電波修正時計
【課題】電波修正時計において、受信感度を一層向上させる。
【解決手段】巻線19が巻回される巻回部と端部側に延在する延在部11b,11cとが一体的に形成された磁性材料からなるアンテナコア11と、磁性材料からなる付加コア15,16と、磁性材料からなる集磁部材17,18と、非磁性材料からなる地板31(時計基板)と、非磁性材料からなるガイド部材33と、非磁性材料からなる、突起(押さえ部材)が形成された液晶パネル支持枠32(集磁部材支持部材、押さえ部材)とを備え、地板31とガイド部材33と液晶パネル支持枠32とを組み立てて突起が集磁部材17,18を押圧することにより、集磁部材17,18と付加コア15,16とを当接させるとともに付加コア15,16とアンテナコア11の延在部11b,11cとを当接させて一体の大きなアンテナコア体を得、受信性能を向上させる。
【解決手段】巻線19が巻回される巻回部と端部側に延在する延在部11b,11cとが一体的に形成された磁性材料からなるアンテナコア11と、磁性材料からなる付加コア15,16と、磁性材料からなる集磁部材17,18と、非磁性材料からなる地板31(時計基板)と、非磁性材料からなるガイド部材33と、非磁性材料からなる、突起(押さえ部材)が形成された液晶パネル支持枠32(集磁部材支持部材、押さえ部材)とを備え、地板31とガイド部材33と液晶パネル支持枠32とを組み立てて突起が集磁部材17,18を押圧することにより、集磁部材17,18と付加コア15,16とを当接させるとともに付加コア15,16とアンテナコア11の延在部11b,11cとを当接させて一体の大きなアンテナコア体を得、受信性能を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波修正時計に関し、詳細には、標準電波を受信するための内蔵アンテナの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電波修正時計は、時刻情報や日付情報を含む標準電波を受信し、時針や分針、秒針等の時刻指示針が、この標準電波に含まれた情報に対応した正確な時刻を指し示すように、標準電波に含まれた情報に基づいてモータ等の駆動手段が時刻指示針を強制的に変位させる。
【0003】
このように、電波修正時計は、1日に少なくとも1回の上記時刻修正動作を行うことにより、常に正しい時刻を表示することができる。
【0004】
ところで、電波修正時計には、標準電波を受信するためのアンテナが内蔵されているが、開発当初は、アンテナによる電波の受信感度を高める目的で、時計のケースの少なくとも一部は樹脂製であった。
【0005】
しかし、樹脂製のケースは、外観品質の面で金属製のケースよりも見劣りするものであるため、近年は金属製のケースが採用された時計が増えている。
【0006】
ここで、金属製のケースに内蔵されたアンテナは、樹脂製のケースに内蔵されたアンテナよりも受信感度が劣るため、この受信感度を高めることを目的として、アンテナ自体に種々の改良がなされている。
【0007】
例えば、巻線が巻回された巻回部よりも端部側にそれぞれ突出したアンテナコアの延在部を、標準電波が比較的侵入し易い風防ガラス面に近付くように曲げることで、受信感度の向上を図る技術が提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、アンテナコアの、巻線が巻回された巻回部よりも端部の部分である延在部に、この延在部よりも大きなサイズの電波補足部を結合させて、受信感度を向上させる技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−153752号公報
【特許文献2】特開2004−235701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、アンテナコアは、アモルファス材などの脆性材料であるため曲げるのが困難であり、また、特許文献1に開示されているように薄板状に形成して複数枚を積層したものとしても、折損することなく曲げることができるのは、極わずかな曲率内にとどまるため、受信感度を大きく向上させるのは困難である。
【0011】
一方、特許文献2に示すように、アンテナコアの延在部よりも大きなサイズの電波補足部は、確かに受信感度を向上させることができるものの、アンテナコアと電波補足部とが同一面内にあるため、受信感度を顕著に向上させることはできず、さらなる受信感度の向上が望まれている。
【0012】
なお、単に電波補足部を大きくするには、時計ケース内の限りある容積内でアンテナの配置に制約があるとともに、金属の時計ケースに電波補足部が近接しすぎると、渦電流による損失が生じ、また、金属ケースに接触すると渦電流が流れてしまうという問題がある。しかも、アンテナをケース内に収納するスペース利用効率も悪化する。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、受信感度の一層の向上を図ることができる電波修正時計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電波修正時計は、少なくとも巻線(電線)が巻回される巻回部と前記巻回部よりも端部側に延在する延在部とが一体的に形成された磁性材料からなるアンテナコアを含むアンテナと、前記アンテナの端部と平面視で重なっている耐磁板と、を有し、前記耐磁板は、少なくとも、平面視で前記アンテナの一方の端部に一部が重なっている第1の耐磁板と、平面視で前記アンテナの他方の端部に一部が重なっている第2の耐磁板とで構成され、前記第1の耐磁板と前記第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電波修正時計においては、前記アンテナは、前記アンテナコアの両端にそれぞれ配置された、前記アンテナコアと磁気的に結合する集磁部材を有し、前記第1の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち一方に一部が重なり、前記第2の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち他方に一部が重なっていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る電波修正時計においては、一端面が前記アンテナコアの延在部に当接するように付勢され、他端面が前記集磁部材に当接して配設される磁性材料からなる付加コアを有し、前記集磁部材が前記付加コアによって前記アンテナコアと磁気的に結合されることが好ましい。
【0017】
ここで、アンテナコアは、棒状や短冊状など、特定の方向に長い形態を有するもので、その中央部や中央部近傍に巻線が巻回された部分を巻回部、巻線から突出した部分を延在部、と便宜上区別して称するものであり、巻回部と延在部とでは材質や輪郭形状における差異がある必要はないが、そのような差異を設けたものであってもよい。
【0018】
なお、延在部は、アンテナコアの端部のみを意味するものではなく、上述したように巻線から突出した部分であればよい。
【0019】
また、付加コアとアンテナコアとは、互いに磁気的に結合して両者が機能上一体化したアンテナコア(この両者が一体化したものを、以下、アンテナコア体と称する場合がある。)として作用するため、性状面で一体となりやすい同一材料であることが好ましいが、必ずしも同一材料に限定されるものではない。
【0020】
このように構成された本発明に係る電波修正時計によれば、アンテナコアとは別体の付加コアを当接させることで、付加コアの分だけアンテナコアの端部を大きくしたことと同じ効果、すなわち受信感度の向上を図ることができる。
【0021】
しかも、アンテナコアと付加コアとは組立て前は別体で形成されているため、両者間の当接の角度や位置などを種々変化させることで一体化後の形状を自由に形成することができ、従来のように当初より一体のアンテナを曲げて所望の形状を形成するよりも、アンテナコア(体)の外形形状の自由度を高めることができる。
【0022】
したがって、付加コアを時計の厚さ方向に立ち上がるようにアンテナコアに当接させることで、アンテナコア体は全体として3次元に広がる形状に形成することができ、単に平面内で大きく形成した従来のものよりも、受信感度の一層の向上を図ることができるとともに、時計ケース内の限りある容積内であっても、アンテナの配置の自由度を従来よりも高めることができる。
【0023】
また、アンテナコアは時計基板(地板など)のアンテナ支持部に時計基板の略面内で支持され、付加コアはガイド部材の付加コア支持部に時計の厚さ方向に立ち上がるように支持されて、時計基板とガイド部材とが組み付けられるとともに、押さえ部材が、付加コアの一端面をアンテナコアの延在部に当接させるように付加コアが付勢されていることで、アンテナコア体を、時計基板や付加コア支持部材が無い状態で、部品のみにより組み上げるよりも、簡単に組み上げることが可能となる。
【0024】
本発明に係る電波修正時計においては、押さえ部材は、前記アンテナコア側の下押さえ部材と前記付加コア側の上押さえ部材とを有することが好ましい。
【0025】
このように構成された電波修正時計によれば、アンテナコアと付加コアとの接触を良好にして、磁気回路を確実に形成することができる。
【0026】
また、本発明に係る電波修正時計においては、磁性材料からなる集磁部材と、集磁部材を支持する集磁部材支持部材とを備え、集磁部材支持部材は、集磁部材が押さえ部材と付加コアの他端面との間に介在するとともに付加コアの他端面に当接して配設されるように、支持していることが好ましい。
【0027】
好ましい電波修正時計によれば、集磁部材がさらに、アンテナコア体の一部として一体化されるため、一層大きなアンテナコア体を形成することができる。
【0028】
さらに、集磁部材は集磁部材支持部材に支持されていることで、集磁部材を単体で付加コアに組み付けるよりも容易に組み付けを行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る電波修正時計においては、集磁部材支持部材が押さえ部材に一体的に形成されていて、集磁部材支持部材には押さえ部材としての押圧用の突起が形成されていることが好ましい。
【0030】
このように構成された電波修正時計によれば、集磁部材支持部材に押圧用の突起を形成するだけで、押さえ部材の機能を発揮させることができるため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0031】
また、本発明に係る電波修正時計においては、延在部は、アンテナコアの2つの端部側にそれぞれ形成され、付加コアは、アンテナコアの2つの端部側にそれぞれ形成された各延在部に対応してそれぞれ付勢されて当接していることが好ましい。
【0032】
本発明に係る電波修正時計においては、付加コアは、機能的には1つであってもよいが、好ましい電波修正時計によれば、アンテナコアに2つの延在部が形成されているものでは、各延在部にそれぞれ付加コアを対応させることで、標準電波の受信のバランスを適切に調整することができる。
【0033】
また、本発明に係る電波修正時計においては、少なくともアンテナコアが、アモルファス材であることが好ましい。
【0034】
アモルファス材は脆性材料であるため、性状的に曲げるのが困難であり、本発明に係る電波修正時計の効果を相対的に高めることができる。
【0035】
