説明

電気泳動表示装置及びその製造方法、並びに電子機器

【課題】電気泳動表示装置において、基板上の空間が隔壁により分割されてなり、電気泳動分散液が充填された複数のセルの密閉性を向上させる。
【解決手段】電気泳動表示装置は、基板(11)と、基板上の空間を複数のセル(13)に分割する隔壁(12)と、基板上の複数のセルの各々に充填された電気泳動分散液(20)と、隔壁を介して基板と対向するように設けられ、複数のセルを封止する封止膜(30)と、隔壁の上面と封止膜との間に部分的に形成され、電気泳動分散液が相分離してなる相分離部(40)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置及びその製造方法、並びに電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気泳動表示装置として、一対の基板間の空間が隔壁により複数のセルに分割され、このセル内に電気泳動分散液が充填されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えば特許文献1では、一方の基板上に設けた隔壁と他方の基板とを、転写接着フィルムを用いて接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−326011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に開示された技術によれば、製造プロセスにおいて、隔壁上に電気泳動分散液が存在すると、隔壁と転写接着フィルムとの密着性が低下してしまうおそれがある。このため、隔壁と他方の基板との密着性が低下してしまい、セルの密閉性が低下してしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば前述した問題点に鑑みなされたものであり、基板上の空間が隔壁により分割されてなり、電気泳動分散液が充填された複数のセルの密閉性を向上させることが可能な電気泳動表示装置及びその製造方法、並びに該電気泳動表示装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気泳動表示装置は上記課題を解決するために、基板と、前記基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁と、前記基板上の前記複数のセルの各々に充填された電気泳動分散液と、前記隔壁を介して前記基板と対向するように設けられ、前記複数のセルを封止する封止膜と、前記隔壁の上面と前記封止膜との間に部分的に形成され、前記電気泳動分散液が相分離してなる相分離部とを備える。
【0008】
本発明に係る電気泳動表示装置によれば、基板上の空間が隔壁によって複数のセルに分割され、この複数のセルの各々に、複数の電気泳動粒子が例えば炭化水素系の溶媒である分散媒中に分散されてなる電気泳動分散液が充填されている。隔壁は、例えば、基板上で平面的に見て、格子状の平面形状を有している。隔壁は、例えば、エポキシ系樹脂からなる。複数のセルは、隔壁を介して基板と対向するように設けられた封止膜によって封止されている。封止膜と隔壁の上面とが互いに密着することにより、複数のセルを封止することが可能となる。封止膜は、典型的には、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)等の水溶性高分子を含む材料から形成されている。
【0009】
ここで、製造プロセスにおいて、複数のセルの各々に電気泳動分散液が充填される際に隔壁の上面に電気泳動分散液が残留し、該残留した電気泳動分散液が隔壁の上面と封止膜との間に介在するおそれがある。このため、仮に、何らの対策も施さねば、隔壁の上面と封止膜との間に電気泳動分散液が介在することにより、隔壁の上面と封止膜との密着性が低下してしまうおそれがある。
【0010】
しかるに本発明では特に、電気泳動分散液が相分離してなる相分離部が、隔壁の上面と封止膜との間に部分的に形成されている。即ち、本発明では特に、製造プロセスにおいて隔壁の上面に残留した電気泳動分散液が相分離されている。よって、隔壁の上面と封止膜とが互いに密着する面積を、例えば、隔壁の上面と封止膜との間に、相分離されていない電気泳動分散液が介在する場合と比較して大きくすることができる。よって、隔壁の上面と封止膜とが互いに密着する密着性を向上させることができる。従って、複数のセルの密閉性を向上させることができる。この結果、電気泳動表示装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0011】
以上説明したように、本発明に係る電気泳動表示装置によれば、隔壁の上面と封止膜との密着性を向上させることができ、複数のセルの密閉性を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る電気泳動表示装置の一態様では、前記電気泳動分散液及び前記封止膜の少なくとも一方は、両親媒性物質を含む。
【0013】
この態様によれば、電気泳動分散液及び封止膜の少なくとも一方が、親水基及び親油基を有する両親媒性物質を含んでいるので、隔壁の上面と封止膜との間に相分離部を確実に形成することができる。即ち、電気泳動分散液及び封止膜の少なくとも一方に含まれる両親媒性物質によって、製造プロセスにおいて隔壁の上面に残留した電気泳動分散液を確実に相分離させることができる。よって、隔壁の上面と封止膜との密着性を確実に向上させることができる。
【0014】
本発明に係る電気泳動表示装置の他の態様では、前記隔壁の上面は、極性化処理が施されている。
【0015】
