説明

電池及び電池の製造方法、並びに電池を搭載した車両

【課題】 発電要素が収容された収容空間の開口を有する第1部材と、この第1部材の開口を閉塞する第2部材とが、これらに形成された溶接部を介して互いに溶接された電池において、溶接時に生じた溶融金属が収容空間にまで流動することを抑制した電池及び、そのような電池の製造方法、並びにこのような電池を搭載した車両を提供する。
【解決手段】 電池1は、発電要素10、開口30Sより収容空間20S内に発電要素10を収容してなるケース本体部材30、及びこの開口30Sを閉塞する封口部材40を備える。ケース本体部材30と封口部材40とは、これらに形成された溶接部52により互いに溶接されている。封口部材40には、ケース本体部材30と封口部材40との間のうち、溶接部52から収容空間20Sに至る1−2部材間経路PQR内に、溶接時に生じた溶融金属MMの一部を収容可能とした凹溝43が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池及び電池の製造方法、並びに電池を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブル機器や携帯電話などの電源として、また、電気自動車やハイブリッドカーなどの電源として、様々な電池が提案されている。このような電池の中には、発電要素、これを内部に収容するケース本体部材、及び、このケース本体部材の開口を閉塞する封口部材を有し、ケース本体部材と封口部材とを溶接したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−184365号公報
【0004】
特許文献1に開示された密閉型電池(電池)は、電極群(発電要素)、これを内部(収容空間)に収容する有底筒状の電池ケース(ケース本体部材)、この電池ケースの開口(収容開口)端の内側に嵌入してこの開口を閉塞する封口板(封口部材)を備える。この密閉型電池では、電池ケースと封口板とが溶接される前の状態において、嵌入された封口板と電池ケースとの間には、密閉型電池の外部から内部に向けて窄むV字状の溶接用溝が封口板の厚さ方向に環状に形成されるように、電池ケース内周側の面の一部と封口板外周側の面の一部とがテーパ面をなしている。電池ケースと封口板とは、溶接用溝の溝底部に向けてレーザ光を全周にわたって照射してレーザ溶接されている。これにより、電池ケースと封口板とは、溶接用溝内に形成された溶接部で封止されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケース本体部材と封口部材とを外側から全周にわたって溶接して、ケース本体部材の開口を封口部材で閉塞する電池では、溶接の条件などによっては、溶接時に生じた溶融金属の一部が、ケース本体部材と封口部材との溶接部からケース本体部材の内部側に向けて流動する場合がある。さらに、この溶融金属が電池ケースがなす収容空間にまで達した場合には、金属粒となって収容空間内に落下し、発電要素における正極と負極との短絡や、電池特性の低下を招く虞がある。このように、溶接によって生じた溶融金属が電池ケースの収容空間にまで流動するのを抑制することが必要となっていた。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、発電要素が収容された収容空間の開口を有する第1部材と、この第1部材の開口を閉塞する第2部材とが、これらに形成された溶接部を介して互いに溶接された電池において、溶接時に生じた溶融金属が収容空間にまで流動することを抑制した電池及びそのような電池の製造方法、並びにこのような電池を搭載した車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段は、発電要素と、自身がなす収容空間内に上記発電要素を収容してなるケース部材と、を備える電池であって、上記ケース部材は、上記収容空間の開口を構成してなる第1部材と、上記第1部材の上記開口を閉塞する第2部材と、を含み、上記第1部材と第2部材とは、これらに形成された溶接部により互いに溶接されてなり、上記第1部材及び第2部材の少なくともいずれかは、両者間のうち、上記溶接部から上記収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成してなる電池である。
【0008】
本発明の電池は、第1部材及び第2部材の少なくともいずれかは、溶接部から収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に第1部材と第2部材とが、溶けた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成してなる。
これにより、この電池では、溶接時に、溶融金属の一部が溶接部から収容空間側に向けて1−2部材間経路内を流動したとしても、この1−2部材間経路内に金属収容部が形成されているので、この金属収容部で流動してきた溶融金属の一部を収容保持することができている。
これにより、溶融金属が収容空間内にまで流動するのを抑制できるので、溶融金属の一部が金属粒となって収容空間内に入り込むことを防止できる。かくして、これに起因した、発電要素における正極と負極との短絡や、電池特性の低下の虞を減少させることができた電池となる。
【0009】
なお、金属収容部としては、例えば、1−2部材間経路に面して、第1部材あるいは第2部材内に凹設した凹形状の凹部、溝部が挙げられる。また、第1部材と第2部材との間隔を他の部分よりも大きく形成して溶融金属を収容可能とした空間も挙げられる。
また、この金属収容部は、第1部材の開口に沿って、環状に形成されていても良い。そのほか、破線状など、環状の溶接部の周方向一部に形成しても良い。この場合には、開口の形状、溶接条件の場所に応じた変更などによる、溶融金属の量や流動のし易さ等を考慮して、金属収容部の周方向配置を決定すると良い。
【0010】
また、本発明の電池においては、金属収容部がいっぱいになるまで溶融金属が収容されている必要はなく、金属収容部の一部に溶融金属を収容していても良い。
さらには、本発明の電池においては、金属収容部に溶融金属が必ずしも収容されている必要はない。すなわち、溶接条件の変動や溶接される第1,第2部材の寸法変動、両者の当接あるいは嵌合の状態変化などにより、溶融金属の流動し易さが変化すると考えられる。したがって、いくつかの条件が重なった場合に、溶融金属の流動が生じ、あるいは流動の量や到達距離が大きくなる場合が考えられる。このような場合に備えて金属収容部を形成した電池をも含む。つまり、金属収容部を有しているが、溶融金属が溶接部から流動していない電池、溶融金属が溶接部から流動してはいるが、金属収容部にまで至っていない電池など、一部の電池では金属収容部に溶融金属が必ずしも収容されていない場合もありうるが、このような電池をも含む。そのほか、金属収容部が形成されているのであれば、溶融金属が、この金属収容部に収容されている一方、さらにこの金属収容部を越えて収容空間側にまで流動している電池をも含む。
【0011】
さらに、上述の電池であって、前記金属収容部は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくともいずれかに凹設されてなる電池とすると良い。
【0012】
本発明の電池では、金属収容部は第1部材及び第2部材の少なくともいずれかに凹設されている。このため、本発明の電池では、金属収容部を設けていない従来の溶接作業と同様に、第1部材と第2部材との溶接作業ができる一方、溶融金属が収容空間にまで流動するのを抑制できる。
【0013】
また、上述のいずれかに記載の電池であって、前記第1部材と前記第2部材は、前記1−2部材間経路のうち、前記金属収容部よりも前記収容空間側に、上記金属収容部における上記第1部材と上記第2部材との間隙より、上記第1部材と上記第2部材との間隙を小さくした小間隙部を形成してなる電池とすると良い。
【0014】
本発明の電池では、金属収容部よりも収容空間側に、第1部材と第2部材との間隙が小さい小間隙部を設けているので、溶接時に生じた一部の溶融金属が金属収容部にまで到達したとしても、さらに小間隙部を通じて収容空間側に流動することを抑制できている。かくして、溶融金属が収容空間にまで届くことをさらに抑制した電池とすることができる。
なお、金属収容部と小間隙部とで、前記第1部材と前記第2部材との間隙が段差状に変化してなるのが好ましい。このように、間隙の寸法を急変させることで、より小間隙部に溶融金属が入り込み難くできる。
【0015】
また、上述のいずれか1項に記載の電池であって、前記収容空間の前記開口は、前記発電要素を上記収容空間に収容する経路をなす収容開口であり、前記第1部材は、上記収容開口をなす側部を有する有底筒状のケース本体部材であり、前記第2部材は、上記ケース本体部材の上記収容開口を閉塞する封口部材であって、上記ケース本体部材の上記側部に当接する環状のケース本体当接部を有する封口部材である電池とすると良い。
【0016】
本発明の電池は、ケース本体部材と封口部材とを、ケース本体部材の収容開口をなす側部と封口部材のケース本体当接部とを当接させて、溶接部により溶接してなる。また、この側部及びケース本体当接部の少なくともいずれかは、両者間のうち、溶接部から収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成してなる。
