電気集塵機の極室内検査装置
【課題】点検者が出入りすることが困難な集塵極とその内部に設置された放電極を取り外すことなく、かつ足場を掛けることない状態で、点検者が、安全に安価な検査を行うことが出来、かつ容易に可視化することにより的確な検査を行うこと。
【解決手段】ベースフレーム91は、対向する一対のフレーム92a,92bと、それら一対のフレーム92a,92bの各々と係合する接続フレーム93と、を備える。ベースフレーム91は、電極ロッド24又は放電線25を360度未満の角度で囲むように形成されている。撮像装置71は、光軸方向が電極ロッド24(図2参照)又は放電線25に向かう方向となるように、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bの側面において、内側に向かって配置されている。
【解決手段】ベースフレーム91は、対向する一対のフレーム92a,92bと、それら一対のフレーム92a,92bの各々と係合する接続フレーム93と、を備える。ベースフレーム91は、電極ロッド24又は放電線25を360度未満の角度で囲むように形成されている。撮像装置71は、光軸方向が電極ロッド24(図2参照)又は放電線25に向かう方向となるように、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bの側面において、内側に向かって配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵機の極室内の点検を容易に可視化することで、電気集塵機の適切な保守を可能にする、電気集塵機の極室内検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機は、滑らかな集塵極と放電極とを備えている(例えば特許文献1参照)。
電気集塵機において、集塵極が接地され、放電極に負の高電圧が印加されると、放電極から旺盛なコロナ放電が発生し、電気集塵機内の空間は負イオンと電子によって満たされる。この状態で、電気集塵機内の空間をミストやダスト等の微粒子を含んだガスが通過すると、ガス中の微粒子は負に帯電し、静電凝集作用を伴いながら、クーロン力によって集塵極に向かって移動し、集塵極上に付着され、集塵される。
【0003】
また、電気集塵機の集塵効率を向上させるため、複数の筒を集塵極として繰り返し配置したものが広く用いられている。このような集塵極として、従来、筒の開口部が円状の円筒型集塵極や、筒の開口部が四角形状の角筒型電気集塵機が存在する。
【0004】
一方、電気集塵機の放電極は、金属線材を使用したものが多く用いられており、その他、パイプ形状のもの、またこの2種類が混在する電気集塵機も多数存在する。
【0005】
このような電気集塵機では、集塵極と放電極の状態を維持しなければ、集塵効率が悪化するので、定期的に保守のための維持管理が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−119889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような電気集塵機に設置されている集塵極と放電極の間隔は狭く、広い場合においても集塵極と放電極の間隔は250mm程度である。一方で、集塵極として使用される筒の長手方向の長さは多くのものが4m以上である。
このため、集塵極と放電極を点検する場合、集塵極と放電極の間隔は狭いにもかかわらず集塵極の筒の長手方向は長い(深い)ため、放電極を設置した状態で、電気集塵機の内部に点検者が入っての目視点検は実質的に不可能である。
【0008】
したがって、電気集塵機を点検する場合には、放電極を上方又は下方に取り外し、集塵極及び放電極それぞれを点検する必要があるが、放電極は、非常に狭い空間に設置されているため、放電極の取り外しは、非常に狭い場所で行わなければならず非常に困難な作業となる。
また、集塵極は、それぞれの筒を取り外すことが出来る構造ではないものが大半であり、筒の長手方向が垂直方向となるよう配置された集塵極の高さは非常に高く、人が電気集塵機の内部に入り点検を行うことは非常に危険な作業となる。
このため、通常の点検では、点検者は、目視できる一部分のみを観察し、全体の状態を推察し、全体の状況を判定している。
しかしながら、一部分のみを目視する観察では、全体の状態を点検者が正確に判断できず、目視できない部分の劣化に伴う効率の低下をおこすことにつながる虞がある。
また、電気集塵機の内部に入り全体を点検する場合には、点検者が内部に入るために足場を掛ける必要があるため、足場の設置等のための費用がかかるという問題点がある。また、粉塵が付着した集塵極を点検者が直接目視により点検する環境は過酷かつ危険な作業であるという欠点があった。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、点検者が出入りすることが困難な集塵極とその内部に設置された放電極を取り外すことなく、かつ足場を掛けることない状態で、点検者が、安全に安価な検査を行うことが出来、かつ集塵極内部を容易に可視化することにより的確な検査を行うことが出来るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面の極室内検査装置は、
複数の極室により構成された集塵極と、前記極室の内部を略垂直方向に貫通するように配設された放電極と、を備える電気集塵機の前記極室の内部を検査する極室内検査装置であって、
前記極室の内部を略垂直方向に沿って移動可能に配置され、前記放電極を360度未満の角度で囲むように形成されたベースフレームと、
光軸方向が前記放電極に向かう方向となるように、前記ベースフレームの側面に配置された、少なくとも1つの撮像装置と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一側面の極室内検査装置は、
前記ベースフレームは、対向する一対のフレームを有し、
前記撮像装置は、前記一対のフレームのうち少なくとも一方のフレームに配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一側面の極室内検査装置においては、
前記撮像装置が配置されているフレームの側面において、前記撮像装置を中心として配置された少なくとも一対の照明装置を、
さらに備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一側面の極室内検査装置においては、
前記撮像装置は、前記一対のフレームの両方に配置され、
前記少なくとも一対の照明装置は、前記一対のフレームの両方に配置される、
ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一側面の極室内検査装置においては、
前記集塵極を構成する前記極室の開口部の形状がN角形(Nは3以上の整数値)の角筒である
ことを特徴とする極室内検査装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、点検者が出入りすることが困難な集塵極とその内部に設置された放電極を取り外すことなく、かつ足場を掛けることない状態で、点検者が、安全に安価な検査を行うことが出来、かつ集塵極内部を容易に可視化することにより的確な検査を行うことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る極室内検査装置の検査対象となる湿式電気集塵機の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の湿式電気集塵機の筺体内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1の湿式電気集塵機の筺体内部の概略構成を示す上面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る極室内検査装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る検査装置本体の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る検査装置本体の側面図及び俯瞰図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る極室内検査装置が適用される湿式電気集塵機の概略構成を示す斜視図である。
