説明

電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、電子機器及び電子時計

【課題】 DCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下を軽減し、残像やちらつきを生じさせない電気泳動表示装置の駆動方法等を提供する。
【解決手段】 共通電極に駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、複数の画素電極のそれぞれに駆動パルス信号の反転信号、又は正転信号に基づく電圧を印加し、表示部に表示される画像を書き換える部分駆動方式によって、表示部に第1の画像を第1色で表示させる画像表示工程(S12)と、その後に部分駆動方式によって、表示部に第1の画像を第2色で表示させる画像消去工程(S14)と、その後に表示部の全画素を中間色で表示させる第1予備表示工程(S22)と、その後に表示部の全画素を第2色で表示させる第2予備表示工程(S24)と、を含み、第2予備表示工程の後に、次の画像表示工程が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、電子機器及び電子時計等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を切っても画像を保持できるメモリー性を有する表示パネルが開発され、電子時計等にも使用されている。メモリー性を有する表示パネルとしては、EPD(Electrophoretic Display)すなわち電気泳動表示装置や、メモリー性液晶表示装置等が知られている。
【0003】
電気泳動表示装置は、視野角の広さ、コントラスト比の高さ、柔軟性、反射型ディスプレイであるゆえの低消費電力などの優れた利点がある。
【0004】
一方で、特許文献1に記載されているように、電気泳動表示装置において電極間に印加される電界の時間平均がほぼゼロでなければ、装置の動作寿命が短くなる恐れがある。つまり、電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するためには、DCバランスがとられること、すなわち印加される電界の時間平均がほぼゼロになることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−530201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電気泳動表示装置は、表示部の全体を描画する全面駆動方式、又は書き換え対象である一部を描画することも可能な部分駆動方式により画像を表示することができる。電気泳動表示装置の表示部は、例えば画像の画素に対応する画素電極と透明な共通電極とを含み、これらの電極のそれぞれに電圧を印加して、発生した電界によって電気泳動素子を移動させることで画像を更新する。
【0007】
部分駆動方式は、短い時間で表示画像を更新できる。しかし、部分駆動方式で特定の領域を繰り返し書き換えると、その領域のコントラスト比が低下することが知られている。そこで、表示部の全体を均一に書き換えることが長期信頼性の観点から好ましい。
【0008】
そこで、常に全面駆動方式で表示部の全体を描画することで、コントラスト比の低下の問題を解決できる。ただし、全ての画素を駆動対象とするので、部分駆動方式と比べて表示画像の更新に時間がかかる。
【0009】
全面駆動方式で更新時間を早めるためには、例えば電圧の印加に用いる信号の駆動時間を短くすることが考えられる。しかし、この場合、所望の反射率に到達する前に信号の駆動が終了するために残像が生じる可能性がある。
【0010】
また、DCバランスをとるために、全面駆動方式で所望の画像の表示と、反転表示とを連続して実行した場合には、使用者に画面のちらつきとして認識されるおそれがある。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、DCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下を軽減し、残像やちらつきを生じさせない電気泳動表示装置の駆動方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、第1色、第2色、および前記第1色と前記第2色の中間色を表示可能な画素を有する表示部を含み、一方の前記基板と前記電気泳動素子との間に前記画素に対応する画素電極が形成され、他方の前記基板と前記電気泳動素子との間に、複数の前記画素電極と対向する共通電極が形成された電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記共通電極に第1の電位と第2の電位とを繰り返す駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、複数の前記画素電極のそれぞれに前記駆動パルス信号の反転信号、又は正転信号に基づく電圧を印加し、前記画素電極と前記共通電極との間に生じた電界によって前記電気泳動粒子を移動させることで前記表示部に表示される画像を書き換える部分駆動方式によって、前記表示部に第1の画像を第1色で表示させる画像表示工程と、前記画像表示工程の後に、前記部分駆動方式によって、前記表示部に前記第1の画像を前記第2色で表示させる画像消去工程と、前記画像消去工程の後に、前記表示部の全画素を前記中間色で表示させる第1予備表示工程と、前記第1予備表示工程の後に、前記表示部の全画素を前記第2色で表示させる第2予備表示工程と、を含み、前記第2予備表示工程の後に、次の画像表示工程が実行される。
【0013】
(2)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記第1予備表示工程および前記第2予備表示工程は、前記部分駆動方式によって、前記表示部の全画素を前記中間色、又は前記第2色で表示させ、前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間が、前記画像表示工程において前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間よりも短くてもよい。
【0014】
これらの発明によれば、部分駆動方式によって、画像表示工程、画像消去工程を実行した後に、表示部の全画素をそれぞれ中間色、第2色で表示させる第1予備表示工程、第2予備表示工程を実行する。部分駆動方式は、共通電極に第1の電位と第2の電位とを繰り返す駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、複数の画素電極のそれぞれに駆動パルス信号の反転信号、又は正転信号に基づく電圧を印加し、画素電極と共通電極との間に生じた電界によって電気泳動粒子を移動させることで表示部に表示される画像を書き換える。部分駆動方式では、表示部の全体だけでなく、書き換え対象である一部を描画することが可能である。
【0015】
画像表示工程は、第1の画像を第1色で表示させる。そして、画像消去工程は、第1の画像を第2色で表示させることで消去を行う。ここで、第1色とは例えば黒色であり、第2色とは例えば白色である。第1の画像は表示部の一部に表示される画像であって、文字、数字、文章、図形、記号、模様等のいずれか又はこれらの組み合わせであってもよい。また、第1の画像は、画像表示工程で表示される度に異なる文字、数字、文章、図形、記号、模様等に変化してもよい。このとき、画像表示工程、画像消去工程のそれぞれは、第1の画像を第1色、第2色で表示するので、これらの工程でDCバランスがとられる。
【0016】
その後、これらの発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、表示部の画素の全部を書き換える第1予備表示工程、第2予備表示工程を実行する。このことにより、第1の画像に対応する表示部の一部についてだけ表示、消去を繰り返すことで生じる局所的なコントラスト比の低下を発生しにくくする。
【0017】
局所的なコントラスト比の低下は、表示部の一部の領域(以下、特定領域)に電界を印加することを長い間繰り返すことで生じる。つまり、特定領域についての電圧の印加に用いる信号を駆動する回数と、特定領域以外の領域についての駆動回数とが、時間の経過と共に大きく異なってくることで生じる。
【0018】
これらの発明の電気泳動表示装置の駆動方法では、画像表示工程、画像消去工程を実行した後に、第1予備表示工程、第2予備表示工程によって第1の画像の背景も含む全面が駆動される。そのため、第1の画像(特定領域に対応)と第1の画像の背景とで駆動回数に大きく差が生じることを回避することができる。その結果、局所的なコントラスト比の低下は発生しにくい。そして、第1予備表示工程、第2予備表示工程は、表示部の全面をそれぞれ第1色、第2色で表示するので、これらの工程でDCバランスがとられる。そして、前記の工程では、全面駆動方式で所望の画像の表示と、反転表示とを連続して実行するわけではない。そのため、画面変化時のちらつきも生じない。
【0019】
よって、これらの発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、DCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下やちらつきを生じさせない。そのため、長期信頼性を確保でき、表示品質を向上させることができる。
