電気機械変換素子の駆動装置、モータ装置、及びロボット装置
【課題】駆動精度を向上させる。
【解決手段】電気機械変換素子の駆動装置は、電気機械変換素子に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御する駆動回路部と、電気機械変換素子の駆動電圧を検出する検出部と、駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を駆動回路部に出力する駆動処理、及び、駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を駆動回路部に出力する補正処理、を実行する制御部と、を備え、制御信号は、少なくとも駆動制御信号及び補正制御信号を含む。
【解決手段】電気機械変換素子の駆動装置は、電気機械変換素子に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御する駆動回路部と、電気機械変換素子の駆動電圧を検出する検出部と、駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を駆動回路部に出力する駆動処理、及び、駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を駆動回路部に出力する補正処理、を実行する制御部と、を備え、制御信号は、少なくとも駆動制御信号及び補正制御信号を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子の駆動装置、モータ装置、及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子などの電気機械変換素子に駆動電圧を供給する駆動装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載されている電気機械変換素子の駆動装置は、定電流を供給する駆動回路を備え、制御信号のパルス幅によって定電流を供給する期間を制御することによって、圧電素子の駆動を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−165011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような駆動装置は、電流や電荷を精密に制御しようとしても、電気機械変換素子のリーク電流や、駆動回路のもつ微小なオフセット電流によって、繰り返し駆動を行っているうちにオフセット電荷が電気機械変換素子に保持されてしまうことがある。このような場合に、上述のような駆動装置は、駆動電圧を正しく供給できないという問題がある。
したがって、上述のような駆動装置では、電気機械変換素子の駆動精度を向上させることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、電気機械変換素子の駆動精度を向上させることができる駆動装置、モータ装置、及びロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一実施形態は、電気機械変換素子に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御する駆動回路部と、前記電気機械変換素子の駆動電圧を検出する検出部と、前記駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を前記駆動回路部に出力する駆動処理、及び、前記駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて前記駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を前記駆動回路部に出力する補正処理、を実行する制御部と、を備え、前記制御信号は、少なくとも前記駆動制御信号及び前記補正制御信号を含むことを特徴とする電気機械変換素子の駆動装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上記の電気機械変換素子の駆動装置を備えることを特徴とするモータ装置である。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上記のモータ装置を備えることを特徴とするロボット装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気機械変換素子の駆動精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図2】第1の実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第1のタイムチャートである。
【図3】第1の実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第2のタイムチャートである。
【図4】第2の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図5】第3の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図6】第3の実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第2のタイムチャートである。
【図7】第4の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図8】本実施形態におけるモータ装置を示す斜視図である。
【図9】本実施形態におけるモータ装置の動作を示す図である。
【図10】本実施形態におけるモータ装置の駆動電圧波形を示す図である。
【図11】本実施形態におけるロボット装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による電気機械変換素子の駆動装置について、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
本実施形態では、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態による圧電素子の駆動装置(以下、圧電駆動装置1という)を示す概略ブロック図である。
この図において、圧電駆動装置1は、コントローラ20と、駆動回路部30とを備えている。また、圧電駆動装置1は、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に接続されている。
【0013】
圧電素子40は、例えば、ピエゾ素子であり、電圧により形状が変位して、力に変換する。圧電素子40は、2つの端子を有し、第1の端子(ノードN1)が、駆動電圧が供給される駆動信号線L3に接続され、第2の端子(ノードN2)が、接地されている。
【0014】
駆動回路部30は、第1の制御信号線L1と第2の制御信号線L2とを介して、コントローラ20に接続されている。駆動回路部30は、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を、コントローラ20が出力する制御信号に基づいて制御する。つまり、駆動回路部30は、制御信号(第1制御信号及び第2制御信号)に基づいて、定電流によって圧電素子40を充電又は放電して、駆動電圧を供給する。すなわち、駆動回路部30は、圧電素子40を電流駆動する。
【0015】
なお、制御信号には、第1の制御信号線L1に出力される第1制御信号と、第2の制御信号線L2に出力される第2制御信号とが含まれる。また、第1制御信号及び第2制御信号は、パルス信号である。駆動回路部30は、第1制御信号又は第2制御信号のパルス幅によって、圧電素子40を充電又は放電するための電荷量が制御される。
【0016】
また、駆動回路部30は、カレントソース部31、カレントシンク部32、第1のスイッチ33、及び第2のスイッチ34を備えている。
カレントソース部31は、ソース端子(ノードN3)に正の定電流を供給する定電流電源であり、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に電流を供給する。つまり、カレントソース部31は、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に電荷を充電することによって、駆動電圧を制御する。
【0017】
第1のスイッチ33は、例えば、FET(電界効果トランジスタ:Field effect transistor)などのスイッチであり、カレントソース部31と圧電素子40との間に配置される。また、第1のスイッチ33は、制御端子が第1の制御信号線L1に接続されている。第1のスイッチ33は、第1の制御信号線L1に、例えば、H(ハイ:high)状態が供給された場合に、カレントソース部31のソース端子(ノードN3)と駆動信号線L3との間を導通状態にする。また、第1のスイッチ33は、第1の制御信号線L1に、例えば、L(ロウ:low)状態が供給された場合に、カレントソース部31のソース端子(ノードN3)と駆動信号線L3との間を非導通(遮断)状態にする。すなわち、第1のスイッチ33は、カレントソース部31と圧電素子40との間に配置され、第1制御信号に基づいてカレントソース部31から圧電素子40に充電を行う。
【0018】
カレントシンク部32は、シンク端子(ノードN4)に定電流を引き込む(負の定電流を供給する)定電流電源であり、駆動信号線L3を介して、圧電素子40から電荷を引き抜く。つまり、カレントシンク部32は、駆動信号線L3を介して、圧電素子40から電荷を放電することによって、駆動電圧を制御する。
【0019】
第2のスイッチ34は、例えば、FETなどのスイッチであり、圧電素子40とカレントシンク部34との間に配置される。また、第2のスイッチ34は、制御端子が第2の制御信号線L2に接続されている。第2のスイッチ34は、第2の制御信号線L2に、例えば、H状態が供給された場合に駆動信号線L3とカレントシンク部32のシンク端子(ノードN4)との間を導通状態にする。また、第2の制御信号線L2に、例えば、L状態が供給された場合に非導通(遮断)状態にする。すなわち、第2のスイッチ34は、圧電素子40とカレントシンク部32との間に配置され、第2制御信号に基づいて圧電素子40からカレントシンク部32に放電を行う。
【0020】
コントローラ20は、CPU(Central processing unit)などを含み、駆動回路部30を介して、圧電素子40の駆動を制御する。コントローラ20は、駆動回路部30に出力する制御信号によって、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を制御する。
【0021】
コントローラ20は、駆動回路部30に対して、駆動処理と補正処理の2つの制御処理を実行する。この第1の制御処理である駆動処理は、圧電素子40に駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を駆動回路部30に出力する。また、第2の制御処理である補正処理は、後述する駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて、駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を駆動回路部30に出力する。ここで、目標電圧とは、圧電駆動装置1が圧電素子40を駆動する際に、駆動電圧の制御において、目標とする理想の駆動電圧のことである。なお、制御信号には、少なくとも駆動制御信号と補正制御信号とが含まれる。
【0022】
また、コントローラ20は、A/D(アナログ/デジタル)変換部21、駆動処理部22、及び補正処理部23を備えている。
A/D変換部21(検出部)は、圧電素子40の駆動電圧、すなわち、駆動信号線L3のノードN1における電圧を検出し、デジタル信号に変換する。
【0023】
駆動処理部22は、上述の駆動処理を実行する。駆動処理部22は、第1制御信号又は第2制御信号のパルス幅によって、圧電素子40を充電又は放電するための電荷量を制御する。駆動処理部22は、駆動する目標電圧が現在のノードN1の電圧より高い駆動電圧である場合、駆動する目標電圧値と現在のノードN1の電圧値とに応じて、所定のパルス幅の第1制御信号を駆動制御信号として第1の制御信号線L1に出力する。また、駆動処理部22は、駆動する目標電圧が現在のノードN1の電圧より低い駆動電圧である場合、駆動する目標電圧値と現在のノードN1の電圧値とに応じて、所定のパルス幅の第2制御信号を駆動制御信号として第2の制御信号線L2に出力する。
また、駆動処理部22は、駆動電圧の変化する速度を制御することができる。つまり、駆動処理部22は、駆動制御信号(第1制御信号又は第2制御信号)を間欠的(断続的)にパルス信号を出力することによって、駆動電圧の上昇又は下降する速度を制御する。
なお、本実施形態において、制御信号は論理信号であり、パルス幅はH状態の幅を示す。
【0024】
補正処理部23は、上述の補正処理を実行する。補正処理部23は、A/D変換部21が検出したノードN1の電圧である検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。一例として、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号を駆動回路部30に出力する。なお、制御信号には、パルス信号である第1制御信号と、パルス信号である第2制御信号とが含まれる。つまり、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号のうちのいずれか一方として補正制御信号を出力する。
【0025】
また、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差に応じて、補正制御信号のパルス幅を変更する。補正処理部23は、例えば、検出電圧と目標電圧との差と、補正制御信号のパルス幅とを関連付けたテーブル(データテーブル)に基づいて補正制御信号のパルス幅を決定してもよいし、圧電素子40の設計上の静電容量値などに基づいた演算によって補正制御信号のパルス幅を決定してもよい。また、このテーブルは、予め上述のような演算によって作成されたものでもよいし、実験などで実測した測定値に基づいて予め作成されたものでもよい。
なお、補正処理部23は、第1制御信号及び第2制御信号による圧電素子40の駆動シーケンスにおいて、後述する所定のタイミングで、A/D変換部21に圧電素子40の駆動電圧を検出させて、補正処理を実行する。
【0026】
次に、本実施形態における圧電駆動装置1の動作について説明する。
なお、本実施形態では、A/D変換部21によって圧電素子40の駆動電圧を検出される所定のタイミングは、目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングである場合の形態について説明する。
【0027】
図2は、本実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第1のタイムチャートである。
図2は、A/D変換部21による検出電圧の目標電圧が、0Vである場合の例を示している。図2において、各グラフは、上から(a)第1制御信号、(b)第2制御信号、及び(c)駆動電圧を示しており、各グラフの横軸は、時間を示している。また、(a)及び(b)のグラフは、縦軸が論理状態(L状態又はH状態)を示し、(c)のグラフは、縦軸が電圧を示している。また、(c)駆動電圧において、波形W1(破線の波形)は、目標とする理想的な駆動電圧の波形を示し、波形W2(実線の波形)は、本実施形態における駆動電圧の波形を示している。
【0028】
図2において、まず、コントローラ20の駆動処理部22は、第1制御信号(ここでは充電信号)及び第2制御信号(ここでは放電信号)を駆動制御信号として出力することによって、駆動処理を実行する。ここでは、時刻T1から時刻T2までの期間、時刻T5から時刻T6までの期間、及び時刻T12から時刻T13までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第1制御信号を第1の制御信号線L1に出力する。つまり、駆動処理部22は、第1制御信号にH状態のパルス信号DP11、DP12、及びDP13を出力する。
【0029】
これにより、第1のスイッチ33が導通状態になり、駆動信号線L3は、カレントソース部31から供給される定電流によって充電される。つまり、波形W2に示すように、時刻T1から時刻T2までの期間、時刻T5から時刻T6までの期間、及び時刻T12から時刻T13までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が上昇する。
【0030】
また、時刻T3から時刻T4までの期間、時刻T7から時刻T8までの期間、及び時刻T14から時刻T15までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第2制御信号を第2の制御信号線L2に出力する。つまり、駆動処理部22は、第2制御信号にH状態のパルス信号DP21、DP22、及びDP23を出力する。
【0031】
