説明

電池

【課題】 電極体における径方向の温度のばらつきを小さくして、電池容量の低下や電池抵抗の増加を抑制した電池を提供する。
【解決手段】 電池1は、電極板20,30が捲回軸AXの周りに扁平に捲回されてなる扁平捲回型電極体10を電池ケース80内に収容してなり、扁平捲回型電極体は、集電部11,12及び本体部13を有し、自身の中心に軸芯部材50が挿入されてなり、軸芯部材は、扁平捲回型電極体の本体部に密着する密着部51M,52M、及び、集電部が溶接してなる溶接部51N,52Nを含み、金属からなる金属芯部51,52を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極板を捲回軸の周りに扁平に捲回した扁平捲回型電極体を備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両や、ノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源に、充放電可能な電池が利用されている。
このような電池として、例えば、正極シート(後述の正極板に対応)、負極シート(後述の負極板に対応)を捲回し、横断面が扁平な長円形状とされた偏平電極体(後述の扁平捲回型電極体に対応)を備える電池が知られている(例えば、特許文献1に記載の電池)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−47332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池を充放電させると電極体が発熱するが、上述の電池では、扁平捲回型電極体(以下、単に電極体ともいう)の温度が、径方向内側ほど高くなることが判ってきた。電極体のうち、径方向外側の部位は、電池ケースを通じて熱を電池の外部に放散しやすい。一方、電極体のうち、径方向内側に位置する部位ほど、自身の熱を放散し難いためである。このため、電極体の径方向に電池特性がばらつくと共に電極体の内部で劣化が進行して、電池容量の低下や電池抵抗の増加を引き起こしやすい。
【0005】
本発明は、かかる問題を鑑みてなされたものであって、電極体における径方向の温度のばらつきを小さくして、電池容量の低下や電池抵抗の増加を抑制した電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電極板が捲回軸の周りに扁平に捲回されてなる扁平捲回型電極体を電池ケース内に収容してなる電池であって、上記扁平捲回型電極体は、上記捲回軸に沿う軸線方向の一方端側に、上記電極板の電極箔が露出して捲回された集電部、及び、上記集電部よりも上記軸線方向内側に位置する本体部、を有し、自身の中心に軸芯部材が挿入されてなり、上記軸芯部材は、上記扁平捲回型電極体の上記本体部に密着する密着部、及び、上記集電部が溶接してなる溶接部を含み、金属からなる金属芯部を有する電池である。
【0007】
上述の電池では、軸芯部材の金属芯部は、電極体の本体部に密着する密着部を有している。このためこの電池では、通電により本体部に生じた熱を、本体部に密着している密着部を通じて軸芯部材の金属芯部に伝えることができる。
さらに、この金属芯部の溶接部には集電部が溶接されている。このため、通電により本体部に生じた熱を、集電部及び溶接部を通じて金属芯部に伝えることができる。即ち、電極体のうちの集電部では、電極箔同士が径方向に重なり合っているため、この集電部を、軸芯部材の金属芯部の溶接部に溶接することで、本体部のうち、径方向のいずれの位置で発生した熱も、集電部を通じて金属芯部に熱を伝えることができる。従って、電極体の本体部における径方向の温度のばらつきをも抑制することができる。
かくして、電極体における径方向の温度のばらつきを小さくして、電池容量の低下や電池抵抗の増加を抑制できる電池とすることができる。
【0008】
なお、「軸芯部材」の形態としては、金属芯部として、正極側の集電部を溶接する第1金属芯部、及び、負極側の集電部を溶接する第2金属芯部の少なくともいずれかを有する形態が挙げられる。また、「電極板」としては、正極箔を含む正極板、及び、負極箔を含む負極板が挙げられる。
【0009】
さらに、上述の電池であって、前記軸芯部材の前記金属芯部は、前記扁平捲回型電極体から前記軸線方向外側に延出する延出部を有してなる電池とすると良い。
【0010】
上述の電池では、軸芯部材の金属芯部は、電極体から軸線方向外側に延出する延出部を有する。このため、電極体から金属芯部に伝えられた熱を、延出部を通じて電極体の外部に放散させることができる。
【0011】
さらに、上述の電池であって、前記延出部は、この延出部から前記電池ケースへ熱伝導可能に、上記電池ケースに直接結合し、又は、電気絶縁物を介して間接に接してなる電池とすると良い。
【0012】
上述の電池では、延出部が電池ケースに直接結合し、又は、電気絶縁物を介して間接に接してなる。このため、電極体から金属芯部に伝えられた熱を、延出部及び電池ケースを通じて電池ケースの外部に放散させることができる。
【0013】
なお、延出部から電池ケースへ熱伝導可能に、延出部を電池ケースに直接結合させる手法としては、例えば、延出部と電池ケースとの当接や接着や溶接が挙げられる。また、延出部から電池ケースへ熱伝導可能に、電気絶縁物を介して電池ケースに延出部を間接に接触(当接)させる手法としては、例えば、延出部と電池ケースとの間に、良熱伝導性の絶縁シートを介在させる、さらには、この絶縁シートと延出部或いは電池ケースとをそれぞれ接着する手法が挙げられる。
【0014】
さらに、上述のいずれかの電池であって、一又は複数の部材からなり、前記金属芯部と接触することなく、前記集電部に接続して、一部が前記電池ケースの外部に延出する端子部材を備える電池とすると良い。
【0015】
電池を充放電させると、正極端子部材や負極端子部材は、自身の抵抗により発熱する。このため、例えば、端子部材が軸芯部材の金属芯部に接触する場合や、金属芯部を端子部材と兼用した場合、端子部材で発生する熱が金属芯部に伝わって、この金属芯部の温度が高くなるので、電極体の本体部で発生した熱が金属芯部に移動し難くなる。
これに対し、上述の電池では、端子部材は金属芯部に接触していない。このため、端子部材で発生した熱が金属芯部に伝わり難いので、電極体の本体部で発生した熱を金属芯部に適切に移すことができる。
【0016】
