説明

電池

【課題】負極板と正極板の相対的な位置ずれを防止することを可能にし、高性能で信頼性の高い電池を提供する。
【解決手段】第一電極板2と、第一電極板2を内包するように設けられたセパレータ4と、セパレータ4を間に第一電極板2に重ねて配設される第二電極板1とを備えるとともに、第二電極板1の少なくとも一部を収容する収容空間22を形成し、収容空間22に収容した状態で第二電極板1を位置決め保持する電極板保持部20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された電池に関する。
【背景技術】
【0002】
実用上用いられる電池として、高出力なリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池の形態としては、略矩形状の正極板と負極板とがセパレータを介して複数積層される積層型と、一対の帯状の正極板と負極板とがセパレータを介して積層された後に捲回される捲回型とに大別される(以下、正極板と負極板を総称して「電極板」とも称する)。これらの電池を構成する正極板及び負極板は、アルミニウム箔や銅箔等の集電体に、それぞれ正極用、負極用の活物質が塗工されて互いに対向している(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
そして、これらの電池では、互いに対向した面(対向面)間、すなわち負極板の面と正極板の面とで互いに積層方向において重なっている部分の面間でリチウムイオンの授受が主に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4293247号公報
【特許文献2】特開2009−301798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成からなる従来の電池では、電池の使用時に不測の外力等によって、積層された正極板と負極板との相対位置がずれてしまうことがある。そして、相対位置のずれにより、正極板の活物質の塗工面と負極板の活物質の塗工面の積層方向において重なった部分の面積が減少すると、正極板と負極板の間でリチウムイオンの授受が好適に行えず、所望の電池性能が発揮されなくなってしまう。
【0006】
また、正極板1と負極板2の相対位置がずれ、リチウムイオンの授受が好適に行えなくなることにより、図8(a)に示すように、リチウム3が正極板1に析出して突起状に成長し、セパレータ4を突き破り、短絡を発生させるおそれが生じる。
【0007】
さらに、図8(b)に示すように、集電材に塗工した活性物にバリ5が生じている場合があり、正極板1と負極板2との相対位置がずれるとともに、このバリ5がセパレータ4を突き破り、短絡を発生させるおそれが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池は、第一電極板と、前記第一電極板を内包するように設けられたセパレータと、前記セパレータを間に前記第一電極板に重ねて配設される第二電極板とを備えるとともに、前記第二電極板の少なくとも一部を収容する収容空間を形成し、前記収容空間に収容した状態で前記第二電極板を位置決め保持する電極板保持部を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明においては、第二電極板の少なくとも一部を収容空間に収容した状態で、電極板保持部によって第二電極板を前記第一電極板に重なる所定位置に位置決めして保持することができる。これにより、第一電極板と第二電極板との相対的な位置ずれを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電池においては、第二電極板の少なくとも一部を収容空間に収容した状態で、電極板保持部によって第二電極板を前記第一電極板に重なる所定位置に位置決めして保持することができ、第一電極板と第二電極板との相対的な位置ずれを防止することができるため、第一電極板と第二電極板(正負の電極板)がずれて所望の電池性能が発揮されなくなったり、突起状の析出物やバリがセパレータを突き破って、短絡が生じるおそれを解消することができ、高性能で信頼性の高い電池を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】二次電池を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電池(電極積層体)を示す正面視図である。
【図3】図2のX1−X1線矢視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電池(電極積層体)の変形例を示す正面視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電池(電極積層体)を示す正面視図である。