なお、上述したアンテナコアの延在部から立ち上げられる付加コアの立ち上げられる向きは、時計の風防ガラスに近付く向きであることが好ましい。
【0036】
アンテナは、付加コアの先端(集磁部材がさらに付加された電波修正時計にあっては、集磁部材)で標準電波を受け易いため、好ましい電波修正時計によれば、風防ガラスから侵入する標準電波を受け易くすることができる。
【0037】
したがって、風防ガラスを除いた時計ケースや裏蓋を金属製として時計の外観質感を向上させても、標準電波の受信性能が低下するのを防止することができる。
【0038】
なお、ガイド部材は、時計基板の一部であってもよい。
【0039】
また、本発明に係る電波修正時計においては、アンテナコアと集磁部材との厚さ方向における間に、モータ等への影響を防止または低減させる耐磁板を配置したものであることが好ましい。
【0040】
このように構成された電波修正時計によれば、アンテナコアと集磁部材との間(厚さ方向における間)に、モータ等への外部磁界による影響を防止または低減させる耐磁板を配置されているため、集磁部材による標準電波の受信性能が耐磁板の影響で低下されることがなく、しかも、モータ等が耐磁板よりも下面側(裏蓋側)に配置されたことで、モータ等への外部磁界による影響を有効に防止することができる。
【0041】
また、本発明に係る電波修正時計においては、前記集磁部材と前記耐磁板とは、少なくとも一部が平面視(時計の厚さ方向に直交する面への投影図)において重なっていることが好ましい。
【0042】
このように構成された電波修正時計によれば、集磁部材と耐磁板とは、時計の厚さ方向にオフセットされているため、平面視で重なっているような配置を実施しても、お互いの性能に悪影響を及ぼすことが無く、しかも、集磁部材と耐磁板との両方の面積を、互いに干渉することなく大きくすることが可能になるので、集磁部材と耐磁板との両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0043】
また、本発明に係る電波修正時計においては、前記集磁部材は、前記アンテナコアの両端にそれぞれ配置され、前記各集磁部材は、その少なくとも一部が前記耐磁板と平面視で重なっていることが好ましい。
【0044】
このように構成された電波修正時計によれば、アンテナコアの両端部から各集磁部材を、耐磁板に干渉させることなく、それぞれ大きくすることが可能になるので、各集磁部材の性能を同時に、さらに向上させることができる。
【0045】
また、本発明に係る電波修正時計においては、前記耐磁板は、少なくとも、平面視で前記一方の集磁部材に一部が重なっている第1の耐磁板と、平面視で前記他方の集磁部材に一部が重なっている第2の耐磁板とで構成され、前記第1の耐磁板と前記第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることが好ましい。
【0046】
なお、磁気的に分断とは、例えば、互いに他方からの磁気の影響を受けないこと、またはその影響が極めて小さいためにその影響を無視できることなどである。
【0047】
このように構成された電波修正時計によれば、一方の集磁部材と耐磁板と他方の集磁部材という磁気経路が形成されるのを、耐磁板の分断(第1の耐磁板と第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることによる分断)により阻止することができる。
【0048】
さらに、一方の集磁部材→一方の付加コア→アンテナコア→他方の付加コア→他方の集磁部材→耐磁板→一方の集磁部材という磁気ループが形成されるのを、耐磁板の分断(第1の耐磁板と第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることによる分断)により阻止することができる。
【0049】
そして、このような耐磁板の二体構造は、上記磁気ループ等による受信性能の低下を招くことがなく、各集磁部材と分断された各耐磁板とのそれぞれの面積を同時に大きくし、両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0050】
本発明に係る電波修正時計においては、液晶パネルを保持する非磁性材料からなる液晶パネル支持枠を備え、前記液晶パネル支持枠は、前記押さえ部材を兼ねたものであることが好ましい。
【0051】
好ましい構成の電波修正時計によれば、既存の液晶パネル支持枠が押さえ部材を兼ねることによって、液晶パネル支持枠とは別体の押さえ部材を新たに設ける必要がなく、部品点数の増加に伴う製造コストの上昇を緩和することができる。
【0052】
また、本発明に係る電波修正時計においては、カレンダー情報を表示する非磁性材料からなるカレンダー表示部材を保持するカレンダー支持枠を備え、前記カレンダー支持枠は、前記押さえ部材を兼ねたものであることが好ましい。
【0053】
好ましい構成の電波修正時計によれば、既存のカレンダー支持枠が押さえ部材を兼ねることによって、カレンダー支持枠とは別体の押さえ部材を新たに設ける必要がなく、部品点数の増加に伴う製造コストの上昇を緩和することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の電波修正時計によれば、標準電波の受信感度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る電波修正時計に設けられた、標準電波の受信用のアンテナを示す概略斜視図である。
【図2】図1に示したアンテナが時計のケース内に収められた状態を示す模式図である。
【図3】図1に示したアンテナが組み立てられる以前の別体状態を示す分解斜視図である。
【図4】時計の地板を時計の裏蓋側から見た平面図である(その1)。
【図5】時計の地板を時計の裏蓋側から見た平面図である(その2)。
【図6】実施形態に係る電波修正時計を、裏蓋側から見た透視図である。
【図7】液晶パネル支持枠に予め設置された集磁部材を示す斜視図であり、(a)は裏蓋側から、(b)は文字板側からの状態をそれぞれ示す。
【図8】実施形態に係る電波修正時計を、風防ガラス側から見た透視図である。
【図9】図6における切断線A−A、切断線B−B、切断線C−Cに沿った断面をそれぞれ示す図である。
【図10】図7に示した地板と液晶パネル支持枠とを組み立てた状態を示す斜視図(風防ガラス側から)である。
【図11】耐磁板を介してアンテナコア体に磁気経路および磁気ループが形成された状態を示す模式図である。
【図12】2体構造の耐磁板を従来のアンテナ(本発明におけるアンテナコアおよび巻線)に適用した状態を示す模式図である。
【図13】押さえ部材としてカレンダー支持枠を適用した変形例(その1)の、図9相当の断面図である。
【図14】押さえ部材としてカレンダー支持枠を適用した他の変形例であって、カレンダー支持枠が、カレンダー情報の日付を表示する日板と時刻表示している世界都市(地域)の名称を表示する都市表示板とを保持している態様の平面視透過図である。
【図15】変形例(その2)に係る電波修正時計のアンテナコア体を示す斜視図であり、集磁部材を備えず、付加コアをアンテナコアに当接させたものである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に係る電波修正時計の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0057】
図1は本発明の一実施形態に係る電波修正時計100に設けられた、標準電波の受信用のアンテナ10を示す概略斜視図、図2は図1に示したアンテナ10が時計100のケース50内に収められた状態を示す模式図、図3は図1に示したアンテナ10が組み立てられる以前の別体状態を示す分解斜視図である。
【0058】
図示のアンテナ10は、短冊状に形成されたアモルファス材(磁性材料)からなるアンテナコア11と、アンテナコア11の中央部に巻回された巻線(電線)19と、アンテナコア11のうち巻線19が巻回された巻回部11aよりも端部側にそれぞれ延在した(巻線19から突出した)2つの延在部11b,11cの面(XY面)上に一端面が当接して、この延在部11b,11cの面から、図示を略した風防ガラス(図示上方(Z方向)側)に向かって立ち上がるように柱状に形成された、アモルファス材からなる付加コア15,16と、この付加コア15,16の他端面に当接して、アンテナコア11の延在部11b,11cよりも外側に広がるように延びた円弧板状の、アモルファス材からなる集磁部材17,18とからなる。
【0059】
このアンテナ10は、図2に示すように、時計100の文字板(図示省略)面(XY面)にアンテナコア11(の板面)が略平行となるように、時計100のケース50内に設置される。また、アンテナ10は、付加コア15,16が時計100の厚さ方向に立ち上がる向きとなる姿勢で配置される。なお、図2において、符号60は時計100の竜頭である。
【0060】
本実施形態の時計100は、図3に示すように、巻線19の巻回されたアンテナコア11が非磁性材料の地板31(時計基板)に支持され、付加コア15,16が非磁性材料のガイド部材33に支持され、集磁部材17,18が、図示しない液晶パネルを保持している非磁性材料の液晶パネル支持枠32(集磁部材支持部材)に支持されている。
【0061】
地板31には、図4(a)に示すように、アンテナコア11を所定の姿勢で、かつ所定の位置に位置決めするための位置決め孔31d,31eが形成されているとともに、アンテナコア11を地板31の面内で支持し、アンテナコア11の巻回部11aおよび巻線19が地板31の面と干渉するのを回避する逃げ孔31aが形成されている。
【0062】
そして、地板31上に、巻線19が巻回されたアンテナコア11が組み込まれ、延在部11b、11cに当接するように風防ガラス側から付加コア15,16が組み込まれる(図4(b))。さらに、アンテナコア11に対して、時計100の裏蓋側(風防ガラスとは反対側)から輪列受20(アンテナ支持部)および回路基板22により覆われ(図5(a),(b))、輪列受20はネジ21により固定されてアンテナへの付勢力を受ける支持部となる。
【0063】
本実施形態の時計100においては、地板31が、付加コア15,16を支持するガイド部材33を兼ねており、この地板31には、付加コア15,16が時計100の厚さ方向に立ち上がるように支持する付加コア支持部としての支持孔31b,31cが形成されている。
【0064】
なお、ガイド部材33を地板31から独立した部材としてもよいが、そのような構成を採用したものでは、ガイド部材33も非磁性材料であることが求められる。
【0065】
また、図4(b)に示すように、地板31の位置決め孔31d,31eに、アンテナコア11の各延在部11b,11cにそれぞれ形成された位置決めボス12a,12bを嵌合させることで、地板31は、アンテナコア11を所定の姿勢で、かつ所定の位置に位置決めして支持する。具体的には、アンテナコア11は、その板面が地板31の面内(地板31と平行な面であることを含む。以下、同じ。)となるように支持される。
【0066】
ここで、アンテナコア11の延在部11b,11cの一部は、支持孔31b,31cの一部を覆うように支持孔31b,31cに突出し、この支持孔31b,31cに配置されて支持された付加コア15,16の一端面が、支持孔31b,31cに突出した延在部11b,11cに当接し得る状態となる(図4(b)、図6)。
【0067】