【0020】
ここで、第1予備表示工程、第2予備表示工程を実行する時間(具体的には、駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間)は、画像表示工程(又は画像消去工程)を実行する時間よりも短くてもよい。
【0021】
第1予備表示工程では、表示部の全体を第1色で表示せずに、第1色と第2色の中間色で表示するので、第1予備表示工程の実行時間は短くてよい。そして、第2予備表示工程も中間色から第2色表示に更新するだけなので実行時間は短くてよい。よって、第1予備表示工程と第2予備表示工程を実行しても、表示画像の更新に時間がかかるという問題が生じることはない。
【0022】
第1予備表示工程と第2予備表示工程は、表示更新にかかる時間を短縮するために部分駆動方式で行われることが好ましいが、全面駆動方式でもよい。部分駆動方式の場合には、全面駆動方式によるパルス信号の駆動時間を短くすることで生じ得る残像の問題は発生しない。全面駆動方式の場合でも、第1予備表示工程と第2予備表示工程は、全面を第2色で表示する画像消去工程に続いて実行される。そのため、この場合にも、パルス信号の駆動時間を短くすることで生じ得る残像の問題は発生しない。
【0023】
さらに、第1予備表示工程と第2予備表示工程を実行することで、第1の画像の輪郭部分に生じる残像がある場合にも、残像を目立たなくすることができる。
【0024】
これらの発明の電気泳動表示装置の駆動方法では、第1予備表示工程と第2予備表示工程によって、万一輪郭部分に残像が生じても消去を行い、表示品質を向上させることができる。
【0025】
(3)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記表示部の全画素を前記第1色で表示させる第3予備表示工程と、前記第3予備表示工程に続いて実行され、前記表示部の全画素を前記第2色で表示させる第4予備表示工程と、を含み、所与の条件を満たした場合に、前記第2予備表示工程の後、かつ次の画像表示工程が実行される前に、前記第3予備表示工程および前記第4予備表示工程が実行されてもよい。
【0026】
(4)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記所与の条件は、前記画像表示工程が所定回数実行されることであってもよい。
【0027】
これらの発明の電気泳動表示装置の駆動方法では、表示部全体を第1色表示する第3予備表示工程と、表示部全体を第2色表示する第4予備表示工程と、を含む。前記のように輪郭部分の残像は、第1予備表示工程と第2予備表示工程で視認されないようになるが、使用者が視認しない程度の残像が蓄積される可能性がある。よって、時間の経過とともに、電気泳動表示装置の表示部に第1の画像を含む一部の領域に「もや」のような色調乱れが発生する場合がある。これらの発明の電気泳動表示装置の駆動方法では、第3予備表示工程、第4予備表示工程で表示部全体をそれぞれ第1色、第2色で表示して、表示部全体のリフレッシュすることで、このような色調乱れを防止することができる。
【0028】
ただし、第3予備表示工程、第4予備表示工程を常に実行すると、表示画像の更新に時間がかかるという問題が生じる可能性がある。そこで、画像表示工程が所定回数(例えば、10回)実行されることを条件として、第3予備表示工程および第4予備表示工程が行われてもよい。このとき、表示画像の更新に時間をかけることなく、色調乱れを防止することができる。ここで、第3予備表示工程、第4予備表示工程は、表示更新にかかる時間を短縮するために部分駆動方式で行われることが好ましいが、全面駆動方式でもよい。
【0029】
(5)本発明は、前記の電気泳動表示装置の駆動方法を実行する制御部を備えた電気泳動表示装置であってもよい。
【0030】
本発明によれば、電気泳動表示装置が含む制御部によって前記の制御方法が実現される。そのため、本発明の電気泳動表示装置は、DCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下や残像を生じさせない。そのため、長期的信頼性に優れており、表示品質が向上する。
【0031】
(6)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子機器であってもよい。
【0032】
(7)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子時計であってもよい。
【0033】
これらの発明の電子機器、電子時計は、前記の電気泳動表示装置を用いることで、DCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下や残像を生じさせない。そのため、長期的信頼性に優れ、表示品質のよい電子機器、電子時計を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態における電気泳動表示装置のブロック図。
【図2】第1実施形態における電気泳動表示装置の画素の構成例を示す図。
【図3】図3(A)は電気泳動素子の構成例を示す図。図3(B)、図3(C)は電気泳動素子の動作の説明図。
【図4】図4(A)〜図4(B)は部分駆動方式の波形図、反射率の例。
【図5】図5(A)〜図5(D)は局所的なコントラスト比の低下を説明する図。
【図6】図6(A)〜図6(B)は全面駆動方式の波形図、反射率の例。
【図7】図7(A)〜図7(E)は全面駆動方式での残像発生を説明する図。
【図8】図8(A)〜図8(H)は第1実施形態の表示例。
【図9】第1実施形態のフローチャート。
【図10】図10(A)〜図10(F)は第2実施形態の表示例。
【図11】第2実施形態のフローチャート。
【図12】図12(A)〜図12(C)は表示のにじみを説明する図。
【図13】図13(A)〜図13(F)は第3実施形態の表示例。
【図14】第3実施形態のフローチャート。
【図15】図15(A)〜図15(H)は第4実施形態の表示例。
【図16】第4実施形態のフローチャート。
【図17】第4実施形態の波形図。
【図18】図18(A)〜図18(F)は第5実施形態の表示例。
【図19】第5実施形態のフローチャート。
【図20】第5実施形態の変形例のフローチャート。
【図21】適用例の電子機器のブロック図。
【図22】図22(A)は電子機器の一例である電子時計の図、図22(B)は電子機器の一例である電子ペーパーの図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図9を参照して説明する。第1実施形態の電気泳動表示装置は、文字、数字、写真、模様、イラスト等の様々な画像を表示可能であるとする。
【0036】
1.1.電気泳動表示装置の構成
図1は、本実施形態のアクティブマトリックス方式の電気泳動表示装置の構成を示す図である。
【0037】
電気泳動表示装置10は、表示制御回路60、表示部3を含む。表示制御回路60は、表示部3を制御する制御部であり、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、コントローラー63、共通電源変調回路64、記憶部160を含む。
【0038】
走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、共通電源変調回路64、記憶部160は、それぞれコントローラー63と接続されている。コントローラー63は、例えば時刻信号等の入力信号(図外)に基づいて、これらを総合的に制御する。
【0039】
記憶部160は、例えばVRAMと、例えばフラッシュメモリー等の不揮発性メモリーを含んでいてもよい(図外)。VRAMは表示部3に表示させる画像のデータを記憶する。VRAMは複数のバンクに分かれており、それぞれが個別のVRAMとして機能してもよい。また、不揮発性メモリーはVRAMに記憶されたデータを構成する要素のデータ(例えばパーツデータや背景データ)を記憶する。なお、記憶部160は、その他に例えばSRAM、DRAM等を含んでいてもよい。
【0040】
表示部3には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68とが形成されており、これらの交差位置に対応して複数の画素40が設けられている。
【0041】
走査線駆動回路61は、m本の走査線66(Y1、Y2、…、Ym)により各画素40に接続されている。走査線駆動回路61は、コントローラー63の制御に従って1行目からm行目までの走査線66を順次選択することで、画素40に設けられた駆動用TFT48(図2参照)のオンタイミングを規定する選択信号を供給する。
【0042】
データ線駆動回路62は、n本のデータ線68(X1、X2、…、Xn)により各画素40に接続されている。データ線駆動回路62は、コントローラー63の制御に従って、画素40のそれぞれに対応する1ビットの画像データを規定する画像信号を画素40に供給する。なお、本実施形態では、画素データ「0」を規定する場合には、ローレベルの画像信号を画素40に供給し、画素データ「1」を規定する場合には、ハイレベルの画像信号を画素40に供給するものとする。
【0043】
