説明

電池パック、電動工具及び充電器

【課題】電池パックの取り付け構造において、摺動面が荒れて摩擦抵抗が大きくなるという問題を回避する。
【解決手段】係合部材30は、摺動可能かつ揺動可能に支持されるとともに、ストッパ31が取付部101に対して係合可能となるように付勢されている。作動規制部材40は、前記係合部材30の揺動を規制するための当接部41と、前記当接部41を変位させて前記係合部材30の揺動の規制を解除するための操作部42と、を有している。電池パック10が取り付け方向にスライドされたときには、前記取付部101に押圧された前記係合部材30が摺動して前記ストッパ31を退避させる。前記操作部42が操作されて前記係合部材30の揺動の規制が解除された上で前記電池パック10が取り外し方向にスライドされたときには、前記取付部101に押圧された前記係合部材30が揺動して前記ストッパ31を退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具等の電源として電動工具や充電器等の対象機器に着脱自在に設けられる電池パック、並びに、この電池パックを着脱可能な電動工具及び充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動工具等の電源として用いられる電池パックは、電動工具のグリップ部や充電器に着脱可能となっており、装着により電池パックのプラス及びマイナスの端子が、上記電動工具や充電器等の対象機器に設けられた端子と接触するように構成されている。
【0003】
また、このような電池パックの取り付け構造として、電池パックを電動工具の取付部に対してスライドさせて装着するものが知られている。このようなスライド式の取り付け構造においては、特許文献1に示されるように、電池パックに係止フックを設け、この係止フックを電動工具の取付部に係止させることで、電池パックを取付部に取り付けることが一般的である。
【0004】
そして、電池パックを取り外す際には、所定の操作によって係止フックの係合を解除するように形成する。例えば、この特許文献1記載の構造においては、係止解除ボタンを電池パックの両側部に設け、係止解除ボタンを電池パックの内側に押し込み操作したときに係止フックが係止解除方向に移動するようにしている。詳しくは、係止解除ボタンの傾斜した内側面が係止フックの受け部に当接し、これにより、傾斜係止解除ボタンが押し込み操作されたときに係止解除ボタンの内側面上を係止フックの受け部が摺動して、係止フックを係止解除方向に移動させるように形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−103144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、作業現場においては電池パックの内部に粉塵が入り込むことは避けられない。上記した特許文献1記載の構造において電池パックの内部に粉塵が入り込むと、この粉塵が前記した摺動面に入り込むおそれがある。摺動面に粉塵が入り込んだ状態で係止解除操作が行われると、粉塵を挟み込んで摺動することにより摺動面が荒れてしまうため、摩擦抵抗が大きくなるという問題が発生する。そして、摩擦抵抗が大きくなると、荷重が増大して操作性が悪くなり、最悪の場合は操作自体ができなくなる可能性もある。
【0007】
そこで、本発明は、電池パックの取り付け構造において、摺動面が荒れて摩擦抵抗が大きくなるという問題を回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0009】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の電池パックは、電動工具等の対象機器の取付部に対してスライドさせて着脱可能な電池パックであって、ストッパを有する係合部材と、前記係合部材の作動を規制するための作動規制部材と、を備え、前記係合部材は、摺動可能かつ揺動可能に支持されるとともに、前記ストッパが前記取付部に対して係合可能となるように付勢されており、当該付勢力に抗って摺動または揺動したときに前記ストッパが退避するものであって、前記作動規制部材は、前記係合部材の揺動を規制するための当接部と、前記当接部を変位させて前記係合部材の揺動の規制を解除するための操作部と、を有しており、前記電池パックが取り付け方向にスライドされたときには、前記取付部に押圧された前記係合部材が摺動して前記ストッパを退避させるとともに、前記操作部が操作されて前記係合部材の揺動の規制が解除された上で前記電池パックが取り外し方向にスライドされたときには、前記取付部に押圧された前記係合部材が揺動して前記ストッパを退避させることを特徴とする。
