説明

電池ボックス

【課題】 電池交換をより容易に行なうことができる電池ボックスを提供すること。
【解決手段】 電池の収納部110は、複数の円筒型の電池20をその開口111から見て手前側と奥側に平行に並べて収納するものであり、電池蓋140は、複数の電池20を保持するものであり、収納部の開口を覆う遮蔽部141と、複数の電池をそれらの円筒軸方向に挟む第1アーム部142及び第2アーム部143とを備え、第1アーム部は、遮蔽部から収納部の内部に延出する環状のものであり、複数の電池の正極21側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部142aが奥側の電池の突起状の正極の側面に当接するものであり、第2アーム部は、遮蔽部から収納部の内部に延出する環状のものであり、複数の電池の負極22側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部143aが奥側の電池の側面に当接する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒型の電池を収納する電池ボックスに関し、電池交換を容易に行なうべく工夫されたものである。
【背景技術】
【0002】
電池を電源とする電子機器には、使用する電池の形態に応じて所定の電池ボックスが設けられている。両端に正極及び負極をそれぞれ有する円筒型の電池を使用する電子機器の場合、その電池ボックスは、電池を収納する収納部と、正極に接触する端子部と、負極に接触する端子部とを備え、少なくとも一方の端子部が電池を押え付けるばね性を有する構造となっている。特に、収納部の開口が電池の側面を露呈し、且つ負極側の端子部をコイルばねとしたものがよく知られており、そのような電池ボックスは、特許文献1及び2等にも開示されている。また、電池ボックスとしては、特許文献3等にも開示されているように、電池蓋に電池を保持し、これを所定の収納部に着脱するように構成されたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4025557号公報
【特許文献2】特開平11−176406号公報
【特許文献3】特開2001−76694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて近年、電子機器の筐体形態は益々多様化される傾向にあり、電池ボックスについても、電池交換を容易に行なうべく更なる構造的工夫が必要であると考えられる。
【0005】
電池ボックスについて、電池を収納する収納部の形態は、様々である。本願発明者は、収納部の開口が電池の側面を露呈するものであって、複数の電池を開口から見て手前側と奥側に平行に並べて収納するものについて、電池蓋に電池を保持する構成を検討することとした。特に、電池ボックスについては、電池交換が容易であることが望ましい。この点、前述したように端子部が電池を押え付けるばね性を有するものであれば、電池の非収納時には、端子部間の寸法が電池の円筒軸方向の寸法よりもある程度短くなっている。つまり、電池を装着する際には、端子部を圧縮しつつ電池を押し込むこととなる。また、電池を取り外す際には、電池を押え付けている端子部が電池に引き摺られることとなる。従って、電池を交換する作業は、端子部が破損しないように十分配慮して行なう必要がある。そして、複数の電池を開口から見て手前側と奥側に平行に並べて収納する場合は、奥側の電池が手前側の電池の端子部間を越えることになるため、奥側の電池の装着及び取り外しが困難になるという問題もある。手前側の電池及び奥側の電池を保持する電池蓋の構造とともに、このような問題に対処する構成も必要であると考えられる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池交換をより容易に行なうことができる電池ボックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1請求項に記載した発明は、両端に正極及び負極をそれぞれ有する円筒型の電池を収納する収納部と、前記正極に接触する第1端子部と、前記負極に接触する第2端子部と、前記収納部の開口を覆う電池蓋とを備えた電池ボックスにおいて、前記収納部は、前記電池の側面を露呈する開口を有し、前記収納部は、複数の前記電池を前記開口から見て手前側と奥側に平行に並べて収納するものであり、前記電池蓋は、複数の前記電池を保持するものであり、前記開口を覆う遮蔽部と、複数の前記電池をそれらの円筒軸方向に挟む第1アーム部及び第2アーム部とを備え、前記電池は、前記正極が突起状に設けられており、前記負極が平坦に設けられており、前記第1アーム部は、前記遮蔽部から前記収納部の内部に延出する環状のものであり、複数の前記電池の正極側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部が前記奥側の電池の前記正極の側面に当接するものであり、前記第2アーム部は、前記遮蔽部から前記収納部の内部に延出する環状のものであり、複数の前記電池の負極側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部が前記奥側の電池の側面に当接するものである構成の電池ボックスである。