表示部3には、また、共通電源変調回路64から延びる低電位電源線49(Vss)、高電位電源線50(Vdd)、共通電極配線55(Vcom)、第1のパルス信号線91(S1)、第2のパルス信号線92(S2)が設けられており、それぞれの配線は画素40と接続されている。共通電源変調回路64は、コントローラー63の制御に従って上記配線のそれぞれに供給する各種信号を生成する一方、これら各配線の電気的な接続及び切断(ハイインピーダンス化、Hi−Z)を行う。
【0044】
1.2.画素部分の回路構成
図2は、図1の画素40の回路構成図である。なお、図1と同じ配線には同じ番号を付しており、説明は省略する。また、全画素に共通の共通電極配線55については記載を省略している。
【0045】
画素40には、駆動用TFT(Thin Film Transistor)48と、ラッチ回路70と、スイッチ回路80が設けられている。画素40は、ラッチ回路70により画像信号を電位として保持するSRAM(Static Random Access Memory)方式の構成をとる。
【0046】
駆動用TFT48は、N−MOSトランジスタからなる画素スイッチング素子である。駆動用TFT48のゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子はラッチ回路70のデータ入力端子に接続されている。ラッチ回路70は転送インバーター70tと帰還インバーター70fとを備えている。転送インバーター70t、帰還インバーター70fには、低電位電源線49(Vss)と高電位電源線50(Vdd)から電源電圧が供給される。
【0047】
スイッチ回路80は、トランスミッションゲートTG1、TG2からなり、ラッチ回路70に記憶された画素データのレベルに応じて、画素電極35(図3(B)、図3(C)参照)に信号を出力する。なお、Vaは、1つの画素40の画素電極へ供給される電位(信号)を意味する。
【0048】
ラッチ回路70に画素データ「1」(ハイレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG1がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S1を供給する。一方、ラッチ回路70に画素データ「0」(ローレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG2がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S2を供給する。このような回路構成により、表示制御回路60はそれぞれの画素40の画素電極に対して供給する電位(信号)を制御することが可能である。
【0049】
1.3.表示方式
本実施形態の電気泳動表示装置10は、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式であるとする。分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものであるとすると、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示できる。ここでは、電気泳動表示装置10は、基本色として黒色と白色とを表示可能であるとして説明する。そして、黒色を表示している画素を白色で表示すること、又は白色を表示している画素を黒色で表示することを反転と表現する。
【0050】
図3(A)は、本実施形態の電気泳動素子132の構成を示す図である。電気泳動素子132は素子基板130と対向基板131(図3(B)、図3(C)参照)との間に挟まれている。電気泳動素子132は、複数のマイクロカプセル120を配列して構成される。マイクロカプセル120は、例えば無色透明な分散液と、複数の白色の電気泳動粒子(白色粒子127)と、複数の黒色の電気泳動粒子(黒色粒子126)とを封入している。本実施形態では、例えば白色粒子127は負に帯電しており、黒色粒子126は正に帯電しているとする。
【0051】
図3(B)は、電気泳動表示装置10の表示部3の部分断面図である。素子基板130と対向基板131は、マイクロカプセル120を配列してなる電気泳動素子132を狭持している。表示部3(図1参照)は、素子基板130の電気泳動素子132側に、複数の画素電極35が形成された駆動電極層350を含む。図3(B)では、画素電極35として画素電極35Aと画素電極35Bが示されている。画素電極35により、画素ごとに電位を供給することが可能である(例えば、Va、Vb)。ここで、画素電極35Aを有する画素を画素40Aとし、画素電極35Bを有する画素を画素40Bとする。画素40A、画素40Bは画素40(図1、図2参照)に対応する2つの画素である。
【0052】
一方、対向基板131は透明基板であり、表示部3において対向基板131側に画像表示がなされる。表示部3は、対向基板131の電気泳動素子132側に、平面形状の共通電極37が形成された共通電極層370を含む。なお、共通電極37は透明電極である。共通電極37は、画素電極35と異なり全画素に共通の電極であり、電位Vcomが供給される。
【0053】
共通電極層370と駆動電極層350との間に設けられた電気泳動表示層360に電気泳動素子132が配置されており、電気泳動表示層360が表示領域となる。共通電極37と画素電極(例えば、35A、35B)との間の電位差に応じて、画素毎に所望の表示色を表示させることができる。
【0054】
図3(B)では、共通電極側の電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも高電位である。このとき、負に帯電した白色粒子127が共通電極37側に引き寄せられ、正に帯電した黒色粒子126が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは白色を表示していると視認される。
【0055】
図3(C)では、共通電極側の電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも低電位である。このときは逆に、正に帯電した黒色粒子126が共通電極37側に引き寄せられ、負に帯電した白色粒子127が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは黒色を表示していると視認される。なお、図3(C)の構成は図3(B)と同様であり説明は省略する。また、図3(B)、図3(C)ではVa、Vb、Vcomを固定された電位として説明したが、実際にはVa、Vb、Vcomは時間とともに電位が変化する。以下では、電位Va、Vb、Vcomを与える信号をパルス信号という。そして、特に共通電極へのパルス信号を駆動パルス信号という。
【0056】
ここで、図3(B)の後に、図3(C)の状態に変化したとする。このとき、画素40Aは白色の後に黒色が表示されており、印加電界の方向が正反対に変化している。画素40Aについては、印加電界が対称的でありDCバランスがとられている。一方、画素40Bは白色だけが表示されており、印加電界が対称的でなく、DCバランスがとられていない。電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するためには、この例の画素40Aのように、反転表示を行う必要がある。
【0057】
1.4.駆動方式
まず、制御部(図1の表示制御回路60が対応)が表示部に画像を表示する制御を行うときのパルス信号の駆動方式について図4(A)〜図7(E)を参照して説明する。
【0058】
1.4.1.部分駆動方式
図4(A)は部分駆動方式の波形図である。電気泳動表示装置では、応答速度を速めるために、表示部の全体を描画するのではなく、書き換え対象である一部を描画する場合がある。部分駆動方式によって、書き換え対象である一部の描画ができる。なお、図4(A)のVa、Vb、Vcomは図3(B)〜図3(C)と同じであり、Va、Vb、Vcomはハイレベル(VH)、ローレベル(VL)、またはハイインピーダンス状態(Hi−Z)をとり得る。
【0059】
図4(A)のVcomは、共通電極への駆動パルス信号の例を示す。ここでのVcomは、あるパルス幅T1(以下、単にT1とする)で第1の電位を共通電極に印加するパルスの後に、短いパルス幅T2(以下、単にT2とする)で第2の電位を共通電極に印加するパルス(逆電位駆動パルス)が続き、それが繰り返される。ただし、図4(A)のように駆動停止の直前では例外的に第1の電位を共通電極に印加して終了する。パルス幅の短い逆電位駆動パルスにより、部分書き換え時の駆動時間をより短縮することができる。ここで、白色表示をする場合には第1の電位はVH(第2の電位はVL)であり、黒色表示をする場合には第1の電位はVL(第2の電位はVH)である。また、例えば、T2はT1の1%〜15%程の短い時間であってもよい。
【0060】
この例では、画素40Aの画素電極に印加される電位Vaを与えるパルス信号は駆動パルス信号の反転信号である。また、画素40Bの画素電極に印加される電位Vbを与えるパルス信号は駆動パルス信号と同じ信号(正転信号)である。画素40Aと画素40Bは例えば図3(B)で示された2つの画素である。画素40Aは、図4(A)の「白色表示」と示された期間に黒色から白色へと書き換えられ、「黒色表示」と示された期間に白色から黒色へと書き換えられる。一方、画素40Bは、共通電極と画素電極との間に電界を生じないため書き換えが行われずに黒色表示を続ける。