【0011】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0012】
すなわち、前記操作部は、前記電池パックの両側に相対するように2つ設けられていることを特徴とする。
【0013】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0014】
すなわち、前記作動規制部材は、前記操作部を前記電池パックの内方に押し込み操作することで作動することを特徴とする。
【0015】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、前記係合部材は、先端が曲面に形成された押上部材によって付勢されていることを特徴とする。
【0017】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれかに記載の電池パックを着脱可能であることを特徴とする、電動工具である。
【0018】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれかに記載の電池パックを着脱可能であることを特徴とする、充電器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記の通りであり、係合部材は、摺動可能かつ揺動可能に支持されるとともに、ストッパが取付部に対して係合可能となるように付勢されており、当該付勢力に抗って摺動または揺動したときにストッパが退避するものであって、作動規制部材は、前記係合部材の揺動を規制するための当接部と、前記当接部を変位させて前記係合部材の揺動の規制を解除するための操作部と、を有しており、電池パックが取り付け方向にスライドされたときには、前記取付部に押圧された前記係合部材が摺動して前記ストッパを退避させるとともに、前記操作部が操作されて前記係合部材の揺動の規制が解除された上で前記電池パックが取り外し方向にスライドされたときには、前記取付部に押圧された前記係合部材が揺動して前記ストッパを退避させるように形成されている。
【0020】
すなわち、電池パックを取り外すためにストッパを退避させる動作を、操作部の操作によるのではなく、取付部のスライドによって行うようにしており、操作部の操作は単にストッパを退避可能な状態とするためのものとして設けられている。
【0021】
このため、係合部材を作動させるための摺動面というものを設ける必要がなく、摺動面が荒れて摩擦抵抗が大きくなるという問題が発生することもない。よって、荷重が増大して操作性が悪くなることや、操作ができなくなるという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電池パックを取り付けた電動工具の外観斜視図である。
【図2】電動工具の取付部を示す図である。
【図3】電池パックの外観斜視図である。
【図4】電池パックの分解図である。
【図5】電池パックの平面図である。
【図6】通常時の電池パックを示す図であって、(a)A−A断面図、(b)B−B断面図、(c)C−C断面図である。
【図7】通常時の蓋部材と係合部材との関係を示す、電池パック上部の一部斜視断面図である。
【図8】係合部材が摺動した時の電池パックを示す図であって、(a)A−A断面図、(b)B−B断面図、(c)C−C断面図である。
【図9】係合部材が摺動した時の蓋部材と係合部材との関係を示す、電池パック上部の一部斜視断面図である。
【図10】係合部材が揺動した時の電池パックを示す図であって、(a)A−A断面図、(b)B−B断面図、(c)C−C断面図である。
【図11】係合部材が揺動した時の蓋部材と係合部材との関係を示す、電池パック上部の一部斜視断面図である。
【図12】電池パックを電動工具に取り付ける様子を示す図(その1)であって、(a)B−B断面図、(b)C−C断面図である。
【図13】電池パックを電動工具に取り付ける様子を示す図(その2)であって、(a)B−B断面図、(b)C−C断面図である。
【図14】電池パックを電動工具に取り付けた状態を示す図であって、(a)B−B断面図、(b)C−C断面図である。
【図15】電池パックを電動工具から取り外す様子を示す図(その1)であって、(a)B−B断面図、(b)C−C断面図である。
【図16】電池パックを電動工具から取り外す様子を示す図(その2)であって、(a)B−B断面図、(b)C−C断面図である。
【図17】電池パックを取り付けた充電器の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、電動工具100としての電動回転工具を例にして、説明する。
