説明

電気絶縁体およびフレキシブルフラットケーブル

【課題】フレキシブルフラットケーブルにおけるインピーダンスのバラツキと力学強度のバラツキを低減する。
【解決手段】フレキシブルフラットケーブルに使用される電気絶縁体1は、平板状の第1絶縁体3と、この第1絶縁体3の片面に接着され、この片面に直交する方向に貫通し互いに隣接された中空部9を有する中空絶縁体7とで構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気絶縁体およびフレキシブルフラットケーブルに関し、特に電子機器内で電気信号を伝達する信号ケーブルであるフレキシブルフラットケーブルに用いられる電気絶縁体およびこの電気絶縁体を用いたフレキシブルフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、信号ケーブルとしては、電子機器の筐体内で折り曲げられて組み込まれることが多いので屈曲性(フレキシブリティ)が必要であり、コネクタ接続をはじめとする接続性を考慮してフラット化されている構造のものが多い。よって、上述した特性を有する信号ケーブルはフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable)と呼称され、略してFFCと言われている(以下、この明細書では「FFC」という)。
【0003】
近年、電子機器の小型・軽量化、多機能化は急速に進展している。そのために数多くのICチップが搭載され、伝送容量が大きくなり、伝送スピードが高速化してきている。特に、伝送周波数が高周波になってきているために電子機器内の電気信号ノイズも増大するので、電気信号の伝送媒体には電磁波のシールド(遮蔽)特性に優れたものが要求されている。さらに、電子機器内の信号ケーブルにはインピーダンスが制御されたものを使用する必要がある。
【0004】
一般に、従来のFFCとしては、複数の導体が並行に配列された帯状の導体列と、該導体列を両面側から挟んだ後にラミネート加工された接着層付き発泡絶縁体と、で構成されている。この種のFFCは、例えば特許文献1に示されている。なお、特許文献1では前記発泡絶縁体の両側からさらに導電性接着層付き金属層で挟んでいる。
【0005】
上記のFFCにおいては、発泡絶縁体の誘電率によってインピーダンスや静電容量が変化し、その結果、電気信号の伝搬遅延時間が変化することが知られている。また、多くの場合、発泡絶縁体にはプラスチック材料が使われており、そのプラスチック材料は、発泡度によって誘電率が変わることも知られている。さらに、プラスチック材料は、発泡度によって力学強度が変わることも知られている。
【0006】
通常、プラスチック材料の発泡度を上げると誘電率と力学強度が低下することになる。発泡度を上げることは、プラスチック材料の中に空気が残留する体積が増えることと同義であり、自明の現象である。すなわち、発泡度を上げるとプラスチック材料の誘電率は低下するので、インピーダンスを整合できるものの、逆に力学特性は低下するので、例えば繰り返し屈曲などで破断してしまうという問題が発生する。
【0007】
一般に、FFCの製造は、公知のラミネート装置を用いて行われ、その際に、予め発抱度が決められたプラスチック材料を発泡絶縁体として用いることが知られている。そして、当該プラスチック材料は、発泡剤の配合比によって発泡度が決められたシート状のものが使われる。
【0008】
一般に、発泡度という指標は、重量・体積・密度などと同様に、物質の特性値を示すものであるが、いわゆるマクロ的な指標であって微視的な(ミクロ的な)指標ではないことが知られている。例えば、当該のプラスチック材料の発泡されている箇所(つまり、気泡の箇所)は、サブミクロンもしくはそれ以下の大きさのものもあれば、数十ミクロンのものも存在する。それが、ランダムにシート状のプラスチック材料中に存在しているわけである。
【0009】
このような材料を用いてFFCを製造した場合、導体と気泡との距離がそれぞれ異なると共に導体の長手方向での発泡度も一様ではないことになる。導体の長手方向で発泡度が一様ではない場合、絶縁体の誘電率や力学的強度も長手方向で一様ではないことを意味する。
【0010】
