電池パック
【課題】絶縁テープ等の電池セルを固定する部品点数を削減することができ、外形寸法の変化が少なく、安定した構成部品の固定を行うことができ、高い位置精度で構成部品を配置することができる電池パックを提供する。
【解決手段】ホルダ16は電池セルを固定および保持するセルホルダ31と、回路基板を固定および保持する回路基板ホルダ32とを有する。回路基板ホルダ32は、回路基板が載置され収められる回路基板載置部33と、回路基板載置部33に上方から組み合わされるホルダカバー34とを有する。
【解決手段】ホルダ16は電池セルを固定および保持するセルホルダ31と、回路基板を固定および保持する回路基板ホルダ32とを有する。回路基板ホルダ32は、回路基板が載置され収められる回路基板載置部33と、回路基板載置部33に上方から組み合わされるホルダカバー34とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電池パックに関する。さらに詳しくは例えば電子機器に内蔵される電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型PC(Personal Computer)や携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)などの携帯型電子機器が普及し、その電源として高電圧、高エネルギー密度、軽量といった利点を有するリチウムイオン二次電池が使用されている。
【0003】
このリチウムイオン二次電池は、正極および負極と、正極および負極との間に配置されたセパレータと電解質とをラミネートフィルムで外装した電池セルに対して、保護回路等の回路を付加した電池パックとして、広く使用されている。
【0004】
この電池パックは、所謂、ハードパック型とソフトパック型とに大別される。ハードパック型の電池パックは、電池セルと回路基板等の部品等とが、例えばプラスチック製のケースに収納されており、例えば端子形状の出力を設けたものである。このハードパック型の電池パックは、例えばノート型PCなどに用いられる。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−045492号公報
【0006】
ソフトパック型の電池パックは、電子機器に内蔵されるものであり、電池セルや保護回路等が絶縁テープ等で固定され、電池セルの一部が露出され、電子機機本体に接続されるコネクタ付きリードなどの出力が設けられたものである。
【0007】
従来のソフトパック型の電池パックの構成の一例について説明する。図14は従来のソフトパック型の電池パックの構成例を示す分解斜視図である。図14に示すように、この電池パックでは、電池セル111から導出された正極リード118aおよび負極リード118bと、回路基板112とがタブ114を介して接続される。
【0008】
回路基板112には、出力のためのコネクタ付きリード115が接続されている。電池セル111、正極リード118aおよび負極リード118bおよび回路基板112などは、絶縁テープ116a〜116dを所定箇所に貼ることによって固定されている。
【0009】
また、絶縁テープ116a〜116dは両面テープであり、これによって、電池パックは電子機器本体の所定位置に固定されている。外装ラベル117は、電池セル111の所定箇所に貼られる。外装ラベル117には、電池セル111の定格等が印刷され表示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図14に示す電池パックでは、以下に説明する問題があった。絶縁テープ116a〜116dによる回路基板112の固定では、回路基板112の位置決めができないため、回路基板112に接続されたコネクタ付きリード115の出し位置にばらつきが生じてしまう。
【0011】
また、図14に示す電池パックでは、回路基板112に搭載される実装部品にガイド部材がなく、実装部品が露出されているため、組み立て時や外部から衝撃を受けた時に、実装部品が電池セル111に接触し、電池セル111を傷つけてしまうおそれがある。
【0012】
さらに図14に示す電池パックでは、正極リード118aおよび負極リード118bは、絶縁テープ116cおよび絶縁テープ116dによって固定されているだけなので、落下等によって衝撃が与えられた場合には、その衝撃によって変形してしまうおそれがある。
【0013】
また、絶縁テープ116a〜116dによる固定では、貼り付け時に所定の貼り付け箇所から貼りずれが生じ易く、電池セル111等の固定が不安定である。例えば、絶縁テープ116a〜116dの貼りずれが生じた場合には、電池セル111等の固定位置がずれ、電池パックの外形寸法が変化するおそれがある。
【0014】
さらに、図14に示す電池パックでは、電池膨れによる外形寸法の変化が大きいことから、電子機器本体への固定を両面テープの絶縁テープ116a〜116dで行っているため、例えば電池セル111の交換等を行う場合に電池パックの取り外しが容易ではない。
【0015】
さらに、図14に示す電池パックでは、電池セル111の外面に絶縁テープ116a〜116bを貼っているだけのため、電池セル111の膨張によって、電池パックの外形寸法が影響されやすい。
【0016】
また、手作業で行われる絶縁テープ116a〜116dの貼り付けは、貼り位置等のばらつきも多く、さらに複数枚の絶縁テープ116a〜116dを貼り付ける必要もあるため、生産性が悪い。
【0017】
したがって、この発明の目的は、絶縁テープ等の電池セルを固定する部品点数を削減することができ、外形寸法の変化が少なく、安定した構成部品の固定を行うことができ、高い位置精度で構成部品を配置することができる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するために、この発明は、電池素子がラミネートフィルムで外装された電池セルと、電池セルに接続された回路基板と、電池セルを外装するセルホルダ、および回路基板を外装する回路基板ホルダを有するホルダとを備え、セルホルダによって外装された電池セルのテラス部の上方の空間に、回路基板を外装した回路基板ホルダが配置された電池パックである。
【0019】
この発明による電池パックは、電池セルと、回路基板と、セルホルダおよび回路基板ホルダを備えたホルダとを備え、セルホルダによって外装された電池セルのテラス部の上方の空間に、回路基板を外装した回路基板ホルダが配置された構成を有する。この構成によって、絶縁テープ等の電池セルを固定する部品点数を削減することができ、外形寸法の変化が少なく、安定した構成部品の固定を行うことができ、高い位置精度で構成部品を配置することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、絶縁テープ等の電池セルを固定する部品点数を削減することができ、外形寸法の変化が少なく、安定した構成部品の固定を行うことができ、高い位置精度で構成部品を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1の実施の形態による電池パックの構成を示す分解斜視図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による電池パックの外観を示す斜視図である。
【図3】電池セルの構成を示す斜視図である。
【図4】ラミネートフィルムの構造を示す断面図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態による電池パックのホルダの構成を示す斜視図である。
【図6】回路基板載置部およびホルダカバーの構成を示す斜視図である。
【図7】回路基板載置部とホルダカバーとの組み合わせ状態を示す斜視図および断面図である。
【図8】この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造工程を説明するための斜視図である。
【図9】この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造工程を説明するための断面図である。
【図10】この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造工程を説明するための断面図である。
【図11】ヒンジ部の構造を示す断面図である。
【図12】この発明の第1の実施の形態による電池パックの外形寸法を説明するための断面図である。
【図13】従来の電池パックの外形寸法を説明するための断面図である。
【図14】従来の電池パックの構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(電池パックの第1の例)
2.第2の実施の形態(電池パックの第2の例)
3.他の実施の形態(変形例)
【0023】
1.第1の実施の形態
<電池パックの構成>
図1および図2を参照して、この発明の第1の実施の形態による電池パックの構成について説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態による電池パックの構成を示す分解斜視図である。図2は、この発明の第1の実施の形態による電池パックの外観を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、この発明の第1の実施の形態による電池パックは、電池セル11と、回路基板12と、安全保護素子13と、タブ14と、回路基板12に接続されるコネクタ付きリード15と、ホルダ16とを有する。
【0025】
電池セル11と回路基板12とが安全保護素子13および/またはタブ14を介して接続され、さらに回路基板12に対して、コネクタ付きリード15が接続されている。そして、電池セル11と、回路基板12とコネクタ付きリード15等とが接続され一体とされた部品が、ホルダ16によって外装されて図2に外観を示す電池パックとされる。なお、以下では、説明の便宜上、電池セル11と、回路基板12と、コネクタ付きリード15等の部品とが接続され一体とされた部品をセルアッシーと称する。
【0026】
図2に示すように、この電池パックは、セルアッシーがホルダ16によって外装されている。セルアッシーがホルダ16によって外装された状態では、電池セル11の上面および下面の一部が露出した状態とされている。この電池パックは、例えば、電子機器等の内部の所定箇所に組み込まれたソフトパック型の電池パックである。
【0027】
ホルダ16の前側には、電子機器に接続される導通部材であるコネクタ付きリード15が延出されている。このコネクタ付きリード15は、ホルダ16に設けられた孔31eに挿通されている。この孔31eは、高い位置精度でコネクタ付きリード15の出し位置を定めるために設けられたものである。
【0028】
また、ホルダ16の前側には、コネクタ付きリード15に接続された回路基板12、および回路基板12に接続された安全保護素子13等の部品が、ホルダ16に外装された状態で固定されている。詳細は後述するが、回路基板12は、ホルダ16の回路基板ホルダに収容され、この回路基板ホルダによって外装された状態で、ホルダ16の前側に配置されている。
【0029】
以下、電池パックの構成について詳細に説明する。
<電池セル>
図3に示すように、電池セル11は、電池素子20と、電池素子20を外装するラミネートフィルム22と、電池素子20に接続された正極リード25aおよび負極リード25bとから構成される。
【0030】
