説明

電気柵及びその制御方法、並びに、電気柵の電源装置及び電気柵の制御回路

【課題】人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができる電気柵、電気柵の制御方法、電気柵の電源装置、電気柵の電圧発生器、並びに電気柵の制御回路を提供する。
【解決手段】電源スイッチ55が「オン」であり、検出用電気信号電圧発生器23を柵線3に接続していない場合、柵線3には、電圧発生器56からの第1の電圧のみが与えられている。発生した第1の電圧は、柵線3(裸電線(3A〜3D))に印加され、人や野生動物などが裸電線(3A〜3D)に接触すると衝撃を受ける。検出用電気信号電圧発生器23のフック形状のプラス端子23Aを裸電線3Aに引っ掛け、棒状のマイナス端子23Bを地中に差し込み、第2の電圧を裸電線3Aに与えている。その結果、リレーの巻線53は励磁され、リレーのB接点54は開くので、電圧発生器56には電源電圧が印加されなくなり、第1の電圧の発生は停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気柵及びその制御方法、並びに、電気柵の電源装置、電気柵の電圧発生器及び電気柵の制御回路に関する。詳しくは、例えば野生動物から田畑を守るための電気柵及びその制御方法、並びに、電気柵の電源装置、電気柵の電圧発生器及び電気柵の制御回路に係るものである。
【背景技術】
【0002】
山間地域の農村地帯では、鹿や猪などの野生動物が田畑へ侵入することを防止するために、電気柵が多く使用されている。
【0003】
電気柵は、田畑の周囲に張り巡らせた裸電線に、電源装置内の電圧発生器から発生した電圧が印加され、この裸電線に接触した鹿や猪などの野生動物を、印加された電圧の電撃によって撃退するための柵である。
【0004】
図9に従来の電気柵を示す。
図9に示すように、従来の電気柵100は、田畑の周囲に打設された支柱102に取り付けられた碍子(101a〜101d)に係止されて張設された裸電線(103a〜103d)を備える。
【0005】
また、裸電線(103a〜103d)は、約50mごとに裸電線からなる上下結線104で結線される。
【0006】
さらに、裸電線(103a〜103d)のうち地表に一番近い1段目の裸電線103dは、地表から約20cmの高さに位置しており、2段目の裸電線103cは裸電線103dから上方へ約20cmの高さに位置しており、3段目の裸電線103bは裸電線103cから上方へ約40cmの高さに位置しており、4段目の裸電線103aは裸電線103bから上方へ約50cmの高さに位置する。
【0007】
また、張設された裸電線(103a〜103d)に印加される所定の電圧を発生する電圧発生器を有する電源装置105が、裸電線103cに電気的に接続されている。
【0008】
鹿や猪などが、このような電気柵100で囲まれた田畑に侵入しようとして、張設された裸電線(103a〜103d)に接触すると、鹿や猪などには、図9の矢印のように電源装置105の出力端子106、電源装置105の出力線107、裸電線103c、上下結線104、裸電線(103a、103bおよび103d)、鹿や猪などの野生動物108、地中109、アース棒110、アース線111、そしてアース端子112の順路で、動物や人間などに、衝撃を与えることができるほど高い電流(衝撃電流)が流れる。
【0009】
これによって、鹿や猪などの野生動物108は、電撃を受けて撃退される。
【0010】
ところで、この電気柵100への通電中に、田畑に人が入る必要が発生する場合がある。それは、除草や施肥、その他の場合である。この場合、通電中の数段の裸電線(103a〜103d)の隙間を掻い潜り、田畑に入らなければならない。しかし、当然ながら図10に示すように、人は裸電線(103a〜103d)に接触するので、電撃を受けてしまい容易に田畑へ入ることができない。
【0011】
そこで、通電中に人が田畑へ入るために、図11に示すようなゲートと呼ばれる器具が使用される場合がある。
【0012】
図11に示すように、絶縁性の材料で筒状に形成された器具120の略中央部に長手方向に挿通された導電線の一端は、フック状に加工された金属片121に電気的に接続されている。
【0013】
また、フック状の金属片121は、受金具125に引っ掛けられて、その受金具125は裸電線126に電気的に接続されている。
【0014】
