説明

電気接続箱

【課題】縦置装着される電気接続箱において、外嵌ケースの周壁と内嵌ケースの周壁の重ね合わせ面間や、それらの間に設けられたロック嵌合部等から、箱本体の内部に水が浸入することを有利に防止することができる、新規な構造を備えた電気接続箱を提供すること。
【解決手段】縦置装着状態で上方に位置する外嵌ケース12の上側部分50には、外嵌ケース12の周壁18の外周面上に隙間を隔てて対向配置された庇部68を形成し、庇部68を外嵌ケース12の周壁18の開口端縁部を超えて内嵌ケース14の上方にまで延び出させると共に、外嵌ケース12の上側部分50において、庇部68が周壁18の周方向全体にわたって広がり且つ庇部68の上面が外嵌ケース12の周方向で端部に向かって下方に傾斜する傾斜面70となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の電気接続箱に関し、特に、電気接続箱の内部への水の浸入を防止する構造を備えている電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車室内やエンジンルーム等には、ヒューズボックスやリレーボックス、ジャンクションボックス等の電気接続箱が適所に装着されている。このような電気接続箱には、例えば、特開2005−229740号公報(特許文献1)に記載のとおり、外嵌ケースの周壁に内嵌ケースの周壁を嵌め入れて組み合わせた矩形状の箱本体に、プリント基板やバスバー等から構成される通電回路部材を収容した構造のものが知られている。
【0003】
ところで、電気接続箱の内部への水の浸入は、通電回路部材の短絡等の原因となることから、防止する必要がある。この点、特許文献1に記載の如き構造の電気接続箱では、通電回路部材を収容する箱本体が、外嵌ケースの周壁に内嵌ケースの周壁を嵌め入れると共に、それらの周壁の重ね合わせ面間に設けられたロック嵌合部等によって嵌合固定した構造とされていることから、それらロック嵌合部の開口部等から内部に水が浸入することが懸念される。これに対して、シールゴム等の防水構造を採用して防水性を確保することも考えられるが、特に車室内に配設される電気接続箱にあっては、被水の危険性が少ないことから、より簡単で安価な防水構造が望まれている。
【0004】
そこで、このような電気接続箱を各ケースの組み合わせ方向が水平方向となるように縦置きに装着して、ロック嵌合部を水平方向に開口させることで、上方から滴下される水の浸入を防止することが提案されている。
【0005】
ところが、電気接続箱を縦置きに配設しただけでは、上方から滴下された水が、外嵌ケースの周壁を伝わってロック嵌合部の開口部に回り込んだり、各ケースの周壁の重ね合わせ面間に入り込み、重ね合わされた周壁間における毛細管現象等によりケースの内部にまで水が入り込んでしまう問題が生じていた。
【0006】
なお、特開2008−61401号公報(特許文献2)には、各ケースの周壁の重ね合わせ面間から内部に入り込んだ水を、ケースの外部に排水する構造を備えた電気接続箱が提案されている。即ち、特許文献2の図2に示されるように、この電気接続箱では、外嵌ケースの周壁を外壁と内壁の二重構造とすると共に、外嵌ケースの底面に排水孔を開口形成して、該排水孔に向かって内壁を傾斜させている。そして、外嵌ケースの外壁と内壁の間に内嵌ケースの周壁を嵌め入れることにより、外嵌ケースの外壁と内嵌ケースの周壁との重ね合わせ面間から浸入した水が、傾斜した内壁を伝って速やかに排水孔から排出される構造とされている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の電気接続箱の構造では、結局、外嵌ケースの外壁と内嵌ケースの周壁との重ね合わせ面間から内部に水が浸入することとなる。従って、周壁の重ね合わせ面間における毛細管現象により、水が排水孔に誘導されずにケース内に留まったり、或いは、内壁の他の部分を伝ってケースの内部に水が誘導されるおそれもあり、十分な防水効果が期待できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−229740号公報