【0008】
本願第2請求項に記載した発明は、請求項1において、前記第2端子部は、前記電池を押え付けるばね性を有するものであり、前記負極に接触する接触面が球面状の接触部材と、前記接触部材を前記電池の円筒軸方向に移動可能に保持する円筒部材と、前記接触部材を前記収納部内側に向って付勢するコイルばねとを備え、前記電池の非収納時には、前記接触面が前記円筒部材から前記収納部内側に突出している構成の電池ボックスである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電池交換をより容易に行なうことができる電池ボックスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係り、電子機器を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例に係り、電子機器を示す側面図である。
【図3】本発明の実施例に係り、電子機器を示す背面図である。
【図4】本発明の実施例に係り、電子機器(電池蓋を外したもの)を示す背面図を示す側面透視説明図である。
【図5】本発明の実施例に係り、電子機器の要部を示す上面断面図であり、電池ボックスの説明図である。
【図6】本発明の実施例に係り、(a)は第1端子部を示す上面図、(b)は第1端子部を示す左側面図である。
【図7】本発明の実施例に係り、(a)は第2端子部を示す上面図、(b)は第2端子部を示す右側面図である。
【図8】本発明の実施例に係り、(a)は電池蓋を示す上面図、(b)は電池蓋を示す正面図、(c)は電池蓋を示す左側面図、(d)は電池蓋を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1乃至図8に示す電子機器1は、ケース10の内部に指針を駆動するムーブメント、回路基板、スピーカ等の所要の部材を設けてなる時計のユニットである。この電子機器1は、所定の外装筐体に装着して報時時計を構成するものとなっている。
【0012】
ケース10は、その正面側を構成する第1ケース部材11と、その背面側を構成する第2ケース部材12とを組付けてなるものである。第1ケース部材11及び第2ケース部材12は、所定の形状に成形された樹脂製の射出成形部材であり、互いにねじ止め又はフック止めして組付けるように構成されている。
【0013】
また、この電子機器1は、両端に正極21及び負極22をそれぞれ有する円筒型の電池20を電源として使用する。円筒型単電池としては、アルカリ乾電池、マンガン乾電池、ニッケル乾電池、リチウム乾電池、ニッケル・水素乾電池等があり、所定の規格サイズのもをの電池ボックス100に収納して使用する。電池20は、正極21が突起状に設けられており、負極22が平坦に設けられている。
【0014】
本例の場合、電池ボックス100は、第2ケース部材12に設けられている。この電池ボックス100は、電池20を収納する収納部110と、正極21に接触する第1端子部120と、負極22に接触する第2端子部130と、収納部110の開口111を覆う電池蓋140とを備え、第2端子部130が電池20を押え付けるばね性を有するものとなっている。
【0015】
収納部110は、複数の電池20を開口111から見て手前側と奥側に平行に並べて収納するものとなっている。この開口111は、収納部110に収納された手前側の電池20の側面を露呈するものである。電池20の装着及び取り外しは、開口111を通して行なわれる。開口111は、ケース10の背面下部に位置している。
【0016】
第1端子部120は、正極21に接触する接触面120aを凸状に成形してなる金属プレートである。第1端子部120は、これを第2ケース部材12の要所に支持して設けられる。
【0017】
第2端子部130は、負極22に接触する接触面131aが球面状の接触部材131と、接触部材131を電池20の円筒軸方向に移動可能に保持する円筒部材132と、接触部材131を収納部110内側に向って付勢するコイルばね133とを備えている。
【0018】