FFCの構成材料が同じであれば、インピーダンス特性や静電容量が大きく異なることはない。しかしながら、微視的な意味での発泡の程度が異なっているのであれば、少なくとも誘電率のバラツキと力学特性のバラツキに影響することは自明である。そして、このようなバラツキを低減したほうが、優れたFFCであるということも自明である。
【特許文献1】特開2003−31033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した従来のFFCにおいては、例えば特許文献1のFFCは、単に発泡絶縁体の発泡度を周知の技術で制御したFFCを提案しているだけであり、力学特性等を考慮したものではない。さらに、誘電率のバラツキと力学特性のバラツキを考慮したものではない。したがって、微視的な意味で誘電率のバラツキ及び力学特性のバラツキが不安定になるという問題点があった。
【0012】
なお、一般的に、FFCには電磁波を遮蔽するためのシールド層が設けられたものもあれば、そうでないものもある。シールド層を設けた場合は、電気信号の伝送時に発生する電磁波の遮蔽に優れることは周知である。したがって、シールド層を設けた場合であっても、同様に上記の問題点が生じることは望ましくないものである。
【0013】
本発明は、誘電率のバラツキ及び力学特性のバラツキをなくして安定にした電気絶縁体およびおよびフレキシブルフラットケーブルを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、この発明の電気絶縁体は、平板状の第1絶縁体と、
この第1絶縁体の片面に接着され、この片面に直交する方向に貫通し互いに隣接され多数の中空部を有する中空絶縁体と、
で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の電気絶縁体は、前記電気絶縁体において、前記中空絶縁体の前記第1絶縁体に接着された側と反対側の表面に接着された平板状の第2絶縁体を有することが好ましい。
【0016】
この発明の電気絶縁体は、前記電気絶縁体において、前記中空絶縁体と第2絶縁体との間に、シールド材を設けていること好ましい。
【0017】
この発明の電気絶縁体は、前記電気絶縁体において、前記各中空部は、横断面形状が多角形状であることこと好ましい。
【0018】
この発明の電気絶縁体は、前記電気絶縁体において、前記各中空部は、横断面形状が円形状であることが好ましい。
【0019】
この発明のフレキシブルフラットケーブルは、ほぼ平行に並んだ複数本の導体と、
この複数本の導体を両側から挟んでラミネートした平板状の第1絶縁体と、
この各第1絶縁体の外側表面に接着され、この表面に直交する方向に貫通し互いに隣接された多数の中空部を有する中空絶縁体と、
で構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この発明のフレキシブルフラットケーブルは、前記フレキシブルフラットケーブルにおいて、前記各中空絶縁体の外側表面に接着された平板状の第2絶縁体を有していることが好ましい。
【0021】
この発明のフレキシブルフラットケーブルは、前記フレキシブルフラットケーブルにおいて、前記中空絶縁体と第2絶縁体との間に、シールド材を設けていることが好ましい。
【0022】
この発明のフレキシブルフラットケーブルは、前記フレキシブルフラットケーブルにおいて、前記各中空部は、横断面形状が多角形状であることが好ましい。
【0023】
この発明のフレキシブルフラットケーブルは、前記フレキシブルフラットケーブルにおいて、前記各中空部は、横断面形状が円形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の電気絶縁体によれば、中空絶縁体が平板状の第1絶縁体の片面に接着されており、しかも前記中空絶縁体には多数の貫通した中空部が前記各中空部の貫通方向を前記第1絶縁体の片面に直交する方向に互いに隣接されて設けられているので、力学強度を大きく下げることなく、インピーダンスの整合を達成することが可能となる。さらに、電気絶縁体の長手方向の発泡度のバラツキを低減することができるので、繰り返しの屈曲に対する耐久性を向上できる。
【0025】