また、導電線の他端は、円状に加工された金属片122に電気的に接続されている。また、円状の金属片122には、螺旋状のスプリング123が取付けられ、そのスプリング123には裸電線124が接続されている。
【0015】
このようにして、裸電線126と裸電線124は、ゲートを介して電気的に接続された状態である。
また、図12に示すように、ゲートは、張設された裸電線(103a〜103d)の各段に取付けられている。
【0016】
次に、ゲートの使用法は以下のとおりである。
人が田畑に侵入しようとする場合、図13に示すように、絶縁性の材料で筒状に形成された器具120を手で握り、フック状の金属片121を受金具125から取り外し、通電を遮断する。
【0017】
そして、図13に示すように、ゲートが取外された場所から、人は田畑へ侵入する。
【0018】
また、例えば特許文献1には、図14に示すような電気柵の出入り口が記載されている。即ち、特許文献1に記載された電気柵の出入り口の構成は、次のとおりである。
【0019】
一対の本体支柱(203A、203B)の一方の本体支柱203Aに、ネット202を張った本体枠(201A〜201D)を構成する左右枠の一方の枠201Cを蝶着部(204A、204B)により開閉可能に支持し、他方の本体支柱203Bに、左右枠の他方の枠201Aを固定する手段205が設けられている。
【0020】
また、左右枠(201A、201C)の上部の裸電線(208A〜208D)は、蝶着部(204A、204B)を設けた左右枠の一方の枠201C側の裸電線(209A〜209D)と給電用電線(210A〜210D)によって電気的に接続する。
【0021】
また、特許文献1に記載の電気柵の出入り口の使用法は以下のとおりである。
本体枠201Aを固定する手段205の固定を解除し、本体枠を手前に引けば、蝶着部(204A、204B)を軸に本体枠201が開き、自由に出入りができる。閉めるときは、本体枠201を閉じた後、本体枠201Aを再度、固定する手段205で固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平11−206305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
このように、従来の電気柵では、ゲートを取外したり、本体枠を開いたりして、電気柵で囲まれた田畑に人が感電することなく侵入できるが、感電せずに侵入できるのは、ゲートや出入り口(以下、「ゲート等」)の設置場所からだけであり、任意の場所から田畑へ侵入することができなかった。
【0024】
また、周囲500mに張り巡らされた電気柵において、ゲート等の設置箇所は通常2〜3箇所である。
【0025】
この場合、田畑の任意の場所に侵入するには、ゲート等の設置箇所まで移動し、ゲートの接続を図13のように解除したり、本体枠の固定を解除したりして、その位置から田畑に侵入し、除草等の作業終了後、ゲート等から電気柵の外に出て、再び、ゲートの接続や本体枠の固定を行なわなければならない。
【0026】
従って、電気柵で囲まれた田畑への侵入に時間と労力がかかり、不便である。
【0027】
また、ゲート等の設置箇所を増やすことも考えられるが、ゲート等の設置箇所を増やすと、費用が増大してしまい、さらに、碍子(101a〜101d)に裸電線(103a〜103d)を係止する場合に比べて、ゲート等の設置には多くの手間がかかる。
【0028】
また、ゲート等を全く使用しない場合もあり、この場合はさらに不便である。
この場合、田畑の任意の場所に侵入するには、電気柵100の裸電線(103a〜103d)に沿って、電源装置105の設置場所まで移動し、電源装置105の電源スイッチ155をオフにして通電を止める。
【0029】
その後、侵入すべき場所に戻り、数段の裸電線(103a〜103d)の隙間を掻い潜り、田畑へ侵入する。除草作業等の終了後、再び数段の裸電線(103a〜103d)の隙間を掻い潜り、電気柵100の外に出て、更に、電源装置105の設置場所まで移動し、電源装置105の電源スイッチ155をオンにしなければならない。
【0030】
このように、従来の電気柵は、人が感電せずに電気柵を通り抜けるためには、ゲート等の設置箇所や電源装置の設置箇所まで、わざわざ移動しなければならず不便であったので、任意の箇所において人が感電せず通り抜けることができる電気柵が求められていた。
