説明

電気貫通部の評価装置および評価方法

【課題】電気貫通部単体での健全性をノイズによる影響の観点から評価可能とする電気貫通部の評価装置および評価方法を提供する。
【解決手段】第1の電気貫通部2と第1の電気貫通部2とは異なる第2の電気貫通部3とを電気的に接続して閉ループ回路を形成するケーブル4,5,9aと、模擬電流を発生させる模擬電流発生装置7と、形成された閉ループ回路に模擬電流をコモンモード電流として注入する電流注入器6と、模擬電流注入時のコモンモード電流を電流値として測定する電流測定器8と、模擬電流注入時に第1の電気貫通部2から導き出される微弱な高周波電気信号を電圧値として測定する信号電圧測定装置9と、電流測定器8で測定される電流値と信号電圧測定装置9で測定される電圧値とから変換比を算出する変換比算出装置10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気貫通部の評価装置および評価方法に係り、特に、電磁ノイズの影響を評価する電気貫通部の評価装置および評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電プラントでは、運転効率向上のために、動力機器の電源装置としてインバータを用いる割合が高まりつつある。また、信頼性向上のために、無停電電源装置も多数導入されるようになってきている。このような電源装置は、スイッチングと平滑化により所望の振幅、周波数の電圧を生成して、負荷に供給している。特に、最近のスイッチング素子は、効率向上のために、非常に高速にスイッチングすることができ、その結果生じる電磁ノイズは振幅が大きく、周波数が高くなる傾向がある。例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子では、スイッチング時間が数百ナノ秒程度まで短くなっており、MHzオーダーの高周波ノイズが発生する。また、従来から電動弁などの電動機器のオンオフ制御に利用されているコンタクタも、周波数が高く、振幅の大きなノイズ電流を発生することが知られている。
このような背景により、原子力発電プラント内の電磁ノイズのバックグランドレベルが高くなってきている。
【0003】
一方、原子力発電プラントには、内部に種々の微弱信号を計測する微弱信号計装系が設けられている。例えば、核計装システムである中性子計装システム(微弱信号計装系)は、原子炉に燃料が装荷されている全期間において、原子炉内の中性子束および出力を計測できるようにするために、中性子源領域モニタ、中間領域モニタ、出力領域モニタ用の3種類の中性子検出器を設置して、これら中性子検出器からの非常に微弱な信号を扱っている。なお、最近では、中性子源領域モニタ、および中間領域モニタを一体化した起動領域中性子モニタが用いられている。そして、中性子検出器からの微弱信号は、原子炉格納容器の電気貫通部(電気ペネトレーション)を介して、増幅器で増幅され、監視装置に送信される。
【0004】
特に、原子炉内の出力を監視する核計装システムのうち定期検査中などの停止時および起動時に使用する中性子源領域モニタは、1μA以下の微弱信号を扱っているため、高周波ノイズの影響を受けやすい。このような核計装システムは、原子炉安全保護系に指示値を出力するため、万一、その中性子検出器からの信号にノイズが重畳されると、誤警報や誤スクラムを引き起こす可能性がある。
【0005】
ノイズによる影響の受け易さは、2つの特性に分けて評価することができる。第1の特性は、ノイズ発生源から対象とする微弱信号計装系への伝搬のしやすさである。これは、微弱信号計装系にどれだけのコモンモード電流が伝搬したかを測定することで評価できる。第2の特性は、微弱信号計装系に伝搬したコモンモード電流による計測への影響のしやすさである。これは、コモンモード電流が計測信号にどれだけ変換されるかを測定することで評価できる。
【0006】
第1の特性については、特許文献1により、原子力発電プラント内に施工された状態において、微弱信号計装系への伝搬しやすさを評価するプラント内電動機システムの影響評価装置および評価方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−293931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、核計装システムのような微弱信号計装系では、インバータなどのノイズの影響は誤警報や誤スクラムに直結するため、プラントの信頼性向上の観点からこれを防止することがとりわけ重要である。
この微弱信号は、原子炉格納容器の電気貫通部を介して処理されるが、従来、電気貫通部の健全性を個別に確認する場合、抵抗測定などが用いられており、高周波ノイズに対する健全性を直接評価することができなかった。
【0009】