なお、図4(b)において、符号13は、アンテナ10の巻線19から検波電流を取り出す回路が形成された小基板である。また、図6は、電波修正時計100を裏蓋側から見た透視図である。
【0068】
一方、集磁部材17,18は、図7(a),(b)に示すように、文字板側から地板31に積層される液晶パネル支持枠32に予め支持されている。この支持されている位置は、集磁部材17,18の端部が、地板31に支持された付加コア15,16の他端面(アンテナコア11に当接する端面とは反対側に位置する端面)に、上下方向(時計100の厚さ方向)に重なる位置である。
【0069】
そして、液晶パネル支持枠32のうち、上記付加コア15,16の他端面に重なる集磁部材17,18の部分に対応した部分には、集磁部材17,18を地板31の向きに押圧する突起32a,32b(押さえ部材)が形成されている(図7,8参照)。
【0070】
なお、図8は、電波修正時計100を、風防ガラス(文字板)側から見た透視図であり、平面視における、これら液晶パネル支持枠32、付加コア15,16、集磁部材17,18および突起32a,32bの位置関係を示す。
【0071】
また、図9(a),(b),(c)は、図6における切断線A−A、切断線B−B、切断線C−Cに沿った断面をそれぞれ示す。
【0072】
液晶パネル支持枠32と地板31とが重ね合わされて、液晶パネル支持枠32の係合爪32cが、地板31の係合孔31fに係合し(図9(a))、両者が一体的に組み立てられた状態において(図10)、液晶パネル支持枠32の突起32a,32bが、対応する集磁部材17,18をそれぞれ付加コア15,16に向けて押圧付勢し(図9(a))、これにより、集磁部材17,18と対応する付加コア15,16とがそれぞれ当接し、さらに付加コア15,16が、集磁部材17,18により押圧されることで、付加コア15,16がアンテナコア11の延在部11b,11cにそれぞれ当接され、集磁部材17と付加コア15とアンテナコア11と付加コア16と集磁部材18とは、磁気的結合によって機能上一体的な大きなアンテナコア体となるとともに、外観上も一体をなす。
【0073】
したがって、本実施形態に係る電波修正時計100によれば、アンテナコア体を大きくしたので、受信感度を向上させることができる。さらに、付加コア15,16を、金属製の裏蓋側ではなく、標準電波を相対的に通過させ易い風防ガラス側(Z方向)に向けて立ち上げたことで、付加コア15,16とアンテナコア11とからなる一体的なアンテナコア体が、風防ガラス側に向いた配置となり、これにより受信感度を一層向上させることができる。
【0074】
しかも、アンテナコア11と付加コア15,16と集磁部材17,18とは組立て前は別体で形成されているため、各部材間の当接の角度や位置などを種々変化させることでアンテナコア体として一体化した後の形状をある程度自由に設計することができ、従来のように当初から一体のアンテナコアを曲げて所望の形状を形成するよりも、アンテナコア体の外形形状の自由度を高めることができる。
【0075】
したがって、付加コア15,16を時計100の厚さ方向に立ち上がるようにアンテナコア11に当接させることで、アンテナコア体を全体として3次元に広がる形状に形成することができ、アンテナコアだけを単に一平面内で大きく形成した従来のものよりも、受信感度の一層の向上を図ることができるとともに、時計100のケース50内の限りある容積内であっても、アンテナ10の配置の自由度を従来よりも高めることができる。
【0076】
また、アンテナコア11は地板31と輪列受20とによって、地板31の面内で支持され(図9(b))、付加コア15,16はガイド部材33としての機能を兼ねる地板31の支持孔31b,31cに時計100の厚さ方向に立ち上がるように支持されるとともに、液晶パネル支持枠32の突起32a,32bが、集磁部材17,18を介して、付加コア15,16の一端面をアンテナコア11の延在部11b,11cに当接させるように付加コア15,16が付勢されているため、地板31やガイド部材33や液晶セル支持枠32が無い状態で、部品のみによりアンテナコア体として組み上げるよりも、簡単に組み上げることが可能となる。
【0077】
さらに、本実施形態の電波修正時計100は、アモルファス材からなる集磁部材17,18と、集磁部材17,18を支持する液晶パネル支持枠32とを備え、液晶パネル支持枠32は、集磁部材17,18が突起32a,32bと付加コア15,16の端面との間に介在するとともに付加コア15,16の当該端面に当接して配設されるように、集磁部材17,18を支持しているため、集磁部材17,18がさらに、アンテナコア体の一部としてアンテナコア11および付加コア15,16と磁気的に結合して機能上および外観上一体化し、一層大きなアンテナコア体を形成することができ、受信性能を一層向上させることができる。
【0078】
また、集磁部材17,18は液晶パネル支持枠32に支持されていることで、脆性材料でできているうえに薄くて破損しやすい集磁部材17,18を単体で付加コア15,16に組み付けるよりも容易に組み付けを行うことができる。
【0079】
ここで、集磁部材17,18を地板31に直接固定する場合には、ボスなどで固定することが必要になり、集磁部材17,18に穴を開けるような加工が必要となる。しかし、薄い脆性材料の集磁部材17,18に穴あけ加工することは容易ではない。特に、量産での生産では、金型での抜きを採用することになり、さらに加工が困難となるが、本実施形態のように、液晶パネル支持枠32に支持することで、上記の問題を回避することができる。
【0080】
さらに、延在部11b,11cは、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成され、付加コア15,16は、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成された各延在部11b,11cに対応してそれぞれ付勢されて当接しているため、各延在部11b,11cにそれぞれ付加コア15,16を対応させることで、標準電波の受信のバランスを適切に調整することができる。
【0081】
また、アンテナコア11は脆性材料であるアモルファス材で形成されているため、性状的に曲げるのが困難であるところ、本実施形態の電波修正時計100は、アンテナコア11を曲げたのと同様に、端部を風防ガラスなどの、金属ケースよりも標準電波が通り易い部材に近づける効果を得ることができ、実用上の有用性を高めることができる。
【0082】
なお、アンテナ10は、付加コア15,16の先端(集磁部材17,18がさらに付加された電波修正時計100にあっては、集磁部材17,18の先端部)で標準電波を受け易いが、本実施形態の電波修正時計100は、付加コア15,16の先端側が風防ガラスに向いているため、風防ガラスに極めて近い位置で、かつ平面的に広い面積で構成され、風防ガラスから侵入する標準電波を受け易い。
【0083】
したがって、風防ガラスを除いた時計100のケース50や裏蓋などを金属製として時計100の外観質感を向上させても、アンテナ10の標準電波の受信性能が低下するのを防止することができる。
【0084】
本実施形態に係る電波修正時計100は、上述したように既存の部材、すなわち地板31および液晶パネル支持枠32を、本発明に係る電波修正時計における時計基板、ガイド部材および押さえ部材として使用しているため、この電波修正時計100のために新たな部品を追加する必要がなく、部品の追加に伴う製造コストの上昇を抑制することができる。
【0085】
また、組立工程において、アンテナコア11と付加コア15,16とを地板31に組み込む工程と、集磁部材17,18を液晶パネル支持枠32に組み込む工程とを並行して実施し、最後に液晶パネル支持枠32を地板31に係合して組み合わせることで、集磁部材17と付加コア15とアンテナコア11と付加コア16と集磁部材18とが、磁気的結合によって機能上一体的な大きなアンテナコア体となるので、組立工程の時間を短縮することができる。
【0086】
なお、本実施形態に係る電波修正時計100は、裏蓋に近いアンテナコア11と風防ガラスに近い集磁部材17,18とで、時計100の厚さ方向にオフセットされているため、アンテナコア11と集磁部材17,18との間(厚さ方向における間)に、モータ等への外部磁界による影響を防止または低減させる耐磁板41,42を配置することができる(図8,9)。
【0087】
したがって、集磁部材17,18が耐磁板41,42よりも上面側(風防ガラス側)に配置されたことで、集磁部材17,18による標準電波の受信性能が耐磁板41,42の影響で低下されることがなく、しかも、モータ等が耐磁板41,42よりも下面側(裏蓋側)に配置されたことで、モータ等への外部磁界による影響を有効に防止することができる。
【0088】
さらに、集磁部材17,18と耐磁板41,42とは、厚さ方向にオフセットされているため、平面視で重なっているような配置を実施しても、お互いの性能に悪影響を及ぼすことが無い。そのため、集磁部材17,18と耐磁板41,42との両方の面積を大きくすることが可能になるので、集磁部材17,18と耐磁板41,42との両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0089】
なお、耐磁板41,42は、平面視で集磁部材17に重なる耐磁板41と、平面視で集磁部材18に重なる耐磁板42との二体構造となっている。
【0090】
耐磁性能の観点からは、耐磁板41と耐磁板42とが一体となった単一の板でもよいが、上記のように2つに分離した二体構造としているのは、以下の理由による。
【0091】
すなわち、集磁部材17,18と耐磁板41,42との両部材は平面視で重なっているため、耐磁板41と耐磁板42とを一体構造にしたもの(以下、耐磁板(41+42)という。)では、下記(1)〜(3)の原因で受信性能が低下する虞がある。(1)集磁部材17→耐磁板(41+42)→集磁部材18という磁気経路(図11における磁気経路L1)が形成され、この経路によって、標準電波の受信磁界がバイパスされ、アンテナコア体に補足される標準電波が減少する。(2)集磁部材17→付加コア15→アンテナコア11→付加コア16→集磁部材18→耐磁板(41+42)→集磁部材17という磁気ループ(図11における磁気ループL2)が形成されて、耐磁板(41+42)が副磁路となり、L値が無用に大きくなる。(3)上記磁気経路L1および磁気ループL2の存在により、耐磁板(41+42)で渦電流が発生する。
【0092】
ここで、磁気経路や磁気ループを回避する方法としては、集磁部材17,18と耐磁板(41+42)とを重ねない構成とすることが考えられるが、そのような構成によれば、集磁部材17,18と耐磁板(41+42)との両部材の面積を同時に大きくすることができず、集磁部材17,18と耐磁板(41+42)とが厚さ方向にオフセットされていることによる効果を充分に生かせない。
【0093】
そこで、耐磁板(41+42)を、平面視で集磁部材17に重なる耐磁板41と、平面視で集磁部材18に重なる耐磁板42との2つに分断した二体構造とし、分断された耐磁板41,42間を磁気的に分断することにより、磁気経路L1および磁気ループL2を切断し、この無用な磁気経路L1および磁気ループL2の発生を防いでいる。
【0094】
そして、このような耐磁板の二体構造は、上記磁気ループ等による受信性能の低下を招くことがなく、集磁部材17,18と耐磁板41,42との各面積を同時に大きくし、両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0095】