図3Bに示すように、ラミネートフィルム22に設けられた収容部22aに電池素子20が収容された後、折り返し辺を除く3辺を熱融着等によって封止して、図3Aに示す外観の電池セル11とされる。
【0031】
なお、電池素子20がラミネートフィルム22に収容され、回路基板12に接続されていない状態のものを電池セル11と称する。また、図3Aの斜線に示す、正極リード25aおよび負極リード25bを介して、ラミネートフィルム22が封止される部分を、テラス部22bと称する。
【0032】
<電池素子>
電池素子20は、例えば角形または扁平型を有し、帯状の正極、帯状の負極とがポリマー電解質およびセパレータを介して積層され、長手方向に巻回された構造を有する。そして、正極および負極にはそれぞれ正極リード25aおよび負極リード25bが接続されている。
【0033】
正極は、帯状の正極集電体上に正極活物質層が形成されてなり、さらに、正極活物質層上にポリマー電解質層が形成されている。また、負極は、帯状の負極集電体上に負極活物質層が形成されてなり、さらに、負極活物質層上にポリマー電解質層が形成されている。正極リード25aおよび負極リード25bは、それぞれ正極集電体および負極集電体に接合されている。正極活物質、負極活物質、ポリマー電解質としては、既に提案されている材料を使用することができる。
【0034】
正極は、目的とする電池の種類に応じて金属酸化物、金属硫化物または特定の高分子を正極活物質として構成することができる。例えばリチウムイオン電池を構成する場合では、正極活物質として、LiXMO2(式中、Mは、一種以上の遷移金属を表し、Xは、電池の充放電状態によって異なり、通常0.05以上1.10以下である)を主体とするリチウム複合酸化物等を使用できる。リチウム複合酸化物を構成する遷移金属Mとしては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)等が好ましい。
【0035】
このようなリチウムイオン複合酸化物の具体例としては、LiCoO2,LiNiO2,LiNiyCo1-yO2(式中、0<y<1である。)、LiMn2O4等を挙げることができる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。また、正極活物質としてTiS2、MoS2、NbSe2、V2O5等のリチウムを有しない金属硫化物または酸化物を使用しても良い。正極には、これらの正極活物質の複数種を併せて使用してもよい。また、以上のような正極活物質を使用して正極を形成するに際して、導電剤や結着剤等を添加しても良い。
【0036】
負極材料としては、リチウムをドープ、脱ドープできる材料を使用することができる。例えば、難黒鉛化炭素系材料や黒鉛系材料の炭素材料を使用することができる。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等の炭素材料を使用することができる。さらに、リチウムをドープ、脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO2等の酸化物を使用することができる。このような材料から負極を形成するに際して、結着剤等を添加しても良い。
【0037】
ポリマー電解質は、高分子材料と電解液と電解質塩とを混合してゲル状化した電解質をポリマー中に取り込んだものとされている。高分子材料は、電解液に相溶する性質を有し、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、およびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等、若しくはフッ素系ポリマーとして、例えばポリ(ビニリデンフルオロライド)、ポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)、或いはポリ(ビニリデンフルオロライド−co−トリフルオロエチレン)等の高分子材料、およびこれらの混合物が使用される。
【0038】
電解液成分は、上述した高分子材料を分散可能とし、非プロトン性溶媒として例えばエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)或いはブチレンカーボネート(BC)等が用いられる。電解質塩には、溶媒に相溶するものが用いられ、カチオンとアニオンとが組み合わされてなる。カチオンには、アルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-、Br-、I-、SCN-、ClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-等が用いられる。電解質塩には、具体的には六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウムが電解液に対して溶解可能な濃度で用いられる。
【0039】
<ラミネートフィルム>
ラミネートフィルム22は、図4に示すように、例えば、接着層22c、金属層22d、表面保護層22eを順次積層した防湿性、絶縁性を有する積層構造を有する。なお、3.他の実施の形態で後述するが、ラミネートフィルム22の構造はこれに限定されるものではない。
【0040】
接着層22cは、ポリマー電解質の変質を防ぐ機能を有するとともに、熱や超音波で溶け、互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)の他、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。接着層22aの厚さは、例えば30μm程度である。
【0041】
金属層22dは、軟質の金属材料が用いられ、外装材の強度向上の他、水分、酸素、光の進入を防ぎ内容物を守る役割を担っている。軟質の金属材料としては、軽さ、伸び性、価格、加工のしやすさからアルミニウムが最も好適であり、特にJIS規格に基く8021Oまたは8079O等のアルミニウムを用いるのが好ましい。
【0042】
表面保護層22eは、表面保護の機能を有する。外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0043】
<回路基板>
回路基板12には、充放電FET(Field Effect Transistor)や電池セル11の監視と充放電制御FETの制御を行うIC(Integrated Circuit)を含む保護回路、電池パックを識別するためのID抵抗、外部と接続するためのコネクタ等がマウントされている。
【0044】
充放電制御FETおよび充放電制御FETの制御を行うICを含む保護回路は、電池セル11の電圧を監視し、4.3V〜4.4Vを超えると充放電制御FETをオフし、充電を禁止する。さらに電池セル11の端子電圧が放電禁止電圧以下まで過放電し、電池セル11の端子電圧が放電禁止電圧を下回ると放電制御FETをオフし、放電を禁止する。
【0045】
<安全保護素子>
安全保護素子13は、電池セル11が高温となった場合に電池セル11の電流回路を遮断し、電池セル11の熱暴走を防止する部品で、例えば、PTC素子、ヒューズ、サーミスタ等である。PTC素子は、電池セル11と直列に接続され、電池セル11の温度が設定温度に比して高くなると、電気抵抗が急激に高くなって電池セル11に流れる電流を実質的に遮断する。ヒューズや、サーミスタも電池素子と直列に接続され、電池セル11の温度が設定温度より高くなると、電池セル11に流れる電流を遮断する。
【0046】
<ホルダ>
ホルダ16は、セルアッシーを外装することによって、セルアッシーを固定および保持する外装部材である。図5に示すように、ホルダ16は電池セル11を固定および保持するセルホルダ31と、回路基板12を固定および保持する回路基板ホルダ32とを有する。また、回路基板ホルダ32は、回路基板12が載置され収められる回路基板載置部33と、回路基板載置部33に上方から組み合わされるホルダカバー34とを有する。セルホルダ31と、回路基板ホルダ32とは一体的に成形された樹脂成形品である。
【0047】
ホルダ16を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等が挙げられる。中でも、難燃性、耐衝撃性の面からは、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)が好ましい。
【0048】
<セルホルダ31>
セルホルダ31の上面および下面と、3つ側面とで、電池セル11を収容することができる程度の空間を形成している。セルホルダ31の上面は、例えば図3に示す電池セル11の収容部22aの上面とほぼ同じ形状および面積を有する長方形が、この長方形を縮小した相似形によって、中抜きされた形状とされ、枠形の面31aを形成している。
【0049】
また、セルホルダ31の下面は、例えば電池セル11の下面とほぼ同じ形状および面積を有する長方形が、電池セル11の収容部22aの上面の長方形を縮小した相似形によって、中抜きされた形状とされ、枠形の面31bを形成している。
【0050】
さらに、セルホルダ31の下面において、点線mに囲まれた部分は、上方に正極リード25aおよび負極リード25bが配置されるリード配置部31fとされる。上述のコネクタ付きリード15の位置決め用の孔31eが、リード配置部31fから回路基板ホルダ32の底面33aにかけて設けられている。
【0051】
電池セル11がセルホルダ31に収容された状態では、セルホルダ31の上面の枠形の面31aは、電池セル11の収容部22aの上面の縁辺に対向した位置に配置され、電池セル11の収容部22aの上面の縁辺を外装している。
【0052】
また、電池セル11がセルホルダ31に収容された状態では、セルホルダ31の枠形の面31bは、電池セル11の下面の周縁、およびテラス部22bの外側の面に対向した位置に配置され、電池セル11の下面の周縁およびテラス部22bの外側の面を外装している。
【0053】
さらに、電池セル11がセルホルダ31に収容された状態では、セルホルダ31の3つの側面は、電池セル11の3つの側面に対向した位置に配置され、セルホルダ31の3つの側面によって、電池セル11の3つの側面を外装している。
【0054】
なお、セルホルダ31の各部の寸法は以下のように選ばれる。セルホルダ31の長手方向に位置する2つの側面の長さは、電池セル11の長手方向に位置する2つの側面の長さとそれぞれほぼ等しくされる。また、セルホルダ31の短手方向に位置する1つの側面の長さは、電池セル11の短手方向に位置する1つの側面の長さとほぼ等しくされる。
【0055】
セルホルダ31の枠形の面31aと枠形の面31bとの間隔は、電池セル11の厚みとほぼ等しくされる。また、リード配置部31fの短手方向の幅は、正極リード25aおよび負極リード25bの延出方向の長さとほぼ等しくされる。このような寸法が選ばれることによって、電池セル11の形状にフィットした状態で電池セル11がセルホルダ31に外装される。
【0056】
また、セルホルダ31の長手方向の2つの側面の所定位置には、後述する回路基板ホルダ32に設けられた突起部と係合する孔31c〜31dが設けられている。詳細は後述するが、この孔31c〜31dは、スナップフィット構造により、回路基板ホルダ32の折り曲げ状態を固定するためのものである。なお、スナップフィット構造とは、一方の部品に突起部等を設け、他方の部品に孔等を設け、突起部等と孔等とが係合されることによって、一方の部品と他方の部品とが固定および保持される構造をいう。
【0057】
<回路基板ホルダ>