【0061】
図4(B)は、図4(A)の例による画素40A、画素40Bの色(反射率)の変化を示す図である。まず、画素40Aについて説明する。画素40Aは最初に黒色で表示されているものとする。「白色表示」のT1に対応する区間では、画素電極の電位はVLで共通電極の電位はVHであるため白色表示に近づく。しかし、「白色表示」のT2に対応する区間では、画素電極の電位はVHで共通電極の電位はVLであるため黒色表示に近づく。しかし、T1>T2であるため、画素40Aは「白色表示」の期間の最後には白色で表示される。そして、画素40AはVcomの極性が反転した「黒色表示」の期間の最後には黒色で表示される。
【0062】
一方、画素40Bは、常にVcomと同じ信号が画素電極に供給されているので電位差が生じることはなく当初からの黒色表示を続ける。このように部分駆動方式では、変化させたい画素のみを駆動することができ、画像の書き換えにおける応答速度を速めることができる。特に、パルス幅の短い逆電位駆動パルスを使用することで部分書き換え時の駆動時間を短縮することができる。
【0063】
なお、書き換え対象である一部を描画する場合に適していることから、このようなパルス信号の駆動方式を部分駆動方式と呼ぶ。しかし、部分駆動方式は、書き換え対象を表示部の一部の画素に限るものではない。そのため、表示部の全画素を、部分駆動方式で描画することが可能である。
【0064】
1.4.2.部分駆動方式での問題
図5(A)〜図5(D)は、部分駆動方式で一部の領域を書き換えた場合における局所的なコントラスト比の低下を説明する図である。図5(A)〜図5(C)では、表示部3に時刻表示(10:05、又は10:06)が行われており、部分駆動方式で分一桁を含む領域51を書き換えている。
【0065】
図5(A)では時刻10:05が表示されている。そして、時刻が10:06に変化するときに、図5(B)のように領域51の分一桁の「5」を反転表示(白色に表示)して消去する。次に、図5(C)のように、白色を背景とする黒色の「6」が正転表示される。このとき、図5(A)と図5(B)とでDCバランスがとられ、しかも表示部3の一部である領域51の範囲で更新されるので更新表示にかかる時間は短くてすむ。図5(A)〜図5(C)のように時刻表示を部分駆動方式によって更新することで、DCバランスをとって長期信頼性を確保し、早い更新表示が可能な電気泳動表示装置を実現できる。
【0066】
しかし、このような更新表示を長期間続けると、局所的なコントラスト比の低下を生じることがある。この様子を表したのが図5(D)である。図5(D)では、表示部3の全面を白色表示しているが、領域51においてコントラスト比の低下が生じている。そのため、領域51の白色が他の領域(例えば領域52)と異なっている。
【0067】
ここで、局所的なコントラスト比の低下は、表示部3の一部の領域51に電界を印加することを長い間繰り返すことで生じる。つまり、領域51についての電圧の印加に用いる信号を駆動する回数と、領域51以外の領域(例えば領域52)についての駆動回数とが、時間の経過と共に大きく異なってくることで生じる。図5(D)のような局所的なコントラスト比の低下は、表示部3の表示品質を低下させてしまう。
【0068】
1.4.3.全面駆動方式
図6(A)は全面駆動方式の波形図である。電気泳動表示装置では、表示部の全体を描画する全面駆動方式で画像を表示することもできる。このとき、表示部の一部の領域に電界を印加することを長い間繰り返すことがないので、部分駆動方式とは異なり、局所的なコントラスト比の低下を生じることはない。なお、図6(A)のVa、Vb、VcomやVH、VLは、図3(A)〜図4(B)と同じであり説明を省略する。
【0069】
図6(A)は、全面駆動方式によって、画素40Aを黒色から白色に、画素40Bを白色から黒色に変化させる場合の波形図を示す。図6(A)では表示色が変化する間、Vaはローレベル(VL)のままであり、Vbはハイレベル(VH)のままである。そして、VcomはVLとVHとを等しい時間だけ繰り返している。つまり、図6(A)のパルス幅T3(以下、単にT3とする)とパルス幅T4(以下、単にT4とする)とは等しい。
【0070】
図6(B)は、図6(A)の例による画素40A、画素40Bの色(反射率)の変化を示す図である。画素40Aについては、最初に黒色で表示されている。図6(B)のT3に対応する区間では、画素電極の電位はVLで共通電極の電位はVHであるため白色表示に近づく。図6(B)のT4に対応する区間では、画素電極と共通電極に電位差が生じないので色は維持される。そして、最終的には画素40Aは黒色から白色に変化する。
【0071】
一方、画素40Bについては、最初に白色で表示されている。図6(B)のT3に対応する区間では、画素電極と共通電極に電位差が生じないので色は維持される。図6(B)のT4に対応する区間では、画素電極の電位はVHで共通電極の電位はVLであるため黒色表示に近づく。そして、最終的には画素40Bは白色から黒色に変化する。
【0072】
ここで、全面駆動方式では、表示部3の全ての画素の画素電極にVL又はVHの電位が印加される。そして、表示部の一部の領域に対してのみ電界を印加することを長い間繰り返すことがないので、局所的なコントラスト比の低下を生じることはない。
【0073】
なお、全面駆動方式では、表示部の全画素が描画の対象であり、表示部の一部の画素だけを書き換えることはできない。その名称の通り、表示部の全画素を描画することになる。
【0074】
1.4.4.全面駆動方式での問題
図7(A)〜図7(E)は全面駆動方式での残像の発生を説明する図である。まず、図7(A)のように、表示部3を4つの領域(左上、右上、左下、右下)に分割し、左上の領域、右上の領域を特にそれぞれ領域X、領域Yとよぶことにする。ここで、図3(B)のように隣り合う画素40A、画素40Bがあり、それぞれ領域X、領域Yに含まれるものとする。
【0075】
図7(B)〜図7(D)は、全面駆動方式で画像を更新した様子を表す。まず、図7(B)では領域Xを含む表示部3の左半分が黒色で表示されており、領域Yを含む右半分が白色で表示されている。図7(B)は更新前の元画像であるとする。
【0076】
ここで、表示画像の更新が行われ、更新後の画像は領域X、領域Yを含む上半分が黒色の画像であるとする。このとき、DCバランスをとるために、まず図7(C)のように反転表示が行われる。つまり、図7(C)のように領域X、領域Yは白色で表示される。
【0077】
その後、図7(D)のように領域X、領域Yを含む上半分が黒色の画像が表示されるが、領域Yの黒色と領域Xの黒色とは異なっている。図7(D)の例では、領域Yの黒色は領域Xの黒色よりも反射率が高い。このような反射率の違いにより、全面駆動方式によって画像を更新した場合に残像が発生することがある。
【0078】
図7(E)は、領域Xに含まれる画素40Aと、領域Yに含まれる画素40Bの反射率の変化を比較したものである。図7(E)の区間Tは図7(B)に、区間Tは図7(C)に、区間Tは図7(D)に対応する。まず、画素40Aは、最初(区間T)は黒色であって、その後に白色、黒色と変化する(区間T、T)。この変化を(黒色、白色、黒色)のように表現する。すると、画素40Bの変化は(白色、白色、黒色)と表すことができる。
【0079】
ここで、全面駆動方式でパルス信号の駆動時間を十分長くした場合(TEX分だけTを延ばす場合)には画素40Aも画素40Bも図7(E)の反射率R(=R)に収束する。そのため、反射率に差が生じないので、残像が発生することもない。しかし、実際には表示画像の更新時間を短くするためにTEX分の延長はない。すると、(黒色、白色、黒色)と変化する画素40Aは反射率Rに、(白色、白色、黒色)と変化する画素40Bは反射率Rになるので、反射率に差が生じて残像が発生する。
【0080】
よって、部分駆動方式ではなく、全面駆動方式を行った場合には、局所的なコントラスト比の低下は生じないが、別の問題として残像が発生するおそれがある。そのため、局所的なコントラスト比の低下や残像の問題を発生させない電気泳動表示装置の駆動方法が求められている。
【0081】
1.5.本実施形態の表示例
図8(A)〜図8(H)は本実施形態の表示例を表す。図8(A)〜図8(H)のそれぞれの左図は表示部3の表示画像を表し、右図は表示部3の表示を行うために駆動される画素を濃灰色(ダークグレー)で表した駆動画素13を表す。駆動画素13の下部には、全面駆動方式か部分駆動方式かの区別と、駆動画素13の濃灰色(ダークグレー)で表された画素が黒色表示されるのか、白色表示されるのかの区別が示されている。
【0082】
また、図8(A)〜図8(H)の工程名は、後述するフローチャートの工程名に対応するものである。なお、工程のあとに付してある括弧で囲まれた数字は、同じ名称の工程を区別するために実行の順番を表している。
【0083】
ここで、本実施形態の電気泳動表示装置の制御部は、表示部の画像を、すでに表示している元画像から次の新画像へと更新する制御を行う。つまり、元画像を消去し、新画像を表示するための制御を実行する。
【0084】