さらに、上述のいずれかの電池であって、前記軸芯部材の前記金属芯部は、一対の主平面がそれぞれ前記本体部に密着する、平板形状の金属板芯部である電池とすると良い。
【0017】
上述の電池では、金属芯部は上述の金属板芯部である。このため、2つの主平面と電極体の本体部とが密着する面積を大きくできて、本体部で発生した熱を金属板芯部(金属芯部)に伝えやすい電池とすることができる。
【0018】
さらに、上述のいずれかの電池であって、前記電極箔を含む前記電極板は、正極箔を含む正極板、及び、負極箔を含む負極板であり、前記集電部は、前記扁平捲回型電極体のうち、前記軸線方向の一方側端部の位置する正極集電部、及び、上記軸線方向の他方側端部に位置する負極集電部であり、前記軸芯部材は、前記金属芯部として、上記正極集電部が溶接してなる第1金属芯部、及び、上記負極集電部が溶接してなる第2金属芯部のいずれをも有する電池とすると良い。
【0019】
上述の電池では、軸芯部材は上述した第1金属芯部及び第2金属芯部のいずれをも有する。このため、通電により電極体の本体部に生じた熱を、本体部に密着すると共に正極集電部と溶接された第1金属芯部に伝えることができる。さらに加えて、本体部に密着すると共に負極集電部と溶接された第2金属芯部にも伝えることができる。
【0020】
さらに、上述の電池であって、前記第1金属芯部は、第1金属からなり、前記扁平捲回型電極体から前記軸線方向の一方側に延出する第1延出部を有し、前記第2金属芯部は、上記第1金属とは異なる第2金属からなり、上記扁平捲回型電極体から上記軸線方向の他方側に延出する第2延出部を有し、上記第1金属芯部及び第2金属芯部のうち、熱伝導率の高い金属からなる金属芯部を高伝導金属芯部とし、熱伝導率の低い金属からなる金属芯部を低伝導金属芯部としたとき、上記高伝導金属芯部が前記本体部に密着する密着面積を、上記低伝導金属芯部が上記本体部に密着する密着面積よりも大きくしてなる電池とすると良い。
【0021】
上述の電池では、第1金属芯部が第1金属からなり、第2金属芯部が第1金属とは異なる第2金属からなる。なお、第1金属芯部及び第2金属芯部のうち、熱伝導率の高い金属からなる高伝導金属芯部の方が、熱伝導率の低い金属からなる低伝導金属芯部よりも自身の延出部に熱を移動させやすい。
そして、高伝導金属芯部の密着面積を、低伝導金属芯部の密着面積よりも大きくしてなる。このため、電極体の本体部で発生した熱を低伝導金属芯部よりも高伝導金属芯部に多く伝えることができるので、延出部を通じて電極体からの熱を適切に放散させうる電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1にかかる電池の斜視図である。
【図2】実施例1にかかる電池の断面図(図1のA−A断面)である。
【図3】実施例1の正極板(負極板)の斜視図である。
【図4】実施例1の軸芯部材の斜視図である。
【図5】実施例1にかかる電池における熱の伝わりを示す説明図である。
【図6】実施例2にかかる電池の断面図である。
【図7】実施例3にかかる電池の断面図である。
【図8】実施例4にかかる電池の断面図である。
【図9】比較例2の電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)
次に、本発明の1形態(実施例1)に係る電池について、図面を参照しつつ説明する。まず、実施例1にかかる電池1について、図1,2を参照して説明する。この電池1は、いずれも帯状の正極板20、負極板30及びセパレータ40を有し、これらを捲回軸AXの周りに捲回した扁平形状の電極体10を備える(図1,2参照)。なお、この電極体10は、正極板20及び負極板30よりも径方向DR内側に、後述する軸芯部材50を有している。
また、電池1は、この電極体10の正極板20に接続された正極端子部材60、負極板30に接続された負極端子部材70、及び、電極体10を内部に収容する電池ケース80を備える(図1,2参照)。これらのほか、電極体10内に、有機溶媒に溶質(LiPF6)を添加した電解液(図示しない)を備える。
【0024】
このうち、電池ケース80は、アルミニウム製の電池ケース本体81及び封口蓋88を有する。封口蓋88は矩形板状であり、電池ケース本体81の開口を閉塞して、この電池ケース本体81に溶接されている。この封口蓋88は、正極端子部材60を電池ケース80の内部から外部に貫通させるための第1貫通孔88X、及び、負極端子部材70を電池ケース80の内部から外部に貫通させるための第2貫通孔88Yを有する(図2参照)。なお、第1貫通孔88Xと正極端子部材60との間、及び、第2貫通孔88Yと負極端子部材70との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材95が介在し、互いを絶縁している。また、封口蓋88の蓋表面88aには、第1貫通孔88Xと第2貫通孔88Yとの間の位置に、矩形板状の安全弁97が封着されている。
【0025】
また、電池ケース本体81は有底矩形箱形である。即ち、封口蓋88と対向する矩形平板状のケース底部82、及び、このケース底部82の四方の縁から、このケース底部82の垂直方向に立ち上がるケース壁部(次述する第1ケース壁部83及び第2ケース壁部84)からなる(図1参照)。このケース壁部は、それぞれ捲回軸AXに垂直な面をなす、平板状の2つの第1ケース壁部83,83と、それぞれ電極体10の捲回軸AXに平行な平板状の2つの第2ケース壁部84,84とからなる。
【0026】
このうち、2つの第2ケース壁部84,84及びケース底部82と電極体10とは、樹脂からなる絶縁フィルム(図示しない)が介在して絶縁されている。一方、第1ケース壁部83,83は、後に詳述するが、電極体10の軸芯部材50の両端(後述する第1端部51V,第2端部52V)とそれぞれ結合すると共に熱的に接続している。
【0027】
正極端子部材60は、単一のアルミニウム材からなりクランク形状を有する(図1,2参照)。この正極端子部材60は、基端側(電極体10側)に位置し、正極板20(後述する正極集電部11)に溶接された正極接続部61と、電池ケース80の外部に延出する先端側に位置し、電池1の正極側の外部端子をなす正極外部端子部62とを有する(図2参照)。
なお、この正極端子部材60は、後述する軸芯部材50の第1金属板芯部51に接触していない(図2参照)。このため、電池1の充放電によって、正極端子部材60が自身の抵抗で発熱しても、この熱が第1金属板芯部51に直接伝わらない。