したがって、この中空絶縁体を有する電気絶縁体がフレキシブルフラットケーブルに用いられることで、フレキシブルフラットケーブルの全体の力学強度を大きく下げることなく、伝搬遅延時間の低減を達成することが可能となる。さらに、フレキシブルフラットケーブルの繰り返しの屈曲に対する耐久性を向上させることができる。
【0026】
この発明のフレキシブルフラットケーブルによれば、中空絶縁体が平板状の第1絶縁体の片面に接着されており、しかも前記中空絶縁体には多数の貫通した中空部が前記各中空部の貫通方向を前記第1絶縁体の片面に直交する方向に向けて互いに隣接されて設けられているので、フレキシブルフラットケーブルの全体の力学強度を大きく下げることなく、インピーダンスの整合を達成することが可能となる。
【0027】
さらに、フレキシブルフラットケーブルの長手方向の発泡度のバラツキを低減することができるので、繰り返しの屈曲に対する耐久性を向上できる。
【0028】
したがって、インピーダンスのバラツキと力学強度のバラツキを低減した構造のフレキシブルフラットケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1(A)〜(C)を参照するに、第1の実施の形態に係る電気絶縁体1は、平板状の絶縁フィルムからなる第1絶縁体3と、この第1絶縁体3の片面に接着剤5で接着した中空絶縁体7と、で構成されている。前記中空絶縁体7は、多数の貫通する中空部9を有しており、かつ前記各中空部9の貫通方向が前記第1絶縁体3の表面に直交する方向に向けて互いに隣接した状態に設けられているものである。
【0031】
上記の第1絶縁体3は、この実施の形態では、PET(ポリエチレンテレフタレート)で、厚さAが例えば0.025mm(25μm)である。なお、一般に、第1絶縁体3を構成する基材として上述したようにPETが用いられることが多いが、第1絶縁体3の材質を特に規定するものではない。
【0032】
図2を併せて参照するに、上記の中空絶縁体7は、この実施の形態では発泡PP(ポリプロピレン)で、その厚さBは例えば0.2mm(200μm)であり、接着剤5の厚さCが例えば10μmで前記第1絶縁体3の表面に接着されている。また、多数の各中空部9の貫通方向に直交する横断面形状は、この実施の形態では8角形状で、所謂、8角形中空部9であり、ほぼ一定の空隙分布に構成されている。また、8角形の寸法は対向する辺と辺の距離Dが例えば50μmで、各辺の厚さEが10μmである。
【0033】
したがって、この第1の実施の形態では、中空9の1つ当たりの容積は3.3×10−4mmで、中空絶縁体7の発泡度(中空9の空隙率)は50%となる。接着剤5はアクリル系が用いられている。このときの中空絶縁体7および接着剤5の誘電率は1.9となる。
【0034】
なお、上記の多数の各中空9は、例えばパンチング加工で形成することができるが、パンチング加工に限らず、その他の加工方法で形成することができる。
【0035】
また、中空絶縁体7は上記のように発泡PP(ポリプロピレン)に限定されず、例えば発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)やPE(ポリエチレン)や不織布PET、あるいは他の材質も使用可能である。ちなみに、中空9の空隙率が約50%で発泡PETを用いた場合では、誘電率が1.7となる。
【0036】
また、中空絶縁体7は、その中空構造の空孔含有倍率が30〜50%である材料が使われることが多いのであるが、中空構造の空孔含有倍率や材料の発泡度を特に規定するものではない。また、中空絶縁体7の寸法は上述した寸法に限定されるものではない。
【0037】
また、中空絶縁体7は、多角形中空構造として8角形中空部9を用いているが、多角形の形状そのものを特に規定するものではなく、中空部9の横断面形状は、多角形状あるいは円形状であっても良い。
【0038】
また、上記の接着剤5としては上述したアクリル系に限定されず、粘着タイプのポリエチレン系、あるいはその他の材質を用いてもよい。
【0039】
次に、この発明の第2の実施の形態に係る電気絶縁体11について説明する。なお、前述した第1の実施の形態の電気絶縁体1とほぼ同様であるので、同様の部材は同じ符号を付して特に異なる点を説明し、他の詳しい説明は省略する。
