の中間部分74が、ハーネス収容溝38に嵌め入れられる。なお、本実施形態におけるワイヤーハーネス60の径寸法は、ハーネス収容溝38の溝幅寸法よりも大きくされており、ワイヤーハーネス60はハーネス収容溝38に部分的に嵌め入れられていると共に、ハーネス収容溝38からの露出部分が第一の支持壁52aの支持壁面54に係止されている。これにより、ワイヤーハーネス60がロアケース14の表面22上で、ロアケース14の長手方向に延出して配設されている。そして、図5に示したように、ワイヤーハーネス60から分岐された複数のコネクタ76が、アッパケース12側に回り込まされてアッパケース12のコネクタ装着部に装着されたり、ロアケース14のコネクタ装着部24に装着されることにより、ワイヤーハーネス60が電気接続箱10内のプリント基板16と電気的に接続されるようになっている。
【0042】
このような構造とされた電気接続箱10によれば、第一の固定部28aと第二の固定部28bの2箇所でワイヤーハーネス60を固定すると共に、ワイヤーハーネス60において、それら両固定部28a,28bの中間部分74を、ハーネス収容溝36に嵌め入れて表面22上で固定することが出来る。これにより、ワイヤーハーネス60の中間部分74の移動を抑えて、他部材との干渉等を軽減することが出来る。特に、ワイヤーハーネス60を2箇所の固定部28a,28bにおいてハーネスクランプ62,62で点で位置決めすると共に、中間部分74をハーネス収容溝38に嵌め入れることで線で位置決め出来ることから、安定的に位置決めすることが出来る。また、ワイヤーハーネス60の中間部分74は、ハーネス収容溝38に嵌め入れるという簡易な操作で電気接続箱10に固定することが出来る。更に、中間部分74をハーネス収容溝38に嵌め入れることによって、ワイヤーハーネス60の表面22からの突出寸法を低減して、他部材との干渉をより軽減することが出来ると共に、ワイヤーハーネス60が固定された状態での電気接続箱10の小型化を図ることも出来る。
【0043】
そして、第一の固定部28aおよび第二の固定部28bはロアケース14の外周面26a,26bから突出して形成されていると共に、ハーネス収容溝38は有底の溝形状とされている。これにより、両固定部28a,28bおよびハーネス収容溝38は、何れもロアケース14の表面22や外周壁20を穿つことなく形成することが出来る。その結果、電気接続箱10の防水性を確保しつつ、ワイヤーハーネス60をより安定的に固定することが出来る。
【0044】
さらに、本実施形態においては、第一の固定部28aと第二の固定部28bの位置が電気接続箱10の厚さ方向で異ならされていることから、ワイヤーハーネス60が表面22に対して傾斜して組み付けられ、中間部分74において弛みが生じ易くなるおそれがある。しかし、本実施形態によれば、ハーネス収容溝38の底面44がワイヤーハーネス60の中間部分の延出方向に沿うように傾斜されていることから、中間部分をより弛み無く安定して保持することが出来る。また、第一の固定部28aの傾斜支持面34を、ハーネス収容溝38の底面44と同様に傾斜させたことにより、底面44と第一の固定部28a間のワイヤーハーネス60の弛みを取り除くことが出来ると共に、ワイヤーハーネス60のハーネス収容溝38からの延び出し部分に対して、傾斜支持面34で所定の方向性を付与することも出来る。
【0045】
また、ロアケース14の表面22には第一の支持壁52aおよび第二の支持壁52bが形成されており、ワイヤーハーネス60の中間部分74が、これら支持壁52a,52bの支持壁面54,54に係止されるようになっている。これにより、ワイヤーハーネス60において第一の固定部28aおよび第二の固定部28bへの固定部分に加えられる抜け方向の力を支持壁面54,54で補強的に支持することで、第一の固定部28aおよび第二の固定部28bにおけるワイヤーハーネス60の固定を一層安定して行うことが出来る。特に、ワイヤーハーネス60の撓み量が小さい第一の固定部28aおよび第二の固定部28bへの固定部分の付近に第一の支持壁52aおよび第二の支持壁52bを設けたことにより、支持壁面54,54の高さが比較的小さくとも、十分な補強効果を得ることが出来る。その結果、ハーネス収容溝38の深さを深くすることなく、支持壁52a,52bと協働してワイヤーハーネス60を位置決め保持することが出来、特に電気接続箱10内のスペース確保が困難で、ハーネス収容溝38の深さを確保出来ない場合でも、ワイヤーハーネス60を安定的に保持することが出来る。
【0046】
さらに、第一の支持壁52aと第二の支持壁52bによって、ワイヤーハーネス60の中間部分74をハーネス収容溝38の延出方向に方向付けすることが出来て、ハーネス収容溝38への収容状態をより安定的に保持することが出来る。特に、第一の固定部28a側と第二の固定部28b側の両方に第一の支持壁52aおよび第二の支持壁52bがそれぞれ形成されていることから、ワイヤーハーネス60を、中間部分74の両端部のそれぞれで所定の長さ寸法に亘ってより精度良く方向付けすることが出来る。また、第一の支持壁52aの支持壁面54は、ハーネス収容溝38の側面58と連続して形成されている。これにより、支持壁面54によって側面58の実質的な大きさが大きくされており、ハーネス収容溝38から露出する大径のワイヤーハーネス60であっても、支持壁面54で係止することによってハーネス収容溝38への部分的な嵌め入れ状態で安定して保持することが出来る。
