説明

電池用シール剤

【課題】従来のシール剤よりも、発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または絶縁ガスケットと封口体との密着性が高く、かつ電解液の漏出がない安全な電池用シール剤を提供する。
【解決手段】軟質重合体及びイミダゾール化合物を含有することを特徴とする電池用シール剤、前記イミダゾール化合物の含有割合は、前記軟質重合体100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましい。発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または絶縁ガスケットと封口体との間に前記シール剤で形成された層が設けられている電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に用いられる、密着性に特に優れたシール剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカリ二次電池やリチウム二次電池は、近年、パソコンや携帯電話に多用されており、更に大型用途での使用が検討されている。その使用範囲の拡大に伴い、非常に過酷な環境下においても、従来よりもさらに高い安全性が要求されてきている。例えば、高温環境下で使用する場合や、電池内部が高圧になった場合においても、電解液の漏液による機器の損傷が全くないことが強く望まれている。こうした性能を得るため、シール剤においても、各種の方法が検討されている。しかしながら、従来のものではまだ充分でなく、高温環境下におけるシール剤そのものの安定性や、電解液や負極金属容器材料への安定性、電解液の漏液防止性について、より高いレベルが要求されつつある。
【0003】
従来、アルカリ二次電池は、酸化ニッケルを主とするペーストを基板に塗布乾燥した正極板と、カドミウムもしくは水素吸蔵合金粉を主とするペーストを基板に塗布乾燥した負極板とを、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる不織布であるセパレータを間に介在させ、渦巻状に捲回して発電要素としている。リチウム二次電池などの非水系の電池においても、コバルト酸リチウムを主とするペーストを基板に塗布乾燥した正極板と、炭素を主とするペーストを基板に塗布乾燥した負極板とを、同様にセパレーターを間に介在させ、渦巻状に捲回して発電要素としている。
【0004】
この発電要素を開口部を拡口した円筒形もしくは角形の負極金属容器に圧挿入し、アルカリ二次電池では高濃度で粘度の高いアルカリ電解液を注液し、リチウム二次電池では引火性の液体であり、水との反応性が高いリチウム塩が含まれる非水電解液を注液し、絶縁ガスケットを介して封口蓋等の封口体で封口し、負極金属容器の開口部を縮径しさらに開口端を内方へ折曲して、電池を密閉している。絶縁ガスケットと負極金属容器の開口部の内面との間には、封口をより完全にするためシール剤を塗布介在している。
【0005】
しかしながら、通常用いられている負極金属容器の開口部の内側の表面は、絞り加工の時に形成されたたて方向の細かい凹凸があり、粘着性のシール剤が充分に凹凸の谷底まで埋めることができていないことがあり、電池内部に注液された電解液が電気毛管現象により這い上り電池外部へ漏液することがある。このため電池性能を損うのみならず、使用機器まで電解液により損傷させてしまうといった問題がある。充放電操作によって繰り返し使用されるが、充放電により電極の体積変動や発熱のため電池内部の圧力上昇によって電解液が外部に漏洩することがある。この場合、電池特性の低下をおこすばかりでなく、電解液が引火性の液体であるリチウム二次電池においては、発火する危険性がある。非水電解液を用いるリチウム二次電池においては、電池内部に水が浸入した場合極端に電池特性が低下するため、水の浸入を完全に防止する必要性がある。
こうした問題を解決するために、特殊なシール剤を用いたり、クリンプ型の改良、封口圧の強化、絶縁ガスケット材質の改良等が試みられている。例えばシール剤としてはピッチ、タール、アスファルトあるいはポリスルフォン化エチレンにタールやアスファルトなどを混合したもの、RSH(Rはアルキル基)で表わされるメルカプタン、ポリフッ化ビニリデン、カルシウム、リチウム、バリウムのグループから選択された一種以上の金属石ケンを含むグリスをアスファルトに添加した組成物、ポリブタジエンをベースとしたウレタン液状ゴムに硬化剤を混合したもの、更には溶剤に溶解もしくは分散せしめたポリアミド樹脂等を生乾燥状態で用いる等によってアルカリ電解液の漏液の防止等が図られている。
例えば、特許文献1には、ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴムおよびジエン系ゴムより選ばれる1種または2種以上のゴムを主成分とするアルカリ二次電池用シール剤が開示されており、水分の侵入や電解液の漏液のない安全性に優れたアルカリ二次電池を得ることができるとされている。しかしながら、大型用途等に使用範囲が拡大されるにともない、高温での安定性や、電解液の漏液防止性について、その要求レベルが高くなり、特許文献1のシール剤では、シール性が不十分であり、さらなる改善が必要となってきている。