【図8】開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極に極室内検査装置を適用した俯瞰図である。
【図9】図8の拡大図である。
【図10】図8の斜視図である。
【図11】開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極に極室内検査装置を適用した俯瞰図である。
【図12】図11の拡大図である。
【図13】図11の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る極室内検査装置の検査対象となる湿式電気集塵機1の概略構成を示す断面図である。
具体的には、図1(A)及び図1(B)は、湿式電気集塵機1の外観の概略構成を示す断面図であり、相互に略垂直の別々の方向からみた断面図である。
【0018】
湿式電気集塵機1には、上部ケーシング11と、集塵極22と、下部ケーシング13と、架構14と、が設けられている。
上部ケーシング11と、集塵極22と、下部ケーシング13とが上方からその順番で組み合わされることによって、湿式電気集塵機1の筺体が構成される。湿式電気集塵機1の筺体は、架構14により、地上から所定距離だけ上方に離間して固定されている。湿式電気集塵機1の筺体の材質は、本実施形態では導電性のFRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)が採用されている。
【0019】
図2は、湿式電気集塵機1の筺体内部の概略構成を示す斜視図である。
図3は、湿式電気集塵機1の筺体内部の概略構成を示す上面図である。
【0020】
図2や図3に示すように、湿式電気集塵機1の筺体内部には、上部グリッド21と、集塵極22と、下部グリッド23と、電極ロッド24と、放電線25と、ウェイト26と、上向きスプレーノズル27と、洗浄用配管28と、が設けられている。
【0021】
上部グリッド21と、集塵極22と、下部グリッド23とは、図2に示すように、上方からその順番で相互に所定距離だけ離間して、水平方向に相互に略平行となるように、配設されている。
【0022】
集塵極22は、図2や図3に示すように、角筒を単位(以下、このような単位を「極室」と呼ぶ)として、複数の極室を繰り返し連続して配置することによって構成される。
具体的には、以下、略水平方向のうち、一方向を「縦方向」と呼び、縦方向に直角な方向を「横方向」と呼ぶ。この場合、縦方向にN個の単位を繰り返し連続して配置させ、横方向にM個の単位を繰り返し連続して配置させること(以下、「N×M」と表現する)によって、集塵極22が構成される。
ここで、NとMとは独立した任意の整数値であり、本実施形態では、図2や図3に示すように、集塵極22の極室の個数はN×M=9×9個とされている。
なお、図2乃至図4において、集塵極22の極室の個数がN×M=3×3個とされているのは、単なる説明の便宜上のためである。換言すると、図2乃至図3においては、説明の便宜上、集塵極22を構成する9×9個の極室のうち、中央の3×3個の極室のみが図示されている。
ここで、集塵極22のように、角筒の集合体として構成される集塵極は、一般的に「角筒型集塵極」と呼ばれており、単位体積当たりの集塵極面積が大きいため、コンパクトな設計が可能になるという特長を有している。
なお、集塵極22の材質は、本実施形態では、導電性のFRPが採用されている。
【0023】
このような集塵極22に対する放電極は、本実施形態では、電極ロッド24及び放電線25により構成されている。
電極ロッド24は、図2に示すように、集塵極22の所定の極室の中央内部を略垂直方向に貫通するように配設され、上端部が上部グリッド21に固定され、下端部が下部グリッド23に固定される。
放電線25は、図2に示すように、上部グリッド21から吊下げられ、集塵極22の所定の極室の中央内部を略垂直方向に貫通するように配設される。放電線25はまた、弛まないだけの張力を持たすように、下部グリッド23の上部に設けられたウェイト26に接続される。
電極ロッド24には、直流高圧発生装置30から負極の直流高電圧Vが直接印加される。一方、放電線25には、直流高圧発生装置30からの負極の直流高電圧Vが、電極ロッド24及び上部グリッド21を介して印加される。
【0024】
上向きスプレーノズル27は、集塵極22の各極室の四隅の上方に配設され、洗浄用配管28に流通している洗浄水を、略垂直上向き方向に微細の霧として噴出する。
ここで、「霧」とは、ミクロンオーダーの直径を有する水滴が、1cm3の空間中に数個乃至数100個程度含まれている状態をいう。本実施形態では、洗浄水が、直径が約200〜800ミクロンの水滴として、上向きスプレーノズル27から略垂直上向き方向に噴出される。
集塵極22の各極室の四隅の上方に配設された上向きスプレーノズル27の各々から噴出された霧は、集塵極22の各極室の側面全体を覆う水膜となる。即ち、上向きスプレーノズル27から霧として噴出された洗浄水によって、集塵極22の各極室の側面には濡れ壁が形成される。これにより、集塵極22に付着したミストやダスト等の微粒子の成長を防止すると共に、これらの微粒子を従来よりも確実に洗浄除去することが可能になる。
【0025】
なお、図1に示すように、従来の湿式電気集塵機と同様に、集塵極22の上端部から所定距離だけ離間した上方の所定位置に、下向きスプレーノズル29を設けるようにしてもよい。
【0026】
次に、以上の湿式電気集塵機1に使用される極室内検査装置41の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る極室内検査装置41のハードウェアの構成を示すブロック図である。
極室内検査装置41は、昇降装置51と、検査装置本体52と、モニタ・照明制御装置53と、電源装置54と、を備える。
昇降装置51は、昇降用ウインチ61を備える。昇降用ウインチ61は、モニタ・照明制御装置53からの指示に基づき検査装置本体52を上下方向に駆動する。昇降装置51を使用した検査装置本体52の移動については、後述の図7を参照して詳細に説明する。
【0027】
検査装置本体52は、撮像装置71と、複数の照明装置72〜75と、を備え、検査装置本体52を構成するベースフレーム91(後述の図5参照)に取り付けられる。
撮像装置71は、光学レンズ部(図示せず)と、イメージセンサ(図示せず)と、を備え、光学レンズ部から入射された被写体像をイメージセンサから撮像データとして出力してモニタ・照明制御装置53に供給する。
複数の照明装置72〜75は、LED(Light Emitting Diode)を含むように構成され、後述の照明点灯スイッチ82を介して電源装置54からの電力の供給を受けている。なお、本実施形態においては、照明装置72〜75は、LEDを含むように構成されているがこれに限られるものではなく、白熱電球、蛍光灯等所定の照度を得られる照明器具であれば特に限定されない。また、本実施形態においては、照明装置72は4つずつ取り付けられているがこれに限られるものではなく、2つでもよく、また、1以上の任意の数であってもよい。
【0028】
モニタ・照明制御装置53は、モニタ装置81と、照明点灯スイッチ82と、記録端子83と、を備える。
モニタ装置81は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、撮像装置71から供給された撮像データにより表わされる撮像画像を、逐次表示する。