この態様によれば、例えば酸素(O2)プラズマ処理、四フッ化炭素(CF4)プラズマ処理等の極性化処理が施されることにより、隔壁の上面には例えばカルボキシル基(−COOH)、カルボニル基(−C(=O)−)、フッ化炭素基(−CF)等の極性基が形成されている。よって、隔壁の上面に形成された極性基と、例えばポリビニルアルコールを含んでなる封止膜が有するヒドロキシル基(−OH)との間に水素結合が生じる。従って、隔壁の上面と封止膜との密着性をより確実に向上させることができる。
【0016】
本発明に係る電気泳動表示装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上に、該基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁を形成する工程と、前記基板上の前記複数のセルの各々に電気泳動分散液を充填する工程と、前記隔壁の上面に極性化処理を施す工程と、前記基板と前記隔壁を介して対向するように、前記複数のセルを封止する封止膜を設ける工程とを含み、前記電気泳動分散液及び前記封止膜の少なくとも一方は、両親媒性物質を含んでおり、前記隔壁の上面と前記封止膜との間に、前記電気泳動分散液が相分離してなる相分離部を部分的に形成する。
【0017】
本発明に係る電気泳動表示装置の製造方法によれば、前述した本発明に係る電気泳動表示装置(但し、その各種態様を含む)を製造することができる。ここで特に、本発明によれば、電気泳動分散液及び封止膜の少なくとも一方は、両親媒性物質を含んでいるので、隔壁の上面と封止膜との間に相分離部を確実に形成することができる。更に、本発明によれば、極性化処理を施すことにより隔壁の上面に例えばカルボキシル基、カルボニル基、フッ化炭素基等の極性基を形成し、該極性基と、封止膜が有するヒドロキシル基との間に水素結合を生じさせることができる。これらの結果、隔壁の上面と封止膜との密着性を確実に向上させることができる。
【0018】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、前述した本発明に係る電気泳動表示装置(但し、その各種態様を含む)を備える。
【0019】
本発明に係る電子機器は、前述した本発明に係る電気泳動表示装置を備えるので、高品位な表示を行うことが可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
【0020】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の構成を示す断面図である。
【図2】隔壁の上面における複数の相分離部の配置の一例を模式的に示す平面図である。
【図3】第1実施形態に係る相分離部の構成を示す模式図である。
【図4】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の製造工程を、順を追って示す工程断面図(その1)である。
【図5】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の製造工程を、順を追って示す工程断面図(その2)である。
【図6】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の製造工程を、順を追って示す工程断面図(その3)である。
【図7】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の製造工程を、順を追って示す工程断面図(その4)である。
【図8】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の製造工程を、順を追って示す工程断面図(その5)である。
【図9】第2実施形態に係る電気泳動表示装置の構成を示す断面図である。
【図10】第2実施形態に係る相分離部の構成を示す模式図である。
【図11】電気泳動表示装置を適用した電子機器の一例たる電子ペーパーの構成を示す斜視図である。
【図12】電気泳動表示装置を適用した電子機器の一例たる電子ノートの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0023】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る電気泳動表示装置について、図1から図3を参照して説明する。
【0024】
先ず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成について、図1を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の構成を示す断面図である。
【0026】
図1において、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、互いに対向するように配置された回路基板50と対向基板60との間に設けられた電気泳動分散液20に、画像信号に応じた電圧を印加することにより、表示領域において表示を行うことが可能なアクティブマトリクス駆動方式の電気泳動表示装置である。
【0027】
回路基板50は、平板状の基板52と、この基板52の一方の面上に形成された複数の画素電極51とを有している。基板52の一方の面又は他方の面には、画素電極51を駆動するための薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が、表示領域に例えばマトリクス状に配列された画素毎に設けられている。より具体的には、基板52には、画素電極51を駆動するためのTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成されている。基板52は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの絶縁性の樹脂材料からなる基板(即ち、樹脂基板)、又は、ガラス基板等からなる。画素電極51は、例えばアルミニウム(Al)等の導電材料から形成されている。
【0028】
