説明

電気機器の分解方法、及び、電気機器の分解装置

【課題】 部品を基板からより容易に分離できる電気機器の分解方法及び分解装置を提供する。
【解決手段】 分解装置1は、融点以上に加熱することによって溶融する接合材料によって基板6に固定された部品7を基板6から分離する電気機器(ワーク)5の分解装置であり、ワーク5を収容する容器部10と、容器部10内に、接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気を導入するシャワーヘッド20と、容器部10内に収容されたワーク5に振動を加える加振装置50と、を備える。加振装置50は、容器部10内に収容されたワーク5に、周波数を変更しながら振動を加える。ワーク5を、接合材料の融点以上の温度の過熱蒸気に曝して接合材料を溶融させるとともに、振動を加えることによって、部品7と基板6との接合力が弱くなり、部品7が基板6から分離しやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば基板等の基板上にハンダ付け、ロウ付け、ワニス等によって固定された部品を有する電気機器の分解方法及び分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば使用済みの携帯電話機やコンピュータ等の情報通信機器に搭載される回路基板等の電気機器(本明細書、請求の範囲等では電子機器を含むものとする)には、貴金属や希少金属(レアメタル)等の有用な材料や、再利用可能なチップ、コイル等の部品が含まれるため、これらの材料や部品を、樹脂部分や他の金属部分から分離して回収し、再利用することが要望されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、接続部に用いられる金(Au)等の有価金属を回収するためのプリント基板のリサイクル方法において、プリント基板の通電時間、製造方法、分解方法等の情報を示す記号を参照しながら回路パターン等の引き剥がしを行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−314210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような電気機器の解体は、金属部分や樹脂部分を切り離すために、おもに手動または機械的に分離する方法や、機器一式を炉で溶融し、溶融状態で分離を行う方法が採用されている。
しかし、手動または機械的に分離する場合、種々の形状の部品等に切断力、引き剥がし力などの機械的な力を与えて基板から取り外すため、自動化が難しく非常に作業性が低い。
一方、溶融回収を行う場合、回収しようとする金属が混合されるため、溶融した後の分離作業に多くの手間がかかり、分離回収効率が低い。また、回収対象材料以外の材料も溶融する必要があるため、不要物の溶解に多くのエネルギを使ってしまう。
また、熱を使う方法では、樹脂等が燃焼したりコンデンサからの絶縁油等の酸化により有毒ガスが発生する場合があり、さらに分離回収した金属等の酸化変質の問題があり好ましくない。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、部品を基板からより容易に分離できる電気機器の分解方法及び分解装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、融点以上に加熱することによって溶融する接合部材によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解方法であって、前記基板及び該基板上に固定された前記部品を前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気に曝して前記接合材料を溶融させながら、前記基板に、周波数を変化させながら振動を加えることによって、前記部品を前記基板から分離することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、融点以上に加熱することによって溶融する接合部材によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解方法であって、前記基板及び該基板上に固定された前記部品を前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気に曝して前記接合材料を溶融させながら、前記基板に、複数段階の周波数の振動を加えることによって、前記部品を前記基板から分離することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記過熱蒸気によって前記基板及び前記部品の周囲を低酸素雰囲気にすることを特徴とする。