【0031】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができる電気柵、このような電気柵の制御方法、このような電気柵に使用される電源装置、このような電気柵に使用される電圧発生器、並びにこのような電気柵に使用される制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記の目的を達成するために、本発明の電気柵は、所定領域の周囲に形成された導電部材と、該導電部材と電気的に接続されると共に、同導電部材に第1の電圧を印加する電圧発生器と、該電圧発生器と電気的に接続されると共に、前記第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に前記第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路とを備える。
【0033】
ここで、電圧発生器と電気的に接続されると共に、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路によって、任意の場所で導電部材に第2の電圧を印加するだけで、導電部材に印加された第1の電圧の電圧値が低下するので、電圧値が低下した導電部材に人が触れても、柵内に入ったり柵から出たりすることができる。
【0034】
また、制御回路は、導電部材に電気的に接続された電圧発生器に電気的に接続されていることによって、例えば無線信号による制御回路の制御に比べて、障害物などを気にすることなく、確実に制御することができる。
【0035】
なお、本発明において、低下する前の第1の電圧の電圧値は、人や野生動物などが導電部材に触れると衝撃を受ける程度の大きさであり、低下した第1の電圧の電圧値や、印加された第2の電圧の電圧値は、人や野生動物などが導電部材に触れても衝撃を受けない程度の大きさであることとする。
【0036】
また、本発明の電気柵において、制御回路は、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に電圧発生器の導電部材への第1の電圧の印加を停止せしめるようにすることができる。
【0037】
この場合、任意の場所で導電部材に第2の電圧を印加するだけで、電圧発生器の導電部材への第1の電圧の印加が停止するので、柵内に入ったり柵から出たりすることができる。
【0038】
また、本発明の電気柵において、導電部材が電線である場合、電気柵の設置場所が、起伏や段差の多い場所でも、板状の導電部材よりも設置しやすく、また、風の影響も少ない。
【0039】
また、上記の目的を達成するために、本発明の電気柵の制御方法は、所定領域の周囲に形成された導電部材に印加された第1の電圧より低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に、前記導電部材に前記第2の電圧が印加される前よりも、前記導電部材に低い電圧値を印加する工程を備える。
【0040】
ここで、このような工程によって、任意の場所で導電部材に第2の電圧を印加するだけで、印加されている電圧値が低下した導電部材に人が触れても、柵内に入ったり柵から出たりすることができる。
【0041】
また、本発明の電気柵の制御方法が、電圧印加器具により、導電部材と地面間を接地しながら導電部材に第2の電圧を印加する工程を備える場合、電圧印加器具の一方を接地し他方を導電部材に接触させるだけなので、簡単に任意の場所で第2の電圧を導電部材に印加することができる。
【0042】
また、上記の目的を達成するために、本発明の電気柵の電源装置は、所定領域の周囲に形成された導電部材と電気的に接続されると共に、同導電部材に第1の電圧を印加する電圧発生器と、該電圧発生器と電気的に接続されると共に、前記第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に前記第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路とを備える。
【0043】
ここで、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路によって、任意の場所で導電部材に第2の電圧を印加するだけで、導電部材に印加された第1の電圧の電圧値が低下するので、電圧値が低下した導電部材に人が触れても、柵内に入ったり柵から出たりすることができる。
【0044】