照明点灯スイッチ82は、電源装置54から供給される電力を照明装置72〜75に供給するように、各照明装置72〜75に接続され、ユーザの切り替え操作により、各照明装置72〜75を個別に点灯及び消灯することができる。
記録端子83は、モニタ装置81に接続され、モニタ装置81に表示対象となっている撮像データの内容を記録媒体に記録するためのインターフェースとして機能する。
【0029】
電源装置54は、昇降装置51、検査装置本体52及びモニタ・照明制御装置53に電力を供給する。
【0030】
次に、以上の極室内検査装置41のうち検査装置本体52についてさらに詳しく説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る検査装置本体52の斜視図である。
【0031】
検査装置本体52は、ベースフレーム91を備える。
ベースフレーム91は、対向する一対のフレーム92a,92bと、それら一対のフレーム92a,92bの各々と係合する接続フレーム93と、を備える。
フレーム92a,92b及び接続フレーム93はそれぞれ略同寸法に形成された四角形の平板状に形成されている。
具体的には、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bは、接続フレーム93の対向する辺に接続され、互いに略平行となるように配設されている。これにより、各フレーム92a,92bと、接続フレーム93とで放電極である電極ロッド24(図2参照)又は放電線25(図2参照)を囲むようにコ字状のベースフレーム91を構成している。
このフレーム92a,92b及び接続フレーム93の寸法は、集塵極22(図2又は図3参照)を構成する極室の寸法よりも小さい寸法に形成されている。
なお、ベースフレーム91は、特に図5の例に限定されず、電極ロッド24(図2参照)又は放電線25(図2参照)を360度未満の角度で囲む(閉曲線にならないという意)ように形成されていれば足りる。
【0032】
撮像装置71及び照明装置72〜75は、各フレーム92a,92bの互いに対向している面に設置されている。
具体的には、撮像装置71は、光軸方向が電極ロッド24(図2参照)又は放電線25(図2参照)に向かう方向となるように、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bの側面において、内側に向かって配置されている。
また、照明装置72〜75は、撮像装置71の光学レンズ部の光軸方向と略同一の方向を照らすように、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bの側面において、内側に向かって配置されている。
ここで、各フレーム92a,92bに設置されている構成のうち、フレーム92aに設置されている構成については、便宜上符号に“a”を付し、フレーム92bに設置されている構成については、便宜上符号に“b”を付して説明する。
なお、ここでは、フレーム92aに設置された構成についてのみ説明するが、フレーム92bに設置されている構成はフレーム92aと同様の構成で配置されているため、特に構成に差異がない場合には、ここでは説明を省略する。
【0033】
図6は、本発明の一実施形態に係る検査装置本体52の側面図及び俯瞰図である。
図6(1)は、検査装置本体52の側面図(フレーム92a側)を示し、図6(2)は、検査装置本体52の俯瞰図を示す。
【0034】
図6(1)に示すように、フレーム92aの略中心位置には、撮像装置71aが配置されている。そして、撮像装置71aを中心として、撮像装置71aの上下方向には、一対の照明装置72a,73aが配置され、撮像装置71aの左右方向には、一対の照明装置72a,74aがそれぞれ配置されている。
【0035】
ベースフレーム91を構成するフレーム92aには、極室の内部を略垂直方向に移動可能にする緩衝装置付きサポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが配置されている。
図6(1)に示すように、サポートローラ101a,102a,103a,104aは、フレーム92aの幅方向の端部において、幅方向に突出して形成されている。
フレーム92aの対向する位置に配置されたサポートローラ101a,102aの各先端間の距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、サポートローラ103a,104aの各先端間の距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
また、図6(2)に示すように、サポートローラ105a,106aは、フレーム92aの外側端部において、外側方向に突出して形成されている。フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ105aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ105bの先端との距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ106aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ106bの先端との距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
これにより、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aは、集塵極22を構成する極室の内部にベースフレーム91が直接接触するのを抑止することができ、かつ、ベースフレーム91にかかる衝撃を緩和することができる。
また、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが、極室の内部と接触した場合であっても、ローラが回転することにより、検査装置本体52の高さ方向への移動を円滑にすることができる。
【0036】
また、フレーム92aには、フック111a,112aが配置されている。
図6(1)に示すように、フック111a,112aは、フレーム92aの高さ方向の上端部において、上方向に突出して形成されている。
フック111a,112aは、昇降用ウインチ61に接続されたワイヤー122(図7参照)が係止できるように輪状に形成されている。
【0037】
次に、以上の極室内検査装置41の動作について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る極室内検査装置41の検査対象になる湿式電気集塵機1の概略構成を示す斜視図である。
【0038】
初めに、点検者は、湿式電気集塵機1の電極ロッド24が配置されている極室の上部に配置された上部グリッド21に吊下げて滑車121を取り付ける。
次に、点検者は、昇降用ウインチ61から延出されたワイヤー122を滑車121を介して電極ロッド24が挿通されている極室内へ下ろす。この際ワイヤー122は、撮影対象とする電極ロッド24が挿通されている極室に隣接する極室内を通じて、下から挿通し、滑車121を通じて、電極ロッド24が挿通されている極室内へ下ろされるようにする。
そして、点検者は、下ろしたワイヤー122の端部に、検査装置本体52に設けられているフック111a,111b,112a,112bを取り付けて、昇降用ウインチ61と、検査装置本体52とを互いに接続する。
点検者は、モニタ・照明制御装置53を操作して、昇降用ウインチ61を駆動することで、ワイヤー122を巻き上げると、ワイヤー122に取り付けられている検査装置本体52が徐々に持ち上げられ、電極ロッド24が挿通されている極室内の上方に移動される。
また、昇降用ウインチ61が駆動することで、ワイヤー122を繰り出すと、ワイヤー122に取り付けられている検査装置本体52が徐々に下げられ、電極ロッド24が挿通されている極室内の下方に移動される。