回路基板ホルダ32は、回路基板12が組み入れられる回路基板載置部33と、回路基板載置部33に対して上方から組み合わされるホルダカバー34とを有する。
【0058】
<回路基板載置部>
回路基板載置部33は、回路基板12が組み入れられる部材である。図6Aに示すように、回路基板載置部33は、底面33aと、底面33aの両端部のそれぞれから上方に突出する断面コ字状の壁部33bおよび壁部33cとを有する。回路基板12は、この底面33aと壁部33bおよび壁部33cとが形成する空間に、回路基板12の主面と底面33aとが対向するように組み入れられる。
【0059】
また、回路基板載置部33の底面33aには、コネクタ付きリード15を挿通するための孔31eが設けられている。なお、上述したが、この孔31eは、リード配置部31fから底面33aにかけて設けられている。
【0060】
回路基板載置部33の短手方向に沿って設けられた壁面33dには、ホルダカバー34の突起部34f〜34gのそれぞれと係合する孔33f〜33gが設けられている。また、回路基板載置部33の短手方向に沿って設けられた壁面33eには、ホルダカバー34の突起部34h〜33iのそれぞれと係合する孔33h〜33iが設けられている。
【0061】
さらに、壁面33dおよび壁面33eには、中央部分にセルホルダ31の側面に備えた孔31cおよび31dと係合する突起部33j〜33kが、それぞれ設けられている。
【0062】
壁部33bおよび壁部33cの高さは、回路基板12の厚さ方向の長さより大きくされている。また、ホルダカバー34と回路基板載置部33とが組み合わされた状態で、ホルダカバー34の外側の面と、壁部33bおよび壁部33cの上側の面とが平らな面を形成するようにされている。
【0063】
また、底面33aには、底面33aから上方に突出した複数のリブ33l〜33oが設けられている。このリブ33l〜33oは、底面33aの短手方向に沿って設けられている。この複数のリブ33l〜33oが設けられる間隔は、例えば回路基板12の実装部品が搭載されている実装部分の幅より大きい長さに選ばれる。
【0064】
具体的に説明すると、例えばリブ33lとリブ33mとの間隔は、回路基板12実装部分の幅より大きい長さに選ばれ、リブ33nとリブ33oとの間隔は、回路基板12の実装部分の幅より大きい長さに選ばれる。
【0065】
<ホルダカバー>
ホルダカバー34は、回路基板載置部33に回路基板12が組み入れられた状態で、回路基板載置部33の上方から組み合わされることによって、回路基板12を外装する。図6Bに示すように、このホルダカバー34の回路基板12に対向する側の面には、上方に突出する複数のリブ34a〜34dが設けられている。この複数のリブ34a〜34dは、それぞれホルダカバー34の短手方向に沿って設けられている。また、ホルダカバー34の両側面には、回路基板載置部33の孔33f〜33iのそれぞれと係合する突起部34f〜34iが設けられている。
【0066】
<ホルダカバーと回路基板載置部との組み合わせ状態>
図7は、回路基板12が収容され、回路基板載置部33とホルダカバー34とが組み合わされた回路基板ホルダ32の状態を示す。図7Aは、回路基板12が収容され、回路基板載置部33とホルダカバー34とが組み合わされた回路基板ホルダ32の状態を示す斜視図である。図7Bは、図7Bにおいて線Lに沿った断面図である。
【0067】
図7Aに示すように、回路基板12が収容され、回路基板載置部33とホルダカバー34とが組み合わされた状態では、壁部33bの孔33f〜33gとホルダカバー34の突起部34f〜34gとが係合される。また、図7Aでは示されない位置にあるが、壁部33cの孔33h〜33iとホルダカバー34の突起部34h〜34iとが係合される。このようなスナップフィット構造によって、回路基板載置部33とホルダカバー34との組み合わせ状態が固定および保持される。
【0068】
また、図7Bに示すように、回路基板12が収容され、回路基板ホルダ32とホルダカバー34とが組み合わされた状態では、ホルダカバー34の4つのリブ34a〜34dの先端部分が回路基板12の基板面に当接している。また、回路基板12が収容され、回路基板ホルダ32とホルダカバー34とが組み合わされた状態では、回路基板載置部33の底面33aに設けられた、4つのリブ33l〜33oの先端部分が回路基板12の基板面に当接している。
【0069】
このようにリブ34a〜34d、リブ33l〜33oの先端部分が回路基板12の基板面に当接された構造とすることによって、回路基板12に対する衝撃を緩衝する部材として機能する。
【0070】
また、回路基板12の実装部品が搭載された実装部分51a〜51bは、回路基板載置部33に対向する側に配置されている。回路基板12の実装部分51a〜51bは、複数のリブ33l〜33oのうちの幅方向に隣接するリブ同士によって形成される空間に配置されている。
【0071】
より具体的に説明すると、実装部分51aは、幅方向に隣接するリブ33lと33mとによって形成された空間に配置されている。また、実装部分51bは、幅方向に隣接するリブ33nとリブ33oとによって形成された空間に配置されている。
【0072】
また、リブ33l〜リブ33oの突出方向の長さは、回路基板12の実装部品が設けられていない面を基準とした長さで、実装部分51a〜51bの突出方向の長さより、大きい長さに選ばれる。
【0073】
これにより、実装部品は、回路基板12が組み入れられた状態において、例えば、矢印P1およびP2に示す上下方向から加圧されても、回路基板載置部33の底面33aに接触しないような空間に配置される。したがって、電池パックの組み立て工程や外部からの基板への応力発生時に実装部品を保護することができる。
【0074】
<電池パックの製造方法>
この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造方法について説明する。
【0075】
<電池素子作製工程>
まず、例えば、ゲル電解質層が両面に形成された正極および負極と、セパレータとを、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に順次積層し、この積層体を平板の芯に巻き付けて、長手方向に多数回巻回して巻回型の電池素子20を作製する。
【0076】
<電池セル作製工程>
電池素子20を、ラミネートフィルム22に設けられた収容部22aに収容した後、収容部22aの開口を覆うようにラミネートフィルム22を折り返す。その後、折り返し辺を除く3辺を熱融着等によって封止して、電池セルを作製する。
【0077】
<リード等接続工程>
電池セル11の正極リード25aおよび負極リード25bを、タブ14および/または安全保護素子13を介して回路基板12に接続する。また、さらにコネクタ付きリード15を回路基板12の所定箇所に接続する。これにより、電池セル11と、回路基板12等との部品が接続されて一体となったセルアッシー得られる。なお、各部品同士の接続は、例えば熱溶接、超音波溶接などによって行う。
【0078】
<セルアッシー組み入れ工程>
次に、セルアッシーをホルダ16に組み入れる。セルアッシー組み入れ工程の説明では、まず、セルアッシー組み入れ工程の簡単な流れを、図8A〜図8Cを参照して説明する。次に、セルアッシー組み入れ工程のより詳細な説明を、図9および図10を参照して説明する。
【0079】
まず、図8Aに示すように、セルホルダ31に電池セル11が収容され、回路基板ホルダ32の回路基板載置部33に回路基板12が載置された状態とされる。次に、図8Bに示すように、図8Aに示す状態のホルダカバー34を矢印Pに示すように折り曲げ、ホルダカバー34を、回路基板載置部33の上方から回路基板載置部33に組み合わせる。
【0080】
このとき、上述のように、ホルダカバー34に設けられた突起部34f〜34iと、それぞれ回路基板載置部33に設けられた孔33f〜33iとが係合する。このスナップフィット構造によって、回路基板載置部33とホルダカバー34との組み合わせ状態が固定および保持される。
【0081】
なお、後述するが、ホルダカバー34には、所定の位置にヒンジ部(図8では図示省略)が設けられており、ホルダカバー34の折り曲げを円滑且つ正確に行うことができる。
【0082】
次に、図8Cに示すように、図8Bに示す状態の回路基板ホルダ32を矢印Qに示すように折り曲げることによって、図8に示す状態の回路基板ホルダ32をセルホルダ31の前側の端部の空間に配置する。
【0083】
このセルホルダ31の端部の前側の空間は、電池セル11のテラス部22bの上方の空間である。より具体的には、セルホルダ31の端部の空間は、電池セル11がセルホルダ31に組み入れられた状態において、電池セル11のテラス部22bの面と、電池セル11の収容部22aの端面と、電池セル11の2つの側面とで形成された空間である。
【0084】
このとき、回路基板載置部33に設けられた突起部33j〜33kと、ホルダ16に設けられた孔33c〜33dとがそれぞれ係合し、スナップフィット構造によって、図8Cに示す配置状態が固定および保持される。以上により、ホルダ16にセルアッシーが組み入れられ、この発明の第1の実施の形態による電池パックが得られる。
【0085】
<セルアッシー組み入れ工程の詳細>
図9および図10を参照して、セルアッシー組み入れ工程の詳細を説明する。図9A〜図9C、および図10A〜図10Cは、セルアッシー組み入れ工程の各工程を説明するための断面図である。
【0086】
なお、図9Aは図8Aに示す状態に対応する。図9Cは図8Bに示す状態に対応する。図10Cは図8Cに示す状態に対応する。図9Bは、図9Aに示す状態から、図9Cに示す状態の途中の状態を新たに示す。図10Aおよび図10Bは、図9Cに示す状態から図10Cに示す状態の途中の状態を新たに示す。
【0087】
図9Aに示すように、ホルダ16には、所定の折り曲げ位置に対応した位置にヒンジ部41a〜41dが設けられている。なお、以下では、ヒンジ部41a〜41dを総称する場合は、ヒンジ部41と称する。
【0088】
ヒンジ部41は、図11に示すように、ホルダ16の幅方向に沿って設けられた断面V字状の溝であり、溝の底からホルダ16の内面までの厚さtは、例えば0.2mm程度に選ばれる。このヒンジ部41によって、ホルダ16の折り曲げを円滑且つ正確に行うことができる。
【0089】
まず、図9Aに示す状態において、ヒンジ部41bを折り曲げることによって、図9Bに示す状態とされる。次に、図9Bに示す状態において、ヒンジ部41aを折り曲げることによって、図9Cに示す状態とされる。図9Cに示す状態は、図8Bに示す状態に対応する。
【0090】
次に、図9Cに示す状態において、ヒンジ部41dを折り曲げることによって、図10Aに示す状態とされる。次に、図10Aに示す状態において、ヒンジ部41eを折り曲げることによって、図10Bに示す状態とされる。図10Bに示す状態において、上方に延びたコネクタ付き付きリード15を矢印Rに示す方向に、折り曲げることによって、図10Cに示す状態とされる。以上により、セルアッシーがホルダ16に組み入れられ、この発明の第1の実施の形態による電池パックが得られる。
【0091】
<セル膨れと外形寸法精度について>
この発明の第1の実施の形態による電池パックの外形の寸法精度について、従来構造との比較によって説明する。図12は、この発明の第1の実施の形態による電池パックの断面図である。図13は、従来の電池パックの断面図である。なお、図13に示す電池パックは、図14を参照して説明した従来の電池パックの断面図である。
【0092】