これにより、第2のスイッチ34が導通状態になり、駆動信号線L3は、カレントシンク部32によって引き込まれる定電流によって放電される。つまり、波形W2に示すように、時刻T3から時刻T4までの期間、時刻T7から時刻T8までの期間、及び時刻T14から時刻T15までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が下降する。
【0032】
なお、理想的な駆動電圧波形W1では、時刻T2から時刻T3までの期間、時刻T6から時刻T7までの期間、及び時刻T13から時刻T14までの期間において、駆動電圧VH1が維持される。また、時刻T5から時刻T6までの期間、及び時刻T9から時刻T12までの期間において、駆動電圧0Vが維持される。しかしながら、圧電素子40のリーク電流や、カレントソース部31及びカレントシンク部32のもつ微小なオフセット電流によって、ノードN1の駆動電圧にオフセット電圧が発生する。本実施形態では、波形W2に示すように、駆動信号線L3の駆動電圧は、波形W1より高い電圧となる場合の例である。
【0033】
本実施形態における圧電駆動装置1は、一例として、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、補正処理を実行する。つまり、A/D変換部21が、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、ノードN1の駆動電圧を検出する。
補正処理部23は、A/D変換部21によって検出された検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号を駆動回路部30に出力する。
【0034】
ここでは、例えば、時刻T9において、検出電圧と目標電圧との差ΔV1が予め定められた閾値以上となり、補正処理部23は、時刻T10から時刻T11までの期間に、補正パルス信号HP1(補正制御信号)を第2制御信号として、第2の制御信号線L2に出力する。これにより、ノードN1の駆動電圧におけるオフセット電圧が放電されて、目標電圧である0Vに補正される。
なお、補正処理部23は、補正パルス信号HP1のパルス幅ΔD1(時刻T10から時刻T11までの期間)を、検出電圧と目標電圧との差ΔV1に応じて変更する。
【0035】
次に、本実施形態における補正処理の別の一例を説明する。
図3は、本実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第2のタイムチャートである。
図3は、駆動電圧が電圧VH2と電圧VH3とを繰り返し、A/D変換部21による検出電圧の目標電圧が、VH3である場合の例を示している。図3において、各グラフは、図2と同様に、上から(a)第1制御信号、(b)第2制御信号、及び(c)駆動電圧を示しており、各グラフの横軸は、時間を示している。また、(a)及び(b)のグラフは、縦軸が論理状態(L状態又はH状態)を示し、(c)のグラフは、縦軸が電圧を示している。また、(c)駆動電圧において、波形W3(破線の波形)は、目標とする理想的な駆動電圧の波形を示し、波形W4(実践の波形)は、本実施形態における駆動電圧の波形を示している。
【0036】
図3において、まず、コントローラ20の駆動処理部22は、第1制御信号(ここでは充電信号)及び第2制御信号(ここでは放電信号)を駆動制御信号として出力することによって、駆動処理を実行する。ここでは、時刻0から時刻T21までの期間、時刻T22から時刻T23までの期間、時刻T26から時刻T27までの期間、及び時刻T33から時刻T34までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第1制御信号を第1の制御信号線L1に出力する。つまり、駆動処理部22は、第1制御信号にH状態のパルス信号DP14、DP15、DP16、及びDP17を出力する。
【0037】
これにより、波形W4に示すように、時刻0から時刻T21までの期間、時刻T22から時刻T23までの期間、時刻T26から時刻T27までの期間、及び時刻T33から時刻T34までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が上昇する。
【0038】
また、時刻T24から時刻T25までの期間、時刻T31から時刻T32までの期間、及び時刻T35から時刻T36までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第2制御信号を第2の制御信号線L2に出力する。つまり、駆動処理部22は、第2制御信号にH状態のパルス信号DP24、DP25、及びDP26を出力する。
【0039】
これにより、波形W4に示すように、時刻T24から時刻T25までの期間、時刻T31から時刻T32までの期間、及び時刻T35から時刻T36までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が下降する。
【0040】
また、図3において、図2の場合と同様に、圧電素子40のリーク電流や、カレントソース部31及びカレントシンク部32のもつ微小なオフセット電流によって、ノードN1の駆動電圧にオフセット電圧が発生する。本実施形態では、波形W4に示すように、駆動信号線L3の駆動電圧は、波形W3より低い電圧となる場合の例である。
【0041】
本実施形態における圧電駆動装置1は、一例として、目標電圧がVH2(V)のタイミングにおいて、補正処理を実行する。つまり、A/D変換部21が、目標電圧がVH2(V)のタイミングにおいて、ノードN1の駆動電圧を検出する。
補正処理部23は、A/D変換部21によって検出された検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号を駆動回路部30に出力する。
【0042】
ここでは、例えば、時刻T28において、検出電圧と目標電圧との差ΔV2が予め定められた閾値以上となり、補正処理部23は、時刻T29から時刻T30までの期間に、補正パルス信号HP2(補正制御信号)を第1制御信号として、第1の制御信号線L1に出力する。これにより、ノードN1の駆動電圧におけるオフセット電圧が充電されて、目標電圧であるVH2(V)に補正される。
なお、補正処理部23は、補正パルス信号HP2のパルス幅ΔD2(時刻T29から時刻T30までの期間)を、検出電圧と目標電圧との差ΔV2に応じて変更する。
【0043】
図2及び図3を参照して説明したように、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、検出電圧と目標電圧との差に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号のうちのいずれか一方として補正制御信号(HP1又はHP2)を出力する。
【0044】
<補正処理を実行するタイミング>
次に、補正処理部23が補正処理を実行するタイミングの一例について説明する。
図2及び図3において、上述した所定のタイミング(補正処理を実行するタイミング)が、目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングである場合について説明したが、これに限定されるものでななく、他の形態も可能である。
【0045】
例えば、補正処理を実行するタイミングは、駆動制御信号を係数として、予め定められた一定回数、圧電素子40が駆動された場合としてもよい。この場合、補正処理部23は、駆動制御信号を予め定められた回数出力するごとに、補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、正確な駆動電圧が圧電素子40に供給される。
なお、圧電駆動装置1が圧電素子40の駆動電圧を周期的に変化させて駆動させる場合には、補正処理部23は、駆動制御信号の出力回数の替わりに、予め定められた周期の回数ごとに、補正処理を実行する形態でもよい。また、補正処理部23は、駆動制御信号を1回数出力するごとに、補正処理を実行する形態でもよい。
【0046】
また、補正処理を実行するタイミングは、予め定められた期間(一定の時間)ごとでもよい。この場合、補正処理部23は、予め定められた期間ごとに、補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、正確な駆動電圧が圧電素子40に供給される。
【0047】
なお、上述の図2及び図3では、A/D変換部21は、目標電圧が安定した電圧となるタイミングで、ノードN1における圧電素子40の駆動電圧を検出しているが、これに限定されるものではない。例えば、図2(c)の時刻T1から時刻T2の期間のように、駆動電圧が変化している期間において、駆動電圧を検出する形態でもよい。この場合、補正処理部23は、圧電素子40の設計上の静電容量値などに基づいた演算によって、目標電圧を決定してもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態における圧電駆動装置1は、駆動回路部30が圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御し、A/D変換部21(検出部)が圧電素子40の駆動電圧を検出する。そして、コントローラ20(制御部)は、駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を駆動回路部30に出力する駆動処理、及び、駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を駆動回路部30に出力する補正処理を実行する。また、制御信号は、少なくとも駆動制御信号及び補正制御信号を含む。
【0049】
これにより、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧(目標電圧)に補正されるため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。例えば、圧電素子40のリーク電流や、カレントソース部31及びカレントシンク部32のもつ微小なオフセット電流によって、駆動電圧にオフセット電圧が発生するような場合であっても、圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態において、A/D変換部21は、目標電圧が予め定められた電圧値(例えば、0V)になるタイミングにおいて、駆動電圧を検出する。
これにより、圧電素子40が正しく駆動されているか否かを判定するための目標電圧を、容易に設定することができる。例えば、目標電圧を駆動電圧が安定した期間における電圧とした場合、A/D変換部21は、駆動電圧を安定して精度良く検出することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0051】
また、本実施形態において、コントローラ20は、上述の補正処理において、検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果(例えば、差分)が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、コントローラ20は、演算結果が閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号(HP1又はHP2)を駆動回路部30に出力する。
これにより、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧に補正することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態において、コントローラ20は、駆動制御信号を予め定められた回数出力するごとに、上述の補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、圧電素子40には、正確な駆動電圧が供給される。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0053】
また、本実施形態において、コントローラ20は、予め定められた期間ごとに、上述の補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、圧電素子40には、正確な駆動電圧が供給される。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0054】
また、本実施形態において、制御信号には、パルス信号である第1制御信号(充電信号)と、パルス信号である第2制御信号(放電信号)とが含まれる。そして、駆動回路部30は、カレントソース部31が圧電素子40に電流を供給し、第1のスイッチ33がカレントソース部31と圧電素子40との間に配置され、第1制御信号に基づいてカレントソース部31から圧電素子40に充電を行う。また、カレントシンク部32が圧電素子40に充電された電荷を放電し、第2のスイッチ34が圧電素子とカレントシンク部32との間に配置され、第2制御信号に基づいて圧電素子40からカレントシンク部32に放電を行う。つまり、駆動回路部30は、電流駆動によって、圧電素子40を駆動する。
【0055】
これにより、圧電素子40を電流によって駆動するため、駆動回路部30は、駆動電圧の波形をほぼ直線で変化させることができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、複雑な形状の駆動波形に対しても、高精度に対応することができる。また、コントローラ20は、制御信号として論理信号(H状態又はL状態の信号)を使用し、パルス幅によって圧電素子40を駆動する電流を制御できる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、D/A(デジタル/アナログ)変換部などを備えていない簡易な論理回路によって、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0056】
また、本実施形態において、コントローラ20は、補正処理において、検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果に基づいて、第1制御信号(充電信号)及び第2制御信号(放電信号)のうちのいずれか一方として、補正制御信号(HP1又はHP2)を出力する
これにより、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40の駆動電圧を適切な電圧(目標電圧)に補正することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態における電気機械変換素子の駆動装置について説明する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
図4は、本実施形態による圧電駆動装置1aを示す概略ブロック図である。
この図において、圧電駆動装置1aは、コントローラ20と、駆動回路部30aとを備えている。また、圧電駆動装置1aは、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に接続されている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
駆動回路部30aは、図1の駆動回路部30の構成に、放電スイッチ50(第3のスイッチ)が追加されている。つまり、駆動回路部30aは、カレントソース部31、カレントシンク部32、第1のスイッチ33、第2のスイッチ34、及び放電スイッチ50を備えている。
【0059】
放電スイッチ50(第3のスイッチ)は、例えば、FETなどのスイッチであり、圧電素子40と並列に配置される。また、放電スイッチ50は、制御端子が第3の制御信号線L4に接続されている。放電スイッチ50は、圧電素子40において駆動電圧が供給される第1の端子(ノードN1)と、圧電素子40において接地される第2の端子(ノードN2)との間を、第3の制御信号線L4に出力される放電制御信号(第3制御信号)に基づいて、導通させる。例えば、放電スイッチ50は、第3の制御信号線L4に、例えば、H状態が供給された場合に圧電素子40の両端子(ノードN1とノードN2)の間を導通状態にする。また、放電スイッチ50は、第3の制御信号線L4に、例えば、L状態が供給された場合に非導通(遮断)状態にする。すなわち、放電スイッチ50は、圧電素子40の両端を導通状態にし、圧電素子40に蓄積された電荷を放電する。
【0060】
本実施形態における圧電駆動装置1aの動作は、以下の動作を除いて、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様である。
【0061】
本実施形態において、コントローラ20は、補正処理において、放電制御信号(第3制御信号)として補正制御信号を出力する。つまり、コントローラ20は、放電スイッチ50に対して圧電素子40に蓄積された電荷を放電させることによって、駆動電圧の補正を行う。