なお、低酸素雰囲気とは、実質的に酸素濃度が1%以下の雰囲気を示す。
請求項4に記載の発明は、前記過熱蒸気は過熱水蒸気であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記振動の周波数の少なくとも一部は、前記部品の固有振動数と実質的に一致するように変更しながら設定することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、融点以上に加熱することによって溶融する接合材料によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解装置であって、前記基板及び該基板上に固定された前記部品を収容する容器部と、前記容器部内に、前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気を導入する過熱蒸気導入装置と、前記容器部内に収容された前記基板に振動を加える加振装置と、を備え、前記加振装置は、前記容器部内に収容された前記基板に、周波数を変更しながら振動を加えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、融点以上に加熱することにより溶融する接合材料によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解装置であって、前記基板及び該基板上に固定された前記部品を収容する容器部と、前記容器部内に、前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気を導入する過熱蒸気導入装置と、前記容器部内に、前記基板を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記容器部内に搬送された前記基板に振動を加える加振装置と、を備え、前記加振装置が、前記搬送手段の搬送方向に沿って配置された複数の加振器からなり、前記容器部内において、前記基板は前記加振器の各々から異なる周波数の振動を加えられながら搬送されることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、前記容器部内を、前記過熱蒸気の導入により低酸素雰囲気にすることを特徴とする。
なお、低酸素雰囲気とは、実質的に酸素濃度が1%以下の雰囲気を示す。
請求項9に記載の発明は、前記過熱蒸気が過熱水蒸気であることを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、前記振動の周波数の少なくとも一部は、前記部品の固有振動数と実質的に一致するように周波数を変更しながら設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
ワーク(電気機器)を、ハンダやロウ等の接合部材の融点以上の温度の過熱蒸気に曝すことによって、接合部材が溶融して、基板と素子等の部品との接合力が弱められる。さらに、ワークを加振することによって、分離容易になった部品(以下同じ)に振動を与え、重力と振動で基板から落下させて回収することができる。
ここで、基板に固定されている部品の寸法や重量、又は、取り付け状態は様々である。そこで、基板を加振する際に、周波数を変化させながら振動を加えることで、部品の各々の固有周波数に近い周波数の振動を加えるので、寸法や重量、あるいは、取り付け状態の異なる部品を共振させることができ、より容易に分離可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気機器の分解装置の構成を模式的に説明する側面図である。
【図2】図1の電気機器の分解装置の構成を模式的に説明する平面図である。
【図3】図1の電気機器の分解装置に備えられたシャワーヘッドの構造を示す図であって、図3(A)は平面図、図3(B)は側面図である。
【図4】図1の電気機器の分解装置の、過熱蒸気供給システムを説明するブロック図である。
【図5】図1の電気機器の分解装置のタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る電気機器の分解装置の構成を模式的に説明する側面図である。
【図7】図6の電気機器の分解装置の構成を模式的に説明する平面図である。
【図8】図6の電気機器の分解装置のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を適用した電気機器の分解装置(以下、単に「分解装置」と称する。)の実施形態を、図面に基づいて説明する。この分解装置は、例えば携帯電話機、コンピュータ等の回路基板(ワーク)を分解するものであり、本発明の電気機器の分解方法を実行するものである。回路基板は、例えば、プリント基板等の基板上にICチップ(素子)、コイル、コンデンサ等の各種部品(素子)や配線が固定されたものである。各種部品の接続端子は、プリント基板にハンダなどの接合部材により固定されている。また、ICチップは、ワニスによってもプリント基板に固定されていることもある。