この電池では、ケース本体部材と封口部材との溶接時に、溶接部から溶融金属の一部が収容空間側に向けて流動したとしても、1−2部材間経路内に形成された金属収容部で、溶接部を越えて流動した溶融金属の一部を収容する。したがって、ケース本体部材と封口部材との溶接による溶融金属が収容空間にまで流動することが抑制された電池とすることができる。
【0017】
あるいは、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池であって、前記第2部材は、安全弁弁部材であり、前記第1部材は、上記安全弁弁部材を保持する弁保持部材であり、前記収容空間の前記開口は、上記収容空間を上記安全弁弁部材に通じさせる弁孔である電池とすると良い。
【0018】
本発明の電池は、弁保持部材と安全弁弁部材とを、溶接部により溶接してなる。また、弁保持部材及び安全弁弁部材の少なくともいずれかは、両者間のうち、溶接部から収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成してなる。
したがって、この電池では、弁保持部材と安全弁弁部材との溶接時に、溶接部から溶融金属の一部が収容空間側に向けて流動したとしても、1−2部材間経路内に形成された金属収容部で、溶融金属の一部を収容できる。したがって、溶融金属が収容空間内にまで流動することが抑制された電池とすることができる。
【0019】
他の解決手段は、上述のいずれか1項に記載の電池を搭載してなる車両である。
【0020】
本発明の車両では、第1部材と第2部材との溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成してなる前述の電池を搭載している。
これにより、電池における信頼性が高く、発電要素における正極と負極との短絡や、電池特性の低下する虞を減少させて、良好な走行が可能な車両とすることができる。
なお、電池を搭載した車両としては、例えば、電気自動車、ハイブリッドカーのほか、バイク、フォークリフト、電動車いす、電動アシスト自転車、電動スクータ、鉄道車両等の車両が挙げられる。
【0021】
また、他の解決手段は、発電要素と、自身がなす収容空間内に上記発電要素を収容してなるケース部材と、を備え、上記ケース部材は、上記収容空間の開口を構成してなる第1部材と、上記第1部材の上記開口を閉塞する第2部材と、を含み、上記第1部材と第2部材とは、これらに形成された溶接部により互いに溶接されてなる電池の製造方法であって、上記第1部材及び第2部材の少なくともいずれかは、上記第1部材の上記開口を閉塞するように上記第2部材を配置したとき、上記第1部材と第2部材との間のうち、溶接により溶融される溶接予定部から上記収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成する形態とされてなり、上記溶接予定部を溶融させて、上記第1部材と上記第2部材とを溶接する溶接工程を備える電池の製造方法である。
【0022】
本発明の電池の製造方法によれば、第2部材を第1部材の開口を閉塞するように配置したとき、1−2部材間経路内に金属収容部が形成される。その後、溶接工程で、溶接予定部を溶融させて、第1部材と上記第2部材とを溶接する。
すると、溶接の条件や第1部材、第2部材の寸法その他の状態などによっては、溶融金属が収容空間側に流動することがあるが、この場合でも、1−2部材間経路内に金属収容部が形成されているので、この金属収容部に、一部の溶融金属を収容することができる。このため、さらにこの金属収容部を越えて溶融金属が収容空間側に流動することを抑制できる。
あるいは、一部の溶融金属がこの金属収容部を越えて収容空間側に流動したとしても、その量を減少させることができる。このため、溶融金属が収容空間にまで至ること、また、収容空間内に達した溶融金属の一部が金属粒となって、収容空間内に落下するなど移動可能な状態となる虞を減少させることができる。
【0023】
また、上述の電池の製造方法であって、前記金属収容部は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくともいずれかに凹設されてなる電池の製造方法とすると良い。
【0024】
本発明の電池の製造方法では、金属収容部を設けていながらも、溶接工程における第1部材と第2部材との溶接を、金属収容部を設けていない場合と同様にできる。
【0025】
また、上述のいずれかに記載の電池の製造方法であって、前記第1部材と前記第2部材は、前記1−2部材間経路のうち、前記金属収容部よりも前記収容空間側に、上記金属収容部における上記第1部材と上記第2部材との間隙より、上記第1部材と上記第2部材との間隙を小さくした小間隙部を形成する形態としてなる電池の製造方法とすると良い。
【0026】
本発明の電池の製造方法では、金属収容部よりも収容空間側に小間隙部を設けているので、溶接時に生じた溶融金属の一部が金属収容部にまでは到達したとしても、この溶融金属がさらに小間隙部を通じて収容空間側に流動することを抑制できる。
【0027】
また、上述のいずれかに1項に記載の電池の製造方法であって、前記収容空間の前記開口は、前記発電要素を上記収容空間に収容する経路をなす収容開口であり、前記第1部材は、上記収容開口をなす側部を有する有底筒状のケース本体部材であり、前記第2部材は、上記ケース本体部材の上記収容開口を閉塞する封口部材であって、上記ケース本体部材の上記側部に当接する環状のケース本体当接部を有する封口部材である電池の製造方法とすると良い。
【0028】
本発明の製造方法によれば、ケース部材の側部及び封口部材のケース本体当接部を当接させると、これらの間のうち、溶接予定部から収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部が形成される。したがって、その後、溶接工程で、溶接予定部を溶融させてケース本体部材と封口部材とを溶接すると、溶融した溶融金属の一部が収容空間側に向けて流動しても、1−2部材間経路内に形成された金属収容部に収容することができる。かくして、溶融金属が収容空間内にまで流動することを抑制できる。
【0029】
さらに、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の電池の製造方法であって、前記第2部材は、安全弁弁部材であり、前記第1部材は、上記安全弁弁部材を保持する弁保持部材であり、前記収容空間の前記開口は、上記収容空間を上記安全弁弁部材に通じさせる弁孔である電池の製造方法とすると良い。
【0030】
本発明の製造方法によれば、弁保持部材の弁孔を安全弁弁部材で閉塞するように配置すると、両者間のうち、溶接予定部から収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部が形成される。したがって、その後、溶接工程で、溶接予定部を溶融させて弁保持部材と安全弁弁部材とを溶接すると、溶融金属の一部が収容空間側に向けて流動しても、1−2部材間経路内に形成された金属収容部に収容することができる。かくして、溶融金属が収容空間内にまで流動することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態1〜3及び変形形態1〜5を、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
(実施形態1)
本実施形態1に係る電池1は、電気自動車やハイブリッドカー用の駆動電源として用いられるリチウムイオン二次電池である。この電池1は、図1及び図2に示すように、略直方体形状の角型単電池である。この電池1は、発電要素10及び、自身がなす収容空間20S内に発電要素10を収容するケース部材20から構成されている。このケース部材20はさらに、収容開口30Sを有する外形略直方体形状のケース本体部材30(図3参照)と、このケース本体部材30の収容開口30Sを閉塞する外形矩形板状の封口部材40(図4参照)とからなる。ケース本体部材30と封口部材40とは、レーザ溶接により、これらの全周にわたる溶接部52で固着されている(図1参照)。
【0033】
ケース部材20のうち、図3に示すケース本体部材30は、アルミニウムからなり、挿入側(図3(b)中、上方)が収容空間20Sの開口30Sとなるように、素材の深絞りにより有底筒状に一体成形されている。このケース本体部材30の開口30Sは、発電要素10を収容空間20S内に収容する経路をなす。
また、このケース本体部材30は、長方形板状の底部35と、この四辺から底部35に直交する方向に延びる4つの第1,第2,第3,第4側部31,32,33,34(以下、第1側部31等ともいう)とを有している。これらのうち、第1,第2側部31,32は、図3に示すように、最も大きな側部であり、両者とも同形で互いに平行に配置されている。また、第3,第4側部33,34は、第1,第2側部31,32の間に互いに平行に配置されている。
【0034】
一方、図4に示す封口部材40は、アルミニウムからなる矩形板状で、板材をプレス加工することにより厚み方向に凸状に成形された部材である。この封口部材40は、ケース本体部材30の収容開口30Sを閉塞したときに、ケース本体部材30の開口端面30Tとその全周にわたって、当接面41Tで当接する環状のケース本体当接部41を有している。また、この封口部材40は、このケース本体当接部41よりも、封口部材40の拡がり方向(図4(b)において紙面に平行な方向)の内側に位置すると共に、自身の厚み方向(図4(b)中、上下方向)に見て、当接面41Tと同じ位置からケース本体当接部41からは遠ざかる側(図4(a)中、下方)に向けて突出するケース内側部42を有している。このケース内側部42は、収容空間20S内に配置される。
