説明

電気給湯機

【課題】給水部のストレーナの清掃や長期間の運転休止に伴う貯湯タンク内の水の排出など、機器の使用者の手によるメンテナンスが必要となる場合でも、カバー全体を外すことなく、必要最小限の作業で誰にでも簡単に点検作業が実施できる構造をもつ、メンテナンス性の良い電気給湯機を提供する。
【解決手段】温水を貯湯する貯湯タンクを内包する略直方体の貯湯ユニットであって、貯湯ユニット前面側には外部配管と機内配管とを接続する配管接続部を備え、この配管接続部はけこみ構造とするとともに、少なくともこのけこみ構造部全体もしくは一部を覆うカバーを取り付け可能な構造をもつ貯湯ユニットにおいて、配管接続部のカバーに配管接続部の点検,操作が可能な開口部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、けこみ構造とその部位のカバーを備えた貯湯ユニットを有する電気給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の電気給湯機の貯湯ユニットの外観構造の一例である。けこみ構造を備えた貯湯ユニットにおいて、配管接続部にカバーを設けた構造は、一般に広く知られているが、カバーを設ける目的は、製品の美観を保つ、配管を外的な損傷の要因から保護する、あるいは風雨等に直接曝されない構造とすることにより配管からの熱の損失を低減すること等である。これらを実現するための構造として、けこみ構造部全体を覆うカバーを設け、さらにカバーの一部に配管を通す穴を設けるための切り込みや、配管を通すために取り外し可能なフタを設ける工夫が為されてきた。
【0003】
一方、配管接続部の点検や貯湯ユニットの補修メンテナンス作業が必要となった場合には、専門の技術を有する技術者がこれらのカバー全体を取り外した後に必要な作業をし、作業を完了した後にカバーを再度取り付けることが必然的に行われてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−85665号公報
【特許文献2】特開2007−85656号公報
【特許文献3】特開2002−31407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、給湯機器の性格上、給水部のストレーナの清掃や長期間の運転休止に伴う貯湯タンク内の水の排出など、機器の使用者の手によるメンテナンスが必要となる場合も少なからず想定されていることに対し、カバー全体を外すことなく、必要最小限の作業で誰にでも簡単に点検作業が実施できる構造を提供する発明はこれまでのところ見当たらず、その手間と作業の困難さゆえ、機器の製造者側が期待するメンテナンス作業が十分に行われず、ストレーナの目詰まりが生じて正常に給湯されないなどの不具合を呈する場合が、あとを絶たない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
温水を貯湯する貯湯タンクを内包する略直方体の貯湯ユニットであって、貯湯ユニット前面側には外部配管と機内配管とを接続する配管接続部を備え、この配管接続部はけこみ構造とするとともに、少なくともこのけこみ構造部全体もしくは一部を覆うカバーを取り付け可能な構造をもつ貯湯ユニットにおいて、カバーに配管接続部の点検,操作が可能な開口部を設ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、給水部のストレーナの清掃や長期間の運転休止に伴う貯湯タンク内の水の排出など、機器の使用者の手によるメンテナンスが必要となる場合でも、カバー全体を外すことなく、必要最小限の作業で誰にでも簡単に点検作業が実施できる構造をもつ、メンテナンス性の良い電気給湯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施に形態における電気給湯機の全体斜視図。
【図2】本発明の実施に形態における電気給湯機の正面構成図。
【図3】本発明の実施に形態における電気給湯機の右側面構成図。
【図4】従来の電気給湯機の外観,構造例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、温水を貯湯する貯湯タンクを内包する略直方体の貯湯ユニットにおいて、貯湯ユニット前面側には外部配管と機内配管とを接続する配管接続部を備え、この配管接続部はけこみ構造とするとともに、少なくともこのけこみ構造部全体もしくは一部を覆うカバーを取り付け可能な構造をもち、カバーに配管接続部の点検,操作が可能な開口部を設けた電気給湯機である。
【0010】
これにより、カバーを外すことなく配管接続部の点検,操作が可能となり、メンテナンス性の高い電気給湯機とすることができる。ここで言う点検には、主要なストレーナ,バルブ類等の清掃作業も含まれる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において、開口部に工具を使用せずに、素手で安全に取り付け,取り外しが可能なフタを設けたものである。
【0012】
このフタを取り付けることにより、製品の美観を保つことができるほか、開口部から覗くカバー内部の配管接続部やメンテナンス対象のバルブ類が風雨に直接曝されることを避け、それらを保護することができ、機器の信頼性を維持することができる。また、工具を必要とせずに素手で安全に取り外すことができることにより、メンテナンスを行う際の工具を準備する手間や、作業に対する心的な抵抗を軽減することすることができ、容易にメンテナンスを実施できることから、電気給湯機の機能を正常な状態に維持できる割合を高めることができる。