【0006】
また、特許文献2では、ジエン系モノマーの重合体ブロックと芳香族ビニル系モノマーの重合体ブロックとを有するブロックポリマーを含むリチウム二次電池用シール剤が開示されている。特許文献2によれば、極めて高いシール性を有し、ポリオレフィン製ガスケットへの接着性が高いため、簡便なシール材塗布法である浸漬塗布法においても安定したシール材層を形成させることができ、リチウム二次電池を高い生産性で得ることができると記載されている。しかしながら、電池の大型化に伴い、ガスケットのシール剤が塗布する領域が広くなるため、特許文献2のシール剤では広い塗布領域においてのシール性が不十分であり、さらなる改善が必要となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−40118号公報
【特許文献2】特開2000−243359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとで、従来のシール剤よりも、発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または絶縁ガスケットと封口体との密着性が高く、かつ密着性が高いことにより電解液の漏出がない安全な電池用シール剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、シール剤の材料として、イミダゾール化合物を、軟質重合体に加えて含有させることにより、発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または絶縁ガスケットと封口体との密着性が向上し、かつ電解液の漏出を防止できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
上記課題を解決する本発明は、下記事項を要旨として含む。
(1)軟質重合体及びイミダゾール化合物を含有することを特徴とする電池用シール剤。
(2)前記軟質重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である前記(1)に記載の電池用シール剤。
(3)前記イミダゾール化合物の含有量が、前記軟質重合体100質量部に対して0.5〜20質量部である前記(1)又は(2)に記載の電池用シール剤。
(4)発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または絶縁ガスケットと封口体との間に前記(1)〜(3)記載のシール剤で形成された層が設けられている電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシ−ル剤は、従来のシール剤よりも、金属に対して極めて高い密着性を有し、また電解液に対して耐性が高いため、密閉性に優れた安全性の高い電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例で使用したアルカリ二次電池の内部構造を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1…セパレーター
2…負極
3…正極
4…金属容器
5…安全弁
6…ガスケット
7…シール剤
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電池用シール剤は、軟質重合体及びイミダゾール化合物を含有することを特徴とする。
【0015】
(軟質重合体)
本発明における軟質重合体とは、ガラス転移点が25℃以下の重合体である。
本発明においては、前記軟質重合体は、重合体の種類にかかわらず、ガラス転移温度が25℃以下であれば、本発明の効果を奏するが、これらの中でも、シール剤がスラリー状である(以下、「シール剤スラリー」と記すことがある、)場合において、該シール剤スラリー静置時の二層分離を抑制する観点からイミダゾール化合物が可溶な溶媒中で、イミダゾール化合物との相溶性に優れる重合体が好ましい。イミダゾール化合物との相溶性に優れる重合体を用いることにより、シール剤中にイミダゾール化合物を均一に存在させることができ、本発明の効果である密着性向上と液漏れ防止共に高い効果を示すことが出来る。また、スラリー状態において適度な粘度を持たせることで溶液中でのポリマーの分離を抑制することもできる。イミダゾール化合物と軟質重合体との相溶状態はイミダゾール化合物及び軟質重合体を溶媒に溶解させた状態で1週間程度静置し、上層と下層の溶液の成分分析を赤外分光等を用いて行うことにより、確認することができる。
【0016】
なお、ガラス転移温度が25℃以下の軟質重合体のガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調製可能である。
【0017】
ガラス転移温度が25℃以下の軟質重合体としては、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
イソブチレン系軟質重合体;ジエン系軟質重合体;
ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、高い柔軟性と結着性を示す電極が得られることからアクリル系軟質重合体、イソブチレン系軟質重合体又はジエン系軟質重合体が好ましい。特に、耐電解液性が高く、イミダゾール化合物との相溶性が非常に高いことから、ジエン系軟質重合体が好ましい。
