電波透過カバーおよびその製造方法
【課題】基材層の剥離を抑制できる電波透過カバーおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】電波透過カバーの第2カバー層35に、互いに隣接する複数のカバー側壁面50を設ける。そして、第2カバー層35の後面側に配置される基材層4に、カバー側壁面50と相補的な形状の基材側壁面60を複数設け、それぞれ対応するカバー側壁面50と基材側壁面60とが互いに係合するようにする。
【解決手段】電波透過カバーの第2カバー層35に、互いに隣接する複数のカバー側壁面50を設ける。そして、第2カバー層35の後面側に配置される基材層4に、カバー側壁面50と相補的な形状の基材側壁面60を複数設け、それぞれ対応するカバー側壁面50と基材側壁面60とが互いに係合するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電波レーダ装置の前側に配設される電波透過カバーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オートクルーズシステムは、車両前側に搭載されているセンサによって前方車両と自車との車間距離や相対速度を測定し、この情報を基にスロットルやブレーキを制御して自車を加減速し、車間距離をコントロールする技術である。このオートクルーズシステムは、近年、渋滞緩和や事故減少を目指す高度道路交通システム(ITS)の中核技術の一つとして注目されている。
【0003】
オートクルーズシステムに使用されるセンサとしては、一般に、レーザレーダやミリ波レーダが使用されている。例えばミリ波レーダは、30GHz〜300GHzの周波数を持ち1〜10mmの波長を持つミリ波を送信し、かつ、対象物にあたって反射したミリ波を受信することで、この送信波と受信波の差から前方車両と自車との車間距離や相対速度を測定する。
【0004】
車両用電波レーダ装置は、一般に、フロントグリルの後面側に配置される。フロントグリルは、肉厚が一定ではなく、金属製であるかまたは表面に金属メッキ層が形成されているため、電波の進路に干渉する。このため、フロントグリルのなかで車両用電波レーダ装置の前側に相当する部分に窓部を設け、この窓部に樹脂製の電波透過カバーを嵌め込む技術が提案されている。
【0005】
電波透過カバーには、一般に、種々の意匠を表示するための意匠層が設けられる。意匠層は金属蒸着やフィルム転写などによって形成される比較的薄肉の層である。このため、意匠層の前面と後面とは、それぞれ、補強用の樹脂層で覆う必要がある。
【0006】
意匠層の前面と後面とが補強用の樹脂層で覆われてなる電波透過カバーは、先ず補強用の樹脂層の一方を成形し、次いでその上層に蒸着や転写などの方法によって意匠層を形成し、さらに意匠層の上層に補強用の樹脂層の他方を成形して得られる。
【0007】
ところで、意匠性に優れた電波透過カバーを得るためには、先に成形する樹脂層の材料(以下、第1樹脂材料と呼ぶ)として、後に成形する樹脂層の材料(以下、第2樹脂材料と呼ぶ)よりも融点の高いものを用いる必要がある。すなわち、第1樹脂材料の融点が第2樹脂材料の融点よりも高ければ、先に成形した樹脂層は、溶融した第2樹脂材料に熱せられも溶融しない。このため、先に成形した樹脂層の上層に形成されている意匠層の変形を抑制でき、意匠性に優れた電波透過カバーを得ることができる。
【0008】
一方、第1樹脂材料の融点が第2樹脂材料の融点よりも高い場合には、2つの樹脂層の相溶性が低くなり、両者を強固に一体化し難い。このため従来は、2つの樹脂層を、互いに係合する形状に形成していた(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に紹介されている電波透過カバーでは、インジウムが蒸着されてなる意匠層の前面と後面とが、それぞれ、補強用の樹脂層で覆われている。詳しくは、意匠層の前面は透明樹脂材料からなる樹脂層(カバー層と呼ぶ)で覆われ、意匠層の後面は不透明樹脂材料からなる樹脂層(基材層と呼ぶ)で覆われている。カバー層と意匠層との間には、不透明樹脂材料からなる樹脂層(マスク層と呼ぶ)が介在している。詳しくは、マスク層は、カバー層の後面の一部を覆う。カバー層の周縁部は、アンダーカット形状の係合部を形成している。
【0010】
特許文献1に紹介されている電波透過カバーによると、カバー層の周縁部に形成されている係合部が、基材層の周縁部後面と係合する。このためカバー層は、基材層を機械的に固定できる。よって、カバー層と基材層とが互いに融点の異なる材料からなる場合にも、カバー層と基材層とを強固に一体化できると考えられる。なお、特許文献1に紹介されている電波透過カバーの意匠層は、カバー層のなかで後面がマスク層で覆われていない部分(以下、窓部と呼ぶ)を通して、電波透過カバーの前側(カバー層側)に表示される。このため、この電波透過カバーには、意匠層の意匠が、窓部の形状に応じた形状に表示される。
【0011】
しかし、カバー層の材料と基材層の材料として互いに異なる樹脂材料を選択する場合には、カバー層と基材層との収縮率の違いによって両者が相対的に位置ズレする場合がある。この場合には、特許文献1に紹介されている技術を用いてカバー層と基材層とを機械的に固定しても、電波透過カバーのなかで係合部から離れた領域においてはカバー層と基材層とが剥離する。カバー層と基材層とが剥離すると、両者の間に隙間(空気層)が形成され、電波透過カバーの電波透過性能が低下する。
【特許文献1】特開2000−159039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基材層の剥離を抑制できる電波透過カバーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の電波透過カバーは、車両用電波レーダ装置の前側に配設される電波透過カバーであって、意匠層と、意匠層の前面を覆う板状のカバー層と、意匠層の後面を覆う板状の基材層と、を持ち、カバー層は、透明樹脂材料からなる第1カバー層と、透明樹脂材料と着色材とを含む混合材料からなり第1カバー層の後面の一部を覆う第2カバー層と、が多色成形されてなり、第2カバー層は、互いに隣接し第2カバー層の後面と交差する方向に延びる複数のカバー側壁面を持ち、基材層は、透明樹脂材料とは融点の異なる樹脂材料からなり、カバー側壁面と相補的な形状をなす複数の基材側壁面を持ち、それぞれ対応するカバー側壁面と基材側壁面とは、互いに係合していることを特徴とする。
【0014】
本発明の電波透過カバーは、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを備えるのが好ましい。
(1)隣接する上記カバー側壁面同士の最短距離は、0.5mm以下である。
(2)複数の上記カバー側壁面の少なくとも一つは、その少なくとも一部が上記基材層の肉厚方向と交差する方向に延びる。