まず、図12を参照して、この発明の第1の実施の形態による電池パックの厚み方向の外形寸法について説明する。一般的に電池セル11の充放電サイクルが繰り返されることによって、電池セル11が劣化して膨張することが知られている。
【0093】
図12Aは電池セル11が劣化する前の状態であって、電池セル11の膨張が生じていない状態を示す。図12Bは電池セル11が劣化し、電池セル11の膨張が生じている状態を示す。なお、図12Aおよび図12Bに示す電池セル11は、満充電時の状態を示すものである。
【0094】
図12Aに示す電池セル11が劣化する前の状態では、電池パックの厚さ方向の外形寸法Aは、ホルダ16の厚さ方向の寸法と一致する。電池パックの外形に対して、電池セル11の露出面の上方にホルダ16の厚み分とほぼ等しいクリアランスBが存在する。また、電池パックの外形に対して、電池セル11の露出面の下方にホルダ16の厚み分とほぼ等しいクリアランスCが存在する。
【0095】
図12Bに示す電池セル11が劣化した状態では、電池セル11が膨張しているが、電池セル11の膨張分の厚さは、クリアランスBおよびクリアランスCの範囲内である。したがって、電池セル11が膨張した場合でも、電池パックの厚さ方向の寸法Aは、変化しい。すなわち、この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、電池膨れが生じた場合でも、電池パックの外形寸法が維持されている。
【0096】
このように、この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、電池セル11が劣化して膨張した場合でも、電池セル11の露出部分の上方および下方のクリアランスBおよびCによって、電池セル11の膨張分を吸収する。これにより、電池セル11が膨張した場合でも、電池パックの外形寸法に変化が生じないという効果が得られる。
【0097】
次に、図13を参照して、従来構造の電池パックの厚み方向の外形寸法について説明する。図13Aは電池セル111が劣化する前の状態であって、電池セル111の膨張が生じていない状態を示す。図13Bは電池セル11が劣化する前の状態であって、電池セル111の膨張が生じている状態を示す。なお、図13Aおよび図13Bに示す電池セル111は、満充電時の状態を示すものである。
【0098】
図13Aに示す電池セル111が劣化する前の状態では、電池パックの厚さ方向の外形寸法Dは、絶縁テープ116a〜116bの厚み方向の寸法と一致する。図13Bに示す電池セル111が劣化した状態では、電池セル111が膨張し、電池セル111が露出している部分の厚さが絶縁テープ116a〜116bの厚み方向の寸法を超える。したがって、電池セルが露出している部分の厚さが、電池パックの厚さ方向の寸法Eと一致する。すなわち、従来構造では、電池膨れが生じた場合に電池パックの外形寸法が維持されない。
【0099】
<電池パックの効果>
この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、電池セル11のテラス部22b上方に配置される回路基板ホルダ32によって、高い位置精度で回路基板12を所定の位置に配置することができる。さらに、回路基板ホルダ32はスナップフィット構造でセルホルダ31に固定されるため、回路基板12の配置を安定して保持することができる。
【0100】
この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、回路基板ホルダ32は、コネクタ付きリード15の出し位置を定めるための位置決め用の孔31eが設けられている。これにより、コネクタ付きリード15を高い位置精度で所定の位置から導出することができる。さらに、回路基板ホルダ32はスナップフィット構造でセルホルダ31に固定されるため、コネクタ付きリード15の出し位置を安定して保持することができる。
【0101】
この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、回路基板ホルダ32内には、複数のリブ33l〜33oおよび34a〜34dが設けられている。この複数のリブ33l〜33oおよび34a〜34dが回路基板12に対する押圧力を緩衝する緩衝材として機能して、回路基板12を保護することができる。
【0102】
さらに、回路基板ホルダ32が有する複数のリブ33l〜33oおよび34a〜34dによって形成される空間に、回路基板に搭載された実装部品が案内されて収容される。これにより、電池パックの組み立て工程時や外部からの回路基板12への応力発生時に実装部品を保護することができる。
【0103】
まこの発明の第1の実施の形態による電池パックでは、セルホルダ32によって、電池セル11を外装することによって、高い精度の外形寸法が得られる。さらに、セルホルダ32の上面および下面が中抜き形状とされており、電池セル11の膨れ部分を外装しないことによって、電池セル11が膨れても電池パックの外形寸法が変化しない効果を有する。さらに、ホルダ16を用いることによって、図14に示すような従来の電池パックで用いられた絶縁テープ116a〜116d等の部品省略することができ、また、製造工程も簡略化することができ、生産性を向上することができる。
【0104】
2.第2の実施の形態
この発明の第2の実施の形態による電池パックについて説明する。第2の実施の形態による電池パックは、電池セルの構成が第1の実施の形態と相違し、その他の構成は、第1の実施の形態による電池パックと同様である。
【0105】
また、この発明の第2の実施の形態による電池パックの製造方法も、電池セルの製造方法以外は、第1の実施の形態による電池パックの製造方法と同様である。したがって、以下では、電池セルの構成および電池セルの製造方法について説明し、その他は、第1の実施の形態による電池パックと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0106】
<電池セル>
電池セルは、電池素子と、電池素子を外装するラミネートフィルムと、ラミネートフィルムの内部に注液され、電池素子が浸される電解液とを有する。ラミネートフィルムは、例えば、第1の実施の形態と同様の構成を有する。電池素子は、角形または扁平型を有し、帯状の正極、帯状の負極とがセパレータを介して積層され、長手方向に巻回された構造を有する。
【0107】
電解液は、非プロトン性溶媒と、非プロトン性溶媒に溶解した電解質塩とから構成される。非プロトン性溶媒として例えばエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)或いはブチレンカーボネート(BC)等が用いられる。電解質塩には、溶剤に相溶するものが用いられ、カチオンとアニオンとが組み合わされてなる。カチオンには、アルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-、Br-、I-、SCN-、ClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-等が用いられる。電解質塩には、具体的には六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウムが電解液に対して溶解可能な濃度で用いられる。
【0108】
この電池セルは、以下のようにして得られる。まず、電池素子を、ラミネートフィルムに収容した後、一辺を除く外周縁部を熱融着し袋状とする。その後、熱融着されていない開口部分から、電解液を注液し、電池素子を電解液に浸すようにした後、開口部を熱融着して密封することによって、電池セルが得られる。
【0109】
<電池パックの効果>
第2の実施の形態による電池パックは、第1の実施の形態による電池パックと同様の効果が得られる。
【0110】
3.他の実施の形態
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、電池素子の構造は、第1の実施の形態による電池パックおよび第2の実施の形態による電池パックで説明した電池素子に限定されるものではない。例えば、正極、ポリマー電解質および/またはセパレータ、負極を積層した積層体を電池素子として用いてもよい。
【0111】
また、電池セル11の形状は、第1の実施の形態および第2の実施の形態による電池パックで説明した形状に限定されるものではない。また、ラミネートフィルム22は、上述した構造に代えて、他の構造を有するラミネートフィルムを用いてもよい。例えば、ラミネートフィルム22は、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0112】
11・・・電池セル
12・・・回路基板
13・・・安全保護素子
14・・・タブ
15・・・コネクタ付きリード
16・・・ホルダ
20・・・電池素子
22・・・ラミネートフィルム
22a・・・収容部
22b・・・テラス部
22c・・・接着層
22e・・・表面保護層
22d・・・金属層
25a・・・正極リード
25b・・・負極リード
31・・・セルホルダ
32・・・回路基板ホルダ
33・・・回路基板載置部
34・・・ホルダカバー
【技術分野】
【0001】
この発明は電池パックに関する。さらに詳しくは例えば電子機器に内蔵される電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型PC(Personal Computer)や携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)などの携帯型電子機器が普及し、その電源として高電圧、高エネルギー密度、軽量といった利点を有するリチウムイオン二次電池が使用されている。
【0003】
このリチウムイオン二次電池は、正極および負極と、正極および負極との間に配置されたセパレータと電解質とをラミネートフィルムで外装した電池セルに対して、保護回路等の回路を付加した電池パックとして、広く使用されている。
【0004】
この電池パックは、所謂、ハードパック型とソフトパック型とに大別される。ハードパック型の電池パックは、電池セルと回路基板等の部品等とが、例えばプラスチック製のケースに収納されており、例えば端子形状の出力を設けたものである。このハードパック型の電池パックは、例えばノート型PCなどに用いられる。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−045492号公報
【0006】
ソフトパック型の電池パックは、電子機器に内蔵されるものであり、電池セルや保護回路等が絶縁テープ等で固定され、電池セルの一部が露出され、電子機機本体に接続されるコネクタ付きリードなどの出力が設けられたものである。
【0007】
従来のソフトパック型の電池パックの構成の一例について説明する。図14は従来のソフトパック型の電池パックの構成例を示す分解斜視図である。図14に示すように、この電池パックでは、電池セル111から導出された正極リード118aおよび負極リード118bと、回路基板112とがタブ114を介して接続される。
【0008】
回路基板112には、出力のためのコネクタ付きリード115が接続されている。電池セル111、正極リード118aおよび負極リード118bおよび回路基板112などは、絶縁テープ116a〜116dを所定箇所に貼ることによって固定されている。
【0009】