【0019】
アクリル系軟質重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を50質量%以上含有する重合体である。(メタ)アクリル酸エステル由来の単量体単位を与える単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および側鎖に官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。アクリル系軟質重合体の具体例としてはポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、エチルアクリレート・ブチルアクリレート・スチレン共重合体、エチルアクリレート・ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート・ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。
【0020】
イソブチレン系軟質重合体とは、イソブチレン単量体単位を50質量%以上含有する重合体である。イソブチレン系軟質重合体の具体例としてはポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などの、イソブチレンの単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。
【0021】
ジエン系軟質重合体とは、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体単位を50質量%以上含有する重合体である。ジエン系軟質重合体の具体例としては、ポリブタジエン;ポリイソプレン;スチレン-ブタジエン共重合体;スチレン−イソプレン共重合体などの、ブタジエンまたはイソプレンの単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。
【0022】
また、共重合体はランダム構造、ブロック構造、分岐型構造など様々な構造をとりうる。ブロック構造を有するブロック共重合体としては、例えばジエン系軟質重合体においてはイソブチレン・スチレン・ブロックポリマー、スチレン−イソプレン・ブロックポリマー等のジブロック型ブロックポリマー;スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロックポリマー、スチレン−ブタジエン−イソプレン・ブロックポリマー等のトリブロック型ブロックポリマー;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン・ブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレン−イソプレン・ブロックポリマー、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレン・ブロックポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレン−イソプレン・ブロックポリマーなどのようなマルチブロック型スチレン含有ブロックポリマーなどが挙げられる。
【0023】
これらの中でも電解液への耐溶解性の理由から、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン・ブロックポリマー、スチレン−イソプレン・ブロックポリマーが好ましい。
【0024】
さらに、ガラス転移温度は好ましくは0℃以下、更に好ましくは−30℃以下、最も好ましくは−60℃以下である。上記ガラス転移温度の範囲にある軟質重合体を用いることで低温においても優れた柔軟性を有することができ、高いガスケットの変形への追従性をもちケースとの隙間を埋めることができることから、幅広い温度領域において液漏れを防止することが出来る。ガラス転移温度が様々な単量体を組み合わせることによって調製可能である。
もちろん、これらのポリマーは単独で用いても、混合比を目的に応じ適宜設定して2種類以上を混合して用いても良い。また、これらの(部分)水素添加物であってもよい。水素添加をすることにより重合体中の不飽和二重結合を単結合にすることができ、酸化安定性が向上し、リチウムイオン二次電池等幅広い電位範囲において作動する電池でも高い液漏れ防止を示す。
【0025】
本発明において、シール剤における軟質重合体の含有割合は、1〜99質量%であることが好ましく、更に好ましくは5〜20質量%である。シール剤における軟質重合体の含有割合が、前記範囲にあることで、発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および絶縁ガスケットと封口体への濡れ性が良い。
【0026】
本発明のシール剤に用いられるイミダゾ−ル化合物としては、特に限定されるものではないが、シ−ル剤に用いる有機液状媒体に溶解するものが好ましい。イミダゾール化合物の具体例としては、アルキル基含有イミダゾール化合物、ベンゼン含有イミダゾール化合物、シアノ基含有イミダゾール化合物、トリメリテイト含有イミダゾール化合物、トリアジン含有イミダゾール化合物、イソシアヌル酸含有イミダゾール化合物、水酸基含有イミダゾール化合物などが挙げられる。