(3)上記カバー側壁面の少なくとも一つは、上記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、第1の方向と交差する第2の方向とに延び、上記カバー側壁面の他の少なくとも一つは、第1の方向と、第2の方向と交差する第3の方向とに延びる。
(4)上記基材層と上記第2カバー層との少なくとも一方は長短のある形状をなし、上記カバー側壁面の少なくとも一つは、上記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、上記基材層の長手方向と上記第2カバー層の長手方向との少なくとも一方と交差する第4の方向とに延びる。
【0015】
上記課題を解決する本発明の電波透過カバーの製造方法は、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを製造する方法であって、上記カバー層と上記意匠層とを持つ中間体を形成する中間体形成工程と、中間体の後面側に溶融した上記基材層用の樹脂材料を注入して上記基材層を形成する基材層形成工程と、を持ち、基材層形成工程において、上記基材層用の樹脂材料の流動圧によって、上記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させることを特徴とする。
【0016】
本発明の電波透過カバーの製造方法は、下記の(5)を備えるのが好ましい。
(5)上記透明樹脂材料の軟化温度は、上記基材層用の樹脂材料の溶融温度よりも低く、上記基材層形成工程において、上記第2カバー層の少なくとも一部を軟化させつつ上記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電波透過カバーにおけるカバー層は、第1カバー層と第2カバー層とを持つ。第1カバー層と第2カバー層とは、同じ透明樹脂材料を材料としてなるため、互いに相溶し、強固に一体化される。また、第2カバー層のカバー側壁面と基材層の基材側壁面とが互いに係合しているため、第2カバー層と基材層とは機械的に一体化する。カバー側壁面は複数存在し、複数のカバー側壁面は互いに隣接しているため、カバー側壁面と基材側壁面との係合箇所は、互いに隣接した複数箇所形成される。このため、カバー層と基材層とは強固に一体化する。よって、本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との相対的な位置ズレを抑制でき、カバー層と基材層との剥離を抑制できる。
【0018】
上記(1)を備える本発明の電波透過カバーでは、隣接するカバー側壁面同士の最短距離が小さい。このためカバー側壁面と基材側壁面との係合箇所は、互いに近接した複数箇所形成される。したがって、カバー層と基材層とはさらに強固に一体化する。よって、上記(1)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との相対的な位置ズレをより一層抑制できる。
【0019】
上記(2)を備える本発明の電波透過カバーでは、少なくとも一つのカバー側壁面の少なくとも一部が基材層の肉厚方向と交差する方向に延びる。このため少なくとも一つのカバー側壁面は、基材層の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなす。したがって、カバー側壁面と相補的な形状をなす基材側壁面もまた基材層の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなす。このため、カバー側壁面と基材側壁面とは基材層の肉厚方向に強固に係合する。よって、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との剥離をより一層抑制できる。
【0020】
上記(3)を備える本発明の電波透過カバーでは、少なくとも一つのカバー側壁面が、他の少なくとも一つのカバー側壁面と交差する方向に延びるため、一部のカバー側壁面と基材側壁面とが係合する方向と、他の一部のカバー側壁面と基材側壁面とが係合する方向とを、異なる2以上の方向にできる。このため、カバー層と基材層との相対的な位置ズレを2以上の方向で抑制できる。よって、上記(3)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との剥離をより一層抑制できる。
【0021】
ところで、基材層が長短のある形状をなす場合(例えば、基材層が楕円の板状や矩形の板状をなす場合など)には、長手方向における基材層の収縮長さは、他の方向における基材層の収縮長さよりも大きくなる。第2カバー層に関しても同様である。このため、第2カバー層と基材層とは、基材層の長手方向と第2カバー層の長手方向との少なくとも一方に大きく位置ズレする。上記(4)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー側壁面を、第2カバー層の長手方向と基材層の長手方向との少なくとも一方と交差する方向に延びる形状にしたことで、収縮長さが大きい方向における第2カバー層と基材層との相対的な位置ズレを、効果的に抑制できる。よって、上記(4)を備える本発明の電波透過カバーは、カバー層と基材層との剥離をより一層抑制できる。
【0022】
また、本発明の電波透過カバーの製造方法(すなわち、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを製造する方法)によると、基材層用の樹脂材料の流動圧によって、カバー側壁面の少なくとも一部を変形させるため、基材層の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなすカバー側壁面を、容易かつ安価に形成できる。よって、本発明の電波透過カバーの製造方法によると、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを容易かつ安価に製造できる。
【0023】
上記(5)を備える本発明の電波透過カバーの製造方法によると、基材層形成工程において第2カバー層の少なくとも一部を軟化させることで、カバー側壁面を容易かつ信頼性高く変形させ得る。よって、上記(5)を備える本発明の電波透過カバーの製造方法によると、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを容易かつ信頼性高く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
第1カバー層は、本発明の電波透過カバーのなかで最前面に配される。このため第1カバー層を構成する透明樹脂材料としては、耐候性の高いものを選択するのが好ましい。耐候性の高い透明樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。
【0025】
第2カバー層は、第1カバー層の材料として用いたものと同じ透明樹脂材料と、着色材と、の混合材料からなる。着色材は、電波透過カバーの意匠に応じて適宜選択できる。例えばカーボンブラック等の黒色着色材を用いても良いし、その他の着色材を用いても良い。着色材は一種のみであっても良いし、多種を混合して用いても良い。