【0018】
まず、図1、図2を主に参照して、本発明の第1の実施形態の分解装置の構成を説明する。
分解装置1は、ワーク5が収容されて加熱される容器部10と、容器部10内に過熱蒸気を導入する過熱蒸気導入装置(シャワーヘッド)20と、容器部10内にワーク5を搬送する搬送手段(コンベア)30と、容器部10内のワーク5に振動を加える加振装置50と、を主に備える。分解装置1によって分解されるワーク(電気機器)5は、例えばプリント基板である基板6、及び、この基板6にハンダ付けされ、さらにワニスで固められた部品7を有して構成される。
【0019】
容器部10は、1枚のワーク5が収容される寸法を有する箱状のものである。ワーク5は後述する搬送手段30により搬送されて、同容器部10のほぼ中央のワーク処理位置P2で待機する。図1に示すように、容器部10の一方(図1、2の右側)の側面には、ワーク5の入口が開けられており、反対側(図1、2の左側)の側面には出口12が開けられている。入口11及び出口12は、カーテン13、14で閉じられている。処理位置P2の下方の、容器部10の底面には、基板6から分離した部品7が排出される排出口15が開けられている。この排出口15は、両扉式のスカート16で閉じられている。スカート16は、基板6から分離した部品7が当たると開き、その後自動的に閉じられる。排出口15の下方には、基板6から分離した部品7を回収する部品容器19が配置されている。
【0020】
容器部10の上方には、過熱蒸気発生装置で発生した過熱蒸気を容器部10に導入する過熱蒸気導入装置(シャワーヘッド)20が設けられている。シャワーヘッド20は、図3に示すように、中空の平たい直方体状の本体部21と、本体部21の上面中央から突き出して設けられた過熱蒸気導入管22とを有する。本体部21の下面には、複数の蒸気排出口23が分散して形成されている。排出口23の寸法や数、位置を調整することにより、容器部10内の過熱蒸気の分布を調整できる。図1に示すように、シャワーヘッド20は、本体部21が容器部10の内部の上方に配置されて、過熱蒸気導入管22が容器部10の上面を貫通して上方に延びている。
【0021】
図4に示すように、過熱蒸気導入管22には、過熱蒸気発生装置40から延びる過熱蒸気供給管42が接続している。過熱蒸気発生装置40には、ボイラ45が接続している。ボイラ45は、図示しない給水手段から供給される水を加熱して飽和水蒸気を発生する。この飽和水蒸気は、過熱蒸気発生装置40に導入されて再加熱され、過熱蒸気を発生する。発生した過熱蒸気は、過熱蒸気供給管42からシャワーヘッド20を介して容器部10内に噴射される。容器部10内には温度センサ47が取り付けられており、同部内の温度を検知する。制御器48は、温度センサ47が検知した温度に応じて過熱蒸気発生器40の温度が所定の設定温度となるようにフィードバック制御する。
【0022】
再び図1、図2を参照して説明する。
搬送手段(コンベア)30は、容器部10の入口11から出口12を貫通する循環経路を、図1の反時計方向に間欠走行する。コンベア30は、図2に示すように、一対のチェーンコンベア31からなり、図1に示すように、この例では4個のローラ32に巻き回されている。1個のローラ32は駆動ローラであり、図示しないモータに接続されている。
【0023】
両チェーンコンベア31間には、所定の間隔を開けて複数の基板ホルダ33が支持されている。基板ホルダ33は、走行方向の前端を支点として、走行面に平行な平行位置と、走行面から直立する直立位置との間を回動するようにチェーンコンベア31に支持されている。これにより、ワーク5は、搬送方向が水平の経路上では、走行面に対して平行に保持され、搬送方向が下向きの垂直の経路上では、走行面から直立して保持される。そして、搬送方向が水平から下向きから水平方向に変わると、自重により基板ホルダ33から落下する。
【0024】
図1に示すように、下方向に向かう搬送経路の下方には、部品7が分離した基板6を回収する基板容器36が配置されている。
【0025】
加振装置50は、図2に示すように、本体部51と、本体部51から延びる加振棒52とを有する。同装置50は、基台55上に設置されている。基台55は、駆動部56によって、容器部10に対して前進位置と後退位置をとるように移動する。前進位置においては、加振装置50の加振棒52は容器部10内に延びて、処理位置P2に待機している基板ホルダ33の下方に挿入される。そして、加振装置50が稼働すると振動して、基板ホルダ33に振動を加える。加振棒33の振動の周波数は可変であり、一例で数Hzから数kHzまでの周波数の振動を与えることができる。