【0028】
また、負極端子部材70は、正極端子部材60と同様、単一の銅材からなりクランク形状を有する(図1,2参照)。この負極端子部材70も、基端側(電極体10)に位置し、負極板30(後述する負極集電部12)に溶接された負極接続部71と、電池ケース80の外部に延出する先端側に位置し、電池1の負極側の外部端子をなす負極外部端子部72とを有する(図2参照)。
なお、この負極端子部材70は、後述する軸芯部材50の第2金属板芯部52に接触していない(図2参照)。このため、上述した正極端子部材60と同様、充放電によって、負極端子部材70が自身の抵抗で発熱しても、この熱が第2金属板芯部52に直接伝わらない。
【0029】
電極体10は、図1に示すように、正極板20及び負極板30をセパレータ40を介して捲回軸AXの周りに扁平形状に捲回した扁平捲回型電極体である。なお、この電極体10を捲回軸AXに垂直に切断した横断面PJ(図1のハッチング部分)は、矩形状の部分を2つの半円状部分で挟んだ扁平な長円形状をなしている(図1参照)。
【0030】
この電極体10をなす正極板20は、図3の斜視図に示すように、長手方向DAに延びる帯状でアルミニウムからなる正極箔28と、この正極箔28(正極箔28の両主面)の短手方向(幅方向)DB一方側(図3中、左上側)に偏って形成され、正極箔28の長手方向DAに延びる帯状の2つの正極活物質層21,21とを有している。これにより、この正極板20は、正極箔28の短手方向DBの他方側(図3中、右下側)に、正極活物質層21から正極箔28が露出している。
【0031】
また、負極板30は、図3の斜視図に示すように、長手方向DAに延びる帯状で銅からなる負極箔38と、この負極箔38(負極箔38の両主面)の短手方向DB一方側(図3中、左上側)に偏って形成され、負極箔38の長手方向DAに延びる帯状の2つの負極活物質層31,31とを有している。これにより、この負極板30は、負極箔38の短手方向DBの他方側(図3中、右下側)に、負極活物質層31から負極箔38が露出している。
【0032】
なお、上述した正極板20及び負極板30を有する電極体10のうち、捲回軸AXに沿う軸線方向DXの一方側(図2中、左側)には、正極板20の正極箔28が露出して渦巻状に捲回された正極集電部11が、軸線方向DXの他方側(図2中、右側)には、負極板30の負極箔38が露出して渦巻状に捲回された負極集電部12が、それぞれ位置している(図2参照)。
また、電極体10は、軸線方向DXについて、正極集電部11及び負極集電部12よりも軸線方向DX内側に位置する本体部13を有する。この本体部13は、正極板20(正極活物質層21,正極箔28)、負極板30(負極活物質層31,負極箔38)、及び、前述したセパレータ40が径方向DRに積層されている。電池1の充放電の際には、電極体10のうち、この本体部13において熱が生じる。
【0033】
また、この電極体10の中心には、即ち、正極板20及び負極板30よりも径方向DR内側には、平板形状の軸芯部材50が挿入されている(図2参照)。この軸芯部材50は、第1方向DFの寸法Tfが110mm、第2方向DGの寸法Tgが50mm、そして、板厚Thが2mmの矩形平板形状である(図4参照)。
この軸芯部材50は、図4に示すように、第1方向DFのうち一方側(図4中、左側)に位置する矩形平板状の第1金属板芯部51と、この第1金属板芯部51とは逆側(図4中、右側)に位置する矩形平板状の第2金属板芯部52と、これら第1金属板芯部51と第2金属板芯部52との間に位置する矩形平板状の樹脂部53とを有する。なお、図4に示す、第1金属板芯部51の第1方向DFの寸法T1、第2金属板芯部52の第1方向DFの寸法T2、及び、樹脂部53の第1方向DFの寸法T3をそれぞれ、32mm、68mm及び10mmにしている。
【0034】
このうち、絶縁性樹脂からなる樹脂部53は、第1金属板芯部51及び第2金属板芯部52に接着して、これらの間の電気的な絶縁を保つ。
また、アルミニウムからなる平板形状の第1金属板芯部51は、一対の第1主平面51L,51Lを有する(図4参照)。また、銅からなる平板形状の第2金属板芯部52もまた、一対の第2主平面52L,52Lを有する(図4参照)。
【0035】
なお、本実施例1にかかる電池1では、上述した軸芯部材50は、図2に示すように、この軸芯部材50の第1方向DFが電極体10の軸線方向DXに一致し、第2方向DGが電極体10の長円形状の横断面PJにおける長径方向DLに一致するよう、電極体10内(正極板20及び負極板30の径方向DR内側)に配置されている。
従って、軸芯部材50の第1金属板芯部51は、径方向DR内側から電極体10の本体部13に密着する第1密着部51Mと、電極体10の正極集電部11が溶接している第1溶接部51Nと、電極体10から軸線方向DXの一方側(図2中、左側)に延出する第1延出部51Pとを有する(図2参照)。なお、この第1延出部51Pのうち、軸線方向DXの一方側(図2中、左側)の端を第1端部51Vとする。
【0036】
ここで、図5を参照しつつ、電極体10と第1金属板芯部51との間での熱の伝わり(移動)について、以下に説明する。
第1金属板芯部51の第1密着部51Mは、第1金属板芯部51の一対の第1主平面51L,51Lを通じて電極体10の本体部13に密着している。このため、本体部13に生じた熱は第1密着部51Mに伝えられる。これに加えて、第1金属板芯部51の第1溶接部51Nには、径方向DRに正極箔28が重なり合う正極集電部11が溶接している。このため、本体部13の径方向DRのいずれの位置からも、正極箔28(正極集電部11)を通じて熱が第1溶接部51Nに伝えられる。
【0037】
なお、第1金属板芯部51の第1延出部51Pは、前述した電池ケース80へ熱伝導可能に、電池ケース80に間接に当接している。具体的には、第1延出部51Pの第1端部51Vと電池ケース80の第1ケース壁部83との間に、良熱伝導性であるが電気絶縁性を有する樹脂板90を介在させて、この樹脂板90と第1金属板芯部51或いは電池ケース80とをそれぞれ接着させてある(図2,5参照)。これにより、第1金属板芯部51と電池ケース80とは電気的に絶縁されながらも、第1金属板芯部51から電池ケース80に効率良く熱を伝えることができる。なお、樹脂板90としては、例えば放熱絶縁フィラーなど、熱伝導性が高く、電気絶縁性を有する無機化合物からなる材料と共に、ポリアミド系やポリエステル系などの樹脂を板状(シート状)に成形したものが挙げられる。
