説明

電気集塵機

【課題】埃の多い環境でも絶縁性能を十分に維持でき、集塵性能の低下を防止する。
【解決手段】絶縁材料製の筐体1と、該筐体に自身の放電領域10B外の支持領域10Aが支持された放電線10および対向アース電極50により空気中の微粒子に電荷を与える荷電部100と、筐体に支持された高圧電極60および低圧電極70により電界を生成し、その電界中を帯電した微粒子が通過することにより、静電気力で微粒子を吸着捕集する集塵部200と、を具備した電気集塵機において、放電線の放電領域外の支持領域を支持した筐体上の放電線支持部位(放電線支持部24や放電線給電端子25の周辺)を、筐体とは別個に設けられ、外部からの風の侵入を防ぐ絶縁カバー91、92で覆った。高圧電極の連結バー62に給電部材65を外側から装着し、給電部材の外側に絶縁カバー93を設け、絶縁カバーおよび給電部材を介して高圧電極を筐体により支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電式の電気集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気の流路を形成する絶縁材料製の筐体と、筐体の内部を流れる空気中の微粒子(塵埃等)に放電線により電荷を与える荷電部と、荷電部により電荷を与えられた微粒子を高圧電極と低圧電極の間に発生させた静電気力で吸着捕集する集塵部と、を有する静電式の電気集塵機が、例えば、特許文献1などにおいて知られている。
【特許文献1】特許第3688878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の電気集塵機では、高圧電位となる部位とアース電位となる筐体との間の絶縁性能が必ずしも十分でないために、塵埃の多い場所で使用して埃が高圧電位となる部位とアース電位となる部位の間に付着した場合に、埃を介して電流リークが発生し、それが原因で集塵性能の低下を来すという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情を考慮し、埃の多い環境で使用しても、絶縁性能を十分に維持することができ、それにより集塵性能の低下を防止して長寿命化を図ることのできる電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、絶縁材料製の筐体と、該筐体に自身の放電領域外の支持領域が支持された放電線および該放電線に対応して設けられた対向アース電極により空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、前記筐体に支持された高圧電極および低圧電極により電界を生成し、その電界中を前記帯電した微粒子が通過することにより、静電気力で前記微粒子を吸着捕集する集塵部と、を具備した電気集塵機において、前記放電線の放電領域外の支持領域を支持した前記筐体上の放電線支持部位を、前記筐体とは別個に設けられ、外部からの風の侵入を防ぐ絶縁カバーで覆ったことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電気集塵機であって、前記筐体上の前記放電線支持部位とアース電位となる前記筐体上の部位との間の壁面上に、前記両部位間の沿面距離を長くするための凹部または沿面を途切れさせるための孔部を設けると共に、それら凹部または孔部の空気流の流れ方向の手前側に、前記凹部または孔部への空気の流れ込みを回避するためのオーバーハング状の遮蔽壁を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、絶縁材料製の筐体と、該筐体に自身の放電領域外の支持領域が支持された放電線および該放電線に対応して設けられた対向アース電極とにより空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、前記筐体に支持された高圧電極と低圧電極とで電界を生成し、その電界中を前記帯電した微粒子が通過することにより、静電気力で前記微粒子を吸着捕集する集塵部と、を具備した電気集塵機において、前記高圧電極が、一定の間隔で互いに平行に配列された複数の電極板と、これら電極板の配列方向に長く延びて各電極板の端部を連結する連結バーと、を有する樹脂の一体成形ブロックとして構成され、前記連結バーに、該連結バーを介して前記各電極板に給電するための給電部材が外側から装着され、前記給電部材に外側から絶縁カバーが装着され、前記絶縁カバーに装着された前記給電部材を介して前記高圧電極が前記筐体に支持されたことを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電気集塵機であって、前記連結バーが一対互いに平行に配され、それら連結バーに前記各電極板の両端がそれぞれ結合されることで、前記電極板と連結バーとが一体化されており、両側の連結バーにそれぞれ前記給電部材が装着され、両給電部材を介して前記電極板に給電することを