【0040】
図3(A)〜(C)を参照するに、この第2の実施の形態の電気絶縁体11が第1の実施の形態の電気絶縁体1と異なる点は、前記中空絶縁体7の一方の面に平板状の第1絶縁体13を接着剤5で接着し、前記中空絶縁体7の他方の面に平板状の第2絶縁体15を接着剤17で接着したことにある。換言すれば、前述した第1の実施の形態の電気絶縁体1の第1絶縁体3を第1絶縁体13とし、中空絶縁体7の前記第1絶縁体13に接着された側と反対側の表面に、第2絶縁体15を接着剤17で接着したものである。
【0041】
なお、前記中空絶縁体7は前述した第1の実施の形態の材質、形状及び寸法と同じである。また、第1絶縁体13と第2絶縁体15は前述した第1の実施の形態の第1絶縁体3と同様である。すなわち、第1絶縁体13の厚さAと第2絶縁体15の厚さFは例えば0.025mm(25μm)であり、中空絶縁体7の厚さBは例えば0.2mm(200μm)であり、接着剤5の厚さC及び接着剤17の厚さGは例えば10μmである。しかし、中空絶縁体7の寸法は上述した寸法に限定されるものではない。
【0042】
次に、この発明の第3の実施の形態に係る電気絶縁体19について説明する。なお、前述した第1,第2の実施の形態の電気絶縁体1、11とほぼ同様であるので、同様の部材は同じ符号を付して特に異なる点を説明し、他の詳しい説明は省略する。
【0043】
図4(A)〜(C)を参照するに、電気絶縁体19は、特に第2の実施の形態の電気絶縁体11と異なる点は、電気絶縁体11の中空絶縁体7と第2絶縁体15との間に、シールド材21を設けたことにある。換言すれば、前述した第1の実施の形態の電気絶縁体1の第1絶縁体3を第1絶縁体13とし、中空絶縁体7の前記第1絶縁体13の側と反対側の表面に、シールド材21を導電性接着剤等の接着剤23で接着し、さらに前記シールド材21の外側表面に、第2絶縁体15を接着剤17で接着したものである。さらに、別の言い方をすると、前述した第1の実施の形態の電気絶縁体1の第1絶縁体3を第1絶縁体13とし、中空絶縁体7の前記絶縁体3の側と反対側の表面に、第2絶縁体付きのシールド材21を導電性接着剤等の接着剤23で接着したものである。
【0044】
なお、前記中空絶縁体7は前述した第1の実施の形態の材質、形状及び寸法と同じである。また、第1絶縁体13と第2絶縁体15は前述した第1の実施の形態の絶縁体3と同様である。すなわち、第1絶縁体13の厚さAと第2絶縁体15の厚さFは例えば0.025mm(25μm)であり、中空絶縁体7の厚さBは例えば0.2mm(200μm)であり、接着剤5の厚さC及び接着剤17の厚さGは例えば10μmである。しかし、中空絶縁体7の寸法は上述した寸法に限定されるものではない。
【0045】
また、この第3の実施の形態では、上記のシールド材21はアルミ箔で、その厚さHが例えば0.007mm(7μm)であり、接着剤23は導電性接着剤で、その厚さIが例えば0.030mm(30μm)である。
【0046】
なお、上記のシールド材21は、一般に、金属部分の厚みが5〜15μmのものが使用されているが、シールド材21の層の厚さを特に規定するものではない。また、上記の導電性接着剤23の層を構成する導電性粒子は、一般に、導電性カーボンや銅・アルミ・ニッケルなどの金属が使われることが多いが、前記導電性接着剤23の層を構成する導電性粒子の材質を特に規定するものではない。さらに、シールド材21の表面抵抗率は、一般に10Ω以下のものが使われることが多いが、シールド材21の表面抵抗率を特に規定するものではない。
【0047】
以上、説明した第1,第2,第3の実施の形態に係る電気絶縁体1、11、19の効果は、これらを用いたフレキシブルフラットケーブルによる効果を確認することで得られることから、詳しくは後述する。
【0048】
次に、この発明の第4の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルについて説明する。
【0049】
図5(A)〜(C)を参照するに、第4の実施の形態のフレキシブルフラットケーブル25(以下、「FFC」という)は、前述した第1の実施の形態の電気絶縁体1が用いられているものである。すなわち、断面が矩形形状の平行に帯状に並んだ複数本の導体27が、図5(B)に示されているように、2枚の電気絶縁体1A、1Bによって第1絶縁体3A、3Bの面側が例えば熱可塑性接着剤29を介して両側から貼り合わされた状態で被覆されている。