また、上記の目的を達成するために、本発明の電気柵の電圧発生器は、所定領域の周囲に形成された導電部材と電気的に接続されると共に、同導電部材に印加された第1の電圧より低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に、前記導電部材に前記第2の電圧が印加される前よりも、前記導電部材に低い電圧値を印加するものである。
【0045】
ここで、導電部材に印加された第1の電圧より低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に、導電部材に第2の電圧が印加される前よりも、導電部材に低い電圧値を印加することによって、任意の場所で導電部材に第2の電圧を印加するだけで、電圧値が低下した導電部材に人が触れても、柵内に入ったり柵から出たりすることができる。
【0046】
また、上記の目的を達成するために、本発明の電気柵の制御回路は、所定領域の周囲に形成された導電部材と電気的に接続されて同導電部材に第1の電圧を印加する電圧発生器と電気的に接続されると共に、前記第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に前記第1の電圧の電圧値を低下せしめるものである。
【0047】
ここで、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下せしめることによって、任意の場所で導電部材に第2の電圧を印加するだけで、導電部材に印加された第1の電圧の電圧値が低下するので、電圧値が低下した導電部材に人が触れても、柵内に入ったり柵から出たりすることができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る電気柵は、人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができる。
本発明に係る電気柵の制御方法は、人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができるよう電気柵を制御できる。
本発明に係る電気柵の電源装置は、電気柵を、人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができるようにすることができる。
本発明に係る電気柵の電圧発生器は、電気柵を、人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができるようにすることができる。
本発明に係る電気柵の制御回路は、電気柵を、人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の電気柵の一構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の電気柵の設置態様の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の電気柵の設置態様の他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の電気柵の裸電線に第2の電圧を印加して人が電気柵を掻い潜る様子を示す概略図である。
【図5】スイッチング素子としてPNP型トランジスタを用いた、本発明の電源装置の回路構成の一例を示す概略図である。
【図6】スイッチング素子としてPチャンネルMOS電界効果トランジスタを用いた、本発明の電源装置の回路構成の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の電気柵に印加される第1の電圧を示した概略グラフである。
【図8】本発明の電気柵に重複して印加される第1の電圧と第2の電圧を示した概略グラフである。
【図9】従来の電気柵の設置態様を示す概略図である。
【図10】人が通電中の従来の電気柵を掻い潜る様子を示す概略図である。
【図11】従来の電気柵に使用されるゲートの構成を示す概略図である。
【図12】図11に示されたゲートを使用した従来の電気柵を示す概略図である。
【図13】従来の電気柵のゲートが取外された状態を示す概略図である。
【図14】従来の電気柵の出入り口の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明の電気柵の一構成例を示す概略図である。
【0051】
図1において、本発明の電気柵1は、所定領域(例えば、田畑領域)の周囲に立設された支柱22に張設された柵線(導電部材の一例である。)3を備える。ここで、柵線3は、裸電線である。
【0052】