例えば、目標電圧が0Vであり、A/D変換部21によって検出された検出電圧が、正の電圧であった場合に、コントローラ20は、第3の制御信号線L4にH状態を補正制御信号として放電スイッチ50に出力する。これにより、放電スイッチ50が導通状態になり、圧電素子40に蓄積された電荷を放電される。そして、圧電素子40の駆動電圧が目標電圧の0Vに補正される。なお、コントローラ20は、補正制御信号のパルス幅を検出電圧と目標電圧との差に応じて定めて補正制御信号を出力してもよいし、圧電素子40を放電し駆動電圧を0Vにするのに十分なパルス幅を予め定めて、固定のパルス幅の補正制御信号を出力してもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態において、駆動回路部30は、圧電素子40において駆動電圧が供給される第1の端子(ノードN1)と、圧電素子40において接地される第2の端子(ノードN2)とを、第3制御信号に基づいて、導通させる放電スイッチ50を備える。そして、コントローラ20は、補正処理において、第3制御信号として補正制御信号を出力する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧(目標電圧)に補正されるため、本実施形態における圧電駆動装置1aは、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1aは、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様に、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0063】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態における電気機械変換素子の駆動装置について説明する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
【0064】
図5は、本実施形態による圧電駆動装置1bを示す概略ブロック図である。
本実施形態では、第1の実施形態における駆動回路部30を駆動回路部30bに置き換えた形態である。つまり、本実施形態では、論理信号による制御信号によって電流駆動を行う駆動回路部30の替わりに、アナログ信号による制御信号によって電流駆動を行う電流アンプ部35を備える駆動回路部30bを使用する。
【0065】
図5において、圧電駆動装置1bは、コントローラ20aと、駆動回路部30bとを備えている。また、圧電駆動装置1bは、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に接続されている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
駆動回路部30bは、制御信号線L5を介して、コントローラ20aに接続されている。駆動回路部30bは、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を、コントローラ20aが出力する制御信号に基づいて制御する。
【0067】
また、駆動回路部30bは、電流アンプ部35を備えている。電流アンプ部35(電流アンプ)は、制御信号の電圧に応じて、圧電素子40の駆動電圧を供給するための電流を制御する電流アンプである。電流アンプ部35は、例えば、アナログ信号である制御信号に、予め定められた基準電圧より高い電圧が印加された場合に、基準電圧との差に応じた正の電流を駆動信号線L3に供給する。また、電流アンプ部35は、この基準電圧より低い電圧が印加された場合に、基準電圧との差に応じた負の電流を駆動信号線L3に供給し、さらに、制御信号に基準電圧が印加された場合に、駆動信号線L3に電流の供給を停止する。これにより、電流アンプ部35は、電荷を充電又は放電することによって、圧電素子40に駆動電圧を供給する。ここで、圧電素子40に充電又は放電される電荷量は、基準電圧を基準とした制御信号の波形の面積によって制御される。
【0068】
コントローラ20aは、駆動回路部30bに出力する制御信号(アナログ信号)によって、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を制御する。コントローラ20aは、制御信号(駆動制御信号及び補正制御信号)の出力方法が異なる点を除いて、第1の実施形態におけるコントローラ20と同様である。コントローラ20aは、A/D変換部21、駆動処理部22、補正処理部23、及びD/A変換部24を備えている。
D/A変換部24は、駆動回路部30bを制御するための電圧値を示すデジタル信号をアナログ信号に変換する。変換されたアナログ信号は、駆動回路部30bに制御信号として出力される。
【0069】
次に、本実施形態における圧電駆動装置1bの動作について説明する。
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、A/D変換部21によって圧電素子40の駆動電圧を検出される所定のタイミングは、目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングである場合の形態について説明する。
【0070】
図6は、本実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示すタイムチャートである。
図6は、A/D変換部21による検出電圧の目標電圧が、0Vである場合の例を示している。図6において、各グラフは、上から(a)制御信号、及び(b)駆動電圧を示しており、各グラフの横軸は、時間を示している。また、(a)及び(b)のグラフは、縦軸が電圧を示している。なお、(a)制御信号において、波形W7は、アナログ信号である駆動信号の波形を示し、上述した基準電圧は、電圧V2である。
また、(b)駆動電圧において、波形W5(破線の波形)は、目標とする理想的な駆動電圧の波形を示し、波形W6(実線の波形)は、本実施形態における駆動電圧の波形を示している。
【0071】
図6において、まず、コントローラ20aの駆動処理部22は、D/A変換部24を介して、制御信号を駆動制御信号として出力することによって、駆動処理を実行する。ここでは、時刻T41から時刻T42までの期間、時刻T45から時刻T46までの期間、及び時刻T52から時刻T53までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、基準電圧V2より電圧の高い信号(例えば、電圧V3)を制御信号線L5に出力する。つまり、駆動処理部22は、制御信号として、駆動制御信号DS1、DS3、及びDS5を出力する。
【0072】
これにより、波形W6に示すように、時刻T41から時刻T42までの期間、時刻T45から時刻T46までの期間、及び時刻T52から時刻T53までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が上昇する。
【0073】
また、時刻T43から時刻T44までの期間、時刻T47から時刻T48までの期間、及び時刻T54から時刻T55までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、基準電圧V2より電圧の低い信号(例えば、電圧V1)を制御信号線L5に出力する。つまり、駆動処理部22は、制御信号として、駆動制御信号DS2、DS4、及びDS6を出力する。
【0074】
これにより、波形W6に示すように、時刻T43から時刻T44までの期間、時刻T47から時刻T48までの期間、及び時刻T54から時刻T55までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が下降する。
【0075】
なお、理想的な駆動電圧波形W5では、時刻T42から時刻T43までの期間、時刻T46から時刻T47までの期間、及び時刻T53から時刻T54までの期間において、駆動電圧VH4が維持される。また、時刻T45から時刻T46までの期間、及び時刻T49から時刻T52までの期間において、駆動電圧0Vが維持される。しかしながら、圧電素子40のリーク電流や、電流アンプ部30のもつ微小なオフセット電流によって、ノードN1の駆動電圧にオフセット電圧が発生する。本実施形態では、波形W6に示すように、駆動信号線L3の駆動電圧は、波形W5より高い電圧となる場合の例である。
【0076】
そこで、本実施形態における圧電駆動装置1bでは、一例として、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、補正処理を実行する。つまり、A/D変換部21が、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、ノードN1の駆動電圧を検出する。
補正処理部23は、A/D変換部21によって検出された検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、D/A変換部24を介して、補正制御信号(HS1)を駆動回路部30aに出力する。
【0077】
ここでは、例えば、時刻T49において、検出電圧と目標電圧との差ΔV3が予め定められた閾値以上となり、補正処理部23は、時刻T50から時刻T51までの期間に、補正制御信号(HS1)を制御信号として、制御信号線L5に出力する。これにより、ノードN1の駆動電圧におけるオフセット電圧が放電されて、目標電圧である0Vに補正される。
なお、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差ΔV3に応じて、例えば、信号HS2のように補正制御信号の振幅を変更してもよいし、信号幅を変更してもよい。また、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差ΔV3に応じて、補正制御信号の振幅と信号幅を組み合わせて変更してもよい。
【0078】
上述のように、図6を参照して、A/D変換部21によって取得された検出電圧が、目標電圧より高い場合の例を説明したが、検出電圧が目標電圧より低い場合においても、補正処理部23は、補正制御信号として、基準電圧V2より電圧の低い信号を出力する点を除いて、同様に動作する。
【0079】
以上のように、本実施形態において、駆動回路部30aは、制御信号の電圧に応じて、駆動電圧を供給するための電流を制御する電流アンプ部(電流アンプ)35を備える。そして、駆動処理部22は、D/A変換部24を介して、駆動制御信号DS1〜DS6を制御信号として制御信号線L5に出力する。また、補正処理部23は、D/A変換部24を介して、補正制御信号HS1を制御信号として制御信号線L5に出力する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧(目標電圧)に補正されるため、本実施形態における圧電駆動装置1bは、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1bは、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様に、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0080】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態における電気機械変換素子の駆動装置について説明する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
【0081】
上述した第1〜第3の実施形態における圧電駆動装置(1、1a、1b)は、圧電素子40を複数駆動することも可能である。そこで、本実施形態では、一例として、第1の実施形態における圧電駆動装置1に複数の圧電素子40を駆動させる場合を説明する。
図7は、本実施形態による圧電駆動装置1cを示す概略ブロック図である。
この図において、圧電駆動装置1cは、コントローラ20と、駆動回路部30と、切り替えスイッチ60(601〜60N、Nは2以上の整数)とを備えている。また、圧電駆動装置1cは、駆動信号線L3を介して、圧電素子40(401〜40N)に接続されている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
切り替えスイッチ601〜60Nのそれぞれは、駆動信号線L3(ノードN11〜N1N)と圧電素子401〜40Nの間に接続され、切り替え信号線L6によって制御される。なお、切り替え信号線L6は、ここでは、N本の信号線である。切り替えスイッチ601〜60Nは、コントローラ20から切り替え信号線L6を介して供給される切り替え信号によって、駆動回路部30によって駆動される圧電素子401〜40Nを切り替える。
【0083】
コントローラ20は、各圧電素子40(401〜40N)を駆動する前に、圧電素子401〜40Nのうちの1つを選択して切り替えスイッチ601〜60Nに対して、切り替え信号を出力して駆動する圧電素子40を切り替える。なお、複数の圧電素子40を駆動する形態でもよく、その場合、コントローラ20は、切り替えスイッチ601〜60Nに対して、圧電素子401〜40Nのうちの複数を選択する切り替え信号を出力する。
【0084】
以上のように、本実施形態における圧電駆動装置1cは、複数の圧電素子40(401〜40N)を駆動することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1cは、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様に、複数の圧電素子40(401〜40N)に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40(401〜40N)の駆動精度を向上させることができる。
【0085】
[第5の実施形態]
上述した第1〜第4の実施形態における圧電駆動装置(1、1a、1b、1c)は、電気機械変換素子を使用する様々な装置に適用することができる。その一例として、本実施形態では、モータ装置(アクチュエータ)に適用した場合の形態について説明する。また、ここでは、一例として、モータ装置が圧電駆動装置1を備える形態を説明するが、圧電駆動装置1a(又は、1b、1c)を備える形態でもよい。
【0086】
図8は、本実施形態におけるモータ装置MTRを示す斜視図である。
この図において、モータ装置MTRは、回転子SFと、伝達部BTと、移動部ACと、支持部材BSと、制御部CONTとを有している。モータ装置MTRは、回転子SF及び移動部ACが支持部材BSによって支持された状態になっており、移動部ACに接続された伝達部BTが回転子SFに掛けられた構成になっている。すなわち、伝達部BTは、回転子SFの周面の少なくとも一部に掛けられる。制御部CONTは移動部ACに接続されており、当該移動部ACに対して駆動信号を供給可能になっている。
【0087】
移動部ACは、圧電素子40(40A、40B、図9参照)を備えている。
制御部CONTは、上述した圧電駆動装置1を備えている。制御部CONTは、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力伝達状態として伝達部BTを一定距離移動させる駆動動作及び回転力伝達状態を解消した状態で伝達部BTを所定の位置に戻す復帰動作を圧電素子40(40A、40B)に行わせる。なお、本実施形態において後述する制御部CONTによる各処理は、コントローラ20による処理に対応する。
【0088】
図9は、本実施形態におけるモータ装置の動作を示す図である。
この図において、回転子SFの回転軸方向をZ軸方向(Z方向)とし、当該Z軸方向に垂直な平面上の直交方向をそれぞれX軸方向(X方向)及びY軸方向(Y方向)とする。
【0089】
この図において、伝達部BTは、第一端部71、第二端部72及びベルト部73を有している。
また、圧電素子40Aは、支持部材81によって支持されている。圧電素子40Aは、図中−X側の端部の位置が固定されている。このため、圧電素子40Aは、X方向に伸縮することで図中+X側の端部の位置がX方向に移動することになる。圧電素子40Aのうち当該+X側の端部は、支持部材81の先端部に接続されている。支持部材81の先端部は、例えば第一端部71に接続されている。
【0090】
圧電素子40Bは、支持部材82によって支持されている。圧電素子40Bは、図中+X側の端部の位置が固定されている。このため、圧電素子40Bは、X方向に伸縮することで図中−X側の端部の位置がX方向に移動することになる。圧電素子40Bのうち当該−X側の端部は、支持部材82の先端部に接続されている。支持部材82の先端部は、例えば第二端部72に接続されている。
【0091】
次に、本実施形態におけるモータ装置MTRにおいて、回転子SFを駆動させる動作を説明する。回転子SFを駆動させる際には、オイラーの摩擦ベルト理論に基づき、回転子SFに所定の有効巻き付き角θで巻き掛けられた伝達部BTに有効張力を生じさせ、当該有効張力によって回転子SFにトルクを伝達する。
【0092】
まず、制御部CONTは、第一端部71が+X方向に、第二端部72が−X方向にそれぞれ移動するように圧電素子40A及び圧電素子40Bを変形させる。この動作により、伝達部BTの第一端部71側には張力T1が発生し、伝達部BTの第二端部72側には張力T2が発生する。したがって、伝達部BTには、回転力伝達状態(スクイーズ状態)となる保持力である有効張力(T1−T2)が発生する。
【0093】
制御部CONTは、伝達部BTに有効張力を発生させた状態を保持しつつ、図9(a)に示すように、伝達部BTの第一端部71が−X方向に移動するように、かつ、第二端部72が−X方向に移動するように圧電素子40A及び圧電素子40Bを変形させる(駆動動作)。この動作において、制御部CONTは、第一端部71の移動距離と第二端部72の移動距離とを等しくさせる。この動作により、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力が発生した状態で伝達部BTが移動し、当該移動と共に回転子SFがθZ方向(矢印方向)に回転する。