【0050】
より詳しく説明すると、FFC25は上記の複数本の導体27が、2枚の第1絶縁体3A、3Bによって例えば熱可塑性接着剤29を介して両側から挟み込んでラミネートされている。
【0051】
この第4の実施の形態では、上記の各導体27は錫めっき平角軟銅線であり、幅が例えば0.3mmで、厚さが例えば0.035mmで、長さが例えば500mmである。なお、導体27は上記のように断面矩形に限定されず、例えば断面円形や他の形状であっても良い。
【0052】
また、前述した第1の実施の形態の電気絶縁体1の説明と同様に、第1絶縁体3A、3BはPET(ポリエチレンテレフタレート)で、厚さが例えば0.025mmであり、上記の熱可塑性接着剤29の厚さが例えば0.035mm(35μm)である。なお、一般に、第1絶縁体3A、3Bを構成する基材として上述したようにPETが用いられ、接着剤29としてはポリエステル、ポリプロピレン、PVCなどが使われることが多いが、第1絶縁体3A、3Bや接着剤29の材質を特に規定するものではない。
【0053】
また、上記の第1絶縁体3A、3Bの少なくとも一方の端部は、前記各導体27が一方の例えば第1絶縁体3Bの片面に所定長さで露出されてFFC端子部31(導体露出部)が形成されている。このFFC端子部31の領域を含む前記第1絶縁体3Bの裏面には、FFC端子部31を保護するための補強板33が裏打ちされている。補強板33は、例えばポリエステル、ポリエチレン、塩化ビニルあるいはテトラフロロエチレンなどの樹脂からなる。
【0054】
また、前記第1絶縁体3Aの外側表面には中空絶縁体7Aが接着剤5で接着されており、前記第1絶縁体3Bの外側表面には中空絶縁体7Bが接着剤5で接着されている。なお、中空絶縁体7A、7Bは前述した第1の実施の形態の電気絶縁体1の中空絶縁体7と材質、形状及び寸法が同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0055】
次に、上記のFFC25の作成方法について簡単に説明すると、図5(A)では例えば11本の導体27が概念的に図示されているが、この第4の実施の形態では、30本の導体27が0.5mmピッチでほぼ平行に並べられ、この30本の導体27の上下が第1絶縁体3A、3Bで挟み込まれて熱可塑性接着剤29でラミネートされる。さらに、各第1絶縁体3A、3Bの表面に中空絶縁体7A、7Bが接着剤5で貼り合されることで、FFC25が作成される。
【0056】
あるいは、別の作成方法としては、30本の導体27の上下が第1の実施の形態の電気絶縁体1A、1Bで挟み込まれて第1絶縁体3A、3Bの側が熱可塑性接着剤29でラミネートされることで、FFC25が作成されるものでもよい。
【0057】
なお、FFC25の両端のFFC端子部31(導体露出部)の口出し長さは4mmである。また、FFC25の外径寸法は幅が例えば15.5mmで、その長さが例えば500mmである。補強板33の幅が例えば15.5mmで、その長さが例えば8mmである。
【0058】
また、各電気絶縁体1A、1Bは幅が例えば15.5mmで、その長さが例えば490mmである。つまり、第1絶縁体3A、3Bと中空絶縁体7A、7Bの位置関係及び取付け状態は、FFC端子部31の直近まで配置してあり、FFC瑞子部31でのインピーダンスの整合も図られている。
【0059】
次に、この発明の第5の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル35について説明する。なお、前述した第4の実施の形態のFFC25とほぼ同様であるので、同様の部材は同じ符号を付して特に異なる点を説明し、他の詳しい説明は省略する。
【0060】
図6(A)〜(C)を参照するに、第5の実施の形態のFFC35は、前述した第2の実施の形態の電気絶縁体11が用いられているものである。すなわち、断面矩形の平行に並んだ複数本の導体27が、図6(B)に示されているように、2枚の電気絶縁体11A、11Bによって第1絶縁体13A、13Bの面側が例えば熱可塑性接着剤29を介して両側から貼り合わされた状態で被覆されている。