【0038】
かくして、本実施例1にかかる電池1では、図5において実線の矢印で示すように、電極体10の本体部13に発生した熱を、これに密着している軸芯部材50の第1金属板芯部51(第1密着部51M)、さらには電池ケース80に伝える第1経路R1を通じて、電池1の外部(図5中、左端)に放散することができる。
さらに、図5において破線の矢印で示すように、上述した第1経路R1に加え、本体部13で発生した熱を、正極集電部11をなす正極箔28から、この正極箔28と溶接した第1溶接部51Nに伝え、さらに、電池ケース80に伝える第2経路R2を通じても、電池1の外部(図5中、左端)に放散できる。
【0039】
また、軸芯部材50の第2金属板芯部52は、径方向DR内側から電極体10の本体部13に密着する第2密着部52Mと、電極体10の負極集電部12が溶接している第2溶接部52Nと、電極体10から軸線方向DXの他方側(図2中、右側)に延出する第2延出部52Pとを有する(図2参照)。なお、この第2延出部52Pのうち、軸線方向DXの他方側(図2中、右側)の端を第2端部52Vとする。
【0040】
また、第2金属板芯部52の第2密着部52Mは、第1金属板芯部51と同様、第2金属板芯部52の一対の第2主平面52L,52Lを通じて本体部13に密着している。このため、電極体10の本体部13に生じた熱は第2密着部52Mに伝えられる。これに加えて、第2金属板芯部52の第2溶接部52Nには、径方向DRに負極箔38が重なり合う負極集電部12が溶接している。このため、本体部13の径方向DRのいずれの位置からも、負極箔38(負極集電部12)を通じて熱が第2溶接部52Nに伝えられる。
【0041】
なお、第2金属板芯部52の第2延出部52Pは、第1金属板芯部51と同様に、電池ケース80へ熱伝導可能に、電池ケース80に間接に当接している(図2,5参照)。これにより、第2金属板芯部52と電池ケース80とは電気的に絶縁されながらも、第2金属板芯部52から電池ケース80に効率良く熱を伝えることができる。
かくして、本実施例1にかかる電池1では、図5において実線の矢印で示すように、電極体10の本体部13に発生した熱を、これに密着している軸芯部材50の第2金属板芯部52(第2密着部52M)、さらには電池ケース80に伝える第3経路R3を通じて、電池1の外部(図5中、左端)に放散することができる。
さらに、図5において破線の矢印で示すように、上述した第3経路R3に加え、本体部13で発生した熱を、負極集電部12をなす負極箔38から、この負極箔38と溶接した第2溶接部52Nに伝え、さらに、電池ケース80に伝える第4経路R4を通じても、電池1の外部(図5中、左端)に放散できる。
【0042】
なお、本実施例1では、第1金属板芯部51のうち第1密着部51Mの第1方向DFの寸法T1Mを12mm、第2金属板芯部52のうち第2密着部52Mの第1方向DFの寸法T2Mを48mmにしている。また、第1金属板芯部51の第1密着部51Mと、第2金属板芯部52の第2密着部52Mとは、第2方向DGの寸法Tgが同じ(=50mm)である(図2参照)。このため、寸法T2Mが寸法T1Mよりも大きい第2金属板芯部52における第2密着部52Mが電極体10の本体部13に密着する第2面積S2(=T2M×Tg×2)の方が、第1金属板芯部51における第1密着部51Mが本体部13に密着する第1面積S1(=T1M×Tg×2)よりも大きくされている(S2>S1)。
【0043】
上述の実施例1にかかる電池1について、充放電を繰り返す試験を行い、試験中の電極体10の各部の最高温度、及び、試験前後の電池容量の変化を調査した。
まず、電池1を用意した。但し、試験に用いる電池1の電極体10には、電極体10の径方向DRの異なる位置に熱電対をそれぞれ配置した。具体的には、電極体10の軸線方向DX中央における、電極体10の最内周の部位PA、電極体10の最外周の部位PC、及び、径方向中央(即ち、部位PAと部位PCとの中間)の部位PBにそれぞれ熱電対を配置した。
【0044】
電池1の形態について表1に示す。なお、この表1では、第1金属板芯部、第2金属板芯部及び樹脂部のうち、当該電池において軸芯部材に含まれるものについて「○」を、含まれないものについて「×」をそれぞれ付している。また、前述した第1経路R1、第2経路R2、第3経路R3及び第4経路R4のうち、当該電池に含まれるものについて「○」を、含まれないものについて「×」をそれぞれ付している。
【0045】
【表1】

【0046】
上述した電池1の電池容量を測定した。具体的には、予め充電状態をSOC100%にした電池1について、25℃の温度環境下で、1/3Cの電流値で3.0Vとなるまで定電流放電を行い、放電した電池容量を測定した。このときの電池容量を試験前電池容量C1とする。
【0047】
電池容量を測定した後、充電してSOC60%に調整した電池1について、25℃の温度環境下で、10Cの電流による10秒間の放電と、10Cの電流による10秒間の充電とを交互に100000回繰り返した。なお、放電と充電との間には、それぞれ10秒間の休止を設けた。
試験中、熱電対を用いて、電極体10の各部位PA,PB,PCの温度を測定し、試験中の最高温度を表2に記載する。
【0048】
【表2】

【0049】
その後、電池1の電池容量の値(試験後電池容量C2)を、前述した手法で測定した。そして、試験前電池容量C1及び試験後電池容量C2を用いて、試験前後における電池1の容量維持率(即ち、試験後電池容量C2を、試験前電池容量C1で除した値の百分率(%))を算出した。電池1の容量維持率についても、表2に記載する。
【0050】
(実施例2)
加えて、実施例2〜4,比較例1〜3の各電池を用意し、これら各電池についても、充放電を繰り返す試験を行い、試験中の電極体の各部位における最高温度、及び、容量維持率を調査した。これらについても、表1,2に示す。
なお、実施例2の電池では、軸芯部材150は、図6に示すように、軸線方向DXの一方側(図6中、左側)に位置し、アルミニウム製の第1金属板芯部151と、軸線方向DXの他方側(図6中、右側)に位置し、絶縁樹脂製の樹脂部153とからなり、第2金属板芯部を有しない点で、実施例1と異なる。なお、この軸芯部材150も、実施例1の軸芯部材50と同様、第1方向DF(軸線方向DX)の寸法Tfが110mm、第2方向DG(長径方向DL)の寸法Tgが50mmである。但し、第1金属板芯部151の第1方向DFの寸法T1、及び、樹脂部153の第1方向DFの寸法T3は、それぞれ78mm及び32mmとしている(図6参照)。
