説明

電気部品用ソケット

【課題】コンタクトピン等の形状を変更しなくても、種々の厚さを有する端子に対応可能な電気部品用ソケットを提供する。
【解決手段】配線基板上に配設され、ICパッケージ12が収容されるソケット本体14と、ソケット本体14に配設され、ICパッケージ12の側方に延びる端子12bに電気的に接続されるコンタクトピン20とを有し、ソケット本体14は、配線基板上に配設されるボディ15と、ボディ15に対して上下動自在に配設され、上面16dにICパッケージ12が収容されるシーティングプレート16と、シーティングプレート16を所定の高さに停止させるシャフト17とを備え、コンタクトピン20は、端子12bの下面12cに電気的に接触され、シーティングプレート16に係止される固定側接触部21aを有する固定側弾性片21と、端子12bの上面12dに電気的に接触される可動側接触部22aを有する可動側弾性片22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線基板上に配設され、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品の試験等を行うため、この電気部品を収容する電気部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の「電気部品用ソケット」としては、例えば「電気部品」としてのICパッケージを着脱自在に収容するICソケットがある。
【0003】
このICソケットは、ICパッケージの端子(リード)に電気的に接続されるコンタクトピンがソケット本体に配設された構造を有している。このコンタクトピンとしては、ICパッケージの端子の下面に電気的に接触される固定側接触部を有する固定側弾性片と、ICパッケージの端子の上面に電気的に接触される可動側接触部を有する可動側弾性片とを備えた、いわゆる2ポイントタイプのものが広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のものにあっては、ICパッケージの端子をコンタクトピンの固定側弾性片と可動側弾性片とで挟み込む際に、固定側弾性片がシーティングプレートに係止された状態で、可動側弾性片が端子の斜め上方から端子に向かう円弧状の軌跡に沿って移動するため、同一形状のコンタクトピンでは、厚さの異なる端子を有するICパッケージに対応できないという不都合がある。
【0006】
すなわち、図6に示すように、ICパッケージ12の端子12bの板厚が薄い場合、所定の基準面(例えば、ボディ15の上面15a)に対するICパッケージ12の端子12bの上面12dの高さが設計値に一致するため、この端子12bをコンタクトピン20の固定側弾性片21の固定側接触部21aと可動側弾性片22の可動側接触部22aとで適正に挟み込むことができる。ところが、図7に示すように、ICパッケージ12の端子12bの板厚が厚いと、所定の基準面に対するICパッケージ12の端子12bの上面12dの高さが設計値より高くなる。そのため、可動側弾性片22の可動側接触部22aが端子12bの上面12dではなく側面12eに当たってしまい、端子12bを固定側弾性片21の固定側接触部21aと可動側弾性片22の可動側接触部22aとで挟み込むことができない恐れがある。仮に、可動側弾性片22の可動側接触部22aが端子12bの上面12dに当たったとしても、端子12bとの接圧が大きくなるため、端子12bに損傷を与えたり、端子12bを曲げてしまったりする恐れがある。
【0007】
従って、このような不都合を避けるためには、ICパッケージ12の端子12bの厚さに応じてコンタクトピン20又はシーティングプレート16の形状を変更しなければならず、小規模ロットや納期の短縮に対応できないという課題があった。
【0008】
そこで、この発明は、コンタクトピンやシーティングプレートの形状を変更しなくても、種々の厚さを有する端子に対応することが可能な電気部品用ソケットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を達成するために、この発明は、配線基板上に配設され、電気部品が収容されるソケット本体と、該ソケット本体に配設され、前記電気部品の側方に延びる端子に電気的に接続されるコンタクトピンとを有し、前記ソケット本体は、前記配線基板上に配設されるボディと、該ボディに対して上下動自在に配設され、上面に前記電気部品が収容されるシーティングプレートと、該シーティングプレートを所定の高さに停止させる高さ調整手段とを備え、前記コンタクトピンは、前記端子の下面に電気的に接触され、前記シーティングプレートに係止される固定側接触部を有する固定側弾性片と、前記端子の上面に電気的に接触される可動側接触部を有する可動側弾性片とを備えた電気部品用ソケットとしたことを特徴とする。
【0010】
他の特徴は、前記高さ調整手段は、前記ボディと前記シーティングプレートとの間に挿抜されるシャフトであることにある。
【0011】
他の特徴は、前記高さ調整手段は、前記シーティングプレートの下面の周縁部の複数箇所に均等に配置されていることにある。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ソケット本体が、シーティングプレートを所定の高さに停止させる高さ調整手段とを備えているため、電気部品の端子の厚さに応じてシーティングプレートの高さを適宜調整することにより、この端子の厚薄にかかわらず、所定の基準面に対する端子の上面の高さを設計値に一致させることができる。その結果、コンタクトピンやシーティングプレートの形状を変更しなくても、種々の厚さを有する端子に対応することが可能となる。