【0035】
このケース内側部42には、その周面42aよりも拡がり方向内側に凹んだ角溝状の凹溝43が周方向環状に凹設されている。この凹溝43は、側面42b,42d及び底面42cからなり、深さLmの凹形状の溝であり、後述するように、ケース本体部材30と封口部材40との溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とする金属収容部となる。
【0036】
また、この封口部材40には、図4(b)に示すように、次述する外部正極端子91と外部負極端子92とをそれぞれ挿通させる正極端子挿通孔45H、負極端子挿通孔46Hを有している。また、これらの間の位置には、弁孔45Hを有している。この弁孔45Hは、図1に示すように、板状の安全弁弁部材70で閉塞される。
なお、本実施形態1では、ケース本体部材30が本発明の第1部材に対応し、封口部材40が第2部材に対応する。
【0037】
電池1のうち、発電要素10は、例えば、正電極、負電極、セパレータ及び電解液等から構成され、図2に示すように、ケース本体部材30の収容空間20S内に収容されている。この発電要素10の正電極(図示しない)は、ケース本体部材30の収容空間20S内で外部正極端子91と接続されている。一方、発電要素10の負電極(図示しない)は、ケース本体部材30の収容空間20S内で外部負極端子92と接続されている。電解液(図示しない)も、ケース本体部材30の収容空間20S内に注入されている。
【0038】
発電要素10の正電極と接続した外部正極端子91は、アルミニウムからなる。この外部正極端子91は、封口部材40の正極端子挿通孔45H(図1参照)にモールドされた正極シール部材93により、液密で、かつ、封口部材40とは電気的に絶縁された状態で、封口部材40の正極端子挿通孔45Hを通じて外部に突出している。
一方、発電要素10の負電極と接続した外部負極端子92は、銅からなる。この外部負極端子92は、封口部材40の負極端子挿通孔46H(図1参照)にモールドされた負極シール部材94により、液密で、かつ、封口部材40とは電気的に絶縁された状態で、封口部材40の負極端子挿通孔46Hを通じて外部に突出している。
【0039】
本実施形態1に係る電池1では、封口部材40は、発電要素10を収容空間20S内に収納したケース本体部材30を閉塞すると共に、自身のケース内側部42をケース本体部材30の収容空間20S内、つまり第1側部31等の内側に位置させた状態で、ケース本体部材30と気密に固着されている。具体的には、ケース本体部材30と封口部材40とは、ケース本体部材30の第1側部31等がなす開口端面30Tに封口部材40のケース本体当接部41の当接面41Tを当接させた状態で、レーザ溶接により、外周側から開口端面30T及び当接面41Tに沿って全周にわたって溶接され、両者間には溶接部52が形成されている(図1参照)。
【0040】
さらに具体的に説明する。
この電池1では、ケース本体部材30の第1側部31等の開口端面30Tと封口部材40のケース本体当接部41の当接面41Tとが当接され、収容開口30Sを閉塞した状態にされると、ケース本体部材30と封口部材40との間には、溶接部52が形成されると共に、1−2部材間経路PQRが形成される。
本実施形態1では、この1−2部材間経路PQRは、開口端面30T及び当接面41T上のうち、溶接予定部51の先端付近(図5中、右端付近)に位置する一端Pから、第1側部31等のうち開口端面30Tと第1内側面31I(第2内側面32I,第3内側面33I,第4内側面34I、以下これらを第1内側面31I等という)とが交差する開口縁Qを経て、さらに第1内側面31I等のうち、封口部材40の内側面42aと、この封口部材40の厚み方向(図5中、上下方向)同じ位置でケース本体部材30の収容空間20Sを臨む他端Rに至る経路である。
図5から容易に理解できるように、側面42b、42d及び底面42cで構成される凹溝43は、この1−2部材間経路PQR内に面して、封口部材40のケース内側部42に凹設されている。
【0041】
また、1−2部材間経路PQRのうち、凹溝43よりも収容空間20S(他端R)側には、第1側部31等の第1内側面31I等とケース内側部42の周面42aとの間に、間隙寸法Lnの小間隙部44が形成されている。この小間隙部44におけるケース本体部材30と封口部材40との間隙寸法Lnは、凹溝43におけるケース本体部材30と封口部材40との間隙寸法(Lm+Ln)よりも凹溝43の深さLmだけ小さくなっている。
【0042】
次いで、図5に破線で示す溶接予定部51にレーザ光を照射し、溶接部52を形成する。すると、溶融した金属の一部が、1−2部材間経路PQRを通じて、収容空間20Sに向かって移動することがある。その移動の様子は、レーザ溶接の条件や1−2部材間経路PQRの各所の寸法などに応じて変化する。すなわち、溶融金属が1−2部材間経路PQRをほとんど移動しない場合から、多量の溶融金属が1−2部材間経路PQRを移動する場合まで存在し得る。
【0043】
図6は、ケース本体部材30と封口部材40との溶接時に生じたごく一部の溶融金属MMが、溶接部52から1−2部材間経路PQRのうち、一端Pから開口縁Qを越えて凹溝43にまで進んだ場合を示している。この凹溝43内にまで進んだ溶融金属MMは、固化して金属塊KMとなっている。
【0044】
一方、図7は、上述の図6の場合よりも多くの溶融金属MMが溶接部52から流動した場合を示している。この場合、溶融金属MMは、凹溝43内にまで進み、ここで金属塊KMとなってこの凹溝43内に収容されている。この場合、もし凹溝43が無ければ、溶融金属MMの一部が他端Rを越えて収容空間20Sにまで届いていた可能性があるが、この電池1では、凹溝43が形成されているため、金属塊KMは、凹溝43内に収容されて、収容空間20Sにまで届いていない。
なお、電池1では、前述したように、1−2部材間経路PQRのうち、凹溝43における間隙寸法(Lm+Ln)に対し、小間隙部44における間隙寸法Lnを小さくしてある。このため、凹溝43からこの小間隙部44を通じて、収容空間20S(他端R)に向けて溶融金属MMが進み難くなり、溶融金属MMが凹溝43内に溜まり易くなって、溶融金属MMの収容空間20Sに向けての進行をさらに抑制できている。特に本実施形態1の電池1では、凹溝43の間隙寸法(Lm+Ln)に対し、小間隙部44の間隙寸法Lnが段差状に小さくしてある。このため、溶融金属MMがこの小間隙部44に特に入り難くなっている。
【0045】
さらに、図8は、さらに多くの溶融金属MMが溶接部52から流動した場合を示している。この場合、凹溝43の大半が溶融金属MM(金属塊KM)で埋められた状態となっている。このように、多量の溶融金属MMが流動した場合でも、本実施形態1に係る電池1では、1−2部材間経路PQR内に凹溝43を設けているので、溶融金属MMの一部を収容するので、この凹溝43を超えてさらに収容空間20S側に流動したとしても、その量を抑制できる。このため、収容空間20Sにまで溶融金属MMが流動して、金属粒となって落下することが防止されている。
【0046】
このように、本実施形態1に係る電池1は、1−2部材間経路PR内に、環状の凹溝43を封口部材40のケース内側部42に形成してなる。
これにより、図6〜図8に示すように、ケース本体部材30と封口部材40との溶接時に、溶融金属MMの一部が溶接部52から収容空間20Sに向けて流動したとしても、1−2部材間経路PQR内に凹溝43が形成されているので、この凹溝43で流動してきた溶融金属MMの一部を収容することができている。したがって、溶融金属MMの収容空間20S内への流動が抑制された電池1とすることができる。
【0047】
また、溶融金属MMが収容空間20S内へ向けて流動するのを抑制できるので、この溶融金属MMの一部が金属粒となって収容空間20S内に入り込むことを防止できる。かくして、これに起因した、発電要素10における正極と負極との短絡や、電池特性の低下の虞を減少させることができる。
【0048】
また、本実施形態1に係る電池1では、凹溝43を、溶接予定部51から離れた封口部材40のケース内側部42のうち、その周面42aに凹設している。
このため、この電池1では、凹溝43を設けていない従来の溶接作業と同様に、ケース本体部材30と封口部材40との溶接作業ができる一方、上述のように溶融金属MMの収容空間20Sへの流動を抑制できる。
【0049】
また、本実施形態1に係る電池1では、凹溝43よりも収容空間20S側に間隙寸法Lnの小間隙部44を設けているので、溶融金属MMが凹溝43にまで到達したとしても、さらに小間隙部44を通じて収容空間20S側に流動することが抑制できている。かくして、溶融金属MMが収容空間20Sにまで届くのを抑制できた電池1とすることができる。
なお、前述したように本実施形態1では、凹溝43と小間隙部44とで、ケース本体部材30と封口部材40との間隙を、間隙寸法(Lm+Ln)から間隙寸法Lnに段差状に変化させてある。このため、特に溶融金属MMが凹溝43から小間隙部44により入り込み難くい。
【0050】
次に、電池1の製造方法について、図1〜図5を参照して説明する。
ただし、この電池1において、後に詳述する溶接工程以外は、公知の手法によれば良いので、これらの工程を中心に説明し、その他は省略または簡略に説明する。