【0026】
本発明の電波透過カバーにおいて、基材層は、第1カバー層および第2カバー層の材料として用いた透明樹脂材料とは融点の異なる樹脂材料(以下、基材用樹脂材料と呼ぶ)からなる。例えば、カバー層の後に基材層を成形する場合には、基材用樹脂材料として透明樹脂材料よりも融点の低いものを用いればよい。また、基材層の後にカバー層を成形する場合には、基材層用樹脂材料として、透明樹脂材料よりも融点の高いものを用いればよい。なお、透明樹脂材料としてポリカーボネート樹脂を用いる場合には、基材層用樹脂材料としてAES樹脂を用いるのが好ましい。AES樹脂はポリカーボネート樹脂と誘電率がほぼ等しいため、電波が均一に透過するためである。
【0027】
本発明の電波透過カバーにおいて、意匠層は、カバー層に形成しても良いし、基材層に形成しても良い。例えば、カバー層を基材層よりも先に成形する場合には、カバー層の後面に意匠層を形成すればよい。また、基材層をカバー層よりも先に成形する場合には、基材層の前面に意匠層を形成すればよい。意匠層は、インジウム等の金属材料をカバー層または基材層に蒸着して形成しても良いし、スクリーン印刷等の方法でカバー層または基材層に形成してもよい。さらに、転写フィルムに印刷形成された所定の意匠を、カバー層または基材層に転写して意匠層を形成してもよい。フィルム上に所定の意匠を蒸着や印刷して形成してなる意匠層を、カバー層または基材層に積層してもよい。意匠層の材料は1種のみであっても良いし、多種であっても良い。また、意匠層は1層からなっても良いし、多層からなっても良い。例えば、第1の意匠を印刷形成した樹脂フィルム上に、第2の意匠を蒸着形成した小片状フィルムを接着したものを意匠層として用いても良い。さらに、意匠層の上層にアクリル系塗料等からなる保護層を形成しても良い。
【0028】
本発明の電波透過カバーにおいて、隣接するカバー側壁面同士の最短距離は15mm以下であるのが好ましい。隣接するカバー側壁面同士の最短距離が15mm以下であれば、カバー側壁面と基材側壁面との係合箇所を互いに近接させることができ、カバー層と基材層とを強固に一体化させ得る。隣接するカバー側壁面同士の最短距離は、7.5mm以下であるのがより好ましく、0.2mm〜2mmであるのがさらに好ましい。
【0029】
本発明の電波透過カバーの製造方法では、先ずカバー層を形成し、次いで基材層を形成する。したがって、意匠層はカバー層の後面に形成する。また、基材用樹脂材料としては、透明樹脂材料よりも融点の低いものを用いる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の電波透過カバーを図面を基に説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1の電波透過カバーは、車両のフロントグリルに設けられている開口に嵌め込まれる。実施例1の電波透過カバーの後側には、車両用ミリ波レーダ装置が配設される。実施例1の電波透過カバーは、上記(1)および(4)を備える。実施例1の電波透過カバーを前側から見た様子を模式的に表す正面図を図1に示す。実施例1の電波透過カバーを図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図2に示す。実施例1の電波透過カバーにおけるカバー層を模式的に表す要部拡大斜視図を図3に示す。実施例1の電波透過カバーを模式的に表す要部拡大斜視図を図4に示す。以下、実施例1において、上、下、左、右、前、後とは、図1〜図4に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0032】
実施例1の電波透過カバーは、図2に示すように、意匠層2と、カバー層3と、基材層4とを持つ。
【0033】
カバー層3は意匠層2の前面を覆う。カバー層3は、第1カバー層30と第2カバー層35とが多色成形されてなる。第1カバー層30は、透明樹脂材料の一種であるポリカーボネート樹脂からなり、透明である。第1カバー層30の後面側は、環形に陥没形成されている。この環形に陥没している部分の内部を窓部31と呼ぶ。
【0034】
第2カバー層35は、ポリカーボネート樹脂とカーボンブラックとの混合材料からなり、黒色である。第2カバー層35は、第1カバー層30の後面のなかで、窓部31よりも内周側の部分と、窓部31よりも外周側の部分とに形成されている。すなわち、第2カバー層35は、第1カバー層30の後面のなかで窓部31以外の部分を覆う。第2カバー層35のなかで、第1カバー層30の窓部31よりも内周側の後面を覆う部分を、内側第2カバー層350と呼ぶ。第2カバー層35のなかで、第1カバー層30の窓部31よりも外周側の後面を覆う部分を、外側第2カバー層351と呼ぶ。
【0035】
意匠層2は、カバー層3の後面にインジウムが蒸着されてなる。図2に示すように、意匠層2は、第2カバー層35の後面と、第1カバー層30の窓部31の内面とを、ともに覆っている。
【0036】
基材層4は意匠層2の後面を覆う。基材層4はAES樹脂からなる。AES樹脂の融点は、ポリカーボネート樹脂の融点よりも低い。基材層4は、意匠層2を挟んでカバー層3の後面全体を覆っている。基材層4のなかで窓部31の後面側に位置する部分は、環形の窓充填部41が突起形成されている。窓充填部41は、意匠層2を挟んで、窓部31に入り込んでいる。
【0037】
図1に示すように、実施例1の電波透過カバーは、上下方向の長さが左右方向の長さよりも長い矩形の板状をなす。基材層4もまた、上下方向の長さが左右方向の長さよりも長い矩形の板状をなす。
【0038】
図2および図3に示すように、第2カバー層35は、第1カバー層30に向けて陥没し左右方向に延びる溝部5を複数持つ。複数の溝部5は互いに隣接している。実施例1の電波透過カバーにおけるカバー側壁面50は、この溝部5の側壁面からなる。図3に示すように、各溝部5は前後方向かつ左右方向に延びる。前後方向は、第2カバー層350の後面と交差する方向であり、本発明における第1の方向に相当する。左右方向は、基材層4の前面の長手方向と交差する方向であり、本発明における第4の方向に相当する。したがって、各カバー側壁面50は、第1の方向と第4の方向とに延びる。実施例1の電波透過カバーにおいて、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離は、約0.5mmである。
【0039】
さらに、図2および図4に示すように、基材層4は、第2カバー層35に向けて突起する突部6を複数持つ。実施例1の電波透過カバーにおける基材側壁面60は、突部6の側壁面からなる。突部6は、それぞれ対応する溝部5と相補的な形状をなし、それぞれ対応する溝部5に入り込んでいる。このため、基材側壁面60は、カバー側壁面50と係合している。
【0040】