また、特許文献1には、微弱信号計装系に伝搬したコモンモード電流による計測への影響のしやすさ(第2の特性)については示されていない。そのため、微弱信号計装系の電気貫通部の施工において、ノイズ源となる動力系などが稼働した後にノイズの影響が生じた場合、施工完了後に、再度、これらの施工状態が適切かを確認する必要が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、電気貫通部単体での健全性をノイズによる影響の観点から評価可能とする電気貫通部の評価装置および評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明は、容器内に設置された検出器の微弱な高周波電気信号を前記容器外に導き出すための第1の電気貫通部を評価する電気貫通部の評価装置であって、前記第1の電気貫通部と該第1の電気貫通部とは異なる第2の電気貫通部とを電気的に接続して閉ループ回路を形成するケーブルと、模擬電流を発生させる模擬電流発生装置と、形成された前記閉ループ回路に前記模擬電流をコモンモード電流として注入する電流注入器と、前記模擬電流注入時のコモンモード電流を電流値として測定する電流測定器と、前記模擬電流注入時に前記第1の電気貫通部から導き出される微弱な高周波電気信号を電圧値として測定する信号電圧測定装置と、前記電流測定器で測定される前記電流値と前記信号電圧測定装置で測定される前記電圧値とから変換比を算出する変換比算出装置と、を備えることを特徴とする電気貫通部の評価装置である。
【0012】
また、本発明は、容器内に設置された検出器の微弱な高周波電気信号を前記容器外に導き出すための第1の電気貫通部を評価する電気貫通部の評価方法であって、前記第1の電気貫通部と該第1の電気貫通部とは異なる第2の電気貫通部とを電気的に接続して閉ループ回路を形成するステップと、形成された前記閉ループ回路に前記模擬電流をコモンモード電流として注入するステップと、前記模擬電流注入時のコモンモード電流値を測定するステップと、前記模擬電流注入時に前記第1の電気貫通部から導き出される微弱な高周波電圧を測定するステップと、前記電流測定器で測定される電流値と信号電圧測定装置で測定される電圧値とから変換比を算出するステップと、を備えることを特徴とする電気貫通部の評価方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気貫通部単体での健全性をノイズによる影響の観点から評価可能とする電気貫通部の評価装置および評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置の構成図である。
【図2】本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置を構成する模擬電流発生装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置を構成する変換比算出装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの構成図である。
【0017】
<原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの評価対象>
まず、本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの説明の前に、原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの評価対象について説明する。
原子力発電プラント(図示せず)は、原子炉圧力容器(図示せず)を格納する原子炉格納容器1を備え、原子炉格納容器1には第1の電気貫通部2および第2の電気貫通部3が設けられている。
【0018】
原子力発電プラントの微弱信号計装系(図示せず)は、原子炉格納容器1の内側に配置された微弱かつ高周波な電気信号(微弱信号)を送信する検出器(例えば、原子炉圧力容器の中性子検出器)(図示せず)と、第1の電気貫通部2と、原子炉格納容器1の外側に配置され微弱信号を増幅する増幅器(図示せず)と、計装系監視装置(図示せず)と、で構成される。
【0019】
本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sは、この微弱信号計装系の第1の電気貫通部2が評価対象である。なお、第1の電気貫通部2の評価は、原子力発電プラントの施工時や、定期検査時に行われる。
【0020】
第1の電気貫通部2は、芯線とシールド線とがそれぞれ原子炉格納容器1の内側と外側とを電気的に結合し通電可能(通信可能)に形成されており、一端(原子炉格納容器1の内側)のコネクタ2aが微弱信号計装系の検出器(図示せず)と接続され、他端(原子炉格納容器1の外側)のコネクタ2bが、増幅器(図示せず)を介して、計装系監視装置(図示せず)に接続されるようになっている。
【0021】