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載の電気集塵機であって、前記絶縁カバーと前記筐体の接触面の少なくとも一方に、絶縁カバーと筐体の接触面積を減らすためのリブが突設されており、リブの先端に相手側の前記接触面が接触した状態で、前記筐体により前記絶縁カバーを介して前記高圧電極が支持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項3〜5のいずれか1項に記載の電気集塵機であって、前記筐体の内部の不要空間が、前記給電部材の周囲の空間への空気の流れ込みを阻止するスペーサで埋められていることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項3〜6のいずれか1項に記載の電気集塵機であって、前記給電部材と前記絶縁カバーとの間には、絶縁性充填材が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、絶縁カバーの働きにより、放電線支持部位に外部からの風を当てないようにすることができるので、埃の多い環境で使用した場合にも、放電線支持部位に埃が付きにくくなる。従って、埃を介しての放電線支持部位からアース電位側への電流リークを防ぐことができ、集塵性能の低下を防止することができて、装置の長寿命化を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、筐体上の放電線支持部位とアース電位となる筐体上の部位との間の壁面上に、両部位間の沿面距離を長くするための凹部または沿面を途切れさせるための孔部を設けたので、高電位側からアース電位側への電流リークを減らすことができる。またそれら凹部や孔部への空気の流れ込みをオーバーハング状の遮蔽壁で防いでいるので、空気流に乗って凹部や孔部に埃が付着し、その埃を介して沿面が短絡して電流リークが発生するのを防ぐことができる。なお、遮蔽壁をオーバーハング状に設けているので、遮蔽壁を介しての沿面距離の短縮の問題は起こらない。
【0014】
請求項3の発明によれば、給電部材を絶縁カバーで覆っているので、埃の多い環境で使用した場合にも、給電部材の周辺に埃が付きにくくなり、それにより、埃を介しての高圧電位側からアース電位側への電流リークを防ぐことができ、集塵性能の低下を防止することができて、装置の長寿命化を図ることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、高圧電極が両側の給電部材を介して筐体に支持されているため、高圧電極と筐体が直接接触することがなく、高圧電極側からアース電位側(筐体側)への直接的な電流リークを防止できて、高圧電極の電圧降下を防ぐことができる。また、各電極板の両側から給電するので、各電極板の端部や中央部位に対してほぼ均一な電圧による給電が可能である。
【0016】
請求項5の発明によれば、筐体と絶縁カバーの接触面にリブがあることで、両者の接触面積を減らすことができるので、高圧電位部品(高圧電極、給電部材、絶縁カバー)からアース電位となる筐体への電流リーク経路を小さく限定することができ、周辺部に埃等の汚れが付着しても、電流リークが発生しにくくなる。
【0017】
請求項6の発明によれば、高圧電極へ給電する給電部材の周辺の空間への空気の流れ込みをスペーサで阻止するようにしているので、給電部材の周辺への埃の付着を防止することができ、埃を介しての電流リークを防ぐことができる。
【0018】
請求項7の発明によれば、給電部材の外面を絶縁性充填材によって隙間なく完全に覆っているので、給電部材の周辺に埃がまったく付かず、それにより、埃を介しての高圧電位側からアース電位側への電流リークを確実に防ぐことができる。又、給電部材を完全に外部から遮蔽することができるため、より絶縁性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態の電気集塵機の分解斜視図、図2は同電気集塵機のカバー類を取り付ける前の組立状態を示す斜視図、図3(a)は図2の状態の電気集塵機の平面図、図3(b)は(a)のIIIb−IIIb矢視断面図、図3(c)は(a)の変形例に係るIIIb−IIIb矢視断面図、図4は図2の状態の電気集塵機の放電線支持部位に絶縁カバーを被せた状態を示す斜視図、図5は組立状態の電気集塵機の横断面図、図6は図5の要部を取り出して示す図、図7はその変形例を示す図、図8(a)、(b)は図6に示されたリブの断面形状の例を示す斜視図である。
【0021】
この電気集塵機は、単独で用いられたり、あるいはエアコンの内部等に装着されて空気を清浄するものである。この電気集塵機は、空気の流路を形成する筐体1を有しており、筐体1は、図1に示すように、メインフレーム2と、メインフレーム2に結合されるサブフレーム3と、サブフレーム3に装着されるアッパカバー4とからなる。これらメインフレーム2、サブフレーム3、アッパカバー4は、それぞれ絶縁性樹脂の成形品により構成されている。本実施形態のアッパカバー4は、電気集塵機単独で用いられるときのものである。