この効果は、例えば、本実施形態のアンテナコア11のような通常のアンテナにおいても、得ることができる。すなわち、アンテナコア11と耐磁板とが平面視で重なっている場合に、耐磁板(41+42)を、図12に示すように、アンテナコア11の端部同士を結ぶ直線Cに直交する線D(アンテナコア11の端部同士を結ぶ直線Cに交差する線であれば直交する線Dに限定されるものではない。)に沿って、2つに分断したような別体の耐磁板41,42として構成することによっても、得ることができる。
【0096】
(変形例1)
なお、本実施形態に係る電波修正時計100は、アナログ表示(指針)とデジタル表示(LCD)とを組み合わせた、いわゆるコンビネーション時計であるため、液晶パネルおよび液晶パネル支持枠32を備え、したがって、この液晶パネル支持枠32を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用したが、液晶パネルを用いないアナログ表示(指針)のみの時計であるアナログ時計では、液晶パネル支持枠32も備えられていない。
【0097】
この場合は、集磁部材支持部材および押さえ部材として、液晶パネル支持部材32を適用するのに代えて、図9相当の断面図である図13(a)に示すように、カレンダー情報等を表示するカレンダー表示部材を支持するカレンダー支持枠33を適用し、カレンダー支持枠33に形成した突起33b(押圧用の突起)を押さえ部材として適用し、この突起33bにより集磁部材18(,17)を付加コア16(,17)に押圧することができ、または、図13(b)に示すように、液晶パネル支持部材32に代えて地板31を適用し、地板31に形成した突起31g(押圧用の突起)を押さえ部材として適用し、この突起31gにより集磁部材18(,17)を付加コア16(,17)に押圧することができる。
【0098】
図13(a)に示した変形例1は、図7(a),(b)に示した実施形態と同様な構成により、集磁部材17,18をカレンダー支持枠33に組み込む。そして、集磁部材17,18が支持されたカレンダー支持枠33を地板31に組み付けることにより、集磁部材17と付加コア15とアンテナコア11と付加コア16と集磁部材18とが、磁気的結合によって機能上一体的な大きなアンテナコア体となるとともに、外観上も一体をなす。
【0099】
変形例1においてはこのような構成とすることで、アナログ表示時計においても、上述した実施形態のコンビネーション時計と同様の効果を得ることができる。
【0100】
なお、図13(a)の構成では、カレンダー支持枠33を非導電性かつ非磁性の材料で作成することは当然のことであるが、カレンダー表示部材である日板80(日付を表示する円環状の板)が、平面視において、アンテナコア11、付加コア16および集磁部材18と重なる構造となるため、日板80も非導電性かつ非磁性の材料で作成する必要がある。なお、図13における符号81は、日板80を押さえる日板押さえ部材である。
【0101】
以上のように、図13は、このカレンダー支持枠33または地板31を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用した実施形態の電波修正時計であり、このような実施形態の変形例であっても、液晶パネル支持枠32を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用した上記実施形態の電波修正時計100と同一の 作用および効果を発揮することができる。
【0102】
なお、カレンダー表示部材は、上述した日板80のみに限定されるものではなく、曜板など他のカレンダー情報(月、年、月齢など)を表示する部材であってもよい。
【0103】
また、表示情報としては、カレンダー情報に限定されるものではなく、アナログ式世界時計に適用した場合は、世界各都市(地域)の情報(都市名、地域名等)を表示させるようにしてもよい。
【0104】
例えば、図14は、上述のアナログ式世界時計に適用した変形例1の平面図である。図14において、日板80はカレンダー情報の日付を表示し、日板80と同心に、かつ日板80の内側に設けられた都市表示板82には、世界各都市(地域)の名称の略号が記されており、この都市表示板82は、どの都市(地域)を選択して現在の時刻を表示しているのかをユーザに知らしめるためのものであって、日板80および都市表示板82は、ともにカレンダー支持枠33により保持されている。
【0105】
そして、集磁部材17,18は、図7(a)(b)に示した液晶パネル支持枠32に支持されているのと同様な構成によって、カレンダー支持枠33に支持されている。
【0106】
なお、図14より解されるように、アンテナコア11、付加コア15,16および集磁部材17,18は、平面視において、日板80および都市表示板82と重なって配置されている。したがって、日板80および都市表示板82はいずれも、標準電波の受信の妨げとならないように、非導電性かつ非磁性の材料で形成されていることが必要である。
【0107】
また、上述した実施形態や変形例は、液晶パネル支持枠32やカレンダー支持枠33を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用した実施形態の電波修正時計であるが、本発明に係る電波時計においては、これら液晶パネル支持枠32やカレンダー支持枠33は押さえ部材を兼ねるものではあるが、集磁部材支持部材を兼ねるものではない構成であってもよい。
【0108】
(変形例2)
上述した実施形態の電波修正時計100は、付加コア15,16に、さらに集磁部材17,18を付加して、より大きなアンテナコア体を形成したものであるが、アンテナコア体としては、上述した集磁部材17,18を備えず、付加コア15,16のみをアンテナコア11の延在部11b,11cにそれぞれ当接させるものであってもよい。
【0109】
すなわち、図15(a)〜(c)は、集磁部材17,18を備えず、付加コア15,16のみをアンテナコア11の延在部11b,11cに当接させて、アンテナコア11と付加コア15,16とを一体化したアンテナコア体の斜視図を示す、本発明の実施形態のバリエーションであり、これらの実施形態はいずれも、アンテナコア体を大きくしたので、受信感度を向上させることができる。
【0110】
さらに、付加コア15,16を、金属製の裏蓋側ではなく、標準電波を相対的に通過させ易い風防ガラス側(Z方向)に向けて立ち上げたことで、付加コア15,16とアンテナコア11とからなる一体的なアンテナコア体が、風防ガラス側に向けて開く配置となり、これにより受信感度を一層向上させることができる。
【0111】
しかも、アンテナコア11と付加コア15,16とは組立て前は別体で形成されているため、アンテナコア11と付加コア15,16との当接の角度や位置などを種々変化させることでアンテナコア体として一体化した後の形状をある程度自由に設計することができ、従来のように当初から一体のアンテナコアを曲げて所望の形状を形成するよりも、アンテナコア体の外形形状の自由度を高めることができる。
【0112】
したがって、付加コア15,16を時計100の厚さ方向に立ち上がるようにアンテナコア11に当接させることで、アンテナコア体を全体として3次元に広がる形状に形成することができ、アンテナコアだけを単に平面内で大きく形成した従来のものよりも、受信感度の一層の向上を図ることができるとともに、時計100のケース50内の限りある容積内であっても、アンテナ10の配置の自由度を従来よりも高めることができる。
【0113】
また、アンテナコア11は地板31と輪列受20とにより地板31の面内で支持され、付加コア15,16はガイド部材33としての機能を兼ねる地板31の支持孔31b,31cに時計100の厚さ方向に立ち上がるように支持される、付加コア15,16の一端面をアンテナコア11の延在部11b,11cに当接させるように付加コア15,16が付勢されることで、地板31やガイド部材33や液晶セル支持枠32が無い状態で、部品のみによりアンテナコア体として組み上げるよりも、簡単に組み上げることが可能となる。
【0114】
なお、アンテナコア11や集磁部材17,18をアモルファス材で形成する際、アモルファス材を、その性能が安定する一定の厚さになるように積層して用いることが有用である。
【0115】
また、付加コア15,16が押さえ部材により付勢されているので、付加コア15,16の表面がうねっていても、アンテナ10の受信性能に影響が及ばない。したがって、付加コア15,16の表面を研磨する工程などを省略することができ、安価に作成することができる。
【0116】
さらに、延在部11b,11cは、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成され、付加コア15,16は、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成された各延在部11b,11cに対応してそれぞれ付勢されて当接しているため、各延在部11b,11cにそれぞれ付加コア15,16を対応させることで、標準電波の受信のバランスを適切に調整することができる。
【0117】
また、アンテナコア11は脆性材料であるアモルファス材で形成されているため、性状的に曲げるのが困難であるところ、本実施形態の電波修正時計100は、アンテナコア11を曲げたのと同様の効果を得ることができ、実用上の有用性を高めることができる。
【0118】
なお、アンテナ10は、付加コア15,16の先端で標準電波を受け易いが、本実施形態の電波修正時計100は、付加コア15,16の先端側が風防ガラスに向いているため、風防ガラスに極近い位置で、かつ平面的に広い面積で構成され、風防ガラスから侵入する標準電波を受け易い。
【0119】
したがって、風防ガラスを除いた時計100のケース50や裏蓋などを金属製として時計100の外観質感を向上させても、アンテナ10の標準電波の受信性能が低下するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
10 アンテナ
11 アンテナコア
11a 巻回部
11b,11c 延在部
15,16 付加コア
17,18 集磁部材
19 巻線
31 地板(時計基板)
32 液晶パネル支持枠(集磁部材支持部材、押さえ部材)
32a,32b 突起(押さえ部材)
33 ガイド部材
100 電波修正時計
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波修正時計に関し、詳細には、標準電波を受信するための内蔵アンテナの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電波修正時計は、時刻情報や日付情報を含む標準電波を受信し、時針や分針、秒針等の時刻指示針が、この標準電波に含まれた情報に対応した正確な時刻を指し示すように、標準電波に含まれた情報に基づいてモータ等の駆動手段が時刻指示針を強制的に変位させる。
【0003】
このように、電波修正時計は、1日に少なくとも1回の上記時刻修正動作を行うことにより、常に正しい時刻を表示することができる。
【0004】
ところで、電波修正時計には、標準電波を受信するためのアンテナが内蔵されているが、開発当初は、アンテナによる電波の受信感度を高める目的で、時計のケースの少なくとも一部は樹脂製であった。