【0061】
したがって、第5の実施の形態のFFC35は、前述した第4の実施の形態のFFC25における2枚の電気絶縁体1A、1Bが2枚の電気絶縁体11A、11Bに置き換えられることで他の部分は同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0062】
なお、第1絶縁体13A、13Bと中空絶縁体7A、7Bと第2絶縁体15A、15Bの位置関係及び取付け状態は、FFC端子部31の直近まで配置してあり、FFC瑞子部31でのインピーダンスの整合も図られている。
【0063】
次に、この発明の第6の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル37について説明する。なお、前述した第4,第5の実施の形態のFFC25、35とほぼ同様であるので、同様の部材は同じ符号を付して特に異なる点を説明し、他の詳しい説明は省略する。
【0064】
図7(A)〜(C)を参照するに、第6の実施の形態のFFC37は、前述した第3の実施の形態の電気絶縁体19が用いられているものである。すなわち、断面矩形の平行に並んだ複数本の導体27が、図7(B)に示されているように、2枚の電気絶縁体19A、19Bによって第1絶縁体13A、13Bの面側が例えば熱可塑性接着剤29を介して両側から貼り合わされた状態で被覆されている。
【0065】
したがって、第6の実施の形態のFFC37は、前述した第4の実施の形態のFFC25における2枚の電気絶縁体1A、1Bが2枚の電気絶縁体19A、19Bに置き換えられることで他の部分はほぼ同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0066】
ただし、シールド材21A、21Bには、図7(A)に示されているように接地39が設けられており、シールド材21A、21Bはドレイン線と金属的に接触してグランド処理が図られている。
【0067】
次に、上記のFFC37の作成方法について簡単に説明すると、図7では例えば11本の導体27が概念的に図示されているが、この第6の実施の形態では、30本の導体27が0.5mmピッチでほぼ平行に並べられ、この30本の導体27の上下が第1絶縁体13A、13Bで挟み込まれて熱可塑性接着剤29でラミネートされる。さらに、各第1絶縁体13A、13Bの表面に中空絶縁体7A、7Bが接着剤5で貼り合される。さらに、各中空絶縁体7A、7Bの外側表面に、シールド材21A、21Bを導電性接着剤等の接着剤23で接着し、さらに前記シールド材21A、21Bの外側表面に、第2絶縁体15A、15Bを接着剤17で接着することで、FFC37が作成される。なお、FFC37の両端のFFC端子部31(導体露出部)の口出し長さは4mmである。
【0068】
あるいは、別の作成方法としては、30本の導体27の上下が第3の実施の形態の電気絶縁体11A、11Bで挟み込まれて第1絶縁体13A、13Bの側が熱可塑性接着剤29でラミネートされることで、FFC37が作成されるものでもよい。
【0069】
なお、第1絶縁体13A、13Bと中空絶縁体7A、7Bとシールド材21A、21Bと第2絶縁体15A、15Bの位置関係及び取付け状態は、FFC瑞子部31の直近まで配置してあり、FFC端子部31でのインピーダンスの整合も図られている。
【0070】
以上のように第4,第5の実施の形態のFFC25、35はシールド材無しのフレキシブルフラットケーブルであり、第6の実施の形態のFFC37はシールド材21A、21B付きのフレキシブルフラットケーブルであり、この実施の形態のフレキシブルフラットケーブルでは特にシールド材21A、21Bの有無を限定するものではない。
【0071】
次に、上記構成のFFC25、FFC35及びFFC37の効果を確認するために、特にシールド材21A、21Bを貼り合わせた第6の実施の形態のFFC37の試料Aと比較例のFFCの試料Bを作成し、種々の試験例1〜試験例3を行った。なお、第6の実施の形態のFFC37の各部材の材質、形状、寸法等は前述した通りである。
【0072】