【0094】
制御部CONTは、第一端部71及び第二端部72を所定距離だけ移動させた後、図9(b)に示すように、第二端部72が駆動の開始位置(所定位置)へ戻るように、かつ、第一端部71が移動しないように、圧電素子40Bだけを変形させる。この動作により、第二端部72が+X方向へ移動し、伝達部BTの巻き掛けが緩んだ状態になる。つまり、伝達部BTに付加されていた有効張力(回転子SFに対する保持力)が解除された状態になる。この状態においては、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力は発生せず、回転子SFは慣性によって矢印方向に回転し続けることになる。
【0095】
制御部CONTは、伝達部BTの巻き掛けを緩ませた後、図9(c)に示すように、第一端部71が駆動の開始位置(所定位置)へ戻るように圧電素子40Aを変形させる。この動作により、伝達部BTの巻き掛けが緩んだまま、すなわち、有効張力が発生しないまま、伝達部BTの第一端部71が駆動の開始位置(所定位置)へ戻っていく(復帰動作)。
【0096】
第一端部71が駆動開始位置に戻される直前になったら、制御部CONTは、圧電素子40Bを変形させて第二端部72を+X方向に移動させる。この動作により、第一端部71が駆動開始位置に戻されるのとほぼ同時に、第二端部72側に張力T2が発生し、第一端部71側に張力T1が発生する。これにより、駆動開始時に伝達部BTに有効張力を付加させた状態と同様の状態となる。
【0097】
伝達部BTに有効張力が付加された後、制御部CONTは、伝達部BTの第一端部71が−X方向に移動するように圧電素子40Aを変形させ、第二端部72が−X方向に移動するように圧電素子40Bを変形させる(駆動動作)。このとき、第一端部71の移動距離と第二端部72の移動距離とを等しくさせる。この動作により、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力が発生した状態で伝達部BTが移動し、当該移動と共に回転子SFがθZ方向に回転する。
【0098】
この後、制御部CONTは、伝達部BTに付加されていた有効張力を再度解除させる。
制御部CONTは、有効張力を解除させた後、伝達部BTの第一端部71及び第二端部72が開始位置に戻るように移動させる(復帰動作)。このように制御部CONTが上記駆動動作と復帰動作とを移動部ACに繰り返し行わせることにより、回転子SFがθZ方向に回転し続けることになる。また、例えば、オイラーの摩擦ベルト理論では、摩擦係数μが0.3の場合に、有効巻き付き角θが300°以上の時にオイラー係数部分の値が0.8以上となる。このことから、摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θを300°以上とすることにより、圧電素子40Aによる張力T1の80%以上の力が回転子SFのトルクに寄与することになる。このように、トルクの大きさは圧電素子40Aの張力T1によって一意に決定される。したがって、例えば圧電素子40Aに用いられるピエゾ素子などは、数ミリ程度の小型素子であっても、数百ニュートン以上の力を出すことができるので非常に大きな回転力を付与することができる。
【0099】
次に、本実施形態によるモータ装置MTRにおける圧電素子40(40A、40B)の駆動電圧について説明する。
図10は、本実施形態におけるモータ装置の駆動電圧波形を示す図である。
この図において、各グラフは、横軸が時間を示し、縦軸が電圧を示している。また、図10(a)の波形W8は、圧電素子40Aの駆動電圧を示し、図10(b)の波形W9は、圧電素子40Bの駆動電圧を示している。
【0100】
図10において、時刻t0から時刻t3までの期間M1が、上述した回転力伝達状態に対応し、時刻t1から時刻t2までの期間M3が、駆動動作を実行している期間に対応する。また、時刻t3から時刻t5までの期間M2が、上述した回転力伝達状態を解消した状態に対応し、時刻t2から時刻t4までの期間M4が、復帰動作を実行している期間に対応する。なお、波形W8及び波形W9において、時刻t0から時刻t5までの期間の駆動波形が、時刻t5から時刻t8の示すように繰り返される。
制御部CONTの圧電駆動装置1は、駆動回路部30を介して、波形W8の駆動電圧を圧電素子40Aに、波形W9の駆動電圧を圧電素子40Bに、それぞれ供給する。
また、制御部CONTは、上述した補正処理を実行するタイミングにおいて補正処理を実行する。
【0101】
以上のように、本実施形態におけるモータ装置MTRは、圧電駆動装置1(1a、1b、1c)を備えている。これにより、適切な駆動電圧に補正されるため、本実施形態におけるモータ装置MTRは、駆動精度を向上させることができる。
【0102】
また、本実施形態において、モータ装置MTRは、回転子SFの周面の少なくとも一部に掛けられる伝達部BTと、伝達部BTに接続され、伝達部BTを移動させる圧電素子40(40A、40B)と、を備えている。また、制御部CONT(コントローラ20又は20a)は、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力伝達状態として伝達部BTを一定距離移動させる駆動動作及び回転力伝達状態を解消した状態で伝達部BTを所定の位置に戻す復帰動作を圧電素子40(40A、40B)に行わせる。
これにより、本実施形態におけるモータ装置MTRは、高トルクを発生させることができ、さらに、適切な駆動電圧に補正されるため、駆動精度を向上させることができる。
【0103】
なお、制御部CONTは、モータ装置MTRの駆動状態に応じて、補正処理を実行してもよい。
例えば、制御部CONTは、伝達部BTが所定の位置(開始位置)に戻された状態において、補正処理を実行する。つまり、制御部CONTは、図10のポイントP3の状態において、補正処理を実行する。この場合、制御部CONTは、開始位置においての補正処理になるため、モータ装置MTRの駆動に影響を低減して、駆動電圧を適切に補正することができる。
【0104】
また、制御部CONTは、回転力伝達状態を解消した状態(期間M2)又は回転力伝達状態(期間M1)において、補正処理を実行する。つまり、制御部CONTは、例えば、図10のポイントP1又はP2などにおいて、補正処理を実行する。この場合、回転力伝達状態を解消した状態又は回転力伝達状態における、適切な駆動電圧に補正されるため、モータ装置MTRは、駆動精度を向上させることができる。
【0105】
なお、モータ装置MTRは、図8に示すように、移動部ACを複数(この例では、3つ)備えている。この場合、複数の移動部ACは、タイミングをずらして順に、駆動動作と復帰動作を繰り返す。そのため、移動部ACは、駆動していない期間が存在する。モータ装置MTRは、この駆動していない期間に補正処理を実行する形態でもよい。
【0106】
また、モータ装置MTRに第2の実施形態による圧電駆動装置1aを適用した場合に、駆動回路部30aは、圧電素子40(40A、40B)において駆動電圧が供給される第1の端子(ノードN1)と、圧電素子40において接地される第2の端子(ノードN2)とを、放電制御信号に基づいて、導通させる放電スイッチ50を備える。この場合、制御部CONTは、伝達部BTが所定の位置(例えば、開始位置)に戻された状態において、放電スイッチを導通させる放電制御信号を出力する処理をおこなってもよい。つまり、制御部CONTは、モータ装置MTRの駆動シーケンスにおいて、例えば、駆動電圧が0Vになる開始位置で、毎回、放電制御信号を出力して、圧電素子40(40A、40B)のオフセット電圧をリセットする。
これにより、モータ装置MTRは、A/D変換部21の検出電圧によらずに、駆動電圧を補正することができる。そのため、モータ装置MTRは、駆動精度を向上させることができる。
【0107】
[第6の実施形態]
本実施形態では、上記のモータ装置MTRの適用例を説明する。
図11は、モータ装置MTRを例えばロボット装置RBTに適用させた構成を示す図である。
【0108】
図11に示すように、ロボット装置RBTは、モータ装置MTRを備え、モータ装置MTRがカップリングCPLを介してロボットアームARMに接続されている。上記実施形態のモータ装置MTRは、小型で高トルクを出力可能である。また、上記実施形態のモータ装置MTRは、適切な駆動電圧に補正されるため、正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、ロボット装置RBTは、ロボットアームARMを高精度に駆動させることができる。よって、ロボット装置RBTは、ロボットアームARMの駆動精度を向上させることができる。また、上記実施形態のモータ装置MTRは、ロボットの関節部分や工作機械の駆動部などにも応用することができる。
【0109】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態において、電気機械変換素子が圧電型の電気機械変換素子(圧電素子)である形態を説明したが、静電型の電気機械変換素子に適用する形態でもよいし、他の方式の電気機械変換素子に適用する形態でもよい。
【0110】
また、上記実施形態において、検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果として、検出電圧と目標電圧との差を用いる形態を説明したが、これに限定されず、係数を加算、乗算、除算などの演算結果を用いる形態でもよい。例えば、検出電圧と目標電圧との差に所定のオフセット値を加算した演算結果や、係数を乗算した演算結果、検出電圧と目標電圧との比率を用いる形態でもよいし、他の演算結果を用いる形態でもよい。
また、上記実施形態において、A/D変換部21は、コントローラ20に含まれる形態を説明したが、コントローラ20(又は20a)の外に、A/D変換部21を設ける形態でもよい。また、A/D変換部21は、ノードN1において、駆動電圧を直接検出する形態を説明したが、抵抗素子又は静電容量素子を用いて駆動電圧を分圧した電圧を検出する形態でもよい。
【0111】
また、上記実施形態において、検出電圧と目標電圧との差に応じて、補正制御信号のパルス幅を変更する形態を説明したが、補正処理部23が、A/D変換部21によって検出された検出電圧が目標電圧と等しくなるまで、補正制御信号を出力し続ける形態でもよい。
また、制御信号として、駆動制御信号と補正制御信号とを別々に出力する形態を説明したが、補正処理部23が、常にA/D変換部21によって検出された検出電圧を監視し、目標電圧に到達するように、駆動制御信号と補正制御信号とを連続して出力する形態でもよい。
【0112】
また、上記実施形態において、圧電駆動装置1(1a、1b、1c)をモータ装置MTR(アクチュエータ)に適用する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態における圧電駆動装置1(1a、1b、1c)を他のアクチュエータなどを用いる制御機構に適用することも可能である。例えば、インクジェットプリンタのヘッド部(インク射出機構)、ディーゼル燃料噴射ノズル(ピエゾインジェクター)などに用いるアクチュエータに圧電駆動装置1(1a、1b、1c)を適用してもよいし、他のアクチュエータに適用してもよい。また、上記実施形態における圧電駆動装置1(1a、1b、1c)をスチュワートプラットホーム機構などのパラレル機構に適用してもよい。
【0113】
上述の圧電駆動装置1(1a、1b、1c)は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したコントローラ20(20a)の各処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1,1a,1b,1c…圧電駆動装置、20,20a…コントローラ、21…A/D変換部、30,30a,30b…駆動回路部、31…カレントソース部、32…カレントシンク部、33…第1のスイッチ、34…第2のスイッチ、35…電流アンプ部、40、401〜40N、40A、40B…圧電素子、50…放電スイッチ、MTR…モータ装置、SF…回転子、BT…伝達部、RBT…ロボット装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子の駆動装置、モータ装置、及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子などの電気機械変換素子に駆動電圧を供給する駆動装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載されている電気機械変換素子の駆動装置は、定電流を供給する駆動回路を備え、制御信号のパルス幅によって定電流を供給する期間を制御することによって、圧電素子の駆動を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−165011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような駆動装置は、電流や電荷を精密に制御しようとしても、電気機械変換素子のリーク電流や、駆動回路のもつ微小なオフセット電流によって、繰り返し駆動を行っているうちにオフセット電荷が電気機械変換素子に保持されてしまうことがある。このような場合に、上述のような駆動装置は、駆動電圧を正しく供給できないという問題がある。
したがって、上述のような駆動装置では、電気機械変換素子の駆動精度を向上させることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、電気機械変換素子の駆動精度を向上させることができる駆動装置、モータ装置、及びロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一実施形態は、電気機械変換素子に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御する駆動回路部と、前記電気機械変換素子の駆動電圧を検出する検出部と、前記駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を前記駆動回路部に出力する駆動処理、及び、前記駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて前記駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を前記駆動回路部に出力する補正処理、を実行する制御部と、を備え、前記制御信号は、少なくとも前記駆動制御信号及び前記補正制御信号を含むことを特徴とする電気機械変換素子の駆動装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上記の電気機械変換素子の駆動装置を備えることを特徴とするモータ装置である。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上記のモータ装置を備えることを特徴とするロボット装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気機械変換素子の駆動精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図2】第1の実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第1のタイムチャートである。
【図3】第1の実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第2のタイムチャートである。
【図4】第2の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図5】第3の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図6】第3の実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第2のタイムチャートである。
【図7】第4の実施形態による電気機械変換素子の駆動装置を示す概略ブロック図である。
【図8】本実施形態におけるモータ装置を示す斜視図である。
【図9】本実施形態におけるモータ装置の動作を示す図である。
【図10】本実施形態におけるモータ装置の駆動電圧波形を示す図である。
【図11】本実施形態におけるロボット装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による電気機械変換素子の駆動装置について、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
本実施形態では、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態による圧電素子の駆動装置(以下、圧電駆動装置1という)を示す概略ブロック図である。
この図において、圧電駆動装置1は、コントローラ20と、駆動回路部30とを備えている。また、圧電駆動装置1は、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に接続されている。