【0022】
この電気集塵機は、このようにメインフレーム2とサブフレーム3とアッパカバー4とで構成される筐体1の空気の流れ方向の上流側に荷電部100を備え付けると共に、その下流側に集塵部200を備え付けたものである。
【0023】
荷電部100は、放電線10と、該放電線10に対応して平行に設けられた対向アース電極50とで構成され、放電線10と対向アース電極50とにより発生させたコロナ放電によって空気中の微粒子に電荷を与える機能を果たす。
【0024】
集塵部200は、高圧電極60と低圧電極70とで構成され、高圧電極60と低圧電極70により電界を生成し、その電界中に前記帯電した微粒子を通過させることにより、静電気力で微粒子をアース電位の低圧電極70に吸着捕集する機能を果たす。この場合、対向アース電極50と低圧電極70は、一体のアース電極80として構成されている。
【0025】
メインフレーム2は、一対の長い縦枠部21と一対の短い横枠部22とからなる矩形枠状をなしており、縦枠部21の外面と横枠部22の外面には、サブフレーム3の係合孔33に嵌まる係合突起23が設けられている。
【0026】
サブフレーム3は、メインフレーム2と同様に、一対の長い縦枠部31と一対の短い横枠部32とからなる矩形枠状をなしており、縦枠部31と横枠部32をそれぞれ構成する壁板には、メインフレーム2の係合突起23に嵌まる係合孔33が設けられている。また、縦枠部31の内面側には、後述する不要空間を埋めるためのスペーサ36が、縦枠部31と一体にまたは別体に取り付けられている。
【0027】
アッパカバー4は、空気の流通する矩形孔41を多数形成した格子板状のもので、サブフレーム3の上端に固定される。
【0028】
図1〜図3に示すように、メインフレーム2の両方の横枠部22の上面には、放電線10を支持するための放電線支持部24が設けられており、これら放電線支持部24に支持を取りながら放電線10を架け渡すことで、1本のワイヤーからなる放電線10が一方と他方の横枠部22の間に張設されている。また、放電線10の両端は、スプリング11を介して共に一方の横枠部22上の放電線支持部24に固定されており、放電線10は、これらのスプリング11によって弛みなく張られている。
【0029】
また、一方の横枠部22上に固定された放電線10の一端は、同横枠部22上の一方の端部に設けられた放電線給電端子25に接続され、この放電線給電端子25から放電線10が外部からの給電を受けるようになっている。
【0030】
また、同じ横枠部22の他方の端部には、図2に示すように、高圧電極60に給電するための高圧給電端子26が設けられ、他方の横枠部22には、アース電極80に接続されるアース端子27が設けられている。
【0031】
図1に示すように、放電線10は、横枠部22上の放電線支持部24に支持された支持領域10Aと、両横枠部22の中間の空気中に張設された放電領域10Bとに区分されている。支持領域10Aは、空気中の微粒子に電荷を与えるのに直接関与しない部分であり、この支持領域10Aが外部に露出していると、埃が付いたりして好ましくない。
【0032】
そこで、図4にも示すように、放電線10の支持領域10Aを支持しているメインフレーム2上の放電線支持部24や放電線10に給電する放電線給電端子25などを含めた横枠部22上の部位(以下、放電線支持部位という)を、筐体1とは別に用意した絶縁カバー91、92により覆って、その部位にできるだけ外からの風が入り込まないようにしている。なお、絶縁カバー91、92は、一方の横枠部22上の高圧給電端子26と他方の横枠部22上のアース端子27は、覆わない大きさに形成されている。
【0033】
また、図3(b)に示すように、メインフレーム2の横枠部22上の放電線支持部位(放電線支持部24の周辺)とアース電位となるメインフレーム2上の部位(アース端子26に近い部位)との間の壁面上には、両部位間の沿面距離を長くするための沿面を途切れさせるための孔部122が設けられると共に、孔部122の空気流の流れ方向(矢印A方向)の手前側に、孔部122への空気の流れ込みを回避するためのオーバーハング状の遮蔽壁123が設けられている。遮蔽壁123の下端より孔部122が上方に位置している。図3(c)に示すように、この実施形態の変形例として、孔部122に代えて凹部122aを設けても良い。
【0034】
また、メインフレーム2には、図1に示すように、縦枠部21の内面に高圧電極60を載置するための段部28、横枠部22の内面にアース電極50を支持するための受部29が設けられている。
【0035】
高圧電極60は、図1に示すように、メインフレーム2の縦枠部21の延びる方向に一定の間隔で互いに平行に配列された複数の電極板61と、これら複数の電極板61の配列方向に長く延びて各電極板61の両端部を連結する連結バー62と、を有する半絶縁製樹脂の一体成形ブロックとして構成され、その上に導電膜が形成されたものであり、メインフレーム2の内部に収容できる大きさに形成されている。