また、本実施例では、柵線3は、4本の裸電線(3A〜3D)で構成されており、図1に示すように、4本の裸電線(3A〜3D)は互いに所定の長さで離して略平行に張設されている。
【0053】
即ち、地表に一番近い1段目の裸電線(3D)は、地表から約20cmの高さに位置しており、2段目の裸電線(3C)は裸電線(3D)から上方へ約20cmの高さに位置しており、3段目の裸電線(3B)は裸電線(3C)から上方へ約40cmの高さに位置しており、4段目の裸電線(3A)は裸電線(3B)から上方へ約50cmの高さに位置する。
【0054】
また、4本の裸電線(3A〜3D)は、約50mごとに裸電線からなる上下結線4で結線される。
【0055】
また、柵線3を構成する1段目の裸電線3Dは地表から1段目の碍子21Dに係止して、2段目の裸電線3Cは2段目の碍子21Cに係止して、3段目の裸電線3Bは3段目の碍子21Bに係止して、そして4段目の裸電線3Aは4段目の碍子21Aに係止してそれぞれ支柱22に張設されている。
【0056】
また、本発明の電気柵1は、出力端子6と、出力線7と、柵線3と電気的に接続されると共に、柵線3に第1の電圧を印加する電圧発生器56を備える。また、出力線7は、柵線3と電気的に接続されている。
【0057】
また、本発明の電気柵1は、電圧発生器56と電気的に接続されると共に、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路24を備える。
【0058】
また、4本の裸電線(3A〜3D)のいずれかに第2の電圧を印加する方法としては、例えば図1に示される、検出用電気信号電圧発生器(電圧印加器具の一例である。)23の一端にあるプラス端子23Aを4本の裸電線(3A〜3D)のいずれかに接触させると共に、検出用電気信号電圧発生器23の他端にある導電性材料で形成されたマイナス端子23Bを地中に差し込み、4本の裸電線(3A〜3D)のいずれかと地面間を接地しながら4本の裸電線(3A〜3D)のいずれかに第2の電圧を印加する方法が挙げられる。
【0059】
ここで、検出用電気信号電圧発生器の一端に接続されたプラス端子は、図1のように必ずしもフック形状でなくてもよく、例えばクリップ形状とすることもできる。また、検出用電気信号電圧発生器の他端にある導電性材料で形成されたマイナス端子は、図1のように必ずしも棒状でなくてもよく、例えば板状とすることもできるし、尖らせてもよい。
【0060】
また、検出用電気信号電圧発生器23のプラス端子23Aには、電池16からの直流電圧のプラス側が接続され、マイナス端子には電池16のマイナス側が接続されている。また、この電池16にはサージアブソーバ(サージ防護デバイス)17が並列に接続されている。
【0061】
また、電圧発生器56と制御回路24は、電源装置5に内蔵されており、電源装置5は、電源60と電源スイッチ55を有する。
【0062】
また、電圧発生器56は、図1のように、出力変圧器42の二次巻線の巻終わり43は、出力端子6及び出力線7を介し柵線3に接続されている。
【0063】
また、出力変圧器42の二次巻線の巻始め44はサージアブソーバ45の一端に接続され、サージアブソーバ45の他端はアース端子12に接続されている。
【0064】
また、制御回路24は、スイッチング素子として、リレーの巻線53とリレーのB接点54を有し、さらにこれらを作動させるためのNPN型トランジスタ52と、非反転増幅器であるオペアンプ51を有する。
【0065】
また、出力変圧器42の二次巻線の巻始め44は、抵抗器R1を介し、オペアンプ51に接続されている。
【0066】
また、オペアンプ51の出力点には、NPN型トランジスタ52のベースが接続されている。
また、NPN型トランジスタ52のコレクタには、スイッチング素子であるリレーの巻線53の一端が接続されている。
【0067】
また、リレーの巻線53の他端には、電源60のプラス側が接続され、NPN型トランジスタ52のエミッタには、電源60のマイナス側が接続されている。
【0068】
また、電源60のマイナス側は、電圧発生器56のアース端子12に接続されており、アース端子12はアース棒10に接続され、大地に接地されている。
また、リレーのB接点54は、電圧発生器56の電源入力点46に接続されている。
【0069】
