説明

電気機器収納用キャビネット

【課題】電気機器収納用キャビネットの箱体内に、一辺を固定支持した可動板を設けて、キャビネットの箱体内を2層構造とした電気機器収納用キャビネットにおいて、機器取り付け後の可動板の開き角度θを犠牲にすることなく、該キャビネットにおける機器集積率を大きくとることが可能な、電気機器収納用キャビネットを提供する。
【解決手段】前面扉部と背面部と側面部とで囲まれた電気機器収納スペースを有する電気機器収納用キャビネットであって、該キャビネットの側面部若しくは背面部に支持された可動板により2段分割され、該可動板は、機器取付け面と、該機器取付け面の一端を前面扉部方向へ垂直に折曲した可動板取付面を有し、該可動板取付面と該キャビネットの側面部若しくは背面部とがヒンジ機構により接続され、該ヒンジ機構により、該可動板が該キャビネット内で扉方向に回動自在に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機器収納用キャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器収納用キャビネットの奥行方向に機器を積層して取り付ける手段として、図5に示すように、電気機器収納用キャビネット1の箱体内に機器取付用の可動板2を配置し、該箱体内を2層構造とする方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
該可動板2は、箱体内に回転軸を有しており、箱体の前面扉部1aを開放後、該回転軸に沿って該可動板2を前面扉部方向に回転移動させると、箱体の背面側に位置する背面部1bに設置された機器取付面を露出させることができる構造を有している。上記した電気機器収納用キャビネット1の可動板2には通常電力計測用のメータ等の比較的厚みの薄い機器3aを取付けておくことが一般的である。また、背面部1bの機器取付面にはブレーカ等の比較的厚みのある機器3cを取り付けてあり、機器を2層に配置している。
【0004】
一方、可動板2に機器3a(制御機器等)を取り付け、電気機器収納用キャビネット1の機器集積率を向上させたいという要望がある。図6には、可動板2に厚みのある機器3bを取り付けた状態の断面説明図を示している。可動板2は電気機納収納用キャビネットの比較的深い位置で電気機器収納用キャビネット1の側面1cに回動自在に支持されている。箱体の機器取付面に配置された機器3cへの配線作業等を行う場合には、図6の矢印方向に可動板2を回転移動させ、箱体の奥側での作業性を確保することが求められる。
【0005】
電気機器収納用キャビネットにおける機器集積率を向上させる観点からは、可動板2上に、厚みのある機器3aの取り付けが可能な、機器取付可能スペース3を可動板2の端部に渡る位置まで広くとる事が好ましい。しかしながら、機器取付可能スペース3を広くとった場合、該可動板2に取り付けられる機器の厚みによっては、可動板2を回転移動させて箱体の機器取付面を露出させる際に、該可動板2に取り付けた機器と、箱体の側面1cとの接触によって、可動板2の開き角度θが小さくなり、箱体の奥側で配線作業を行う時の作業性が悪くなる可能性がある。作業性確保の観点の観点から、該可動板2に取り付けられる機器の厚みに関わらず、常に、可動板2の開き角度θが例えば90度以上となるようにするためには、図7に示すように、可動板2上の機器取付可能スペース3を回転軸から所定距離離れた場所に限定することも考えられるが、この場合には該キャビネットにおける機器集積率が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−61091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前記の問題を解決し、電気機器収納用キャビネットの箱体内に可動板を配置し、該可動板の一辺を回転軸として回転移動可能に支持して、キャビネットの箱体内を2層構造とした電気機器収納用キャビネットにおいて、機器取り付け後の可動板の開き角度θを犠牲にすることなく、該キャビネットにおける機器集積率を向上させることが可能な、電気機器収納用キャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る電気機器収納用キャビネットは、前面扉部と背面機器取付け部と側面部とで囲まれた電気機器収納スペースを有する電気機器収納用キャビネットであって、該電気機器収納スペースは、該キャビネットの側面部若しくは背面部に支持された可動板により2段分割され、該可動板は、機器取付け面と、該機器取付け面の一端を前面扉部方向へ垂直に折曲して形成した可動板取付面を有し、該可動板取付面と該キャビネットの側面部若しくは背面部とがヒンジ機構により接続され、該ヒンジ機構により、該可動板が該キャビネット内で扉方向に回動自在に支持されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電気機器収納用キャビネットにおいて、該可動板取付面に配線孔を有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の電気機器収納用キャビネットにおいて、該可動板の該キャビネットの奥行方向に対する保持位置を調整可能な取付位置調整機構を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電気機器収納用キャビネットは、キャビネット内を2層構造とするための可動式仕切り板の構成として、機器取付け面と該機器取付け面の一端を前面扉部方向へ垂直に折曲して形成した可動板取付面を有し、該可動板取付面と該キャビネットの側面部若しくは背面部とがヒンジ機構により接続され、該ヒンジ機構により、該キャビネット内で扉方向に回動自在に支持される構成を採用している。