対向基板60は、平板状の基板62と、この基板62の一方の面上に形成された対向電極61とを有している。基板62は、回路基板50の基板52と同様に、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性の樹脂材料からなる基板(即ち、樹脂基板)、又は、ガラス基板等からなる。対向電極61は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)等の光透過性を有する導電材料から形成されている。
【0029】
電気泳動分散液20は、セルマトリクス10の複数のセル13に充填された状態で、回路基板50と対向基板60との間に設けられている。
【0030】
セルマトリクス10は、平板状の基板11と、この基板11の一方の面上に配置された隔壁12とを有している。尚、基板11は本発明に係る「基板」の一例である。基板11上の空間が隔壁12によって分割されることにより複数のセル13が形成されている。隔壁12は、基板11上で平面的に見て、例えば正方格子状の平面形状を有している(図2参照)。基板11及び隔壁12は一体的に形成されている。セルマトリクス10(即ち、基板11及び隔壁12)は、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂材料からなる。
【0031】
尚、隔壁12の平面形状は、正方格子状に限定されるものではなく、例えばハニカム格子状や三角格子状であってもよい。また、本実施形態では、隔壁12が基板11と一体的に形成されている場合を例に挙げているが、隔壁12と基板11とが別個に形成され、基板11の一方の面上に隔壁12が固定されてもよい。或いは、セルマトリクス10が隔壁12のみで構成されてもよい。即ち、回路基板50上に基板11を介さずに隔壁12が配置されてもよい。
【0032】
電気泳動分散液20は、複数の電気泳動粒子21が分散媒22中に分散されてなる分散液である。
【0033】
電気泳動粒子21は、例えば、顔料粒子、樹脂粒子又はこれらの複合粒子である。顔料粒子を組成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料等がある。また、樹脂粒子を組成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等がある。複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や田の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子などがある。これらの各種材料からなる電気泳動粒子21は、例えば正又は負に帯電した状態で分散媒22中に分散されている。
【0034】
分散媒22は、親油性の炭化水素系の溶媒であり、例えば、アイソパー(登録商標)を含む。即ち、分散媒22は、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーLのうちいずれか1種類を含む液体、若しくはこれらのうちの2種類以上を混合した液体、或いは、これらのうちのいずれか1種類以上と他の種類の炭化水素系の溶媒とを混合した液体である。
【0035】
セルマトリクス10の複数のセル13は、隔壁12を介して基板11と対向するように設けられた封止膜30によって封止されている。封止膜30と隔壁12の上面とが互いに密着することにより、複数のセル13が封止されている。封止膜30は、本発明に係る「両親媒性物質」の一例である両親媒性のPVA(例えばケン化度が約80%のPVA)を含んでなる。
【0036】
次に、本実施形態に特徴的な相分離部40の構成について、図1に加えて図2及び図3を参照して説明する。
【0037】
図2は、隔壁12の上面における複数の相分離部40の配置の一例を模式的に示す平面図である。図3は、相分離部40の構成を示す模式図である。
【0038】
図1及び図2に示すように、本実施形態では特に、隔壁12の上面と封止膜30との間に例えば球状或いは円盤状の相分離部40が部分的に形成されている。相分離部40は、製造プロセスにおいて、隔壁12の上面に残留した電気泳動分散液20が、封止膜30を構成する両親媒性のPVAによって相分離されてなる。
【0039】
図3に示すように、相分離部40は、電気泳動分散液20が、封止膜30を構成する両親媒性のPVA31によって、球状或いは円盤状に分離されてなる。
【0040】
よって、隔壁12の上面と封止膜30とが互いに密着する面積を、例えば、隔壁12の上面と封止膜30との間に、相分離されていない電気泳動分散液20が介在する場合と比較して大きくすることができる。従って、隔壁12の上面と封止膜30とが互いに密着する密着性を向上させることができる。このため、複数のセル13の密閉性を向上させることができる。この結果、電気泳動表示装置1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0041】
尚、隔壁12の上面の面積に対する、相分離部40が隔壁12の上面を占める部分の面積の割合は、例えば、約25%以下である。
【0042】
次に、前述した電気泳動表示装置1の製造方法について、図4から図8を参照して説明する。
【0043】
図4から図8は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の製造工程を、順を追って示す工程断面図である。尚、図4から図8は、図1に対応して示してある。
【0044】
図4に示すように、本実施形態に係る電気泳動表示装置の製造方法では、先ず、基板11及び隔壁12からなるセルマトリクス10を用意する。
【0045】
次に、図5に示すように、セルマトリクス10(即ち、基板11及び隔壁12)にO2プラズマ処理(即ち、O2ガスを用いたプラズマ処理)を施す。これにより、隔壁12の上面に例えばカルボキシル基、カルボニル基等の極性基を形成することができる。よって、隔壁12の上面は親液性(即ち、電気泳動分散液20及び後述する封止膜30の材料である封止液のいずれも良く濡らす性質)となる。