第2の電気貫通部3は、原子炉格納容器1の内側と外側とを通電可能に形成される。なお、第2の電気貫通部3は、第1の電気貫通部2の微弱信号計装系とは異なる微弱信号計装系(図示せず)を構成する電気貫通部であってもよく、原子炉格納容器1の内側に配置された電動機器(図示せず)と原子炉格納容器1の外側に配置された電源装置(電動機器制御装置)(図示せず)とを電気的に結合する動力系の電気貫通部であってもよい。
なお、第2の電気貫通部3は、後述する原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの閉回路(閉ループ回路)形成に用いられる。
【0022】
<原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの構成>
次に、本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの構成について説明する。
原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sは、微弱信号計装系の第1の電気貫通部2に伝搬したコモンモード電流(ノイズ電流)による計測への影響のしやすさ(第2の特性)を評価するものであり、接続ケーブル4と、同軸ケーブル5と、電流注入器6と、模擬電流発生装置7と、電流測定器8と、ケーブル9aを有する信号電圧測定装置9と、変換比算出装置10とを備えている。
【0023】
原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sは、評価対象とする第1の電気貫通部2および閉回路形成用の第2の電気貫通部3に接続することにより、同軸ケーブル5、第1の電気貫通部2、接続ケーブル4、第2の電気貫通部3および信号電圧測定装置9(ケーブル9a)で閉回路が形成されるようになっている。
【0024】
接続ケーブル4は、評価対象とする第1の電気貫通部2の一端(原子炉格納容器1の内側)のコネクタ2aと、閉回路形成用の第2の電気貫通部3の一端(原子炉格納容器1の内側)のコネクタ3aとを接続する。
【0025】
同軸ケーブル5は、芯線とシールド線とを有するケーブルであり、評価対象とする第1の電気貫通部2の他端(原子炉格納容器1の外側)のコネクタ2bに接続される。
【0026】
電流注入器6は、高周波数の模擬ノイズ電流であるコモンモード電流を同軸ケーブル5に注入する電流注入手段であり、大略リング状に形成されている。具体的には、フェライト製であって、結合するとリング状になるプローブ本体と、プローブ本体に巻かれたコイル(図示せず)と、コイルと模擬電流発生装置7とを接続するリードケーブルとで構成され、プローブ本体に同軸ケーブル5が挿通するように同軸ケーブル5に配置されている。
ここで、電流注入器6は、電磁誘導により、模擬電流発生装置7から印加された高周波数の信号に応じた高周波数の模擬ノイズ電流(コモンモード電流)を同軸ケーブル5に注入する。
【0027】
模擬電流発生装置7は、高周波数の信号を発生させて、電流注入器6に印加するようになっている。
ここで、図2を用いて、模擬電流発生装置7について更に説明する。図2は、本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sを構成する模擬電流発生装置7の機能ブロック図である。
【0028】
模擬電流発生装置7は、信号波の周波数と振幅を予め入力する入出力インターフェイス71と、前記入力結果を格納する記憶手段としての第1記憶装置72と、制御装置73と、信号発生器74と、SSR(Solid-State Relay;ソリッドステートリレー)75とを備えている。
【0029】
制御装置73は、第1記憶装置72に格納されたデータを取込むとともに、このデータに基づいてSSR75の開閉、および信号発生器74で生成する信号波の振幅と周波数を制御する制御手段として機能するようになっている。
信号発生器74は、任意の周波数の正弦波などの周期的に変化する信号波を生成する信号発生手段として機能するようになっている。
SSR75は、信号発生器74で生成された信号波の外部(電流注入器6)への出力または停止をその開閉で行う開閉手段として機能するようになっている。
【0030】
なお、模擬電流発生装置7の信号発生器74で生成する信号波(即ち、電流注入器6から同軸ケーブル5に注入する高周波数の模擬ノイズ電流(コモンモード電流))は、正弦波であってもよく、矩形波であってもよく、振幅の異なる正弦波を組み合せたものであってもよい。また、実際に電動機等のノイズ発生源から微弱信号計装系に伝搬するコモンモード電流(ノイズ電流)をサンプリングして用いてもよい。
【0031】
模擬電流発生装置7で生成した信号波を電流注入器6に印加するために、SSR75の出力端と電流注入器6とは、リードケーブルにより接続される。