【0005】
しかし、樹脂製のケースは、外観品質の面で金属製のケースよりも見劣りするものであるため、近年は金属製のケースが採用された時計が増えている。
【0006】
ここで、金属製のケースに内蔵されたアンテナは、樹脂製のケースに内蔵されたアンテナよりも受信感度が劣るため、この受信感度を高めることを目的として、アンテナ自体に種々の改良がなされている。
【0007】
例えば、巻線が巻回された巻回部よりも端部側にそれぞれ突出したアンテナコアの延在部を、標準電波が比較的侵入し易い風防ガラス面に近付くように曲げることで、受信感度の向上を図る技術が提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、アンテナコアの、巻線が巻回された巻回部よりも端部の部分である延在部に、この延在部よりも大きなサイズの電波補足部を結合させて、受信感度を向上させる技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−153752号公報
【特許文献2】特開2004−235701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、アンテナコアは、アモルファス材などの脆性材料であるため曲げるのが困難であり、また、特許文献1に開示されているように薄板状に形成して複数枚を積層したものとしても、折損することなく曲げることができるのは、極わずかな曲率内にとどまるため、受信感度を大きく向上させるのは困難である。
【0011】
一方、特許文献2に示すように、アンテナコアの延在部よりも大きなサイズの電波補足部は、確かに受信感度を向上させることができるものの、アンテナコアと電波補足部とが同一面内にあるため、受信感度を顕著に向上させることはできず、さらなる受信感度の向上が望まれている。
【0012】
なお、単に電波補足部を大きくするには、時計ケース内の限りある容積内でアンテナの配置に制約があるとともに、金属の時計ケースに電波補足部が近接しすぎると、渦電流による損失が生じ、また、金属ケースに接触すると渦電流が流れてしまうという問題がある。しかも、アンテナをケース内に収納するスペース利用効率も悪化する。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、受信感度の一層の向上を図ることができる電波修正時計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電波修正時計は、少なくとも巻線(電線)が巻回される巻回部と前記巻回部よりも端部側に延在する延在部とが一体的に形成された磁性材料からなるアンテナコアを含むアンテナと、前記アンテナの端部と平面視で重なっている耐磁板と、を有し、前記耐磁板は、少なくとも、平面視で前記アンテナの一方の端部に一部が重なっている第1の耐磁板と、平面視で前記アンテナの他方の端部に一部が重なっている第2の耐磁板とで構成され、前記第1の耐磁板と前記第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電波修正時計においては、前記アンテナは、前記アンテナコアの両端にそれぞれ配置された、前記アンテナコアと磁気的に結合する集磁部材を有し、前記第1の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち一方に一部が重なり、前記第2の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち他方に一部が重なっていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る電波修正時計においては、一端面が前記アンテナコアの延在部に当接するように付勢され、他端面が前記集磁部材に当接して配設される磁性材料からなる付加コアを有し、前記集磁部材が前記付加コアによって前記アンテナコアと磁気的に結合されることが好ましい。
【0017】
ここで、アンテナコアは、棒状や短冊状など、特定の方向に長い形態を有するもので、その中央部や中央部近傍に巻線が巻回された部分を巻回部、巻線から突出した部分を延在部、と便宜上区別して称するものであり、巻回部と延在部とでは材質や輪郭形状における差異がある必要はないが、そのような差異を設けたものであってもよい。
【0018】
なお、延在部は、アンテナコアの端部のみを意味するものではなく、上述したように巻線から突出した部分であればよい。
【0019】
また、付加コアとアンテナコアとは、互いに磁気的に結合して両者が機能上一体化したアンテナコア(この両者が一体化したものを、以下、アンテナコア体と称する場合がある。)として作用するため、性状面で一体となりやすい同一材料であることが好ましいが、必ずしも同一材料に限定されるものではない。
【0020】
このように構成された本発明に係る電波修正時計によれば、アンテナコアとは別体の付加コアを当接させることで、付加コアの分だけアンテナコアの端部を大きくしたことと同じ効果、すなわち受信感度の向上を図ることができる。
【0021】
しかも、アンテナコアと付加コアとは組立て前は別体で形成されているため、両者間の当接の角度や位置などを種々変化させることで一体化後の形状を自由に形成することができ、従来のように当初より一体のアンテナを曲げて所望の形状を形成するよりも、アンテナコア(体)の外形形状の自由度を高めることができる。
【0022】
したがって、付加コアを時計の厚さ方向に立ち上がるようにアンテナコアに当接させることで、アンテナコア体は全体として3次元に広がる形状に形成することができ、単に平面内で大きく形成した従来のものよりも、受信感度の一層の向上を図ることができるとともに、時計ケース内の限りある容積内であっても、アンテナの配置の自由度を従来よりも高めることができる。
【0023】
また、アンテナコアは時計基板(地板など)のアンテナ支持部に時計基板の略面内で支持され、付加コアはガイド部材の付加コア支持部に時計の厚さ方向に立ち上がるように支持されて、時計基板とガイド部材とが組み付けられるとともに、押さえ部材が、付加コアの一端面をアンテナコアの延在部に当接させるように付加コアが付勢されていることで、アンテナコア体を、時計基板や付加コア支持部材が無い状態で、部品のみにより組み上げるよりも、簡単に組み上げることが可能となる。
【0024】
本発明に係る電波修正時計においては、押さえ部材は、前記アンテナコア側の下押さえ部材と前記付加コア側の上押さえ部材とを有することが好ましい。
【0025】
このように構成された電波修正時計によれば、アンテナコアと付加コアとの接触を良好にして、磁気回路を確実に形成することができる。
【0026】
また、本発明に係る電波修正時計においては、磁性材料からなる集磁部材と、集磁部材を支持する集磁部材支持部材とを備え、集磁部材支持部材は、集磁部材が押さえ部材と付加コアの他端面との間に介在するとともに付加コアの他端面に当接して配設されるように、支持していることが好ましい。
【0027】
好ましい電波修正時計によれば、集磁部材がさらに、アンテナコア体の一部として一体化されるため、一層大きなアンテナコア体を形成することができる。
【0028】
さらに、集磁部材は集磁部材支持部材に支持されていることで、集磁部材を単体で付加コアに組み付けるよりも容易に組み付けを行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る電波修正時計においては、集磁部材支持部材が押さえ部材に一体的に形成されていて、集磁部材支持部材には押さえ部材としての押圧用の突起が形成されていることが好ましい。
【0030】
このように構成された電波修正時計によれば、集磁部材支持部材に押圧用の突起を形成するだけで、押さえ部材の機能を発揮させることができるため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0031】
また、本発明に係る電波修正時計においては、延在部は、アンテナコアの2つの端部側にそれぞれ形成され、付加コアは、アンテナコアの2つの端部側にそれぞれ形成された各延在部に対応してそれぞれ付勢されて当接していることが好ましい。
【0032】
本発明に係る電波修正時計においては、付加コアは、機能的には1つであってもよいが、好ましい電波修正時計によれば、アンテナコアに2つの延在部が形成されているものでは、各延在部にそれぞれ付加コアを対応させることで、標準電波の受信のバランスを適切に調整することができる。
【0033】
また、本発明に係る電波修正時計においては、少なくともアンテナコアが、アモルファス材であることが好ましい。
【0034】
アモルファス材は脆性材料であるため、性状的に曲げるのが困難であり、本発明に係る電波修正時計の効果を相対的に高めることができる。
【0035】
なお、上述したアンテナコアの延在部から立ち上げられる付加コアの立ち上げられる向きは、時計の風防ガラスに近付く向きであることが好ましい。
【0036】
アンテナは、付加コアの先端(集磁部材がさらに付加された電波修正時計にあっては、集磁部材)で標準電波を受け易いため、好ましい電波修正時計によれば、風防ガラスから侵入する標準電波を受け易くすることができる。
【0037】
したがって、風防ガラスを除いた時計ケースや裏蓋を金属製として時計の外観質感を向上させても、標準電波の受信性能が低下するのを防止することができる。
【0038】
なお、ガイド部材は、時計基板の一部であってもよい。
【0039】
また、本発明に係る電波修正時計においては、アンテナコアと集磁部材との厚さ方向における間に、モータ等への影響を防止または低減させる耐磁板を配置したものであることが好ましい。
【0040】
このように構成された電波修正時計によれば、アンテナコアと集磁部材との間(厚さ方向における間)に、モータ等への外部磁界による影響を防止または低減させる耐磁板を配置されているため、集磁部材による標準電波の受信性能が耐磁板の影響で低下されることがなく、しかも、モータ等が耐磁板よりも下面側(裏蓋側)に配置されたことで、モータ等への外部磁界による影響を有効に防止することができる。
【0041】
また、本発明に係る電波修正時計においては、前記集磁部材と前記耐磁板とは、少なくとも一部が平面視(時計の厚さ方向に直交する面への投影図)において重なっていることが好ましい。
【0042】
このように構成された電波修正時計によれば、集磁部材と耐磁板とは、時計の厚さ方向にオフセットされているため、平面視で重なっているような配置を実施しても、お互いの性能に悪影響を及ぼすことが無く、しかも、集磁部材と耐磁板との両方の面積を、互いに干渉することなく大きくすることが可能になるので、集磁部材と耐磁板との両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0043】
また、本発明に係る電波修正時計においては、前記集磁部材は、前記アンテナコアの両端にそれぞれ配置され、前記各集磁部材は、その少なくとも一部が前記耐磁板と平面視で重なっていることが好ましい。
【0044】
このように構成された電波修正時計によれば、アンテナコアの両端部から各集磁部材を、耐磁板に干渉させることなく、それぞれ大きくすることが可能になるので、各集磁部材の性能を同時に、さらに向上させることができる。
【0045】