この際、点検者は、電極ロッド24を検査装置本体52のベースフレーム91を構成するフレーム92a,92bで挟むように配置することで、各フレーム92a,92bの内側に配置されている撮像装置71a,71bで電極ロッド24を撮影することができる。
【0039】
これにより、本実施形態に係る極室内検査装置41は、点検者が出入りすることが困難な集塵極とその内部に設置された放電極を取り外すことなく、かつ足場を掛けることない状態で、点検者が、安全に安価な検査を行うことができる。また、集塵極と放電極を容易に可視化することができるので電気集塵機の検査を的確、かつ容易に行うことができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、極室内検査装置1が適用される集塵極22を構成する極室は、開口部が四角形の形状を有する筒を極室とする集塵極22に適用する例について説明したがこれに限られない。例えば、図8〜図10に示すように、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aや、図11〜図13に示すように、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用してもよい。
【0041】
図8〜図10により、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aに極室内検査装置1を適用する例について説明する。
図8は、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aに極室内検査装置1を適用した俯瞰図である。
図9は、図8の拡大図である。
図10は、図8の斜視図である。
【0042】
図8〜図10に示すように、フレーム92aの対向する位置に配置されたサポートローラ101aの先端と102aの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、サポートローラ103aの先端と104aの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
また、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ105aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ105bの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ106aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ106bの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
したがって、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aに極室内検査装置1を適用した場合であっても、集塵極22を構成する極室の内部にベースフレーム91が直接接触するのを抑止することができ、かつ、ベースフレーム91にかかる衝撃を緩和することができる。
また、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが回転することにより、検査装置本体52の高さ方向への移動を円滑にすることができる。
【0043】
図11〜図13により、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用する例について説明する。
図11は、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用した俯瞰図である。
図12は、図11の拡大図である。
図13は、図11の斜視図である。
【0044】
図11〜図13に示すように、フレーム92aの対向する位置に配置されたサポートローラ101aの先端と102aの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、サポートローラ103aの先端と104aの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
また、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ105aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ105bの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ106aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ106bの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
したがって、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用した場合であっても、集塵極22を構成する極室の内部にベースフレーム91が直接接触するのを抑止することができ、かつ、ベースフレーム91にかかる衝撃を緩和することができる。
また、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが回転することにより、検査装置本体52の高さ方向への移動を円滑にすることができる。
【0045】
このように、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0046】
例えば、上記実施形態の集塵極22としては、開口部が正方形の形状を有する角筒を極室(単位)とする角筒型集塵極が採用されたが、特にこれに限定されない。
具体的には例えば、角筒型集塵極を構成する各極室の開口部の形状は、正方形である必要は特に無く、N角形(Nは3以上の整数値)であれば足りる。
さらに例えば、開口部が円状等のN角形以外の形状を有する筒を極室として、複数の極室の集合体により構成される集塵極を採用してもよい。
ここで、開口部の形状がN角形の角筒を極室とする角筒型集塵極の場合、複数の極室に囲まれて形成される領域とは、複数の極室の交点、即ち、各極室のN個の角の各々を意味する。
【符号の説明】
【0047】
1 湿式電気集塵機, 21 上部グリッド, 22 集塵極, 23 下部グリッド, 24 電極ロッド, 25 放電線, 41 極室内検査装置, 51 昇降装置, 52 検査装置本体, 53 モニタ・証明制御装置, 54 電源装置, 61 昇降用ウインチ, 71 撮像装置, 72、73、74、75 照明装置, 81 モニタ装置, 82 照明点灯スイッチ, 83 記録端子, 91 ベースフレーム, 92a、92b フレーム, 93 係合フレーム, 101a,102a,103a,104a,105a,106a サポートローラ, 111a,112a フック, 121 滑車, 122 ワイヤー
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵機の極室内の点検を容易に可視化することで、電気集塵機の適切な保守を可能にする、電気集塵機の極室内検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機は、滑らかな集塵極と放電極とを備えている(例えば特許文献1参照)。
電気集塵機において、集塵極が接地され、放電極に負の高電圧が印加されると、放電極から旺盛なコロナ放電が発生し、電気集塵機内の空間は負イオンと電子によって満たされる。この状態で、電気集塵機内の空間をミストやダスト等の微粒子を含んだガスが通過すると、ガス中の微粒子は負に帯電し、静電凝集作用を伴いながら、クーロン力によって集塵極に向かって移動し、集塵極上に付着され、集塵される。
【0003】
また、電気集塵機の集塵効率を向上させるため、複数の筒を集塵極として繰り返し配置したものが広く用いられている。このような集塵極として、従来、筒の開口部が円状の円筒型集塵極や、筒の開口部が四角形状の角筒型電気集塵機が存在する。