また、絶縁テープ116a〜116dは両面テープであり、これによって、電池パックは電子機器本体の所定位置に固定されている。外装ラベル117は、電池セル111の所定箇所に貼られる。外装ラベル117には、電池セル111の定格等が印刷され表示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図14に示す電池パックでは、以下に説明する問題があった。絶縁テープ116a〜116dによる回路基板112の固定では、回路基板112の位置決めができないため、回路基板112に接続されたコネクタ付きリード115の出し位置にばらつきが生じてしまう。
【0011】
また、図14に示す電池パックでは、回路基板112に搭載される実装部品にガイド部材がなく、実装部品が露出されているため、組み立て時や外部から衝撃を受けた時に、実装部品が電池セル111に接触し、電池セル111を傷つけてしまうおそれがある。
【0012】
さらに図14に示す電池パックでは、正極リード118aおよび負極リード118bは、絶縁テープ116cおよび絶縁テープ116dによって固定されているだけなので、落下等によって衝撃が与えられた場合には、その衝撃によって変形してしまうおそれがある。
【0013】
また、絶縁テープ116a〜116dによる固定では、貼り付け時に所定の貼り付け箇所から貼りずれが生じ易く、電池セル111等の固定が不安定である。例えば、絶縁テープ116a〜116dの貼りずれが生じた場合には、電池セル111等の固定位置がずれ、電池パックの外形寸法が変化するおそれがある。
【0014】
さらに、図14に示す電池パックでは、電池膨れによる外形寸法の変化が大きいことから、電子機器本体への固定を両面テープの絶縁テープ116a〜116dで行っているため、例えば電池セル111の交換等を行う場合に電池パックの取り外しが容易ではない。
【0015】
さらに、図14に示す電池パックでは、電池セル111の外面に絶縁テープ116a〜116bを貼っているだけのため、電池セル111の膨張によって、電池パックの外形寸法が影響されやすい。
【0016】
また、手作業で行われる絶縁テープ116a〜116dの貼り付けは、貼り位置等のばらつきも多く、さらに複数枚の絶縁テープ116a〜116dを貼り付ける必要もあるため、生産性が悪い。
【0017】
したがって、この発明の目的は、絶縁テープ等の電池セルを固定する部品点数を削減することができ、外形寸法の変化が少なく、安定した構成部品の固定を行うことができ、高い位置精度で構成部品を配置することができる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するために、この発明は、電池素子がラミネートフィルムで外装された電池セルと、電池セルに接続された回路基板と、電池セルを外装するセルホルダ、および回路基板を外装する回路基板ホルダを有するホルダとを備え、セルホルダによって外装された電池セルのテラス部の上方の空間に、回路基板を外装した回路基板ホルダが配置された電池パックである。
【0019】
この発明による電池パックは、電池セルと、回路基板と、セルホルダおよび回路基板ホルダを備えたホルダとを備え、セルホルダによって外装された電池セルのテラス部の上方の空間に、回路基板を外装した回路基板ホルダが配置された構成を有する。この構成によって、絶縁テープ等の電池セルを固定する部品点数を削減することができ、外形寸法の変化が少なく、安定した構成部品の固定を行うことができ、高い位置精度で構成部品を配置することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、絶縁テープ等の電池セルを固定する部品点数を削減することができ、外形寸法の変化が少なく、安定した構成部品の固定を行うことができ、高い位置精度で構成部品を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1の実施の形態による電池パックの構成を示す分解斜視図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による電池パックの外観を示す斜視図である。
【図3】電池セルの構成を示す斜視図である。
【図4】ラミネートフィルムの構造を示す断面図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態による電池パックのホルダの構成を示す斜視図である。
【図6】回路基板載置部およびホルダカバーの構成を示す斜視図である。
【図7】回路基板載置部とホルダカバーとの組み合わせ状態を示す斜視図および断面図である。
【図8】この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造工程を説明するための斜視図である。
【図9】この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造工程を説明するための断面図である。
【図10】この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造工程を説明するための断面図である。
【図11】ヒンジ部の構造を示す断面図である。
【図12】この発明の第1の実施の形態による電池パックの外形寸法を説明するための断面図である。
【図13】従来の電池パックの外形寸法を説明するための断面図である。
【図14】従来の電池パックの構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(電池パックの第1の例)
2.第2の実施の形態(電池パックの第2の例)
3.他の実施の形態(変形例)
【0023】
1.第1の実施の形態
<電池パックの構成>
図1および図2を参照して、この発明の第1の実施の形態による電池パックの構成について説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態による電池パックの構成を示す分解斜視図である。図2は、この発明の第1の実施の形態による電池パックの外観を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、この発明の第1の実施の形態による電池パックは、電池セル11と、回路基板12と、安全保護素子13と、タブ14と、回路基板12に接続されるコネクタ付きリード15と、ホルダ16とを有する。
【0025】
電池セル11と回路基板12とが安全保護素子13および/またはタブ14を介して接続され、さらに回路基板12に対して、コネクタ付きリード15が接続されている。そして、電池セル11と、回路基板12とコネクタ付きリード15等とが接続され一体とされた部品が、ホルダ16によって外装されて図2に外観を示す電池パックとされる。なお、以下では、説明の便宜上、電池セル11と、回路基板12と、コネクタ付きリード15等の部品とが接続され一体とされた部品をセルアッシーと称する。
【0026】
図2に示すように、この電池パックは、セルアッシーがホルダ16によって外装されている。セルアッシーがホルダ16によって外装された状態では、電池セル11の上面および下面の一部が露出した状態とされている。この電池パックは、例えば、電子機器等の内部の所定箇所に組み込まれたソフトパック型の電池パックである。
【0027】
ホルダ16の前側には、電子機器に接続される導通部材であるコネクタ付きリード15が延出されている。このコネクタ付きリード15は、ホルダ16に設けられた孔31eに挿通されている。この孔31eは、高い位置精度でコネクタ付きリード15の出し位置を定めるために設けられたものである。
【0028】
また、ホルダ16の前側には、コネクタ付きリード15に接続された回路基板12、および回路基板12に接続された安全保護素子13等の部品が、ホルダ16に外装された状態で固定されている。詳細は後述するが、回路基板12は、ホルダ16の回路基板ホルダに収容され、この回路基板ホルダによって外装された状態で、ホルダ16の前側に配置されている。
【0029】
以下、電池パックの構成について詳細に説明する。
<電池セル>
図3に示すように、電池セル11は、電池素子20と、電池素子20を外装するラミネートフィルム22と、電池素子20に接続された正極リード25aおよび負極リード25bとから構成される。
【0030】
図3Bに示すように、ラミネートフィルム22に設けられた収容部22aに電池素子20が収容された後、折り返し辺を除く3辺を熱融着等によって封止して、図3Aに示す外観の電池セル11とされる。
【0031】
なお、電池素子20がラミネートフィルム22に収容され、回路基板12に接続されていない状態のものを電池セル11と称する。また、図3Aの斜線に示す、正極リード25aおよび負極リード25bを介して、ラミネートフィルム22が封止される部分を、テラス部22bと称する。
【0032】
<電池素子>
電池素子20は、例えば角形または扁平型を有し、帯状の正極、帯状の負極とがポリマー電解質およびセパレータを介して積層され、長手方向に巻回された構造を有する。そして、正極および負極にはそれぞれ正極リード25aおよび負極リード25bが接続されている。
【0033】
正極は、帯状の正極集電体上に正極活物質層が形成されてなり、さらに、正極活物質層上にポリマー電解質層が形成されている。また、負極は、帯状の負極集電体上に負極活物質層が形成されてなり、さらに、負極活物質層上にポリマー電解質層が形成されている。正極リード25aおよび負極リード25bは、それぞれ正極集電体および負極集電体に接合されている。正極活物質、負極活物質、ポリマー電解質としては、既に提案されている材料を使用することができる。
【0034】
正極は、目的とする電池の種類に応じて金属酸化物、金属硫化物または特定の高分子を正極活物質として構成することができる。例えばリチウムイオン電池を構成する場合では、正極活物質として、LiXMO2(式中、Mは、一種以上の遷移金属を表し、Xは、電池の充放電状態によって異なり、通常0.05以上1.10以下である)を主体とするリチウム複合酸化物等を使用できる。リチウム複合酸化物を構成する遷移金属Mとしては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)等が好ましい。
【0035】
このようなリチウムイオン複合酸化物の具体例としては、LiCoO2,LiNiO2,LiNiyCo1-yO2(式中、0<y<1である。)、LiMn2O4等を挙げることができる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。また、正極活物質としてTiS2、MoS2、NbSe2、V2O5等のリチウムを有しない金属硫化物または酸化物を使用しても良い。正極には、これらの正極活物質の複数種を併せて使用してもよい。また、以上のような正極活物質を使用して正極を形成するに際して、導電剤や結着剤等を添加しても良い。
【0036】
負極材料としては、リチウムをドープ、脱ドープできる材料を使用することができる。例えば、難黒鉛化炭素系材料や黒鉛系材料の炭素材料を使用することができる。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等の炭素材料を使用することができる。さらに、リチウムをドープ、脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO2等の酸化物を使用することができる。このような材料から負極を形成するに際して、結着剤等を添加しても良い。
【0037】