【0013】
圧電素子40は、例えば、ピエゾ素子であり、電圧により形状が変位して、力に変換する。圧電素子40は、2つの端子を有し、第1の端子(ノードN1)が、駆動電圧が供給される駆動信号線L3に接続され、第2の端子(ノードN2)が、接地されている。
【0014】
駆動回路部30は、第1の制御信号線L1と第2の制御信号線L2とを介して、コントローラ20に接続されている。駆動回路部30は、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を、コントローラ20が出力する制御信号に基づいて制御する。つまり、駆動回路部30は、制御信号(第1制御信号及び第2制御信号)に基づいて、定電流によって圧電素子40を充電又は放電して、駆動電圧を供給する。すなわち、駆動回路部30は、圧電素子40を電流駆動する。
【0015】
なお、制御信号には、第1の制御信号線L1に出力される第1制御信号と、第2の制御信号線L2に出力される第2制御信号とが含まれる。また、第1制御信号及び第2制御信号は、パルス信号である。駆動回路部30は、第1制御信号又は第2制御信号のパルス幅によって、圧電素子40を充電又は放電するための電荷量が制御される。
【0016】
また、駆動回路部30は、カレントソース部31、カレントシンク部32、第1のスイッチ33、及び第2のスイッチ34を備えている。
カレントソース部31は、ソース端子(ノードN3)に正の定電流を供給する定電流電源であり、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に電流を供給する。つまり、カレントソース部31は、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に電荷を充電することによって、駆動電圧を制御する。
【0017】
第1のスイッチ33は、例えば、FET(電界効果トランジスタ:Field effect transistor)などのスイッチであり、カレントソース部31と圧電素子40との間に配置される。また、第1のスイッチ33は、制御端子が第1の制御信号線L1に接続されている。第1のスイッチ33は、第1の制御信号線L1に、例えば、H(ハイ:high)状態が供給された場合に、カレントソース部31のソース端子(ノードN3)と駆動信号線L3との間を導通状態にする。また、第1のスイッチ33は、第1の制御信号線L1に、例えば、L(ロウ:low)状態が供給された場合に、カレントソース部31のソース端子(ノードN3)と駆動信号線L3との間を非導通(遮断)状態にする。すなわち、第1のスイッチ33は、カレントソース部31と圧電素子40との間に配置され、第1制御信号に基づいてカレントソース部31から圧電素子40に充電を行う。
【0018】
カレントシンク部32は、シンク端子(ノードN4)に定電流を引き込む(負の定電流を供給する)定電流電源であり、駆動信号線L3を介して、圧電素子40から電荷を引き抜く。つまり、カレントシンク部32は、駆動信号線L3を介して、圧電素子40から電荷を放電することによって、駆動電圧を制御する。
【0019】
第2のスイッチ34は、例えば、FETなどのスイッチであり、圧電素子40とカレントシンク部34との間に配置される。また、第2のスイッチ34は、制御端子が第2の制御信号線L2に接続されている。第2のスイッチ34は、第2の制御信号線L2に、例えば、H状態が供給された場合に駆動信号線L3とカレントシンク部32のシンク端子(ノードN4)との間を導通状態にする。また、第2の制御信号線L2に、例えば、L状態が供給された場合に非導通(遮断)状態にする。すなわち、第2のスイッチ34は、圧電素子40とカレントシンク部32との間に配置され、第2制御信号に基づいて圧電素子40からカレントシンク部32に放電を行う。
【0020】
コントローラ20は、CPU(Central processing unit)などを含み、駆動回路部30を介して、圧電素子40の駆動を制御する。コントローラ20は、駆動回路部30に出力する制御信号によって、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を制御する。
【0021】
コントローラ20は、駆動回路部30に対して、駆動処理と補正処理の2つの制御処理を実行する。この第1の制御処理である駆動処理は、圧電素子40に駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を駆動回路部30に出力する。また、第2の制御処理である補正処理は、後述する駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて、駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を駆動回路部30に出力する。ここで、目標電圧とは、圧電駆動装置1が圧電素子40を駆動する際に、駆動電圧の制御において、目標とする理想の駆動電圧のことである。なお、制御信号には、少なくとも駆動制御信号と補正制御信号とが含まれる。
【0022】
また、コントローラ20は、A/D(アナログ/デジタル)変換部21、駆動処理部22、及び補正処理部23を備えている。
A/D変換部21(検出部)は、圧電素子40の駆動電圧、すなわち、駆動信号線L3のノードN1における電圧を検出し、デジタル信号に変換する。
【0023】
駆動処理部22は、上述の駆動処理を実行する。駆動処理部22は、第1制御信号又は第2制御信号のパルス幅によって、圧電素子40を充電又は放電するための電荷量を制御する。駆動処理部22は、駆動する目標電圧が現在のノードN1の電圧より高い駆動電圧である場合、駆動する目標電圧値と現在のノードN1の電圧値とに応じて、所定のパルス幅の第1制御信号を駆動制御信号として第1の制御信号線L1に出力する。また、駆動処理部22は、駆動する目標電圧が現在のノードN1の電圧より低い駆動電圧である場合、駆動する目標電圧値と現在のノードN1の電圧値とに応じて、所定のパルス幅の第2制御信号を駆動制御信号として第2の制御信号線L2に出力する。
また、駆動処理部22は、駆動電圧の変化する速度を制御することができる。つまり、駆動処理部22は、駆動制御信号(第1制御信号又は第2制御信号)を間欠的(断続的)にパルス信号を出力することによって、駆動電圧の上昇又は下降する速度を制御する。
なお、本実施形態において、制御信号は論理信号であり、パルス幅はH状態の幅を示す。
【0024】
補正処理部23は、上述の補正処理を実行する。補正処理部23は、A/D変換部21が検出したノードN1の電圧である検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。一例として、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号を駆動回路部30に出力する。なお、制御信号には、パルス信号である第1制御信号と、パルス信号である第2制御信号とが含まれる。つまり、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号のうちのいずれか一方として補正制御信号を出力する。
【0025】
また、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差に応じて、補正制御信号のパルス幅を変更する。補正処理部23は、例えば、検出電圧と目標電圧との差と、補正制御信号のパルス幅とを関連付けたテーブル(データテーブル)に基づいて補正制御信号のパルス幅を決定してもよいし、圧電素子40の設計上の静電容量値などに基づいた演算によって補正制御信号のパルス幅を決定してもよい。また、このテーブルは、予め上述のような演算によって作成されたものでもよいし、実験などで実測した測定値に基づいて予め作成されたものでもよい。
なお、補正処理部23は、第1制御信号及び第2制御信号による圧電素子40の駆動シーケンスにおいて、後述する所定のタイミングで、A/D変換部21に圧電素子40の駆動電圧を検出させて、補正処理を実行する。
【0026】
次に、本実施形態における圧電駆動装置1の動作について説明する。
なお、本実施形態では、A/D変換部21によって圧電素子40の駆動電圧を検出される所定のタイミングは、目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングである場合の形態について説明する。
【0027】
図2は、本実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第1のタイムチャートである。
図2は、A/D変換部21による検出電圧の目標電圧が、0Vである場合の例を示している。図2において、各グラフは、上から(a)第1制御信号、(b)第2制御信号、及び(c)駆動電圧を示しており、各グラフの横軸は、時間を示している。また、(a)及び(b)のグラフは、縦軸が論理状態(L状態又はH状態)を示し、(c)のグラフは、縦軸が電圧を示している。また、(c)駆動電圧において、波形W1(破線の波形)は、目標とする理想的な駆動電圧の波形を示し、波形W2(実線の波形)は、本実施形態における駆動電圧の波形を示している。
【0028】
図2において、まず、コントローラ20の駆動処理部22は、第1制御信号(ここでは充電信号)及び第2制御信号(ここでは放電信号)を駆動制御信号として出力することによって、駆動処理を実行する。ここでは、時刻T1から時刻T2までの期間、時刻T5から時刻T6までの期間、及び時刻T12から時刻T13までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第1制御信号を第1の制御信号線L1に出力する。つまり、駆動処理部22は、第1制御信号にH状態のパルス信号DP11、DP12、及びDP13を出力する。
【0029】
これにより、第1のスイッチ33が導通状態になり、駆動信号線L3は、カレントソース部31から供給される定電流によって充電される。つまり、波形W2に示すように、時刻T1から時刻T2までの期間、時刻T5から時刻T6までの期間、及び時刻T12から時刻T13までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が上昇する。
【0030】
また、時刻T3から時刻T4までの期間、時刻T7から時刻T8までの期間、及び時刻T14から時刻T15までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第2制御信号を第2の制御信号線L2に出力する。つまり、駆動処理部22は、第2制御信号にH状態のパルス信号DP21、DP22、及びDP23を出力する。
【0031】
これにより、第2のスイッチ34が導通状態になり、駆動信号線L3は、カレントシンク部32によって引き込まれる定電流によって放電される。つまり、波形W2に示すように、時刻T3から時刻T4までの期間、時刻T7から時刻T8までの期間、及び時刻T14から時刻T15までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が下降する。
【0032】
なお、理想的な駆動電圧波形W1では、時刻T2から時刻T3までの期間、時刻T6から時刻T7までの期間、及び時刻T13から時刻T14までの期間において、駆動電圧VH1が維持される。また、時刻T5から時刻T6までの期間、及び時刻T9から時刻T12までの期間において、駆動電圧0Vが維持される。しかしながら、圧電素子40のリーク電流や、カレントソース部31及びカレントシンク部32のもつ微小なオフセット電流によって、ノードN1の駆動電圧にオフセット電圧が発生する。本実施形態では、波形W2に示すように、駆動信号線L3の駆動電圧は、波形W1より高い電圧となる場合の例である。
【0033】
本実施形態における圧電駆動装置1は、一例として、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、補正処理を実行する。つまり、A/D変換部21が、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、ノードN1の駆動電圧を検出する。
補正処理部23は、A/D変換部21によって検出された検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号を駆動回路部30に出力する。
【0034】
ここでは、例えば、時刻T9において、検出電圧と目標電圧との差ΔV1が予め定められた閾値以上となり、補正処理部23は、時刻T10から時刻T11までの期間に、補正パルス信号HP1(補正制御信号)を第2制御信号として、第2の制御信号線L2に出力する。これにより、ノードN1の駆動電圧におけるオフセット電圧が放電されて、目標電圧である0Vに補正される。
なお、補正処理部23は、補正パルス信号HP1のパルス幅ΔD1(時刻T10から時刻T11までの期間)を、検出電圧と目標電圧との差ΔV1に応じて変更する。
【0035】
次に、本実施形態における補正処理の別の一例を説明する。
図3は、本実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示す第2のタイムチャートである。
図3は、駆動電圧が電圧VH2と電圧VH3とを繰り返し、A/D変換部21による検出電圧の目標電圧が、VH3である場合の例を示している。図3において、各グラフは、図2と同様に、上から(a)第1制御信号、(b)第2制御信号、及び(c)駆動電圧を示しており、各グラフの横軸は、時間を示している。また、(a)及び(b)のグラフは、縦軸が論理状態(L状態又はH状態)を示し、(c)のグラフは、縦軸が電圧を示している。また、(c)駆動電圧において、波形W3(破線の波形)は、目標とする理想的な駆動電圧の波形を示し、波形W4(実践の波形)は、本実施形態における駆動電圧の波形を示している。
【0036】
図3において、まず、コントローラ20の駆動処理部22は、第1制御信号(ここでは充電信号)及び第2制御信号(ここでは放電信号)を駆動制御信号として出力することによって、駆動処理を実行する。ここでは、時刻0から時刻T21までの期間、時刻T22から時刻T23までの期間、時刻T26から時刻T27までの期間、及び時刻T33から時刻T34までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第1制御信号を第1の制御信号線L1に出力する。つまり、駆動処理部22は、第1制御信号にH状態のパルス信号DP14、DP15、DP16、及びDP17を出力する。
【0037】
これにより、波形W4に示すように、時刻0から時刻T21までの期間、時刻T22から時刻T23までの期間、時刻T26から時刻T27までの期間、及び時刻T33から時刻T34までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が上昇する。
【0038】
また、時刻T24から時刻T25までの期間、時刻T31から時刻T32までの期間、及び時刻T35から時刻T36までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、第2制御信号を第2の制御信号線L2に出力する。つまり、駆動処理部22は、第2制御信号にH状態のパルス信号DP24、DP25、及びDP26を出力する。
【0039】
これにより、波形W4に示すように、時刻T24から時刻T25までの期間、時刻T31から時刻T32までの期間、及び時刻T35から時刻T36までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が下降する。
【0040】
また、図3において、図2の場合と同様に、圧電素子40のリーク電流や、カレントソース部31及びカレントシンク部32のもつ微小なオフセット電流によって、ノードN1の駆動電圧にオフセット電圧が発生する。本実施形態では、波形W4に示すように、駆動信号線L3の駆動電圧は、波形W3より低い電圧となる場合の例である。
【0041】
本実施形態における圧電駆動装置1は、一例として、目標電圧がVH2(V)のタイミングにおいて、補正処理を実行する。つまり、A/D変換部21が、目標電圧がVH2(V)のタイミングにおいて、ノードN1の駆動電圧を検出する。
補正処理部23は、A/D変換部21によって検出された検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号を駆動回路部30に出力する。
【0042】
ここでは、例えば、時刻T28において、検出電圧と目標電圧との差ΔV2が予め定められた閾値以上となり、補正処理部23は、時刻T29から時刻T30までの期間に、補正パルス信号HP2(補正制御信号)を第1制御信号として、第1の制御信号線L1に出力する。これにより、ノードN1の駆動電圧におけるオフセット電圧が充電されて、目標電圧であるVH2(V)に補正される。
なお、補正処理部23は、補正パルス信号HP2のパルス幅ΔD2(時刻T29から時刻T30までの期間)を、検出電圧と目標電圧との差ΔV2に応じて変更する。
【0043】
図2及び図3を参照して説明したように、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、検出電圧と目標電圧との差に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号のうちのいずれか一方として補正制御信号(HP1又はHP2)を出力する。