【0013】
他の特徴によれば、高さ調整手段が、ボディとシーティングプレートとの間に挿抜されるシャフトであるため、シーティングプレートの高さ調整を簡便に実行することができる。
【0014】
他の特徴によれば、高さ調整手段が、シーティングプレートの下面の周縁部の複数箇所に均等に配置されているため、シーティングプレートの高さ調整をバランスよく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係る電気部品用ソケットの組立斜視図である。
【図2】同実施の形態に係る電気部品用ソケットの分解斜視図である。
【図3】同実施の形態に係る電気部品用ソケットのボディにシャフトが挿入された状態を示す斜視図である。
【図4】同実施の形態に係る電気部品用ソケットに端子の厚いICパッケージが収容された状態を示す断面図である。
【図5】同実施の形態に係る電気部品用ソケットに端子の薄いICパッケージが収容された状態を示す断面図である。
【図6】従来の電気部品用ソケットに端子の薄いICパッケージが収容された状態を示す断面図である。
【図7】従来の電気部品用ソケットに端子の厚いICパッケージが収容された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1乃至図5には、この発明の実施の形態を示す。なお、図1乃至図3ではコンタクトピンの図示を省略しており、さらに、図3ではシーティングプレートの図示を省略している。
【0018】
まず、構成を説明すると、図1中符号11は、「電気部品用ソケット」としてのICソケットで、このICソケット11は、図示省略の配線基板上に配設されるようになっており、「電気部品」であるICパッケージ12(図4,図5参照)等のバーンイン試験等を行うために、このICパッケージ12の端子12bとその配線基板との電気的接続を図るものである。
【0019】
このICパッケージ12は、図4,図5に示すように、平面視で方形状のパッケージ本体12aを有し、このパッケージ本体12aの4つの側面に、多数のクランク形の端子12bが側方に延びるように形成されている。
【0020】
一方、ICソケット11は、図1,図4に示すように、図示省略の配線基板上に配設され、ICパッケージ12が収容されるソケット本体14と、このソケット本体14に配設され、ICパッケージ12の端子12bに電気的に接続される多数のコンタクトピン20とを有している。
【0021】
より詳しくは、そのソケット本体14は、図2乃至図5に示すように、上記配線基板上に配設されるボディ15と、このボディ15に対して上下動自在に配設され、上面16dにICパッケージ12が収容されるシーティングプレート16と、このシーティングプレート16を所定の高さに停止させる「高さ調整手段」としての4本の丸棒状(円柱状)のシャフト17とを備えている。これらのシャフト17は、図3,図5に示すように、シーティングプレート16の下面16cの周縁部の4箇所に均等に配置されている。また、シーティングプレート16の下面16c、つまり、ボディ15の上面15aと対向する面には、図4に示すように、4本のシャフト17を挿入するための4条のシャフト係合溝16aが形成されている。
【0022】
各シャフト17は、図4,図5に示すように、シーティングプレート16の各シャフト係合溝16aに対して挿抜自在に設けられており、図4に示すように、シャフト17がシャフト係合溝16aに挿入されていない状態では、シーティングプレート16の下面16cがボディ15の上面15aに接触してシーティングプレート16の上面16dが最下位P1に位置決めされているのに対して、図3,図5に示すように、シャフト17がシャフト係合溝16aに挿入されると、シーティングプレート16の下面16cがボディ15の上面15aから所定の距離L1だけ浮き上がってシーティングプレート16の上面16dが最上位P2に位置決めされて保持されるように構成されている。
【0023】
また、各コンタクトピン20はそれぞれ、ボディ15に固定される固定部23と、この固定部23から延長され、ICパッケージ12の端子12bの下面12cに電気的に接触され、シーティングプレート16の係止部16bに係止される固定側接触部21aを有する固定側弾性片21と、固定部23から延長され、ICパッケージ12の端子12bの上面12dに電気的に接触される可動側接触部22aを有する可動側弾性片22とを備えている。
【0024】
なお、ソケット本体14には、ICパッケージ12を押圧する図示省略の枠形状の操作部材がスプリングによって上向きに付勢された形で取り付けられている。そして、この操作部材をスプリングの弾性に抗して押し下げると、各コンタクトピン20の操作片24が矢印A方向(図4,図5参照)に移動し、可動側接触部22aが斜め上方へ退避すると共に、この操作部材がスプリングの弾性によって押し上げられると、各コンタクトピン20の操作片24が矢印B方向に移動し、可動側接触部22aが斜め下方へ移動するように構成されている。
【0025】
次に、かかるICソケット11の使用方法について、図2乃至図5を用いて説明する。
【0026】
