説明

電池のタブ溶接方法及び溶接装置

【課題】 電池要素を金属ケースに封入する構造の二次電池の製造工程における、タブと電池ヘッダの溶接を高精度で行う溶接方法及び溶接装置を提供すること。
【解決手段】 キャリア11に電池要素を固定した状態で、タブの位置をレーザー寸法測定器で検出し、そのデータに基づいて、キャリアの移動停止装置を作動させ、キャリア11を適正な位置に設置し、順次、第1の溶接ヘッド及び第2の溶接ヘッドを用いて、正負のタブを電池ヘッダに設けられた電極端子に溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底の金属ケースに電池要素を封入した構造の二次電池に関し、特に電池要素の電極体に接続されたタブを、金属ケースを封口する電池ヘッダに設けられた電極端子に溶接する方法と、それに用いられる溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型機器用の電源として、リチウムイオン電池を代表とする二次電池が多用されている。これらの電池は、金属箔などからなる集電体の表面に、電極活物質の層を設けた正負の電極体を、セパレータを介して巻き回して得られる巻回素子、または、正負の電極体を、セパレータを介して交互に積層して得られる積層素子からなる電池要素を、金属ケースや金属箔と高分子材料フィルムを積層したラミネートフィルムに封入した構造である。
【0003】
金属ケースに電池要素を封入する場合、正負の電極体から電流を取り出すには、それぞれの電極体に接合した正極タブと負極タブの一方を、金属ケースの開口部を封口する金属板からなる電池ヘッダに、絶縁部材を介して設けられた電極端子に接合し、他方を金属ケースに接合するという構造が用いられることがある。
【0004】
図3は、電池要素を金属ケースに封入した構造の二次電池の一例を示す斜視図である。図3において、31は電池ヘッダ、32、33はタブ、34は絶縁部材、35は電極端子、36は電池要素、37は金属ケースである。図3に示した例では、電池要素36の正負の電極体に接続してある一方のタブを、電池ヘッダ31に絶縁部材34を介して設けられている電極端子35に接続し、他方のタブを金属ケース37に接続した後、電解液を注入し、電池ヘッダ31を、金属ケース37に溶接して二次電池とする。
【0005】
このような構造の二次電池の製造工程において、タブの接続を自動化するには、電池要素をキャリアに固定し、溶接装置における所要の設置位置まで移動させて停止した状態で、溶接装置に固定された溶接ヘッドを用いて、タブを電池ヘッダの所定の位置に溶接するという方法が採られる。このような製造工程で問題となるのは、キャリア自体の位置は必要な精度で制御可能であっても、キャリアの中で位置ずれを生じる部材の位置を制御できないことである。
【0006】
具体的には、タブは、薄い帯状の導電性材料からなるため容易に変形する。また、場合によっては、タブと電極体の接続位置がずれることもある。特に、巻回終端タブは、巻回誤差の蓄積によりタブ位置がずれやすい。このため、タブと電極端子との溶接位置合わせ精度の制御が不十分となり、溶接の信頼性低下に繋がることがある。
【0007】
タブと電極の溶接を自動的に行う技術として、特許文献1には、保持具に取り付けた電極体と溶接棒を所定の位置関係に保った状態で一定方向に移動させると、移動に伴って、溶接棒が負極タブに接触して溶接を行うという、電池の負極溶接方法およびその装置が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−233098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されているのは、負極タブを電極体を封入する金属ケースに溶接する構造にのみ適用される技術であり、汎用性に欠け、前記の課題解決に繋がるものではない。従って、本発明の課題は、電池要素を金属ケースに封入する構造の二次電池の製造工程における、タブと電池ヘッダの溶接を高精度で行う溶接方法及び溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題の解決のため、溶接が必要な位置の検出方法を再検討した結果なされたものである。
【0011】
即ち、本発明の電池のタブ溶接方法は、キャリアに保持固定された電池要素に接続されてなる正極タブ及び負極タブの位置を予め光学的に検出し、検出した位置データに基づいて前記キャリアの位置を調整し、前記正極タブ及び負極タブの少なくともいずれかと、電池ヘッダに設けられた電極端子との溶接を行うことを特徴とする。
【0012】
つまり、本発明においては、従来のようにキャリアの位置を検出するのではなく、キャリアに固定され、次工程での処理が必要な部分、つまり溶接を施すべきタブの位置を光学的に検出するので、溶接の位置精度を向上することができる。
【0013】
また、本発明の溶接方法を実現するために、本発明の溶接装置は、電池要素を保持固定するキャリアと、前記キャリアを直線上の任意の位置に移動停止する移動停止装置と、前記電池要素に接続されてなる正極タブ及び負極タブの位置を光学的に検出する検出装置と、前記正極タブ及び負極タブを電池ヘッダの正極端子及び負極端子に溶接する溶接ヘッドを具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