また、SSR75の開閉、および電流注入器6に印加している模擬ノイズ電流の周波数と振幅の信号は、制御装置73から、例えばシリアル通信などの伝送路を介して変換比算出装置10に送信される。
【0032】
図1に戻り、原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sの構成についての説明を続ける。
電流測定器8は、同軸ケーブル5の電流を測定する電流測定手段であり、大略リング状に形成されている。具体的には、フェライト製であって、結合するとリング状になるプローブ本体と、プローブ本体に巻かれたコイル(図示せず)と、コイルと変換比算出装置10とを接続するリードケーブルとで構成され、プローブ本体に同軸ケーブル5が挿通するように同軸ケーブル5に配置されている。
ここで、電流測定器8は、電磁誘導により、電流注入器6によって同軸ケーブル5に注入されたコモンモード電流に応じた信号(電流値)を変換比算出装置10に送る。
【0033】
信号電圧測定装置9は、同軸ケーブル5の芯線‐シールド線間の電圧を測定する電圧測定手段である。
信号電圧測定装置9のケーブル9aは、同軸ケーブル5と同通可能となっており、閉回路形成用の第2の電気貫通部3の他端(原子炉格納容器1の外側)のコネクタ3bに接続される。これにより、原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sを第1の電気貫通部2および第2の電気貫通部3に接続することにより、同軸ケーブル5、第1の電気貫通部2、接続ケーブル4、第2の電気貫通部3および信号電圧測定装置9(ケーブル9a)で、高周波数の模擬ノイズ電流であるコモンモード電流を流すための閉回路(閉ループ回路)が形成されるようになっている。
ここで、信号電圧測定装置9は、同軸ケーブル5に高周波数の模擬ノイズ電流であるコモンモード電流を注入した時の芯線‐シールド線間の電圧に応じた信号(電圧値)を変換比算出装置10に送る。
【0034】
変換比算出装置10は、電流測定器8で測定した電流値と、信号電圧測定装置9で測定した電圧値と、に基づいて、後述する変換比を算出し、その結果を表示するようになっている。
ここで、図3を用いて、変換比算出装置10について更に説明する。図3は、本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sを構成する変換比算出装置10の機能ブロック図である。
【0035】
変換比算出装置10は、制御装置101と、バンドパスフィルタ102と、電流側A/D変換回路103と、電流側実効値演算装置104と、電圧側A/D変換回路105と、電圧側実効値演算装置106と、第2記憶装置107と、変換比演算回路108と、第3記憶装置109と、表示装置110と、を備えている。
【0036】
制御装置101は、模擬電流発生装置7の制御装置73(図2参照)から送信されたSSR75の開閉、および電流注入器6に印加している模擬ノイズ電流の周波数と振幅の信号を受信し、第2記憶装置107に送信して格納させるようになっている。
また、制御装置101は、受信した模擬ノイズ電流の周波数に基づいて、バンドパスフィルタ102の通過帯域を設定するようになっている。
【0037】
バンドパスフィルタ102は、電流測定器8で測定されたコモンモード電流に応じた信号(電流値)のうち、制御装置101によって設定された通過帯域の周波数帯域の信号を通過させるようになっている。
電流側A/D変換回路103は、バンドパスフィルタ102を通過した電流値をディジタル値に変換するようになっている。
電流側実効値演算装置104は、電流側A/D変換回路103でディジタル値に変換された電流値を実効値データに変換するようになっている。そして、変換された電流値の実効値データ(電流実効値)は第2記憶装置107に格納されるようになっている。
【0038】
電圧側A/D変換回路105は、信号電圧測定装置9で測定されたコモンモード電流を注入した時の芯線‐シールド線間の電圧に応じた信号(電圧値)をディジタル値に変換するようになっている。
電圧側実効値演算装置106は、電圧側A/D変換回路105でディジタル値に変換された電圧値を実効値データに変換するようになっている。そして、変換された電圧値の実効値データ(電圧実効値)は第2記憶装置107に格納されるようになっている。
【0039】
第2記憶装置107は、SSR75の開閉と、電流注入器6に印加している模擬ノイズ電流の周波数および振幅と、電流値の実効値データ(電流実効値)と、電圧値の実効値データ(電圧実効値)と、を格納するようになっている。
変換比演算回路108は、第2記憶装置107に格納された情報に基づいて後述する変換比を算出するようになっている。そして、算出された変換比は、模擬ノイズ電流の周波数および振幅とともに、第3記憶装置109に格納されるようになっている。
表示装置110は、第3記憶装置109に格納された模擬ノイズ電流の周波数および振幅とともに、変換比を1組にして表示するようになっている。