実施例1の電波透過カバーの製造方法を、以下に説明する。
【0041】
(中間体形成工程 1.カバー層成形工程)
第1カバー層30の前面を成形するための第1成形型(図略)と、第1カバー層30の後面を成形するための第2成形型(図略)と、第2カバー層35の後面を成形するための第3成形型(図略)とを準備した。そして、第1成形型の型面と第2成形型の型面との間にキャビティを形成した。このキャビティに、溶融したポリカーボネート樹脂を注入して、第1カバー層30を成形した。第1カバー層30を成形した後に、第2成形型を第3成形型に入れ替えた。そして、第1成形型の型面および第1成形型の内部に残存する第1カバー層30の後面と、第3成形型の型面と、の間にキャビティを形成した。このキャビティに、溶融したポリカーボネート樹脂とカーボンブラックとの溶融混合材料を注入して、第1カバー層30の後面に第2カバー層35を成形した。このカバー層成形工程で、第1カバー層30と第2カバー層35とが多色成形(実施例1では2色成形)されてなるカバー層3を得た。
【0042】
(中間体形成工程 2.意匠層形成工程)
カバー層成形工程で得られたカバー層3の前面と側面とをマスクして、カバー層3の後面にインジウムを蒸着し、意匠層2を形成した。この意匠層形成工程で、カバー層3と意匠層2とからなる電波透過カバーの中間体を得た。
【0043】
(基材層形成工程)
基材層4の後面を成形するための第4成形型(図略)を準備した。また、意匠層形成工程で得られた中間体(図略)を、上述した第1成形型に載置した。そして、第1成形型の型面および第1成形型に載置されている中間体の後面と、第4成形型の型面と、の間にキャビティを形成した。このキャビティに溶融したAES樹脂を注入して、意匠層2の後面に基材層4を成形した。以上の工程で、カバー層3と、意匠層2と、基材層4と、を持つ電波透過カバーを得た。
【0044】
図1に示すように、実施例1の電波透過カバーを前面側から見ると、窓部31の内部xには、意匠層2に由来する金属色が表示される。また、窓部31よりも内周側の部分yと外周側の部分zとには、第2カバー層35に由来する黒色が表示される。第2カバー層35は有色(黒色)であるため、第2カバー層35のカバー側壁面50と基材層4の基材側壁面60とは、電波透過カバーの前面側からは視認されない。このため、実施例1の電波透過カバーは意匠性に優れる。
【0045】
さらに、第2カバー層35の主材料を第1カバー層30の材料と同じ透明樹脂材料にし、かつ第1カバー層30と第2カバー層35とを多色成形したことで、第1カバー層30と第2カバー層35とが部分的に相溶する。このため、第1カバー層30と第2カバー層35とは強固に一体化する。
【0046】
また、第2カバー層35のカバー側壁面50と基材層4の基材側壁面60とが係合しているため、第2カバー層35と基材層4とは機械的に一体化する。さらに、カバー側壁面50および基材側壁面60はそれぞれ複数存在し、複数のカバー側壁面50は互いに隣接し、かつ、複数の基材側壁面60もまた互いに隣接している。このためカバー側壁面50と基材側壁面60の係合箇所は複数形成され、かつこの係合箇所は、互いに隣接する。このため、カバー層3と基材層4とは強固に一体化し、相対的に位置ズレし難い。さらに、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離および隣接する基材側壁面60同士の最短距離は非常に小さいため、カバー層3と基材層4との相対的な位置ズレを信頼性高く抑制できる。よって、実施例1の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との剥離を抑制できる。
【0047】
ところで、実施例1の電波透過カバーにおける基材層4の上下方向の長さは、左右方向の長さよりも長い。このため基材層4は、上下方向(長手方向)に大きく収縮する。したがって、第2カバー層35と基材層4とは、上下方向に大きく位置ズレし易い。しかし、実施例1の電波透過カバーにおけるカバー側壁面50は左右方向に延び、基材側壁面60もまた左右方向に延びる。このためカバー側壁面50と基材側壁面60とは上下方向に係合し、第2カバー層35と基材層4との上下方向の位置ズレを効果的に抑制する。よって、実施例1の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0048】
なお、実施例1の電波透過カバーは、内側第2カバー層350と外側第2カバー層351とを同じ混合材料で形成したが、両者を異なる混合材料で形成しても良い。例えば、内側第2カバー層350を、カーボンブラック以外の着色材とポリカーボネート樹脂とを含む混合材料で形成しても良い。この場合には、内側第2カバー層350を外側第2カバー層351とは異なる色にできる。
【0049】
(実施例2)
実施例2の電波透過カバーは、カバー側壁面および基材側壁面の形状以外は実施例1の電波透過カバーと同じである。実施例2の電波透過カバーは、上記(1)〜(2)および(4)を備える。実施例2の電波透過カバーの製造方法は、上記(5)を備える。実施例2の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図を図5〜6に示す。詳しくは、図5は中間体形成工程を説明する説明図である。図6は基材層形成工程を説明する説明図である。以下、実施例2において、上、下、左、右、前、後とは、図5および図6に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0050】
実施例2の電波透過カバーの製造方法を、以下に説明する。
【0051】
(中間体形成工程 1.カバー層成形工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法におけるカバー層形成工程と同様の工程で、カバー層3を形成した。図5に示すように、カバー層形成工程後の第2カバー層35は、複数の溝部5を持つ。各溝部5は、前後方向かつ左右方向に延びる。カバー側壁面50は、溝部5の側壁面からなる。隣接する溝部5同士の距離は、溝部5の巾(すなわち上下方向の長さ)よりも小さい。したがって、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離には、溝部5の巾に相当する距離(約2.0mm)と、隣接する溝部5同士の距離に相当する距離(約0.5mm)との2種がある。図5に示すように、各カバー側壁面50は、前後方向かつ左右方向に延びる。
【0052】
(中間体形成工程 2.意匠層形成工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法における意匠層形成工程と同様の工程で、カバー層の後面に図略の意匠層を形成した。
【0053】
(3.基材層形成工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法における基材層形成工程と同様の工程で、意匠層の後面に基材層4を形成した。このとき、第4成形型(図略)のゲート9からキャビティ(図略)に注入された溶融AES樹脂は、図6中矢印方向に流動し、隣接するカバー側壁面50同士の間隙に注入された。