【0024】
なお、以下の説明においては、上下前後左右の各方向を以下の方向として説明する。すなわち、電池パック10の取付面方向を上方向、上方向の逆方向を下方向とする。また、電池パック10を取り付け方向D1にスライドさせたときの前方向を前方向、後方向を後方向とする。また、前方向を向いて右方向を右方向、左方向を左方向とする(図6を例にすると、図6における上方向が上方向、下方向が下方向である。また、図6(b)における右方向が前方向、左方向が後方向である。また、図6(a)における右方向が右方向、左方向が左方向である)。
【0025】
本実施形態に係る電動工具100及び電池パック10は、図1に示すように、互いに着脱可能に形成されている。すなわち、電動工具100のグリップの下端部には、電池パック10を取り付けるための取付部101が形成されており、グリップの下端面と電池パック10の上端面とが接触するように電池パック10を取り付け可能となっている。
【0026】
電動工具100の取付部101は、図2に示すように、グリップの下端部に設けられた底盤102と、この底盤102の両側に設けられた側下垂部103と、を備えている。
【0027】
底盤102は、下面に沿って電池パック10の上面を摺動させるためのものであり、先端部102a付近の底面には、電池パック10を掛止するための被係合部106が凹設されている。被係合部106は、断面略V字状の窪みであり、先端部102a側の面が略垂直に形成されるとともに、反先端部102a側の面が傾斜して形成されている。
【0028】
側下垂部103は、底盤102の左右両端縁から下方に突出するように設けられており、電池パック10を取り付けたときに電池パック10の上側部に対して外側から当接するように形成されている。この側下垂部103の下端縁は、内側に突出して案内凸条104を形成しており、これにより、案内凸条104の上部にスライド溝105を形成している。この案内凸条104及びスライド溝105は、電池パック10の上側部に設けられたガイドレール部21及び溝22(後述)とスライド可能に係合させるためのものである。
【0029】
一方、本実施形態に係る電池パック10は、図3に示すように、上記した案内凸条104及びスライド溝105と係合するガイドレール部21及び溝22が上側部に形成されている。このガイドレール部21及び溝22は、電池パック10の表面に両側に形成されており、このガイドレール部21及び溝22が設けられていることによって電池パック10を電動工具100の取付部101に対してスライドさせて着脱可能となっている。すなわち、ガイドレール部21が外側に突出することによりガイドレール部21の下部に溝22を形成しており、この溝22の開口端側から案内凸条104を差し込むことにより、案内凸条104及びスライド溝105とガイドレール部21及び溝22とが係合した状態で電池パック10をスライドさせることができる。
【0030】
また、この電池パック10の上面には、前述した被係合部106と係合するストッパ31が突出方向に付勢されている。このストッパ31は、ガイドレール部21及び溝22の延設方向と直交する方向に出没するように設けられている。これにより、ストッパ31と被係合部106とが係合する方向に、電池パック10を所定の位置までスライドさせると、ストッパ31が被係合部106に嵌り込み、電池パック10が取付部101にしっかりと固定されるようになっている。
【0031】
なお、取付部101に固定された電池パック10を取り外す際には、ラッチ操作部42を電池パック10の内方に押し込み操作する必要がある。詳しくは後述するが、このラッチ操作部42は、図3に示すように、電池パック10の両側に相対するように2つ設けられている。
【0032】
図4は、上記した電池パック10の分解図である。この図4が示すように、電池パック10は、複数の電池13を接続して形成したバッテリセル12、このバッテリセル12を収容するケース本体11、前記ケース本体11の上部を覆う蓋部材20、前記したストッパ31を有する係合部材30、前記係合部材30を付勢するための押上部材36、前記押上部材36に対して付勢力を与える第1バネ37、前記係合部材30の作動を規制するための作動規制部材40、前記作動規制部材40を付勢する第2バネ38、を備えて構成されている。
【0033】
蓋部材20は、電池パック10の上部を覆う部材であり、ケース本体11に対してネジ固定されることによって他部材を収容するケースを形成するものである。この蓋部材20の両側部には、図4に示すように、前述したガイドレール部21や溝22が形成されている。また、このガイドレール部21及び溝22の終端部の延長線上には、前述したラッチ操作部42を外部に露出させるための操作用開口23が切欠かれて形成されている。また、上面には、前述したストッパ31を突出させるためのラッチ口24が開口している。