アルキル基含有イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾ−ル、2−ウンデシルイミダゾ−ル、2−ヘプタデシルイミダゾ−ル、1,2−ジメチルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルが挙げられる。
ベンゼン含有イミダゾール化合物としては、2−フェニルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾ−ルが挙げられる。
シアノ基含有イミダゾール化合物としては、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾ−ルが挙げられる。
トリメリテイト含有イミダゾール化合物としては、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトが挙げられる。
トリアジン含有イミダゾール化合物としては、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物が挙げられる。
水酸基含有イミダゾール化合物としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾ−ルが挙げられる。
その他特殊系として、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾ−ル、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライドなどが挙げられる、
これらのイミダゾール化合物の中でも、シール剤に用いる有機液状媒体への溶解性の点より、アルキル基含有イミダゾール化合物、ベンゼン含有イミダゾール化合物が好ましく、これらの中でも、融点が50℃以下である、1,2−ジメチルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾ−ル、又は1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールが更に好ましく、軟質重合体との相溶性も考慮すると、1,2-ジメチルイミダゾールが特に好ましい。
イミダゾール化合物は、1種を単独で用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。
【0027】
本発明のシール剤におけるイミダゾール化合物の含有割合は、軟質重合体100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜10質量部である。イミダゾール化合物の含有割合が、前記範囲にあることで、発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および絶縁ガスケットと封口体との密着性がより向上する。
【0028】
本発明のシール剤は、軟質重合体、イミダゾール化合物を必須成分として含有するものであるが、有機液状媒体を含有していることが好ましい。シール剤における有機液状媒体の含有量としては10〜99質量%、好ましくは50〜95質量%である。
【0029】
(有機液状媒体)
前記有機液状媒体としては、常圧での沸点が50〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは80〜200℃のものである。有機液状媒体を含有することにより絶縁ガスケットとの濡れ性が向上する。また、有機液状媒体としては、前述した軟質重合体及びイミダゾール化合物を溶解するものが塗布性などの点から好ましい。
有機液状媒体の具体例を以下に挙げる。化合物名の後ろに記載された( )内の数字は常圧での沸点(単位は℃)であり、小数点以下は四捨五入又は切り捨てされた値である。尚、沸点に幅がある場合は下限が80℃以上であることを確認して上限を記載した。
【0030】
ヘプタン(98)、n−オクタン(125)、イソオクタン(117)、n−ノナン(150)、デカン(174)、デカリン(194)、α−ピネン(156)、β−ピネン(163)、δ−ピネン(161)、1−クロロオクタン(182)、1,2−ジクロロエタン(83)、クロロデカン(223)、テトラクロロエチレン(121)、シクロヘキサン(81)、シクロヘプタン(118)、メチルシクロペンタン(101)、2−メチルシクロヘキサン(ラセミ体:165)、3−メチルシクロヘキサノン(ラセミ体:170)、4−メチルシクロヘキサノン(171)、4−エチルシクロヘキサン(194)、クロロシクロヘキサン(144)、シクロヘキセン(83)、シクロヘプテン(115)、ベンゼン(80)、トルエン(111)、o−キシレン(144)、m−キシレン(139)、p−キシレン(138)、スチレン(145)、クロロベンゼン(132)、o−クロロトルエン(159)、m−クロロトルエン(162)、p−クロロトルエン(162)、エチルベンゼン(136)、プロピルベンゼン(159)、ジイソプロペニルベンゼン(231)、ブチルベンゼン(183)、イソブチルベンゼン(173)、n−アミルベンゼン(202)、クメン(152)などの置換可炭化水素類;