【特許文献2】特開2008−61401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の如き事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、縦置装着される電気接続箱において、外嵌ケースの周壁と内嵌ケースの周壁の重ね合わせ面間や、それらの間に設けられたロック嵌合部等から、箱本体の内部に水が浸入することを有利に防止することができる、新規な構造を備えた電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、外嵌ケースの周壁に内嵌ケースの周壁を嵌め入れて組み合わせた矩形状の箱本体に通電回路部材が収容されており、前記外嵌ケースと前記内嵌ケースの組み合わせ方向を水平方向にして縦置装着される電気接続箱において、前記縦置装着状態で上方に位置する前記外嵌ケースの上側部分には、前記外嵌ケースの周壁の外周面上に隙間を隔てて対向配置された庇部が形成されており、該庇部が前記外嵌ケースの周壁の開口端縁部を超えて前記内嵌ケースの上方にまで延びていると共に、前記外嵌ケースの上側部分において、前記庇部が前記周壁の周方向全体にわたって広がり且つ前記庇部の上面が前記外嵌ケースの周方向で端部に向かって下方に傾斜する傾斜面とされていることを特徴とする。
【0011】
本態様においては、縦置装着状態で上方に位置する外嵌ケースの上側部分に庇部が形成されており、この庇部が各ケース周壁の重ね合わせ面間の開口部分の全体を上方から覆っている。また、この庇部の上面が、外嵌ケースの周方向の端部に向かって下方に傾斜する傾斜面とされている。これにより、縦置装着される電気接続箱において、上方から水等の液体が滴下された場合には、庇部の上面に付着した水等が庇部の上面の傾斜方向に流下され、水等が各ケースの周壁の重ね合わせ面間の開口部分に至ることが未然に防止される。それ故、各ケースの周壁の重ね合わせ面間やそこに設けられたロック嵌合部の開口部からの電気接続箱の内部に水等が入り込むこと自体を確実に防止できる。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載の電気接続箱において、前記庇部における前記外嵌ケースの周方向端部には、上方に傾斜する返し部が一体形成されていると共に、該返し部の基端側が、前記外嵌ケースの前記上側部分の基端側に向かって傾斜する傾斜面とされているものである。
【0013】
本態様によれば、庇部の上面の傾斜によって周方向端部に導かれた水等を、返し部によって塞き止めつつ、返し部の基端側の傾斜面によって、各周壁の重ね合わせ面間の開口部分から遠い外嵌ケースの底壁部側へ導くことができる。これにより、更に確実に電気接続箱内部への水の浸入を防止できる。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載の電気接続箱において、前記縦置装着状態で上方に位置する前記内嵌ケースの上側部分において、前記内嵌ケースの周壁の外周面上に隙間を隔てて対向配置されると共に、前記外嵌ケースに向かって延び出すカバー壁部が形成されており、該カバー壁部の延出端部が、前記外嵌ケースの周壁と前記庇部との間に嵌め入れられている一方、前記外嵌ケースの周壁の前記開口端縁部が、前記内嵌ケースの周壁と前記カバー壁部との間に嵌め入れられているものである。
【0015】
本態様によれば、カバー壁部により各ケースの周壁の重ね合わせ面間の開口部分を組み付け方向(水平方向)の外方から覆うことができ、重ね合わせ面間からの水の入り込みを更に確実に防止できる。また、庇部、カバー壁部、外嵌ケースの周壁、内嵌ケースの周壁が多重に重ね合わされることとなり、万一、水が庇部の延出端部を周り込んだ場合でも、内部への浸入路が複雑となって、電気接続箱の内部まで水が至らないようにすることができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載された電気接続箱において、前記内嵌ケースの前記上側部分には、前記内嵌ケースの底壁部に向かって傾斜するテーパ面が形成されており、該テーパ面の上方にまで前記庇部が延び出しているものである。
【0017】
本態様によれば、庇部の延出端部から水が内嵌ケース上に流下された場合に、テーパ面を伝って、速やかに水が下方に流下される。これにより、内嵌ケース上に流下された水が、各ケースの周壁の重ね合わせ面間の開口部から遠ざけられて、水が各ケースの開口部に至って電気接続箱の内部に入り込むことが更に確実に防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従う電気接続箱によれば、縦置状態で装着される電気接続箱において、外嵌ケースの上側部分に傾斜を備えた庇部を形成したことにより、上方から電気接続箱に降りかかった水を庇部によって受け止めると共に、各ケースの周壁の重ね合わせ面間の開口部分から遠ざけるように誘導することができる。これにより、各ケースの周壁の重ね合わせ面間からの電気接続箱の内部への水の侵入を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態としての電気接続箱を示す斜視図。