ここで、導電部材の例として電線を挙げているが、電気柵が、所定領域の周囲に形成された導電部材と、導電部材と電気的に接続されると共に、導電部材に第1の電圧を印加する電圧発生器と、電圧発生器と電気的に接続されると共に、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路とを備えるのであれば、必ずしも電線でなくてもよく、例えば導電板を用いてもよい。
【0070】
しかし、電線であれば、電気柵の設置場所が、起伏や段差の多い場所でも、導電板よりも設置しやすく、風の影響も少ないので好ましい。
【0071】
図2は、本発明の電気柵の設置態様の一例を示す概略図である。
鹿や猪などが、このような電気柵(1)で囲まれた田畑に侵入しようとして、張設された裸電線(3A〜3D)に接触すると、鹿や猪などには、図2の矢印のように電源装置5の出力端子6、出力線7、裸電線3C、上下結線4、裸電線(3A、3B及び3D)、鹿や猪などの野生動物8、地中9、アース棒10、アース線11、そしてアース端子12の順路で、動物や人間などに、衝撃を与えることができるほど高い電流(衝撃電流)が流れる。
【0072】
図3は、本発明の電気柵の設置態様の他の例を示す概略図である。図3に示すように、本発明の電気柵1は、柵線3によって田畑を完全に囲まずに、一部が岩壁41など別の物体であってもよい。
【0073】
なお、図3では、岩壁を利用した例を示したが、例えば電気柵の一部が建築物の外壁であってもよい。
【0074】
次に、本発明の電気柵の動作を説明する。
図1に示すように、電源スイッチ55が「オン」であり、検出用電気信号電圧発生器23を柵線3に接続していない場合、柵線3には、電池16からの検出用電気信号電圧(第2の電圧)は与えられていない。また、柵線3には電圧発生器56からの衝撃電圧(第1の電圧)のみが与えられている。
【0075】
また、第1の電圧は、サージアブソーバ45によって短絡されているので、オペアンプ51への入力はわずかであり、オペアンプ51の出力もわずかである。
よって、NPN型トランジスタ52は「オフ」であるから、リレーの巻線53は励磁されていない。従って、リレーのB接点54は閉じている(導通している)ので、衝撃電圧発生器56にはリレーのB接点54を通って電源60の電圧が印加され、第1の電圧が発生する。
【0076】
図7は、本発明の電気柵に印加される第1の電圧を示した概略グラフであるが、電気柵に印加される第1の電圧は、図7に示すように、約1秒間隔で発生するパルス状の電気である。このパルス幅(発生時間)は約0.1ms程度であり、無負荷時の電圧は8000V、周期は約1秒である。
【0077】
発生した第1の電圧は、柵線3(裸電線(3A〜3D))に印加され、野生動物などが裸電線(3A〜3D)に接触すると、野生動物は衝撃を受け退散する。
また、人も、裸電線(3A〜3D)に接触すると衝撃を受けるので、裸電線(3A〜3D)の間を掻い潜って柵内に侵入できない。
【0078】
次に、図4は、本発明の電気柵の裸電線に第2の電圧を印加して人が電気柵を掻い潜る様子を示す概略図である。
【0079】
図4に示すように、検出用電気信号電圧発生器23のフック形状のプラス端子23Aを裸電線3Aに引っ掛け、また、検出用電気信号電圧発生器の棒状のマイナス端子23Bを地中に差し込む。即ち、裸電線3Aと地面との間に検出用電気信号電圧発生器23が接続されたことになる。
【0080】
つまり、電池16からの直流の検出用電気信号電圧(第2の電圧)を裸電線3Aに与えている。すると裸電線3Aにはプラスの検出用電気信号電圧(第2の電圧)と衝撃電圧(第1の電圧)が重複して印加されたことになる。
【0081】
また、電池16にはサージアブソーバ17が並列に接続されていている。
第1の電圧は、このサージアブソーバ17で短絡される。この時の第1の電圧は、サージアブソーバ17の制限電圧以下に抑えられる。図8は、本発明の電気柵に重複して印加される第1の電圧と第2の電圧を示した概略グラフであるが、このグラフが、この時の裸電線の電圧波形を示している。
【0082】
第2の電圧は、図4に示した矢印のように裸電線を伝わり、そして、電源装置5の電圧発生器56の出力変圧器42の二次巻線の巻終わり43へ伝わり、さらに、出力変圧器42の二次巻線の巻始め44とアース端子12との間で、第2の電圧が発生する。
【0083】
また、前述のように二次巻線の巻始め44とアース端子12との間には、サージアブソーバ45が接続されているので、第1の電圧はサージアブソーバ45により短絡される。つまり、サージアブソーバ45は第1の電圧印加時のみ短絡されることになる。
よって、サージアブソーバ45の両端には、第2の電圧のみが検出されることになる。