【0051】
この実施例2の電池でも、実施例1と同様、第1金属板芯部151は、第1密着部51Mと第1溶接部51Nとを有する(図6参照)。但し、第1密着部51Mの第1面積S1は、S1=48mm×50mm×2としている。
また、実施例1と同様、第1金属板芯部151の第1延出部51Pが、前述した樹脂板90を介して電池ケース80に当接している。かくして、実施例2の電池は、実施例1の電池1が有する4つの経路R1〜R4のうち、第1経路R1及び第2経路R2のみ有する。
【0052】
(実施例3)
また、実施例3の電池では、実施例2とは逆のパターンであり、軸芯部材250は、図7に示すように、軸線方向DXの他方側(図7中、右側)に位置し、銅製の第2金属板芯部252と、軸線方向DXの一方側(図7中、左側)に位置し、絶縁樹脂製の樹脂部253とからなり、第1金属板芯部を有しない点で、実施例1と異なる。なお、この軸芯部材250も、実施例1の軸芯部材50と同様、第1方向DF(軸線方向DX)の寸法Tfが110mm、第2方向DG(長径方向DL)の寸法Tgが50mmである。但し、第2金属板芯部252の第1方向DFの寸法T2、及び、樹脂部253の寸法T3は、それぞれ78mm及び32mmとしている(図7参照)。
【0053】
この実施例3の電池でも、実施例1と同様、第2金属板芯部252は、第2密着部52Mと第2溶接部52Nとを有する(図7参照)。但し、第2密着部52Mの第2面積S2は、S2=48mm×50mm×2としている。
また、実施例1と同様、第2金属板芯部252の第2延出部52Pが、樹脂板90を介して電池ケース80に当接している。かくして、実施例3の電池は、実施例1の電池1が有する4つの経路R1〜R4のうち、第3経路R3及び第4経路R4のみ有する。
【0054】
(実施例4)
また、実施例4の電池では、軸芯部材350は、実施例1と同様、第1金属板芯部351、第2金属板芯部352及び樹脂部353の三者からなる。また、この軸芯部材350の寸法は、実施例1の軸芯部材50と同様、第1方向DF(軸線方向DX)の寸法Tfが110mm、第2方向DG(長径方向DL)の寸法Tgが50mmである。さらに、実施例4の電池は、実施例1の電池1と同様、4つの経路(第1経路R1、第2経路R2、第3経路R3及び第4経路R4)を有する。
但し、第1金属板芯部351の第1方向DFの寸法T1、第2金属板芯部352の寸法T2、及び、樹脂部353の寸法T3をそれぞれ、50mm、50mm及び10mmにしている点で、実施例1と異なる(図8参照)。そして、これにより、第1金属板芯部351のうち第1密着部51Mの第1方向DFの寸法T1Mと、第2金属板芯部352のうち第2密着部52Mの寸法T2Mとが同じ20mmとされ、電極体10の本体部13に密着している、第1密着部51Mの第1面積S1と、第2金属板芯部352における第2密着部52Mの第2面積S2とが等しくされている点で、実施例1と異なる。
【0055】
(比較例1〜3)
一方、比較例1の電池は、電極体に軸芯部材を設けていない点で、実施例1の電池1と異なる。
また、比較例2の電池は、図9に示すように、実施例2と同じ、第2金属板芯部を有しない軸芯部材150を用いる点で、実施例1の電池1と異なる。但し、この軸芯部材150の第1金属板芯部151と正極集電部11とが溶接されていない点で、実施例2の電池とも異なる。
また、比較例3の電池は、第1金属板芯部及び第2金属板芯部を有さず、全体が絶縁樹脂からなる軸芯部材を用いている点で、実施例1の電池1と異なる。
【0056】
これら実施例2〜4,比較例1〜3の各電池についても、試験中における各部位PA,PB,PCの最高温度、及び、各電池の容量維持率を表2に示す。
なお、表2では、各部位PA,PB,PCの温度差を算出し、この温度差が3℃未満の電池、即ち、電極体の径方向の位置による最高温度のばらつきがない電池を「○」と、逆に、3℃以上の電池を「×」と判定した。また、容量維持率が94%以上の電池を「○」と、逆に、94%未満の電池を「×」と判定した。
【0057】
表2によれば、軸芯部材を有しない比較例1の電池は、試験中の各部位PA,PB,PCの最高温度がそれぞれ55,45,39℃である。また、温度差が16℃となり「×」の判定である。このことから、電池の充放電により、電極体10の温度に径方向のばらつきが生じ、径方向内側ほど高くなることが判る。これは、電極体10のうち、径方向外側の部位は、その部位の付近にある電池ケースを通じて熱を電池の外部に放散し易い一方、径方向内側の部位は、径方向外側の部位に比して電池ケースとの距離が長いので、自身の熱を電池ケースの外部に放散し難いためであると考えられる。
また、比較例1の電池における部位PAの最高温度(55℃)が、実施例1〜4及び比較例1〜3の電池の各部位PA,PB,PCの最高温度のうちで最も高い。一方、比較例1の電池は、容量維持率が80%であり「×」の判定である。この値は、実施例1〜4及び比較例1〜3の電池の容量維持率のうちで最も低い。これは、充放電中に、電極体が高温環境下にさらされて、電極体(電極板)の劣化が進行したためであると考えられる。
【0058】
比較例2の電池では、試験中の各部位PA,PB,PCの最高温度がそれぞれ52,45,40℃である。このことから、前述した軸芯部材150を電極体10の内部に配置した比較例2の電池は、軸芯部材を設けていない比較例1の電池よりも、電極体10における径方向内側の部位の温度が低い。軸芯部材150を備える比較例2の電池では、電極体10の本体部13に密着している第1金属板芯部151、及び、この第1金属板芯部151に熱的に接続する電池ケース80で構成する、前述した第1経路R1を通じて、電極体10(本体部13)の熱を電池の外部に放散できるためであると考えられる。
但し、比較例2の電池における、各部位PA,PB,PCの温度差は12℃であり、「×」の判定である。このことから、上述した第1経路R1だけでは、電極体10の温度ばらつきを十分には抑制できないことが判る。
【0059】
また、比較例2の電池の容量維持率は88%であり、比較例1の電池に比べて高くなっている。軸芯部材150による電極体10の熱の放散によって、比較例1の電池よりも電極体10の最高温度が低くなり、電極体の劣化の進行が抑制されたためであると考えられる。但し、比較例2の容量維持率は依然として「×」の判定であり、比較例2の電池では、所望の電池性能を十分に維持することができない。