また、比較例のFFCとしては、第6の実施の形態のFFC37における電気絶縁体19A、19Bに替えて、40%の発泡度を有する発泡ポリプロピレンからなる平板状の発泡絶縁体を使用したものである。それ以外は、前記FFC37と同じである。
【0073】
試験例1としては、この実施の形態の試料Aと比較例の試料Bに対して誘電率を測定した。すなわち、この誘電率は、東陽テクニカ社製の誘電体測定システム(型番:126096W型)を用いて測定した。なお、このときの試験条件としては、測定周波数が1MHzで、測定温度が常温(23°C)で、各試料数Nを100とした。誘電率の単位はcgs単位系を使用しており、無次元(no dimension)である。
【0074】
試験例2としては、この実施の形態の試料Aと比較例の試料Bに対してインピーダンスを算出した。すなわち、インピーダンスは、日本テクトロニクス社製のオシロスコープ(型番:TDS8000)を用いてTDR(Time Domain Reflectometry)法にて測定し、インピーダンスを算出した。なお、このときの試験条件としては、測定温度が常温(23°C)で、各試料数Nを100とした。インピーダンスの単位はΩ(オーム)である。
【0075】
試験例3としては、この実施の形態の試料Aと比較例の試料Bに対して、JIS C5061 8.7に準拠したMIT屈曲試験を実施した。なお、このときの試験条件としては、屈曲半径が15mmで、荷重が500gfで、屈曲角が135°で、屈曲速度が175cmである。各試料数Nを50とし、試験前に市販のテスターにて導通が取れていることを確認した。各試料A,Bに対して10万回の繰り返し屈曲試験を行った後に、テスターにて導通の有無を確認し、導通のなかったもの、つまり断線している試料数をカウントし、これをデータとした。
【0076】
実施の形態のFFC37の試料Aと比較例のFFCの試料Bに対して、上述した試験例1〜試験例3を行ったところ、表1のようになった。
【表1】

【0077】
以上の表1から、試験例1の結果により、この実施の形態の試料Aと比較例の試料Bの各誘電率の平均値はほぼ同等であるが、その最大値と最小値を見ると、比較例の試料Bのバラツキが大きいことが分かる。
【0078】
試験例2の結果により、この実施の形態の試料Aと比較例の試料Bのインピーダンスの平均値はほぼ同等であるが、その最大値と最小値を見ると、比較例の試料Bのバラツキが大きいことが分かる。
【0079】
試験例3の結果により、比較例の試料Bでは、繰り返し屈曲試験によって断線したものが発生したが、この実施の形態の試料Aでは断線が発生しなかった。なお、比較例で断線した試料Bの破断箇所の近傍には、いずれも10μm〜20μm程度の気泡が2〜4個確認された。従って、比較例のFFCでは発泡絶縁体に気泡がランダムに存在しているので、導体27の近傍に大きな気泡が集中してしまうと、繰り返し屈曲で破断する場合があることが判明した。
【0080】
以上のことから、第1,第2,第3の実施の形態の電気絶縁体1、11、19は、多数の中空部9を有する空隙構造のプラスチック材料の中空絶縁体7が用いられているので、力学強度を大きく下げることなく、低誘電率化を達成することができる。さらに、電気絶縁体の長手方向の発泡度のバラツキを低減することができるので、繰り返しの屈曲に対する耐久性を向上できる。
【0081】
これらの電気絶縁体1、11、19が第4,第5,第6の実施の形態のFFC25、35、37の絶縁体として用いられることによって、各FFC25、35、37の全体の力学強度を大きく下げることなく、インピーダンスの整合を達成することが可能となる。さらに、各FFC25、35、37の長手方向の発泡度のバラツキを低減させることができるので、繰り返しの屈曲に対する耐久性を向上できる。
【0082】
したがって、インピーダンスのバラツキと力学強度のバラツキを低減した構造のFFC25、35、37を提供することができる。なお、FFC37はシールド特性を有するものとして提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この第1の実施の形態の電気絶縁体を示すもので、(A)は平面図で、(B)は縦断面図で、(C)は拡大した正面図である。
【図2】図1(A)の部分的な拡大平面図である。