【0051】
予め、ケース本体部材30(図3参照)のほか、ケース内側部42の周面42aに凹溝43を凹設した封口部材40(図4参照)を準備しておく。
また、別途、公知の方法により、発電要素10の正電極(図示しない)に外部正極端子91を、負電極(図示しない)に外部負極端子92をそれぞれ接続しておく。次いで、封口部材40の正極端子挿通孔45Hに外部正極端子91を、及び、負極端子挿通孔46Hに外部負極端子92をそれぞれ挿通する。次いで、正極シール部材93により外部正極端子91と正極端子挿通孔45Hとの間を、及び、負極シール部材94により外部負極端子92と負極端子挿通孔46Hとの間を、それぞれ気密にシールする。
【0052】
次いで、発電要素10と共に封口部材40のケース内側部42をケース本体部材30収容空間20S内に挿入して、ケース本体当接部41を、ケース本体部材30のうち第1側部31等の開口端面30Tに当接させる。これにより、ケース内側部42はケース本体部材30の第1側部31等内に配置される。
【0053】
次いで、溶接工程について説明する。
溶接工程では、図5に示すように、ケース本体当接部41の当接面41Tを第1側部31等の開口端面30Tに当接させた状態で、レーザビームを、ケース本体部材30の第1側部31等の厚さ方向外側(図5中、左側)から、ケース本体当接部41と第1側部31等との境界部分(開口端面30T)、つまり破線で示す溶接予定部51に向けて照射しつつ、ケース本体部材30及び封口部材40に対し、これらの周方向に相対移動させる。かくして、ケース本体部材30と封口部材40とは溶接部52で溶接される。これにより、封口部材40でケース本体部材30の収容空間20Sの収容開口30Sを閉塞することができる。
【0054】
ところで、溶接の条件やケース本体部材30、封口部材40の寸法その他の状態などによっては、ケース本体部材30と封口部材40との間に形成された1−2部材間経路PQR内を、溶接時に生じた溶融金属MMが、溶接部52から収容空間20S側に向けて流動することがある。
この場合でも、本実施形態1では、1−2部材間経路PQR内に凹溝43が形成されているので、溶融した溶融金属MMの一部が収容空間20S側に向けて流動しても、この凹溝43内に溶融金属MMの一部を収容することができる(図5及び図6参照)。これにより、溶融金属MMがこの凹溝43よりも収容空間20S側へ流動することを抑制できる。
【0055】
また、一部の溶融金属MMが凹溝43を越えて収容空間20S側に流動したとしても、その量を減少させることができるので、溶融金属MMが収容空間20Sにまで至ること、また、溶融金属MMが収容空間20S内に溜まること、さらには、その一部が金属粒となって、収容空間20S内に落下するなど移動可能な状態となる虞を減少させることができる。
【0056】
また、本実施形態1に係る電池1の製造方法では、凹溝43を設けていながらも、この凹溝43を溶接予定部51(溶接部52)から離して設けているので、溶接工程におけるケース本体部材30と封口部材40との溶接を、凹溝43を設けていない場合と同様にできる利点もある。
【0057】
また、この電池1の製造方法では、凹溝43よりも収容空間20S側に小間隙部44を設けているので、溶接時に生じた一部の溶融金属MMが凹溝43にまで到達したとしても、この溶融金属がさらに小間隙部44を通じて収容空間20S側に向けて流動することを抑制できる。
【0058】
次いで、ケース本体部材30の収容空間20S内に所定量の電解液を注入し、さらに、封口部材40の弁孔45Hに安全弁弁部材70を固着する。
かくして、図1に示す電池1が完成する。
【0059】
変形形態1〜3について、図9〜図11を用いて説明する。
変形形態1〜3に係る電池100,200,300は、前述の実施形態1に係る電池1とは、これに用いるケース部材(ケース本体部材、封口部材)の形態の一部や、金属収容部を配置する位置が異なるが、ケース本体部材と封口部材との溶接位置のほか、それ以外の部分は同様である。したがって、実施形態1とは異なる部分を中心に説明する。
【0060】
(変形形態1)
本変形形態1に係る電池100のケース本体部材120は、図9に示すように、実施形態1と同じケース本体部材30と、矩形平板状の封口部材140とからなる。この封口部材140は、その外周に沿って環状にケース本体当接部141を有し、このケース本体当接部141は、ケース本体部材30との当接面141Tに、厚み方向(図9中、上下方向)に凹設された環状の金属収容部143を含む形態とされている。この金属収容部143は、深さLm(図9中、上下方向の寸法)の凹形状の溝である。
ケース本体部材30と封口部材140とは、ケース本体部材30の第1側部31等がなす開口端面30Tに封口部材140のケース本体当接部141を当接させた状態で、レーザ溶接により両者を全周にわたって溶接され、これにより、溶接部152が形成されている。
【0061】
本変形形態1では、1−2部材間経路PRは、この溶接部152の先端に位置する一端Pから収容空間120Sを臨む他端Rに至る経路である。金属収容部143は、この1−2部材間経路PR内に形成されている。
本変形形態1でも、この金属収容部143を形成することにより、溶接部152から溶融金属MMが流動した場合でも、金属収容部143でこの溶融金属MM(金属塊KM)を収容できるので、溶融金属MMが収容空間120Sに届くのを抑制することができている。
【0062】
本変形形態1では、ケース本体当接部141の当接面141Tとケース本体部材30の開口端面30Tとが当接しているが、これらの面同士は完全に密着している訳ではなく、各所に微少な小間隙部144が生じている。金属収容部143の深さLmに比して、この微少な間隙Lnが小さくなっているので、溶融金属MMが小間隙部144を通じて収容空間120S側に流動するのが抑制されている。かくして、溶融金属MMが収容空間120Sにまで届くのを抑制できた電池100とすることができる。
なお、金属収容部143と小間隙部144とで、ケース本体部材30と封口部材140との間隙を両側深さLmからLnに段差状に変化させている。このように、間隙の寸法を急変させているので、特に溶融金属MMが金属収容部143から小間隙部144により入り込み難くできる利点がある。
【0063】
(変形形態2)
本変形形態2に係る電池200のケース本体部材220は、図10に示すように、実施形態1のケース本体部材30と同様な有底筒状のケース本体部材230と、矩形平板状の封口部材240とからなる。但し、このケース本体部材230は、その第1側部231〜第4側部234がなす開口端面230Tのうち、ケース本体部材230の厚み方向(図10中、左右方向)中央付近に、第1凹溝243Fを環状に凹設した形態となっている。一方、封口部材240は、その外周に沿って環状にケース本体当接部241を有し、このケース本体当接部241にも、変形形態2と同様、封口部材240の厚み方向(図10中、上下方向)に凹設した第2凹溝243Sが環状に形成されている。また、第1凹溝243Fと第2凹溝243Sとは、互いに向き合う位置に形成されている。
ケース本体部材230と封口部材240とは、ケース本体部材230の開口端面230Tにケース本体当接部241の当接面241Tを当接させた状態で、レーザ溶接により両者を全周にわたって溶接され、これにより溶接部252が形成されている。
【0064】
本変形形態2では、1−2部材間経路PRは、この溶接部252の先端に位置する一端Pから収容空間220Sを臨む他端Rに至る経路である。第1凹溝243F及び第2凹溝243Sは、この1−2部材間経路PR内に形成されており、両者により、環状で、両側深さLm(図10中、上下方向の寸法)の金属収容部243を構成している。
本変形形態2でも、この金属収容部243を形成することにより、溶接部252から溶融金属MMが流動した場合でも、この金属収容部243でこの溶融金属MM(金属塊KM)を収容できるので、溶融金属MMが収容空間220Sに届くのを抑制することができている。
【0065】
本変形形態2では、ケース本体当接部241の当接面241Tとケース本体部材230の開口端面230Tとが当接しているが、これらの面同士は完全に密着している訳ではなく、各所に微少な小間隙部244が生じている。第1凹溝243F及び第2凹溝243Sの間隙寸法Lmに比して、この微少な間隙Lnを小さくしているので、溶融金属MMが小間隙部244を通じて収容空間220S側に流動するのが特に抑制されている。
なお、金属収容部243と小間隙部244とで、ケース本体部材230と封口部材240との間隙を両側深さLmからLnに段差状に変化させる。このように、間隙の寸法を急変させることで、溶融金属MMが金属収容部243から小間隙部244に入り込み難くできる。
【0066】
(変形形態3)
本変形形態3に係る電池300のケース本体部材320は、図11に示すように、実施形態1のケース本体部材30と同様な有底筒状のケース本体部材330と、矩形板状の封口部材340とからなる。
但し、このケース本体部材330は、第1側部331〜第4側部334のうち、開口端面330Tと第1内側面331I(第2内側面332I,第3内側面333I,第4内側面334I)との間は、傾斜面330Kで繋がれている。この傾斜面330Kは、開口端面330Tと第1内側面331I等との角部を面取りした形態となっている。
【0067】