【0044】
<補正処理を実行するタイミング>
次に、補正処理部23が補正処理を実行するタイミングの一例について説明する。
図2及び図3において、上述した所定のタイミング(補正処理を実行するタイミング)が、目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングである場合について説明したが、これに限定されるものでななく、他の形態も可能である。
【0045】
例えば、補正処理を実行するタイミングは、駆動制御信号を係数として、予め定められた一定回数、圧電素子40が駆動された場合としてもよい。この場合、補正処理部23は、駆動制御信号を予め定められた回数出力するごとに、補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、正確な駆動電圧が圧電素子40に供給される。
なお、圧電駆動装置1が圧電素子40の駆動電圧を周期的に変化させて駆動させる場合には、補正処理部23は、駆動制御信号の出力回数の替わりに、予め定められた周期の回数ごとに、補正処理を実行する形態でもよい。また、補正処理部23は、駆動制御信号を1回数出力するごとに、補正処理を実行する形態でもよい。
【0046】
また、補正処理を実行するタイミングは、予め定められた期間(一定の時間)ごとでもよい。この場合、補正処理部23は、予め定められた期間ごとに、補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、正確な駆動電圧が圧電素子40に供給される。
【0047】
なお、上述の図2及び図3では、A/D変換部21は、目標電圧が安定した電圧となるタイミングで、ノードN1における圧電素子40の駆動電圧を検出しているが、これに限定されるものではない。例えば、図2(c)の時刻T1から時刻T2の期間のように、駆動電圧が変化している期間において、駆動電圧を検出する形態でもよい。この場合、補正処理部23は、圧電素子40の設計上の静電容量値などに基づいた演算によって、目標電圧を決定してもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態における圧電駆動装置1は、駆動回路部30が圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御し、A/D変換部21(検出部)が圧電素子40の駆動電圧を検出する。そして、コントローラ20(制御部)は、駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を駆動回路部30に出力する駆動処理、及び、駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を駆動回路部30に出力する補正処理を実行する。また、制御信号は、少なくとも駆動制御信号及び補正制御信号を含む。
【0049】
これにより、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧(目標電圧)に補正されるため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。例えば、圧電素子40のリーク電流や、カレントソース部31及びカレントシンク部32のもつ微小なオフセット電流によって、駆動電圧にオフセット電圧が発生するような場合であっても、圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態において、A/D変換部21は、目標電圧が予め定められた電圧値(例えば、0V)になるタイミングにおいて、駆動電圧を検出する。
これにより、圧電素子40が正しく駆動されているか否かを判定するための目標電圧を、容易に設定することができる。例えば、目標電圧を駆動電圧が安定した期間における電圧とした場合、A/D変換部21は、駆動電圧を安定して精度良く検出することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0051】
また、本実施形態において、コントローラ20は、上述の補正処理において、検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果(例えば、差分)が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、コントローラ20は、演算結果が閾値以上であると判定した場合に、補正制御信号(HP1又はHP2)を駆動回路部30に出力する。
これにより、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧に補正することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態において、コントローラ20は、駆動制御信号を予め定められた回数出力するごとに、上述の補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、圧電素子40には、正確な駆動電圧が供給される。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0053】
また、本実施形態において、コントローラ20は、予め定められた期間ごとに、上述の補正処理を実行する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧は、定期的に補正される。そのため、圧電素子40には、正確な駆動電圧が供給される。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0054】
また、本実施形態において、制御信号には、パルス信号である第1制御信号(充電信号)と、パルス信号である第2制御信号(放電信号)とが含まれる。そして、駆動回路部30は、カレントソース部31が圧電素子40に電流を供給し、第1のスイッチ33がカレントソース部31と圧電素子40との間に配置され、第1制御信号に基づいてカレントソース部31から圧電素子40に充電を行う。また、カレントシンク部32が圧電素子40に充電された電荷を放電し、第2のスイッチ34が圧電素子とカレントシンク部32との間に配置され、第2制御信号に基づいて圧電素子40からカレントシンク部32に放電を行う。つまり、駆動回路部30は、電流駆動によって、圧電素子40を駆動する。
【0055】
これにより、圧電素子40を電流によって駆動するため、駆動回路部30は、駆動電圧の波形をほぼ直線で変化させることができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、複雑な形状の駆動波形に対しても、高精度に対応することができる。また、コントローラ20は、制御信号として論理信号(H状態又はL状態の信号)を使用し、パルス幅によって圧電素子40を駆動する電流を制御できる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1は、D/A(デジタル/アナログ)変換部などを備えていない簡易な論理回路によって、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。
【0056】
また、本実施形態において、コントローラ20は、補正処理において、検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果に基づいて、第1制御信号(充電信号)及び第2制御信号(放電信号)のうちのいずれか一方として、補正制御信号(HP1又はHP2)を出力する
これにより、本実施形態における圧電駆動装置1は、圧電素子40の駆動電圧を適切な電圧(目標電圧)に補正することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態における電気機械変換素子の駆動装置について説明する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
図4は、本実施形態による圧電駆動装置1aを示す概略ブロック図である。
この図において、圧電駆動装置1aは、コントローラ20と、駆動回路部30aとを備えている。また、圧電駆動装置1aは、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に接続されている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
駆動回路部30aは、図1の駆動回路部30の構成に、放電スイッチ50(第3のスイッチ)が追加されている。つまり、駆動回路部30aは、カレントソース部31、カレントシンク部32、第1のスイッチ33、第2のスイッチ34、及び放電スイッチ50を備えている。
【0059】
放電スイッチ50(第3のスイッチ)は、例えば、FETなどのスイッチであり、圧電素子40と並列に配置される。また、放電スイッチ50は、制御端子が第3の制御信号線L4に接続されている。放電スイッチ50は、圧電素子40において駆動電圧が供給される第1の端子(ノードN1)と、圧電素子40において接地される第2の端子(ノードN2)との間を、第3の制御信号線L4に出力される放電制御信号(第3制御信号)に基づいて、導通させる。例えば、放電スイッチ50は、第3の制御信号線L4に、例えば、H状態が供給された場合に圧電素子40の両端子(ノードN1とノードN2)の間を導通状態にする。また、放電スイッチ50は、第3の制御信号線L4に、例えば、L状態が供給された場合に非導通(遮断)状態にする。すなわち、放電スイッチ50は、圧電素子40の両端を導通状態にし、圧電素子40に蓄積された電荷を放電する。
【0060】
本実施形態における圧電駆動装置1aの動作は、以下の動作を除いて、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様である。
【0061】
本実施形態において、コントローラ20は、補正処理において、放電制御信号(第3制御信号)として補正制御信号を出力する。つまり、コントローラ20は、放電スイッチ50に対して圧電素子40に蓄積された電荷を放電させることによって、駆動電圧の補正を行う。
例えば、目標電圧が0Vであり、A/D変換部21によって検出された検出電圧が、正の電圧であった場合に、コントローラ20は、第3の制御信号線L4にH状態を補正制御信号として放電スイッチ50に出力する。これにより、放電スイッチ50が導通状態になり、圧電素子40に蓄積された電荷を放電される。そして、圧電素子40の駆動電圧が目標電圧の0Vに補正される。なお、コントローラ20は、補正制御信号のパルス幅を検出電圧と目標電圧との差に応じて定めて補正制御信号を出力してもよいし、圧電素子40を放電し駆動電圧を0Vにするのに十分なパルス幅を予め定めて、固定のパルス幅の補正制御信号を出力してもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態において、駆動回路部30は、圧電素子40において駆動電圧が供給される第1の端子(ノードN1)と、圧電素子40において接地される第2の端子(ノードN2)とを、第3制御信号に基づいて、導通させる放電スイッチ50を備える。そして、コントローラ20は、補正処理において、第3制御信号として補正制御信号を出力する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧(目標電圧)に補正されるため、本実施形態における圧電駆動装置1aは、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1aは、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様に、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0063】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態における電気機械変換素子の駆動装置について説明する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
【0064】
図5は、本実施形態による圧電駆動装置1bを示す概略ブロック図である。
本実施形態では、第1の実施形態における駆動回路部30を駆動回路部30bに置き換えた形態である。つまり、本実施形態では、論理信号による制御信号によって電流駆動を行う駆動回路部30の替わりに、アナログ信号による制御信号によって電流駆動を行う電流アンプ部35を備える駆動回路部30bを使用する。
【0065】
図5において、圧電駆動装置1bは、コントローラ20aと、駆動回路部30bとを備えている。また、圧電駆動装置1bは、駆動信号線L3を介して、圧電素子40に接続されている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
駆動回路部30bは、制御信号線L5を介して、コントローラ20aに接続されている。駆動回路部30bは、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を、コントローラ20aが出力する制御信号に基づいて制御する。
【0067】
また、駆動回路部30bは、電流アンプ部35を備えている。電流アンプ部35(電流アンプ)は、制御信号の電圧に応じて、圧電素子40の駆動電圧を供給するための電流を制御する電流アンプである。電流アンプ部35は、例えば、アナログ信号である制御信号に、予め定められた基準電圧より高い電圧が印加された場合に、基準電圧との差に応じた正の電流を駆動信号線L3に供給する。また、電流アンプ部35は、この基準電圧より低い電圧が印加された場合に、基準電圧との差に応じた負の電流を駆動信号線L3に供給し、さらに、制御信号に基準電圧が印加された場合に、駆動信号線L3に電流の供給を停止する。これにより、電流アンプ部35は、電荷を充電又は放電することによって、圧電素子40に駆動電圧を供給する。ここで、圧電素子40に充電又は放電される電荷量は、基準電圧を基準とした制御信号の波形の面積によって制御される。
【0068】
コントローラ20aは、駆動回路部30bに出力する制御信号(アナログ信号)によって、圧電素子40に駆動電圧を供給するための電流を制御する。コントローラ20aは、制御信号(駆動制御信号及び補正制御信号)の出力方法が異なる点を除いて、第1の実施形態におけるコントローラ20と同様である。コントローラ20aは、A/D変換部21、駆動処理部22、補正処理部23、及びD/A変換部24を備えている。
D/A変換部24は、駆動回路部30bを制御するための電圧値を示すデジタル信号をアナログ信号に変換する。変換されたアナログ信号は、駆動回路部30bに制御信号として出力される。
【0069】
次に、本実施形態における圧電駆動装置1bの動作について説明する。
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、A/D変換部21によって圧電素子40の駆動電圧を検出される所定のタイミングは、目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングである場合の形態について説明する。
【0070】
図6は、本実施形態における補正処理のシーケンスの一例を示すタイムチャートである。
図6は、A/D変換部21による検出電圧の目標電圧が、0Vである場合の例を示している。図6において、各グラフは、上から(a)制御信号、及び(b)駆動電圧を示しており、各グラフの横軸は、時間を示している。また、(a)及び(b)のグラフは、縦軸が電圧を示している。なお、(a)制御信号において、波形W7は、アナログ信号である駆動信号の波形を示し、上述した基準電圧は、電圧V2である。
また、(b)駆動電圧において、波形W5(破線の波形)は、目標とする理想的な駆動電圧の波形を示し、波形W6(実線の波形)は、本実施形態における駆動電圧の波形を示している。
【0071】
図6において、まず、コントローラ20aの駆動処理部22は、D/A変換部24を介して、制御信号を駆動制御信号として出力することによって、駆動処理を実行する。ここでは、時刻T41から時刻T42までの期間、時刻T45から時刻T46までの期間、及び時刻T52から時刻T53までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、基準電圧V2より電圧の高い信号(例えば、電圧V3)を制御信号線L5に出力する。つまり、駆動処理部22は、制御信号として、駆動制御信号DS1、DS3、及びDS5を出力する。
【0072】
これにより、波形W6に示すように、時刻T41から時刻T42までの期間、時刻T45から時刻T46までの期間、及び時刻T52から時刻T53までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が上昇する。
【0073】
また、時刻T43から時刻T44までの期間、時刻T47から時刻T48までの期間、及び時刻T54から時刻T55までの期間において、駆動処理部22は、駆動制御信号として、基準電圧V2より電圧の低い信号(例えば、電圧V1)を制御信号線L5に出力する。つまり、駆動処理部22は、制御信号として、駆動制御信号DS2、DS4、及びDS6を出力する。
