説明

電波反射器

【課題】反射板の設置の効率化による設置時間の短縮が出来る電波反射器を実現する。
【解決手段】電波送信機と電波受信機との間に存在する電波障害物を迂回して電波を反射し電波送信機からの送信を電波受信機で受信する電波反射器において、一方の面に設けられ前記送受信電波及び可視光を反射する鏡面を有する反射板と、この反射板の他方の面に一端が接続されこの反射板の面に直交する方向にこの反射板を移動する移動手段とを具備したことを特徴とする電波反射器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波反射器に関するものである。
更に詳述すれば、視覚調整可能な反射鏡を用いた無線通信を中継する電波反射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図で原理を示す模式図、図6は図5の正面図及びその側面図、図7は図6設置例図である。
【0003】
図において、図6の正面図及びその側面図に示すように、電波反射板10は別体の方向調整装置11を方向調整治具として具備する。
【0004】
この方向調整装置11は、電波反射板10の電波反射面に平行な基面1aを有する取付基体1と、この取付基体1の基面1aに直角に一体的に立設され且つ長手方向軸心に穿設した直線案内溝2aと根元の基点O(取付基体1の一縁辺の中心)に突設する中心ピン5とを備える垂直棒2と、この中心ピン5に一端を枢着し垂直棒2の長手方向軸心を中心に左右対称に開脚する一対の方位指示棒3−1,3−2と、この一対の方位指示棒3−1,3−2それぞれに中心ピン5から等距離に設けた支点C,D、即ち固定ピン6,7に一端を枢着し、垂直棒2の直線案内溝2aに沿って移動する移動点P、即ちナット8aを螺着した摺動ねじ8に他端を枢着し垂直棒2の長手方向軸心を中心に左右対称に開脚する長さの等しい一対の角度調整棒4−1,4−2とで構成する。
なお、この方向調整装置11は調整治具として使用するため、さらに取付基体1に電波反射板10を挟む当て板9を付設し方向調整後に結合ねじ9aでナット9b止めする。
【0005】
方向調整は、図7の設置例図に示すように先ず、一方の方位指示棒3−1を一方の可搬型無線装置の設置点Xに向けて頑丈な三脚(図示略)に固定する。そうして、この方位指示棒3−1を基準にしナット8aを弛めた摺動ねじ8を直線案内溝2aに沿って移動させ他方の方位指示棒3−2を連動して開脚調節しその軸心を他方の可搬型無線装置の設置点Yに合わせる。
【0006】
そうすれば、垂直棒2に対し直角な取付基体1の基面は方向調整すべき角度に自ずと一致するため、取付基体1と当て板9とで電波反射板10を挟み結合ねじ9aで固定することで電波反射板10の方向が決定されるので仮設置する。
【0007】
そのとき、電波反射板10の電波反射面に対する電波の入射角αと反射角βはほぼ等しくなる。しかし、この方向調整は飽くまでも粗調整であるため、電波反射板10の仮設置後は、実際に送信し受信側において最大利得を得る方向に電波反射面を微調整し正式に設定完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−061729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような装置においては、以下の問題点がある。
角度調整する際には、一般的に観測した通信信号の情報を時間的に平均化する等した値を目視し、角度の調整を行うため、判断情報の取得と角度調整の判断を含めて設置時間が掛かる。
また、反射板までの見通し経路範囲の直接到達する電波と、マルチパス干渉波の調整を同時に行い、調整が難しくなり設置時間がかかる可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、反射板の設置の効率化による設置時間の短縮が出来る電波反射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1の電波反射器においては、
電波送信機と電波受信機との間に存在する電波障害物を迂回して電波を反射し電波送信機からの送信を電波受信機で受信する電波反射器において、一方の面に設けられ前記送受信電波及び可視光を反射する鏡面を有する反射板と、この反射板の他方の面に一端が接続されこの反射板の面に直交する方向にこの反射板を移動する移動手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2の電波反射器においては、請求項1記載の電波反射器において、
前記反射板は、平面あるいは凸面あるいは凹面であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3の電波反射器においては、請求項1又は請求項2記載の電波反射器において、
前記移動手段は、一方の端が前記反射板の他方の面に直交して接続された案内棒と、この案内棒の他方の端側が一方の端側に摺動自由に挿入される筒状の支持筒と、この支持筒に設けられ前記案内棒の他方の端側をこの支持筒に固定する固定ねじとを具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4の電波反射器においては、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電波反射器において、
前記電波送信機に設けられ可視光レーザーを発する可視光レーザー発信機と、前記電波受信機に設けられ前記可視光レーザーを前記反射板を介して受光し前記反射板の反射位置を調整する可視光レーザー受信機と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5の電波反射器においては、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電波反射器において、