【図6】図5のX1−X1線矢視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電池(電極積層体)のセパレータを示す正面視図である。
【図8】リチウム析出物や活物質のバリがセパレータを突き破った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1から図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る電池について説明する。なお、本実施形態では、電池がリチウムイオン二次電池であるものとして説明を行う。また、本実施形態では、本発明に係る第一電極板を負極板、第二電極板を正極板として説明を行うが、本発明は第一電極板が正極板、第二電極板が負極板であってもよい。
【0013】
本実施形態の電池Aは、図1から図3に示すように、複数の正極板(第二電極板)1と、複数の負極板(第一電極板)2と、それぞれの正極板1とそれぞれの負極板2との間に配置されるセパレータ(複数の負極板2のそれぞれを覆って内包する袋状セパレータ4)と、不図示の電解液と、これらを収納する電池缶6とを備えている。
【0014】
正極板1は、アルミニウム箔を略矩形状(略方形状)に加工した集電体に、例えば3元系材料LiNixCoyMnzO(x+y+z=1)で構成される正極活物質を塗工した正極板本体7と、この正極板本体の端部から伸びる正極タブ8とを備えている。
【0015】
負極板2は、銅箔を略矩形状(略方形状)に加工した集電体に、例えばカーボン材料(人造黒鉛等)で構成される負極活物質を塗工した負極板本体9と、この負極板2の端部から伸びる負極タブ10とを備えている。
【0016】
正極板本体7と正極タブ8は、上記した正極活物質が正極板本体7に塗工された後に、打ち抜き型で打ち抜くことによって一体形成される。同様に、負極板本体9と負極タブ10についても、上記した負極活物質が負極板本体9に塗工された後に、打ち抜き型で打ち抜くことによって一体形成される。なお、正極タブ8と負極タブ10とを総称して、電極タブと称する。
【0017】
セパレータ4は、多孔質のポリエチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等で形成されている。また、本実施形態では、セパレータ4が、負極板本体9より面積の大きい略矩形の形状の第一セパレータ11と、第一セパレータ11と実質的に同じ形状の第二セパレータ12とで、負極板本体9を挟みこんだ上、第一および第二セパレータ11、12の4辺をヒートシーラーで融着(溶着)することで形成される。これにより、負極板2の負極板本体9が袋状に形成されたセパレータ4に内包される。また、このとき、負極タブ10の一部がセパレータ4から外部に露出し、この部分のセパレータの端部がシール部材17によってシール処理されている。
【0018】
そして、これら正極板1と、負極板2を内包したセパレータ4とを重ねて複数積層することで、電極積層体13が形成される。なお、図示は省略したが、電極積層体13の両端の電極板は袋状のセパレータ4に内包された負極板2であり、電池缶6との短絡を防止している。
【0019】
また、正極タブ8は、電池缶6の一面に固定されている正極端子14とリード15を介して電気的に接続され、負極板2の負極タブ10は、電池缶6の上記一面に固定されている負極端子16とリード15を介して電気的に接続される。
【0020】
一方、本実施形態の電池Aは、上記のように正極板1と負極板2とセパレータ4と電解液と電池缶6を備えるとともに、図2及び図3に示すように、負極板2(負極板本体9)及びセパレータ4に対して正極板1(正極板本体7)を位置決め保持するための電極板保持部20を備えている。
【0021】
そして、本実施形態の電極板保持部20は、平面視直角三角状に形成され、正極板1を積層する側のセパレータ4の一面4aの下側に2つ、上側に1つ取り付けられている。このとき、各電極板保持部20(20a、20b、20c)は、例えばセパレータ4と同じ材料を用いてシート状に形成され、直角部21を形成する2辺(21a、21b)側をセパレータ4の一面4aに溶着あるいは接着して取り付けられている。また、各電極板保持部20は、セパレータ4の一面4aとの間に、セパレータ4の一面4aに固着されていない残りの一辺(開口辺21c)側を通じて外部と連通する収容空間22を形成して配設されている。
【0022】
また、本実施形態において、各電極板保持部20は、その厚さt1(収容空間22の厚さ)が正極板1(正極板本体7)の厚さt2と略同等となるように、及び/又は負極タブ10の一部がセパレータ4から外部に露出する部分をシールするシール部材17のセパレータ4の一面4aから積層方向T1外側に突出する寸法t3と略同等となるように形成されている。
【0023】