【0060】
比較例3の電池は、試験中の各部位PA,PB,PCの最高温度がそれぞれ48,45,42℃である。全体が樹脂からなる軸芯部材を電極体10の内部に配置した比較例3の電池は、軸芯部材を有しない比較例1の電池に比べ、電極体10に発生した熱を放散できることが判る。軸芯部材を備える電池では、電極体10の本体部13に密着している部位から軸芯部材に熱が伝わる。そして、この軸芯部材に接触する電池ケース80を通じて、電極体10の熱を電池の外部に放散できるためであると考えられる。
但し、比較例3の電池における温度差は6℃で、「×」の判定となる。従って、比較例2の電池同様、電極体10の温度ばらつきを十分には抑制できない。
また、比較例3の電池の容量維持率は84%であり、比較例1の電池よりも高くなっている。軸芯部材150を備える比較例2の電池と同様、軸芯部材による電極体10の熱の放散によって、比較例1の電池よりも電極体10の最高温度が低くなり、電極体の劣化の進行が抑制されたためであると考えられる。
但し、比較例3の容量維持率は、比較例1,2と同様、「×」の判定であり、比較例3の電池では、所望の電池性能を十分に維持することができない。
【0061】
一方、上述した比較例1〜3の各電池に対し、実施例1の電池1の、試験中の各部位PA,PB,PCの最高温度はそれぞれ37,35,35℃である。また、実施例2の電池の、試験中の各部位PA,PB,PCの最高温度はそれぞれ40,39,38℃であり、実施例3の電池の最高温度はそれぞれ38,37,36℃であり、実施例4の電池の最高温度はそれぞれ39,38,37℃である。つまり、各部位PA,PB,PCのいずれについても、実施例1〜4の各電池の最高温度は、上述した比較例1〜3の各電池よりも低い(例えば、部位PAにおいて、実施例1,2,3,4の各電池の最高温度(37,40,38,39℃)は、比較例1,2,3の各電池の最高温度(55,52,48℃)のいずれよりも低い)。
また、実施例1〜4の各電池は、各部位PA,PB,PCの温度差がいずれも2℃であり、「○」の判定である。このことから、実施例1〜4の各電池はいずれも、温度ばらつきを抑制できることが判る。
【0062】
加えて、実施例1〜4の各電池の容量維持率はいずれも「○」の判定である。これは、実施例1〜4の各電池では、上述したように、電極体10の径方向における温度のばらつきが小さくなり、また、充放電中の電極体10の各部位における最高温度を40℃程度以下に抑えられたため、電極体の劣化が抑制されたと考えられる。
【0063】
これは、実施例1〜4の各電池(電池1)は、前述した4つの経路R1〜R4のうち、第1経路R1と第2経路R2との組合せ、及び、第3経路R3と第4経路R4との組合せの少なくともいずれかを有しているのに対し、比較例1〜3の各電池は、これらの組合せを有していないためであると考えられる。
【0064】
さらに、実施例1〜4の各電池について検討する。なお、各電池において、電極体10の軸線方向DXの中央に熱電対をそれぞれ配置した。このため、実施例4の電池では、熱電対が軸芯部材350のうち樹脂部353の径方向DR外側に位置したため、熱電対を第2金属板芯部252の径方向DR外側に位置させた実施例3よりも、各部位PA〜PCの最高温度がいずれも高くなったと考えられる。
まず、実施例1の電池と実施例2,3の各電池とについて検討する。軸芯部材50に第1金属板芯部51及び第2金属板芯部52のいずれをも有する実施例1の電池1は、実施例2,3に比べて、各部位PA〜PCの最高温度がいずれも低い一方、容量維持率は高い。
【0065】
これは、実施例2の電池は、第1経路R1と第2経路R2との組合せのみを有する。また、実施例3の電池は、第3経路R3と第4経路R4との組合せのみを有する。これに対し、実施例1の電池1は、第1経路R1と第2経路R2との組合せ、及び、第3経路R3と第4経路R4との組合せの2つを有する。このため、実施例2,3の各電池よりも、電極体10(本体部13)の熱を電池1の外部に確実に放散できるためであると考えられる。
【0066】
次いで、実施例1の電池1と実施例4の電池とを比較する。実施例1の電池1は、各部位PA〜PCの最高温度が、いずれも実施例4の電池のそれよりも低い。
実施例1の電池1及び実施例4の電池では、電極体10の本体部13に密着する第1金属板芯部及び第2金属板芯部の総面積は等しい。しかし、アルミニウムからなる第1金属板芯部351の第1面積S1と、アルミニウムよりも熱伝導率の高い銅からなる第2金属板芯部352の第2面積S2とが等しい実施例4の電池よりも、第2面積S2が第1面積S1よりも大きい実施例1の電池1の方が、本体部13に発生した熱をより早く電池の外部に伝えやすいためであると考えられる。
【0067】
以上に示したように、実施例1〜4にかかる各電池(電池1)では、軸芯部材50,150,250,350の金属板芯部(第1金属板芯部51,151,351,第2金属板芯部52,252,352)は、電極体10の本体部13に密着する密着部(第1密着部51M,第2密着部52M)を有している。このため、これらの各電池(電池1)では、通電により本体部13に生じた熱を、本体部13に密着している密着部51M,52Mを通じて、軸芯部材50,150,250,350の金属板芯部51,52,151,252,351に伝えることができる。
【0068】
さらに、第1金属板芯部51,151,351の第1溶接部51Nには、正極集電部11が溶接されている。また,第2金属板芯部52,252,352の第2溶接部52Nには、負極集電部12が溶接されている。このため、通電により本体部13に生じた熱を、正極集電部11を通じて第1金属板芯部51,151,351に伝えることができる。即ち、電極体10のうちの正極集電部11では、正極箔28同士が径方向DRに重なり合っているため、この正極集電部11を、軸芯部材50,150,350の第1金属板芯部51,151,351の第1溶接部に溶接することで、本体部13のうち、径方向DRのいずれの位置で発生した熱も、正極集電部11を通じて第1金属板芯部51,151,351に熱を伝えることができる。従って、電極体10の本体部13における径方向DRの温度のばらつきをも抑制することができる。
同様に、通電により本体部13に生じた熱を、負極集電部12を通じて第2金属板芯部52,252,352に伝えることができる。