これにより、電気機器収納用キャビネットの箱体内に、一辺を固定支持した可動板を設けて、キャビネットの箱体内を2層構造とした電気機器収納用キャビネットにおいて、機器取り付け後の可動板の開き角度θを犠牲にすることなく、該キャビネットにおける機器集積率を向上させることを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電気機器収納用キャビネットの全体図である。
【図2】可動板の説明図である。
【図3】可動板を該キャビネット内に支持する支持機構の説明図である。
【図4】本発明に係る電気機器収納用キャビネットの断面説明図である。
【図5】従来の2層構造キャビネットの断面説明図である。
【図6】従来の2層構造キャビネットの断面説明図である。
【図7】従来の2層構造キャビネットの断面説明図である。
【図8】可動板を該キャビネット内に支持する支持機構の他の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0014】
図1には、本発明に係る電気機器収納用キャビネットの全体図を示している。
【0015】
本発明の電気機器収納用キャビネット1は、前面扉部1aと、背面部1bと、側面部1cと、天井面部1dと、床面部1eとで囲まれた電気機器収納スペースを有し、該電気機器収納スペースは、該側面部1cに支持された可動板2により2段分割される構造を有する。
【0016】
本発明のキャビネット1の外枠を構成する筺体は、正面に開口部を有する箱体であって、該開口部の周囲に水切部1fを有する。該開口部には、前面扉部1aが回転自在に支持される。
【0017】
該キャビネット内に収納される機器は、該筺体の背面部1bの内側に設置された機器取付面1gを構成する鉄製の機器取付ベース上と、該筺体の側面に位置する側面部1cに回転自在に支持された可動板2に形成した機器取付け面2aに取り付けられて機器を2層に配置している。機器取付面1gには、例えば、分電盤の内機であるブレーカ等を配置することができる。可動板2の機器取付け面2aには、例えば、各種制御機器を配置することができる。
【0018】
図2には、電気機器収納用キャビネット1に用いる可動板2の説明図を示し、図3には、該可動板2の支持機構の説明図を示している。
【0019】
図2に示すように、本発明の電気機器収納用キャビネット1に用いる可動板2は、機器取付け面2aと、該機器取付け面の一端を前面扉部方向へ垂直に折曲して形成した可動板取付面2bを有する。また、可動板取付面2bには機器取付け面2a上に配置される機器の配線を引き出す配線孔2cが形成されている。配線孔2cより引き出される配線は可動板2を回動自在に支持するヒンジ機構6を取り付けた支持フレーム5等に結束され、電気機器収納用キャビネット1の機器取付面1g上に配置される機器や主幹ブレーカ等に接続されている。なお、可動板取付面2bに平行して機器取付け面2a上に配線ダクトを設け、機器取付け面2a上の機器の配線を収納しておくことが好ましい。
【0020】
図3に示すように、可動板2は、側面部1cの上下位置に平行配置された一対の位置調節バー4と、該上下の位置調節バー4に保持される支持フレーム5と、該支持フレーム5上にねじ固定された軸受部6aと、可動板2の可動板取付面2b上にねじ固定された略L字状のヒンジ辺6bと、及び軸受部6aとヒンジ辺6bとを軸支するヒンジピン6cからなる支持機構により、該筺体に回転自在に支持される。
【0021】
なお、可動板2は取付位置調整機構により、キャビネットの奥行方向に対する保持位置を調整できるものとすることが好ましい。図3に示す実施形態では、取付位置調整機構は該位置調節バー4が、支持フレーム5を保持する位置を奥行方向に調節することにより搭載する機器の厚みによって支持フレーム5の保持位置を適宜調整することができる。すなわち、側面部1cの上下位置に平行配置された一対の位置調節バー4に、奥行き方向に連続する調整孔10をそれぞれ形成し、支持フレーム5の保持位置を厚みのある機器を搭載する時には、キャビネット開口部近傍の調整孔とし、厚みの薄い機器を搭載する時には、キャビネット開口部より離れた位置の調整孔とする。上記構造により、可動板2の機器取付け面2aに搭載される機器の厚みに応じて可動板のキャビネット1の奥行方向に対する取付位置を調整することが可能な構造としている。
【0022】
なお、取付位置調整機構は図8に示すように、支柱フレーム5をキャビネット1の前面開口近傍固定し、該支柱フレーム5に回動自在に支持したヒンジ機構6のヒンジ辺6bと、可動板2の可動板取付面2bの端部に連続して形成した調整孔10によるものとしてもよい。これにより、厚みのある機器を搭載する時には、可動板取付面2bの先端部に設けた調整孔10とヒンジ辺6bとを固定するものとし、厚みの薄い機器を搭載する時には、可動板取付面2bの基端部に設けた調整孔10とヒンジ辺6bとを固定するものとする。上記構造により、可動板2の機器取付け面2aに搭載される機器の厚みに応じて可動板のキャビネット1の奥行方向に対する取付位置を調整することが可能な構造としている。