【図2】図1における拡大II−II断面図。
【図3】図1に示した内嵌ケースの要部を示す拡大背面図。
【図4】図1に示した内嵌ケースの要部を示す拡大左側面図。
【図5】図1に示した外嵌ケースの要部を示す拡大正面図。
【図6】図1に示した外嵌ケースの要部を示す拡大左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
先ず、図1に本発明の一実施形態としての電気接続箱10の全体を、図2に電気接続箱10の要部のみを拡大して示す。電気接続箱10は、合成樹脂から形成された外嵌ケース12と内嵌ケース14とを組み合わせてなる中空矩形状の箱本体16の内部に、図示しない公知のプリント基板等からなる通電回路部材が収容された構造とされている。外嵌ケース12と内嵌ケース14はそれぞれ周壁18,20を備えており、図2に示すように、外嵌ケース12の周壁18に対して内嵌ケース14の周壁20が嵌め入れられることにより、外嵌ケース12と内嵌ケース14とが図2中の左右方向で互いに組み合わされて、矩形状の箱本体16が構成されている。このような電気接続箱10は、図1における上下方向が垂直方向となるように自動車の車室内等に配置される。即ち、本実施形態の電気接続箱10は、外嵌ケース12と内嵌ケース14との組み合わせ方向が水平方向となるようにして縦置装着される。なお、以下の説明において、特に断りの無い限り、上方とは、図1における上側を言い、下方とは、図1における下側を言うものとする。
【0022】
図3および図4に、内嵌ケース14の要部として、電気接続箱10の縦置装着状態で上方に位置する上側部分22を拡大して示す。内嵌ケース14は、略長手矩形の板形状を有する底壁部24と、底壁部24の外周縁部から側方(図4中、左側)に向かって延び出す周壁20とを備えている。図1に示すように、内嵌ケース14の底壁部24には、ヒューズ装着部26およびリレー装着部28がそれぞれ複数開口して形成されており、図示しないヒューズやリレーがそれぞれ装着されるようになっている。また、各ヒューズ装着部26、リレー装着部28の底面には、複数の端子挿通孔32が、内嵌ケース14の底壁部24を貫通して設けられており、図示しない通電回路部材の接続端子等が挿通配置されるようになっている。
【0023】
内嵌ケース14の周壁20は、長手矩形状とされた底壁部24の四方の端縁部から矩形筒状に延び出しており、電気接続箱10の縦置装着状態において、電気接続箱10の上下左右にそれぞれ配置される上側周壁20aと下側周壁20bと右側周壁20cと左側周壁20dとにより構成されている。なお、以下の説明において、これらの上側周壁20a,下側周壁20b,右側周壁20c,左側周壁20dを区別する必要の無い場合には、これら上側周壁20a,下側周壁20b,右側周壁20c,左側周壁20dから構成される全体を周壁20として説明する。
【0024】
周壁20の外面には、周方向で相互に離隔した適所において、周壁20の外面から外方に向かって突出する複数の係合突起34が一体形成されている。また、上側周壁20aの外面には、上側周壁20aの外面から外方に突出した位置で上側周壁20aと平行に外嵌ケース12側に向かって延び出す係合突片36が設けられている。
【0025】
また、内嵌ケース14の周壁20の外面には、係合突起34および係合突片36の形成位置以外の周方向の略全周に亘って、カバー壁部40が一体形成されている。例えば、図2に示す上側周壁20aの外周面上に形成されたカバー壁部40は、上側周壁20aの外周面と隙間を隔てて対向配置されると共に、周壁20の開口端縁部に至らない位置まで外嵌ケース12側に向かって延び出している。このことから明らかなように、本実施形態においては、内嵌ケース14の上側周壁20aとカバー壁部40を含んで、内嵌ケース14の上側部分22が構成されている。なお、下側周壁20b,右側周壁20c,左側周壁20dに設けられた各カバー壁部40も、上側周壁20aに設けられたカバー壁部40と略同様の構造とされている。また、周壁20の角部においては、角部の全体を覆うようにして、カバー壁部40が屈曲して設けられている。