ポリマー電解質は、高分子材料と電解液と電解質塩とを混合してゲル状化した電解質をポリマー中に取り込んだものとされている。高分子材料は、電解液に相溶する性質を有し、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、およびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等、若しくはフッ素系ポリマーとして、例えばポリ(ビニリデンフルオロライド)、ポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)、或いはポリ(ビニリデンフルオロライド−co−トリフルオロエチレン)等の高分子材料、およびこれらの混合物が使用される。
【0038】
電解液成分は、上述した高分子材料を分散可能とし、非プロトン性溶媒として例えばエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)或いはブチレンカーボネート(BC)等が用いられる。電解質塩には、溶媒に相溶するものが用いられ、カチオンとアニオンとが組み合わされてなる。カチオンには、アルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-、Br-、I-、SCN-、ClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-等が用いられる。電解質塩には、具体的には六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウムが電解液に対して溶解可能な濃度で用いられる。
【0039】
<ラミネートフィルム>
ラミネートフィルム22は、図4に示すように、例えば、接着層22c、金属層22d、表面保護層22eを順次積層した防湿性、絶縁性を有する積層構造を有する。なお、3.他の実施の形態で後述するが、ラミネートフィルム22の構造はこれに限定されるものではない。
【0040】
接着層22cは、ポリマー電解質の変質を防ぐ機能を有するとともに、熱や超音波で溶け、互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)の他、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。接着層22aの厚さは、例えば30μm程度である。
【0041】
金属層22dは、軟質の金属材料が用いられ、外装材の強度向上の他、水分、酸素、光の進入を防ぎ内容物を守る役割を担っている。軟質の金属材料としては、軽さ、伸び性、価格、加工のしやすさからアルミニウムが最も好適であり、特にJIS規格に基く8021Oまたは8079O等のアルミニウムを用いるのが好ましい。
【0042】
表面保護層22eは、表面保護の機能を有する。外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0043】
<回路基板>
回路基板12には、充放電FET(Field Effect Transistor)や電池セル11の監視と充放電制御FETの制御を行うIC(Integrated Circuit)を含む保護回路、電池パックを識別するためのID抵抗、外部と接続するためのコネクタ等がマウントされている。
【0044】
充放電制御FETおよび充放電制御FETの制御を行うICを含む保護回路は、電池セル11の電圧を監視し、4.3V〜4.4Vを超えると充放電制御FETをオフし、充電を禁止する。さらに電池セル11の端子電圧が放電禁止電圧以下まで過放電し、電池セル11の端子電圧が放電禁止電圧を下回ると放電制御FETをオフし、放電を禁止する。
【0045】
<安全保護素子>
安全保護素子13は、電池セル11が高温となった場合に電池セル11の電流回路を遮断し、電池セル11の熱暴走を防止する部品で、例えば、PTC素子、ヒューズ、サーミスタ等である。PTC素子は、電池セル11と直列に接続され、電池セル11の温度が設定温度に比して高くなると、電気抵抗が急激に高くなって電池セル11に流れる電流を実質的に遮断する。ヒューズや、サーミスタも電池素子と直列に接続され、電池セル11の温度が設定温度より高くなると、電池セル11に流れる電流を遮断する。
【0046】
<ホルダ>
ホルダ16は、セルアッシーを外装することによって、セルアッシーを固定および保持する外装部材である。図5に示すように、ホルダ16は電池セル11を固定および保持するセルホルダ31と、回路基板12を固定および保持する回路基板ホルダ32とを有する。また、回路基板ホルダ32は、回路基板12が載置され収められる回路基板載置部33と、回路基板載置部33に上方から組み合わされるホルダカバー34とを有する。セルホルダ31と、回路基板ホルダ32とは一体的に成形された樹脂成形品である。
【0047】
ホルダ16を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等が挙げられる。中でも、難燃性、耐衝撃性の面からは、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)が好ましい。
【0048】
<セルホルダ31>
セルホルダ31の上面および下面と、3つ側面とで、電池セル11を収容することができる程度の空間を形成している。セルホルダ31の上面は、例えば図3に示す電池セル11の収容部22aの上面とほぼ同じ形状および面積を有する長方形が、この長方形を縮小した相似形によって、中抜きされた形状とされ、枠形の面31aを形成している。
【0049】
また、セルホルダ31の下面は、例えば電池セル11の下面とほぼ同じ形状および面積を有する長方形が、電池セル11の収容部22aの上面の長方形を縮小した相似形によって、中抜きされた形状とされ、枠形の面31bを形成している。
【0050】
さらに、セルホルダ31の下面において、点線mに囲まれた部分は、上方に正極リード25aおよび負極リード25bが配置されるリード配置部31fとされる。上述のコネクタ付きリード15の位置決め用の孔31eが、リード配置部31fから回路基板ホルダ32の底面33aにかけて設けられている。
【0051】
電池セル11がセルホルダ31に収容された状態では、セルホルダ31の上面の枠形の面31aは、電池セル11の収容部22aの上面の縁辺に対向した位置に配置され、電池セル11の収容部22aの上面の縁辺を外装している。
【0052】
また、電池セル11がセルホルダ31に収容された状態では、セルホルダ31の枠形の面31bは、電池セル11の下面の周縁、およびテラス部22bの外側の面に対向した位置に配置され、電池セル11の下面の周縁およびテラス部22bの外側の面を外装している。
【0053】
さらに、電池セル11がセルホルダ31に収容された状態では、セルホルダ31の3つの側面は、電池セル11の3つの側面に対向した位置に配置され、セルホルダ31の3つの側面によって、電池セル11の3つの側面を外装している。
【0054】
なお、セルホルダ31の各部の寸法は以下のように選ばれる。セルホルダ31の長手方向に位置する2つの側面の長さは、電池セル11の長手方向に位置する2つの側面の長さとそれぞれほぼ等しくされる。また、セルホルダ31の短手方向に位置する1つの側面の長さは、電池セル11の短手方向に位置する1つの側面の長さとほぼ等しくされる。
【0055】
セルホルダ31の枠形の面31aと枠形の面31bとの間隔は、電池セル11の厚みとほぼ等しくされる。また、リード配置部31fの短手方向の幅は、正極リード25aおよび負極リード25bの延出方向の長さとほぼ等しくされる。このような寸法が選ばれることによって、電池セル11の形状にフィットした状態で電池セル11がセルホルダ31に外装される。
【0056】
また、セルホルダ31の長手方向の2つの側面の所定位置には、後述する回路基板ホルダ32に設けられた突起部と係合する孔31c〜31dが設けられている。詳細は後述するが、この孔31c〜31dは、スナップフィット構造により、回路基板ホルダ32の折り曲げ状態を固定するためのものである。なお、スナップフィット構造とは、一方の部品に突起部等を設け、他方の部品に孔等を設け、突起部等と孔等とが係合されることによって、一方の部品と他方の部品とが固定および保持される構造をいう。
【0057】
<回路基板ホルダ>
回路基板ホルダ32は、回路基板12が組み入れられる回路基板載置部33と、回路基板載置部33に対して上方から組み合わされるホルダカバー34とを有する。
【0058】
<回路基板載置部>
回路基板載置部33は、回路基板12が組み入れられる部材である。図6Aに示すように、回路基板載置部33は、底面33aと、底面33aの両端部のそれぞれから上方に突出する断面コ字状の壁部33bおよび壁部33cとを有する。回路基板12は、この底面33aと壁部33bおよび壁部33cとが形成する空間に、回路基板12の主面と底面33aとが対向するように組み入れられる。
【0059】
また、回路基板載置部33の底面33aには、コネクタ付きリード15を挿通するための孔31eが設けられている。なお、上述したが、この孔31eは、リード配置部31fから底面33aにかけて設けられている。
【0060】
回路基板載置部33の短手方向に沿って設けられた壁面33dには、ホルダカバー34の突起部34f〜34gのそれぞれと係合する孔33f〜33gが設けられている。また、回路基板載置部33の短手方向に沿って設けられた壁面33eには、ホルダカバー34の突起部34h〜33iのそれぞれと係合する孔33h〜33iが設けられている。
【0061】
さらに、壁面33dおよび壁面33eには、中央部分にセルホルダ31の側面に備えた孔31cおよび31dと係合する突起部33j〜33kが、それぞれ設けられている。
【0062】
壁部33bおよび壁部33cの高さは、回路基板12の厚さ方向の長さより大きくされている。また、ホルダカバー34と回路基板載置部33とが組み合わされた状態で、ホルダカバー34の外側の面と、壁部33bおよび壁部33cの上側の面とが平らな面を形成するようにされている。
【0063】
また、底面33aには、底面33aから上方に突出した複数のリブ33l〜33oが設けられている。このリブ33l〜33oは、底面33aの短手方向に沿って設けられている。この複数のリブ33l〜33oが設けられる間隔は、例えば回路基板12の実装部品が搭載されている実装部分の幅より大きい長さに選ばれる。
【0064】
具体的に説明すると、例えばリブ33lとリブ33mとの間隔は、回路基板12実装部分の幅より大きい長さに選ばれ、リブ33nとリブ33oとの間隔は、回路基板12の実装部分の幅より大きい長さに選ばれる。
【0065】
<ホルダカバー>
ホルダカバー34は、回路基板載置部33に回路基板12が組み入れられた状態で、回路基板載置部33の上方から組み合わされることによって、回路基板12を外装する。図6Bに示すように、このホルダカバー34の回路基板12に対向する側の面には、上方に突出する複数のリブ34a〜34dが設けられている。この複数のリブ34a〜34dは、それぞれホルダカバー34の短手方向に沿って設けられている。また、ホルダカバー34の両側面には、回路基板載置部33の孔33f〜33iのそれぞれと係合する突起部34f〜34iが設けられている。
【0066】
<ホルダカバーと回路基板載置部との組み合わせ状態>
図7は、回路基板12が収容され、回路基板載置部33とホルダカバー34とが組み合わされた回路基板ホルダ32の状態を示す。図7Aは、回路基板12が収容され、回路基板載置部33とホルダカバー34とが組み合わされた回路基板ホルダ32の状態を示す斜視図である。図7Bは、図7Bにおいて線Lに沿った断面図である。
【0067】