【0013】
第3の発明は、特に第2の発明において、取り付け,取り外しが可能なフタの固定を4本以下の化粧ねじで行うことを可能としたものである。
【0014】
これにより、取り付け,取り外しが可能なフタは、化粧ねじで確実に取り付けられると同時に、工具を使用せずに容易に取り外せる構造とすることができる。
【0015】
第4の発明は、特に第2の発明において、取り付け,取り外しが可能なフタの固定をフタ側またはカバー側に設けた回転式またはスライド式のレバーを用いて行えるようにしたものである。
【0016】
これにより、取り付け,取り外しが可能なフタは、第3の発明よりもさらに少ない手順によって取り付け,取り外しを行うことができる。
【0017】
第5の発明は、第1から第4の発明において、カバーに設けた配管接続部の点検,操作が可能な開口部と、開口部に隣接する接続配管を通すための切り欠き部とを連通した構造としたものである。
【0018】
これにより、フタを取り外した状態は開口部と切り欠き部とが一体となった大きな開口部とすることができ、メンテナンス作業性を向上させることができる。
【0019】
第6の発明は、第1から第4の発明において、フタを取り外した際に、開口部から操作できるバルブ類が2つ以上となるよう開口部の位置を配置したものである。
【0020】
これにより、フタを取り外して行えるメンテナンス作業を複数とすることができ、作業効率の向上、あるいは使用者に対してメンテナンス作業の対象を限定することでメンテナンス作業の確実性をより高めることができる。
【0021】
第7の発明は、特に第6の発明において、メンテナンス作業の対象の1つをストレーナに限定したものである。
【0022】
これにより、使用者に対するメンテナンス対象の明確化と、ストレーナのメンテナンス作業の確実性を向上することができる。
【0023】
第8の発明は、特に第6の発明において、メンテナンス作業の対象の1つを排水栓に限定したものである。
【0024】
これにより、使用者に対するメンテナンス対象の明確化と、排水栓のメンテナンス作業の確実性を向上することができる。
【0025】
第9の発明は、第1から第8の発明において、貯湯する温水をつくる熱源にヒートポンプを採用したものである。
【0026】
これにより高いエネルギー効率で温水を利用することができる。
【0027】
第10の発明は、特に第9の発明において、ヒートポンプサイクル内の作動冷媒に自然冷媒である二酸化炭素を採用したものである。
【0028】
これにより、地球温暖化防止にも配慮した製品とすることができる。
【0029】
以下、本発明の実施に形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0030】
図1は本発明の実施の形態における電気給湯機の全体斜視図、図2は同電気給湯機の正面構成図、図3は同電気給湯機の右側面構成図である。
【0031】
図1,図2,図3に示す電気給湯機、温水を貯湯する貯湯タンク(図示せず)を内包する略直方体の貯湯ユニット1の前面側に外部配管と機内配管とを接続する配管接続部2を備え、配管接続部2はけこみ構造であり、けこみ構造を覆うカバー3を取り付けた状態である。カバー3には配管接続部2の点検,操作が可能な開口部4,開口部に取り付けられたフタ5を示している。
【0032】
詳細の図示は省略するが、特許文献1等で公知の通り、本発明の電気給湯機が類する給湯機器の構造は、本発明で言う貯湯ユニット1の前面側下部に給水配管,給湯配管,ふろの往き・戻り配管,熱源機としてヒートポンプユニットを別体で備えるものについてはヒートポンプユニットの往き・戻り配管,暖房機能を備えるものについては放熱器への往き・戻り配管等、種々の配管の接続部を配置するものが一般的であり、通常この配管接続部においては、設置作業性とメンテナンス作業性を考慮し、配管の接続継手と配管内の残水等を排出するためのバルブが具備されている。給水の継手においては貯湯ユニット内へごみ等の流入を避けるため、ストレーナが具備されていることがある。給水配管にはその接続継手付近に給水を閉止する止水栓が取り付けられていることがある。ふろや暖房等の機能を実装するものについては循環ポンプの排水バルブが備えられていることもある。また、貯湯ユニットに内包する貯湯タンクの下底部に相当する位置でもあるため、貯湯タンク内の湯水を排水するための排水栓が配管接続部近隣に備えられていることもある。
【0033】
このように配管接続部は複雑な構成であり、すべての配管の接続が完成した状態は、雑然とした印象を与える外観になることも否めず、本開発の電気給湯機が類する給湯機器が設置される場合においては、カバーが別売である場合も含めて、その大多数がカバーを取り付けることが当然の如くなっている。そしてこのカバーは配管接続部を全体的に1部品で覆う構造をとっているものが通常であり、取り付け,取り外しを想定した構造である場合が多いものの、一般の使用者が取り付け,取り外しを行うには躊躇する大きさや構造であるものが普通である。
【0034】