かくして、実施例1〜4にかかる各電池(電池1)では、電極体10における径方向DRの温度のばらつきを小さくして、電池容量の低下や電池抵抗の増加を抑制できる電池とすることができる。
【0069】
また、第1金属板芯部51,151,351は、電極体10から軸線方向DX外側に延出する第1延出部51Pを、また、第2金属板芯部52,252,352は第2延出部52Pを有する。このため、電極体10から第1金属板芯部51,151,351に伝えられた熱を、第1延出部51Pを通じて電極体10の外部に放散させることができる。また、第2金属板芯部52,252,352は、第1金属板芯部51,151,351と同様、電極体10から第2金属板芯部52,252,352に伝えられた熱を、第2延出部52Pを通じて電極体10の外部に放散させることができる。
かくして、実施例1〜4にかかる各電池(電池1)では、電極体10の温度上昇を抑えることができる。
【0070】
また、第1金属板芯部51,151,351の第1延出部51Pは、電池ケース80へ熱伝導可能に、樹脂板90を介して電池ケース80に間接に接してなる。このため、電極体10から第1金属板芯部51,151,351に伝えられた熱を、第1延出部51P及び電池ケース80を通じて電池ケース80の外部に放散させることができる。
また、第2金属板芯部52,252,352の第2延出部52Pは、電池ケース80へ熱伝導可能に、樹脂板90を介して電池ケース80に間接に接してなる。このため、電極体10から第2金属板芯部52,252,352に伝えられた熱を、第2延出部52P及び電池ケース80を通じて電池ケース80の外部に放散させることができる。
【0071】
また、正極端子部材60は第1金属板芯部51,151,351に、負極端子部材70は第2金属板芯部52,252,352にそれぞれ接触していない。このため、正極端子部材60で発生する熱が第1金属板芯部51,151,351に伝わり難いので、電極体10の本体部13で発生した熱を、第1金属板芯部51,151,351に適切に移すことができる。また、負極端子部材70で発生する熱が第2金属板芯部52,252,352に伝わり難いので、本体部13で発生した熱を第2金属板芯部52,252,352に適切に移すことができる。
【0072】
また、第1金属板芯部51,151,351は、一対の第1主平面51L,51Lがそれぞれ電極体10の本体部13に密着する平板形状である。このため、一対の第1主平面51L,51Lと本体部13とが密着する面積(第1面積S1)を大きくできて、本体部13で発生した熱を第1金属板芯部51,151,351に伝えやすい電池とすることができる。
また、第2金属板芯部52,252,352は、一対の第2主平面52L,52Lがそれぞれ本体部13に密着する平板形状である。このため、一対の第2主平面52L,52Lと本体部13とが密着する面積(第2面積S2)を大きくできて、本体部13で発生した熱を第2金属板芯部52,252,352に伝えやすい電池とすることができる。
【0073】
また、実施例1,4の各電池(電池1)は、軸芯部材50,350が第1金属板芯部51,351及び第2金属板芯部52,352のいずれをも有する。このため、通電により電極体10の本体部13に生じた熱を、本体部13に密着すると共に正極集電部11と溶接された第1金属板芯部51,351に伝えることができる。さらに加えて、本体部13に密着すると共に負極集電部12と溶接された第2金属板芯部52,352にも伝えることができる。
【0074】
また、実施例1の電池1では、第1金属板芯部51がアルミニウムからなり、第2金属板芯部52が銅からなる。なお、銅はアルミニウムよりも熱伝導率が高く、その銅からなる高伝導金属芯部である第2金属板芯部52の方が、アルミニウムからなる低伝導金属芯部である第1金属板芯部51よりも自身の延出部に熱を移動させやすい。
そして、このような高伝導金属芯部である第2金属板芯部52の密着面積(第2面積S2)を、低伝導金属板芯部である第1金属板芯部51の密着面積(第1面積S1)よりも大きくしてなる。このため、電極体10の本体部13で発生した熱を低伝導金属芯部である第1金属板芯部51よりも高伝導金属芯部である第2金属板芯部52に多く伝えることができるので、延出部51P,52Pを通じて電極体10からの熱を適切に放散させうる電池1とすることができる。
【0075】
次いで、本実施例1にかかる電池1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。まず、電極体10をなす正極板20を公知の手法で作製する。具体的には、帯状の正極箔28、及び、この正極箔28の長手方向DAに延びる帯状の2つの正極活物質層21,21からなる正極板20を作製した(図3参照)。
【0076】
また、別途、負極板30も公知の手法で作製する。具体的には、帯状の負極箔38、及び、この負極箔38の長手方向DAに延びる帯状の2つの負極活物質層31,31からなる負極板30を作製した(図3参照)。
【0077】
続いて、上述のように作製した正極板20及び負極板30を、前述した2つの帯状のセパレータ40,40と共に、円筒形状の芯材(図示しない)の周りに捲回して、捲回軸を有する円筒形状の捲回体(図示しない)を作製した。このとき、正極板20の正極箔28(正極集電部11)を捲回軸の軸線方向の一方側に、負極板30の負極箔38(負極集電部12)を軸線方向の他方側にそれぞれ配置した。
その後、捲回体から芯材を抜き取り、円筒面を両側から押し潰して、横断面が扁平な長円形状の扁平捲回型の電極体10とした。そして、この電極体10の中心(捲回軸を含む位置)に、前述した平板形状の軸芯部材50を配置(挿入)した。具体的には、軸芯部材50のうち、第1金属板芯部51の第1溶接部51Nが、電極体10の正極集電部11の径方向DR内側に、また、第2金属板芯部52の第2溶接部52Nが、電極体10の負極集電部12の径方向DR内側にそれぞれ位置するよう、軸芯部材50を配置した。
【0078】
軸芯部材50を配置後、軸芯部材50の第1金属板芯部51の第1溶接部51Nと正極箔28(正極集電部11)とを径方向DRに超音波溶接した。また、第2金属板芯部52の第2溶接部52Nと負極箔38(負極集電部12)とを径方向DRに抵抗溶接した。
かくして、正極板20及び負極板30よりも径方向DR内側に軸芯部材50を挿入した電極体10を作製した。
【0079】