【0026】
図1に示すように、カバー壁部40は、内嵌ケース14の周方向に延びるカバー壁部40の周方向両端部分は、何れも側端壁部42により周壁20と連結されている。また、カバー壁部40における内嵌ケース14の底壁部24側の基端側部分も、基端壁部44によって周壁20と連結されている。これにより、カバー壁部40は戸袋状の構造とされて、カバー壁部40の内側領域への水の侵入が防止されている。また、図3に示すように、カバー壁部40の内部には、内嵌ケース14の周方向における適所に支持リブ46が設けられており、カバー壁部40が内側から支持されている。
【0027】
また、内嵌ケース14の上側周壁20a上および上側周壁20aの周方向両端側の角部に形成されたカバー壁部40には、基端壁部44の上側角部にテーパ面48が設けられている。一方、内嵌ケース14の下側周壁20b,右側周壁20c,左側周壁20dに設けられた各カバー壁部40においては、基端壁部44が何れも周壁20から垂直に延びる壁面とされている。これにより、本実施形態の内嵌ケース14では、上側部分22にのみ、内嵌ケース14の底壁部24に向かって傾斜するテーパ面48が形成されている。
【0028】
図5および図6に、外嵌ケース12の要部として、電気接続箱10の縦置装着状態で上方に位置する外嵌ケース12の上側部分50を拡大して示す。外嵌ケース12は、内嵌ケース14の底壁部24と略同一の大きさの略長手矩形の板形状を有する底壁部52と、底壁部52の外周縁部から側方(図6中、右側)に向かって延び出す周壁18とを備えている。外嵌ケース12の周壁18は、内嵌ケース14の周壁20と同様に、長手矩形状とされた底壁部52の四方の端縁部から内嵌ケース14側に向かって矩形筒状に延び出しており、電気接続箱10の縦置装着状態において、電気接続箱10の上下左右にそれぞれ配置される上側周壁18aと下側周壁18bと右側周壁18cと左側周壁18dとにより構成されている。なお、以下の説明において、これらの上側周壁18a,下側周壁18b,右側周壁18c,左側周壁18dを区別する必要の無い場合には、これら上側周壁18a,下側周壁18b,右側周壁18c,左側周壁18dから構成される全体を外嵌ケース12の周壁18として説明する。外嵌ケース12の周壁18は、内嵌ケース14の周壁20に比べて十分に大きな延出寸法を有しており、内嵌ケース14と外嵌ケース12を組み合わせた箱本体16の内部に、図示しない通電回路部材を収容するに十分な収容空間が構成されるようになっている。
【0029】
外嵌ケース12の周壁18の外面には、内嵌ケース14の周壁20に設けられた係合突起34や係合突片36と対応する位置において、係合ロック部54および係合溝部56がそれぞれ一体形成されている。詳細な図示は省略するが、係合ロック部54は、周壁18の一部が外方に向かって僅かに張り出した構造とされると共に、周壁18の内周側に開口する図示しない凹部が形成されている。そして、この凹部に内嵌ケース14の係合突起34の外周面が係合することで、ロック嵌合部58が構成されて、外嵌ケース12と内嵌ケース14とが位置決め状態で嵌合されるようになっている。また、係合溝部56は、内嵌ケース14の係合突片36を収容し得る大きさで外嵌ケース12の開口部側に向かって開口する溝部とされており、この係合溝部56に対して係合突片36が挿入されることにより、位置決め部60が構成されるようになっている。また、外嵌ケース12の底壁部52には、コネクタ装着部61が複数開口して形成されており、図示しないコネクタが装着されるようになっている。コネクタ装着部61の底面には、複数の端子挿通孔62が外嵌ケース12の底壁部52を貫通して設けられており、図示しない通電回路部材の接続端子等が挿通配置されるようになっている。さらに、外嵌ケース12の周壁18の適所には、ハーネス固定部63やブラケット装着部64が一体的に突設されている。
【0030】