さらに、セパレータ4の下側の2つの電極板保持部20(20a、20b)は、セパレータ4の上下方向T2の同位置に配設されるとともに、セパレータ4の横方向T3の一側端側と他側端側にそれぞれ所定の間隔をあけて配設されている。このとき、これら2つの電極板保持部20(20a、20b)は、開口辺21cをセパレータ4の中央側に配し、直角部21を形成する2辺(21a、21b)をセパレータ4の側端と下端に沿わせて設けられている。また、これら2つの電極板保持部20(20a、20b)は、横方向T3の間隔(収容空間22の角部同士の間隔)が正極板1(正極板本体7)の横方向T3の幅寸法と略同等になるように配設されている。
【0024】
一方、セパレータ4の上側の電極板保持部20(20c)は、セパレータ4の下側の2つの電極板保持部20(20a、20b)の一方の電極板保持部20bと、横方向T3の同位置に配設されるとともに、下側の一方の電極板保持部20bとの上下方向T2の間に所定の間隔をあけて配設されている。また、このとき、上側の電極板保持部20cは、開口辺21cをセパレータ4の中央側に配し、直角部21を形成する2辺(21a、21b)をセパレータ4の側端と上端に沿わせて設けられている。また、上側の電極板保持部20cは、下側の一方の電極板保持部20bとの上下方向T2の間隔(収容空間22の角部同士の間隔)が正極板1(正極板本体7)の上下方向T2の寸法と略同等になるように、配設されている。
【0025】
そして、本実施形態の電池Aにおいては、負極板2及びセパレータ4の所定位置に重ねて積層した正極板1の下側の2つ角部がそれぞれ、開口辺21cを通じて下側の2つの電極板保持部20(20a、20b)の収容空間22内に収容されて保持される。また、所定位置に積層した正極板1の上側の2つの角部の一方が、開口辺21cを通じてセパレータ4の上側の1つの電極板保持部20(20c)の収容空間22内に収容されて保持される。
【0026】
これにより、正極板1と、負極板2を内包したセパレータ4とを重ねて電極積層体13を形成した状態で、正極板1の下側の2つの角部と上側の1つの角部が電極板保持部20に保持され、隣り合うセパレータ4と正極板1を位置決め保持することができ、結果として負極板2と正極板1の相対的な位置ずれを防止することが可能になる。また、本実施形態では、正極板1の3つの角部が電極板保持部20で保持されていることにより、電池Aの製造時や運搬・使用時に電極積層体13が斜めになったり、上下逆さになるなどしても、正極板1が負極板2に対して位置ずれすることを確実に防止できる。
【0027】
したがって、従来のように負極板2と正極板1がずれて所望の電池性能が発揮されなくなったり、突起状のリチウム析出物3や活物質のバリ5がセパレータ4を突き破って、短絡が生じるおそれを解消することができ、高性能で信頼性の高い電池Aを提供することが可能になる。
【0028】
以上、本発明に係る電池の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0029】
例えば、本実施形態では、正極板1の下側の2つの角部と上側の1つの角部を電極板保持部20で保持することにより、正極板1が負極板2に対して位置ずれすることを防止できるものとして説明を行った。これに対し、例えば図4に示すように、正極板1の下側の2つの角部を電極板保持部20(20a、20b)で保持するとともに、セパレータ4の一面4aから積層方向外側に突設した係止部(他の電極板保持手段)23によって正極板1(正極板本体7)の上側を係止して保持するように構成してもよい。この場合においても、本実施形態と同様に、正極板1の下側の2箇所と上側の1箇所が電極板保持部20と係止部(他の電極板保持手段)23で保持されるため、電池Aの製造時や運搬・使用時に電極積層体13が斜めになったり、上下逆さになるなどしても、正極板1が負極板2に対して位置ずれすることを確実に防止することが可能である。
【0030】
また、本実施形態では、電池Aがリチウムイオン二次電池であるものとして説明を行ったが、本発明は、リチウムイオン二次電池以外の他の二次電池や、一次電池など、セパレータ4を介して正極板1と負極板2とが積層されるあらゆる電池に適用可能である。
【0031】
次に、図5から図7を参照し、本発明の第2実施形態に係る電池について説明する。ここで、本実施形態では、第1実施形態に対し電極板保持部の構成が異なり、他の構成は第1実施形態とほぼ同様であるため、第1実施形態と同様の構成に対して同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0032】
本実施形態の電池Bは、第1実施形態と同様、正極板1と負極板2とセパレータ4と電解液と電池缶6を備えるとともに、負極板2及びセパレータ4に対して正極板1を位置決め保持するための電極板保持部を備えている。
【0033】