【0031】
1−プロパノール(97)、2−プロパノール(82)、1−ブタノール(117)、t−ブタノール(83)、1−ペンタノール(138)、2−ペンタノール(119)、3−ペンタノール(116)、1−ヘキサノール(157)、2−ヘキサノール(139)、3−ヘキサノール(135)、1−オクタノール(195)、2−オクタノール(179)、ベンジルアルコール(205)、4−t−ブチルカテコール(285)、シクロペンタノール(141)、グリセリン(290)など。ケトン類:エチルメチルケトン(80)、2−ペンタノン(102)、2−ヘキサノン(127)、3−ヘキサノン(125)、シクロペンタノン(131)、シクロヘキサノン(156)、シクロヘプタノン(180)、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン(168)、4−メチル−2−ペンタノン(117)、イソホロン(215)などのアルコール類;
【0032】
プロピルエーテル(91)、ブチルエーテル(142)、イソブチルエーテル(123)、n−アミルエーテル(188)、イソアミルエーテル(173)、メチルn−アミルエーテル(10
0)、エチルブチルエーテル(92)、エチルイソブチルエーテル(81)、エチルn−アミルエーテル(120)、エチルイソアミルエーテル(112)、フェネノール(170)、1,3−ジオキサン(106)、4−ジオキサン(101)などのエーテル類;
ギ酸プロピル(82)、ギ酸ブチル(107)、ギ酸ペンチル(132)、酢酸イソプロピル(89)、酢酸n−プロピル(101)、酢酸n−ブチル(126)、酢酸s−ブチル(112)、酢酸t−ブチル(98)、乳酸メチル(144)、乳酸エチル(154)、乳酸ブチル(187)、安息香酸メチル(200)、安息香酸エチル(213)などのエステル類;
【0033】
o−トルイジン(200)、m−トルイジン(203)、p−トルイジン(200)、ジメチルアニリン(194)、ピペリジン(105)などのアミン類;
N,N−ジメチルホルムアミド(153)、N−メチルピロリドン(202)、N,N−ジメチルアセトアミド(194)などのアミド類;
ジメチルスルホキシド(189)などの含硫黄化合物類;ラクトニトリル(184)、エチレンシアンヒドリン(220)、アジボニトリル(295)などのニトリル基含有化合物類;
【0034】
フルフラール(162)などの含酸素複素環化合物;
ピリジン(116)、ピロール(130)、ピロリジン(88)など含窒素複素環化合物類;
エチルセロソルブアセテート(192)などのセロソルブアセテート類;
エチレングリコール(198)、ジエチレングリコール(186)、プロピレングリコール(188)などのグリコール類;
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(195)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(159)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(222)などのエチレングリコールアルキルエーテル類;
γ−ブチロラクトン(206)、γ−バレロラクトン(207)、γ−カプロラクトン(216)などのラクトン類;
β−ブチロラクタム(245)、δ−バレロラクタム(256)などのラクタム類などが挙げられる。
【0035】
これらの溶媒は、単独で使用しても、これらを2種以上混合して混合溶媒として使用してもよい。これらの中でも特に、本発明に用いるイミダゾール化合物及び軟質重合体の溶解性に優れ、沸点が低く揮発性が高い溶媒が、短時間でかつ低温で除去できるので好ましい。アセトン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレン、若しくはN−メチルピロリドン、またはこれらの混合溶媒が好ましい。
【0036】
本発明のシール剤においては、必要に応じて他の添加剤を含有していてもよい。
他の添加剤としては、着色剤などが挙げられる。添加可能な着色剤としては、電解液と反応せず、また電解液に溶解しないものであることが望ましく、各種の顔料が挙げられる。中でもカーボンブラック、特にファーネスブラック、チャンネルブラック等の粒子径0.1μm以下のカーボンブラックが好ましい。これらの着色剤は任意の量を添加することができるが、軟質重合体100質量部に対して通常0.01質量部〜20質量部、好ましくは0.01質量部〜5質量部である。着色剤の添加量が上記範囲内にあることで、シール剤は高い柔軟性を維持し、ひび割れ等を起こさない。
【0037】
さらに本発明のシール剤には上記成分のほかに、さらに分散剤、レベリング剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等、その他の結着剤等の、他の成分が含まれていてもよい。これらは絶縁ガスケットの性能を劣化させず、電解液と反応せず、また電解液に溶解しないものであれば特に限られない。