【0034】
係合部材30は、図4に示すように、上部に山形に突出するストッパ31と、ストッパ31の後方に延設されたアーム32と、ストッパ31の下方に設けられた下垂部33と、を備えた部材である。ストッパ31は、前方の面が傾斜して形成されるとともに、後方が略垂直な面として形成されている。また、下垂部33は、下端に行くに従って後方に湾曲しており、突端33aが後方に設けられた当接部41(後述)に臨むように配置される。
【0035】
押上部材36は、図4に示すように、上部の先端36aが曲面に形成された棒状の部材である。この押上部材36は、曲面に形成された先端36aが係合部材30と当接するとともに、下端に設けられた第1バネ37によって上方に付勢されており、間接的に係合部材30を上方へと付勢している。これにより、係合部材30のストッパ31は、ラッチ口24から突出する方向へと付勢されている。なお、第1バネ37の下端は、ケース本体11に設けられた第1バネ受け部11aに支持されている。
【0036】
作動規制部材40は、係合部材30の作動を規制するための部材であり、図4に示すように、操作用開口23から操作可能に露出するラッチ操作部42と、ラッチ操作部42の内側に延出するように設けられた当接部41と、ラッチ操作部42の下方に設けられた支軸部43と、を備えている。この作動規制部材40は、ケース本体11に設けられた作動規制部材受け部11cに対して支軸部43が回動可能に軸支されている。また、この作動規制部材40は、当接部41付近が第2バネ38によって上方に付勢されており、通常時においてはラッチ操作部42が略垂直となる姿勢を保っている。この状態からラッチ操作部42を内方へと押し込み操作すれば、第2バネ38の付勢力に抗ってラッチ操作部42の上部が内側に倒れるように回動し、同時に当接部41が下方に変位するように形成されている。なお、第2バネ38の下端は、ケース本体11に設けられた第2バネ受け部11bに支持されている。
【0037】
ところで、上記した係合部材30は、電池パック10の内部において摺動可能かつ揺動可能に支持されている。
【0038】
すなわち、係合部材30は、図6(c)及び図7に示すように、前方を蓋部材20の支持壁25にサポートされるとともに、後方を当接部41にサポートされており、更に、係合部材30の下方には係合部材30が摺動可能な空間としての摺動スペース10aが設けられている。これにより、係合部材30は、図8及び図9に示すように、支持壁25と当接部41との間を上下に摺動可能となっている。なお、通常時においては、係合部材30は押上部材36(第2バネ38)によって上方へと付勢され、ストッパ31が前記取付部101に対して係合可能となるように付勢されている。そして、この付勢力に抗って係合部材30を摺動させることにより、図8及び図9に示すように、ストッパ31がラッチ口24の内部に没入して退避可能に形成されている。
【0039】
また、係合部材30は、図6(c)に示すように、通常時においては、作動規制部材40の当接部41が係合部材30の下垂部33の突端33aに臨む位置に配置されることにより揺動が規制されているものの、当接部41が変位することで揺動可能なものである。すなわち、図10(c)に示すように、係合部材30の下垂部33の突端33aの後方には、係合部材30が揺動可能な空間としての揺動スペース10bが設けられている。これにより、ラッチ操作部42を内方へと押し込み操作して当接部41を下方に変位させ、係合部材30の揺動の規制が解除されたときに、係合部材30は揺動可能となるように形成されている。このとき、係合部材30は、図11に示すように回動軸部32aを支点として揺動する。すなわち、係合部材30は、蓋部材20の係合部材受け部26に回動軸部32aが軸支されていることにより、後端部を支点として揺動する。これにより、ストッパ31がラッチ口24の内部に没入して退避するように形成されている。このとき、係合部材30は、第1バネ37の付勢力に抗って押上部材36をやや下方に押しつけながら揺動する。押上部材36の先端36aが曲面となっているのは、係合部材30が揺動する際の摺動抵抗を小さくして、係合部材30の揺動をスムーズにするためである。
【0040】
次に、上記した電池パック10を電動工具100に取り付ける様子について説明する。
【0041】
図12に示すように、電池パック10を取付部101に対して取り付け方向D1にスライドさせると、取付部101の先端部102aがストッパ31の傾斜面31aに当接し、この傾斜面31aをスライド方向に押圧する。このスライド方向に加えられた力は、ストッパ31の傾斜面31aによってストッパ31を退避させる方向(下向き)の力に変換され、ストッパ31が内方へと押し込まれる。