【0004】
一方、電気集塵機の放電極は、金属線材を使用したものが多く用いられており、その他、パイプ形状のもの、またこの2種類が混在する電気集塵機も多数存在する。
【0005】
このような電気集塵機では、集塵極と放電極の状態を維持しなければ、集塵効率が悪化するので、定期的に保守のための維持管理が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−119889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような電気集塵機に設置されている集塵極と放電極の間隔は狭く、広い場合においても集塵極と放電極の間隔は250mm程度である。一方で、集塵極として使用される筒の長手方向の長さは多くのものが4m以上である。
このため、集塵極と放電極を点検する場合、集塵極と放電極の間隔は狭いにもかかわらず集塵極の筒の長手方向は長い(深い)ため、放電極を設置した状態で、電気集塵機の内部に点検者が入っての目視点検は実質的に不可能である。
【0008】
したがって、電気集塵機を点検する場合には、放電極を上方又は下方に取り外し、集塵極及び放電極それぞれを点検する必要があるが、放電極は、非常に狭い空間に設置されているため、放電極の取り外しは、非常に狭い場所で行わなければならず非常に困難な作業となる。
また、集塵極は、それぞれの筒を取り外すことが出来る構造ではないものが大半であり、筒の長手方向が垂直方向となるよう配置された集塵極の高さは非常に高く、人が電気集塵機の内部に入り点検を行うことは非常に危険な作業となる。
このため、通常の点検では、点検者は、目視できる一部分のみを観察し、全体の状態を推察し、全体の状況を判定している。
しかしながら、一部分のみを目視する観察では、全体の状態を点検者が正確に判断できず、目視できない部分の劣化に伴う効率の低下をおこすことにつながる虞がある。
また、電気集塵機の内部に入り全体を点検する場合には、点検者が内部に入るために足場を掛ける必要があるため、足場の設置等のための費用がかかるという問題点がある。また、粉塵が付着した集塵極を点検者が直接目視により点検する環境は過酷かつ危険な作業であるという欠点があった。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、点検者が出入りすることが困難な集塵極とその内部に設置された放電極を取り外すことなく、かつ足場を掛けることない状態で、点検者が、安全に安価な検査を行うことが出来、かつ集塵極内部を容易に可視化することにより的確な検査を行うことが出来るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面の極室内検査装置は、
複数の極室により構成された集塵極と、前記極室の内部を略垂直方向に貫通するように配設された放電極と、を備える電気集塵機の前記極室の内部を検査する極室内検査装置であって、
前記極室の内部を略垂直方向に沿って移動可能に配置され、前記放電極を360度未満の角度で囲むように形成されたベースフレームと、
光軸方向が前記放電極に向かう方向となるように、前記ベースフレームの側面に配置された、少なくとも1つの撮像装置と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一側面の極室内検査装置は、
前記ベースフレームは、対向する一対のフレームを有し、
前記撮像装置は、前記一対のフレームのうち少なくとも一方のフレームに配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一側面の極室内検査装置においては、
前記撮像装置が配置されているフレームの側面において、前記撮像装置を中心として配置された少なくとも一対の照明装置を、
さらに備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一側面の極室内検査装置においては、
前記撮像装置は、前記一対のフレームの両方に配置され、
前記少なくとも一対の照明装置は、前記一対のフレームの両方に配置される、
ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一側面の極室内検査装置においては、
前記集塵極を構成する前記極室の開口部の形状がN角形(Nは3以上の整数値)の角筒である
ことを特徴とする極室内検査装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、点検者が出入りすることが困難な集塵極とその内部に設置された放電極を取り外すことなく、かつ足場を掛けることない状態で、点検者が、安全に安価な検査を行うことが出来、かつ集塵極内部を容易に可視化することにより的確な検査を行うことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る極室内検査装置の検査対象となる湿式電気集塵機の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の湿式電気集塵機の筺体内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1の湿式電気集塵機の筺体内部の概略構成を示す上面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る極室内検査装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る検査装置本体の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る検査装置本体の側面図及び俯瞰図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る極室内検査装置が適用される湿式電気集塵機の概略構成を示す斜視図である。
【図8】開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極に極室内検査装置を適用した俯瞰図である。
【図9】図8の拡大図である。
【図10】図8の斜視図である。
【図11】開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極に極室内検査装置を適用した俯瞰図である。
【図12】図11の拡大図である。
【図13】図11の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る極室内検査装置の検査対象となる湿式電気集塵機1の概略構成を示す断面図である。
具体的には、図1(A)及び図1(B)は、湿式電気集塵機1の外観の概略構成を示す断面図であり、相互に略垂直の別々の方向からみた断面図である。
【0018】
湿式電気集塵機1には、上部ケーシング11と、集塵極22と、下部ケーシング13と、架構14と、が設けられている。
上部ケーシング11と、集塵極22と、下部ケーシング13とが上方からその順番で組み合わされることによって、湿式電気集塵機1の筺体が構成される。湿式電気集塵機1の筺体は、架構14により、地上から所定距離だけ上方に離間して固定されている。湿式電気集塵機1の筺体の材質は、本実施形態では導電性のFRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)が採用されている。
【0019】
図2は、湿式電気集塵機1の筺体内部の概略構成を示す斜視図である。
図3は、湿式電気集塵機1の筺体内部の概略構成を示す上面図である。
【0020】
図2や図3に示すように、湿式電気集塵機1の筺体内部には、上部グリッド21と、集塵極22と、下部グリッド23と、電極ロッド24と、放電線25と、ウェイト26と、上向きスプレーノズル27と、洗浄用配管28と、が設けられている。
【0021】