一方、封口部材340は、ケース本体部材330の収容開口330Sを閉塞したときに、ケース本体部材330の開口端面330Tとその全周にわたって、この開口端面330Tと当接する当接面341T及びこれから同一面上に延びるケース本体当接部内面341T1を含む環状のケース本体当接部341を有している。また、この封口部材340は、このケース本体当接部341よりも、封口部材340の拡がり方向(封口部材40の拡がり方向と同様、図4(b)参照)の内側(図11では右方)に位置すると共に、自身の厚み方向(図11中、上下方向)から見て、ケース本体当接部内面341T1と同じ位置からケース本体当接部341からは遠ざかる側に向けて突出するケース内側部342を有している。このケース内側部342は、収容空間320S内に配置される。
ケース本体部材330と封口部材340とは、開口端面330Tに当接面341Tを当接させた状態で、レーザ溶接により両者を全周にわたって溶接され、これらにより溶接部352が形成されている。
【0068】
本変形形態3では、1−2部材間経路PQ1Q2Rは、この溶接部352の先端に位置する一端Pから、開口端面330Tと傾斜面330Kとの第1角部Q1、さらにこの傾斜面330Kと第1内側面331I等との第2角部Q2を経て、第1内側面31I等のうち、封口部材340の周面342aと、この封口部材340の厚み方向(図11中、上下方向)同じ位置でケース本体部材330の収容空間320Sを臨む他端Rに至る経路である。なお、この1−2部材間経路PQ1Q2Rのうち、第1角部Q1と第2角部Q2との間は、傾斜面330K、ケース本体当接部内面341T1及び周面342aの一部に囲まれたやや広い内部空間をなしており、この内部空間が金属収容部343となっている。
【0069】
したがって、本変形形態3では、金属収容部343は、1−2部材間経路PQ1Q2R内に形成されている。本変形形態3でも、この金属収容部343を形成することにより、溶接部352から溶融金属MMが流動した場合でも、この金属収容部343でこの溶融金属MM(金属塊KM)を収容できるので、溶融金属MMが収容空間320Sに届くのを抑制することができている。
なお、本変形形態3では、ケース本体部材330に傾斜面330Kを形成するだけで、金属収容部343を形成できるから、ケース本体部材330及び封口部材340をより形成容易である利点がある。
【0070】
また、この電池300でも、金属収容部343よりも収容空間320S側に、ケース本体部材330と封口部材340との間隙が小さい小間隙部344を設けているので、溶接時に生じた一部の溶融金属MMが金属収容部343にまで到達したとしても、さらに小間隙部344を通じて収容空間320S側に流動することを抑制できている。かくして、溶融金属MMが収容空間320Sにまで届くことをさらに抑制した電池300とすることができる。
【0071】
次に、変形形態4,5について、図12〜図14を用いて説明する。
図12に示すように、変形形態4,5に係る電池400,500は、前述の実施形態1及び変形形態1〜3に係る電池1,100等とは、これに用いるケース部材(ケース本体部材、封口部材)の形態の一部や、金属収容部の配置位置、ケース本体部材と封口部材との溶接位置が異なるが、それ以外の部分は同様である。したがって、実施形態1及び変形形態1〜3とは異なる部分を中心に説明する。
【0072】
(変形形態4)
本変形形態4に係る電池400のケース本体部材420は、図12に示すように、外形直方体形状で有底底状のケース本体部材430と、矩形平板状の封口部材440とからなる。図13に示すように、このケース本体部材430は、第1側部431〜第4側部434がなす環状の開口端面430Tと、この開口端面430Tから突出し、外周側(図13中、左方)に位置する環状の包囲部436とを有する。一方、封口部材440は、開口端面430Tと当接する環状のケース本体当接部441を有している。この封口部材440は、ケース本体部材430の包囲部436内に挿入して用いている。ケース本体部材430の開口端面430Tに封口部材440のケース本体当接部441の当接面441Tを当接させると共に、封口部材440の外周面440Tを包囲部436で包囲した状態とし、レーザ溶接により、ケース本体部材430と封口部材440とを全周にわたって溶接して、これらの間に溶接部452を形成している。
【0073】
この変形形態4における1−2部材間経路PQRは、この溶接部452の先端に位置する一端Pから、封口部材440の外周面440Tと当接面441Tとがなす角部Qを経て、さらにこの当接面441Tに沿って収容空間420Sを臨む他端Rに至る経路である。金属収容部443は、深さLmの凹形状の溝であり、この1−2部材間経路PQR内のケース本体部材430に環状に凹設されている。
この金属収容部443は、溶接部452から溶融金属MMが流動した場合であっても、この溶融金属MM(金属塊KM)を収容して、溶融金属MMが収容空間420Sに届くのを抑制している。
【0074】
本変形形態4では、ケース本体当接部441の当接面441Tとケース本体部材430の開口端面430Tとが当接しているが、これらの面同士は完全に密着している訳ではなく、各所に微少な小間隙部444が生じている。この小間隙部444では、金属収容部443の深さLmに比して、この微少な間隙Lnが小さくなっているので、溶融金属MMが小間隙部444を通じて収容空間420S側に流動するのが特に抑制されている。
なお、金属収容部443と小間隙部444とで、ケース本体部材430と封口部材440との間隙を深さLmからLnに段差状に変化させている。このように、間隙の寸法を急変させることで、特に溶融金属MMが金属収容部443から小間隙部444に入り込み難くなっている。
【0075】
(変形形態5)
本変形形態5に係る電池500のケース部材520は、図12に示すように、外形直方体形状で有底底状のケース本体部材530と、矩形平板状の封口部材540とからなる。図14に示すように、このケース本体部材530は、変形形態4に係るケース本体部材430と同様、第1側部531〜第4側部534がなす環状の開口端面530Tと、この開口端面530Tから突出し、外周側(図14中、左方)に位置する環状の包囲部536とを有する。
一方、封口部材540は、開口端面530Tと当接する環状のケース本体当接部541を有している。このケース本体当接部541は、開口端面530Tと当接させる当接面541Tと、自身の外周面540Tとの間に、角部を面取りして形成した傾斜面540Kを有している。この封口部材540も、ケース本体部材530の包囲部536内に挿入して用いている。
ケース本体部材530の開口端面530Tに封口部材540のケース本体当接部541の当接面541Tを当接させると共に、包囲部536の内側面536aを封口部材540の外周面540Tで包囲した状態とし、レーザ溶接によりケース本体部材530と封口部材540とを全周にわたって溶接して、これらの間に溶接部552を形成している。
【0076】
本変形形態5における1−2部材間経路PQ1Q2Rは、この溶接部552の先端に位置する一端Pから、封口部材540の外周面540Tと傾斜面540Kとの第1角部Q1、さらにこの傾斜面540Kと当接面541Tとの第2角部Q2を経てこの開口端面530Tに沿って進み、ケース本体部材530の収容空間520Sを臨む他端Rに至る経路である。なお、この1−2部材間経路PQ1Q2Rのうち、第1角部Q1と第2角部Q2との間は、開口端面530T、包囲部536の内側面536a及び傾斜面540Kに囲まれた内部空間をなしており、この内部空間が金属収容部543となっている。
したがって、金属収容部543は、1−2部材間経路PQ1Q2R内に形成されている。この金属収容部543は、溶接部552から溶融金属MMが流動した場合であっても、この溶融金属MM(金属塊KM)を収容して、溶融金属MMが収容空間520Sに届くのを抑制している。
【0077】
(実施形態2)
次に、実施形態2について、図15〜図20を用いて説明する。
前述の実施形態1及び変形形態1〜5に係る電池1等では、第1部材をケース部材のケース本体部材とする一方、第2部材を封口部材として、ケース本体部材と封口部材とを溶接部により溶接してなる電池について説明した。
これに対し、本実施形態2に係る電池600は、これに用いるケース部材のうち、第1部材を弁保持封口部材640(弁保持部材)とし、第2部材を安全弁弁部材650として、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650とを溶接部672により溶接してなる電池である。したがって、前述の実施形態1及び変形形態1〜5とは、本発明の第1部材及び第2部材の対象が相違する点で異なるが、電池の構成や形態等は同様である。したがって、実施形態1と同様な部分の説明は、省略あるいは簡素化し、異なる部分を中心に説明することとする。
【0078】
本実施形態2に係る電池600は、前述の実施形態1と同様の二次電池である。この電池600は、図15に示すように、略直方体形状の角型単電池である。この電池600は、発電要素10のほか、実施形態1に係るケース本体部材30と同様、挿入側(図15中、上方)にある挿入口(図示しない)からこの発電要素10を収容空間620Sに収容してなる有底箱状のケース本体部材630、及び弁付き封口部材660から構成されている。この弁付き封口部材660はさらに、安全弁弁部材650と、この安全弁弁部材650を保持すると共に、ケース本体部材630の挿入口を封口する外形矩形板状の弁保持封口部材640とからなる。