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。分散剤は用いる電極活物質や導電剤に応じて選択される。シール剤中の分散剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。分散剤量が上記範囲であることによりシール剤スラリーの安定性に優れ、均一に塗工することができ、薄膜で液漏れを防ぐことができる。
【0038】
レベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤を混合することにより、塗工時に発生するはじきを防止したり、シール部の平滑性を向上させることができる。シール剤中のレベリング剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。レベリング剤が上記範囲であることによりシール時の生産性、均一性に優れ薄膜で液漏れを防ぐことができる。
【0039】
老化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダートアミン系安定剤が挙げられる。
シール剤中の老化防止剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。老化防止剤が上記範囲であることにより、酸素、日光、熱、折り曲げ作用、オゾンなどの作用による、ひび割れ、変色、硬化、軟化といった老化を防ぎ、寿命を著しく長くすることができる。
【0040】
紫外線吸収剤としては例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収、ベゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル等の有機物、又は微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物が使用できる。シール剤中の紫外線吸収剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。紫外線吸収剤が上記範囲であることにより紫外線による劣化を防ぐことができる。
【0041】
その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナなどのナノ微粒子:アルキル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。前記ナノ微粒子を混合することによりシール剤スラリーのチキソ性をコントロールすることができ、さらにそれにより得られるシール部のレベリング性を向上させることができる。シール剤中のナノ微粒子及の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。ナノ微粒子が上記範囲であることにより、シール剤スラリーの安定性、生産性、均一性に優れ薄膜で液漏れを防ぐことができる。前記界面活性剤を混合することにより前述の顔料等を分散させた際に、シール剤中の顔料等の分散性を向上することができ、さらにそれにより得られるシール剤の平滑性を向上させることができる。シール剤中の界面活性剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。界面活性剤が上記範囲であることにより、シール剤スラリーの安定性、電極平滑性、均一性に優れ薄膜で液漏れを防ぐことができる
【0042】
本発明の電池は、発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または絶縁ガスケットと封口体との間に前記シール剤で形成された層が設けられている電池であればよく、その金属容器の素材、発電要素、絶縁ガスケットは、一般に使用されているものでよい。
発電要素とは、正極/電解液/負極からなる化学反応によって電子が発生する要素を示す。
絶縁ガスケットとしては、特に限定されるものではないが、ポリプロピレンやナイロン66にカーボン粉を混合したものが挙げられる。
【0043】
電池としては、マンガン電池、アルカリ電池、ニッケル系一次電池、、酸化銀電池、空気亜鉛電池、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッカド電池、アルカリ蓄電池、太陽電池、燃料電池などが挙げられる。中でも、電気容量の点で、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が好ましい。
【0044】
本発明の電池のシール剤をアルカリ二次電池用のシール剤に用いる場合は、例えば、以下の手順でシール剤の層を形成すればよい。
絶縁ガスケット表面に、定量ディスペンサーを使用してシール剤の塗布、乾燥を行い、シール剤層を形成する。これとは別に負極金属容器内に正極板と負極板をセパレータを介して捲回してなる発電要素を圧挿入する。この容器の開口部近傍に封口部固定のため、ビードを形成する。このビード部の絶縁ガスケットと接触する部分へ、前記シール剤を定量ディスペンサーを使用して塗布、乾燥を行い、シール剤の層を形成する。この後、電解液を注入し、前記の表面にシール剤層を形成された絶縁ガスケットを介して、負極金属容器に封口体である封口蓋板を嵌合し、封口してアルカリ二次電池を作製する。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、本実施例において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」及び「質量%」である。