【0023】
可動板2は、前記のように該軸受部6aとヒンジ辺6bとからなるヒンジ機構6により、該筺体1内で扉方向に回動自在に支持されるが、ヒンジ辺6bは略L字状に形成された各辺を可動板2にねじ止め固定しているため、可動板2を安定的に支持することができる。
【0024】
また、該可動板2には、該可動板2の開き角度θがゼロ(可動板が閉状態)にある状態で該可動板2を施錠固定するための施錠孔2dを備えている。
【0025】
図4には、本発明に係る電気機器収納用キャビネットの断面説明図を示している。
【0026】
本発明では、前記L字折曲構造を有する可動板2を、図4に示すように配置することにより、該可動板2に厚みのある機器を設置した場合であっても、該可動板2の開き角度θが大きくなる方向に回転させた際に、水切部1fにより取り付ける機器の厚みが制限さる機器取付領域(制限スペース9b)を低減させ、水切部1fと干渉しないで機器取付が可能なスペース(不干渉スペース9a)を広くとることを可能としている。
【0027】
なお、可動板取付面2bの近傍領域に位置する制限スペース9bは、不干渉スペース9aと比べて高さ方向が小さくなるため、該制限スペース9bは、前述したような可動板2に配置する機器への配線を収納する配線用ダクトを配置する領域として利用することが好ましい。
【0028】
また、前記のように可動板2の右上部には施錠孔2dを設け、可動板の開き角度θがゼロ(可動板が閉状態)にあるとき、筺体の天井面部1dから垂下する支柱7と係合する構成とした。閉状態にある可動板は、該支柱7に支えられて、筺体内で所定位置に安定保持される。なお、筺体内の機器集積率を大きくする観点から、該支柱7を、天井より垂下させる構造として、電気機器収納スペース内における該支柱による空間占有比率を低く抑え、電気機器収納スペースとして活用することが好ましい。
【0029】
なお、上述した実施形態では水切部1fを有する屋外用キャビネットであるが、水切部1fを有しない屋内用キャビネットでもよい。この場合には可動板2を開いた時にキャビネットの側面部1cと機器が干渉する部分に対応する機器取付領域が制限スペース9bとなる。さらに、上述した実施形態では、可動板2のヒンジ機構は箱体の前面扉部1aの回動軸と箱本体の正面開口を挟んだ反対側に設置されているが、同じ側に設置されていてのよい。
【0030】
さらに、上記実施形態では可動板2は電気機器収納用キャビネット1の側面部1cに支持されたものであるが、該キャビネットの背面部1bより腕部を開口側に向けて突出させ、該腕部の先端に可動板2の可動板取り付け面2aを支持する構造としてもよい。
【0031】
なお、電気機器収納スペースの一部のみを、可動板2により2段分割された構造とし、他のスペースを可動板2により2段分割されない奥行きの深いスペースとすれば、該他のスペースには、例えば主幹ブレーカ8等、2層構造の電気機器収納スペースに収まらない大型の機器を配置することができる。この場合、主幹ブレーカ8を、天井より垂下させる構造として、電気機器収納スペース内における該主幹ブレーカ8による空間占有比率を低く抑え、電気機器収納スペースとして活用することが好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 電気機器収納用キャビネット
1a 前面扉部
1b 背面部
1c 側面部
1d 天井面部
1e 床面部
1f 水切部
1g 機器取付面
2 可動板
2a 機器取付け面
2b 可動板取付面
2c 配線孔
3 機器取付可能スペース
3a 厚みの薄い機器
3b 厚みのある機器
3c 厚みのある機器
4 位置調節バー
5 支持フレーム
6 ヒンジ機構
6a 軸受部
6b ヒンジ辺
6c ヒンジピン
7 支柱
8 主幹ブレーカ
9a 不干渉スペース
9b 制限スペース
10 調整孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面扉部と背面部と側面部と天井面部と床面部とで囲まれた電気機器収納スペースを有する電気機器収納用キャビネットであって、
該電気機器収納スペースは、該キャビネットの側面部若しくは背面部に支持された可動板により2段分割され、
該可動板は、機器取付け面と、該機器取付け面の一端を前面扉部方向へ垂直に折曲して形成した可動板取付面を有し、
該可動板取付面と該キャビネットの側面部若しくは背面部とがヒンジ機構により接続され、該ヒンジ機構により、該可動板が該キャビネット内で扉方向に回動自在に支持される
ことを特徴とする電気機器収納用キャビネット。
【請求項2】
該可動板取付面に配線孔を有することを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用キャビネット。
【請求項3】
該可動板の該キャビネットの奥行方向に対する保持位置を調整可能な取付位置調整機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機器収納用キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−273396(P2010−273396A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120450(P2009−120450)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】