【0084】
また、サージアブソーバ45に現れた第2の電圧は抵抗器R1を介しオペアンプ51に導かれ非反転増幅される。そして、増幅された第2の電圧は、NPN型トランジスタ52のベースに流れ、それによってコレクタ電流が流れ、リレーの巻線53を励磁する。
【0085】
すると、リレーのB接点54は開(非導通)になり、電圧発生器56には電源電圧が印加されなくなり、第1の電圧の発生は停止する。
その結果、柵線3には、第1の電圧は印加されなくなり、第2の電圧のみ印加されていることとなる。
【0086】
ここで、第2の電圧は、第1の電圧より低く、通常6V〜40V前後であり、第2の電圧が印加された柵線3に人が接触しても電撃を感じない。
【0087】
このように、任意の場所で検出用電気信号電圧発生器23のフック形状のプラス端子23Aを裸電線3Aに引っ掛けて、検出用電気信号電圧発生器23の導電性材料で形成されたマイナス端子23Bを地中に差し込んで裸電線3Aと地面間を接地しながら裸電線3Aに第2の電圧を印加している間は、電圧発生器56は第1の電圧を発生しないので、図4に示すように、この間に人は、感電することなく柵線3を掻い潜り、田畑へ侵入して施肥や除草等を行うことができる。
【0088】
そして、施肥や除草等が終了して、人が再び感電することなく柵線3を掻い潜り、柵線3の外側に出て検出用電気信号電圧発生器23を取外すと、図1に示すような回路状態に戻ったことになる。
【0089】
この時、裸電線3Aに電池16から第2の電圧が与えられていない。すると、制御回路24のオペアンプ51の入力は低くなり、出力も低くなる。
【0090】
よって、NPN型トランジスタ52は「オフ」になるから、リレーの巻線53は励磁されていない。従って、リレーのB接点54は閉じる(導通する)ので、電圧発生器56にはリレーのB接点54を通って電源60の電圧が印加され、第1の電圧が発生する。
そして再び、電圧発生器56が発生させた第1の電圧が柵線3に与えられ、野生動物などを撃退できる電気柵として作動する。
【0091】
また、本発明の制御回路の例として、リレースイッチを用いた制御回路を挙げて説明したが、その他のスイッチング素子を用いてもよい。例えば、図5に示すように、スイッチング素子としてPNP型トランジスタ61を用いてもよいし、また、図6に示すように、スイッチング素子としてPチャンネルMOS電界効果トランジスタ62を用いてもよい。
【0092】
また、本実施例では、スイッチング素子としてリレーを用いた例を説明したが、制御回路が、電圧発生器と電気的に接続されると共に、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下せしめるのであれば、例えば、トランジスタやサイリスタGTOなどの他の素子を使用できる。
【0093】
また、本実施例では第2の電圧として、電池を使用して直流電圧を用いたが、第2の電圧を柵線に印加している時に人が柵線に接触しても感電しない程度の電圧であれば、必ずしも直流電圧でなくてもよい。例えば、第2の電圧として、発信機より発生させた交流電圧や低周波の振動電圧または矩形波の電圧等でもよく、更にパルス状の電圧でもよい。
【0094】
以上のように、本発明の電気柵は、電圧発生器と電気的に接続されると共に、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路を備えるので、所望の位置で導電部材に第2の電圧を印加するだけで、導電部材に印加された第1の電圧の電圧値が低下するので、電圧値が低下した導電部材に人が触れても、柵内に入ったり柵から出たりすることができる。
【0095】
よって、本発明の電気柵は、人が感電することなく所望の位置で通り抜けることができる。
従って、本発明の電気柵であれば、電気柵に囲まれた田畑に人が出入りするとき、従来の電気柵のように、わざわざゲート等の位置まで移動する必要がなく、所望の位置で電圧印加器具を用いて導電部材(柵線)に第2の電圧を印加するだけで、その場所で感電することなく電気柵に囲まれた田畑に出入りすることができる。
【0096】
よって、本発明の電気柵は、田畑の除草や施肥などの管理を安全かつ容易にし、そして短時間で行なうことができ時間と労力を大幅に軽減することができ、農業経営上著しく有益である。
【0097】