外嵌ケース12の上側部分50には、上側周壁18aの外周面上に隙間を隔てて対向配置された庇部68が一体形成されている。図2に示すように、庇部68は、外嵌ケース12の周壁18の開口端縁部を超えて内嵌ケース14側に向かって延び出しており、外嵌ケース12と内嵌ケース14との重ね合わせ状態においては、庇部68が、内嵌ケース14の上側部分22のテーパ面48の上方に至る位置まで延び出している。また、庇部68は、図5に示すように、外嵌ケース12の周方向(図5中、左右方向)に広がる上側周壁18aの上方において、上側周壁18aの周方向全体にわたって広がっている。なお、このことから明らかなように、本実施形態においては、外嵌ケース12の上側周壁18aと庇部68を含んで、外嵌ケース12の上側部分50が構成されている。
【0031】
庇部68の厚さ寸法は略一定とされているが、庇部68は、図5に示す正面視における右側部分および左側部分が、それぞれ、左右方向中心側から左右方向両端側に向かって、全体に略図5に示す角度α分だけ僅かに傾斜している。これにより、庇部68の上面が、外嵌ケース12の周方向で両端部に向かって略角度α分だけ下方に傾斜する傾斜面70とされている。
【0032】
このような傾斜により、庇部68において最も下方側となる庇部68の周方向両端部には、返し部72が一体形成されている。返し部72は、上方に傾斜して突出する突出部74と、その周方向手前側の平坦部76とから構成されている。返し部72は、図6に示すように、庇部68の周方向端部における庇部68の延出先端側にのみ形成されており、返し部72の基端側は、外嵌ケース12の上側部分50の基端側に向かって傾斜する傾斜面78とされている。これにより、返し部72の基端側は、全体が上側周壁18aと滑らかに連結された構造とされている。
【0033】
庇部68の上面には、ブラケット装着部64から庇部68の上面に延び出す三個の突出リブ80が設けられており、これにより、庇部68が補強されている。なお、突出リブ80は、係合ロック部54および係合溝部56の上方を避けた位置に形成されており、これにより、内嵌ケース14と外嵌ケース12の組み合わせ状態において、突出リブ80が内嵌ケース14のテーパ面48の上方に位置するようになっている。
【0034】
また、図6に示すように、外嵌ケース12の周壁18には、係合突起34および係合突片36の周方向両側や、周壁18の周方向の適所において、周壁18の開口端縁部側に開口する複数の切欠部82が設けられている。各切欠部82は、外嵌ケース12と内嵌ケース14の重ね合わせ状態において、内嵌ケース14の周壁に設けられた各カバー壁部40の側端壁部42および支持リブ46に対応する位置に設けられており、各切欠部82は、カバー壁部40の延出長さと略同一の深さ寸法で形成されている。その結果、外嵌ケース12の周壁18の開口端縁部は、このような切欠部82が設けられることにより、複数の開口切片84に分割された構造とされている。
【0035】
このような外嵌ケース12と内嵌ケース14は、例えば、以下のようにして互いに組み合わされて、電気接続箱10が形成される。即ち、先ず、外嵌ケース12の周壁18の内側に、図示しないプリント基板等からなる通電回路部材を収容する。次に、位置決め部60を構成する内嵌ケース14の係合突片36の先端を、外嵌ケース12の各係合溝部56内に挿入して、外嵌ケース12と内嵌ケース14とを相互に位置決めする。これにより、正面視での投影において、内嵌ケース14の周壁20の全体が、外嵌ケース12の周壁18の内側に正しく位置する状態となる。この状態で、内嵌ケース14を外嵌ケース12側にさらに押し込むと、内嵌ケース14の周壁20が、外嵌ケース12の周壁18の内側に重ね合わされた状態で外嵌ケース12に収容されて、内嵌ケース14と外嵌ケース12とが組み合わされる。
【0036】
このとき、図2に示すように、内嵌ケース14の上側部分22に形成されたカバー壁部40の延出端部は、外嵌ケース12の上側周壁18aと庇部68との間に嵌め入れられる。また、外嵌ケース12の上側周壁18aの開口端縁部は、内嵌ケース14の上側周壁20aとカバー壁部40との間に嵌め入れられる。即ち、電気接続箱10の上方においては、上側から順に、外嵌ケース12の庇部68、内嵌ケース14のカバー壁部40、外嵌ケース12の上側周壁18a、内嵌ケース14の上側周壁20aが、互いに重なり合った状態となる。これにより、外嵌ケース12の上側周壁18aと内嵌ケース14の上側周壁20aの重ね合わせ面間の開口部となる外嵌ケース12の上側周壁18aの開口端縁部は、庇部68と、カバー壁部40とにより上方から二重に覆われることとなる。なお、図2に示されるように、このような重ね合わせ状態においては、庇部68はカバー壁部40の上面から上方にやや離隔して対向配置される一方、カバー壁部40と外嵌ケース12の上側周壁18aと内嵌ケース14の上側周壁20aは、略隙間無く重ね合わされる。また、庇部68の延出端縁部は、外嵌ケース12の上側周壁18aの開口端縁部を超えて内嵌ケース14側に延び出し、内嵌ケース14のテーパ面48の上方に離隔して配置される。