【0026】
次に、図5を参照して、コンベア30、基台55、加振装置50の動作タイミングを説明する。
コンベア30は、図5のタイミングチャートの上段に示すように、走行と停止を繰り返す間欠走行する。詳細には、コンベア30は、基板ホルダ33が、図1、図2に示す、ワーク受け入れ位置P1と、容器部10の内部のワーク処理位置P2で停止するタイミングで間欠走行する。
【0027】
基台55は、コンベア30が停止中に前進位置をとり、走行中に後退位置をとるように駆動部56によって制御される。そして、加振装置50は、基台50が前進位置にあるときにオンとなり、後退位置にあるときはオフとなる。この際、加振装置50は、図5の最下段に示すように、時間t1から時間t2までの間に、振動の周波数を低周波数から高周波数に連続的に変化させる。ここで、分解対象となる部品7の固有振動数(機械的共振周波数ともいう)が、最低周波数から最高周波数の間に含まれるようにする。
なお、厳密には、基台55が後退位置から前進位置まで移動する移動時間、前進位置から後退位置に移動する移動時間が存在する。加振装置50は、基台55が前進位置に位置するときのみオンとなり、移動時間中はオフとなる。
【0028】
次に、図1、図2を参照して、この分解装置1によるワーク5の分解動作を説明する。
容器部10内には、過熱蒸気発生装置40で発生した過熱蒸気がシャワーヘッド20から噴射されており、空気が追い出されて過熱蒸気が充満し、高温かつ低酸素状態の還元雰囲気とされている。ここでは、酸素濃度が実質的にゼロとなっている。
【0029】
コンベア30は上述のように間欠走行しており、基板ホルダ33がワーク受け入れ位置P1に停止中に、ワーク5が、図示しないローダからこの基板ホルダ33に受け渡される。この際、ワーク5は、部品7が取り付けられた面を下側にして基板ホルダ33に保持される。
【0030】
そして、コンベア30の走行に伴い、ワーク5を保持した基板ホルダ33が入口11から容器部10内に搬送されて、容器部10内の処理位置P2に停止する。
【0031】
すると、駆動部56により基台55が前進し、同時に、加振装置50が稼働する。この際、前述のように振動の周波数を低周波数から高周波数に徐々に変化させる。ワーク5は過熱蒸気に曝されているので、ハンダやロウ材等の、基板6に部品7を固定している導電性の物質(合金)の温度が上昇して(例えば約100〜1300℃)溶融状態となり、部品7と基板6との接合力が弱まり、基板6から分離しやすくなっている。
【0032】
こうして部品7と基板6との接合力が弱まった状態において基板6を加振するので、部品7は基板6に対して振動し、さらに基板6から分離しやすくなる。なお、基板6に固定されている部品7の寸法や重量、あるいは、取り付け状態は様々である。一般に、重量の小さい物質は固有振動数が高く、重量の大きい物質は固有振動数が低い。また、同一の部品でも、長いリード線で取り付けられている部品ほど固有振動数が低くなる。そこで、加振棒52の振動の周波数を低周波数から高周波数に徐々に変化させていくと、まず、重い部品(例えば、ICやLSIのチップ等の比較的大型の素子)がその固有振動数に近い周波数の振動を受けて共振し始め、徐々に、軽量の部品(例えば、抵抗やコンデンサ等の比較的小型の素子)がその固有振動数に近い振動を受けて共振し始める。共振すると、その部品7の振動が大きくなり、基板6との接合力が弱まって、自重により基板6から分離する。
【0033】
こうして分離した部品7は、基板6から落下し、容器部10のスカート16に当たる。すると、部品7の自重によりスカート16が開いて、部品7は排出口15から部品容器19に回収される。
【0034】
その後、コンベア30の走行に伴って、部品7が分離した基板6は容器部10の出口12から出て搬送経路に沿って搬送される。やがて、搬送方向が水平方向から下方向に変わると、基板6の自重によりホルダ33が回動して、基板6は走行面から直立して保持される。そして、搬送方向が下方向から水平方向に変わる際に、その自重によりホルダ33から落下して、基板容器36に回収される。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ハンダの融点以上の温度を有する過熱蒸気でこの接合材料を溶融させることによって、部品7と基板6との接合力が弱まり、部品7を基板6から容易に分離することができる。
(2)部品7がハンダ付けに加えて、さらにワニスによって固められている場合であっても、過熱蒸気でワニスを加熱し軟化させることによって、部品7と基板6との接合力を弱めることができる。