【0054】
実施例2の電波透過カバーおよびその製造方法において、第2カバー層35の材料であるポリカーボネート樹脂の軟化温度は、基材層4の材料であるAES樹脂の融点よりも低い。このため、第2カバー層35の一部は、溶融AES樹脂に熱せられて軟化した。さらに、第2カバー層のなかで隣接する溝部5同士を区画する部分(区画壁部55と呼ぶ)は、溶融AES樹脂の流動圧によって溶融AES樹脂の流動方向(図6中下方向)に倒れ込む。したがって、溝部5の側壁面からなるカバー側壁面50もまた変形する。よって、基材層形成工程後の電波透過カバー(すなわち実施例2の電波透過カバー)では、カバー側壁面50の一部が、基材層4の肉厚方向(図6中前後方向)と交差する方向に延びる。よって、カバー側壁面50は、基材層4の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなし、基材側壁面60もまた基材層4の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなす。よって、実施例2の電波透過カバーでは、カバー側壁面50と基材側壁面60とは基材層4の肉厚方向に強固に係合する。よって、実施例2の電波透過カバーによるとカバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0055】
実施例2の電波透過カバーの製造方法では、基材用樹脂材料(すなわちAES樹脂)の流動圧によって、カバー側壁面50の少なくとも一部を変形させている。このため、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を形成する成形型に、スライドコア等の高価な構造を必要としない。よって、実施例2の電波透過カバーの製造方法によると、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を、容易かつ安価に形成できる。
【0056】
さらに、実施例2の電波透過カバーの製造方法では、透明樹脂材料(すなわち第2カバー層35の材料、ポリカーボネート樹脂)として、基材用樹脂材料(すなわちAES樹脂)の融点よりも軟化点の低いものを用いることで、第2カバー層35の一部を溶融AES樹脂の熱で軟化させた。このため、カバー側壁面50は、溶融AES樹脂の流動圧によって容易に変形した。したがって、実施例2の電波透過カバーの製造方法によると、カバー側壁面50を容易かつ信頼性高く変形させることができる。このため、実施例2の電波透過カバーの製造方法によると、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を持つ電波透過カバーを、容易かつ信頼性高く製造できる。
【0057】
(実施例3)
実施例3の電波透過カバーは、カバー側壁面および基材側壁面の形状以外は実施例1の電波透過カバーと同じである。実施例3の電波透過カバーは、上記(1)〜(4)を備える。実施例3の電波透過カバーの製造方法は、上記(5)を備える。実施例3の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図を図7〜8に示す。詳しくは、図7は中間体形成工程を説明する説明図である。図8は基材層形成工程を説明する説明図である。以下、実施例3において、上、下、左、右、前、後とは、図7および図8に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0058】
実施例3の電波透過カバーの製造方法を、以下に説明する。
【0059】
(中間体形成工程 1.カバー層成形工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法におけるカバー層形成工程と同様の工程で、カバー層3を形成した。図7に示すように、カバー層形成工程後の第2カバー層35は、複数の溝部5を持つ。各溝部5は、前後方向かつ左右方向に延びる。また、溝部5は、溝巾の長い部分(以下、長巾部500と呼ぶ)と、溝巾の短い部分(以下、短巾部501と呼ぶ)とが交互に連続してなる。このため、溝部5の側壁面からなるカバー側壁面50には、第1カバー側壁面51、第2カバー側壁面52、および第3カバー側壁面53の3種類が存在する。第1カバー側壁面51は、長巾部500の側壁からなり前後方向(第1の方向)と左右方向(第2の方向)とに延びる。第2カバー側壁面52は、短巾部501の側壁からなり前後方向(第1の方向)と左右方向(第2の方向)とに延びる。第3カバー側壁面53は、長巾部500と短巾部501との境界部分からなり前後方向(第1の方向)と上下方向(第3の方向)とに延びる。第1カバー側壁面51、第2カバー側壁面52、および第3カバー側壁面53は、それぞれ複数形成されている。隣接する第1カバー側壁面51同士の距離は、1.0mmであり、隣接する第2カバー側壁面52同士の距離は、0.5mmであり、隣接する第3カバー側壁面53同士の距離は、2.0mmであった。
【0060】
(中間体形成工程 2.意匠層形成工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法における意匠層形成工程と同様の工程で、カバー層の後面に図略の意匠層を形成した。
【0061】
(3.基材層形成工程)
実施例2の電波透過カバーの製造方法における基材層形成工程と同様の工程で、意匠層の後面に基材層4を形成した。このとき、第4成形型(図略)のゲート9からキャビティ(図略)に注入された溶融AES樹脂は、図8中矢印方向に流動し、隣接するカバー側壁面同士の間隙(隣接する第1カバー側壁面51同士の間隙、隣接する第2カバー側壁面52同士の間隙、および隣接する第3カバー側壁面53同士の間隙)に注入された。そして、第2カバー層35の一部は、溶融AES樹脂に熱せられて軟化し、第2カバー層のなかで隣接する溝部5同士を区画する部分(区画壁部55)は、溶融AES樹脂の流動圧によって溶融AES樹脂の流動方向(図8中下方向)に倒れ込んだ。よって、溝部5の側壁面からなるカバー側壁面(51〜53)もまた変形した。
【0062】
上述した中間体形成工程〜基材層形成工程で得られた実施例3の電波透過カバーは、実施例2の電波透過カバーと同様に、それぞれ対応するカバー側壁面と基材側壁面とが基材層4の肉厚方向に強固に係合する。このため、実施例3の電波透過カバーによると、実施例2の電波透過カバーと同様に、カバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0063】