【0037】
また、このような外嵌ケース12と内嵌ケース14の組み合わせ状態においては、カバー壁部40の周方向両端部に形成された側端壁部42および中間部の支持リブ46は、外嵌ケース12の開口端縁部に形成された切欠部82に収容される。これにより、外嵌ケース12の周壁18の開口端縁部に形成された各開口切片84の略全体が、戸袋状に形成されたカバー壁部40の内部領域に嵌め入れられるようになっている。
【0038】
なお、庇部68が形成されていない外嵌ケース12の下側周壁18b,右側周壁18c,左側周壁18dにおいては、外嵌ケース12の周壁18の開口端縁部が、内嵌ケース14の周壁20とカバー壁部40との間に嵌め入れられる。これにより、外嵌ケース12の周壁18と内嵌ケース14の周壁20の重ね合わせ面間の開口部となる外嵌ケース12の周壁18の開口端縁部は、カバー壁部40により覆われることとなる。
【0039】
また、外嵌ケース12と内嵌ケース14とが完全に組み合わされると、外嵌ケース12の各所に設けられた係合ロック部54が内嵌ケース14の係合突起34に対してそれぞれロック嵌合し、ロック嵌合部58が構成される。また、外嵌ケース12の係合溝部56に対して、内嵌ケース14の係合突片36の全体がに完全に嵌め入れられて、位置決め部60が構成される。これにより、外嵌ケース12と内嵌ケース14とが強固に嵌合されて箱本体16が形成され、内部に通電回路部材が収容された電気接続箱10が構成される。なお、電気接続箱10には、適宜、図示しないヒューズやリレー、コネクタ等の電気部品が装着される。
【0040】
完成された電気接続箱10は、図示しない自動車の車室内等において、外嵌ケース12と内嵌ケース14の組み合わせ方向を水平方向にして、且つ、各ケース12,14の上側部分50,22が上方となるようにして、縦置状態で装着される。これにより、外嵌ケース12の上側周壁18aに形成された庇部68が、電気接続箱10の上側に配置されることとなる。
【0041】
車室内等に装着された電気接続箱10は、通常は被水することはないが、例えば、大量の結露が発生した場合や、ユーザーが車内で飲料をこぼした場合等、何らかの要因で上方から水等の液体を被るおそれがある。このような場合には、落下された水等は、電気接続箱10の上方に設けられた庇部68により受けられ、庇部68の上面の傾斜により電気接続箱10の周方向両端部へと誘導された後、返し部72の基端側の傾斜面78により、電気接続箱10の側方(外嵌ケース12の右側周壁18cまたは左側周壁18d)等へ誘導される。これにより、水等が電気接続箱10の外嵌ケース12と内嵌ケース14の重ね合わせ面間に達することが未然に阻止され、電気接続箱10の内部の通電回路部材の被水が防止される。
【0042】
このように、本実施形態によれば、電気接続箱10の外嵌ケース12の周壁18と内嵌ケース14の周壁20の重ね合わせ面の開口部の上側に庇部68を設けたことにより、外嵌ケース12と内嵌ケース14の各周壁18,20の重ね合わせ部や、各周壁18,20に設けられたロック嵌合部58や位置決め部60が被水しないようにされている。その結果、外嵌ケース12と内嵌ケース14の重ね合わせ面間やロック嵌合部58等から水等が電気接続箱10の内部に入り込むこと自体を未然に防止することができる。従って、防水用の特別なゴムパッキン等を設けることなく、簡単且つ安価に電気接続箱10の防水性を高めることができる。
【0043】
特に、本実施形態によれば、庇部68の上面に略角度α分の傾斜が付されていることにより、水等が庇部68の延出先端部側から下方へ落下するよりも早く、傾斜面70の傾斜によって庇部68の周方向両端部側へと誘導できるようになっている。その結果、庇部68が受けた水を、開口部等が何等形成されていない電気接続箱10の側方を経由させて電気接続箱10の下方へ落下させることができ、水等を外嵌ケース12と内嵌ケース14の重ね合わせ面間に到達させることなく、電気接続箱10の外周面上から速やかに排除することができる。これにより、電気接続箱10の各周壁18,20の重ね合わせ面間からの水の侵入を有利に防ぐことが可能となり、電気接続箱10の内部の通電回路部材が被水する可能性を低減できる。