上部グリッド21と、集塵極22と、下部グリッド23とは、図2に示すように、上方からその順番で相互に所定距離だけ離間して、水平方向に相互に略平行となるように、配設されている。
【0022】
集塵極22は、図2や図3に示すように、角筒を単位(以下、このような単位を「極室」と呼ぶ)として、複数の極室を繰り返し連続して配置することによって構成される。
具体的には、以下、略水平方向のうち、一方向を「縦方向」と呼び、縦方向に直角な方向を「横方向」と呼ぶ。この場合、縦方向にN個の単位を繰り返し連続して配置させ、横方向にM個の単位を繰り返し連続して配置させること(以下、「N×M」と表現する)によって、集塵極22が構成される。
ここで、NとMとは独立した任意の整数値であり、本実施形態では、図2や図3に示すように、集塵極22の極室の個数はN×M=9×9個とされている。
なお、図2乃至図4において、集塵極22の極室の個数がN×M=3×3個とされているのは、単なる説明の便宜上のためである。換言すると、図2乃至図3においては、説明の便宜上、集塵極22を構成する9×9個の極室のうち、中央の3×3個の極室のみが図示されている。
ここで、集塵極22のように、角筒の集合体として構成される集塵極は、一般的に「角筒型集塵極」と呼ばれており、単位体積当たりの集塵極面積が大きいため、コンパクトな設計が可能になるという特長を有している。
なお、集塵極22の材質は、本実施形態では、導電性のFRPが採用されている。
【0023】
このような集塵極22に対する放電極は、本実施形態では、電極ロッド24及び放電線25により構成されている。
電極ロッド24は、図2に示すように、集塵極22の所定の極室の中央内部を略垂直方向に貫通するように配設され、上端部が上部グリッド21に固定され、下端部が下部グリッド23に固定される。
放電線25は、図2に示すように、上部グリッド21から吊下げられ、集塵極22の所定の極室の中央内部を略垂直方向に貫通するように配設される。放電線25はまた、弛まないだけの張力を持たすように、下部グリッド23の上部に設けられたウェイト26に接続される。
電極ロッド24には、直流高圧発生装置30から負極の直流高電圧Vが直接印加される。一方、放電線25には、直流高圧発生装置30からの負極の直流高電圧Vが、電極ロッド24及び上部グリッド21を介して印加される。
【0024】
上向きスプレーノズル27は、集塵極22の各極室の四隅の上方に配設され、洗浄用配管28に流通している洗浄水を、略垂直上向き方向に微細の霧として噴出する。
ここで、「霧」とは、ミクロンオーダーの直径を有する水滴が、1cm3の空間中に数個乃至数100個程度含まれている状態をいう。本実施形態では、洗浄水が、直径が約200〜800ミクロンの水滴として、上向きスプレーノズル27から略垂直上向き方向に噴出される。
集塵極22の各極室の四隅の上方に配設された上向きスプレーノズル27の各々から噴出された霧は、集塵極22の各極室の側面全体を覆う水膜となる。即ち、上向きスプレーノズル27から霧として噴出された洗浄水によって、集塵極22の各極室の側面には濡れ壁が形成される。これにより、集塵極22に付着したミストやダスト等の微粒子の成長を防止すると共に、これらの微粒子を従来よりも確実に洗浄除去することが可能になる。
【0025】
なお、図1に示すように、従来の湿式電気集塵機と同様に、集塵極22の上端部から所定距離だけ離間した上方の所定位置に、下向きスプレーノズル29を設けるようにしてもよい。
【0026】
次に、以上の湿式電気集塵機1に使用される極室内検査装置41の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る極室内検査装置41のハードウェアの構成を示すブロック図である。
極室内検査装置41は、昇降装置51と、検査装置本体52と、モニタ・照明制御装置53と、電源装置54と、を備える。
昇降装置51は、昇降用ウインチ61を備える。昇降用ウインチ61は、モニタ・照明制御装置53からの指示に基づき検査装置本体52を上下方向に駆動する。昇降装置51を使用した検査装置本体52の移動については、後述の図7を参照して詳細に説明する。
【0027】
検査装置本体52は、撮像装置71と、複数の照明装置72〜75と、を備え、検査装置本体52を構成するベースフレーム91(後述の図5参照)に取り付けられる。
撮像装置71は、光学レンズ部(図示せず)と、イメージセンサ(図示せず)と、を備え、光学レンズ部から入射された被写体像をイメージセンサから撮像データとして出力してモニタ・照明制御装置53に供給する。
複数の照明装置72〜75は、LED(Light Emitting Diode)を含むように構成され、後述の照明点灯スイッチ82を介して電源装置54からの電力の供給を受けている。なお、本実施形態においては、照明装置72〜75は、LEDを含むように構成されているがこれに限られるものではなく、白熱電球、蛍光灯等所定の照度を得られる照明器具であれば特に限定されない。また、本実施形態においては、照明装置72は4つずつ取り付けられているがこれに限られるものではなく、2つでもよく、また、1以上の任意の数であってもよい。
【0028】
モニタ・照明制御装置53は、モニタ装置81と、照明点灯スイッチ82と、記録端子83と、を備える。
モニタ装置81は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、撮像装置71から供給された撮像データにより表わされる撮像画像を、逐次表示する。
照明点灯スイッチ82は、電源装置54から供給される電力を照明装置72〜75に供給するように、各照明装置72〜75に接続され、ユーザの切り替え操作により、各照明装置72〜75を個別に点灯及び消灯することができる。
記録端子83は、モニタ装置81に接続され、モニタ装置81に表示対象となっている撮像データの内容を記録媒体に記録するためのインターフェースとして機能する。
【0029】
電源装置54は、昇降装置51、検査装置本体52及びモニタ・照明制御装置53に電力を供給する。
【0030】
次に、以上の極室内検査装置41のうち検査装置本体52についてさらに詳しく説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る検査装置本体52の斜視図である。
【0031】
検査装置本体52は、ベースフレーム91を備える。
ベースフレーム91は、対向する一対のフレーム92a,92bと、それら一対のフレーム92a,92bの各々と係合する接続フレーム93と、を備える。
フレーム92a,92b及び接続フレーム93はそれぞれ略同寸法に形成された四角形の平板状に形成されている。
具体的には、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bは、接続フレーム93の対向する辺に接続され、互いに略平行となるように配設されている。これにより、各フレーム92a,92bと、接続フレーム93とで放電極である電極ロッド24(図2参照)又は放電線25(図2参照)を囲むようにコ字状のベースフレーム91を構成している。
このフレーム92a,92b及び接続フレーム93の寸法は、集塵極22(図2又は図3参照)を構成する極室の寸法よりも小さい寸法に形成されている。
なお、ベースフレーム91は、特に図5の例に限定されず、電極ロッド24(図2参照)又は放電線25(図2参照)を360度未満の角度で囲む(閉曲線にならないという意)ように形成されていれば足りる。
【0032】
撮像装置71及び照明装置72〜75は、各フレーム92a,92bの互いに対向している面に設置されている。
具体的には、撮像装置71は、光軸方向が電極ロッド24(図2参照)又は放電線25(図2参照)に向かう方向となるように、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bの側面において、内側に向かって配置されている。
また、照明装置72〜75は、撮像装置71の光学レンズ部の光軸方向と略同一の方向を照らすように、ベースフレーム91を構成する各フレーム92a,92bの側面において、内側に向かって配置されている。