元画像を消去する制御や新画像を表示する制御は所定の順番で実行される。画像の更新に関する制御を実行するそれぞれの段階を工程という。例えば、制御部が第1画像表示制御を実行する段階を第1画像表示工程と表現する。そして、以下において各工程で制御部が対応する制御を実行することを、単に「工程を実行する」と表現する。例えば第1画像表示工程において制御部が第1画像表示制御を実行することを、単に第1画像表示工程を実行する、と表現する。
【0085】
図8(A)は、第1画像表示工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。第1画像表示工程(1)では、部分駆動方式によって、表示部3に時刻表示10:05(第1の画像に対応)を黒色(第1色に対応)で表示する。なお、第1画像表示工程(1)の実行前は、表示部3は全面が白色の状態であったとする。
【0086】
図8(B)は、第1画像消去工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。第1画像消去工程(1)では、部分駆動方式によって、表示部3に時刻表示10:05以外の部分(第1の画像の背景に対応)を黒色(第1色に対応)で表示する。このとき、表示部3は、全面が黒色の状態になる。
【0087】
図8(C)は、第2画像表示工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。第2画像表示工程(1)では、部分駆動方式で、表示部3に時刻表示10:06以外の部分(第2の画像の背景に対応)を白色(第2色に対応)で表示する。このとき、表示部3には、黒色で時刻表示10:06が表示されることになる。
【0088】
図8(D)は、第2画像消去工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。第2画像消去工程(1)では、部分駆動方式で、時刻表示10:06(第2の画像に対応)を白色(第2色に対応)で表示する。このとき、表示部3は、全面が白色の状態になる。
【0089】
図8(E)は、第2画像消去工程(1)の後で、再び第1画像表示工程(2)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。第1画像表示工程(2)では、部分駆動方式で、表示部3に時刻表示10:07(第1の画像に対応)を黒色(第1色に対応)で表示する。
【0090】
以下、図8(F)〜図8(H)は、それぞれ図8(B)〜図8(D)で、第1の画像が時刻表示10:07、第2の画像が時刻表示10:08である場合に対応するので、詳細な説明を省略する。なお、図8(A)〜図8(H)の例では、1分おきに時刻表示が変化して、各工程もその変化に対応して実行される。例えば、時刻表示10:05が表示(図8(A))されてから1分後に、表示部3は全面が黒色の状態になり(図8(B))、その後に時刻表示10:06が表示される(図8(C))。
【0091】
これらの工程(第1画像表示工程、第1画像消去工程、第2画像表示工程、第2画像消去工程)は、全て部分駆動方式であり、全面駆動方式で表示画像の更新処理の時間を短くするときに生じる残像は発生しない。
【0092】
ここで、第1画像表示工程(1)と第1画像消去工程(1)の駆動画素13を合わせると表示部全体の画素を黒色へと変化させている(図8(A)〜図8(B)のa1)。一方、第2画像表示工程(1)と第2画像消去工程(1)の駆動画素13を合わせると表示部全体の画素を白色へと変化させている(図8(C)〜図8(D)のb1)。よって、これらの4つの工程で、DCバランスがとられている(図8(A)〜図8(D)のa1とb1)。なお、図8(E)〜図8(H)のa2とb2についても、同様にDCバランスがとられることになる。
【0093】
ここで、本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、部分駆動方式で生じ得る局所的なコントラスト比の低下の問題もない。つまり、表示部全体の画素を黒色(第1画像表示工程と第1画像消去工程)、又は白色(第2画像表示工程と第2画像消去工程)へと変化させているので、表示部全体に均一に電界を印加しているからである。
【0094】
局所的なコントラスト比の低下は、表示部の一部の領域(以下、特定領域)に電界を印加することを長い間繰り返すことで生じる。つまり、特定領域についての電圧の印加に用いる信号を駆動する回数と、特定領域以外の領域についての駆動回数とが、時間の経過と共に大きく異なってくることで生じる。本発明の電気泳動表示装置の駆動方法では、このような特定領域が生じることはないため、局所的なコントラスト比の低下は発生しない。
【0095】
よって、本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、DCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下や残像を生じさせない。そのため、長期信頼性を確保でき、表示品質が向上する。
【0096】
1.6.フローチャート
本実施形態の電気泳動表示装置の制御部が行う制御処理は、図9のフローチャートの通りである。図9のように、第1の画像(例えば、分一桁が奇数の時刻表示)を第1色(例えば黒色)で表示させる第1画像表示工程(S2)が実行される。そして、第1の画像の背景を第1色で表示することで表示部全体を第1色にする第1画像消去工程(S4)が実行される。続いて、第2の画像(例えば、分一桁が偶数の時刻表示)の背景を第2色(例えば白色)で表示させる第2画像表示工程(S6)が実行される。そして、第2の画像を第2色で表示することで表示部全体を第2色にする第2画像消去工程(S8)が実行される。そして、第2画像消去工程(S8)の後は、第1画像表示工程(S2)に戻る。
【0097】
ここで、本実施形態の電気泳動表示装置では、これらの4つの工程でDCバランスがとられるため、時刻表示のように偶数回の表示画像の更新(表示および消去)が予定されている用途に適している。
【0098】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態について図10(A)〜図11を参照して説明する。なお、図1〜図9と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。
【0099】
2.1.パターン境界線
第1実施形態では、局所的なコントラスト比の低下を防ぐために、第1の画像(又は第2の画像)と、第1の画像の背景(又は第2の画像の背景)を異なる2つの工程で駆動する。例えば後述する電気泳動粒子のうち最後に駆動された粒子の方が広がる性質等によって、期待される画素の大きさに応じた表示変化が起こらない場合に、第1の画像(又は第2の画像)の輪郭部分に生じる境界線(以下、パターン境界線)が視認される場合がある。
【0100】
例えば、第1画像表示工程が長時間続いた場合に、第1の画像の輪郭を超えて背景の一部まで黒色が広がる可能性がある。続く第1画像消去工程では、第1の画像の背景が黒色で表示される。しかし、既に黒色が広がった背景の一部を黒色表示した場合の反射率と、それ以外(白色)の背景を黒色表示した場合の反射率とが異なるため、パターン境界線が視認される可能性がある。第2実施形態では、このようなパターン境界線が万一発生しても、目立ちにくくすることができるため、表示品質を向上させることができる。
【0101】
2.2.本実施形態の表示例
図10(A)〜図10(F)は本実施形態の表示例を表す。図10(A)〜図10(F)の工程名は、後述するフローチャートの工程名に対応するものである。なお、図8(A)〜図8(H)と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。また、重複説明を避けるため、図8(A)〜図8(H)と異なる事項についてのみ説明する。
【0102】
本実施形態では、図10(C)のように表示部3の全画素を黒色(第1色に対応)で表示させる第1単一色表示工程と、図10(F)のように表示部3の全画素を白色(第2色に対応)で表示させる第2単一色表示工程とを含む。なお、図10(A)の第1画像表示工程、図10(B)の第1画像消去工程、図10(D)の第2画像表示工程、図10(E)の第2画像消去工程は、それぞれ図8(A)の第1画像表示工程(1)、図8(B)の第1画像消去工程(1)、図8(C)の第2画像表示工程(1)、図8(D)の第2画像消去工程(1)と、表示部3の表示画像および駆動画素13が同じであるので説明を省略する。
【0103】
図10(C)の第1単一色表示工程は、図10(B)の第1画像消去工程の後に、部分駆動方式で表示部3の全画素を黒色にする。このとき、図10(B)の第1画像消去工程で生じる可能性のあるパターン境界線を目立たなくすることができる。
【0104】
また、図10(F)の第2単一色表示工程は、図10(E)の第2画像消去工程の後に、部分駆動方式で表示部3の全画素を白色にする。このとき、図10(E)の第2画像消去工程で生じる可能性のあるパターン境界線を目立たなくすることができる。
【0105】
本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、第1単一色表示工程および第2単一色表示工程を含むことで、第1の画像や第2の画像の輪郭部分に生じる境界線(パターン境界線)がある場合にも、パターン境界線を目立たなくすることができる。なお、本発明の電気泳動表示装置の駆動方法では、第1単一色表示工程と第2単一色表示工程とでDCバランスがとられることになる(図10(C)のc1と図10(F)のd1)。