【0044】
加えて、本実施形態においては、水等が誘導される庇部68の周方向両端部には返し部72が一体形成されており、さらに、返し部72の基端側が、庇部68の延出先端側とは逆方向の外嵌ケース12の上側部分50の基端側に向かって傾斜する傾斜面78とされている。これにより、庇部68の周方向両端側に誘導された庇部68上の水を、外嵌ケース12の上側部分50の基端側に誘導した後に、外嵌ケース12の右側周壁18c又は左側周壁18dの基端側の壁面を伝って落下させることができる。これにより、庇部68の周方向両端側に誘導された水が、庇部68の延出先端部側から落下して、各ケース12,14の周壁18,20の重ね合わせ面間の開口部やロック嵌合部58等に掛かることを防止することができる。また、庇部68に返し部72が設けられることにより、庇部68の強度が向上されることから、庇部68の肉厚寸法を小さく抑えることが可能とされている。
【0045】
さらに、本実施形態の電気接続箱10の内嵌ケース14の周壁20には、戸袋状の構造とされたカバー壁部40が形成されており、外嵌ケース12の上側部分50の開口端縁部に形成された各開口切片84が、カバー壁部40の内部領域に収容されている。これにより、外嵌ケース12の周壁18の開口端縁部が、内嵌ケース14の周壁20とカバー壁部40との間に嵌め入れられて、三重の重ね合わせ構造とされている。その結果、外嵌ケース12および内嵌ケース14の各周壁18,20の重ね合わせ面間の開口部が、電気接続箱10の略全周において、カバー壁部40により保護されて防水されるようになっている。特に、電気接続箱10の上方においては、庇部68の下側において、このようなカバー壁部40が設けられていることから、仮に、水等が庇部68の延出先端部側から下方に落下したとしても、カバー壁部40の防水作用により各ケース12,14の周壁18,20の重ね合わせ面間には水が浸入しないようになっている。また、電気接続箱10の上方部分において、万一、水等が庇部68の延出先端部を越えてカバー壁部40の延出先端側から侵入する場合にも、水は庇部68の内面と、カバー壁部40と、外嵌ケース12の上側周壁18aと、内嵌ケース14の上側周壁20aとにより構成された複雑かつ狭隘な経路を経なければ電気接続箱10の内部空間に到達し得ないことから、水等の侵入を充分に防ぐことができる。
【0046】
また、本実施形態においては、庇部68の延出先端部の下方に位置する内嵌ケース14の上側部分22には、内嵌ケース14の底壁部24に向かって下方に傾斜するテーパ面48が形成されている。これにより、庇部68の延出先端部から内嵌ケース14上に落下した水等を、テーパ面48の傾斜によって、内嵌ケース14の底壁部24側に速やかに誘導することができる。これにより、庇部68から落下した水等が、カバー壁部40の延出先端側からカバー壁部40の内側や各ケース12,14の周壁18,20の重ね合わせ面間に侵入することを有効に防止できる。特に、本実施形態の庇部68の上面には複数の突出リブ80が突設されているが、テーパ面48は、この突出リブ80の形成位置の下側においても形成されている。これにより、庇部68の上面を周方向外方へ流下する水が突出リブ80に遮られて庇部68の延出端部から下方に落下する場合にも、水はテーパ面48上に落下して、内嵌ケース14の底壁部24側へと誘導される。これにより、突出リブ80の下側位置においても、水が各ケース12,14の周壁18,20の重ね合わせ面間には侵入しないようになっている。なお、本実施形態では、内嵌ケース14の底壁部24に形成されたヒューズ装着部26やリレー装着部28の外周面が、何れも、内嵌ケース14の底壁部24から外方に突出した構造とされていることから、水が底壁部24の上面を伝って下降する場合にも、各ヒューズ装着部26、リレー装着部28の内部には水が侵入しないようになっている。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、庇部68の具体的な形状や上面の傾斜角度等は、電気接続箱10上に落下された水等を外嵌ケース12の周壁18と内嵌ケース14の周壁20との重ね合わせ面間の開口部から遠ざけるように誘導できるものであれば、特に限定されない。即ち、上記実施形態では、庇部68が外嵌ケース12の周方向両側に向かって傾斜していたが、庇部68の上面が、周方向一方の端部から他方の端部へ傾斜する構造とされていてもよい。また、庇部68は、外嵌ケース12の上側周壁18aの周方向両端部よりもさらに外方へ張り出して形成されていてもよい。更にまた、庇部68の上面は、庇部68の延出先端側から基端側に向かって傾斜していてもよい。このような構造を採用すれば、各ケース12,14の周壁18,20の重ね合わせ面間の開口部から水等をより効率的に遠ざけることができる。