さらに、実施例3の電波透過カバーでは、第1カバー側壁面51および第2カバー側壁面52が左右方向(第2の方向)に延び、第3カバー側壁面53が上下方向(第3の方向)に延びる。第1カバー側壁面51と相補的な形状をなす第1基材側壁面61は左右方向に延び、第2カバー側壁面52と相補的な形状をなす第2基材側壁面62もまた左右方向に延びる。第3カバー側壁面53と相補的な形状をなす第3基材側壁面63は上下方向に延びる。このため、第1カバー側壁面51と第1基材側壁面61とは上下方向に係合し、第2カバー側壁面52と第2基材側壁面62とは上下方向に係合し、第3カバー側壁面53と第3基材側壁面63とは左右方向に係合する。よって、実施例3の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との相対的な位置ズレを上下方向と左右方向との2方向で抑制できる。よって、実施例3の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0064】
実施例3の電波透過カバーの製造方法は、実施例2の電波透過カバーの製造方法と同様に、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を持つ電波透過カバーを、容易かつ安価に形成できる。
【0065】
なお、実施例1〜実施例3の電波透過カバーにおけるカバー側壁面(50〜53)は溝部5の側壁面からなるが、本発明の電波透過カバーにおけるカバー側壁面の形状はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、第2カバー層35に突起7を形成し、この突起7の外周面をカバー側壁面50としても良い。あるいは、図10に示すように、第2カバー層35に穴8を形成し、この穴8の内周面をカバー側壁面50としても良い。
【0066】
さらに、図11に示すように、本発明の電波透過カバーは、複数のカバー側壁面50からなるカバー側壁面群550を2以上持っても良い。この場合、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離とは、同じカバー側壁面群550a(または550b)に属し互いに隣接するカバー側壁面50同士の最短距離を指す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1の電波透過カバーを前側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図2】実施例1の電波透過カバーを図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。
【図3】実施例1の電波透過カバーにおけるカバー層を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図4】実施例1の電波透過カバーを模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図5】実施例2の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図6】実施例2の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図7】実施例3の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図8】実施例3の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図9】本発明の電波透過カバーにおける基材側壁面の他の例を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図10】本発明の電波透過カバーにおける基材側壁面の他の例を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図11】本発明の電波透過カバーにおける基材側壁面の他の例を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
2:意匠層 3:カバー層 4:基材層
30:第1カバー層 35:第2カバー層 50〜53:カバー側壁面
60〜63:基材側壁面
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電波レーダ装置の前側に配設される電波透過カバーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オートクルーズシステムは、車両前側に搭載されているセンサによって前方車両と自車との車間距離や相対速度を測定し、この情報を基にスロットルやブレーキを制御して自車を加減速し、車間距離をコントロールする技術である。このオートクルーズシステムは、近年、渋滞緩和や事故減少を目指す高度道路交通システム(ITS)の中核技術の一つとして注目されている。
【0003】
オートクルーズシステムに使用されるセンサとしては、一般に、レーザレーダやミリ波レーダが使用されている。例えばミリ波レーダは、30GHz〜300GHzの周波数を持ち1〜10mmの波長を持つミリ波を送信し、かつ、対象物にあたって反射したミリ波を受信することで、この送信波と受信波の差から前方車両と自車との車間距離や相対速度を測定する。
【0004】
車両用電波レーダ装置は、一般に、フロントグリルの後面側に配置される。フロントグリルは、肉厚が一定ではなく、金属製であるかまたは表面に金属メッキ層が形成されているため、電波の進路に干渉する。このため、フロントグリルのなかで車両用電波レーダ装置の前側に相当する部分に窓部を設け、この窓部に樹脂製の電波透過カバーを嵌め込む技術が提案されている。
【0005】
電波透過カバーには、一般に、種々の意匠を表示するための意匠層が設けられる。意匠層は金属蒸着やフィルム転写などによって形成される比較的薄肉の層である。このため、意匠層の前面と後面とは、それぞれ、補強用の樹脂層で覆う必要がある。
【0006】
意匠層の前面と後面とが補強用の樹脂層で覆われてなる電波透過カバーは、先ず補強用の樹脂層の一方を成形し、次いでその上層に蒸着や転写などの方法によって意匠層を形成し、さらに意匠層の上層に補強用の樹脂層の他方を成形して得られる。
【0007】
ところで、意匠性に優れた電波透過カバーを得るためには、先に成形する樹脂層の材料(以下、第1樹脂材料と呼ぶ)として、後に成形する樹脂層の材料(以下、第2樹脂材料と呼ぶ)よりも融点の高いものを用いる必要がある。すなわち、第1樹脂材料の融点が第2樹脂材料の融点よりも高ければ、先に成形した樹脂層は、溶融した第2樹脂材料に熱せられも溶融しない。このため、先に成形した樹脂層の上層に形成されている意匠層の変形を抑制でき、意匠性に優れた電波透過カバーを得ることができる。
【0008】