【0036】
連結バー62は電極板61の両側に一対互いに平行に配されており、それら連結バー62に各電極板61の両端がそれぞれ結合されることにより、電極板61と連結バー62とが一体化されている。そして、図5、図6に示すように、両側の連結バー62にそれぞれ全長にわたって給電部材65が装着されている。双方の給電部材65は、高圧給電端子26に電気的に接続され、両給電部材65を介して各電極板61の両側より均一に給電がなされるようになっている。
【0037】
この高圧電極60は、両側の連結バー62が給電部材65を介してメインフレーム2の縦枠部21の内面の段部28の上に載置されることでメインフレーム2に支持されている。なお、連結バー62は、上下両側に鍔部を突出させたハット型の断面形状をなしており、鍔部の前の矩形断面部分に断面コ字状の給電部材65が嵌着されている。つまり、給電部材65を断面コ字状にすると、給電部材65と後述する低圧電極70の電極板71が接近してスパークするおそれがあるが、高圧電極60の連結バー62をハット型にすることで、スパークを防止できるようにしている。
【0038】
このように、給電部材65をコ字状断面に形成し、連結バー62を鍔部を有するハット型断面に形成したことにより、低圧電極70の間隔を広げることなくスパークを防止することができ、不快なパチパチ音を防止することができる。従って、低圧電極70の集塵面積を広くとりながらも、装置の全体サイズをコンパクト化することができる。
【0039】
また、各給電部材65の外側には、該給電部材65とメインフレーム2との間に介在して当該給電部材65を覆う断面コ字状の絶縁カバー93がそれぞれ設けられている。高圧電極60の連結バー62は、給電部材65および絶縁カバー93を介してメインフレーム2の段部28の上に載っている。この状態で、絶縁カバー93は、メインフレーム2の段部28の上面に接触すると共に、メインフレーム2の縦枠部21の内壁面に接触することになる。その場合の接触面積が大きいと、高圧側(給電部材65や高圧電極60など)からアース電位となるメインフレーム2側にリーク電流が流れ易くなる。
【0040】
そこで、図6に拡大して示すように、絶縁カバー93とメインフレーム2の接触面の少なくとも一方に、絶縁カバー93とメインフレーム2の接触面積を減らすためのリブ28a、28bが突設され、リブ28a、28bの先端に相手側の接触面が接触した状態で、メインフレーム2により絶縁カバー93および給電部材65を介して高圧電極60が支持されている。
【0041】
この実施の形態の場合、図8に示すように、リブ28a、28bは、メインフレーム2の接触面側に設けられている。そして、更にリブ28a、28bによる絶縁カバー93に対する接触面積をできるだけ小さくするように、リブ28a、28bの断面が、図8(a)に示すように先端が尖った三角形状、あるいは、図8(b)に示すように半円形状に形成されている。
【0042】
また、図1に示すように、アース電極80は、集塵部200を構成する低圧電極70と、荷電部100を構成する対向アース電極50とを背中合わせで一体的となるように樹脂で成形し、表面にメッキ処理を施して導電体としたものである。なお、最初からアース電極80を導電性樹脂(吸湿性のある導電性樹脂を含む)や、導体すなわち金属で作製してもよい。
【0043】
全体が一体のアース電極80を構成する部分のうち、低圧電極70は、高圧電極60の電極板61の配列方向に沿って同じピッチで多数の電極板71を平行に配列した下半部分であり、対向アース電極50は、下側の低圧電極70と直交する方向に複数の電極板51を一定ピッチで平行に配列した上半部分である。
【0044】
最外側の低圧電極70の電極板71は、アース電極80の端面板81を兼用しており、その端面板81の外面には、アース電極80をメインフレーム2の横枠部22の内面側の受部29に載置するための凸部89が設けられている。また、片方の端面板81には、メインフレーム2上のアース端子27に接続するためのブラケット86(図2等に示す)が設けられている。
【0045】
そして、アース電極80は、端面板81に設けた凸部89をメインフレーム2の受部29に載せ、ブラケット86をアース端子27に接続することで、メインフレーム2に取り付けられている。
【0046】
以上の部品の取り付けは、次の順番で行う。まず、メインフレーム2の中に高圧電極60をセットし、次にアース電極80をセットする。ついで放電線10をセットし、その上で絶縁カバー91、92をセットし、その後、サブフレーム3およびアッパカバー4を取り付ける。以上により、実施の形態の電気集塵機を完成させることができる。
【0047】
このように組み立てた状態において、図3(b)に示すように、高圧電極60の電極板61と低圧電極70の電極板71が一定ピッチで交互に並ぶ。また、図2〜図5に示すように、対向アース電極50の電極板51の中間に放電線10が位置することになる。
【0048】