(3)過熱蒸気によって容器部10内の空気を追い出し、高温かつ低酸素の雰囲気とすることによって、ワニス等の樹脂の燃焼(酸化)や炭化による有害ガスの発生を抑制できる。
(4)過熱蒸気として過熱水蒸気を用いることによって、ワーク5が100℃以下の状態では539kcal/kgの潜熱を加熱に用いることができるため、例えば加熱空気の熱風を用いる場合よりも短時間で基板を昇温することができ、高速処理が可能である。
(5)ワーク5を過熱蒸気に曝しつつ加振することによって、部品7と基板6との接合力をさらに弱めることができ、部品7を重力で落下させて回収することができる。
(6)ワーク5を加振する際に、周波数を変化させながら振動を加えるので、部品7の各々の固有周波数に近い周波数の振動を加えて、寸法や重量あるいは取り付け状態の異なる部品7を共振させることができ、より容易に分離可能となる。
【0036】
次に、図6、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る電気機器の分解装置の構成を説明する。
この例の分解装置100は、第1の実施の形態に係る分解装置1と比較して、加振装置50の構成が異なり、それに伴って容器部10の構成が変更されているとともに容器部10の寸法が大型化している。以下、加振装置50と容器部10の変更点について主に説明する。第1の実施の形態に係る分解装置1と同じ作用・構成を有する部品は図1、図2と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0037】
容器部10は、この例では、搬送方向に沿って、例えば3枚のワーク5を収容できる寸法を有する。3枚のワーク5は、容器部10内において、搬送方向上流側から、上流処理位置P12、中央処理位置P13、下流処理位置P14に順に待機する。各処理位置の下方の、容器部10の底面には、基板6から分離した部品7が排出される排出口15A、15B、15Cが開けられている。排出口15A、15B、15Cは、両扉式のスカート16A、16B、16Cで閉じられている。各スカートは、基板6から分離した部品7が当たると開き、その後自動的に閉じられる。排出口15A、15B、15Cの下方には、基板6から分離した部品7を回収する部品容器19A、19B、19Cが配置されている。
なお、容器部10の寸法の増大に伴って、シャワーヘッド20の本体部21の寸法も大きくなっている。
【0038】
加振装置は、3台の加振器50A、50B、50Cを備える。各加振器は、コンベア30の搬送経路に沿って、上流処理位置P12、中央処理位置P13、下流処理位置P14の各々に対応するように並んで配置されている。加振器50A、50B、50Cの構造は、第1の実施の形態の加振装置50と同様であり、本体部51A、51B、51Cと、本体部から延びる加振棒52A、52B、52Cとを有する。各加振器は、基台55上に設置されており、基台55は駆動部56によって容器部10に対して前進位置と後退位置とをとるように移動する。前進位置においては、各加振器50の加振棒52は容器部10内に延びて、各処理位置に待機している基板ホルダ33の下方に挿入される。そして、加振器50が稼働すると振動して、基板ホルダ33に振動を加える。最も上流側の加振器50Aの振動周波数は最も低く(一例で1Hz〜100Hz)、最も下流側の加振器50Cの振動周波数は最も高く(一例で1KHz〜10KHz)、中央の加振器50Bの振動周波数は、両加振器50A、50Bの振動数の中間(一例で100Hz〜1KHz)に設定されている。この例においても、分解対象となる部品7の固有振動数(機械的共振周波数ともいう)が、最低周波数から最高周波数の間に含まれるようにする。
【0039】
次に、図8を参照して、コンベア30、基台55、加振装置50の動作タイミングを説明する。
コンベア30は、図8のタイミングチャートの上段に示すように、走行と停止を繰り返す間欠走行する。詳細には、コンベア30は、基板ホルダ33が、図1、図2に示す、ワーク受け入れ位置P11と、容器部10の内部のワーク処理位置P12、P13、P14で停止するタイミングで間欠走行する。
【0040】
基台55は、コンベア30が停止中に前進位置をとり、走行中に後退位置をとるように駆動部56によって制御される。そして、加振器50A、50B、50Cは、基台50が前進位置にあるときにオンとなり、後退位置にあるときはオフとなる。この際、前述のように、各加振器から周波数の異なる振動が加えられる。
【0041】
次に、図6、図7を参照して、この分解装置100によりワーク5の分解動作を説明する。
容器部10内には、第1実施の形態と同様に、過熱蒸気発生装置40で発生した過熱蒸気がシャワーヘッド20から噴射されており、空気が追い出されて過熱蒸気が充満し、高温かつ低酸素状態の還元雰囲気とされている。
【0042】