一方、第1樹脂材料の融点が第2樹脂材料の融点よりも高い場合には、2つの樹脂層の相溶性が低くなり、両者を強固に一体化し難い。このため従来は、2つの樹脂層を、互いに係合する形状に形成していた(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に紹介されている電波透過カバーでは、インジウムが蒸着されてなる意匠層の前面と後面とが、それぞれ、補強用の樹脂層で覆われている。詳しくは、意匠層の前面は透明樹脂材料からなる樹脂層(カバー層と呼ぶ)で覆われ、意匠層の後面は不透明樹脂材料からなる樹脂層(基材層と呼ぶ)で覆われている。カバー層と意匠層との間には、不透明樹脂材料からなる樹脂層(マスク層と呼ぶ)が介在している。詳しくは、マスク層は、カバー層の後面の一部を覆う。カバー層の周縁部は、アンダーカット形状の係合部を形成している。
【0010】
特許文献1に紹介されている電波透過カバーによると、カバー層の周縁部に形成されている係合部が、基材層の周縁部後面と係合する。このためカバー層は、基材層を機械的に固定できる。よって、カバー層と基材層とが互いに融点の異なる材料からなる場合にも、カバー層と基材層とを強固に一体化できると考えられる。なお、特許文献1に紹介されている電波透過カバーの意匠層は、カバー層のなかで後面がマスク層で覆われていない部分(以下、窓部と呼ぶ)を通して、電波透過カバーの前側(カバー層側)に表示される。このため、この電波透過カバーには、意匠層の意匠が、窓部の形状に応じた形状に表示される。
【0011】
しかし、カバー層の材料と基材層の材料として互いに異なる樹脂材料を選択する場合には、カバー層と基材層との収縮率の違いによって両者が相対的に位置ズレする場合がある。この場合には、特許文献1に紹介されている技術を用いてカバー層と基材層とを機械的に固定しても、電波透過カバーのなかで係合部から離れた領域においてはカバー層と基材層とが剥離する。カバー層と基材層とが剥離すると、両者の間に隙間(空気層)が形成され、電波透過カバーの電波透過性能が低下する。
【特許文献1】特開2000−159039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基材層の剥離を抑制できる電波透過カバーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の電波透過カバーは、車両用電波レーダ装置の前側に配設される電波透過カバーであって、意匠層と、意匠層の前面を覆う板状のカバー層と、意匠層の後面を覆う板状の基材層と、を持ち、カバー層は、透明樹脂材料からなる第1カバー層と、透明樹脂材料と着色材とを含む混合材料からなり第1カバー層の後面の一部を覆う第2カバー層と、が多色成形されてなり、第2カバー層は、互いに隣接し第2カバー層の後面と交差する方向に延びる複数のカバー側壁面を持ち、基材層は、透明樹脂材料とは融点の異なる樹脂材料からなり、カバー側壁面と相補的な形状をなす複数の基材側壁面を持ち、それぞれ対応するカバー側壁面と基材側壁面とは、互いに係合していることを特徴とする。
【0014】
本発明の電波透過カバーは、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを備えるのが好ましい。
(1)隣接する上記カバー側壁面同士の最短距離は、0.5mm以下である。
(2)複数の上記カバー側壁面の少なくとも一つは、その少なくとも一部が上記基材層の肉厚方向と交差する方向に延びる。
(3)上記カバー側壁面の少なくとも一つは、上記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、第1の方向と交差する第2の方向とに延び、上記カバー側壁面の他の少なくとも一つは、第1の方向と、第2の方向と交差する第3の方向とに延びる。
(4)上記基材層と上記第2カバー層との少なくとも一方は長短のある形状をなし、上記カバー側壁面の少なくとも一つは、上記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、上記基材層の長手方向と上記第2カバー層の長手方向との少なくとも一方と交差する第4の方向とに延びる。
【0015】
上記課題を解決する本発明の電波透過カバーの製造方法は、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを製造する方法であって、上記カバー層と上記意匠層とを持つ中間体を形成する中間体形成工程と、中間体の後面側に溶融した上記基材層用の樹脂材料を注入して上記基材層を形成する基材層形成工程と、を持ち、基材層形成工程において、上記基材層用の樹脂材料の流動圧によって、上記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させることを特徴とする。
【0016】
本発明の電波透過カバーの製造方法は、下記の(5)を備えるのが好ましい。
(5)上記透明樹脂材料の軟化温度は、上記基材層用の樹脂材料の溶融温度よりも低く、上記基材層形成工程において、上記第2カバー層の少なくとも一部を軟化させつつ上記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電波透過カバーにおけるカバー層は、第1カバー層と第2カバー層とを持つ。第1カバー層と第2カバー層とは、同じ透明樹脂材料を材料としてなるため、互いに相溶し、強固に一体化される。また、第2カバー層のカバー側壁面と基材層の基材側壁面とが互いに係合しているため、第2カバー層と基材層とは機械的に一体化する。カバー側壁面は複数存在し、複数のカバー側壁面は互いに隣接しているため、カバー側壁面と基材側壁面との係合箇所は、互いに隣接した複数箇所形成される。このため、カバー層と基材層とは強固に一体化する。よって、本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との相対的な位置ズレを抑制でき、カバー層と基材層との剥離を抑制できる。
【0018】
上記(1)を備える本発明の電波透過カバーでは、隣接するカバー側壁面同士の最短距離が小さい。このためカバー側壁面と基材側壁面との係合箇所は、互いに近接した複数箇所形成される。したがって、カバー層と基材層とはさらに強固に一体化する。よって、上記(1)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との相対的な位置ズレをより一層抑制できる。
【0019】
上記(2)を備える本発明の電波透過カバーでは、少なくとも一つのカバー側壁面の少なくとも一部が基材層の肉厚方向と交差する方向に延びる。このため少なくとも一つのカバー側壁面は、基材層の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなす。したがって、カバー側壁面と相補的な形状をなす基材側壁面もまた基材層の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなす。このため、カバー側壁面と基材側壁面とは基材層の肉厚方向に強固に係合する。よって、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との剥離をより一層抑制できる。
【0020】