ICパッケージ12に電流を流してバーンイン試験等を行う際には、それに先立ち、このICパッケージ12の端子12bの厚さに応じて、シーティングプレート16の高さを2段階に調整することにより、所定の基準面(例えば、ボディ15の上面15a)に対するICパッケージ12の端子12bの上面12dの高さを設計値に一致させる。
【0027】
すなわち、ICパッケージ12の端子12bの板厚が薄い場合には、図2,図3,図5に示すように、4本のシャフト17を4条のシャフト係合溝16aに挿入することにより、シーティングプレート16の上面16dを最上位P2に位置決めする。また、ICパッケージ12の端子12bの板厚が厚い場合には、図4に示すように、4本のシャフト17を4条のシャフト係合溝16aから抜き取ることにより、シーティングプレート16の上面16dを最下位P1に位置決めする。
【0028】
このように、シャフト17の挿抜により、ICパッケージ12の端子12bの厚さに応じてシーティングプレート16の高さを適宜調整すれば、この端子12bの厚薄にかかわらず、所定の基準面に対するICパッケージ12の端子12bの上面12dの高さを設計値に一致させることができる。その結果、コンタクトピン20やシーティングプレート16の形状を変更しなくても、2種類の厚さを有するICパッケージ12の端子12bに対応することが可能となる。従って、コンタクトピン20及びシーティングプレート16等の共用化を図ることができ、小規模ロットや納期の短縮に十分対応することが可能となる。
【0029】
しかも、ボディ15とシーティングプレート16との間にシャフト17を挿抜するだけでシーティングプレート16を上下動させることができるので、シーティングプレート16の高さ調整を簡便に実行することができる。
【0030】
また、シャフト17は、上述したとおり、シーティングプレート16の下面16cの周縁部の4箇所に均等に配置されているため、シーティングプレート16の高さ調整をバランスよく実行することができる。従って、シャフト17の挿入によってシーティングプレート16が傾き、バーンイン試験等の実施に支障を来す事態の発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、高さ調整手段として丸棒状のシャフト17を用い、このシャフト17を挿抜してシーティングプレート16を2段階で上下動させる場合について説明したが、シーティングプレート16を上下動させる方法は他にも種々考えられる。例えば、高さ調整手段として所定形状のカムシャフトを用い、このカムシャフトを回転させてシーティングプレート16を複数段階(例えば、3段階)で上下動させることもできる。また、ボディ15及びシーティングプレート16を互いに離反する方向に付勢し、ボディ15の中央部にナットを圧入すると共に、シーティングプレート16にボルトを遊挿し、ナットに対してボルトを締めたり緩めたりすることにより、シーティングプレート16を無段階で上下動させることも可能である。
【0032】
また、上記実施の形態では、「電気部品用ソケット」としてICソケット11にこの発明を適用したが、これに限らず、他の装置にも適用できることは勿論である。
【0033】
また、上記実施の形態では、丸棒状のシャフト17を用いる場合について説明したが、角棒状、平板状のシャフト17を代用することも可能である。
【0034】
さらに、上記実施の形態では、ソケット本体14が4本のシャフト17を有しているが、シャフト17の本数は2本以上であれば何本でも構わない。
【符号の説明】
【0035】
11 ICソケット(電気部品用ソケット)
12 ICパッケージ(電気部品)
12b 端子
12c 下面
12d 上面
14 ソケット本体
15 ボディ
16 シーティングプレート
16c 下面
16d 上面
17 シャフト(高さ調整手段)
20 コンタクトピン
21 固定側弾性片
21a 固定側接触部
22 可動側弾性片
22a 可動側接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板上に配設され、電気部品が収容されるソケット本体と、
該ソケット本体に配設され、前記電気部品の側方に延びる端子に電気的に接続されるコンタクトピンとを有し、
前記ソケット本体は、前記配線基板上に配設されるボディと、該ボディに対して上下動自在に配設され、上面に前記電気部品が収容されるシーティングプレートと、該シーティングプレートを所定の高さに停止させる高さ調整手段とを備え、
前記コンタクトピンは、前記端子の下面に電気的に接触され、前記シーティングプレートに係止される固定側接触部を有する固定側弾性片と、前記端子の上面に電気的に接触される可動側接触部を有する可動側弾性片とを備えたことを特徴とする電気部品用ソケット。
【請求項2】
前記高さ調整手段は、前記ボディと前記シーティングプレートとの間に挿抜されるシャフトであることを特徴とする請求項1に記載の電気部品用ソケット。
【請求項3】
前記高さ調整手段は、前記シーティングプレートの下面の周縁部の複数箇所に均等に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−204282(P2012−204282A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70127(P2011−70127)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】