ところが、カバーによって覆われるバルブ類やストレーナ等は使用者によるメンテナンスが求められる場合も少なくないが、その作業を躊躇させるカバーが存在するため、使用者に求められる定期的なメンテナンス作業が実施されずにストレーナの目詰まりが生じて正常に給湯されないなどの不具合を呈することも繰り返されている。
【0035】
そこで本発明においては、カバーそのものにメンテナンス用の開口部を設けた。このことによって機器の美観をある程度に保ちつつ、カバーを外すことなくメンテナンス作業を行うことが可能となり、定期的なメンテナンスも躊躇なく行うことができる。
【0036】
この開口部に、開口部の大きさよりも若干大きく、工具を用いることなく容易に取り付け,取り外しができるフタを設けることにより、機器の美観を更に良いものに保ち、配管接続部のバルブ類を風雨に曝されることを防ぐことができ、かつ、容易にメンテナンス作業を行うことが可能となる。ここで、この開口部に取り付け,取り外しが可能なフタの大きさは、カバー全体の大きさに比較して小さいものが好ましく、例えばカバーの前面面積の1/2以下の開口面積とすることで、カバー全体を取り外すことに比べると格段にメンテナンス作業の容易性が向上し、使用者による定期メンテナンスの実施される機会も確実性を増すことができる。
【0037】
開口部に設けるフタを取り付け,取り外す手段を、4本以下の化粧ねじで行うこととすることで、工具を使わず、少ない手間によってフタを取り外し、メンテナンス作業を行い、少ない手間で再度フタを取り付けることができるようになる。図2に示すのは、フタを固定する化粧ねじを1本とした場合である。フタの下端はカバーの開口部の一辺と組み合せ、嵌め合う形状とし、フタの上端側には化粧ねじを通す穴を設け、カバーの開口部上端側に設けたねじ穴を利用してフタを固定することができる。フタと化粧ねじとは一体に組み合わせても良く、化粧ねじの紛失を防ぐこともできる。またフタには開口部と合わさる周辺部にパッキンを備えることで、カバーに取り付けた状態において外部からの雨水等の浸入を防止する構造としても良い。
【0038】
また、フタの取り付け,取り外し作業をより簡単に行うための工夫として、図2の化粧ねじの代わりに、フタの表面に回転もしくはスライドするレバーを設け、フタの裏面にそれらと連動して回転もしくはスライドするツメを設け、ツメをカバーの裏面に引っ掛けて固定する方法をとることも考えられる。
【0039】
開口部は特許文献3に示されるような配管を通すための工夫とは目的を異にするが、近隣の配管を通すための切り欠きと連通させて一体とすることも考えられ、開口部単独よりも広い作業スペースを実現することもありうる。
【0040】
また、メンテナンスの対象の優先順位は、電気給湯機の特性に基づいて設計者の意図によって、給水,給湯の継手部である場合、ふろ配管への接続継手部である場合、暖房機能を有する機種においては放熱器へつながる配管の継手部である場合など、配管接続部にあるバルブ類の中から選択されるが、いくつかのバルブ類,ストレーナ等、2つ以上の複数を一度にメンテナンスできる開口部構造とすることでメンテナンス作業の効率を向上でき、また使用者がメンテナンスすべき対象の明確化が図れ、メンテナンス作業の確実性を高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 貯湯ユニット
2 配管接続部(けこみ構造)
3 カバー
4 開口部
5 フタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯湯する貯湯タンクを内包する略直方体の貯湯ユニットにおいて、貯湯ユニット前面側には外部配管と機内配管とを接続する配管接続部を備え、この配管接続部はけこみ構造とするとともに、少なくともこのけこみ構造部全体もしくは一部を覆うカバーを取り付け可能な構造をもつ貯湯ユニットであって、そのカバーには配管接続部の点検,操作が可能な開口部を有することを特徴とした電気給湯機。
【請求項2】
開口部には工具を用いることなく、素手で安全に取り付け,取り外しが可能なフタを有することを特徴とした請求項1に記載の電気給湯機。
【請求項3】
取り付け,取り外しが可能なフタの固定は4本以下の化粧ねじで行うことを特徴とした請求項2に記載の電気給湯機。
【請求項4】
取り付け,取り外しが可能なフタの固定は回転式またはスライド式のレバーで行うことを特徴とした請求項2に記載の電気給湯機。
【請求項5】
配管接続部の点検が可能な開口部が接続配管を通す切り欠き部と連通した構造を持つことを特徴とした請求項1乃至請求項4に記載の電気給湯機。
【請求項6】
開口部から操作,点検可能な貯湯ユニットのバルブ類が2つ以上あることを特徴とした請求項1乃至請求項4に記載の電気給湯機。
【請求項7】
開口部から操作,点検可能な貯湯ユニットのバルブ類の1つがストレーナであることを特徴とした請求項6に記載の電気給湯機。
【請求項8】
開口部から操作,点検可能な貯湯ユニットのバルブ類の1つが排水栓であることを特徴とした請求項6に記載の電気給湯機。
【請求項9】
貯湯する温水をつくる熱源がヒートポンプであることを特徴とした請求項1乃至請求項8に記載の電気給湯機。
【請求項10】
熱源であるヒートポンプサイクルの作動冷媒が二酸化炭素であることを特徴とした請求項9に記載の電気給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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