【0042】
更に電池パック10を取り付け方向D1にスライドさせると、図13に示すように、ストッパ31は完全にラッチ口24の内部に没入して退避させられる。
【0043】
更に電池パック10を取り付け方向D1にスライドさせ、ストッパ31が被係合部106の位置に来るまでスライドさせると、ストッパ31が取付部101(被係合部106)に対して係合可能となるように付勢されているため、図14に示すように、被係合部106に対してストッパ31が係合し、取り付けが完了する。
【0044】
なお、ストッパ31の後面は略垂直であるため、電池パック10を取り外し方向D2にスライドさせる力が働いたとしても、このスライド方向に働く力がストッパ31を退避させる方向の力に変換される(下向きの分力が加わる)ことはない。このため、係合部材30の揺動が規制されている状態においてはストッパ31を退避させることはできないため、電池パック10が取付部101から外れることはない。
【0045】
次に、上記した電池パック10を電動工具100から取り外す様子について説明する。
【0046】
電池パック10を電動工具100から取り外す際には、まずラッチ操作部42を操作して係合部材30の揺動の規制を解除する。
【0047】
係合部材30の揺動の規制を解除した上で電池パック10を取付部101から取り外す方向D2にスライドさせると、図15に示すように、取付部101の被係合部106の後部(取り外し方向D2に見れば前部)がストッパ31の垂直面31bに当接してスライド方向に押圧する。これにより、係合部材30が揺動し、ストッパ31が内方へと押し込まれる。
【0048】
更に電池パック10を取り外し方向D2にスライドさせると、図16に示すように、ストッパ31は完全にラッチ口24の内部に没入して退避させられる。これにより、被係合部106とストッパ31とのが係合が解除され、電池パック10を取付部101から取り外すことができる。なお、取り外しが完了すれば、第1バネ37の付勢力により、係合部材30は図6に示すような通常時の位置に戻る。
【0049】
本実施形態は上記の通りであり、係合部材30は、摺動可能かつ揺動可能に支持されるとともに、ストッパ31が取付部101に対して係合可能となるように付勢されており、当該付勢力に抗って摺動または揺動したときにストッパ31が退避するものであって、作動規制部材40は、前記係合部材30の揺動を規制するための当接部41と、前記当接部41を変位させて前記係合部材30の揺動の規制を解除するためのラッチ操作部42と、を有している。そして、電池パック10が取り付け方向D1にスライドされたときには、前記取付部101に押圧された前記係合部材30が摺動して前記ストッパ31を退避させるとともに、前記ラッチ操作部42が操作されて前記係合部材30の揺動の規制が解除された上で前記電池パック10が取り外し方向D2にスライドされたときには、前記取付部101に押圧された前記係合部材30が揺動して前記ストッパ31を退避させるように形成されている。
【0050】
すなわち、電池パック10を取り外すためにストッパ31を退避させる動作を、ラッチ操作部42の操作によるのではなく、取付部101のスライドによって行うようにしており、ラッチ操作部42の操作は単にストッパ31を退避可能な状態とするためのものとして設けられている。
【0051】
このため、係合部材30を作動させるための摺動面というものを設ける必要がなく、摺動面が荒れて摩擦抵抗が大きくなるという問題が発生することもない。よって、荷重が増大して操作性が悪くなることや、操作ができなくなるという問題を回避することができる。
【0052】
また、ラッチ操作部42を操作しただけでは電池パック10の係合が外れないため、誤ってラッチ操作部42を操作したとしても電池パック10が落下することがない。よって、取り扱いの安全性を高めることもできる。
【0053】
また、係合部材30の付勢力を決定する第1バネ37と、作動規制部材40の付勢力を決定する第2バネ38と、を別々に設けたため、係合に必要な荷重と操作に必要な荷重とを別々に設定でき、適正な荷重を選択することができる。
【0054】
なお、上記した実施形態においては、電動工具100としての電動回転工具を挙げ、この電動工具100に電池パック10を取り付け可能とした例について説明したが、本発明の実施形態としてはこれに限らない。例えば、電動回転工具以外の電動工具(例えば、電動丸鋸や電動鋏など)でも同様に適用することができる。また、図17に示すように、充電器200に電池パック10を取り付け可能としてもよい。