また、図5に示すように、筐体1の内部の不要空間には、高圧電極60へ給電する給電部材65の周囲の空間への空気の流れ込みを阻止するスペーサ36が埋め込まれている。
【0049】
以上の構成の電気集塵機によれば、メインフレーム2上の放電線支持部24や放電線給電端子25の周辺(放電線支持部位に相当)を絶縁カバー91、92で覆ったので、絶縁カバー91、92の働きにより、放電線支持部位に外部からの風を当てないようにすることができる。従って、埃の多い悪環境で使用した場合にも、放電線支持部位に埃が付きにくくなり、埃を介しての放電線支持部位からアース電位側への電流リークを防ぐことができ、集塵性能の低下を防止することができて、装置の長寿命化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態の電気集塵機によれば、図3(b)に示すように、メインフレーム2上の放電線支持部位(放電線支持部24や放電線給電端子25の周辺)とアース電位となるメインフレーム2上の部位(アース端子26に近い部位)との間の壁面上に、沿面を途切れさせるための孔部122を設けたので、高電位側からアース電位側への電流リークを減らすことができる。また、孔部122への空気の流れ込みをオーバーハング状の遮蔽壁123で防いでいるので、空気流に乗って孔部122に埃が付着し、その埃を介して沿面が短絡して電流リークが発生するのを防ぐことができる。なお、遮蔽壁123をオーバーハング状に設けているので、遮蔽壁123を介しての沿面距離の短縮の問題は起こらない。
【0051】
又、図3(c)に示すように、メインフレーム2上の放電線支持部位(放電線支持部24や放電線給電端子25の周辺)とアース電位となるメインフレーム2上の部位(アース端子26に近い部位)との間の壁面上に、両部位間の沿面距離を長くするための凹部122aを設けた場合にも、高電位側からアース電位側への電流リークを減らすことができる。また、凹部122aへの空気の流れ込みをオーバーハング状の遮蔽壁123で防いでいるので、空気流に乗って凹部122aに埃が付着し、その埃を介して沿面が短絡して電流リークが発生するのを極力防止できる。
【0052】
また、本実施形態の電気集塵機によれば、各給電部材65を絶縁カバー93でそれぞれ覆っているので、埃の多い悪環境で使用した場合にも、給電部材65の周辺に埃が付きにくくなり、それにより、埃を介しての高圧電位側からアース電位側への電流リークを防ぐことができ、集塵性能の低下を防止することができて、装置の長寿命化を図ることができる。
【0053】
また、図5に示すように、高圧電極60が両側の給電部材65を介してメインフレーム2に支持されているので、メインフレーム2と高圧電極60が直接接触することがなくなるため、高圧電極60側からアース電位側(筐体1側)への直接的な電流リークを防止できて、高圧電極60の電極板61の電圧降下を防止できる。又、各電極板61の両側から給電するので、各電極板61の端部や中央部位に対してほぼ均一な電圧による給電が可能である。
【0054】
また、図6に示すように、メインフレーム2と絶縁カバー93の接触面にリブ28a、28bがあることによって、両者の接触面積を減らすことができるので、高圧電位部品(高圧電極60、給電部材65、絶縁カバー93)からアース電位となる筐体1への電流リーク経路を小さく限定することができ、周辺部に埃等の汚れが付着しても、電流リークが発生しにくくなる。
【0055】
また、図5に示すように、高圧電極60へ給電する給電部材65の周辺の空間への空気の流れ込みをスペーサ36で阻止するようにしているので、給電部材65の周辺への埃の付着を防止することができ、埃を介しての電流リークを防ぐことができる。
【0056】
更に、図7に示すように、連結バー62や給電部材65よりもひと回り大きな絶縁カバー94を給電部材65の外側に被せて、給電部材65や連結バー62と絶縁カバー94との間の隙間を絶縁性充填剤95(好ましくは、ウレタン、エポキシ、シリコンなどの樹脂で、特に好ましくはサンユレック株式会社製のサンユレジン・ウレタン配合樹脂UF−705)で充填するようにしても良い。給電部材65の外面を絶縁性充填材95によって隙間なく完全に覆っているので、給電部材65の周辺に埃がまったく付かず、それにより、埃を介しての高圧電位側からアース電位側への電流リークを確実に防ぐことができる。又、給電部材65や連結バー62を完全に外部から遮蔽することができるため、より絶縁性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態の電気集塵機の分解斜視図である。
【図2】同電気集塵機のカバー類を取り付ける前の組立状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は図2の状態の電気集塵機の平面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb矢視断面図、(c)は(a)の変形例に係るIIIb−IIIb矢視断面図である。