【0106】
2.3.フローチャート
本実施形態の電気泳動表示装置の制御部が行う制御処理は、図11のフローチャートの通りである。なお、図9と同じステップ(工程)には同じ符号を付しており詳細な説明を省略する。
【0107】
本実施形態では、第1の画像を第1色で表示させる第1画像表示工程(S2)が実行される。そして、第1の画像の背景を第1色で表示することで表示部全体を第1色にする第1画像消去工程(S4)が実行される。このとき、第1画像消去工程でパターン境界線が生じる可能性がある。そこで、パターン境界線を目立たなくするために、表示部全体を第1色にする第1単一色表示工程が実行される(S5)。本実施形態では、部分駆動方式で表示部全体を第1色にする。
【0108】
その後、第2の画像の背景を第2色で表示させる第2画像表示工程(S6)が実行される。そして、第2の画像を第2色で表示することで表示部全体を第2色にする第2画像消去工程(S8)が実行される。このとき、第2画像消去工程でパターン境界線が生じる可能性がある。そこで、パターン境界線を目立たなくするために、表示部全体を第2色にする第2単一色表示工程が実行される(S9)。本実施形態では、部分駆動方式で表示部全体を第2色にする。そして、第2単一色表示工程(S9)の後は、第1画像表示工程(S2)に戻る。
【0109】
ここで、本実施形態の電気泳動表示装置では、これらの6つの工程でDCバランスがとられるため、時刻表示のように偶数回の表示画像の更新(表示および消去)が予定されている用途に適している。
【0110】
3.第3実施形態
本発明の第3実施形態について図12(A)〜図14を参照して説明する。なお、図1〜図11と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。
【0111】
3.1.表示のにじみについて
第1実施形態および第2実施形態では、表示部全体が白色のときに第1の画像を黒色で表示する工程(第1画像表示工程)と、表示部全体が黒色のときに第2の画像の背景を白色で表示する工程(第2画像表示工程)とを含む。ここで、電気泳動表示装置では、部分駆動方式で表示を行ったときに最後に表示した色がにじんで広がる性質がある。第1実施形態および第2実施形態では、第1画像表示工程では黒色(第1の画像)がにじんで広がり、第2画像表示工程では白色(第2の画像の背景)がにじんで広がる。このとき、第1の画像と第2の画像とが同じであっても、第1画像表示工程で表示されるか、第2画像表示工程で表示されるかによってサイズや色合いが変わって見えてしまうことがある。
【0112】
この表示のにじみについて図12(A)〜図12(C)を参照して説明する。図12(A)は表示のにじみがない場合の市松模様の表示である。第1画像表示工程でも第2画像表示工程でも図12(A)のように表示されることが理想的である。しかし、第1画像表示工程は、図12(B)のように白色単一色に黒色表示をした場合に対応し、黒色の表示がにじんで大きく見える。一方、第2画像表示工程は、図12(C)のように黒色単一色に白色表示をした場合に対応し、白色の表示がにじんで大きく見える。すなわち、黒色の表示は小さく見える。そのため、第1実施形態および第2実施形態では、第1画像表示工程と第2画像表示工程とで異なった印象の表示をしてしまう可能性がある。
【0113】
本実施形態では、表示画像のサイズや色合いが変わってしまうことを回避することができる。
【0114】
3.2.本実施形態の表示例
図13(A)〜図13(F)は本実施形態の表示例を表す。図13(A)〜図13(F)の工程名は、後述するフローチャートの工程名に対応するものである。なお、工程のあとに付してある括弧で囲まれた数字は、同じ名称の工程を区別するために実行の順番を表している。また、図8(A)〜図8(H)と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。また、重複説明を避けるため、図8(A)〜図8(H)と異なる事項についてのみ説明する。
【0115】
本実施形態では、図13(C)、図13(F)のように表示部3の全画素を白色(第2色に対応)で表示させる表示初期化工程を含む。第1の画像を黒色(第1色に対応)で表示する第1画像表示工程の前に、全画素を白色にすることでサイズや色合いが変わってしまうことを回避できる。
【0116】
本実施形態では、全面を黒色とした後に白色表示することはない。つまり、第1実施形態および第2実施形態に含まれていた第2画像表示工程(図8(C)、図8(G)、図10(D)参照)と第2画像消去工程(図8(D)、図8(H)、図10(E)参照)とを含まない。
【0117】
図13(A)の第1画像表示工程(1)、図13(B)の第1画像消去工程(1)は、それぞれ図8(A)の第1画像表示工程(1)、図8(B)の第1画像消去工程(1)と、表示部3の表示画像および駆動画素13が同じであるので説明を省略する。
【0118】
図13(C)の表示初期化工程によって、表示部3の全画素は白色になる。そのため、続いて図13(D)の第1画像表示工程によって、次の第1の画像(時刻表示10:06)が黒色で表示される。図13(E)〜図13(F)のそれぞれの工程は、図13(B)〜図13(C)と同じであるため説明を省略する。
【0119】
本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、常に表示初期化工程で表示部3の全画素を白色にする。そのため、常に全画素が白色の状態から黒色で第1の画像が表示される。そのため、色合いが変わるという問題は生じない。
【0120】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法では、例えば、第1画像表示工程(1)と第1画像消去工程(1)の駆動画素13を合わせると表示部全体の画素を黒色へと変化させている(図13(A)〜図13(B)のa1)。そして、表示初期化工程(1)では表示部全体の画素を白色へと変化させている(図13(C)のe1)。そのため、これらの3つの工程でDCバランスがとられることになる。なお、第1画像表示工程(2)、第1画像消去工程(2)と表示初期化工程(2)についても同様にDCバランスがとられることになる(図13(D)〜図13(F)のa2とe2)。
【0121】
3.3.フローチャート
本実施形態の電気泳動表示装置の制御部が行う制御処理は、図14のフローチャートの通りである。なお、図9と同じステップには同じ符号を付しており詳細な説明を省略する。
【0122】
本実施形態では、第1の画像を第1色で表示させる第1画像表示工程(S2)が実行される。そして、第1の画像の背景を第1色で表示することで表示部全体を第1色にする第1画像消去工程(S4)が実行される。そして、部分駆動方式で、表示部3の全画素を白色にする表示初期化工程(S10)が実行される。そして、表示初期化工程(S10)の後は、第1画像表示工程(S2)に戻る。
【0123】
ここで、本実施形態の電気泳動表示装置では、これらの3つの工程でDCバランスがとられるため、第1実施形態と第2実施形態とは異なり、予定されている表示画像の更新(表示および消去)が偶数回であっても奇数回であっても適用できる。
【0124】
4.第4実施形態
本発明の第4実施形態について図15(A)〜図17を参照して説明する。なお、図1〜図14と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。
【0125】
4.1.表示のちらつきについて
DCバランスをとるために、全面駆動方式で所望の画像の表示と、反転表示とを連続して実行する場合がある。このとき、画面のちらつきを使用者が感じることがある。本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、全ての工程において、所望の画像の表示と、反転表示とを連続して行うことはなく、このような画面のちらつきを抑えることが可能である。
【0126】
4.2.本実施形態の表示例
図15(A)〜図15(H)は本実施形態の表示例を表す。図15(A)〜図15(H)の工程名は、後述するフローチャートの工程名に対応するものである。なお、工程のあとに付してある括弧で囲まれた数字は、同じ名称の工程を区別するために実行の順番を表している。
【0127】
図15(A)は、画像表示工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。画像表示工程(1)では、部分駆動方式で、表示部3に時刻表示10:05(第1の画像に対応)を黒色(第1色に対応)で表示する。なお、画像表示工程(1)の実行前は、表示部3は全面が白色の状態であったとする。
【0128】
図15(B)は、画像消去工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。画像消去工程(1)では、部分駆動方式で、表示部3に時刻表示10:05(第1の画像に対応)を白色(第2色に対応)で表示する。このとき、表示部3は、理想的には全面が白色の状態になる。しかし、部分駆動方式で同じ領域(第1の画像に対応)を反転表示することで消去を行った場合には、その輪郭部分に残像が生じ得ることが知られている。そのため、以下の第1予備表示工程、第2予備表示工程を実行する。
【0129】