【0074】
これにより、波形W6に示すように、時刻T43から時刻T44までの期間、時刻T47から時刻T48までの期間、及び時刻T54から時刻T55までの期間では、駆動信号線L3(ノードN1)の駆動電圧が下降する。
【0075】
なお、理想的な駆動電圧波形W5では、時刻T42から時刻T43までの期間、時刻T46から時刻T47までの期間、及び時刻T53から時刻T54までの期間において、駆動電圧VH4が維持される。また、時刻T45から時刻T46までの期間、及び時刻T49から時刻T52までの期間において、駆動電圧0Vが維持される。しかしながら、圧電素子40のリーク電流や、電流アンプ部30のもつ微小なオフセット電流によって、ノードN1の駆動電圧にオフセット電圧が発生する。本実施形態では、波形W6に示すように、駆動信号線L3の駆動電圧は、波形W5より高い電圧となる場合の例である。
【0076】
そこで、本実施形態における圧電駆動装置1bでは、一例として、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、補正処理を実行する。つまり、A/D変換部21が、目標電圧が0Vのタイミングにおいて、ノードN1の駆動電圧を検出する。
補正処理部23は、A/D変換部21によって検出された検出電圧と目標電圧との差が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、D/A変換部24を介して、補正制御信号(HS1)を駆動回路部30aに出力する。
【0077】
ここでは、例えば、時刻T49において、検出電圧と目標電圧との差ΔV3が予め定められた閾値以上となり、補正処理部23は、時刻T50から時刻T51までの期間に、補正制御信号(HS1)を制御信号として、制御信号線L5に出力する。これにより、ノードN1の駆動電圧におけるオフセット電圧が放電されて、目標電圧である0Vに補正される。
なお、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差ΔV3に応じて、例えば、信号HS2のように補正制御信号の振幅を変更してもよいし、信号幅を変更してもよい。また、補正処理部23は、検出電圧と目標電圧との差ΔV3に応じて、補正制御信号の振幅と信号幅を組み合わせて変更してもよい。
【0078】
上述のように、図6を参照して、A/D変換部21によって取得された検出電圧が、目標電圧より高い場合の例を説明したが、検出電圧が目標電圧より低い場合においても、補正処理部23は、補正制御信号として、基準電圧V2より電圧の低い信号を出力する点を除いて、同様に動作する。
【0079】
以上のように、本実施形態において、駆動回路部30aは、制御信号の電圧に応じて、駆動電圧を供給するための電流を制御する電流アンプ部(電流アンプ)35を備える。そして、駆動処理部22は、D/A変換部24を介して、駆動制御信号DS1〜DS6を制御信号として制御信号線L5に出力する。また、補正処理部23は、D/A変換部24を介して、補正制御信号HS1を制御信号として制御信号線L5に出力する。
これにより、圧電素子40の駆動電圧が適切な電圧(目標電圧)に補正されるため、本実施形態における圧電駆動装置1bは、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1bは、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様に、圧電素子40に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40の駆動精度を向上させることができる。
【0080】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態における電気機械変換素子の駆動装置について説明する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電気機械変換素子の一例として、圧電素子を駆動する駆動装置の実施形態について説明する。
【0081】
上述した第1〜第3の実施形態における圧電駆動装置(1、1a、1b)は、圧電素子40を複数駆動することも可能である。そこで、本実施形態では、一例として、第1の実施形態における圧電駆動装置1に複数の圧電素子40を駆動させる場合を説明する。
図7は、本実施形態による圧電駆動装置1cを示す概略ブロック図である。
この図において、圧電駆動装置1cは、コントローラ20と、駆動回路部30と、切り替えスイッチ60(601〜60N、Nは2以上の整数)とを備えている。また、圧電駆動装置1cは、駆動信号線L3を介して、圧電素子40(401〜40N)に接続されている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
切り替えスイッチ601〜60Nのそれぞれは、駆動信号線L3(ノードN11〜N1N)と圧電素子401〜40Nの間に接続され、切り替え信号線L6によって制御される。なお、切り替え信号線L6は、ここでは、N本の信号線である。切り替えスイッチ601〜60Nは、コントローラ20から切り替え信号線L6を介して供給される切り替え信号によって、駆動回路部30によって駆動される圧電素子401〜40Nを切り替える。
【0083】
コントローラ20は、各圧電素子40(401〜40N)を駆動する前に、圧電素子401〜40Nのうちの1つを選択して切り替えスイッチ601〜60Nに対して、切り替え信号を出力して駆動する圧電素子40を切り替える。なお、複数の圧電素子40を駆動する形態でもよく、その場合、コントローラ20は、切り替えスイッチ601〜60Nに対して、圧電素子401〜40Nのうちの複数を選択する切り替え信号を出力する。
【0084】
以上のように、本実施形態における圧電駆動装置1cは、複数の圧電素子40(401〜40N)を駆動することができる。そのため、本実施形態における圧電駆動装置1cは、第1の実施形態における圧電駆動装置1と同様に、複数の圧電素子40(401〜40N)に正確な駆動電圧を供給することができ、圧電素子40(401〜40N)の駆動精度を向上させることができる。
【0085】
[第5の実施形態]
上述した第1〜第4の実施形態における圧電駆動装置(1、1a、1b、1c)は、電気機械変換素子を使用する様々な装置に適用することができる。その一例として、本実施形態では、モータ装置(アクチュエータ)に適用した場合の形態について説明する。また、ここでは、一例として、モータ装置が圧電駆動装置1を備える形態を説明するが、圧電駆動装置1a(又は、1b、1c)を備える形態でもよい。
【0086】
図8は、本実施形態におけるモータ装置MTRを示す斜視図である。
この図において、モータ装置MTRは、回転子SFと、伝達部BTと、移動部ACと、支持部材BSと、制御部CONTとを有している。モータ装置MTRは、回転子SF及び移動部ACが支持部材BSによって支持された状態になっており、移動部ACに接続された伝達部BTが回転子SFに掛けられた構成になっている。すなわち、伝達部BTは、回転子SFの周面の少なくとも一部に掛けられる。制御部CONTは移動部ACに接続されており、当該移動部ACに対して駆動信号を供給可能になっている。
【0087】
移動部ACは、圧電素子40(40A、40B、図9参照)を備えている。
制御部CONTは、上述した圧電駆動装置1を備えている。制御部CONTは、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力伝達状態として伝達部BTを一定距離移動させる駆動動作及び回転力伝達状態を解消した状態で伝達部BTを所定の位置に戻す復帰動作を圧電素子40(40A、40B)に行わせる。なお、本実施形態において後述する制御部CONTによる各処理は、コントローラ20による処理に対応する。
【0088】
図9は、本実施形態におけるモータ装置の動作を示す図である。
この図において、回転子SFの回転軸方向をZ軸方向(Z方向)とし、当該Z軸方向に垂直な平面上の直交方向をそれぞれX軸方向(X方向)及びY軸方向(Y方向)とする。
【0089】
この図において、伝達部BTは、第一端部71、第二端部72及びベルト部73を有している。
また、圧電素子40Aは、支持部材81によって支持されている。圧電素子40Aは、図中−X側の端部の位置が固定されている。このため、圧電素子40Aは、X方向に伸縮することで図中+X側の端部の位置がX方向に移動することになる。圧電素子40Aのうち当該+X側の端部は、支持部材81の先端部に接続されている。支持部材81の先端部は、例えば第一端部71に接続されている。
【0090】
圧電素子40Bは、支持部材82によって支持されている。圧電素子40Bは、図中+X側の端部の位置が固定されている。このため、圧電素子40Bは、X方向に伸縮することで図中−X側の端部の位置がX方向に移動することになる。圧電素子40Bのうち当該−X側の端部は、支持部材82の先端部に接続されている。支持部材82の先端部は、例えば第二端部72に接続されている。
【0091】
次に、本実施形態におけるモータ装置MTRにおいて、回転子SFを駆動させる動作を説明する。回転子SFを駆動させる際には、オイラーの摩擦ベルト理論に基づき、回転子SFに所定の有効巻き付き角θで巻き掛けられた伝達部BTに有効張力を生じさせ、当該有効張力によって回転子SFにトルクを伝達する。
【0092】
まず、制御部CONTは、第一端部71が+X方向に、第二端部72が−X方向にそれぞれ移動するように圧電素子40A及び圧電素子40Bを変形させる。この動作により、伝達部BTの第一端部71側には張力T1が発生し、伝達部BTの第二端部72側には張力T2が発生する。したがって、伝達部BTには、回転力伝達状態(スクイーズ状態)となる保持力である有効張力(T1−T2)が発生する。
【0093】
制御部CONTは、伝達部BTに有効張力を発生させた状態を保持しつつ、図9(a)に示すように、伝達部BTの第一端部71が−X方向に移動するように、かつ、第二端部72が−X方向に移動するように圧電素子40A及び圧電素子40Bを変形させる(駆動動作)。この動作において、制御部CONTは、第一端部71の移動距離と第二端部72の移動距離とを等しくさせる。この動作により、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力が発生した状態で伝達部BTが移動し、当該移動と共に回転子SFがθZ方向(矢印方向)に回転する。
【0094】
制御部CONTは、第一端部71及び第二端部72を所定距離だけ移動させた後、図9(b)に示すように、第二端部72が駆動の開始位置(所定位置)へ戻るように、かつ、第一端部71が移動しないように、圧電素子40Bだけを変形させる。この動作により、第二端部72が+X方向へ移動し、伝達部BTの巻き掛けが緩んだ状態になる。つまり、伝達部BTに付加されていた有効張力(回転子SFに対する保持力)が解除された状態になる。この状態においては、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力は発生せず、回転子SFは慣性によって矢印方向に回転し続けることになる。
【0095】
制御部CONTは、伝達部BTの巻き掛けを緩ませた後、図9(c)に示すように、第一端部71が駆動の開始位置(所定位置)へ戻るように圧電素子40Aを変形させる。この動作により、伝達部BTの巻き掛けが緩んだまま、すなわち、有効張力が発生しないまま、伝達部BTの第一端部71が駆動の開始位置(所定位置)へ戻っていく(復帰動作)。
【0096】
第一端部71が駆動開始位置に戻される直前になったら、制御部CONTは、圧電素子40Bを変形させて第二端部72を+X方向に移動させる。この動作により、第一端部71が駆動開始位置に戻されるのとほぼ同時に、第二端部72側に張力T2が発生し、第一端部71側に張力T1が発生する。これにより、駆動開始時に伝達部BTに有効張力を付加させた状態と同様の状態となる。
【0097】
伝達部BTに有効張力が付加された後、制御部CONTは、伝達部BTの第一端部71が−X方向に移動するように圧電素子40Aを変形させ、第二端部72が−X方向に移動するように圧電素子40Bを変形させる(駆動動作)。このとき、第一端部71の移動距離と第二端部72の移動距離とを等しくさせる。この動作により、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力が発生した状態で伝達部BTが移動し、当該移動と共に回転子SFがθZ方向に回転する。
【0098】
この後、制御部CONTは、伝達部BTに付加されていた有効張力を再度解除させる。
制御部CONTは、有効張力を解除させた後、伝達部BTの第一端部71及び第二端部72が開始位置に戻るように移動させる(復帰動作)。このように制御部CONTが上記駆動動作と復帰動作とを移動部ACに繰り返し行わせることにより、回転子SFがθZ方向に回転し続けることになる。また、例えば、オイラーの摩擦ベルト理論では、摩擦係数μが0.3の場合に、有効巻き付き角θが300°以上の時にオイラー係数部分の値が0.8以上となる。このことから、摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θを300°以上とすることにより、圧電素子40Aによる張力T1の80%以上の力が回転子SFのトルクに寄与することになる。このように、トルクの大きさは圧電素子40Aの張力T1によって一意に決定される。したがって、例えば圧電素子40Aに用いられるピエゾ素子などは、数ミリ程度の小型素子であっても、数百ニュートン以上の力を出すことができるので非常に大きな回転力を付与することができる。
【0099】
次に、本実施形態によるモータ装置MTRにおける圧電素子40(40A、40B)の駆動電圧について説明する。
図10は、本実施形態におけるモータ装置の駆動電圧波形を示す図である。
この図において、各グラフは、横軸が時間を示し、縦軸が電圧を示している。また、図10(a)の波形W8は、圧電素子40Aの駆動電圧を示し、図10(b)の波形W9は、圧電素子40Bの駆動電圧を示している。
【0100】
図10において、時刻t0から時刻t3までの期間M1が、上述した回転力伝達状態に対応し、時刻t1から時刻t2までの期間M3が、駆動動作を実行している期間に対応する。また、時刻t3から時刻t5までの期間M2が、上述した回転力伝達状態を解消した状態に対応し、時刻t2から時刻t4までの期間M4が、復帰動作を実行している期間に対応する。なお、波形W8及び波形W9において、時刻t0から時刻t5までの期間の駆動波形が、時刻t5から時刻t8の示すように繰り返される。
制御部CONTの圧電駆動装置1は、駆動回路部30を介して、波形W8の駆動電圧を圧電素子40Aに、波形W9の駆動電圧を圧電素子40Bに、それぞれ供給する。
また、制御部CONTは、上述した補正処理を実行するタイミングにおいて補正処理を実行する。
【0101】
以上のように、本実施形態におけるモータ装置MTRは、圧電駆動装置1(1a、1b、1c)を備えている。これにより、適切な駆動電圧に補正されるため、本実施形態におけるモータ装置MTRは、駆動精度を向上させることができる。
【0102】
また、本実施形態において、モータ装置MTRは、回転子SFの周面の少なくとも一部に掛けられる伝達部BTと、伝達部BTに接続され、伝達部BTを移動させる圧電素子40(40A、40B)と、を備えている。また、制御部CONT(コントローラ20又は20a)は、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力伝達状態として伝達部BTを一定距離移動させる駆動動作及び回転力伝達状態を解消した状態で伝達部BTを所定の位置に戻す復帰動作を圧電素子40(40A、40B)に行わせる。
これにより、本実施形態におけるモータ装置MTRは、高トルクを発生させることができ、さらに、適切な駆動電圧に補正されるため、駆動精度を向上させることができる。
【0103】
なお、制御部CONTは、モータ装置MTRの駆動状態に応じて、補正処理を実行してもよい。
例えば、制御部CONTは、伝達部BTが所定の位置(開始位置)に戻された状態において、補正処理を実行する。つまり、制御部CONTは、図10のポイントP3の状態において、補正処理を実行する。この場合、制御部CONTは、開始位置においての補正処理になるため、モータ装置MTRの駆動に影響を低減して、駆動電圧を適切に補正することができる。
【0104】
また、制御部CONTは、回転力伝達状態を解消した状態(期間M2)又は回転力伝達状態(期間M1)において、補正処理を実行する。つまり、制御部CONTは、例えば、図10のポイントP1又はP2などにおいて、補正処理を実行する。この場合、回転力伝達状態を解消した状態又は回転力伝達状態における、適切な駆動電圧に補正されるため、モータ装置MTRは、駆動精度を向上させることができる。
【0105】
なお、モータ装置MTRは、図8に示すように、移動部ACを複数(この例では、3つ)備えている。この場合、複数の移動部ACは、タイミングをずらして順に、駆動動作と復帰動作を繰り返す。そのため、移動部ACは、駆動していない期間が存在する。モータ装置MTRは、この駆動していない期間に補正処理を実行する形態でもよい。
【0106】