コンベア30は上述のように間欠走行しており、基板ホルダ33がワーク受け入れ位置P11に停止中に、ワーク5が基板ホルダ33に順次受け渡される。
【0043】
コンベア30の走行に伴い、ワーク5を保持した基板ホルダ33が入口11から容器部10内に搬送されて、まず、容器部10内の上流側処理位置P12に停止する。
【0044】
すると、駆動部56により基台55が前進し、同時に、各加振器50が稼働する。この際、上流側処理位置P12に待機している基板ホルダ33には、上流側加振器50Aから低周波数の振動f1が加えられる。ここで、同ホルダ33に保持されているワーク5の、固有振動数の低い、重い部品が主に共振する。第1の実施の形態と同様に、ワーク5は過熱蒸気に曝されているので、ハンダやロウ材等の、基板に部品を固定している導電性の物質(合金)が溶融状態となり、部品7と基板6との接合力が弱まり、基板6から分離しやすくなっている。
【0045】
さらに、重い部品7がその固有振動数に近い周波数の振動を受けて共振すると、その部品7の振動が大きくなり、基板6との接合力が弱まって、自重により基板6から分離する。分離した重い部品7は、基板6から落下し、下方のスカート16Aに当たる。すると、部品7の自重によりスカート16Aが開いて、部品7は排出口15Aから部品容器19Aに回収される。
【0046】
次に、コンベア30の走行に伴って、このワーク5が中央処理位置P13に停止すると、基台55が前進し、同時に、各加振器50が稼働する。この際、中央処理位置P13に待機している基板ホルダ33には、中央加振器50Bから中程度の周波数の振動f2が加えられる。ここで、同ホルダ33に保持されているワーク5の、固有振動数が中程度の、中程度の重量の部品7が主に共振し始める。これにより、その部品7の振動が大きくなり、基板6との接合力が弱まって、自重により基板6から分離する。分離した中程度の重量の部品7は、基板6から落下し、排出口15Bから部品容器19Bに回収される。
【0047】
さらに、コンベア30の走行に伴って、このワーク5が下流側処理位置P14に停止すると、基台55が前進し、同時に、各加振器50が稼働する。この際、下流側処理位置P14に待機している基板ホルダ33には、下流側加振器50Cから高い周波数の振動f3が加えられる。ここで、同ホルダ33に保持されているワーク5の、固有振動数が高い、軽量の部品7が主に共振し始める。これにより、その部品7の振動が大きくなり、基板6との接合力が弱まって、自重により基板6から分離する。分離した軽量の部品7は、基板6から落下し、排出口15Cから部品容器19Cに回収される。
【0048】
このように、一枚のワーク5には、各処理位置P12、P13、P14において、低周波数f1、中程度の周波数f2、高周波数f3の各振動が加えられる。このため、これらの周波数に近い固有振動数を有する部品7を共振させることができ、重量が様々な部品7を振動により基板6から分離することができる。
【0049】
この分解装置によれば、前述の(1)〜(5)と同様の効果を得られる。また、加振装置から振動を加える際に、複数段階の周波数の振動を順に加えることにより、固有振動数に一致する周波数の振動を加えることができない場合もあるが、部品と基板との接合力を弱くする効果は十分に得られる。
【0050】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施形態では、分解対象となる電気機器は例えばハンダ付け及びワニスによって各種部品が実装されたプリント基板であるが、本発明の分解対象となる電気機器はこれに限定されない。
(2)実施形態の分解装置は、ワークをコンベアで搬送しながら過熱蒸気を吹き付けているが、本発明はこれに限らず、バッジ式処理を行うものにも適用することができる。
(3)実施形態において、ハンダ等を溶融させる蒸気は例えば水蒸気であったが、本発明はこれに特に限定されず、他の物質からなる過熱蒸気を用いて電気機器の分解を行うようにしてもよい。
(4)第1の実施形態において、加振装置の振動の周波数を低周波数から高周波数に連続的に変化させたが、高周波数から低周波数に連続的に変化させてもよい。また、段階的に変化させてもよい。
(5)第2の実施形態において、加振器を3台として、3段階の周波数の振動を加えたが、周波数の段階はこれに限らない。
【符号の説明】
【0051】
1 電気機器の分解装置 5 ワーク(電気機器)
6 基板 7 部品
10 容器部 11 入口
12 出口 13 カーテン
14 カーテン 15 排出口
16 スカート 19 部品容器
20 過熱蒸気導入装置(シャワーヘッド) 21 本体
22 過熱蒸気導入管
30 搬送手段(コンベア) 31 チェーンコンベア
32 ローラ 33 基板ホルダ
36 基板容器
40 過熱蒸気発生器 42 過熱蒸気供給管
