説明

電気機器の外部雰囲気温度の測定方法

【課題】ケーシングの外部雰囲気温度の測定方法を提供する。
【解決手段】通電時に発熱を伴う電気部品と、電気部品の温度を検知する温度検知手段と、を内部に備えた電気機器の外部雰囲気温度の測定方法である。電気機器の外部雰囲気温度の所定条件下で、電気部品に通電し昇温させて温度検知手段で所定の温度が検知された時点で電気部品への通電を止め、前記所定の温度が検知された時点から前記所定の温度よりも低い別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を、異なる複数の外部雰囲気温度毎に計測して該外部雰囲気温度毎の下降基準時間としてそれぞれ予め記憶しておく。電気部品への通電を止めた後、温度検知手段で所定の温度が検知された時点から別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を計測して、前記計測した下降時間を予め記憶している外部雰囲気温度毎の下降基準時間と比較して、外部雰囲気温度を推測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品を収容した電気機器の外部雰囲気温度の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器において、電気機器の内部の電気部品の温度を検知する温度検知手段を設けたものが知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このものにあっては、電気機器内にサーミスタ等からなる温度検知手段を設け、この温度検知手段が過剰な高温を検知することで、電気部品が過熱して異常な状態となっていることを検知するものである。
【0004】
ところで、例えば空気調和装置等のように、電気機器の外部雰囲気温度を検知するものも知られている。
【0005】
この場合には、サーミスタ等からなる温度検知手段を電気機器の外部に露出するように設け、この温度検知手段が外部雰囲気温度を検知するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−348825号公報
【特許文献2】実開平5−47715号公報
【特許文献3】特開2002−295855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、電気機器の内部の電気部品の温度を検知する機能と、外部雰囲気温度を検知する機能の両方を持たせる場合、例えば特許文献3に示されるように電気機器の内部と外部とにそれぞれ温度検知手段を設けることになるが、温度検知手段を複数設ける必要が生じて、製造コストが増大してしまい、また、温度検知手段を電気機器の外部に露出するように設けると外方に張り出して美観を損ねてしまうものであった。
【0008】
また、温度検知手段を一つのみ設ける場合、この一つの温度検知手段で電気機器の内部の電気部品の温度と外部雰囲気温度の両方を検知するのであるが、温度検知手段で検知される温度は、電気機器の内部の電気部品の温度と外部雰囲気温度の両方の影響を受けるため、外部雰囲気温度を検知するのは困難であった。
【0009】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、電気機器の内部に温度検知手段を設けることで電気機器の外部雰囲気温度が測定可能な測定方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0011】
通電時に発熱を伴う電気部品と、電気部品の温度を検知する温度検知手段と、を備えた電気機器の外部雰囲気温度の測定方法である。電気機器の外部雰囲気温度の所定条件下で、電気部品に通電し昇温させて温度検知手段で所定の温度が検知された時点で電気部品への通電を止め、前記所定の温度が検知された時点から前記所定の温度よりも低い別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を、異なる複数の外部雰囲気温度毎に計測して該外部雰囲気温度毎の下降基準時間としてそれぞれ予め記憶しておく。電気部品への通電を止めた後、温度検知手段で所定の温度が検知された時点から別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を計測して、前記計測した下降時間を予め記憶している外部雰囲気温度毎の下降基準時間と比較して、外部雰囲気温度を推測する。
【0012】
また、電気機器は、壁の表側に設けられる操作部と、壁の裏側に設けられ電気部品としての直流電源構成部品を備える本体部と、壁の表側に面するように設けられ直流電源構成部品から供給される電流にて発熱するヒータ部と、を備えた暖房装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
電気機器の内部に設けてある温度検知手段で検知される温度は、電気機器の外部雰囲気温度の影響を受け、電気部品での発熱が止まった時の電気部品の温度の下降速度は外部雰囲気温度が高いと遅く、外部雰囲気温度が低いと速い。本発明では、温度検知手段で検知される温度の下降速度(下降時間)から外部雰囲気温度を知ることができ、温度検知手段を電気機器の外部に露出するように設けることによる製造コストの増大を抑えることができる。
【0014】
また、電気機器が、壁の表側に設けられる操作部と、壁の裏側に設けられ電気部品としての直流電源構成部品を備える本体部と、壁の表側に面するように設けられ直流電源構成部品から供給される電流にて発熱するヒータ部と、を備えた暖房装置であると、温度検知手段を壁の表側に露出するように設けて美観を損ねることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】外部雰囲気温度毎の、電気部品への通電を止めた後の温度検知手段で検知される温度−時間の図である。
【図2】外部雰囲気温度毎の下降基準時間のテーブルを示す図である。
【図3】暖房装置を設けた壁を示し、(a)は正面図であり、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
本発明は、通電時に発熱を伴う電気部品と、電気部品の温度を検知する温度検知手段と、を備えた電気機器が対象となり、本実施形態では暖房装置であるものとする。
【0018】