また、モータ装置MTRに第2の実施形態による圧電駆動装置1aを適用した場合に、駆動回路部30aは、圧電素子40(40A、40B)において駆動電圧が供給される第1の端子(ノードN1)と、圧電素子40において接地される第2の端子(ノードN2)とを、放電制御信号に基づいて、導通させる放電スイッチ50を備える。この場合、制御部CONTは、伝達部BTが所定の位置(例えば、開始位置)に戻された状態において、放電スイッチを導通させる放電制御信号を出力する処理をおこなってもよい。つまり、制御部CONTは、モータ装置MTRの駆動シーケンスにおいて、例えば、駆動電圧が0Vになる開始位置で、毎回、放電制御信号を出力して、圧電素子40(40A、40B)のオフセット電圧をリセットする。
これにより、モータ装置MTRは、A/D変換部21の検出電圧によらずに、駆動電圧を補正することができる。そのため、モータ装置MTRは、駆動精度を向上させることができる。
【0107】
[第6の実施形態]
本実施形態では、上記のモータ装置MTRの適用例を説明する。
図11は、モータ装置MTRを例えばロボット装置RBTに適用させた構成を示す図である。
【0108】
図11に示すように、ロボット装置RBTは、モータ装置MTRを備え、モータ装置MTRがカップリングCPLを介してロボットアームARMに接続されている。上記実施形態のモータ装置MTRは、小型で高トルクを出力可能である。また、上記実施形態のモータ装置MTRは、適切な駆動電圧に補正されるため、正確な駆動電圧を供給することができる。そのため、ロボット装置RBTは、ロボットアームARMを高精度に駆動させることができる。よって、ロボット装置RBTは、ロボットアームARMの駆動精度を向上させることができる。また、上記実施形態のモータ装置MTRは、ロボットの関節部分や工作機械の駆動部などにも応用することができる。
【0109】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態において、電気機械変換素子が圧電型の電気機械変換素子(圧電素子)である形態を説明したが、静電型の電気機械変換素子に適用する形態でもよいし、他の方式の電気機械変換素子に適用する形態でもよい。
【0110】
また、上記実施形態において、検出電圧と目標電圧とを用いた演算結果として、検出電圧と目標電圧との差を用いる形態を説明したが、これに限定されず、係数を加算、乗算、除算などの演算結果を用いる形態でもよい。例えば、検出電圧と目標電圧との差に所定のオフセット値を加算した演算結果や、係数を乗算した演算結果、検出電圧と目標電圧との比率を用いる形態でもよいし、他の演算結果を用いる形態でもよい。
また、上記実施形態において、A/D変換部21は、コントローラ20に含まれる形態を説明したが、コントローラ20(又は20a)の外に、A/D変換部21を設ける形態でもよい。また、A/D変換部21は、ノードN1において、駆動電圧を直接検出する形態を説明したが、抵抗素子又は静電容量素子を用いて駆動電圧を分圧した電圧を検出する形態でもよい。
【0111】
また、上記実施形態において、検出電圧と目標電圧との差に応じて、補正制御信号のパルス幅を変更する形態を説明したが、補正処理部23が、A/D変換部21によって検出された検出電圧が目標電圧と等しくなるまで、補正制御信号を出力し続ける形態でもよい。
また、制御信号として、駆動制御信号と補正制御信号とを別々に出力する形態を説明したが、補正処理部23が、常にA/D変換部21によって検出された検出電圧を監視し、目標電圧に到達するように、駆動制御信号と補正制御信号とを連続して出力する形態でもよい。
【0112】
また、上記実施形態において、圧電駆動装置1(1a、1b、1c)をモータ装置MTR(アクチュエータ)に適用する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態における圧電駆動装置1(1a、1b、1c)を他のアクチュエータなどを用いる制御機構に適用することも可能である。例えば、インクジェットプリンタのヘッド部(インク射出機構)、ディーゼル燃料噴射ノズル(ピエゾインジェクター)などに用いるアクチュエータに圧電駆動装置1(1a、1b、1c)を適用してもよいし、他のアクチュエータに適用してもよい。また、上記実施形態における圧電駆動装置1(1a、1b、1c)をスチュワートプラットホーム機構などのパラレル機構に適用してもよい。
【0113】
上述の圧電駆動装置1(1a、1b、1c)は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したコントローラ20(20a)の各処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1,1a,1b,1c…圧電駆動装置、20,20a…コントローラ、21…A/D変換部、30,30a,30b…駆動回路部、31…カレントソース部、32…カレントシンク部、33…第1のスイッチ、34…第2のスイッチ、35…電流アンプ部、40、401〜40N、40A、40B…圧電素子、50…放電スイッチ、MTR…モータ装置、SF…回転子、BT…伝達部、RBT…ロボット装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御する駆動回路部と、
前記電気機械変換素子の駆動電圧を検出する検出部と、
前記駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を前記駆動回路部に出力する駆動処理、及び、前記駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて前記駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を前記駆動回路部に出力する補正処理、を実行する制御部と、を備え、
前記制御信号は、少なくとも前記駆動制御信号及び前記補正制御信号を含む
ことを特徴とする電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項2】
前記検出部は、
前記目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングにおいて、前記駆動電圧を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記補正処理において、前記検出電圧と前記目標電圧とを用いた演算結果が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、前記演算結果が前記閾値以上であると判定した場合に、前記補正制御信号を前記駆動回路部に出力する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記駆動制御信号を予め定められた回数出力するごとに、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、予め定められた期間ごとに、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項6】
前記制御信号には、パルス信号である第1制御信号と、パルス信号である第2制御信号とが含まれ、
前記駆動回路部は、
前記電気機械変換素子に電流を供給するカレントソース部と、
前記カレントソース部と前記圧電素子との間に配置され、前記第1制御信号に基づいて前記カレントソース部から前記圧電素子に充電を行う第1のスイッチと、
前記電気機械変換素子に充電された電荷を放電するカレントシンク部と、
前記電気機械変換素子と前記カレントシンク部との間に配置され、前記第2制御信号に基づいて前記電気機械変換素子から前記カレントシンク部に放電を行う第2のスイッチと
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記補正処理において、前記検出電圧と前記目標電圧とを用いた演算結果に基づいて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のうちのいずれか一方として、前記補正制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項6に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項8】
前記駆動回路部は、
前記電気機械変換素子において前記駆動電圧が供給される第1の端子と、前記圧電素子において接地される第2の端子とを、第3制御信号に基づいて、導通させる第3のスイッチを備え、
前記制御部は、
前記補正処理において、前記第3制御信号として、前記補正制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項6に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動回路部は、
前記制御信号の電圧に応じて、前記駆動電圧を供給するための電流を制御する電流アンプを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記検出電圧と前記目標電圧とを用いた演算結果に応じて、前記補正制御信号のパルス幅を変更する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項12】
回転子の周面の少なくとも一部に掛けられる伝達部と、
前記伝達部に接続され、前記伝達部を移動させる前記電気機械変換素子と、
を備え、
前記制御部は、
前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態として前記伝達部を一定距離移動させる駆動動作及び前記回転力伝達状態を解消した状態で前記伝達部を所定の位置に戻す復帰動作を前記電気機械変換素子に行わせる
ことを特徴とする請求項11に記載のモータ装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記伝達部が前記所定の位置に戻された状態において、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項12に記載のモータ装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記回転力伝達状態を解消した状態又は前記回転力伝達状態において、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のモータ装置。
【請求項15】
前記駆動回路部は、
前記電気機械変換素子において前記駆動電圧が供給される第1の端子と、前記電気機械変換素子において接地される第2の端子とを、放電制御信号に基づいて、導通させる放電スイッチを備え、
前記制御部は、
前記伝達部が前記所定の位置に戻された状態において、前記放電スイッチを導通させる前記放電制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項16】
請求項11から請求項15のいずれか1項に記載のモータ装置を備えることを特徴とするロボット装置。
【請求項1】
電気機械変換素子に駆動電圧を供給するための電流を、制御信号に基づいて制御する駆動回路部と、
前記電気機械変換素子の駆動電圧を検出する検出部と、
前記駆動電圧の供給を制御する駆動制御信号を前記駆動回路部に出力する駆動処理、及び、前記駆動電圧を検出して得られた検出電圧に基づいて前記駆動電圧を目標電圧に補正する補正制御信号を前記駆動回路部に出力する補正処理、を実行する制御部と、を備え、
前記制御信号は、少なくとも前記駆動制御信号及び前記補正制御信号を含む
ことを特徴とする電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項2】
前記検出部は、
前記目標電圧が予め定められた電圧値になるタイミングにおいて、前記駆動電圧を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記補正処理において、前記検出電圧と前記目標電圧とを用いた演算結果が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、前記演算結果が前記閾値以上であると判定した場合に、前記補正制御信号を前記駆動回路部に出力する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記駆動制御信号を予め定められた回数出力するごとに、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、予め定められた期間ごとに、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項6】
前記制御信号には、パルス信号である第1制御信号と、パルス信号である第2制御信号とが含まれ、
前記駆動回路部は、
前記電気機械変換素子に電流を供給するカレントソース部と、
前記カレントソース部と前記圧電素子との間に配置され、前記第1制御信号に基づいて前記カレントソース部から前記圧電素子に充電を行う第1のスイッチと、
前記電気機械変換素子に充電された電荷を放電するカレントシンク部と、
前記電気機械変換素子と前記カレントシンク部との間に配置され、前記第2制御信号に基づいて前記電気機械変換素子から前記カレントシンク部に放電を行う第2のスイッチと
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記補正処理において、前記検出電圧と前記目標電圧とを用いた演算結果に基づいて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のうちのいずれか一方として、前記補正制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項6に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項8】
前記駆動回路部は、
前記電気機械変換素子において前記駆動電圧が供給される第1の端子と、前記圧電素子において接地される第2の端子とを、第3制御信号に基づいて、導通させる第3のスイッチを備え、
前記制御部は、
前記補正処理において、前記第3制御信号として、前記補正制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項6に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動回路部は、
前記制御信号の電圧に応じて、前記駆動電圧を供給するための電流を制御する電流アンプを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記検出電圧と前記目標電圧とを用いた演算結果に応じて、前記補正制御信号のパルス幅を変更する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電気機械変換素子の駆動装置を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項12】
回転子の周面の少なくとも一部に掛けられる伝達部と、
前記伝達部に接続され、前記伝達部を移動させる前記電気機械変換素子と、
を備え、
前記制御部は、
前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態として前記伝達部を一定距離移動させる駆動動作及び前記回転力伝達状態を解消した状態で前記伝達部を所定の位置に戻す復帰動作を前記電気機械変換素子に行わせる
ことを特徴とする請求項11に記載のモータ装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記伝達部が前記所定の位置に戻された状態において、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項12に記載のモータ装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記回転力伝達状態を解消した状態又は前記回転力伝達状態において、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のモータ装置。
【請求項15】
前記駆動回路部は、
前記電気機械変換素子において前記駆動電圧が供給される第1の端子と、前記電気機械変換素子において接地される第2の端子とを、放電制御信号に基づいて、導通させる放電スイッチを備え、
前記制御部は、
前記伝達部が前記所定の位置に戻された状態において、前記放電スイッチを導通させる前記放電制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項16】
請求項11から請求項15のいずれか1項に記載のモータ装置を備えることを特徴とするロボット装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−191743(P2012−191743A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52848(P2011−52848)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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