【図3】この第2の実施の形態の電気絶縁体を示すもので、(A)は平面図で、(B)は縦断面図で、(C)は拡大した正面図である。
【図4】この第3の実施の形態の電気絶縁体を示すもので、(A)は平面図で、(B)は縦断面図で、(C)は拡大した正面図である。
【図5】この第4の実施の形態のフレキシブルフラットケーブルを示すもので、(A)は平面図で、(B)は縦断面図で、(C)は底面図である。
【図6】この第5の実施の形態のフレキシブルフラットケーブルを示すもので、(A)は平面図で、(B)は縦断面図で、(C)は底面図である。
【図7】この第6の実施の形態のシールド材付きのフレキシブルフラットケーブルを示すもので、(A)は平面図で、(B)は縦断面図で、(C)は底面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 電気絶縁体(第1の実施の形態の)
3 第1絶縁体
5 接着剤
7 中空絶縁体
9 中空部
11 電気絶縁体(第2の実施の形態の)
13 第1絶縁体
15 第2絶縁体
17 接着剤
19 電気絶縁体(第3の実施の形態の)
21 シールド材
23 接着剤
25 FFC(第4の実施の形態のフレキシブルフラットケーブル)
27 導体
29 接着剤
31 FFC瑞子部
33 補強板
35 FFC(第5の実施の形態のフレキシブルフラットケーブル)
37 FFC(第6の実施の形態のフレキシブルフラットケーブル)
39 接地
A 試料(この実施の形態のFFC37の)
B 試料(比較例のFFCの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の第1絶縁体と、
この第1絶縁体の片面に接着され、この片面に直交する方向に貫通し互いに隣接され多数の中空部を有する中空絶縁体と、
で構成されていることを特徴とする電気絶縁体。
【請求項2】
前記中空絶縁体の前記第1絶縁体に接着された側と反対側の表面に接着された平板状の第2絶縁体を有することを特徴とする請求項1記載の電気絶縁体。
【請求項3】
前記中空絶縁体と第2絶縁体との間に、シールド材を設けていることを特徴とする請求項2記載の電気絶縁体。
【請求項4】
前記各中空部は、横断面形状が多角形状であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の電気絶縁体。
【請求項5】
前記各中空部は、横断面形状が円形状であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の電気絶縁体。
【請求項6】
ほぼ平行に並んだ複数本の導体と、
この複数本の導体を両側から挟んでラミネートした平板状の第1絶縁体と、
この各第1絶縁体の外側表面に接着され、この表面に直交する方向に貫通し互いに隣接された多数の中空部を有する中空絶縁体と、
で構成されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブル。
【請求項7】
前記各中空絶縁体の外側表面に接着された平板状の第2絶縁体を有していることを特徴とする請求項6記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項8】
前記中空絶縁体と第2絶縁体との間に、シールド材を設けていることを特徴とする請求項7記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項9】
前記各中空部は、横断面形状が多角形状であることを特徴とする請求項6、7又は8記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項10】
前記各中空部は、横断面形状が円形状であることを特徴とする請求項6、7又は8記載のフレキシブルフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−9783(P2009−9783A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168857(P2007−168857)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】