また、本発明に係る電波修正時計においては、前記耐磁板は、少なくとも、平面視で前記一方の集磁部材に一部が重なっている第1の耐磁板と、平面視で前記他方の集磁部材に一部が重なっている第2の耐磁板とで構成され、前記第1の耐磁板と前記第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることが好ましい。
【0046】
なお、磁気的に分断とは、例えば、互いに他方からの磁気の影響を受けないこと、またはその影響が極めて小さいためにその影響を無視できることなどである。
【0047】
このように構成された電波修正時計によれば、一方の集磁部材と耐磁板と他方の集磁部材という磁気経路が形成されるのを、耐磁板の分断(第1の耐磁板と第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることによる分断)により阻止することができる。
【0048】
さらに、一方の集磁部材→一方の付加コア→アンテナコア→他方の付加コア→他方の集磁部材→耐磁板→一方の集磁部材という磁気ループが形成されるのを、耐磁板の分断(第1の耐磁板と第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることによる分断)により阻止することができる。
【0049】
そして、このような耐磁板の二体構造は、上記磁気ループ等による受信性能の低下を招くことがなく、各集磁部材と分断された各耐磁板とのそれぞれの面積を同時に大きくし、両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0050】
本発明に係る電波修正時計においては、液晶パネルを保持する非磁性材料からなる液晶パネル支持枠を備え、前記液晶パネル支持枠は、前記押さえ部材を兼ねたものであることが好ましい。
【0051】
好ましい構成の電波修正時計によれば、既存の液晶パネル支持枠が押さえ部材を兼ねることによって、液晶パネル支持枠とは別体の押さえ部材を新たに設ける必要がなく、部品点数の増加に伴う製造コストの上昇を緩和することができる。
【0052】
また、本発明に係る電波修正時計においては、カレンダー情報を表示する非磁性材料からなるカレンダー表示部材を保持するカレンダー支持枠を備え、前記カレンダー支持枠は、前記押さえ部材を兼ねたものであることが好ましい。
【0053】
好ましい構成の電波修正時計によれば、既存のカレンダー支持枠が押さえ部材を兼ねることによって、カレンダー支持枠とは別体の押さえ部材を新たに設ける必要がなく、部品点数の増加に伴う製造コストの上昇を緩和することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の電波修正時計によれば、標準電波の受信感度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る電波修正時計に設けられた、標準電波の受信用のアンテナを示す概略斜視図である。
【図2】図1に示したアンテナが時計のケース内に収められた状態を示す模式図である。
【図3】図1に示したアンテナが組み立てられる以前の別体状態を示す分解斜視図である。
【図4】時計の地板を時計の裏蓋側から見た平面図である(その1)。
【図5】時計の地板を時計の裏蓋側から見た平面図である(その2)。
【図6】実施形態に係る電波修正時計を、裏蓋側から見た透視図である。
【図7】液晶パネル支持枠に予め設置された集磁部材を示す斜視図であり、(a)は裏蓋側から、(b)は文字板側からの状態をそれぞれ示す。
【図8】実施形態に係る電波修正時計を、風防ガラス側から見た透視図である。
【図9】図6における切断線A−A、切断線B−B、切断線C−Cに沿った断面をそれぞれ示す図である。
【図10】図7に示した地板と液晶パネル支持枠とを組み立てた状態を示す斜視図(風防ガラス側から)である。
【図11】耐磁板を介してアンテナコア体に磁気経路および磁気ループが形成された状態を示す模式図である。
【図12】2体構造の耐磁板を従来のアンテナ(本発明におけるアンテナコアおよび巻線)に適用した状態を示す模式図である。
【図13】押さえ部材としてカレンダー支持枠を適用した変形例(その1)の、図9相当の断面図である。
【図14】押さえ部材としてカレンダー支持枠を適用した他の変形例であって、カレンダー支持枠が、カレンダー情報の日付を表示する日板と時刻表示している世界都市(地域)の名称を表示する都市表示板とを保持している態様の平面視透過図である。
【図15】変形例(その2)に係る電波修正時計のアンテナコア体を示す斜視図であり、集磁部材を備えず、付加コアをアンテナコアに当接させたものである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に係る電波修正時計の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0057】
図1は本発明の一実施形態に係る電波修正時計100に設けられた、標準電波の受信用のアンテナ10を示す概略斜視図、図2は図1に示したアンテナ10が時計100のケース50内に収められた状態を示す模式図、図3は図1に示したアンテナ10が組み立てられる以前の別体状態を示す分解斜視図である。
【0058】
図示のアンテナ10は、短冊状に形成されたアモルファス材(磁性材料)からなるアンテナコア11と、アンテナコア11の中央部に巻回された巻線(電線)19と、アンテナコア11のうち巻線19が巻回された巻回部11aよりも端部側にそれぞれ延在した(巻線19から突出した)2つの延在部11b,11cの面(XY面)上に一端面が当接して、この延在部11b,11cの面から、図示を略した風防ガラス(図示上方(Z方向)側)に向かって立ち上がるように柱状に形成された、アモルファス材からなる付加コア15,16と、この付加コア15,16の他端面に当接して、アンテナコア11の延在部11b,11cよりも外側に広がるように延びた円弧板状の、アモルファス材からなる集磁部材17,18とからなる。
【0059】
このアンテナ10は、図2に示すように、時計100の文字板(図示省略)面(XY面)にアンテナコア11(の板面)が略平行となるように、時計100のケース50内に設置される。また、アンテナ10は、付加コア15,16が時計100の厚さ方向に立ち上がる向きとなる姿勢で配置される。なお、図2において、符号60は時計100の竜頭である。
【0060】
本実施形態の時計100は、図3に示すように、巻線19の巻回されたアンテナコア11が非磁性材料の地板31(時計基板)に支持され、付加コア15,16が非磁性材料のガイド部材33に支持され、集磁部材17,18が、図示しない液晶パネルを保持している非磁性材料の液晶パネル支持枠32(集磁部材支持部材)に支持されている。
【0061】
地板31には、図4(a)に示すように、アンテナコア11を所定の姿勢で、かつ所定の位置に位置決めするための位置決め孔31d,31eが形成されているとともに、アンテナコア11を地板31の面内で支持し、アンテナコア11の巻回部11aおよび巻線19が地板31の面と干渉するのを回避する逃げ孔31aが形成されている。
【0062】
そして、地板31上に、巻線19が巻回されたアンテナコア11が組み込まれ、延在部11b、11cに当接するように風防ガラス側から付加コア15,16が組み込まれる(図4(b))。さらに、アンテナコア11に対して、時計100の裏蓋側(風防ガラスとは反対側)から輪列受20(アンテナ支持部)および回路基板22により覆われ(図5(a),(b))、輪列受20はネジ21により固定されてアンテナへの付勢力を受ける支持部となる。
【0063】
本実施形態の時計100においては、地板31が、付加コア15,16を支持するガイド部材33を兼ねており、この地板31には、付加コア15,16が時計100の厚さ方向に立ち上がるように支持する付加コア支持部としての支持孔31b,31cが形成されている。
【0064】
なお、ガイド部材33を地板31から独立した部材としてもよいが、そのような構成を採用したものでは、ガイド部材33も非磁性材料であることが求められる。
【0065】
また、図4(b)に示すように、地板31の位置決め孔31d,31eに、アンテナコア11の各延在部11b,11cにそれぞれ形成された位置決めボス12a,12bを嵌合させることで、地板31は、アンテナコア11を所定の姿勢で、かつ所定の位置に位置決めして支持する。具体的には、アンテナコア11は、その板面が地板31の面内(地板31と平行な面であることを含む。以下、同じ。)となるように支持される。
【0066】
ここで、アンテナコア11の延在部11b,11cの一部は、支持孔31b,31cの一部を覆うように支持孔31b,31cに突出し、この支持孔31b,31cに配置されて支持された付加コア15,16の一端面が、支持孔31b,31cに突出した延在部11b,11cに当接し得る状態となる(図4(b)、図6)。
【0067】
なお、図4(b)において、符号13は、アンテナ10の巻線19から検波電流を取り出す回路が形成された小基板である。また、図6は、電波修正時計100を裏蓋側から見た透視図である。
【0068】
一方、集磁部材17,18は、図7(a),(b)に示すように、文字板側から地板31に積層される液晶パネル支持枠32に予め支持されている。この支持されている位置は、集磁部材17,18の端部が、地板31に支持された付加コア15,16の他端面(アンテナコア11に当接する端面とは反対側に位置する端面)に、上下方向(時計100の厚さ方向)に重なる位置である。
【0069】
そして、液晶パネル支持枠32のうち、上記付加コア15,16の他端面に重なる集磁部材17,18の部分に対応した部分には、集磁部材17,18を地板31の向きに押圧する突起32a,32b(押さえ部材)が形成されている(図7,8参照)。
【0070】
なお、図8は、電波修正時計100を、風防ガラス(文字板)側から見た透視図であり、平面視における、これら液晶パネル支持枠32、付加コア15,16、集磁部材17,18および突起32a,32bの位置関係を示す。
【0071】
また、図9(a),(b),(c)は、図6における切断線A−A、切断線B−B、切断線C−Cに沿った断面をそれぞれ示す。
【0072】
液晶パネル支持枠32と地板31とが重ね合わされて、液晶パネル支持枠32の係合爪32cが、地板31の係合孔31fに係合し(図9(a))、両者が一体的に組み立てられた状態において(図10)、液晶パネル支持枠32の突起32a,32bが、対応する集磁部材17,18をそれぞれ付加コア15,16に向けて押圧付勢し(図9(a))、これにより、集磁部材17,18と対応する付加コア15,16とがそれぞれ当接し、さらに付加コア15,16が、集磁部材17,18により押圧されることで、付加コア15,16がアンテナコア11の延在部11b,11cにそれぞれ当接され、集磁部材17と付加コア15とアンテナコア11と付加コア16と集磁部材18とは、磁気的結合によって機能上一体的な大きなアンテナコア体となるとともに、外観上も一体をなす。
【0073】
したがって、本実施形態に係る電波修正時計100によれば、アンテナコア体を大きくしたので、受信感度を向上させることができる。さらに、付加コア15,16を、金属製の裏蓋側ではなく、標準電波を相対的に通過させ易い風防ガラス側(Z方向)に向けて立ち上げたことで、付加コア15,16とアンテナコア11とからなる一体的なアンテナコア体が、風防ガラス側に向いた配置となり、これにより受信感度を一層向上させることができる。
【0074】