【0048】
また、返し部72の具体的な形状や傾斜面78の傾斜角度等も、特に限定されない。即ち、上記実施形態では、傾斜面78の端部が、外嵌ケース12の上側部分50の延出方向中間部に接続されることにより、水等が外嵌ケース12の右側周壁18cおよび左側周壁18dの延出方向中間部を流下するように設計されていたが、例えば、外嵌ケース12の底壁部52に端子挿通孔62等の開口部が設けられていない場合には、水等を外嵌ケース12の底壁部52側まで誘導するようにしてもよい。また、庇部68の延出先端側の全体又は一部に返し部72を形成してもよい。
【0049】
さらに、係合突起34と係合ロック部54からなるロック嵌合部58や、係合突片36と係合溝部56からなる位置決め部60の具体的な形状や形成位置等も、任意に変更が可能である。特に、上記実施形態では、上側周壁18,20にもロック嵌合部58や位置決め部60が形成されていたが、ロック嵌合部58や位置決め部60を、周壁18,20全体のうち上側周壁18a,20a以外にのみ設けるようにしてもよい。これにより、庇部68の下側の上側周壁18aの全体にカバー壁部40を設けることが可能となり、防水性をより高めることができる。なお、上記実施形態では、内嵌ケース14の上側部分22における係合突起34の形成位置にはカバー壁部40が形成されていないことから、テーパ面48が設けられない構造とされていたが、勿論、このような係合突起34の形成位置にもテーパ面48を設けてもよい。これにより、ロック嵌合部58からの水の侵入をより効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
10:電気接続箱、12:外嵌ケース、14:内嵌ケース、16:箱本体、18,20:周壁、22,50:上側部分、24:底壁部、40:カバー壁部、48:テーパ面、68:庇部、70,78:傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外嵌ケースの周壁に内嵌ケースの周壁を嵌め入れて組み合わせた矩形状の箱本体に通電回路部材が収容されており、前記外嵌ケースと前記内嵌ケースの組み合わせ方向を水平方向にして縦置装着される電気接続箱において、
前記縦置装着状態で上方に位置する前記外嵌ケースの上側部分には、前記外嵌ケースの周壁の外周面上に隙間を隔てて対向配置された庇部が形成されており、該庇部が前記外嵌ケースの周壁の開口端縁部を超えて前記内嵌ケースの上方にまで延びていると共に、前記外嵌ケースの上側部分において、前記庇部が前記周壁の周方向全体にわたって広がり且つ前記庇部の上面が前記外嵌ケースの周方向で端部に向かって下方に傾斜する傾斜面とされていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記庇部の周方向端部には、上方に傾斜する返し部が一体形成されていると共に、該返し部の基端側が、前記外嵌ケースの前記上側部分の基端側に向かって傾斜する傾斜面とされている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記縦置装着状態で上方に位置する前記内嵌ケースの上側部分において、前記内嵌ケースの周壁の外周面上に隙間を隔てて対向配置されると共に、前記外嵌ケースに向かって延び出すカバー壁部が形成されており、該カバー壁部の延出端部が、前記外嵌ケースの周壁と前記庇部との間に嵌め入れられている一方、前記外嵌ケースの周壁の前記開口端縁部が、前記内嵌ケースの周壁と前記カバー壁部との間に嵌め入れられている請求項1又2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記内嵌ケースの前記上側部分には、前記内嵌ケースの底壁部に向かって傾斜するテーパ面が形成されており、該テーパ面の上方にまで前記庇部が延び出している請求項1〜3の何れか1項に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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