弁保持封口部材640と安全弁弁部材650とは、安全弁弁部材650の全周にわたり、レーザ溶接により、溶接部672で固着されている(図15及び図16参照)。
【0079】
図15に示すケース本体部材630は、アルミニウムからなり、挿入側(図15中、上方)に挿入口(図示しない)が有するように、素材の深絞りにより有底筒状一体成形されている。このケース本体部材630は、長方形板状の底部635と、この四辺から底部635に直交する方向に延びる4つの第1,第2,第3,第4側部631,632,633,634(以下、第1側部631等ともいう)とを有している。これらのうち、第1,第2側部631,632は、図15に示すように、最も大きな側部であり、両者とも同形で互いに平行に配置されている。また、第3,第4側部633,634は、第1,第2側部631,632の間に互いに平行に配置されている。
このケース本体部材630は、その挿入口を弁保持封口部材640で閉塞される。そして、ケース本体部材630と弁保持封口部材640とは、レーザ溶接により、これらの全周にわたる溶接部681で固着される(図15参照)。
【0080】
弁付き封口部材660のうち、弁保持封口部材640は、図15及び図17に示すように、アルミニウムからなる矩形板状の封口部材である。この弁保持封口部材640は、図15を参照すると判るように、自身の短辺に沿った方向(図15中、左上−右下方向)に比べ、長辺に沿った方向(図15中、左下−右上方向)に長く延びた矩形状で、四隅をR形状とした弁孔641H(図17参照)を有している。この弁孔641Hは、ケース本体部材630内の収容空間620Sを安全弁弁部材650に通じさせる開口である。
また、弁保持封口部材640は、安全弁弁部材650により弁孔641Hを閉塞したときに、後述する安全弁弁部材650のうち、弁当接部651の当接面651aとその全周にわたって、開口端面641Tで当接する環状の弁孔周縁部641を有している。この弁孔周縁部641は、弁保持封口部材640の内周面640bから弁孔641Hの径方向内側に突出する段状の形態を有している。この弁孔周縁部641は、開口端面641Tは弁保持封口部材640の外表面640aよりも低い位置に形成されており、内周面640bで囲まれる空間に安全弁弁部材650が収容できるようになっている。
【0081】
また、この弁孔周縁部641には、図17に示すように、その開口端面641Tよりも厚み方向(図17(b)中、上下方向)に凹んだ角溝状の凹溝643が周方向環状に凹設されている。この凹溝643は、深さLmの凹形状の溝であり、後述するように、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とする金属収容部となる。
【0082】
また、この弁保持封口部材640は、実施形態1における封口部材40と同様に、外部正極端子91と外部負極端子92とをそれぞれ挿通させる正極端子挿通孔及び負極端子挿通孔(共に図示しない)を有している。
正極端子挿通孔にモールドされた正極シール部材93により、発電要素10の正電極と接続した外部正極端子91は、液密で、かつ、弁保持封口部材640とは電気的に絶縁された状態で、正極端子挿通孔を通じて外部に突出している。
一方、負極端子挿通孔にモールドされた負極シール部材94により、発電要素10の負電極と接続した外部負極端子92は、液密で、かつ、弁保持封口部材640とは電気的に絶縁された状態で、負極端子挿通孔を通じて外部に突出している。
【0083】
一方、弁付き封口部材660のうち、安全弁弁部材650は、アルミニウムからなる板状の弁部材である。この安全弁弁部材650の平面形状は、図18に示すように、弁保持封口部材640の内周面640b形状に倣った、矩形の角部をR形状とした細長の形態とされている。この安全弁弁部材650は、自身の外周に位置する環状の弁当接部651と、これよりも径方向内側に位置し、ワンウェイの安全弁機能を有する弁機能部652とからなる。
【0084】
このうち、弁当接部651は、弁保持封口部材640のうち、弁孔周縁部641の開口端面641Tに当接する当接面651a、及び外周面651bを有している。
一方、弁機能部652は、その平面形状が弁保持封口部材640の弁孔641Hと同じ形状となっている。この弁機能部651は、収容空間620Sの内圧が所定値を超えたときに、ガスの圧力で開裂し、収容空間620S内のガスを外部に放出させる開裂予定部653を有している。この開裂予定部653は、弁機能部652における他の部位よりも厚みが所定厚さだけ薄くされた断面V溝形状とされている。
【0085】
本実施形態2に係る電池600では、発電要素10を収容空間620S内に収容したケース本体部材630を弁保持封口部材640で封口し、電解液を注入した後、安全弁弁部材650で、弁保持封口部材640の弁孔641Hを気密に封止した状態で、この安全弁弁部材650を弁保持封口部材640に固着している。具体的には、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650とを、弁孔周縁部641の開口端面641Tに弁当接部651の当接面651aを当接させた状態に配置し、レーザ溶接により、外側から内周面640b及び外周面651bに沿って、その全周にわたって溶接することで、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との間には溶接部672が形成されている(図15及び図16参照)。
【0086】
さらに具体的に説明する。
図19に示すように、この電池600では、弁孔周縁部641の開口端面641Tと弁当接部651の当接面651aとを当接させ、弁孔641Hを閉塞した状態とすると、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との間には、溶接予定部671が形成されると共に、1−2部材間経路XYZが形成される。
本実施形態2では、この1−2部材間経路XYZは、外周面651b上のうち、溶接予定部671の先端付近(図19中、下端付近)に位置する一端Xから、弁当接部651のうち、当接面651aと外周面651bとの角部Yを経て、収容空間620Sを臨む他端Zに至る経路である。前述した凹溝643は、図19から容易に理解できるように、この1−2部材間経路XYZ内において、弁保持封口部材640に凹設されている。
【0087】
次いで、図19に破線で示す溶接予定部671にレーザ光を照射し、溶接部672を形成する。すると、溶融した金属の一部が、1−2部材間経路XYZを通じて、収容空間620Sに向かって移動することがある。その移動の様子は、レーザ溶接の条件や1−2部材間経路XYZの各所の寸法などに応じて変化する。すなわち、溶融金属が1−2部材間経路XYZをほとんど移動しない場合から、多量の溶融金属が1−2部材間経路XYZを移動する場合まで存在し得る。
【0088】
図20は、本実施形態2の電池600において、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との溶接時に生じた一部の溶融金属MMが、溶接部672から1−2部材間経路XYZのうち、一端Xから角部Yを越えて凹溝643にまで進んだ場合を示している。この凹溝643内にまで進んだ溶融金属MMは、固化して金属塊KMとなっている。
【0089】
この図20に示すように、電池600では、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との溶接時に、溶融金属MMの一部が、溶接部672から収容空間620S側に向けて流動したとしても、1−2部材間経路XYZ内に凹溝643が形成されているので、この凹溝643で、溶融金属MMの一部を収容することができている。
したがって、この電池600は、溶融金属MMが収容空間620S内にまで流動することが抑制された電池となっている。
【0090】
また、本実施形態2に係る電池600では、凹溝643を、溶接部672から離れた弁保持封口部材640の弁孔周縁部641に有している。
このため、この電池600では、凹溝643を設けていない電池における溶接作業と同様に、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との溶接作業ができる一方、上述のように溶融金属MMの収容空間620Sへの流動を抑制できる。
【0091】
また、本実施形態2では、弁孔周縁部641の開口端面641Tと弁当接部651の当接面651aとが当接しているが、これらの面同士は完全に密着している訳ではなく、各所に微少な小間隙部644が生じている。凹溝643の深さLmに比して、この微少な間隙Lnを小さくしているので、溶融金属MMが小間隙部644を通じて収容空間620S側に流動するのが特に抑制されている。かくして、溶融金属MMが収容空間620Sにまで届くのを抑制できた電池600とすることができる。
なお、凹溝643と小間隙部644とで、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との間隙を深さLmからLnに段差状に変化させる。このように、間隙の寸法を急変させると、溶融金属MMが凹溝643から小間隙部644により入り込み難くできている。
【0092】
次に、電池600の製造方法について、図15〜図19を参照して説明する。
ただし、この電池600において、後に詳述する溶接工程以外は、公知の手法によれば良いので、これらの工程を中心に説明し、その他は省略または簡略に説明する。