しかも、アンテナコア11と付加コア15,16と集磁部材17,18とは組立て前は別体で形成されているため、各部材間の当接の角度や位置などを種々変化させることでアンテナコア体として一体化した後の形状をある程度自由に設計することができ、従来のように当初から一体のアンテナコアを曲げて所望の形状を形成するよりも、アンテナコア体の外形形状の自由度を高めることができる。
【0075】
したがって、付加コア15,16を時計100の厚さ方向に立ち上がるようにアンテナコア11に当接させることで、アンテナコア体を全体として3次元に広がる形状に形成することができ、アンテナコアだけを単に一平面内で大きく形成した従来のものよりも、受信感度の一層の向上を図ることができるとともに、時計100のケース50内の限りある容積内であっても、アンテナ10の配置の自由度を従来よりも高めることができる。
【0076】
また、アンテナコア11は地板31と輪列受20とによって、地板31の面内で支持され(図9(b))、付加コア15,16はガイド部材33としての機能を兼ねる地板31の支持孔31b,31cに時計100の厚さ方向に立ち上がるように支持されるとともに、液晶パネル支持枠32の突起32a,32bが、集磁部材17,18を介して、付加コア15,16の一端面をアンテナコア11の延在部11b,11cに当接させるように付加コア15,16が付勢されているため、地板31やガイド部材33や液晶セル支持枠32が無い状態で、部品のみによりアンテナコア体として組み上げるよりも、簡単に組み上げることが可能となる。
【0077】
さらに、本実施形態の電波修正時計100は、アモルファス材からなる集磁部材17,18と、集磁部材17,18を支持する液晶パネル支持枠32とを備え、液晶パネル支持枠32は、集磁部材17,18が突起32a,32bと付加コア15,16の端面との間に介在するとともに付加コア15,16の当該端面に当接して配設されるように、集磁部材17,18を支持しているため、集磁部材17,18がさらに、アンテナコア体の一部としてアンテナコア11および付加コア15,16と磁気的に結合して機能上および外観上一体化し、一層大きなアンテナコア体を形成することができ、受信性能を一層向上させることができる。
【0078】
また、集磁部材17,18は液晶パネル支持枠32に支持されていることで、脆性材料でできているうえに薄くて破損しやすい集磁部材17,18を単体で付加コア15,16に組み付けるよりも容易に組み付けを行うことができる。
【0079】
ここで、集磁部材17,18を地板31に直接固定する場合には、ボスなどで固定することが必要になり、集磁部材17,18に穴を開けるような加工が必要となる。しかし、薄い脆性材料の集磁部材17,18に穴あけ加工することは容易ではない。特に、量産での生産では、金型での抜きを採用することになり、さらに加工が困難となるが、本実施形態のように、液晶パネル支持枠32に支持することで、上記の問題を回避することができる。
【0080】
さらに、延在部11b,11cは、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成され、付加コア15,16は、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成された各延在部11b,11cに対応してそれぞれ付勢されて当接しているため、各延在部11b,11cにそれぞれ付加コア15,16を対応させることで、標準電波の受信のバランスを適切に調整することができる。
【0081】
また、アンテナコア11は脆性材料であるアモルファス材で形成されているため、性状的に曲げるのが困難であるところ、本実施形態の電波修正時計100は、アンテナコア11を曲げたのと同様に、端部を風防ガラスなどの、金属ケースよりも標準電波が通り易い部材に近づける効果を得ることができ、実用上の有用性を高めることができる。
【0082】
なお、アンテナ10は、付加コア15,16の先端(集磁部材17,18がさらに付加された電波修正時計100にあっては、集磁部材17,18の先端部)で標準電波を受け易いが、本実施形態の電波修正時計100は、付加コア15,16の先端側が風防ガラスに向いているため、風防ガラスに極めて近い位置で、かつ平面的に広い面積で構成され、風防ガラスから侵入する標準電波を受け易い。
【0083】
したがって、風防ガラスを除いた時計100のケース50や裏蓋などを金属製として時計100の外観質感を向上させても、アンテナ10の標準電波の受信性能が低下するのを防止することができる。
【0084】
本実施形態に係る電波修正時計100は、上述したように既存の部材、すなわち地板31および液晶パネル支持枠32を、本発明に係る電波修正時計における時計基板、ガイド部材および押さえ部材として使用しているため、この電波修正時計100のために新たな部品を追加する必要がなく、部品の追加に伴う製造コストの上昇を抑制することができる。
【0085】
また、組立工程において、アンテナコア11と付加コア15,16とを地板31に組み込む工程と、集磁部材17,18を液晶パネル支持枠32に組み込む工程とを並行して実施し、最後に液晶パネル支持枠32を地板31に係合して組み合わせることで、集磁部材17と付加コア15とアンテナコア11と付加コア16と集磁部材18とが、磁気的結合によって機能上一体的な大きなアンテナコア体となるので、組立工程の時間を短縮することができる。
【0086】
なお、本実施形態に係る電波修正時計100は、裏蓋に近いアンテナコア11と風防ガラスに近い集磁部材17,18とで、時計100の厚さ方向にオフセットされているため、アンテナコア11と集磁部材17,18との間(厚さ方向における間)に、モータ等への外部磁界による影響を防止または低減させる耐磁板41,42を配置することができる(図8,9)。
【0087】
したがって、集磁部材17,18が耐磁板41,42よりも上面側(風防ガラス側)に配置されたことで、集磁部材17,18による標準電波の受信性能が耐磁板41,42の影響で低下されることがなく、しかも、モータ等が耐磁板41,42よりも下面側(裏蓋側)に配置されたことで、モータ等への外部磁界による影響を有効に防止することができる。
【0088】
さらに、集磁部材17,18と耐磁板41,42とは、厚さ方向にオフセットされているため、平面視で重なっているような配置を実施しても、お互いの性能に悪影響を及ぼすことが無い。そのため、集磁部材17,18と耐磁板41,42との両方の面積を大きくすることが可能になるので、集磁部材17,18と耐磁板41,42との両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0089】
なお、耐磁板41,42は、平面視で集磁部材17に重なる耐磁板41と、平面視で集磁部材18に重なる耐磁板42との二体構造となっている。
【0090】
耐磁性能の観点からは、耐磁板41と耐磁板42とが一体となった単一の板でもよいが、上記のように2つに分離した二体構造としているのは、以下の理由による。
【0091】
すなわち、集磁部材17,18と耐磁板41,42との両部材は平面視で重なっているため、耐磁板41と耐磁板42とを一体構造にしたもの(以下、耐磁板(41+42)という。)では、下記(1)〜(3)の原因で受信性能が低下する虞がある。(1)集磁部材17→耐磁板(41+42)→集磁部材18という磁気経路(図11における磁気経路L1)が形成され、この経路によって、標準電波の受信磁界がバイパスされ、アンテナコア体に補足される標準電波が減少する。(2)集磁部材17→付加コア15→アンテナコア11→付加コア16→集磁部材18→耐磁板(41+42)→集磁部材17という磁気ループ(図11における磁気ループL2)が形成されて、耐磁板(41+42)が副磁路となり、L値が無用に大きくなる。(3)上記磁気経路L1および磁気ループL2の存在により、耐磁板(41+42)で渦電流が発生する。
【0092】
ここで、磁気経路や磁気ループを回避する方法としては、集磁部材17,18と耐磁板(41+42)とを重ねない構成とすることが考えられるが、そのような構成によれば、集磁部材17,18と耐磁板(41+42)との両部材の面積を同時に大きくすることができず、集磁部材17,18と耐磁板(41+42)とが厚さ方向にオフセットされていることによる効果を充分に生かせない。
【0093】
そこで、耐磁板(41+42)を、平面視で集磁部材17に重なる耐磁板41と、平面視で集磁部材18に重なる耐磁板42との2つに分断した二体構造とし、分断された耐磁板41,42間を磁気的に分断することにより、磁気経路L1および磁気ループL2を切断し、この無用な磁気経路L1および磁気ループL2の発生を防いでいる。
【0094】
そして、このような耐磁板の二体構造は、上記磁気ループ等による受信性能の低下を招くことがなく、集磁部材17,18と耐磁板41,42との各面積を同時に大きくし、両部材の性能を同時に向上させることができる。
【0095】
この効果は、例えば、本実施形態のアンテナコア11のような通常のアンテナにおいても、得ることができる。すなわち、アンテナコア11と耐磁板とが平面視で重なっている場合に、耐磁板(41+42)を、図12に示すように、アンテナコア11の端部同士を結ぶ直線Cに直交する線D(アンテナコア11の端部同士を結ぶ直線Cに交差する線であれば直交する線Dに限定されるものではない。)に沿って、2つに分断したような別体の耐磁板41,42として構成することによっても、得ることができる。
【0096】
(変形例1)
なお、本実施形態に係る電波修正時計100は、アナログ表示(指針)とデジタル表示(LCD)とを組み合わせた、いわゆるコンビネーション時計であるため、液晶パネルおよび液晶パネル支持枠32を備え、したがって、この液晶パネル支持枠32を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用したが、液晶パネルを用いないアナログ表示(指針)のみの時計であるアナログ時計では、液晶パネル支持枠32も備えられていない。
【0097】
この場合は、集磁部材支持部材および押さえ部材として、液晶パネル支持部材32を適用するのに代えて、図9相当の断面図である図13(a)に示すように、カレンダー情報等を表示するカレンダー表示部材を支持するカレンダー支持枠33を適用し、カレンダー支持枠33に形成した突起33b(押圧用の突起)を押さえ部材として適用し、この突起33bにより集磁部材18(,17)を付加コア16(,17)に押圧することができ、または、図13(b)に示すように、液晶パネル支持部材32に代えて地板31を適用し、地板31に形成した突起31g(押圧用の突起)を押さえ部材として適用し、この突起31gにより集磁部材18(,17)を付加コア16(,17)に押圧することができる。
【0098】
図13(a)に示した変形例1は、図7(a),(b)に示した実施形態と同様な構成により、集磁部材17,18をカレンダー支持枠33に組み込む。そして、集磁部材17,18が支持されたカレンダー支持枠33を地板31に組み付けることにより、集磁部材17と付加コア15とアンテナコア11と付加コア16と集磁部材18とが、磁気的結合によって機能上一体的な大きなアンテナコア体となるとともに、外観上も一体をなす。
【0099】
変形例1においてはこのような構成とすることで、アナログ表示時計においても、上述した実施形態のコンビネーション時計と同様の効果を得ることができる。
【0100】