図7Aに示すように、回路基板12が収容され、回路基板載置部33とホルダカバー34とが組み合わされた状態では、壁部33bの孔33f〜33gとホルダカバー34の突起部34f〜34gとが係合される。また、図7Aでは示されない位置にあるが、壁部33cの孔33h〜33iとホルダカバー34の突起部34h〜34iとが係合される。このようなスナップフィット構造によって、回路基板載置部33とホルダカバー34との組み合わせ状態が固定および保持される。
【0068】
また、図7Bに示すように、回路基板12が収容され、回路基板ホルダ32とホルダカバー34とが組み合わされた状態では、ホルダカバー34の4つのリブ34a〜34dの先端部分が回路基板12の基板面に当接している。また、回路基板12が収容され、回路基板ホルダ32とホルダカバー34とが組み合わされた状態では、回路基板載置部33の底面33aに設けられた、4つのリブ33l〜33oの先端部分が回路基板12の基板面に当接している。
【0069】
このようにリブ34a〜34d、リブ33l〜33oの先端部分が回路基板12の基板面に当接された構造とすることによって、回路基板12に対する衝撃を緩衝する部材として機能する。
【0070】
また、回路基板12の実装部品が搭載された実装部分51a〜51bは、回路基板載置部33に対向する側に配置されている。回路基板12の実装部分51a〜51bは、複数のリブ33l〜33oのうちの幅方向に隣接するリブ同士によって形成される空間に配置されている。
【0071】
より具体的に説明すると、実装部分51aは、幅方向に隣接するリブ33lと33mとによって形成された空間に配置されている。また、実装部分51bは、幅方向に隣接するリブ33nとリブ33oとによって形成された空間に配置されている。
【0072】
また、リブ33l〜リブ33oの突出方向の長さは、回路基板12の実装部品が設けられていない面を基準とした長さで、実装部分51a〜51bの突出方向の長さより、大きい長さに選ばれる。
【0073】
これにより、実装部品は、回路基板12が組み入れられた状態において、例えば、矢印P1およびP2に示す上下方向から加圧されても、回路基板載置部33の底面33aに接触しないような空間に配置される。したがって、電池パックの組み立て工程や外部からの基板への応力発生時に実装部品を保護することができる。
【0074】
<電池パックの製造方法>
この発明の第1の実施の形態による電池パックの製造方法について説明する。
【0075】
<電池素子作製工程>
まず、例えば、ゲル電解質層が両面に形成された正極および負極と、セパレータとを、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に順次積層し、この積層体を平板の芯に巻き付けて、長手方向に多数回巻回して巻回型の電池素子20を作製する。
【0076】
<電池セル作製工程>
電池素子20を、ラミネートフィルム22に設けられた収容部22aに収容した後、収容部22aの開口を覆うようにラミネートフィルム22を折り返す。その後、折り返し辺を除く3辺を熱融着等によって封止して、電池セルを作製する。
【0077】
<リード等接続工程>
電池セル11の正極リード25aおよび負極リード25bを、タブ14および/または安全保護素子13を介して回路基板12に接続する。また、さらにコネクタ付きリード15を回路基板12の所定箇所に接続する。これにより、電池セル11と、回路基板12等との部品が接続されて一体となったセルアッシー得られる。なお、各部品同士の接続は、例えば熱溶接、超音波溶接などによって行う。
【0078】
<セルアッシー組み入れ工程>
次に、セルアッシーをホルダ16に組み入れる。セルアッシー組み入れ工程の説明では、まず、セルアッシー組み入れ工程の簡単な流れを、図8A〜図8Cを参照して説明する。次に、セルアッシー組み入れ工程のより詳細な説明を、図9および図10を参照して説明する。
【0079】
まず、図8Aに示すように、セルホルダ31に電池セル11が収容され、回路基板ホルダ32の回路基板載置部33に回路基板12が載置された状態とされる。次に、図8Bに示すように、図8Aに示す状態のホルダカバー34を矢印Pに示すように折り曲げ、ホルダカバー34を、回路基板載置部33の上方から回路基板載置部33に組み合わせる。
【0080】
このとき、上述のように、ホルダカバー34に設けられた突起部34f〜34iと、それぞれ回路基板載置部33に設けられた孔33f〜33iとが係合する。このスナップフィット構造によって、回路基板載置部33とホルダカバー34との組み合わせ状態が固定および保持される。
【0081】
なお、後述するが、ホルダカバー34には、所定の位置にヒンジ部(図8では図示省略)が設けられており、ホルダカバー34の折り曲げを円滑且つ正確に行うことができる。
【0082】
次に、図8Cに示すように、図8Bに示す状態の回路基板ホルダ32を矢印Qに示すように折り曲げることによって、図8に示す状態の回路基板ホルダ32をセルホルダ31の前側の端部の空間に配置する。
【0083】
このセルホルダ31の端部の前側の空間は、電池セル11のテラス部22bの上方の空間である。より具体的には、セルホルダ31の端部の空間は、電池セル11がセルホルダ31に組み入れられた状態において、電池セル11のテラス部22bの面と、電池セル11の収容部22aの端面と、電池セル11の2つの側面とで形成された空間である。
【0084】
このとき、回路基板載置部33に設けられた突起部33j〜33kと、ホルダ16に設けられた孔33c〜33dとがそれぞれ係合し、スナップフィット構造によって、図8Cに示す配置状態が固定および保持される。以上により、ホルダ16にセルアッシーが組み入れられ、この発明の第1の実施の形態による電池パックが得られる。
【0085】
<セルアッシー組み入れ工程の詳細>
図9および図10を参照して、セルアッシー組み入れ工程の詳細を説明する。図9A〜図9C、および図10A〜図10Cは、セルアッシー組み入れ工程の各工程を説明するための断面図である。
【0086】
なお、図9Aは図8Aに示す状態に対応する。図9Cは図8Bに示す状態に対応する。図10Cは図8Cに示す状態に対応する。図9Bは、図9Aに示す状態から、図9Cに示す状態の途中の状態を新たに示す。図10Aおよび図10Bは、図9Cに示す状態から図10Cに示す状態の途中の状態を新たに示す。
【0087】
図9Aに示すように、ホルダ16には、所定の折り曲げ位置に対応した位置にヒンジ部41a〜41dが設けられている。なお、以下では、ヒンジ部41a〜41dを総称する場合は、ヒンジ部41と称する。
【0088】
ヒンジ部41は、図11に示すように、ホルダ16の幅方向に沿って設けられた断面V字状の溝であり、溝の底からホルダ16の内面までの厚さtは、例えば0.2mm程度に選ばれる。このヒンジ部41によって、ホルダ16の折り曲げを円滑且つ正確に行うことができる。
【0089】
まず、図9Aに示す状態において、ヒンジ部41bを折り曲げることによって、図9Bに示す状態とされる。次に、図9Bに示す状態において、ヒンジ部41aを折り曲げることによって、図9Cに示す状態とされる。図9Cに示す状態は、図8Bに示す状態に対応する。
【0090】
次に、図9Cに示す状態において、ヒンジ部41dを折り曲げることによって、図10Aに示す状態とされる。次に、図10Aに示す状態において、ヒンジ部41eを折り曲げることによって、図10Bに示す状態とされる。図10Bに示す状態において、上方に延びたコネクタ付き付きリード15を矢印Rに示す方向に、折り曲げることによって、図10Cに示す状態とされる。以上により、セルアッシーがホルダ16に組み入れられ、この発明の第1の実施の形態による電池パックが得られる。
【0091】
<セル膨れと外形寸法精度について>
この発明の第1の実施の形態による電池パックの外形の寸法精度について、従来構造との比較によって説明する。図12は、この発明の第1の実施の形態による電池パックの断面図である。図13は、従来の電池パックの断面図である。なお、図13に示す電池パックは、図14を参照して説明した従来の電池パックの断面図である。
【0092】
まず、図12を参照して、この発明の第1の実施の形態による電池パックの厚み方向の外形寸法について説明する。一般的に電池セル11の充放電サイクルが繰り返されることによって、電池セル11が劣化して膨張することが知られている。
【0093】
図12Aは電池セル11が劣化する前の状態であって、電池セル11の膨張が生じていない状態を示す。図12Bは電池セル11が劣化し、電池セル11の膨張が生じている状態を示す。なお、図12Aおよび図12Bに示す電池セル11は、満充電時の状態を示すものである。
【0094】
図12Aに示す電池セル11が劣化する前の状態では、電池パックの厚さ方向の外形寸法Aは、ホルダ16の厚さ方向の寸法と一致する。電池パックの外形に対して、電池セル11の露出面の上方にホルダ16の厚み分とほぼ等しいクリアランスBが存在する。また、電池パックの外形に対して、電池セル11の露出面の下方にホルダ16の厚み分とほぼ等しいクリアランスCが存在する。
【0095】
図12Bに示す電池セル11が劣化した状態では、電池セル11が膨張しているが、電池セル11の膨張分の厚さは、クリアランスBおよびクリアランスCの範囲内である。したがって、電池セル11が膨張した場合でも、電池パックの厚さ方向の寸法Aは、変化しい。すなわち、この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、電池膨れが生じた場合でも、電池パックの外形寸法が維持されている。
【0096】
このように、この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、電池セル11が劣化して膨張した場合でも、電池セル11の露出部分の上方および下方のクリアランスBおよびCによって、電池セル11の膨張分を吸収する。これにより、電池セル11が膨張した場合でも、電池パックの外形寸法に変化が生じないという効果が得られる。
【0097】
次に、図13を参照して、従来構造の電池パックの厚み方向の外形寸法について説明する。図13Aは電池セル111が劣化する前の状態であって、電池セル111の膨張が生じていない状態を示す。図13Bは電池セル11が劣化する前の状態であって、電池セル111の膨張が生じている状態を示す。なお、図13Aおよび図13Bに示す電池セル111は、満充電時の状態を示すものである。
【0098】
図13Aに示す電池セル111が劣化する前の状態では、電池パックの厚さ方向の外形寸法Dは、絶縁テープ116a〜116bの厚み方向の寸法と一致する。図13Bに示す電池セル111が劣化した状態では、電池セル111が膨張し、電池セル111が露出している部分の厚さが絶縁テープ116a〜116bの厚み方向の寸法を超える。したがって、電池セルが露出している部分の厚さが、電池パックの厚さ方向の寸法Eと一致する。すなわち、従来構造では、電池膨れが生じた場合に電池パックの外形寸法が維持されない。
【0099】
<電池パックの効果>
この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、電池セル11のテラス部22b上方に配置される回路基板ホルダ32によって、高い位置精度で回路基板12を所定の位置に配置することができる。さらに、回路基板ホルダ32はスナップフィット構造でセルホルダ31に固定されるため、回路基板12の配置を安定して保持することができる。
【0100】