一方、本実施形態の電極積層体13は、図5及び図6に示すように、セパレータ4が、負極板2及び正極板1(負極板本体9及び正極板本体7)よりも面積の大きい略矩形状に形成されるとともに、その外周縁側(外周縁を形成する4辺側)に、正極板1を積層するセパレータ4の一面4aから積層方向外側に突出し、外周縁に沿って延びる電極板保持部30が形成されている。
【0034】
本実施形態においては、図7に示すように、予め外周縁側に折曲部31を設けてセパレータ4を形成しておき、これら折曲部31をセパレータ4の一面4a側に折り曲げることによって電極板保持部30が形成される。また、このとき、セパレータ4の折曲部31の厚さ寸法及び長さ寸法(各辺から外側に突出する突出寸法)を予め所定の寸法に設定しておく。これにより、電極板保持部30で囲まれてセパレータ4の一面4a側に形成される収容空間22が、正極板1(正極板本体7)の平面形状と略同等の大きさの平面形状となるように形成される。また、本実施形態の収容空間22は、その厚さ(深さ)が、正極板1の厚さと略同等となるように形成される。
【0035】
そして、本実施形態の電池Bは、セパレータ4の外周縁側に設けた電極板保持部30によって形成された収容空間22内に正極板1を収容して負極板2及びセパレータ4の所定位置に重ねて積層する。これにより、正極板1は、その外周端側が電極板保持部30に係止されて、収容空間22内で保持される。
【0036】
よって、本実施形態の電池Bにおいては、正極板1と、負極板2を内包したセパレータ4とを重ねて電極積層体13を形成した状態で、正極板1が電極板保持部30に保持され、隣り合うセパレータ4と正極板1を位置決め保持することができ、結果として負極板2と正極板1の相対的な位置ずれを防止することが可能になる。また、本実施形態では、正極板1の外周端側が電極板保持部30で保持されることにより、電池Bの製造時や運搬・使用時に電極積層体13が斜めになったり、上下逆さになるなどしても、正極板1が負極板2に対して位置ずれすることを確実に防止できる。
【0037】
したがって、従来のように負極板2と正極板1がずれて所望の電池性能が発揮されなくなったり、突起状のリチウム析出物3や活物質のバリ5がセパレータ4を突き破って、短絡が生じるおそれを解消することができ、高性能で信頼性の高い電池Aを提供することが可能になる。
【0038】
以上、本発明に係る電池の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0039】
例えば、正極板1の外周縁側を係止して正極板1を位置決め保持することが可能であれば、電極板保持部30の数を限定しなくてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 正極板(第二電極板)
2 負極板(第一電極板)
3 リチウム
4 セパレータ
4a 一面
5 バリ
6 電池缶
7 正極板本体
8 正極タブ
9 負極板本体
10 負極タブ
11 第一セパレータ
12 第二セパレータ
13 電極積層体
14 正極端子
15 リード
16 負極端子
17 シール部材
20 電極板保持部
20a 電極板保持部
20b 電極板保持部
20c 電極板保持部
22 収容空間
23 係止部(他の電極板保持手段)
30 電極板保持部
31 折曲部
A 電池
B 電池
T1 厚さ方向(積層方向)
T2 上下方向
T3 横方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極板と、
前記第一電極板を内包するように設けられたセパレータと、
前記セパレータを間に前記第一電極板に重ねて配設される第二電極板とを備えるとともに、
前記第二電極板の少なくとも一部を収容する収容空間を形成し、前記収容空間に収容した状態で前記第二電極板を位置決め保持する電極板保持部を備えていることを特徴とする電池。
【請求項2】
請求項1記載の電池において、
前記第二電極板が略方形板状に形成され、
前記第二電極板の下側の2つの角部を保持するように前記電極板保持部を設け、且つ前記第二電極板の上側を保持するように前記電極板保持部あるいは他の電極板保持手段を設けたことを特徴とする電池。
【請求項3】
請求項1記載の電池において、
前記セパレータが前記第一電極板及び前記第二電極板よりも平面形状を大にして形成され、
前記セパレータの外周縁側を折り返して前記電極板保持部が形成されていることを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190696(P2012−190696A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54200(P2011−54200)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】