【0046】
各特性は、以下の方法により評価する。
【0047】
(碁盤目試験)
負極のニッケル板を、調製したシ−ル剤中にディップコ−トし、60℃に設定したオ−ブン内で2時間乾燥を行う。ニッケル板上に形成されたシ−ル剤薄膜の表面にJIS K5400に準拠して碁盤目片刃のカミソリの刃を、面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製する。碁盤目を作製した後、アルカリ水溶液(30% KOH水溶液)に浸漬し、70℃で5時間静置したのち常温まで冷却する。ニッケル板の温度が常温に戻ったのを確認後、ニッケル板を取り出し、蒸留水でニッケル板に付着したアルカリ水溶液を洗い流し、常温にて乾燥する。ニッケル板のシール剤がコートされている面に市販のセロハンテープを貼り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を下記のようにランク評価した。薄膜が剥がされた面積の割合が少ないほど密着性に優れることを意味する。
A:剥離された面積割合が0%以上1%未満
B:剥離された面積割合が1%以上3%未満
C:剥離された面積割合が3%以上5%未満
D:剥離された面積割合が5%以上7%未満
E:剥離された面積割合が7%以上10%未満
F:剥離された面積割合が10%以上
【0048】
(耐電解液性)
50℃で24時間真空乾燥したシール剤を、アルカリ水溶液(30%KOH水溶液)に浸漬し、70℃で5時間静置する。70℃で5時間放置した後、常温まで冷却し、サンプルを取り出し、蒸留水で洗浄する。洗浄したサンプルを50℃で12時間乾燥後、シール剤の重量を測定することにより、アルカリ水溶液(30%KOH水溶液)へのシール剤の溶出の有無を評価する。アルカリ水溶液へのシール剤の溶出が少ないほど耐電解液性に優れる。
A:シール剤のアルカリ水溶液への溶出が0質量%以上1質量%未満
B:シール剤のアルカリ水溶液への溶出が1質量%以上3質量%未満
C:シール剤のアルカリ水溶液への溶出が3質量%以上5質量%未満
D:シール剤のアルカリ水溶液への溶出が5質量%以上7質量%未満
E:シール剤のアルカリ水溶液への溶出が7質量%以上10質量%未満
F:シール剤のアルカリ水溶液への溶出が10質量%以上
【0049】
(液漏れ)
得られたアルカリ二次電池を45℃で24時間エージングした後、それぞれ25℃で0.5Cの定電流定電圧充電法という方式で、1.2Vになるまで定電流で充電した(初充電)。初充電が施された電池10個それぞれに、アルカリによって黄色から紫に変色するCR試験紙を付着させこれを、温度95℃、湿度90%の恒温恒湿槽で、48時間放置し、48時間放置後のCR試験紙が変色した電池の有無を調べた。試験紙が変色した電池の個数が少ないほど、液漏れの可能性は低く、シール剤がシール性に優れることを意味する。
○:アルカリ電解液の漏液無し(10個中液漏れ発生個数0個)
△:アルカリ電解液の漏液有り(10個中1個以上5個未満の液漏れ発生有り)
×:アルカリ電解液の漏液有り(10個中5個以上9個以下の液漏れ発生有り)
××:アルカリ電解液の漏液有り(10個中全て液漏れ発生有り)
【0050】
(実施例1)
(シ−ル剤の製造)
ポリブタジエン(ガラス転移温度:−85℃)13部をキシレン87部に加え、JIS K2435−3に準じて、ポリブタジエンをキシレンに溶解させることにより、ポリブタジエンのキシレン溶液を得た。
上記キシレン溶液に、1,2-ジメチルイミダゾール(四国化成製、1,2−DMZ)をポリブタジエン100部に対して5部になるように添加し、浸透機にて400rpmで1時間攪拌し、シール剤を得た。作成したシール剤を用いて碁盤目試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(電極の作製)
ポリビニルアルコール0.5部に対して、水酸化ニッケル粉末100部、一酸化コバルト粉末11部、カルボキシメチルセルロース(CMC)0.33部およびポリテトラフルオロエチレン水性分散液(比重1.5、固形分60%)0.56部ならびに水50部を混練して正極用スラリーを調製した。このスラリーをニッケルメッキした発泡メタルシートに充填し、さらにその両側にも塗布したのち80℃で1時間乾燥し、その後ロールプレスを行って正極を得た。生成した正極の厚みは120μmであった。
また、ポリビニルアルコール0.5部に対して、平均粒径37μmの水素吸蔵合金粉末100部、カルボキシメチルセルロース(CMC)0.5部、導電性材料(ニッケル粉末およびカーボンの等重量混合物)1.0部ならびに水50部を混練して、負極用スラリーを調製した。このスラリーをパンチングメタル(厚み0.06mm) に塗布し、80℃で1時間乾燥した後プレスして負極を得た。生成した負極の厚みは130μmであった。
【0052】
(電池の作製)