暖房装置は、図3に示すように、壁2の表側(室内側)に設けられる操作部11と、壁2の裏側に設けられ、直流電源構成部品をはじめとする通電時に発熱を伴う電気部品3を備えた本体部12と、壁2の表側に面するように設けられ、直流電源構成部品から供給される電流にて発熱するPTCヒータ等の発熱体を備えたヒータ部(図示せず)と、を備えている。操作部11と本体部12と有線または無線で送受信可能となっている。操作部11と本体部12は、外殻をなすケーシング4と、ケーシング4の内部に設けられる基板5と、基板5に取り付けられる電気部品3と、電気部品3の温度を検知する温度検知手段6、とで構成される。
【0019】
電気部品3は通電時に発熱を伴うもので、発熱量が大きい方が温度変化が大きくなるため好ましく、一般的にはリレーや直流電源構成部品が好適に挙げられるが、CPU(Central Processing Unit)、操作スイッチ、表示部、送信部、その他抵抗素子等であってもよい。本実施形態では、直流電源構成部品を本発明の測定方法で用いる電気部品3として利用する。
【0020】
温度検知手段6はサーミスタ等からなり、電気部品3に取り付けられて電気部品3の温度を直接検知するか、あるいはケーシング4の内部雰囲気温度を検知して間接的に電気部品3の温度を検知するものである。例えば図3に示す操作部11の場合、基板5に実装されて基板5を介して又は内部雰囲気温度を検知して間接的に電気部品3の温度を検知している。
【0021】
温度検知手段6で検知された温度は、比較判定手段(図示せず)において、記憶手段(図示せず)に予め記憶されている異常判定温度と比較され、異常判定温度以上の場合には、電気部品3が異常な状態となって異常昇温していると判定される。その後、制御手段(図示せず)が電気部品3への通電を停止する処理を行ったりする。
【0022】
温度検知手段6で検知される温度は、ケーシング4(電気機器)の外部雰囲気温度の影響を受ける。電気部品3への通電を止めると、電気部品3での発熱が止まって電気部品3の温度が下降するが、この下降速度は外部雰囲気温度が高いと遅く、外部雰囲気温度が低いと下降速度は速い。このため、下降速度から外部雰囲気温度を知ることができる。
【0023】
具体的には、予め、ケーシング4の外部雰囲気温度の所定条件下で、電気部品3に通電し昇温させて温度検知手段6で所定の温度が検知された時点で電気部品3への通電を止め、前記所定の温度が検知された時点から前記所定の温度よりも低い別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を、異なる複数の外部雰囲気温度毎に計測して、該外部雰囲気温度毎の下降基準時間としてそれぞれ記憶手段にて記憶しておく。
【0024】
そして、使用時に、電気部品3への通電を止めた後、温度検知手段6で所定の温度が検知された時点から別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を下降時間計測手段(図示せず)にて計測する。推測手段(図示せず)にて、下降時間計測手段にて計測した下降時間と、予め記憶している外部雰囲気温度毎の下降基準時間とを比較して、外部雰囲気温度を推測する。
【0025】
本実施形態では、図1に示すように、外部雰囲気温度の所定条件を10℃、20℃、30℃とし、それぞれの場合において、電気部品3の温度(すなわち温度検知手段6で検知された温度)が60℃から50℃までの区分(図1中のt60−50(但し外部雰囲気温度10℃の場合で、以下同じ))、50℃から40℃までの区分(図1中のt50−40)、40℃から30℃までの区分(図1中のt40−30)、30℃から20℃までの区分(図1中のt30−20)、の各下降時間を計測して、図2に示すようなテーブルとして記憶手段に記憶させる。
【0026】
例えば、ある使用時、電気部品3の温度が60℃以上の状態から該電気部品3への通電が停止され、温度検知手段6で検知される温度が下降を始め、60℃から50℃までの区分の下降時間が25(sec)、50℃から40℃までの区分の下降時間が50(sec)、40℃から30℃までの区分の下降時間が130(sec)、30℃から20℃までの区分の下降時間が250(sec)であった。各区分の下降時間をテーブルの下降基準時間と比較して、一番近い(すなわち数値の差が最も小さい)下降基準時間の外部雰囲気温度を各区分の外部雰囲気温度として仮判定するもので、60℃から50℃までの区分は10℃、50℃から40℃までの区分は10℃、40℃から30℃までの区分は20℃、30℃から20℃までの区分は10℃、が外部雰囲気温度と仮判定される。
【0027】
そして、全区分において最も多く仮判定された外部雰囲気温度を、外部雰囲気温度として推測するもので、この場合、外部雰囲気温度は10℃と推測される。
【0028】
また、本実施形態では区分の温度幅を10(deg)としてあるが、5(deg)や3(deg)や1(deg)としてもよく、温度幅を小さくすることで精度が向上する。
【符号の説明】
【0029】
11 操作部
12 本体部
2 壁
3 電気部品
4 ケーシング
5 基板
6 温度検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に発熱を伴う電気部品と、電気部品の温度を検知する温度検知手段と、を内部に備えた電気機器の外部雰囲気温度の測定方法であって、電気機器の外部雰囲気温度の所定条件下で、電気部品に通電し昇温させて温度検知手段で所定の温度が検知された時点で電気部品への通電を止め、前記所定の温度が検知された時点から前記所定の温度よりも低い別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を、異なる複数の外部雰囲気温度毎に計測して該外部雰囲気温度毎の下降基準時間としてそれぞれ予め記憶しておき、電気部品への通電を止めた後、温度検知手段で所定の温度が検知された時点から別の所定の温度が検知されるまでの下降時間を計測して、前記計測した下降時間を予め記憶している外部雰囲気温度毎の下降基準時間と比較して、外部雰囲気温度を推測することを特徴とする電気機器の外部雰囲気温度の測定方法。
【請求項2】
電気機器は、壁の表側に設けられる操作部と、壁の裏側に設けられ電気部品としての直流電源構成部品を備える本体部と、壁の表側に面するように設けられ直流電源構成部品から供給される電流にて発熱するヒータ部と、を備えた暖房装置であることを特徴とする請求項1記載の電気機器の外部雰囲気温度の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−27644(P2011−27644A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175861(P2009−175861)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】