【図4】図2の状態の電気集塵機の放電線支持部位に絶縁カバーを被せた状態を示す斜視図である。
【図5】組立状態の電気集塵機の横断面図である。
【図6】図5の要部を取り出して示す図である。
【図7】図6の変形例を示す図である。
【図8】(a)、(b)は図6に示されたリブの断面形状の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 筐体
10 放電線
10A 支持領域
10B 放電領域
24 放電線支持部(放電線支持部位)
25 放電線給電端子(放電線支持部位)
28a,28b リブ
36 スペーサ
50 対向アース電極
60 高圧電極
61 電極板
62 連結バー
65 給電部材
70 低圧電極
91,92 絶縁カバー
93,94 絶縁カバー
95 絶縁性充填剤
100 荷電部
200 集塵部
122 孔部
122a 凹部
123 遮蔽壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料製の筐体と、該筐体に自身の放電領域外の支持領域が支持された放電線および該放電線に対応して設けられた対向アース電極により空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、前記筐体に支持された高圧電極および低圧電極により電界を生成し、その電界中を前記帯電した微粒子が通過することにより、静電気力で前記微粒子を吸着捕集する集塵部と、を具備した電気集塵機において、
前記放電線の放電領域外の支持領域を支持した前記筐体上の放電線支持部位を、前記筐体とは別個に設けられ、外部からの風の侵入を防ぐ絶縁カバーで覆ったことを特徴とする電気集塵機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気集塵機であって、
前記筐体上の前記放電線支持部位とアース電位となる前記筐体上の部位との間の壁面上に、前記両部位間の沿面距離を長くするための凹部または沿面を途切れさせるための孔部を設けると共に、それら凹部または孔部の空気流の流れ方向の手前側に、前記凹部または孔部への空気の流れ込みを回避するためのオーバーハング状の遮蔽壁を設けたことを特徴とする電気集塵機。
【請求項3】
絶縁材料製の筐体と、該筐体に自身の放電領域外の支持領域が支持された放電線および該放電線に対応して設けられた対向アース電極とにより空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、前記筐体に支持された高圧電極と低圧電極とで電界を生成し、その電界中を前記帯電した微粒子が通過することにより、静電気力で前記微粒子を吸着捕集する集塵部と、を具備した電気集塵機において、
前記高圧電極が、一定の間隔で互いに平行に配列された複数の電極板と、これら電極板の配列方向に長く延びて各電極板の端部を連結する連結バーと、を有する樹脂の一体成形ブロックとして構成され、
前記連結バーに、該連結バーを介して前記各電極板に給電するための給電部材が外側から装着され、前記給電部材に外側から絶縁カバーが装着され、前記絶縁カバーに装着された前記給電部材を介して前記高圧電極が前記筐体に支持されたことを特徴とする電気集塵機。
【請求項4】
請求項3に記載の電気集塵機であって、
前記連結バーが一対互いに平行に配され、それら連結バーに前記各電極板の両端がそれぞれ結合されることで、前記電極板と連結バーとが一体化されており、両側の連結バーにそれぞれ前記給電部材が装着され、両給電部材を介して前記電極板に給電することを特徴とする電気集塵機。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電気集塵機であって、
前記絶縁カバーと前記筐体の接触面の少なくとも一方に、絶縁カバーと筐体の接触面積を減らすためのリブが突設されており、リブの先端に相手側の前記接触面が接触した状態で、前記筐体により前記絶縁カバーを介して前記高圧電極が支持されていることを特徴とする電気集塵機。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の電気集塵機であって、
前記筐体の内部の不要空間が、前記給電部材の周囲の空間への空気の流れ込みを阻止するスペーサで埋められていることを特徴とする電気集塵機。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の電気集塵機であって、
前記給電部材と前記絶縁カバーとの間には、絶縁性充填材が充填されていることを特徴とする電気集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58061(P2010−58061A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226918(P2008−226918)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】