接触部材131としては、金属製の球体を採用している。また、円筒部材132は、所定の形状に成形された金属製の部材からなり、接触部材131の抜け止めをする端部リブ132aと、これを第2ケース部材12の要所に支持する鍔部132bとを備えている。コイルばね133は、所定の弾性力を有する金属製の部材である。接触部材131及びコイルばね133は、円筒部材132の一方の底面(収納部110に対して反対側となる底面)から順次円筒部材132の内部に挿入し、その底面は、コイルばね133を圧縮しつつ金属製の蓋体132cを溶接、ハンダ付け、又は凹凸嵌合して閉鎖する。電池20の非収納時には、接触面131aが円筒部材132から収納部110内側に突出している。
【0019】
ケース10の内部において、収納部110は、第2ケース部材12から第1ケース部材11の内側に延出している。収納部110の要所には、電池20の数に応じて複数の第1端子部120及び複数の第2端子部130が配置される。各第1端子部120及び各第2端子部130は、リード線にて所定のもの同士が互いに接続され、且つケース10内部の回路基板に接続されている。このように電池ボックス100を設けることによれば、収納部110を構成する部材をケース10と別途に用意する必要がないので、部品点数を削減することができる。また、リード線が回路基板とともに第1ケース部材11に覆われるので、外観上の見栄えもよいという利点がある。
【0020】
本例の電池蓋140は、所定の形状に成形された樹脂製の射出成形部材であり、収納部110に収納する複数の電池20を保持するものとなっている。この電池蓋140は、開口110を覆う遮蔽部141と、複数の電池20をそれらの円筒軸方向に挟む第1アーム部142及び第2アーム部143とを備えている。第1アーム部142及び第2アーム部143は、適度な可撓性を有するものであり、複数の電池20は、各アーム部142,143間を押し広げてそれらの間に弾性力を以って挟まれる構成となっている。また、遮蔽部141の要所には、複数の突片144,145がそれぞれ設けられており、電池蓋140は、これらの突片144,145を第2ケース部材の要所に設けた孔部に挿入、掛止又は圧入することにより、位置決め及び固定される。
【0021】
第1アーム部142は、遮蔽部141から収納部110の内部に延出する環状のものであり、複数の電池20の正極21側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部142aが奥側の電池20の正極21の側面に当接するものとなっている。
【0022】
また、第2アーム部143は、遮蔽部141から収納部110の内部に延出する環状のものであり、複数の電池20の負極22側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部143aが奥側の電池20の側面に当接するものとなっている。第2アーム部143の折り返し部143aは、電池20の側面に向って屈曲した状態となっており、電池20を装着する際及び電池20を取り外す際に、この折り返し部143aが第2端子部130の接触面131aに突き当たることはない。
【0023】
複数の電池20は、電池蓋140に保持して収納部110に挿入することにより、装着される。また、蓋部140とともに取り外される。各アーム部142,143の折り返し部142a,143aは、取り外す際に奥側の電池20にバランスよく引っ掛かる構成となっている。
【0024】
このような構成によると、電池交換をより容易に行なうことができる。本例の電池ボックス100は、第2端子部130が電池20を押え付けるばね性を有するものである。故に、電池20の非収納時には、端子部120,130間の寸法が電池20の円筒軸方向の寸法よりもある程度短くなっており、電池20を装着する際には、第2端子部130を圧縮しつつ電池20を押し込むこととなる。また、電池20を取り外す際には、電池20を押え付けている端子部120,130が電池20に引き摺られることとなる。しかるに、本例の第2端子部130は、接触面131aが球面状の接触部材131を円筒部材132にて移動方向を規制しつつコイルばね133にて付勢する構成であるため、電池20の装着及び取り外しに伴う接触部材131の動きが円滑なものとなっており、これが破損を防止するという点で極めて有利な構成となっている。また、本例の接触部材131は、金属製の球体であって、円筒部材132の内部において回転することが可能である。故に、電池20との摩擦が強い場合は、接触部材131が適宜回転する。
【0025】
特に、電池20は、その姿勢を収納時の姿勢と平行な状態で装着及び取り外すことができる。例えば、弾性体であるコイルばねを接触部材とする従来のものは、電池を一旦斜めにして挿入する必要がある。そのようなものと比較すると、収納部110の幅を短くすることができるという利点もある。