図15(C)は、第1予備表示工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。第1予備表示工程(1)では、表示部3を黒色にするようにパルス信号を駆動する。しかし、全面を完全に黒色表示すると、画像更新処理に時間がかかるため、図15(C)のように一定の中間色(例えばライトグレー)が表示されるところで駆動を停止する。このとき、画像更新処理に時間をかけることなく、画像消去工程(1)で生じた輪郭部分の残像を消去することができる。本実施形態では、部分駆動方式で表示部全体を中間色にする。
【0130】
図15(D)は、第2予備表示工程(1)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。第2予備表示工程(1)では、表示部3を白色に戻すようにパルス信号を駆動する。このとき、表示部3は、全面が白色の状態になる。本実施形態では、部分駆動方式で表示部全体を白色にする。
【0131】
図15(E)は、第2予備表示工程(1)の後で、再び画像表示工程(2)を実行したときの表示部3の表示画像と、そのための駆動画素13を表す。画像表示工程(2)では、部分駆動方式で、表示部3に時刻表示10:06(第1の画像に対応)を黒色(第1色に対応)で表示する。
【0132】
以下、図15(F)〜図15(H)は、それぞれ図15(B)〜図15(D)で、第1の画像が時刻表示10:06である場合に対応するので説明を省略する。なお、図15(A)〜図15(H)の例では、所望の画像の表示と、反転表示とを連続して実行することはない。すなわち、画面がちらつくことはない。
【0133】
ここで、画像表示工程(1)と画像消去工程(1)の駆動画素13は同一の対象(第1の画像)をそれぞれ黒色、白色へと変化させておりDCバランスがとられている(図15(A)〜図15(B)のf1とg1)。また、第1予備表示工程(1)と第2予備表示工程(1)の駆動画素13は、全面をそれぞれ黒色、白色へと変化させておりDCバランスがとられている(図15(C)〜図15(D)のj1とk1)。なお、図15(E)〜図15(F)のf2とg2、図15(G)〜図15(H)のj2とk2についても、同様にDCバランスがとられることになる。すなわち、本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、DCバランスもとられている。
【0134】
ここで、部分駆動方式による局所的なコントラスト比の低下について検討する。本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、画像表示工程、画像消去工程を実行した後に、第1予備表示工程、第2予備表示工程によって第1の画像の背景部分も含む全面が駆動される。そのため、第1の画像(特定領域に対応)と第1の画像の背景とで駆動回数に大きく差が生じることを回避することができる。その結果、局所的なコントラスト比の低下は発生しにくい。
【0135】
よって、本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法は、DCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下やちらつきを生じさせない。そのため、長期信頼性を確保でき、表示品質を向上させることができる。
【0136】
4.3.フローチャート
本実施形態の電気泳動表示装置の制御部が行う制御処理は、図16のフローチャートの通りである。図16のように、第1の画像(例えば、時刻表示)を第1色(例えば黒色)で表示させる画像表示工程(S12)が実行される。そして、第1の画像を第2色(例えば白色)で表示することで第1の画像を消去する画像消去工程(S14)が実行される。続いて、表示部全体を中間色(例えばライトグレー)で表示させる第1予備表示工程(S22)が実行される。そして、表示部全体を第2色(例えば白色)に戻す第2予備表示工程(S24)が実行される。そして、第2予備表示工程(S24)の後は、画像表示工程(S12)に戻る。本実施形態では、第1予備表示工程および第2予備表示工程は、部分駆動方式で単一色表示を行う。
【0137】
4.4.波形図
図17は本実施形態の波形図である。なお、図4(A)〜図4(B)、図6(A)〜図6(B)と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。また、対応工程は図15(A)〜図16と同じである。
【0138】
本実施形態では、第1予備表示工程と第2予備表示工程が実行される。しかし、これらの工程では第1の画像の輪郭部分に生じる残像を消去することが目的である。そのため、第1予備表示工程では、例えば部分駆動方式で、表示部全体を中間色(例えばライトグレー)に表示するだけでよく、黒色で表示する必要はない。
【0139】
そのため、図17の波形図のように、画像表示工程(1)に比べて、第1予備表示工程(1)や第2予備表示工程(1)の実行時間は短くてよい。よって、部分駆動方式である第1予備表示工程と第2予備表示工程を実行しても、表示画像の更新に時間がかかるという問題が生じることはない。また、本実施形態では、全面駆動方式を用いていないので、パルス信号の駆動時間を短くすることで生じ得る残像の問題も発生しない。
【0140】
5.第5実施形態
本発明の第5実施形態および変形例について図18(A)〜図20を参照して説明する。なお、図1〜図17と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。
【0141】
5.1.本実施形態の表示例
図18(A)〜図18(F)は本実施形態の表示例を表す。図18(A)〜図18(F)の工程名は、後述するフローチャートの工程名に対応するものである。また、図15(A)〜図15(H)と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。具体的には、図18(A)〜図18(D)の各工程は、図15(A)〜図15(D)と表示部3の表示画像および駆動画素13が同じであるので説明を省略する。
【0142】
本実施形態では、第4実施形態の各工程に加えて、図18(E)、図18(F)のように表示部3の全画素をそれぞれ黒色(第1色に対応)、白色(第2色に対応)で表示させる第3予備表示工程、第4予備表示工程を含む。
【0143】
前記のように輪郭部分の残像は、第1予備表示工程と第2予備表示工程によって視認されないようになるが、使用者が視認しない程度の残像が蓄積される可能性がある。よって、時間の経過とともに、電気泳動表示装置の表示部に第1の画像(この例では時刻表示)を含む一部の領域に「もや」のような色調乱れが発生する場合がある。本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法では、第3予備表示工程、第4予備表示工程で表示部全体をそれぞれ第1色、第2色で表示して、表示部全体のリフレッシュすることで、このような色調乱れを防止することができる。
【0144】
ここで、第3予備表示工程、第4予備表示工程では、それぞれ表示部全体を黒色、白色で表示するのでDCバランスもとられることになる(図18(E)のm1と図18(F)のn1)。
【0145】
5.2.フローチャート
本実施形態の電気泳動表示装置の制御部が行う制御処理は、図19のフローチャートの通りである。なお、図16と同じステップには同じ符号を付しており詳細な説明を省略する。
【0146】
本実施形態では、画像表示工程(S12)、画像消去工程(S14)、第1予備表示工程(S22)、第2予備表示工程(S24)に続いて、表示部全体を第1色(例えば黒色)で表示する第3予備表示工程(S26)が実行される。そして、その後に、表示部全体を第2色(例えば白色)で表示する第4予備表示工程(S28)が実行される。そして、第4予備表示工程(S28)の後に、画像表示工程(S12)に戻ることになる。本実施形態では、第1予備表示工程、第2予備表示工程、第3予備表示工程、および第4予備表示工程は、部分駆動方式で単一色表示を行う。
【0147】
5.3.変形例のフローチャート
しかし、第3予備表示工程(S26)、第4予備表示工程(S28)を常に実行すると、表示画像の更新に時間がかかるという問題が生じる可能性がある。そこで、画像表示工程(S12)が所定回数N(例えば、N=10)より多く実行されることを条件として、第3予備表示工程(S26)および第4予備表示工程(S28)が行われてもよい。
【0148】
図20は、この変形例のフローチャートである。なお、図16、図19と同じステップには同じ符号を付しており説明を省略する。
【0149】
まず、画像表示工程(S12)が実行された回数Nが0に初期化される(S11)。そして、画像表示工程(S12)が実行されるとNがインクリメントされる(S13)。その後、所定回数N(例えば、N=10)より多く実行された場合には(S25Y)、第3予備表示工程(S26)、第4予備表示工程(S28)が実行されてステップS11に戻る。もし、画像表示工程(S12)が実行された回数Nが所定回数N以下であれば、画像表示工程(S12)に戻る。
【0150】
このとき、表示画像の更新に時間がかかるという問題を回避しながら、色調乱れを防止することができる。
【0151】
6.適用例
本発明の適用例について図21〜図22(B)を参照して説明する。なお、図1〜図20と同様の要素については同一符号を付して説明を省略する。第1〜第5実施形態および変形例の電気泳動表示装置は、例えば時刻表示を行う電子時計などの電子機器に適用できる。