ナイロン66にカーボン粉を混合した絶縁ガスケット表面に、定量ディスペンサーを使用して乾燥後のシール剤層厚が12μmとなるように前記シール剤を塗布・乾燥し、シール剤層を形成した。これとは別にAAサイズの負極金属容器内に正極板と負極板をセパレータを介して捲回してなる発電要素を圧挿入する。この容器の開口部近傍に封口部固定のため、ビードを形成した。このビード部の絶縁ガスケットと接触する部分へ、前記シール剤を定量ディスペンサーを使用して乾燥後のシール剤層厚が13μmとなるように、前記シール剤を塗布・乾燥し、シール剤層を形成した。この後、7規定のKOH及び1規定のLiOHからなる電解液を注入し、前記の表面にシール剤層を形成した絶縁ガスケットを介して、負極金属容器に封口体である封口蓋板を嵌合し、封口してアルカリ二次電池とした。アルカリ二次電池の構成図を図1に示す。作成したアルカリ二次電池について、耐電解液性及び液漏れを評価した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
実施例1において、イミダゾール化合物として、1,2-ジメチルイミダゾールのかわりに、2−ウンデシルイミダゾ−ル(四国化成製、C11Z)を、ポリブタジエン100部に対して5部となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にしてシール剤及びアルカリ二次電池を製造した。
得られたシール剤及びアルカリ二次電池の評価結果を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
実施例1において、1,2-ジメチルイミダゾールを、ポリブタジエン100部に対して0.5部となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にしてシール剤、アルカリ二次電池を製造した。
得られたシール剤及びアルカリ二次電池の評価結果を表1に示す。
【0055】
(実施例4)
実施例1において、1,2-ジメチルイミダゾールを、ポリブタジエン100部に対して20部になるように添加したこと以外は、実施例1と同様にしてシール剤、アルカリ二次電池を製造した。
得られたシール剤及びアルカリ二次電池の評価結果を表1に示す。
【0056】
(実施例5)
実施例1において、軟質重合体としてポリブタジエンの代わりにスチレン−ブタジエン−スチレン・ブロックポリマー(ガラス転移温度−25℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシール剤、アルカリ二次電池を製造した。
得られたシール剤及びアルカリ二次電池の評価結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
実施例1において、ポリブタジエンのキシレン溶液に、イミダゾール化合物を添加しないこと以外は、実施例1と同様にしてシール剤、アルカリ二次電池を製造した。
得られたシール剤及びアルカリ二次電池の評価結果を表1に示す。
【0058】
(比較例2)
実施例1において、イミダゾ−ル化合物の代わりに、トリエチルアミンをポリブタジエン100部に対して5部となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にしてシール剤、アルカリ二次電池を製造した。
得られたシール剤及びアルカリ二次電池の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1の結果から、本発明によれば、実施例1〜5に示すように、シール剤として軟質重合体及びイミダゾール化合物を含有することによって、密着性、耐電解液性及び液漏れが向上する。一方、シール剤として、軟質重合体を含有しているが、イミダゾール化合物を含有していないもの(比較例1)やイミダゾール化合物以外の化合物(アミン化合物)を含有しているもの(比較例2)は、密着性、耐電解液性、液漏れ全てに劣る。実施例の中でも、特に、軟質重合体としてポリブタジエンを用い、イミダゾール化合物として1,2-ジメチルイミダゾールをポリブタジエン100質量部に対して5質量部用いた実施例1は、密着性、耐電解液性、液漏れのすべてに優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質重合体及びイミダゾール化合物を含有することを特徴とする電池用シール剤。
【請求項2】
前記軟質重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である請求項1に記載の電池用シール剤。
【請求項3】
前記イミダゾール化合物の含有量が、前記軟質重合体100質量部に対して0.5〜20質量部である請求項1又は2に記載の電池用シール剤。
【請求項4】
発電要素を収納した負極金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または絶縁ガスケットと封口体との間に請求項1〜3のいずれかに記載のシール剤で形成された層が設けられている電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−14371(P2011−14371A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157242(P2009−157242)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】