【0040】
<変換比の算出処理>
次に、変換比算出装置10の変換比演算回路108が実行する変換比の算出処理について。さらに説明する。
変換比は、次の式(1)で定義する。
変換比 = 芯線‐シールド線間電圧/コモンモード電流 ・・・(1)
【0041】
即ち、変換比演算回路108は、電流側実効値演算装置104で変換され第2記憶装置107に格納されたコモンモード電流の電流実効値と、電圧側実効値演算装置106で変換され第2記憶装置107に格納されたコモンモード電流を注入した時の芯線‐シールド線間の電圧の電圧実効値と、に基づいて、式(2)より変換比を求める。
変換比 = 電圧実効値/電流実効値 ・・・(2)
【0042】
評価対象とする第1の電気貫通部2の不具合が原因でノイズの影響を受けやすくなっている場合、健全な電気貫通部と比較して、変換比が増大する。
これにより、電気貫通部の高周波ノイズに対する健全性を評価することを可能とする。
【0043】
以上、本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sによれば、微弱信号計装系の第1の電気貫通部2に伝搬したコモンモード電流による計測への影響のしやすさ(第2の特性)を評価することができ、外来の電磁ノイズ(高周波ノイズ)に対する感受性を定量的に評価することができる。また、電磁ノイズの影響を含めた電気貫通部の健全性を単独で評価することが可能である。
【0044】
<変形例>
なお、本実施形態に係る原子炉格納容器電気貫通部評価装置Sは、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
本実施形態に係る電気貫通部評価装置Sは、原子炉格納容器1に形成された電気貫通部2を評価するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、密閉容器に形成された微弱信号計装系に係る電気貫通部の評価に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
S 原子炉格納容器電気貫通部評価装置(電気貫通部の評価装置)
1 原子炉格納容器(容器)
2 第1の電気貫通部
2a,2b コネクタ
3 第2の電気貫通部
3a,3b コネクタ
4 接続ケーブル(ケーブル)
5 同軸ケーブル(ケーブル)
6 電流注入器
7 模擬電流発生装置
8 電流測定器
9 信号電圧測定装置
9a ケーブル
10 変換比算出装置
71 入出力インターフェイス
72 第1記憶装置
73 制御装置
74 信号発生器
75 SSR
101 制御装置
102 バンドパスフィルタ
103 電流側A/D変換回路
104 電流側実効値演算装置
105 電圧側A/D変換回路
106 電圧側実効値演算装置
107 第2記憶装置
108 変換比演算回路
109 第3記憶装置
110 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に設置された検出器の微弱な高周波電気信号を前記容器外に導き出すための第1の電気貫通部を評価する電気貫通部の評価装置であって、
前記第1の電気貫通部と該第1の電気貫通部とは異なる第2の電気貫通部とを電気的に接続して閉ループ回路を形成するケーブルと、
模擬電流を発生させる模擬電流発生装置と、
形成された前記閉ループ回路に前記模擬電流をコモンモード電流として注入する電流注入器と、
前記模擬電流注入時のコモンモード電流を電流値として測定する電流測定器と、
前記模擬電流注入時に前記第1の電気貫通部から導き出される微弱な高周波電気信号を電圧値として測定する信号電圧測定装置と、
前記電流測定器で測定される前記電流値と前記信号電圧測定装置で測定される前記電圧値とから変換比を算出する変換比算出装置と、を備える
ことを特徴とする電気貫通部の評価装置。
【請求項2】
容器内に設置された検出器の微弱な高周波電気信号を前記容器外に導き出すための第1の電気貫通部を評価する電気貫通部の評価方法であって、
前記第1の電気貫通部と該第1の電気貫通部とは異なる第2の電気貫通部とを電気的に接続して閉ループ回路を形成するステップと、
形成された前記閉ループ回路に前記模擬電流をコモンモード電流として注入するステップと、
前記模擬電流注入時のコモンモード電流値を測定するステップと、
前記模擬電流注入時に前記第1の電気貫通部から導き出される微弱な高周波電圧を測定するステップと、
前記電流測定器で測定される電流値と信号電圧測定装置で測定される電圧値とから変換比を算出するステップと、を備える
ことを特徴とする電気貫通部の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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