また、本発明の電気柵の制御方法、電源装置、電圧発生器、並びに制御回路も、第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が導電部材に印加された場合に第1の電圧の電圧値を低下するという作用を発揮するので、上記のような効果を有する電気柵を提供できる。
【符号の説明】
【0098】
1 電気柵
3 柵線
3A 4段目の裸電線
3B 3段目の裸電線
3C 2段目の裸電線
3D 1段目の裸電線
4 上下結線
5 電源装置
6 出力端子
7 出力線
8 野生動物
9 地中
10 アース棒
11 アース線
12 アース端子
16 電池
17 サージアブソーバ
21A 4段目の碍子
21B 3段目の碍子
21C 2段目の碍子
21D 1段目の碍子
22 支柱
23 検出用電気信号電圧発生器
23A プラス端子
23B マイナス端子
24 制御回路
41 岩壁
42 出力変圧器
43 二次巻線の巻終わり
44 二次巻線の巻始め
45 サージアブソーバ
46 電源入力点
51 オペアンプ
52 NPN型トランジスタ
51 オペアンプ
52 NPN型トランジスタ
53 リレーの巻線
54 リレーのB接点
55 電源スイッチ
56 電圧発生器
60 電源
61 PNP型トランジスタ
62 PチャンネルMOS電界効果トランジスタ
R1 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域の周囲に形成された導電部材と、
該導電部材と電気的に接続されると共に、同導電部材に第1の電圧を印加する電圧発生器と、
該電圧発生器と電気的に接続されると共に、前記第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に前記第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路とを備える
電気柵。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に前記電圧発生器の前記導電部材への第1の電圧の印加を停止せしめる
請求項1に記載の電気柵。
【請求項3】
前記導電部材は電線である
請求項1または請求項2に記載の電気柵。
【請求項4】
所定領域の周囲に形成された導電部材に印加された第1の電圧より低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に、前記導電部材に前記第2の電圧が印加される前よりも、前記導電部材に低い電圧値を印加する工程を備える
電気柵の制御方法。
【請求項5】
電圧印加器具により、前記導電部材と地面間を接地しながら前記導電部材に前記第2の電圧を印加する工程を備える
請求項4に記載の電気柵の制御方法。
【請求項6】
所定領域の周囲に形成された導電部材と電気的に接続されると共に、同導電部材に第1の電圧を印加する電圧発生器と、
該電圧発生器と電気的に接続されると共に、前記第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に前記第1の電圧の電圧値を低下せしめる制御回路とを備える
電気柵の電源装置。
【請求項7】
所定領域の周囲に形成された導電部材と電気的に接続されると共に、同導電部材に印加された第1の電圧より低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に、前記導電部材に前記第2の電圧が印加される前よりも、前記導電部材に低い電圧値を印加する
電気柵の電圧発生器。
【請求項8】
所定領域の周囲に形成された導電部材と電気的に接続されて同導電部材に第1の電圧を印加する電圧発生器と電気的に接続されると共に、前記第1の電圧よりも低い電圧値を有する第2の電圧が前記導電部材に印加された場合に前記第1の電圧の電圧値を低下せしめる
電気柵の制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−135262(P2012−135262A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290156(P2010−290156)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【特許番号】特許第4778113号(P4778113)
【特許公報発行日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(596009788)株式会社末松電子製作所 (16)
【Fターム(参考)】