【0046】
次に、図6に示すように、セルマトリクス10の複数のセル13に電気泳動分散液20を充填する。尚、複数のセル13への電気泳動分散液20の充填は、例えば、ディスペンサを用いた滴下法、インクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等の各種塗布法が挙げられるが、これらの中でも、滴下法又はインクジェット法を用いるのが好ましい。滴下法又はインクジェット法によれば、電気泳動分散液20を目的とする領域に対して選択的に供給することができることから、セル13に無駄なく且つより確実に電気泳動分散液20を充填することができる。
【0047】
次に、図7に示すように、両親媒性のPVAを含んでなる封止膜30を、隔壁12を介して基板11と対向するように設ける。具体的には、先ず、両親媒性のPVAを、例えば水又は親水性の液体(一例として、メタノール又はエタノール)に溶かして液状にし、封止液を作成する。次に、この封止液をセルマトリクス10の上面側(即ち、隔壁12に対して基板11が設けられた側とは反対側)に例えばスキージ(平板状の治具)70を用いて塗布した後、乾燥処理を施して硬化させることにより封止膜30を形成する。
【0048】
ここで本実施形態では、前述したように、セルマトリクス10にO2プラズマ処理が施されることにより、隔壁12の上面に例えばカルボキシル基、カルボニル基等の極性基が形成されているため、隔壁12の上面は前述した封止液に対する親液性を有する。よって、複数のセル13に電気泳動分散液20を充填した際に隔壁12の上面に電気泳動分散液20が残留している場合、封止液がセルマトリクス10の上面側に塗布されることにより、隔壁12の上面に残留している電気泳動分散液20の一部を封止液によって除去することができる。更に、封止膜30が両親媒性のPVAを含んでなるので、複数のセル13に電気泳動分散液20を充填した際に隔壁12の上面に残留した電気泳動分散液20を相分離させることができる。これにより、隔壁12の上面と封止膜30との間に電気泳動分散液20が相分離されてなる相分離部40を、部分的に(即ち、隔壁12の上面と封止膜30との間の一部に)形成することができる。
【0049】
よって、隔壁12の上面と封止膜30とが互いに密着する面積を、例えば、隔壁12の上面と封止膜30との間に、相分離されていない電気泳動分散液20が介在する場合と比較して大きくすることができる。従って、隔壁12の上面と封止膜30とが互いに密着する密着性を向上させることができる。
【0050】
加えて、本実施形態によれば、隔壁12の上面に形成された例えばカルボキシル基、カルボニル基等の極性基と、両親媒性のPVAを含んでなる封止膜30が有するヒドロキシル基との間に水素結合を生じさせることができるので、隔壁12の上面と封止膜30との密着性をより確実に向上させることができる。
【0051】
次に、図8に示すように、回路基板50及び対向基板60をそれぞれセルマトリクス10に取り付ける。この際、回路基板50の画素電極51を有する側の面を、セルマトリクス10の基板11側の面に取り付ける。また、対向基板60の対向電極61を有する側の面を、セルマトリクス10の封止膜30が形成された側の面に取り付ける。尚、これらの取り付けには、例えば接着剤を用いてもよい。
【0052】
このようにして、図1から図3を参照して前述した電気泳動表示装置1を製造することができる。
【0053】
<変形例>
図5を参照して前述したO2プラズマ処理に代えて、CF4プラズマ処理(即ち、CF4ガスを用いたプラズマ処理)をセルマトリクス10に施してもよい。この場合には、隔壁12の上面にフッ化炭素基(−CF)を形成することができる。よって、隔壁12の上面に形成されたフッ化炭素基と、封止膜30が有するヒドロキシル基との間に水素結合を生じさせることができるので、隔壁12の上面と封止膜30との密着性をより確実に向上させることができる。更に、この場合には、隔壁12が撥液性を有するので、電気泳動分散液20をセル13に、より確実に選択的に充填することができる。
【0054】
或いは、図5を参照して前述したO2プラズマ処理に加えて、CF4プラズマ処理をセルマトリクス10に施してもよい。即ち、複数のセル13に電気泳動分散液20を充填する前に、O2プラズマ処理及びCF4プラズマ処理をセルマトリクス10に施してもよい。この場には、隔壁12の上面に、カルボキシル基、カルボニル基及びフッ化炭素基を形成することができる。よって、隔壁12の上面に形成されたカルボキシル基、カルボニル基及びフッ化炭素基の各々と、封止膜30が有するヒドロキシル基との間に水素結合を生じさせることができるので、隔壁12の上面と封止膜30との密着性をより確実に向上させることができる。更に、この場合には、隔壁12が撥液性を有するので、電気泳動分散液20をセル13に、より確実に選択的に充填することができる。
【0055】
或いは、図5を参照して前述したO2プラズマ処理に代えて、UVオゾン処理をセルマトリクス10に施してもよい。この場合には、隔壁12の上面に、カルボキシル基及びカルボニル基を形成することができる。よって、隔壁12の上面に形成されたカルボキシル基及びカルボニル基の各々と、封止膜30が有するヒドロキシル基との間に水素結合を生じさせることができるので、隔壁12の上面と封止膜30との密着性をより確実に向上させることができる。更に、この場合には、例えばO2オゾン処理を施す場合と比較して、隔壁12の上面に極性基を形成するための処理を施すための装置の構成を簡略化することができるので、電気泳動表示装置1の低コスト化を図ることができる。
【0056】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る電気泳動表示装置について、図9及び図10を参照して説明する。