その後、電極体10の正極集電部11に正極端子部材60を、負極集電部12に負極端子部材70を、それぞれ溶接する。そして、絶縁部材95を介して、正極端子部材60の正極外部端子部62を封口蓋88の第1貫通孔88Xに、負極端子部材70の負極外部端子部72を封口蓋88の第2貫通孔88Yにそれぞれ挿通して、封口蓋88に電極体10を固定した。
次いで、電池ケース本体81を封口蓋88で封口すると共に、電極体10を電池ケース本体81に収容した。このとき、第1金属板芯部51と電池ケース80との間、及び、第2金属板芯部52と電池ケース80との間に、それぞれ樹脂板90を介在させて、第1金属板芯部51及び第2金属板芯部52と電池ケース80とを接着した。
封口蓋88の注液孔(図示しない)から電池ケース80内に電解液(図示しない)を注液し、注液孔を封止して、電池1を完成させた(図1,2参照)。
【0080】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0081】
例えば、実施例1では、第1金属板芯部51及び第2金属板芯部52と電池ケース80との間に、それぞれ樹脂板90を介在させる手法を用いて、第1金属板芯部51及び第2金属板芯部52を電池ケース80にそれぞれ間接的に接触(当接)させた電池を示した。しかし、軸芯部材に第1金属芯部及び第2金属芯部のいずれをも有する場合、いずれか一方の金属芯部を電池ケースに電気絶縁物を介在させて間接的に接触(当接)させれば良く、例えば、第1金属芯部を電池ケースに電気絶縁物を介在させて間接的に接触(当接)させる一方、第2金属芯部と電池ケースとを当接や接着や溶接等、直接結合させても良い。
また、実施例2(又は、実施例3)では、第1金属板芯部151(又は、第2金属板芯部252)を電池ケース80に樹脂板90を介して間接的に接触(当接)させた。しかし、軸芯部材に第1金属芯部または第2金属芯部の一方を有する電池の場合、第1金属芯部または第2金属芯部を電池ケースに直接結合させても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 電池
10 電極体(扁平捲回型電極体)
11 正極集電部(集電部)
12 負極集電部(集電部)
13 本体部
20 正極板(電極板)
28 正極箔(電極箔)
30 負極板(電極板)
38 負極箔(電極箔)
50,150,250,350 軸芯部材
51,151,351 第1金属板芯部(金属芯部,金属板芯部,第1金属芯部,低伝導金属芯部)
51L 第1主平面(主平面)
51M 第1密着部(密着部)
51N 第1溶接部(溶接部)
51P 第1延出部(延出部)
52,252,352 第2金属板芯部(金属芯部,金属板芯部,第2金属芯部,高伝導金属芯部)
52L 第2主平面(主平面)
52M 第2密着部(密着部)
52N 第2溶接部(溶接部)
52P 第2延出部(延出部)
60 正極端子部材(端子部材)
70 負極端子部材(端子部材)
80 電池ケース
90 樹脂板(電気絶縁物)
AX 捲回軸
DX 軸線方向
S1 第1面積(密着面積)
S2 第2面積(密着面積)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板が捲回軸の周りに扁平に捲回されてなる扁平捲回型電極体を電池ケース内に収容してなる電池であって、
上記扁平捲回型電極体は、
上記捲回軸に沿う軸線方向の一方端側に、上記電極板の電極箔が露出して捲回された集電部、及び、
上記集電部よりも上記軸線方向内側に位置する本体部、を有し、
自身の中心に軸芯部材が挿入されてなり、
上記軸芯部材は、
上記扁平捲回型電極体の上記本体部に密着する密着部、及び、上記集電部が溶接してなる溶接部を含み、金属からなる金属芯部を有する
電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池であって、
前記軸芯部材の前記金属芯部は、
前記扁平捲回型電極体から前記軸線方向外側に延出する延出部を有してなる
電池。
【請求項3】
請求項2に記載の電池であって、
前記延出部は、
この延出部から前記電池ケースへ熱伝導可能に、上記電池ケースに直接結合し、又は、電気絶縁物を介して間接に接してなる
電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池であって、
一又は複数の部材からなり、前記金属芯部と接触することなく、前記集電部に接続して、一部が前記電池ケースの外部に延出する端子部材を備える
電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電池であって、
前記軸芯部材の前記金属芯部は、
一対の主平面がそれぞれ前記本体部に密着する、平板形状の金属板芯部である
電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電池であって、
前記電極箔を含む前記電極板は、
正極箔を含む正極板、及び、負極箔を含む負極板であり、
前記集電部は、
前記扁平捲回型電極体のうち、前記軸線方向の一方側端部の位置する正極集電部、及び、上記軸線方向の他方側端部に位置する負極集電部であり、
前記軸芯部材は、
前記金属芯部として、上記正極集電部が溶接してなる第1金属芯部、及び、上記負極集電部が溶接してなる第2金属芯部のいずれをも有する
電池。
【請求項7】
請求項6に記載の電池であって、
前記第1金属芯部は、
第1金属からなり、前記扁平捲回型電極体から前記軸線方向の一方側に延出する第1延出部を有し、
前記第2金属芯部は、
上記第1金属とは異なる第2金属からなり、上記扁平捲回型電極体から上記軸線方向の他方側に延出する第2延出部を有し、
上記第1金属芯部及び第2金属芯部のうち、熱伝導率の高い金属からなる金属芯部を高伝導金属芯部とし、熱伝導率の低い金属からなる金属芯部を低伝導金属芯部としたとき、
上記高伝導金属芯部が前記本体部に密着する密着面積を、上記低伝導金属芯部が上記本体部に密着する密着面積よりも大きくしてなる
電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−105523(P2013−105523A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246439(P2011−246439)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】