前記電波送信機に設けられ前記電波受信機の像を前記反射板を介して視認し前記反射板の反射位置を調整する望遠レンズ、あるいは、前記電波受信機に設けられ前記電波送信機の像を前記反射板を介して視認し前記反射板の反射位置を調整する望遠レンズ、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
電波反射面に電磁波および可視光の鏡面反射板を用いたので、電波反射器の設置者の視覚的に電波反射面角度が確認でき、電波反射器の調整時間の短縮が出来る電波反射器が得られる。
鏡面反射板の鏡面に受信器を写しながら、移動手段により、鏡面反射板の鏡面の垂直方向調整ができるので、マルチパス干渉波の強弱のみを調整できる電波反射器が得られる。
【0017】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
反射板は、平面あるいは凸面あるいは凹面が使用出来るので、反射板での広範な反射角度を得ることが出来る電波反射器が得られる。
凸面を使用した場合には、凸面であるので、水平、垂直角度の調整が不要になる電波反射器が得られる。
凹面を使用した場合には、凹面であるので、エネルギーが集中でき、電力を増幅できる電波反射器が得られる。
【0018】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
移動手段は、一方の端が反射板の他方の面に直交して接続された案内棒と、この案内棒の他方の端側が一方の端側に摺動自由に挿入される筒状の支持筒と、この支持筒に設けられ案内棒の他方の端側をこの支持筒に固定する固定ねじとが設けられたので、簡潔な構成により反射板の移動が出来るので、安価な電波反射器が得られる。
【0019】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
電波送信機に設けられ可視光レーザーを発する可視光レーザー発信機と、電波受信機に設けられ可視光レーザーを反射板を介して受光し、反射板の反射位置を調整する可視光レーザー受信機とが設けられたので、レーザーは直進性が良好で、調整精度が向上された電波反射器が得られる。
【0020】
本発明の請求項5によれば、次のような効果がある。
電波送信機に設けられ電波受信機の像を反射板を介して視認し反射板の反射位置を調整する望遠レンズ、あるいは、電波受信機に設けられ電波送信機の像を反射板を介して視認し反射板の反射位置を調整する望遠レンズ、が設けられたので、電波送信機と電波受信機との距離が長い場合でも、鏡面を目視で確認しながら調整ができ、遠距離でも調整可能な電波反射器が得られる。
また、安価簡易に調整できる電波反射器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の上方向から見た断面説明図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図5】従来例の要部構成説明図原理を示す模式図である。
【図6】図5の正面図及びその側面図である。
【図7】図6設置例図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は図1の上方向から見た断面説明図、図3は図1の動作説明図である。
図において、図5と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図5との相違部分のみ説明する。
【0023】
図1において、反射板21は、一方の面に設けられ、受信電波及び可視光を反射する鏡面211を有する。
この場合は、反射板21は、平面状をなす。
この場合は、反射板21は、可視光が反射できる粗さまで表面が研磨された金属板が使用されている。
【0024】
移動手段22は、この反射板21の他方の面に一端が接続され、この反射板21の面に直交する方向aに、この反射板21を移動する。
この場合は、移動手段22は、一方の端が、反射板21の他方の面に直交して接続された案内棒221と、この案内棒221の他方の端側が一方の端側に摺動自由に挿入される筒状の支持筒222と、この支持筒222に設けられ、案内棒221の他方の端側をこの支持筒222に固定する固定ねじ223とを有する。
【0025】
取付基体224は、反射板21と案内棒221の接続を強化するために設けられ、反射板21と案内棒221とが、直交して組立てられることを確実にする。
固定ボルト225と固定ナット226とは、取付基体224に案内棒221を固定する。
【0026】
図3に示す如く、この場合は、可視光レーザー発信機23は、電波送信機24に設けられ可視光レーザーbを発する。
可視光レーザー受信機25は、電波受信機26に設けられ、可視光レーザーbを受光し、反射板21の反射位置を調整する。
Aは電波障害物である。
【0027】
ここで、電波反射器20は、電波送信機14と電波受信機16との間に存在する電波障害物Aを迂回して電波を反射し、電波送信機14からの送信を、電波受信機16で受信する場合に使用される。
また、反射板21は、移動手段22を方向調整具として使用する。
【0028】
以上の構成において、取付基体224に、案内棒221の一端を、固定ボルト225と固定ナット226により固定し、反射板21の水平方向の反射角度を固定する。
案内棒221を支持筒222の軸方向に滑らせ、固定ねじ223を締めることで、反射板21の垂直方向の反射板位置を調整する。
【0029】
以上において、図3に示す如く、具体的な使用例を示す。