【0093】
予め、安全弁弁部材650(図18参照)のほか、弁孔周縁部641に凹溝643を凹設した弁保持封口部材640(図17参照)を準備しておく。
また、別途、公知の方法により、発電要素10の正電極(図示しない)に外部正極端子91を、負電極(図示しない)に外部負極端子92をそれぞれ接続しておく。次いで、弁保持封口部材640の正極端子挿通孔(図示しない)に外部正極端子91を、及び、負極端子挿通孔(図示しない)に外部負極端子92をそれぞれ挿通する。次いで、正極シール部材93により外部正極端子91と正極端子挿通孔との間を、及び、負極シール部材94により外部負極端子92と負極端子挿通孔との間を、それぞれ気密にシールする。
【0094】
次いで、発電要素10をケース本体部材630の収容空間620Sに収納し、ケース本体部材630の挿入口を弁保持封口部材640で閉塞して、この後、溶接部681によりケース本体部材630と弁保持封口部材640とを固着する。次いで、収容空間620S内に所定量の電解液を注入する。
【0095】
次いで、安全弁弁部材650の溶接工程について説明する。
この溶接工程では、図19に示すように、安全弁弁部材650の弁当接部651のうちの当接面651aを弁保持封口部材640の弁孔周縁部641の開口端面641Tに当接させる。この状態で、レーザビームを、弁保持封口部材640の厚さ方向外側(図19中、上方)から、弁保持封口部材640と弁当接部651との境界部分(内周面640b及び外周面651b)、つまり破線で示す溶接予定部671に向けて照射しつつ、弁保持封口部材640及び安全弁弁部材650に対し、安全弁弁部材650の周方向に相対移動させる。これにより、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650とは溶接部672で溶接される。これにより、安全弁弁部材650で弁保持封口部材640の弁孔641Hを閉塞することができる。
かくして、図15に示す電池600が完成する。
【0096】
ところで、溶接の条件や弁保持封口部材640、安全弁弁部材650の寸法その他の状態などによっては、弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との間に形成された1−2部材間経路XYZ内を、溶接時に生じた溶融金属MMが、溶接部672から収容空間620S側に向けて流動することがある。
この場合でも、本実施形態2では、1−2部材間経路XYZ内に凹溝643が形成されているので、溶融した溶融金属の一部が収容空間620S側に向けて流動しても、この凹溝643内に溶融金属MMの一部を収容することができる(図20参照)。したがって、溶融金属MMが、この凹溝643よりも収容空間620S側へ流動することを抑制できる。
【0097】
また、一部の溶融金属MMが凹溝643を越えて収容空間620S側に流動したとしても、その量を減少させることができるので、溶融金属MMが収容空間620Sにまで至ること、また、溶融金属MMが収容空間620S内に溜まること、さらには、その一部が金属粒となって、収容空間620S内に落下するなど移動可能な状態となる虞を減少させることができる。
【0098】
また、本実施形態2では、凹溝643を設けていながらも、この凹溝643を溶接部672(溶接予定部671)から離れた位置に設けているので、溶接工程における弁保持封口部材640と安全弁弁部材650との溶接を、凹溝43を設けていない場合の溶接と同様にできる利点もある。
【0099】
(実施形態3)
次に、実施形態3について図21及び図22を用いて説明する。
本実施形態3に係る車両770は、前述の実施形態1に係る電池1(図1参照)を複数列置して構成されたバッテリパック775(電池1)を搭載してなる。したがって、車両770に関する内容を中心に説明し、実施形態1と同様な部分の説明は、省略あるいは簡素化し、異なる部分を中心に説明することとする。
【0100】
本実施形態3に係る車両770は、図21に示すように、エンジン772とフロントモータ773及びリヤモータ774との併用で駆動するハイブリッドカーである。この車両770は、車体771、エンジン772、これに取付られたフロントモータ773、リヤモータ774、ケーブル776及びバッテリパック775を有している。このバッテリパック775は、図21及び図22に示すように、車両770車体771に取り付けられている。このバッテリパック775は、前述したように、複数の電池1を列置した構成となっている。
【0101】
このバッテリパック775に含まれる電池1,1同士は、図22に示すように、隣り合って配置された電池1の正極(正極端子91)と負極(負極端子92)とが交互に反対側に位置するように列置されている。隣り合って配置された電池1,1の正極(正極端子91)と負極(負極端子92)とは、互いにバスバ780で接続されいる。これにより、各電池1は、電気的に直列に連結されている。このバッテリパック775は、ケーブル776によりフロントモータ773及びリヤモータ774と接続されている。
車両770は、バッテリパック775をフロントモータ773及びリヤモータ774の駆動用電源として、公知の手段によりエンジン772、フロントモータ773及びリヤモータ774で走行できるようになっている。
【0102】
前述したように、バッテリパック775内に有する電池1では、1−2部材間経路PR内に、環状の凹溝43が封口部材40のケース内側部42に形成されている。また、凹溝43よりも収容空間20S側に間隙寸法Lnの小間隙部44が設けられている。
【0103】
このように、本実施形態3に係る車両770では、電池1として、ケース本体部材30と封口部材40との溶接時に生じた溶融金属MMの一部が収容空間20S内に向けて流動することが抑制された電池1を用いた。
これにより、電池1(バッテリパック775)において、溶融金属MMの一部が収容空間20S内にまで流動するのが抑制されているので、発電要素10における正極と負極との短絡や、電池特性の低下する虞を減少させて、信頼性が高く、良好な走行が可能な車両770とすることができる。
【0104】
以上において、本発明を実施形態1〜3及び変形形態1〜5に即して説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態1では、凹溝43を、封口部材40のケース内側部42に周方向環状に凹設した。しかしながら、金属収容部を、破線状など環状の溶接部の周方向一部に形成しても良い。
【0105】
また、実施形態1,2及び変形形態1〜5では、図6〜図11、図13及び図20に、溶融金属MM(金属塊KM)が凹溝43、金属収容部243等に収容された様子を例示した。
しかしながら、本発明の電池においては、金属収容部に溶融金属が必ずしも収容されている必要はない。溶接条件の変動や溶接される第1,第2部材の寸法変動、両者の当接あるいは嵌合の状態変化などにより、溶融金属の流動し易さが変化すると考えられるからである。したがって、いくつかの条件が重なった場合に、溶融金属の流動が生じ、あるいは流動の量や到達距離が大きくなる場合も考えられる。このような場合に備えて金属収容部を形成した電池をも含む。つまり、金属収容部を有しているが、溶融金属が溶接部から流動していない電池、溶融金属が溶接部から流動してはいるが、金属収容部にまで至っていない電池など、一部の電池では金属収容部に溶融金属が必ずしも収容されていない場合もありうるが、このような電池をも含む。そのほか、金属収容部を有している電池であって、溶融金属が、この金属収容部に収容されている一方、さらにこの金属収容部を越えて収容空間側にまで流動している電池をも含む。
【0106】
また、実施形態1,2及び変形形態1〜5では、レーザ溶接により第1部材(ケース本体部材30等)と第2部材(封口部材40等)とを溶接したが、第1部材と第2部材との溶接の手法は、例えば、電子ビーム溶接などの溶接手段も採用できる。
【0107】
また、実施形態3では、車両770をハイブリッドカーとした。しかしながら、電池を搭載した車両の種類は、例えば、電気自動車、バイク、フォークリフト、電動車いす、電動アシスト自転車、電動スクータ、鉄道車両等の車両でも良い。
【0108】
また、実施形態3では、実施形態1に係る電池1を搭載した車両770を例示した。しかしながら、車両は、例えば、実施形態2に係る電池600や、変形形態1〜5に係る電池100,200等を搭載したものであっても良く、車両に搭載する電池の種類や数量は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施形態1及び変形形態1〜3に係る電池の斜視図である。
【図2】実施形態1及び変形形態1〜3に係る電池の正面図である。
【図3】実施形態1に係る電池のうち、ケース本体部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図4】実施形態1に係る電池のうち、封口部材を示す図であり、(a)は側面図、(b)はケース内側部側から見た底面図である。
【図5】実施形態1に係る電池において、ケース本体部材と封口部材との溶接前の状態を説明するための説明図であり、図1のA−A矢視断面図に相当する図である。
【図6】実施形態1に係る電池において、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図1のA−A矢視断面図である。