ここで、各フレーム92a,92bに設置されている構成のうち、フレーム92aに設置されている構成については、便宜上符号に“a”を付し、フレーム92bに設置されている構成については、便宜上符号に“b”を付して説明する。
なお、ここでは、フレーム92aに設置された構成についてのみ説明するが、フレーム92bに設置されている構成はフレーム92aと同様の構成で配置されているため、特に構成に差異がない場合には、ここでは説明を省略する。
【0033】
図6は、本発明の一実施形態に係る検査装置本体52の側面図及び俯瞰図である。
図6(1)は、検査装置本体52の側面図(フレーム92a側)を示し、図6(2)は、検査装置本体52の俯瞰図を示す。
【0034】
図6(1)に示すように、フレーム92aの略中心位置には、撮像装置71aが配置されている。そして、撮像装置71aを中心として、撮像装置71aの上下方向には、一対の照明装置72a,73aが配置され、撮像装置71aの左右方向には、一対の照明装置72a,74aがそれぞれ配置されている。
【0035】
ベースフレーム91を構成するフレーム92aには、極室の内部を略垂直方向に移動可能にする緩衝装置付きサポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが配置されている。
図6(1)に示すように、サポートローラ101a,102a,103a,104aは、フレーム92aの幅方向の端部において、幅方向に突出して形成されている。
フレーム92aの対向する位置に配置されたサポートローラ101a,102aの各先端間の距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、サポートローラ103a,104aの各先端間の距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
また、図6(2)に示すように、サポートローラ105a,106aは、フレーム92aの外側端部において、外側方向に突出して形成されている。フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ105aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ105bの先端との距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ106aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ106bの先端との距離は、集塵極22を構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
これにより、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aは、集塵極22を構成する極室の内部にベースフレーム91が直接接触するのを抑止することができ、かつ、ベースフレーム91にかかる衝撃を緩和することができる。
また、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが、極室の内部と接触した場合であっても、ローラが回転することにより、検査装置本体52の高さ方向への移動を円滑にすることができる。
【0036】
また、フレーム92aには、フック111a,112aが配置されている。
図6(1)に示すように、フック111a,112aは、フレーム92aの高さ方向の上端部において、上方向に突出して形成されている。
フック111a,112aは、昇降用ウインチ61に接続されたワイヤー122(図7参照)が係止できるように輪状に形成されている。
【0037】
次に、以上の極室内検査装置41の動作について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る極室内検査装置41の検査対象になる湿式電気集塵機1の概略構成を示す斜視図である。
【0038】
初めに、点検者は、湿式電気集塵機1の電極ロッド24が配置されている極室の上部に配置された上部グリッド21に吊下げて滑車121を取り付ける。
次に、点検者は、昇降用ウインチ61から延出されたワイヤー122を滑車121を介して電極ロッド24が挿通されている極室内へ下ろす。この際ワイヤー122は、撮影対象とする電極ロッド24が挿通されている極室に隣接する極室内を通じて、下から挿通し、滑車121を通じて、電極ロッド24が挿通されている極室内へ下ろされるようにする。
そして、点検者は、下ろしたワイヤー122の端部に、検査装置本体52に設けられているフック111a,111b,112a,112bを取り付けて、昇降用ウインチ61と、検査装置本体52とを互いに接続する。
点検者は、モニタ・照明制御装置53を操作して、昇降用ウインチ61を駆動することで、ワイヤー122を巻き上げると、ワイヤー122に取り付けられている検査装置本体52が徐々に持ち上げられ、電極ロッド24が挿通されている極室内の上方に移動される。
また、昇降用ウインチ61が駆動することで、ワイヤー122を繰り出すと、ワイヤー122に取り付けられている検査装置本体52が徐々に下げられ、電極ロッド24が挿通されている極室内の下方に移動される。
この際、点検者は、電極ロッド24を検査装置本体52のベースフレーム91を構成するフレーム92a,92bで挟むように配置することで、各フレーム92a,92bの内側に配置されている撮像装置71a,71bで電極ロッド24を撮影することができる。
【0039】
これにより、本実施形態に係る極室内検査装置41は、点検者が出入りすることが困難な集塵極とその内部に設置された放電極を取り外すことなく、かつ足場を掛けることない状態で、点検者が、安全に安価な検査を行うことができる。また、集塵極と放電極を容易に可視化することができるので電気集塵機の検査を的確、かつ容易に行うことができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、極室内検査装置1が適用される集塵極22を構成する極室は、開口部が四角形の形状を有する筒を極室とする集塵極22に適用する例について説明したがこれに限られない。例えば、図8〜図10に示すように、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aや、図11〜図13に示すように、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用してもよい。
【0041】
図8〜図10により、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aに極室内検査装置1を適用する例について説明する。
図8は、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aに極室内検査装置1を適用した俯瞰図である。
図9は、図8の拡大図である。
図10は、図8の斜視図である。
【0042】
図8〜図10に示すように、フレーム92aの対向する位置に配置されたサポートローラ101aの先端と102aの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、サポートローラ103aの先端と104aの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
また、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ105aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ105bの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ106aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ106bの先端との距離は、集塵極22aを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