従って、本発明によれば、電池素子を金属ケースに封入した構造の二次電池における、タブと電池ヘッダの溶接を高い精度で行うことが可能となり、不良率の低減とそれに伴う製造コスト低減、信頼性向上を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る溶接装置の構成を模式的に示した図である。図1において、10aはレーザー寸法測定器の投光側、10bはレーザー寸法測定器の受光側、10cはレーザー寸法測定器の制御器であり、検出装置を構成する。また、11はキャリア、12は第1の溶接ヘッド、13は第2の溶接ヘッドである。
【0016】
また、図2は、本発明に係るタブと電池ヘッダの溶接工程を模式的に示した図である。図2において、20は電池要素、21は正極タブ、22は負極タブ、23は電池ヘッダ、24はボールネジ、25はサーボモータ、26はタブ位置測定位置、27は負極タブ溶接位置、28は正極タブ溶接位置である。ボールネジ24とサーボモータは、キャリアの移動停止装置を構成している。
【0017】
なお、電池要素20には、帯状に形成した正極と負極の電極体を、セパレータを介して巻き回した巻回素子などを用いることができる。具体的には、正極電極体は、たとえばアルミニウム箔からなる集電体の表面に、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解して得られる溶液に、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムの粉末を分散させたペーストを塗布することで、正極電極活物質層を形成して得られる。
【0018】
また、負極電極体は、たとえば銅箔からなる集電体の表面に、フッ化ビニリデンを溶解して得られる溶液に、グラファイトやカーボンブラックを分散させたペーストを塗布することで、負極電極活物質層を形成して得られる。これらの正負の電極体に介在させるセパレータには、多孔質のポリエチレンフィルムなどが用いられる。また電解液には、プロピレンカーボネートに六フッ化リン酸リチウムを溶解した溶液などが用いられる。
【0019】
この例では、正負のタブを両方とも電池ヘッダ23に溶接し、図の下部に矢印に示した方向に個々の作業を順に行う。つまり、キャリア11に電池要素20を固定し、サーボモータ25によりボールネジ24を作動、停止させることで、キャリア11をタブ位置測定位置26に設置する。ここで、キャリア11の位置と、正極タブ21と負極タブ22のキャリア11内における位置を測定し、測定データを制御器10cに送信する。
【0020】
制御器10cは、送信されたデータに基づき、適正な負極タブ溶接位置27と、キャリア11を移動すべき距離を算出し、サーボモータ25を作動、停止させて、キャリア11を負極タブ溶接位置に設置する。負極タブ溶接位置27では、第1の溶接ヘッド12を作動させて、負極タブ22を電池ヘッダ23に設けられた負極電極端子(図示せず)に溶接する。
【0021】
次に、制御器10cは、送信されたデータに基づき、適正な正極タブ溶接位置28と、キャリア11を移動すべき距離を算出し、サーボモータ25を作動、停止させて、キャリア11を正極タブ溶接位置28に設置する。正極タブ溶接位置28では、第2の溶接ヘッド13を作動させて、正極タブを電池ヘッダ23に設けられた正極電極端子(図示せず)に溶接する。
【0022】
ここでは、キャリア11に電池要素20を固定して、正負のタブを電池ヘッダ23に溶接する例を示したが、電池要素20を金属ケースに挿入した状態でキャリア11に固定すれば、正負のタブの溶接に引き続き、電解液を注した後、電池ヘッダ23を金属ケースの開口部に溶接し、封口する作業を行うことも可能である。
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、電池要素を金属ケースに封入した構造の二次電池における、タブと電池ヘッダの溶接を高精度で行うことが可能となり、不良率低減によって製造コストを低下し、信頼性が向上した二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る溶接装置の構成を模式的に示した図。
【図2】本発明に係るタブと電池ヘッダの溶接工程を模式的に示した図。
【図3】電池素子を金属ケースに封入した構造の二次電池の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
10a (レーザー寸法測定器の)投光側
10b (レーザー寸法測定器の)受光側
10c (レーザー寸法測定器の)制御器
11 キャリア
12 第1の溶接ヘッド
13 第2の溶接ヘッド
20,36 電池要素
22 負極タブ
23,31 電池ヘッダ
24 ボールネジ
25 サーボモータ
26 タブ位置測定位置
27 負極タブ溶接位置
28 正極タブ溶接位置
21 正極タブ
32,33 タブ
34 絶縁部材
35 電極端子
37 金属ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極タブ及び負極タブを接続した電池要素をキャリアに保持固定し、前記正極タブ及び前記負極タブの位置を予め光学的に検出し、検出した位置データに基づいて前記キャリアの位置を調整し、前記正極タブ及び負極タブの少なくともいずれかと、電池ヘッダに設けられた電極端子との溶接を行うことを特徴とする電池のタブ溶接方法。
【請求項2】
電池要素を保持固定するキャリアと、前記キャリアを直線上の任意の位置に移動停止する移動停止装置と、前記電池要素に接続されてなる正極タブ及び負極タブの位置を光学的に検出する検出装置と、前記正極タブ及び負極タブを電池ヘッダの正極端子及び負極端子に溶接する溶接ヘッドを有することを特徴とする電池タブの溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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