【図7】実施形態1に係る電池において、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図6よりも溶融金属が多い場合を示す説明図である。
【図8】実施形態1に係る電池において、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図6及び図7よりも溶融金属が多い場合を示す説明図である。
【図9】変形形態1に係る電池において、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図1のA−A矢視断面図である。
【図10】変形形態2に係る電池において、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図1のA−A矢視断面図である。
【図11】変形形態3に係る電池において、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図1のA−A矢視断面図である。
【図12】変形形態4,5に係る電池の斜視図である。
【図13】変形形態4に係る電池における、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図12のC−C矢視断面図である。
【図14】変形形態5に係る電池における、ケース部材と封口部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図12のC−C矢視断面図である。
【図15】実施形態2に係る電池の斜視図である。
【図16】実施形態2に係る電池の要部を示す部分拡大平面図である。
【図17】実施形態2に係る電池のうち、弁保持封口部材の要部を示す図であり、(a)は部分拡大平面図、(b)は(a)のE−E矢視断面図である。
【図18】実施形態2に係る電池のうち、安全弁弁部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F矢視断面図である。
【図19】実施形態2に係る電池において、弁保持封口部材と安全弁弁部材との溶接前の状態を説明するための説明図であり、図16におけるD−D矢視断面図である。
【図20】実施形態2に係る電池において、弁保持封口部材と安全弁弁部材との溶接後の様子を説明するための説明図であり、図16におけるD−D矢視断面図である。
【図21】実施形態3に係る車両の斜視図である。
【図22】実施形態3に係る車両に搭載されたバッテリパックを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0110】
1,100,200,300,400,500,600 電池
10 発電要素
20,120,220、320,420,520 ケース部材
20S,120S,220S、320S,420S,520S,620S 収容空間
30,230,330,430,530 ケース本体部材(第1部材)
30S 収容開口(開口)
31,231,331,431,531 第1側部(側部)
32,232,332,432,532 第2側部(側部)
33,233,333,433,533 第3側部(側部)
34,234,334,434,534 第4側部(側部)
40,140,240,340,440,540 封口部材(第2部材)
640 弁保持封口部材(第1部材)
41,141,241,341,441,541 ケース本体当接部
641H 弁孔(開口)
43,643 凹溝(金属収容部)
143,243,343,443,543 金属収容部
Lm (凹溝の)深さ、間隙寸法
44,144,244,344 小間隙部
Ln (小間隙部の)間隙寸法
45H 弁孔
PQR,PR,PQ1Q2R (ケース本体部材と封口部材との間の)1−2部材間経路
XYZ (弁保持封口部材と安全弁弁部材との)1−2部材間経路
650 安全弁弁部材(第2部材)
51 (ケース本体部材と封口部材との)溶接予定部
52,152、252,352,452,552 (ケース本体部材と封口部材との)溶接部
671 (弁保持封口部材と安全弁弁部材との)溶接予定部
672 (弁保持封口部材と安全弁弁部材との)溶接部
770 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と、
自身がなす収容空間内に上記発電要素を収容してなるケース部材と、を備える
電池であって、
上記ケース部材は、
上記収容空間の開口を構成してなる第1部材と、
上記第1部材の上記開口を閉塞する第2部材と、を含み、
上記第1部材と第2部材とは、
これらに形成された溶接部により互いに溶接されてなり、
上記第1部材及び第2部材の少なくともいずれかは、
両者間のうち、上記溶接部から上記収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成してなる
電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池であって、
前記金属収容部は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくともいずれかに凹設されてなる
電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池であって、
前記第1部材と前記第2部材は、
前記1−2部材間経路のうち、前記金属収容部よりも前記収容空間側に、上記金属収容部における上記第1部材と上記第2部材との間隙より、上記第1部材と上記第2部材との間隙を小さくした小間隙部を形成してなる
電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池であって、
前記収容空間の前記開口は、前記発電要素を上記収容空間に収容する経路をなす収容開口であり、
前記第1部材は、
上記収容開口をなす側部を有する有底筒状のケース本体部材であり、
前記第2部材は、
上記ケース本体部材の上記収容開口を閉塞する封口部材であって、
上記ケース本体部材の上記側部に当接する環状のケース本体当接部を有する
封口部材である
電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池であって、
前記第2部材は、安全弁弁部材であり、
前記第1部材は、上記安全弁弁部材を保持する弁保持部材であり、
前記収容空間の前記開口は、上記収容空間を上記安全弁弁部材に通じさせる弁孔である
電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電池を搭載してなる車両。
【請求項7】
発電要素と、
自身がなす収容空間内に上記発電要素を収容してなるケース部材と、を備え、
上記ケース部材は、
上記収容空間の開口を構成してなる第1部材と、
上記第1部材の上記開口を閉塞する第2部材と、を含み、
上記第1部材と第2部材とは、
これらに形成された溶接部により互いに溶接されてなる
電池の製造方法であって、
上記第1部材及び第2部材の少なくともいずれかは、
上記第1部材の上記開口を閉塞するように上記第2部材を配置したとき、上記第1部材と第2部材との間のうち、溶接により溶融される溶接予定部から上記収容空間に至る1−2部材間経路内に、溶接時に生じた溶融金属の一部を収容可能とした金属収容部を形成する形態とされてなり、
上記溶接予定部を溶融させて、上記第1部材と上記第2部材とを溶接する溶接工程を備える
電池の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電池の製造方法であって、
前記金属収容部は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくともいずれかに凹設されてなる
電池の製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の電池の製造方法であって、
前記第1部材と前記第2部材は、
前記1−2部材間経路のうち、前記金属収容部よりも前記収容空間側に、上記金属収容部における上記第1部材と上記第2部材との間隙より、上記第1部材と上記第2部材との間隙を小さくした小間隙部を形成する形態としてなる
電池の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の電池の製造方法であって、
前記収容空間の前記開口は、前記発電要素を上記収容空間に収容する経路をなす収容開口であり、
前記第1部材は、
上記収容開口をなす側部を有する有底筒状のケース本体部材であり、
前記第2部材は、
上記ケース本体部材の上記収容開口を閉塞する封口部材であって、
上記ケース本体部材の上記側部に当接する環状のケース本体当接部を有する
封口部材である
電池の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の電池の製造方法であって、
前記第2部材は、安全弁弁部材であり、
前記第1部材は、上記安全弁弁部材を保持する弁保持部材であり、
前記収容空間の前記開口は、上記収容空間を上記安全弁弁部材に通じさせる弁孔である
電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−159536(P2008−159536A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350060(P2006−350060)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】