【0055】
また、上記した実施形態においては、蓋部材20の上面のラッチ口24からストッパ31を突出させて、取付部101の被係合部106と係合させる構成としたが、これに限らない。例えば、蓋部材20の両側の溝22の位置にストッパを突出させた構成にするとともに、取付部101のスライド溝105に被係合部を設けることによって、ストッパと被係合部とを係合させる構成としてもよい。この態様においても、ラッチ操作部42でストッパを退避可能に構成すればよい。
【0056】
また、上記した実施形態においては、作動規制部材40を電池パック10の両側に設けたが、これに限らず、側部以外の位置に作動規制部材40を配置してもよい。例えば、作動規制部材40を電池パック10の後部位置に配置してもよい。
【0057】
また、上記した実施形態においては、作動規制部材40は押し込み操作により作動することとしたが、これに限らない。例えば、作動規制部材40を上下にスライドさせたり、回動させたりすることによって当接部41が変位するように構成し、これによって係合部材30の揺動の規制を解除するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 電池パック
10a 摺動スペース
10b 揺動スペース
11 ケース本体
11a 第1バネ受け部
11b 第2バネ受け部
11c 作動規制部材受け部
12 バッテリセル
13 電池
20 蓋部材
21 ガイドレール部
22 溝
23 操作用開口
24 ラッチ口
25 支持壁
26 係合部材受け部
27 縦溝
30 係合部材
31 ストッパ
31a 傾斜面
31b 垂直面
32 アーム
32a 回動軸部
33 下垂部
33a 突端
36 押上部材
36a 先端
37 第1バネ
38 第2バネ
40 作動規制部材
41 当接部
42 ラッチ操作部(操作部)
43 支軸部
100 電動工具
101 取付部
102 底盤
102a 先端部
103 側下垂部
104 案内凸条
105 スライド溝
106 被係合部
200 充電器
D1 取り付け方向
D2 取り外し方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具等の対象機器の取付部に対してスライドさせて着脱可能な電池パックであって、
ストッパを有する係合部材と、
前記係合部材の作動を規制するための作動規制部材と、
を備え、
前記係合部材は、摺動可能かつ揺動可能に支持されるとともに、前記ストッパが前記取付部に対して係合可能となるように付勢されており、当該付勢力に抗って摺動または揺動したときに前記ストッパが退避するものであって、
前記作動規制部材は、前記係合部材の揺動を規制するための当接部と、前記当接部を変位させて前記係合部材の揺動の規制を解除するための操作部と、を有しており、
前記電池パックが取り付け方向にスライドされたときには、前記取付部に押圧された前記係合部材が摺動して前記ストッパを退避させるとともに、
前記操作部が操作されて前記係合部材の揺動の規制が解除された上で前記電池パックが取り外し方向にスライドされたときには、前記取付部に押圧された前記係合部材が揺動して前記ストッパを退避させることを特徴とする、電池パック。
【請求項2】
前記操作部は、前記電池パックの両側に相対するように2つ設けられていることを特徴とする、請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記作動規制部材は、前記操作部を前記電池パックの内方に押し込み操作することで作動することを特徴とする、請求項1又は2記載の電池パック。
【請求項4】
前記係合部材は、先端が曲面に形成された押上部材によって付勢されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電池パック。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電池パックを着脱可能であることを特徴とする、電動工具。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の電池パックを着脱可能であることを特徴とする、充電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−221780(P2012−221780A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87087(P2011−87087)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】