【0152】
6.1.電子機器のブロック図
図21は適用例に係る電子機器1のブロック図である。電子機器1は、CPU2、入力部4、記憶部5、電気泳動表示装置10を含む。電気泳動表示装置10は、第1実施形態の電気泳動表示装置であって、様々な画像を表示する表示部3を含む。
【0153】
CPU2は、他のブロックを制御し様々な演算や処理を行う。CPU2は、例えば記憶部5からプログラムを読み込み、プログラムに従って電気泳動表示装置10に時刻信号などを入力してもよい。
【0154】
入力部4は、例えば電子機器1の使用者からの指示を受け取り、指示に応じた信号を他のブロックに出力してもよい。
【0155】
記憶部5は、例えばDRAMやSRAMなどのメモリーであってもよいし、ROMを含んでいてもよい。CPU2が使用するプログラムは、例えば記憶部5が含むROMに書かれていてもよい。
【0156】
表示部3は、電気泳動表示装置10の一部であって、例えば時刻を表示したり、文字、写真などを表示したりしてもよい。
【0157】
電子機器1は、第1〜第5実施形態および変形例の電気泳動表示装置10を含むことで、表示画像のDCバランスをとりつつ、局所的なコントラスト比の低下や残像の発生を抑えることができる。そのため、長期的信頼性に優れ、表示品質のよい電子機器を実現できる。
【0158】
6.2.電子機器の具体例
図22(A)〜図22(B)に、電子機器の具体例を示す。図22(A)は電子機器の1つである電子時計1000の正面図である。電子時計1000は、例えば腕時計であり、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備える。時計ケース1002の正面には、電気泳動表示装置10の表示部3(図21参照)である表示部1004が設けられ、時刻表示1005を行っている。時計ケースの側面には、2つの操作ボタン1011と1012とが設けられ、入力部4(図21参照)として機能する。
【0159】
また、例えば図22(B)は電子機器の1つである電子ペーパー1100の斜視図である。電子ペーパー1100は可撓性を有し、電気泳動表示装置10の表示部3(図21参照)である表示領域1101と、本体1102とを備えている。
【0160】
第1〜第5実施形態および変形例の電気泳動表示装置は、これらの具体例を含む、様々な電子機器に適用できる。そして、そのような電子機器は、DCバランスが取れていることで表示部の長期信頼性を確保でき、局所的なコントラスト比の低下や残像の発生を抑えることで表示品質を向上させることができる。
【0161】
7.その他
前記の第2実施形態、第4実施形態、第5実施形態では、表示部の全画素を単一色表示する場合でも、部分駆動方式が用いられていた。しかし、全面駆動方式を用いてもよい。具体的には、第2実施形態において第1単一色表示工程、第2単一色表示工程で、全面駆動方式によって、表示部の全画素をそれぞれ第1色、第2色で表示させてもよい。このとき、第1単一色表示工程、第2単一色表示工程は、それぞれ全面を黒色、白色で表示する第1画像消去工程、第2画像消去工程に続いて実行される。そのため、全面駆動方式によるパルス信号の駆動時間を短くすることで生じ得る残像の問題は発生しない。
【0162】
また、第4実施形態において、第1〜第2予備表示工程で、全面駆動方式によって単一色表示を行ってもよい。このとき、第1予備表示工程と第2予備表示工程は、全面を白色で表示する画像消去工程に続いて実行される。そのため、全面駆動方式によるパルス信号の駆動時間を短くすることで生じ得る残像の問題は発生しない。第5実施形態における第1〜第4予備表示工程についても、同様の理由により、全面駆動方式によって単一色表示を行ってもよい。
【0163】
前記の実施形態においては、電気泳動表示装置は、黒粒子および白粒子による白黒二粒子系の電気泳動が行われるものに限られず、青白等の一粒子系の電気泳動を行っても良く、また、白黒以外の組み合わせでも構わない。
【0164】
そして、電気泳動表示装置に限らず、メモリー性の表示手段に前記の駆動方法が適用されてもよい。例えば、ECD(Electrochromic Display=エレクトロクロミックディスプレイ)、強誘電性液晶ディスプレイ、コレステリック液晶ディスプレイ等である。
【0165】
さらに、前記の適用例の電子時計は、腕時計に限らず、置き時計、掛け時計、懐中時計などの時計機能を有する機器に広く適用できる。
【0166】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0167】
1…電子機器、2…CPU、3…表示部、4…入力部、5…記憶部、10…電気泳動表示装置、11…画素、13…駆動画素、35,35A,35B…画素電極、37…共通電極、40,40A,40B…画素、48…駆動用TFT(Thin Film Transistor)、49…低電位電源線(Vss)、50…高電位電源線(Vdd)、51…領域、55…共通電極配線(Vcom)、60…表示制御回路、61…走査線駆動回路、62…データ線駆動回路、63…コントローラー、64…共通電源変調回路、66…走査線、68…データ線、70…ラッチ回路、80…スイッチ回路、91…第1のパルス信号線(S)、92…第2のパルス信号線(S)、120…マイクロカプセル、126…黒色粒子、127…白色粒子、130…素子基板、131…対向基板、132…電気泳動素子、160…記憶部、350…駆動電極層、360…電気泳動表示層、370…共通電極層、1000…腕時計、1002…時計ケース、1003…バンド、1004…表示部、1005…時刻表示、1011…操作ボタン、1012…操作ボタン、1100…電子ペーパー、1101…表示領域、1102…本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、第1色、第2色、および前記第1色と前記第2色の中間色を表示可能な画素を有する表示部を含み、一方の前記基板と前記電気泳動素子との間に前記画素に対応する画素電極が形成され、他方の前記基板と前記電気泳動素子との間に、複数の前記画素電極と対向する共通電極が形成された電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記共通電極に第1の電位と第2の電位とを繰り返す駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、複数の前記画素電極のそれぞれに前記駆動パルス信号の反転信号、又は正転信号に基づく電圧を印加し、前記画素電極と前記共通電極との間に生じた電界によって前記電気泳動粒子を移動させることで前記表示部に表示される画像を書き換える部分駆動方式によって、前記表示部に第1の画像を第1色で表示させる画像表示工程と、
前記画像表示工程の後に、前記部分駆動方式によって、前記表示部に前記第1の画像を前記第2色で表示させる画像消去工程と、
前記画像消去工程の後に、前記表示部の全画素を前記中間色で表示させる第1予備表示工程と、
前記第1予備表示工程の後に、前記表示部の全画素を前記第2色で表示させる第2予備表示工程と、を含み、
前記第2予備表示工程の後に、次の画像表示工程が実行される、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記第1予備表示工程および前記第2予備表示工程は、
前記部分駆動方式によって、前記表示部の全画素を前記中間色、又は前記第2色で表示させ、
前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間が、前記画像表示工程において前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間よりも短い電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記表示部の全画素を前記第1色で表示させる第3予備表示工程と、
前記第3予備表示工程に続いて実行され、前記表示部の全画素を前記第2色で表示させる第4予備表示工程と、を含み、
所与の条件を満たした場合に、前記第2予備表示工程の後、かつ次の画像表示工程が実行される前に、前記第3予備表示工程および前記第4予備表示工程が実行される、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記所与の条件は、前記画像表示工程が所定回数実行されることである、電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法を実行する制御部を備えた電気泳動表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気泳動表示装置を含む電子機器。
【請求項7】
請求項5に記載の電気泳動表示装置を含む電子時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−61595(P2013−61595A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201469(P2011−201469)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】