なお、図13(a)の構成では、カレンダー支持枠33を非導電性かつ非磁性の材料で作成することは当然のことであるが、カレンダー表示部材である日板80(日付を表示する円環状の板)が、平面視において、アンテナコア11、付加コア16および集磁部材18と重なる構造となるため、日板80も非導電性かつ非磁性の材料で作成する必要がある。なお、図13における符号81は、日板80を押さえる日板押さえ部材である。
【0101】
以上のように、図13は、このカレンダー支持枠33または地板31を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用した実施形態の電波修正時計であり、このような実施形態の変形例であっても、液晶パネル支持枠32を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用した上記実施形態の電波修正時計100と同一の 作用および効果を発揮することができる。
【0102】
なお、カレンダー表示部材は、上述した日板80のみに限定されるものではなく、曜板など他のカレンダー情報(月、年、月齢など)を表示する部材であってもよい。
【0103】
また、表示情報としては、カレンダー情報に限定されるものではなく、アナログ式世界時計に適用した場合は、世界各都市(地域)の情報(都市名、地域名等)を表示させるようにしてもよい。
【0104】
例えば、図14は、上述のアナログ式世界時計に適用した変形例1の平面図である。図14において、日板80はカレンダー情報の日付を表示し、日板80と同心に、かつ日板80の内側に設けられた都市表示板82には、世界各都市(地域)の名称の略号が記されており、この都市表示板82は、どの都市(地域)を選択して現在の時刻を表示しているのかをユーザに知らしめるためのものであって、日板80および都市表示板82は、ともにカレンダー支持枠33により保持されている。
【0105】
そして、集磁部材17,18は、図7(a)(b)に示した液晶パネル支持枠32に支持されているのと同様な構成によって、カレンダー支持枠33に支持されている。
【0106】
なお、図14より解されるように、アンテナコア11、付加コア15,16および集磁部材17,18は、平面視において、日板80および都市表示板82と重なって配置されている。したがって、日板80および都市表示板82はいずれも、標準電波の受信の妨げとならないように、非導電性かつ非磁性の材料で形成されていることが必要である。
【0107】
また、上述した実施形態や変形例は、液晶パネル支持枠32やカレンダー支持枠33を集磁部材支持部材および押さえ部材として適用した実施形態の電波修正時計であるが、本発明に係る電波時計においては、これら液晶パネル支持枠32やカレンダー支持枠33は押さえ部材を兼ねるものではあるが、集磁部材支持部材を兼ねるものではない構成であってもよい。
【0108】
(変形例2)
上述した実施形態の電波修正時計100は、付加コア15,16に、さらに集磁部材17,18を付加して、より大きなアンテナコア体を形成したものであるが、アンテナコア体としては、上述した集磁部材17,18を備えず、付加コア15,16のみをアンテナコア11の延在部11b,11cにそれぞれ当接させるものであってもよい。
【0109】
すなわち、図15(a)〜(c)は、集磁部材17,18を備えず、付加コア15,16のみをアンテナコア11の延在部11b,11cに当接させて、アンテナコア11と付加コア15,16とを一体化したアンテナコア体の斜視図を示す、本発明の実施形態のバリエーションであり、これらの実施形態はいずれも、アンテナコア体を大きくしたので、受信感度を向上させることができる。
【0110】
さらに、付加コア15,16を、金属製の裏蓋側ではなく、標準電波を相対的に通過させ易い風防ガラス側(Z方向)に向けて立ち上げたことで、付加コア15,16とアンテナコア11とからなる一体的なアンテナコア体が、風防ガラス側に向けて開く配置となり、これにより受信感度を一層向上させることができる。
【0111】
しかも、アンテナコア11と付加コア15,16とは組立て前は別体で形成されているため、アンテナコア11と付加コア15,16との当接の角度や位置などを種々変化させることでアンテナコア体として一体化した後の形状をある程度自由に設計することができ、従来のように当初から一体のアンテナコアを曲げて所望の形状を形成するよりも、アンテナコア体の外形形状の自由度を高めることができる。
【0112】
したがって、付加コア15,16を時計100の厚さ方向に立ち上がるようにアンテナコア11に当接させることで、アンテナコア体を全体として3次元に広がる形状に形成することができ、アンテナコアだけを単に平面内で大きく形成した従来のものよりも、受信感度の一層の向上を図ることができるとともに、時計100のケース50内の限りある容積内であっても、アンテナ10の配置の自由度を従来よりも高めることができる。
【0113】
また、アンテナコア11は地板31と輪列受20とにより地板31の面内で支持され、付加コア15,16はガイド部材33としての機能を兼ねる地板31の支持孔31b,31cに時計100の厚さ方向に立ち上がるように支持される、付加コア15,16の一端面をアンテナコア11の延在部11b,11cに当接させるように付加コア15,16が付勢されることで、地板31やガイド部材33や液晶セル支持枠32が無い状態で、部品のみによりアンテナコア体として組み上げるよりも、簡単に組み上げることが可能となる。
【0114】
なお、アンテナコア11や集磁部材17,18をアモルファス材で形成する際、アモルファス材を、その性能が安定する一定の厚さになるように積層して用いることが有用である。
【0115】
また、付加コア15,16が押さえ部材により付勢されているので、付加コア15,16の表面がうねっていても、アンテナ10の受信性能に影響が及ばない。したがって、付加コア15,16の表面を研磨する工程などを省略することができ、安価に作成することができる。
【0116】
さらに、延在部11b,11cは、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成され、付加コア15,16は、アンテナコア11の2つの端部側にそれぞれ形成された各延在部11b,11cに対応してそれぞれ付勢されて当接しているため、各延在部11b,11cにそれぞれ付加コア15,16を対応させることで、標準電波の受信のバランスを適切に調整することができる。
【0117】
また、アンテナコア11は脆性材料であるアモルファス材で形成されているため、性状的に曲げるのが困難であるところ、本実施形態の電波修正時計100は、アンテナコア11を曲げたのと同様の効果を得ることができ、実用上の有用性を高めることができる。
【0118】
なお、アンテナ10は、付加コア15,16の先端で標準電波を受け易いが、本実施形態の電波修正時計100は、付加コア15,16の先端側が風防ガラスに向いているため、風防ガラスに極近い位置で、かつ平面的に広い面積で構成され、風防ガラスから侵入する標準電波を受け易い。
【0119】
したがって、風防ガラスを除いた時計100のケース50や裏蓋などを金属製として時計100の外観質感を向上させても、アンテナ10の標準電波の受信性能が低下するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
10 アンテナ
11 アンテナコア
11a 巻回部
11b,11c 延在部
15,16 付加コア
17,18 集磁部材
19 巻線
31 地板(時計基板)
32 液晶パネル支持枠(集磁部材支持部材、押さえ部材)
32a,32b 突起(押さえ部材)
33 ガイド部材
100 電波修正時計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも巻線が巻回される巻回部と前記巻回部よりも端部側に延在する延在部とが一体的に形成された磁性材料からなるアンテナコアを含むアンテナと、
前記アンテナの端部と平面視で重なっている耐磁板と、を有し、
前記耐磁板は、少なくとも、平面視で前記アンテナの一方の端部に一部が重なっている第1の耐磁板と、平面視で前記アンテナの他方の端部に一部が重なっている第2の耐磁板とで構成され、
前記第1の耐磁板と前記第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることを特徴とする電波修正時計。
【請求項2】
前記アンテナは、前記アンテナコアの両端にそれぞれ配置された、前記アンテナコアと磁気的に結合する集磁部材を有し、
前記第1の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち一方に一部が重なり、前記第2の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち他方に一部が重なっていることを特徴とする請求項1に記載の電波修正時計。
【請求項3】
一端面が前記アンテナコアの延在部に当接するように付勢され、他端面が前記集磁部材に当接して配設される磁性材料からなる付加コアを有し、
前記集磁部材が前記付加コアによって前記アンテナコアと磁気的に結合されることを特徴とする請求項2に記載の電波修正時計。
【請求項1】
少なくとも巻線が巻回される巻回部と前記巻回部よりも端部側に延在する延在部とが一体的に形成された磁性材料からなるアンテナコアを含むアンテナと、
前記アンテナの端部と平面視で重なっている耐磁板と、を有し、
前記耐磁板は、少なくとも、平面視で前記アンテナの一方の端部に一部が重なっている第1の耐磁板と、平面視で前記アンテナの他方の端部に一部が重なっている第2の耐磁板とで構成され、
前記第1の耐磁板と前記第2の耐磁板とは磁気的に分断して配置されていることを特徴とする電波修正時計。
【請求項2】
前記アンテナは、前記アンテナコアの両端にそれぞれ配置された、前記アンテナコアと磁気的に結合する集磁部材を有し、
前記第1の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち一方に一部が重なり、前記第2の耐磁板は平面視で前記集磁部材のうち他方に一部が重なっていることを特徴とする請求項1に記載の電波修正時計。
【請求項3】
一端面が前記アンテナコアの延在部に当接するように付勢され、他端面が前記集磁部材に当接して配設される磁性材料からなる付加コアを有し、
前記集磁部材が前記付加コアによって前記アンテナコアと磁気的に結合されることを特徴とする請求項2に記載の電波修正時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−154939(P2012−154939A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86928(P2012−86928)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2009−502602(P2009−502602)の分割
【原出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2009−502602(P2009−502602)の分割
【原出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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