【0057】
図9は、第2実施形態に係る電気泳動表示装置の構成を示す断面図である。尚、図9において、図1から図3に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0058】
図9に示すように、第2実施形態に係る電気泳動表示装置2は、電気泳動分散液20に本発明に係る「両親媒性物質」の一例としての界面活性剤が添加されており、前述した相分離部40に代えて相分離部40bが隔壁12の上面と封止膜300と間に部分的に形成されている点で、前述した第1実施形態に係る電気泳動表示装置1と異なり、その他の点については、前述した第1実施形態に係る電気泳動表示装置1と概ね同様に構成されている。
【0059】
本実施形態では特に、電気泳動分散液20に界面活性剤が添加されており、隔壁12の上面と封止膜30との間に例えば球状或いは円盤状の相分離部40bが部分的に形成されている。相分離部40bは、製造プロセスにおいて、隔壁12の上面に残留した電気泳動分散液20が、当該電気泳動分散液20に添加された界面活性剤によって相分離されてなる。電気泳動分散液20に添加する界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれかを単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
【0060】
図10は、相分離部40bの構成を示す模式図である。
【0061】
図10に示すように、相分離部40bは、電気泳動分散液20が、界面活性剤を構成する両親媒性分子42によって、球状或いは円盤状に分離されてなる。
【0062】
このように、隔壁12の上面と封止膜30との間に例えば球状或いは円盤状の相分離部40bが部分的に形成されているので、前述した第1実施形態と概ね同様に、隔壁12の上面と封止膜30との密着性を向上させることができる。よって、複数のセル13の密閉性を向上させることができる。この結果、電気泳動表示装置1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0063】
<電子機器>
次に、前述した電気泳動表示装置を適用した電子機器について、図11及び図12を参照して説明する。以下では、前述した電気泳動表示装置を電子ペーパー及び電子ノートに適用した場合を例にとる。
【0064】
図11は、電子ペーパー1400の構成を示す斜視図である。
【0065】
図11に示すように、電子ペーパー1400は、前述した実施形態に係る電気泳動表示装置を表示部1401として備えている。電子ペーパー1400は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402を備えて構成されている。
【0066】
図12は、電子ノート1500の構成を示す斜視図である。
【0067】
図12に示すように、電子ノート1500は、図11で示した電子ペーパー1400が複数枚束ねられ、カバー1501に挟まれているものである。カバー1501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示せず)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0068】
前述した電子ペーパー1400及び電子ノート1500は、前述した実施形態に係る電気泳動表示装置を備えるので、高品質な画像表示を行うことが可能である。
【0069】
本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気泳動表示装置及びその製造方法、並びに該電気泳動表示装置を備える電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10…セルマトリクス、11…基板、12…隔壁、13…セル、20…電気泳動分散液、21…電気泳動粒子、22…分散媒、30…封止膜、50…回路基板、51…画素電極、52…基板、60…対向基板、61…対向電極、40、40b…相分離部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁と、
前記基板上の前記複数のセルの各々に充填された電気泳動分散液と、
前記隔壁を介して前記基板と対向するように設けられ、前記複数のセルを封止する封止膜と、
前記隔壁の上面と前記封止膜との間に部分的に形成され、前記電気泳動分散液が相分離してなる相分離部と
を備えることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記電気泳動分散液及び前記封止膜の少なくとも一方は、両親媒性物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記隔壁の上面は、極性化処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
基板上に、該基板上の空間を複数のセルに分割する隔壁を形成する工程と、
前記基板上の前記複数のセルの各々に電気泳動分散液を充填する工程と、
前記隔壁の上面に極性化処理を施す工程と、
前記基板と前記隔壁を介して対向するように、前記複数のセルを封止する封止膜を設ける工程と
を含み、
前記電気泳動分散液及び前記封止膜の少なくとも一方は、両親媒性物質を含んでおり、
前記隔壁の上面と前記封止膜との間に、前記電気泳動分散液が相分離してなる相分離部を部分的に形成する
ことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−88547(P2012−88547A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235479(P2010−235479)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】