この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、回路基板ホルダ32は、コネクタ付きリード15の出し位置を定めるための位置決め用の孔31eが設けられている。これにより、コネクタ付きリード15を高い位置精度で所定の位置から導出することができる。さらに、回路基板ホルダ32はスナップフィット構造でセルホルダ31に固定されるため、コネクタ付きリード15の出し位置を安定して保持することができる。
【0101】
この発明の第1の実施の形態による電池パックでは、回路基板ホルダ32内には、複数のリブ33l〜33oおよび34a〜34dが設けられている。この複数のリブ33l〜33oおよび34a〜34dが回路基板12に対する押圧力を緩衝する緩衝材として機能して、回路基板12を保護することができる。
【0102】
さらに、回路基板ホルダ32が有する複数のリブ33l〜33oおよび34a〜34dによって形成される空間に、回路基板に搭載された実装部品が案内されて収容される。これにより、電池パックの組み立て工程時や外部からの回路基板12への応力発生時に実装部品を保護することができる。
【0103】
まこの発明の第1の実施の形態による電池パックでは、セルホルダ32によって、電池セル11を外装することによって、高い精度の外形寸法が得られる。さらに、セルホルダ32の上面および下面が中抜き形状とされており、電池セル11の膨れ部分を外装しないことによって、電池セル11が膨れても電池パックの外形寸法が変化しない効果を有する。さらに、ホルダ16を用いることによって、図14に示すような従来の電池パックで用いられた絶縁テープ116a〜116d等の部品省略することができ、また、製造工程も簡略化することができ、生産性を向上することができる。
【0104】
2.第2の実施の形態
この発明の第2の実施の形態による電池パックについて説明する。第2の実施の形態による電池パックは、電池セルの構成が第1の実施の形態と相違し、その他の構成は、第1の実施の形態による電池パックと同様である。
【0105】
また、この発明の第2の実施の形態による電池パックの製造方法も、電池セルの製造方法以外は、第1の実施の形態による電池パックの製造方法と同様である。したがって、以下では、電池セルの構成および電池セルの製造方法について説明し、その他は、第1の実施の形態による電池パックと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0106】
<電池セル>
電池セルは、電池素子と、電池素子を外装するラミネートフィルムと、ラミネートフィルムの内部に注液され、電池素子が浸される電解液とを有する。ラミネートフィルムは、例えば、第1の実施の形態と同様の構成を有する。電池素子は、角形または扁平型を有し、帯状の正極、帯状の負極とがセパレータを介して積層され、長手方向に巻回された構造を有する。
【0107】
電解液は、非プロトン性溶媒と、非プロトン性溶媒に溶解した電解質塩とから構成される。非プロトン性溶媒として例えばエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)或いはブチレンカーボネート(BC)等が用いられる。電解質塩には、溶剤に相溶するものが用いられ、カチオンとアニオンとが組み合わされてなる。カチオンには、アルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-、Br-、I-、SCN-、ClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-等が用いられる。電解質塩には、具体的には六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウムが電解液に対して溶解可能な濃度で用いられる。
【0108】
この電池セルは、以下のようにして得られる。まず、電池素子を、ラミネートフィルムに収容した後、一辺を除く外周縁部を熱融着し袋状とする。その後、熱融着されていない開口部分から、電解液を注液し、電池素子を電解液に浸すようにした後、開口部を熱融着して密封することによって、電池セルが得られる。
【0109】
<電池パックの効果>
第2の実施の形態による電池パックは、第1の実施の形態による電池パックと同様の効果が得られる。
【0110】
3.他の実施の形態
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、電池素子の構造は、第1の実施の形態による電池パックおよび第2の実施の形態による電池パックで説明した電池素子に限定されるものではない。例えば、正極、ポリマー電解質および/またはセパレータ、負極を積層した積層体を電池素子として用いてもよい。
【0111】
また、電池セル11の形状は、第1の実施の形態および第2の実施の形態による電池パックで説明した形状に限定されるものではない。また、ラミネートフィルム22は、上述した構造に代えて、他の構造を有するラミネートフィルムを用いてもよい。例えば、ラミネートフィルム22は、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0112】
11・・・電池セル
12・・・回路基板
13・・・安全保護素子
14・・・タブ
15・・・コネクタ付きリード
16・・・ホルダ
20・・・電池素子
22・・・ラミネートフィルム
22a・・・収容部
22b・・・テラス部
22c・・・接着層
22e・・・表面保護層
22d・・・金属層
25a・・・正極リード
25b・・・負極リード
31・・・セルホルダ
32・・・回路基板ホルダ
33・・・回路基板載置部
34・・・ホルダカバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池素子がラミネートフィルムで外装された電池セルと、
該電池セルに接続された回路基板と、
上記電池セルを外装するセルホルダ、および上記回路基板を外装する回路基板ホルダを有するホルダとを備え、
上記セルホルダによって外装された上記電池セルのテラス部の上方の空間に、上記回路基板を外装した上記回路基板ホルダが配置された電池パック。
【請求項2】
上記回路基板ホルダと上記セルホルダとの係止によって、上記回路基板ホルダの配置が固定された請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
上記回路基板ホルダは、上記回路基板を収める回路基板載置部と、該回路基板載置部と組み合わされるホルダカバーとを有し、
上記回路基板は、上記回路基板載置部の底面と、該底面の両端部のそれぞれから上方に突出した2つの壁部とによって形成された空間に収められ、
上記回路基板を収めた上記回路基板載置部に対して、上記ホルダカバーを組み合わせることによって、上記壁部と上記底面とが形成する空間の上方の開口が上記ホルダカバーによって覆われた請求項1記載の電池パック。
【請求項4】
上記回路基板載置部の底面および上記ホルダカバーの上記回路基板に対向する側の面には、複数のリブが設けられた請求項3記載の電池パック。
【請求項5】
上記複数のリブの先端が上記回路基板に当接された請求項4記載の電池パック。
【請求項6】
上記回路基板載置部の底面に設けられた上記複数のリブの先端が上記回路基板に当接され、
上記複数のリブと上記回路基板の面とによって形成された空間に、上記回路基板に搭載された実装部品が配置された請求項4記載の電池パック。
【請求項7】
上記回路基板ホルダと上記回路基板載置部との係止によって、上記回路基板ホルダと上記回路基板載置部との組み合わせが固定された請求項3記載の電池パック。
【請求項8】
上記ホルダは、所定の折り曲げ位置に複数のヒンジ部を有し、
上記ヒンジ部が折り曲げられた状態で、上記セルホルダによって外装された上記電池セルのテラス部の上方の空間に、上記回路基板を外装した上記回路基板ホルダが配置された請求項1記載の電池パック。
【請求項9】
上記セルホルダの上面は、上記電池セルの上面の縁部を外装する枠形状を有し、
上記セルホルダの下面は、上記電池セルの下面の縁部を外装する枠形状を有し、
上記セルホルダに上記電池セルが外装された状態において、上記電池セルの上面および下面の一部が露出された請求項1記載の電池パック。
【請求項10】
上記電池セルの露出部分の厚さは、上記セルホルダの厚さより小さい厚さとされた請求項9記載の電池パック。
【請求項1】
電池素子がラミネートフィルムで外装された電池セルと、
該電池セルに接続された回路基板と、
上記電池セルを外装するセルホルダ、および上記回路基板を外装する回路基板ホルダを有するホルダとを備え、
上記セルホルダによって外装された上記電池セルのテラス部の上方の空間に、上記回路基板を外装した上記回路基板ホルダが配置された電池パック。
【請求項2】
上記回路基板ホルダと上記セルホルダとの係止によって、上記回路基板ホルダの配置が固定された請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
上記回路基板ホルダは、上記回路基板を収める回路基板載置部と、該回路基板載置部と組み合わされるホルダカバーとを有し、
上記回路基板は、上記回路基板載置部の底面と、該底面の両端部のそれぞれから上方に突出した2つの壁部とによって形成された空間に収められ、
上記回路基板を収めた上記回路基板載置部に対して、上記ホルダカバーを組み合わせることによって、上記壁部と上記底面とが形成する空間の上方の開口が上記ホルダカバーによって覆われた請求項1記載の電池パック。
【請求項4】
上記回路基板載置部の底面および上記ホルダカバーの上記回路基板に対向する側の面には、複数のリブが設けられた請求項3記載の電池パック。
【請求項5】
上記複数のリブの先端が上記回路基板に当接された請求項4記載の電池パック。
【請求項6】
上記回路基板載置部の底面に設けられた上記複数のリブの先端が上記回路基板に当接され、
上記複数のリブと上記回路基板の面とによって形成された空間に、上記回路基板に搭載された実装部品が配置された請求項4記載の電池パック。
【請求項7】
上記回路基板ホルダと上記回路基板載置部との係止によって、上記回路基板ホルダと上記回路基板載置部との組み合わせが固定された請求項3記載の電池パック。
【請求項8】
上記ホルダは、所定の折り曲げ位置に複数のヒンジ部を有し、
上記ヒンジ部が折り曲げられた状態で、上記セルホルダによって外装された上記電池セルのテラス部の上方の空間に、上記回路基板を外装した上記回路基板ホルダが配置された請求項1記載の電池パック。
【請求項9】
上記セルホルダの上面は、上記電池セルの上面の縁部を外装する枠形状を有し、
上記セルホルダの下面は、上記電池セルの下面の縁部を外装する枠形状を有し、
上記セルホルダに上記電池セルが外装された状態において、上記電池セルの上面および下面の一部が露出された請求項1記載の電池パック。
【請求項10】
上記電池セルの露出部分の厚さは、上記セルホルダの厚さより小さい厚さとされた請求項9記載の電池パック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−182598(P2010−182598A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26871(P2009−26871)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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