45 ボイラ 47 温度センサ
48 制御器
50 加振装置(加振器) 51 加振器本体
52 加振棒 55 基台
56 駆動部
P1、P11 ワーク受け入れ位置 P2 ワーク処理位置
P12 上流側ワーク処理位置 P13 中央ワーク処理位置
P14 下流側ワーク処理位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点以上に加熱することによって溶融する接合部材によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解方法であって、
前記基板及び該基板上に固定された前記部品を前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気に曝して前記接合材料を溶融させながら、
前記基板に、周波数を変化させながら振動を加えることによって、前記部品を前記基板から分離することを特徴とする電気機器の分解方法。
【請求項2】
融点以上に加熱することによって溶融する接合部材によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解方法であって、
前記基板及び該基板上に固定された前記部品を前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気に曝して前記接合材料を溶融させながら、
前記基板に、複数段階の周波数の振動を加えることによって、前記部品を前記基板から分離することを特徴とする電気機器の分解方法。
【請求項3】
前記過熱蒸気によって前記基板及び前記部品の周囲を低酸素雰囲気にすること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気機器の分解方法。
【請求項4】
前記過熱蒸気は過熱水蒸気であること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電気機器の分解方法。
【請求項5】
前記振動の周波数の少なくとも一部は、前記部品の固有振動数と実質的に一致するように変更しながら設定したことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電気機器の分解方法。
【請求項6】
融点以上に加熱することによって溶融する接合材料によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解装置であって、
前記基板及び該基板上に固定された前記部品を収容する容器部と、
前記容器部内に、前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気を導入する過熱蒸気導入装置と、
前記容器部内に収容された前記基板に振動を加える加振装置と、
を備え、
前記加振装置は、前記容器部内に収容された前記基板に、周波数を変更しながら振動を加えることを特徴とする電気機器の分解装置。
【請求項7】
融点以上に加熱することにより溶融する接合材料によって基板上に固定された部品を前記基板から分離する電気機器の分解装置であって、
前記基板及び該基板上に固定された前記部品を収容する容器部と、
前記容器部内に、前記接合材料の融点以上の温度を有する過熱蒸気を導入する過熱蒸気導入装置と、
前記容器部内に、前記基板を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により前記容器部内に搬送された前記基板に振動を加える加振装置と、
を備え、
前記加振装置が、前記搬送手段の搬送方向に沿って配置された複数の加振器からなり、
前記容器部内において、前記基板は前記加振器の各々から異なる周波数の振動を加えられながら搬送されることを特徴とする電気機器の分解装置。
【請求項8】
前記容器部内を、前記過熱蒸気の導入により低酸素雰囲気にすること
を特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電気機器の分解装置。
【請求項9】
前記過熱蒸気が過熱水蒸気であること
を特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の電気機器の分解装置。
【請求項10】
前記振動の周波数の少なくとも一部は、前記部品の固有振動数と実質的に一致するように周波数を変更しながら設定されることを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれか1項に記載の電気機器の分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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