【0047】
さらに、第一の支持壁52aおよび第二の支持壁52bには、ハーネス収容溝38側に向けて表面22からの突出寸法が次第に大きくなる傾斜案内面56,56がそれぞれ形成されている。これにより、ワイヤーハーネス60の中間部分74を電気接続箱10の外側から傾斜案内面56,56でハーネス収容溝38側に案内することが出来て、中間部分74のハーネス収容溝38への嵌め入れをより容易且つ円滑に行うことが出来る。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、ハーネス収容溝の具体的形状は前記実施形態の如き形状に限定されるものではなく、ハーネス収容溝を固定部間の全長に亘って延び出させても良いし、必ずしもロアケースの表面に対して傾斜されている必要は無い。また、ハーネス収容溝を複数形成することも可能であり、例えば他方の固定部側にもハーネス収容溝を形成する等しても良い。
【0049】
さらに、ワイヤーハーネスを固定する2つの固定部は、電気接続箱の厚さ方向(図3における左右方向)で互いに同一位置に形成されていても良い。そのような場合には、2つの固定部の両方を、前記実施形態における第一の固定部28aのように、電気接続箱10の厚さ方向で表面22に対して位置を異ならせて外周面26a,26bの中間部分に形成しても良いし、第二の固定部28bのように、表面22と同一平面上に形成しても良い。更にまた、例えばワイヤーハーネス60の配設態様等を考慮して、第二の固定部28bも第一の固定部28aのように傾斜して形成することも可能である。そのような場合には、第一の固定部28aと第二の固定部28bの傾斜方向は互いに等しくしても良いし、互いに異ならせても良い。また、前記実施形態における固定部へのワイヤーハーネスの固定態様もあくまでも例示であって、前記実施形態の如きハーネスクランプを用いるものに限定されず、例えば樹脂や金属からなる帯状のバンドや粘着テープ等を用いて固定部に直接に固定する等しても良い。
【0050】
更にまた、支持壁は必ずしも必要ではないが、ワイヤーハーネスへの外力の加わり方等を考慮して、例えば一方の固定部側と他方の固定部側の何れか一方のみに設けたり、ワイヤーハーネスがハーネス収容溝から外れ易い場所のみに設ける等しても良い。また、支持壁を、ハーネス収容溝の側方の両側に形成しても良い。
【符号の説明】
【0051】
10:電気接続箱、12:アッパケース、14:ロアケース、16:プリント基板、22:表面、26a,b:外周面、28a:第一の固定部(一方の固定部)、28b:第二の固定部(他方の固定部)、30a,b:固定板部、34:傾斜支持面、38:ハーネス収容溝、40:側方開口部、42:表面開口部、44:底面、46:傾斜面、48:平坦面、52a:第一の支持壁、52b:第二の支持壁、54:支持壁面、56:傾斜案内面、60:ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを固定する固定部がケースに設けられた電気接続箱において、
前記ケースの外周面には、前記ケースの表面を挟んだ対向位置に二つの前記固定部が突設されていると共に、前記ケースの表面において前記二つの固定部の対向方向で一方の前記固定部から他方の前記固定部に向かって延びるハーネス収容溝が設けられており、前記ワイヤーハーネスが前記ハーネス収容溝に嵌め入れられ且つ各前記固定部に固定されることにより前記ケース表面に配設されるようになっていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ハーネス収容溝の一方の端部が前記一方の固定部側で前記外周面に開口していると共に、前記ハーネス収容溝の他方の端部が前記ケースの表面に開口している一方、前記一方の固定部が前記ハーネス収容溝の底部から外方に突設されていると共に、前記他方の固定部が前記ケースの表面から外方に突設されており、前記ハーネス収容溝の底面が前記ケースの表面から前記一方の固定部に向かって傾斜している請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記ケースの表面における前記一方の固定部側と前記他方の固定部側の少なくとも一方には、前記ハーネス収容溝の側部に沿って延びる支持壁が突設されている
請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記支持壁が、前記ハーネス収容溝の少なくとも一方の側部において、該ハーネス収容溝に向かって前記ケース表面からの突出高さが次第に大きくなる傾斜案内面と、前記ハーネス収容溝側において前記ケース表面から垂直に立ち上がる支持壁面とを有する三角断面形状で突設されている請求項3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記一方の固定部が、前記ハーネス収容溝の底面と同じ方向に傾斜して延び出す傾斜支持面を備えている請求項2〜4の何れか1項に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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