したがって、開口部が丸の形状を有する筒を極室とする集塵極22aに極室内検査装置1を適用した場合であっても、集塵極22を構成する極室の内部にベースフレーム91が直接接触するのを抑止することができ、かつ、ベースフレーム91にかかる衝撃を緩和することができる。
また、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが回転することにより、検査装置本体52の高さ方向への移動を円滑にすることができる。
【0043】
図11〜図13により、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用する例について説明する。
図11は、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用した俯瞰図である。
図12は、図11の拡大図である。
図13は、図11の斜視図である。
【0044】
図11〜図13に示すように、フレーム92aの対向する位置に配置されたサポートローラ101aの先端と102aの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、サポートローラ103aの先端と104aの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
また、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ105aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ105bの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。同様に、フレーム92aの外側に配置されたサポートローラ106aの先端とフレーム92bの外側に配置されたサポートローラ106bの先端との距離は、集塵極22bを構成する極室の内部の寸法よりも小さい寸法により形成されている。
したがって、開口部が六角形状を有する筒を極室とする集塵極22bに極室内検査装置1を適用した場合であっても、集塵極22を構成する極室の内部にベースフレーム91が直接接触するのを抑止することができ、かつ、ベースフレーム91にかかる衝撃を緩和することができる。
また、サポートローラ101a,102a,103a,104a,105a,106aが回転することにより、検査装置本体52の高さ方向への移動を円滑にすることができる。
【0045】
このように、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0046】
例えば、上記実施形態の集塵極22としては、開口部が正方形の形状を有する角筒を極室(単位)とする角筒型集塵極が採用されたが、特にこれに限定されない。
具体的には例えば、角筒型集塵極を構成する各極室の開口部の形状は、正方形である必要は特に無く、N角形(Nは3以上の整数値)であれば足りる。
さらに例えば、開口部が円状等のN角形以外の形状を有する筒を極室として、複数の極室の集合体により構成される集塵極を採用してもよい。
ここで、開口部の形状がN角形の角筒を極室とする角筒型集塵極の場合、複数の極室に囲まれて形成される領域とは、複数の極室の交点、即ち、各極室のN個の角の各々を意味する。
【符号の説明】
【0047】
1 湿式電気集塵機, 21 上部グリッド, 22 集塵極, 23 下部グリッド, 24 電極ロッド, 25 放電線, 41 極室内検査装置, 51 昇降装置, 52 検査装置本体, 53 モニタ・証明制御装置, 54 電源装置, 61 昇降用ウインチ, 71 撮像装置, 72、73、74、75 照明装置, 81 モニタ装置, 82 照明点灯スイッチ, 83 記録端子, 91 ベースフレーム, 92a、92b フレーム, 93 係合フレーム, 101a,102a,103a,104a,105a,106a サポートローラ, 111a,112a フック, 121 滑車, 122 ワイヤー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の極室により構成された集塵極と、前記極室の内部を略垂直方向に貫通するように配設された放電極と、を備える電気集塵機の前記極室の内部を検査する極室内検査装置であって、
前記極室の内部を略垂直方向に沿って移動可能に配置され、前記放電極を360度未満の角度で囲むように形成されたベースフレームと、
光軸方向が前記放電極に向かう方向となるように、前記ベースフレームの側面に配置された、少なくとも1つの撮像装置と、
を備える極室内検査装置。
【請求項2】
前記ベースフレームは、対向する一対のフレームを有し、
前記撮像装置は、前記一対のフレームのうち少なくとも一方のフレームに配置されている、
請求項1に記載の極室内検査装置。
【請求項3】
前記撮像装置が配置されているフレームの側面において、前記撮像装置を中心として配置された少なくとも一対の照明装置を、
さらに備える請求項2に記載の極室内検査装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、前記一対のフレームの両方に配置され、
前記少なくとも一対の照明装置は、前記一対のフレームの両方に配置される、
請求項3に記載の極室内検査装置。
【請求項5】
前記集塵極を構成する前記極室の開口部の形状がN角形(Nは3以上の整数値)の角筒である
請求項1乃至4の何れか1項に記載の極室内検査装置。
【請求項1】
複数の極室により構成された集塵極と、前記極室の内部を略垂直方向に貫通するように配設された放電極と、を備える電気集塵機の前記極室の内部を検査する極室内検査装置であって、
前記極室の内部を略垂直方向に沿って移動可能に配置され、前記放電極を360度未満の角度で囲むように形成されたベースフレームと、
光軸方向が前記放電極に向かう方向となるように、前記ベースフレームの側面に配置された、少なくとも1つの撮像装置と、
を備える極室内検査装置。
【請求項2】
前記ベースフレームは、対向する一対のフレームを有し、
前記撮像装置は、前記一対のフレームのうち少なくとも一方のフレームに配置されている、
請求項1に記載の極室内検査装置。
【請求項3】
前記撮像装置が配置されているフレームの側面において、前記撮像装置を中心として配置された少なくとも一対の照明装置を、
さらに備える請求項2に記載の極室内検査装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、前記一対のフレームの両方に配置され、
前記少なくとも一対の照明装置は、前記一対のフレームの両方に配置される、
請求項3に記載の極室内検査装置。
【請求項5】
前記集塵極を構成する前記極室の開口部の形状がN角形(Nは3以上の整数値)の角筒である
請求項1乃至4の何れか1項に記載の極室内検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−86026(P2013−86026A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228935(P2011−228935)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(596032177)住友金属鉱山エンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(596032177)住友金属鉱山エンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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