反射板21は、図のように、電波障害物Aがある場合に使用する。
可視光Bの反射角と通信用電波Cの角度を一致させるため、反射鏡面211を電波送信機24の送信アンテナ位置から目視で監視し、電波受信機26の受信側アンテナを鏡面211の中央に位置するように調整する。これにより、鏡面211に直接到達する通信用電波が受信側経路との最短到達経路となる。
その後、電波品質を見ながら、垂直方向aの位置を調整し、マルチパス干渉波による受信電力の調整をする。
【0030】
この結果、
電波反射面に電磁波および可視光の鏡面反射板21を用いたので、電波反射器20の設置者の視覚的に電波反射面角度が確認でき、電波反射器20の調整時間の短縮が出来る電波反射器が得られる。
鏡面反射板の鏡面211に電波受信機26を写しながら、移動手段22により、鏡面反射板の鏡面211の垂直方向調整ができるので、マルチパス干渉波の強弱のみを調整できる電波反射器が得られる。
【0031】
移動手段22は、一方の端が反射板21の他方の面に直交して接続された案内棒221と、この案内棒221の他方の端側が一方の端側に摺動自由に挿入される筒状の支持筒222と、この支持筒222に設けられ案内棒221の他方の端側をこの支持筒222に固定する固定ねじ223とが設けられたので、簡潔な構成により、反射板21の移動が出来るので、安価な電波反射器が得られる。
【0032】
この場合は、電波送信機24に設けられ可視光レーザーを発する可視光レーザー発信機23と、電波受信機26に設けられ可視光レーザーを反射板21を介して受光し、反射板21の反射位置を調整する可視光レーザー受信機25とが設けられたので、レーザーは直進性が良好で、調整精度が向上された電波反射器が得られる。
【0033】
図4は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図4において、望遠レンズ31は、電波送信機24に設けられ、電波受信機26の像を、反射板21を介して視認し、反射板21の反射位置を調整する。
なお、望遠レンズ31は、電波受信機26に設けられても良い。
【0034】
この結果、
電波送信機24に設けられ、電波受信機26の像を、反射板を介して視認し、反射板の反射位置を調整する望遠レンズ31が設けられたので、
電波送信機24と電波受信機26との距離が長い場合でも、鏡面211を目視で確認しながら調整ができ、遠距離でも調整可能な電波反射器が得られる。
また、安価簡易に調整できる電波反射器が得られる。
【0035】
なお、前述の実施例においては、反射板21に付いて、平面と説明したが、これに限ることはなく、例えば、凸面あるいは凹面であっても良い。
反射板は、平面あるいは凸面あるいは凹面が使用出来るので、反射板での広範な反射角度を得ることが出来る電波反射器が得られる。
【0036】
凸面を使用した場合には、凸面であるので、水平、垂直角度の調整が不要になる電波反射器が得られる。
凹面を使用した場合には、凹面であるので、エネルギーが集中でき、電力を増幅できる電波反射器が得られる。
【0037】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【符号の説明】
【0038】
21 反射板
211 鏡面
22 移動手段
221 案内棒
222 支持筒
223 固定ねじ
224 取付基体
225 固定ボルト
226 固定ナット
23 可視光レーザー発信機
24 電波送信機
25 可視光レーザー受信機
26 電波受信機
31 望遠レンズ
A 電波障害物
a 直交する方向
b 可視光レーザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波送信機と電波受信機との間に存在する電波障害物を迂回して電波を反射し電波送信機からの送信を電波受信機で受信する電波反射器において、
一方の面に設けられ前記送受信電波及び可視光を反射する鏡面を有する反射板と、
この反射板の他方の面に一端が接続されこの反射板の面に直交する方向にこの反射板を移動する移動手段と
を具備したことを特徴とする電波反射器。
【請求項2】
前記反射板は、平面あるいは凸面あるいは凹面であること
を特徴とする請求項1記載の電波反射器。
【請求項3】
前記移動手段は、一方の端が前記反射板の他方の面に直交して接続された案内棒と、
この案内棒の他方の端側が一方の端側に摺動自由に挿入される筒状の支持筒と、
この支持筒に設けられ前記案内棒の他方の端側をこの支持筒に固定する固定ねじと
を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項2の何れかに記載の電波反射器。
【請求項4】
前記電波送信機に設けられ可視光レーザーを発する可視光レーザー発信機と、
前記電波受信機に設けられ前記可視光レーザーを前記反射板を介して受光し前記反射板の反射位置を調整する可視光レーザー受信機と、
を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電波反射器。
【請求項5】
前記電波送信機に設けられ前記電波受信機の像を前記反射板を介して視認し前記反射板の反射位置を調整する望遠レンズ、あるいは、
前記電波受信機に設けられ前記電波送信機の像を前記反射板を介して視認し前記反射板の反射位置を調整する望遠レンズ、
を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電波反射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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