【0026】
また、電池20を収納部110の開口111から見て手前側と奥側に平行に並べて収納する場合は、奥側の電池20が手前側の電池20の端子部120,130間を越えることになるため、奥側の電池20の装着及び取り外しが困難になる。この点、本例によれば、奥側の電池20の姿勢を収納時の姿勢と平行に維持しつつ手前側の電池20の端子部120,130間を通過させることができる。そのとき手前側の電池20の第2端子部130は、一旦圧縮され奥側の電池20が通過すると元の状態に復帰する。このような構成により、奥側の電池20の装着及び取り外しも比較的容易に行なうことが可能である。
【0027】
更に、本例の電池蓋140によれば、手前側の電池20及び奥側の電池20は、収納部110に対してそれらの姿勢を収納時の姿勢と平行にしつつ一度に装着及び取り外しすることができる。特に、第1アーム部142及び第2アーム部143は、円筒型の電池20の形状に対応すべく工夫・検討されたものであり、手前側の電池20及び奥側の電池20を確実に且つ安定的に保持できる構造となっている。
【0028】
以上説明したように、本例の電池ボックスは、電池交換を容易に行なうべく極めて合理的に構成されたものである。尚、本例における各部の構成は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲において適宜に設計変更が可能であり、図例説明したものに限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の電池ボックスは、円筒型の電池を電源として使用する電子機器に設けて利用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 電子機器
10 ケース
20 電池
21 正極
22 負極
11 第1ケース部材
12 第2ケース部材
100 電池ボックス
110 収納部
111 開口
120 第1端子部
120a 接触面
130 第2端子部
131 接触部材
131a 接触面
132 円筒部材
132a 端部リブ
132b 鍔部
132c 蓋体
133 コイルばね
140 電池蓋
141 遮蔽部
142 第1アーム部
142a 折り返し部
143 第2アーム部
143a 折り返し部
144 突片
145 突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に正極及び負極をそれぞれ有する円筒型の電池を収納する収納部と、前記正極に接触する第1端子部と、前記負極に接触する第2端子部と、前記収納部の開口を覆う電池蓋とを備えた電池ボックスにおいて、
前記収納部は、前記電池の側面を露呈する開口を有し、
前記収納部は、複数の前記電池を前記開口から見て手前側と奥側に平行に並べて収納するものであり、
前記電池蓋は、複数の前記電池を保持するものであり、前記開口を覆う遮蔽部と、複数の前記電池をそれらの円筒軸方向に挟む第1アーム部及び第2アーム部とを備え、
前記電池は、前記正極が突起状に設けられており、前記負極が平坦に設けられており、
前記第1アーム部は、前記遮蔽部から前記収納部の内部に延出する環状のものであり、複数の前記電池の正極側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部が前記奥側の電池の前記正極の側面に当接するものであり、
前記第2アーム部は、前記遮蔽部から前記収納部の内部に延出する環状のものであり、複数の前記電池の負極側の円筒底面に面接触するとともに、その先端の折り返し部が前記奥側の電池の側面に当接するものであることを特徴とする電池ボックス。
【請求項2】
前記第2端子部は、前記電池を押え付けるばね性を有するものであり、前記負極に接触する接触面が球面状の接触部材と、前記接触部材を前記電池の円筒軸方向に移動可能に保持する円筒部材と、前記接触部材を前記収納部内側に向って付勢するコイルばねとを備え、前記電池の非収納時には、前記接触面が前記円筒部材から前記収納部内側に突出していることを特徴とする電池ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−212551(P2012−212551A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77485(P2011−77485)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000115773)リズム時計工業株式会社 (208)
【Fターム(参考)】