上記(3)を備える本発明の電波透過カバーでは、少なくとも一つのカバー側壁面が、他の少なくとも一つのカバー側壁面と交差する方向に延びるため、一部のカバー側壁面と基材側壁面とが係合する方向と、他の一部のカバー側壁面と基材側壁面とが係合する方向とを、異なる2以上の方向にできる。このため、カバー層と基材層との相対的な位置ズレを2以上の方向で抑制できる。よって、上記(3)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー層と基材層との剥離をより一層抑制できる。
【0021】
ところで、基材層が長短のある形状をなす場合(例えば、基材層が楕円の板状や矩形の板状をなす場合など)には、長手方向における基材層の収縮長さは、他の方向における基材層の収縮長さよりも大きくなる。第2カバー層に関しても同様である。このため、第2カバー層と基材層とは、基材層の長手方向と第2カバー層の長手方向との少なくとも一方に大きく位置ズレする。上記(4)を備える本発明の電波透過カバーによると、カバー側壁面を、第2カバー層の長手方向と基材層の長手方向との少なくとも一方と交差する方向に延びる形状にしたことで、収縮長さが大きい方向における第2カバー層と基材層との相対的な位置ズレを、効果的に抑制できる。よって、上記(4)を備える本発明の電波透過カバーは、カバー層と基材層との剥離をより一層抑制できる。
【0022】
また、本発明の電波透過カバーの製造方法(すなわち、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを製造する方法)によると、基材層用の樹脂材料の流動圧によって、カバー側壁面の少なくとも一部を変形させるため、基材層の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなすカバー側壁面を、容易かつ安価に形成できる。よって、本発明の電波透過カバーの製造方法によると、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを容易かつ安価に製造できる。
【0023】
上記(5)を備える本発明の電波透過カバーの製造方法によると、基材層形成工程において第2カバー層の少なくとも一部を軟化させることで、カバー側壁面を容易かつ信頼性高く変形させ得る。よって、上記(5)を備える本発明の電波透過カバーの製造方法によると、上記(2)を備える本発明の電波透過カバーを容易かつ信頼性高く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
第1カバー層は、本発明の電波透過カバーのなかで最前面に配される。このため第1カバー層を構成する透明樹脂材料としては、耐候性の高いものを選択するのが好ましい。耐候性の高い透明樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。
【0025】
第2カバー層は、第1カバー層の材料として用いたものと同じ透明樹脂材料と、着色材と、の混合材料からなる。着色材は、電波透過カバーの意匠に応じて適宜選択できる。例えばカーボンブラック等の黒色着色材を用いても良いし、その他の着色材を用いても良い。着色材は一種のみであっても良いし、多種を混合して用いても良い。
【0026】
本発明の電波透過カバーにおいて、基材層は、第1カバー層および第2カバー層の材料として用いた透明樹脂材料とは融点の異なる樹脂材料(以下、基材用樹脂材料と呼ぶ)からなる。例えば、カバー層の後に基材層を成形する場合には、基材用樹脂材料として透明樹脂材料よりも融点の低いものを用いればよい。また、基材層の後にカバー層を成形する場合には、基材層用樹脂材料として、透明樹脂材料よりも融点の高いものを用いればよい。なお、透明樹脂材料としてポリカーボネート樹脂を用いる場合には、基材層用樹脂材料としてAES樹脂を用いるのが好ましい。AES樹脂はポリカーボネート樹脂と誘電率がほぼ等しいため、電波が均一に透過するためである。
【0027】
本発明の電波透過カバーにおいて、意匠層は、カバー層に形成しても良いし、基材層に形成しても良い。例えば、カバー層を基材層よりも先に成形する場合には、カバー層の後面に意匠層を形成すればよい。また、基材層をカバー層よりも先に成形する場合には、基材層の前面に意匠層を形成すればよい。意匠層は、インジウム等の金属材料をカバー層または基材層に蒸着して形成しても良いし、スクリーン印刷等の方法でカバー層または基材層に形成してもよい。さらに、転写フィルムに印刷形成された所定の意匠を、カバー層または基材層に転写して意匠層を形成してもよい。フィルム上に所定の意匠を蒸着や印刷して形成してなる意匠層を、カバー層または基材層に積層してもよい。意匠層の材料は1種のみであっても良いし、多種であっても良い。また、意匠層は1層からなっても良いし、多層からなっても良い。例えば、第1の意匠を印刷形成した樹脂フィルム上に、第2の意匠を蒸着形成した小片状フィルムを接着したものを意匠層として用いても良い。さらに、意匠層の上層にアクリル系塗料等からなる保護層を形成しても良い。
【0028】
本発明の電波透過カバーにおいて、隣接するカバー側壁面同士の最短距離は15mm以下であるのが好ましい。隣接するカバー側壁面同士の最短距離が15mm以下であれば、カバー側壁面と基材側壁面との係合箇所を互いに近接させることができ、カバー層と基材層とを強固に一体化させ得る。隣接するカバー側壁面同士の最短距離は、7.5mm以下であるのがより好ましく、0.2mm〜2mmであるのがさらに好ましい。
【0029】
本発明の電波透過カバーの製造方法では、先ずカバー層を形成し、次いで基材層を形成する。したがって、意匠層はカバー層の後面に形成する。また、基材用樹脂材料としては、透明樹脂材料よりも融点の低いものを用いる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の電波透過カバーを図面を基に説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1の電波透過カバーは、車両のフロントグリルに設けられている開口に嵌め込まれる。実施例1の電波透過カバーの後側には、車両用ミリ波レーダ装置が配設される。実施例1の電波透過カバーは、上記(1)および(4)を備える。実施例1の電波透過カバーを前側から見た様子を模式的に表す正面図を図1に示す。実施例1の電波透過カバーを図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図2に示す。実施例1の電波透過カバーにおけるカバー層を模式的に表す要部拡大斜視図を図3に示す。実施例1の電波透過カバーを模式的に表す要部拡大斜視図を図4に示す。以下、実施例1において、上、下、左、右、前、後とは、図1〜図4に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0032】
実施例1の電波透過カバーは、図2に示すように、意匠層2と、カバー層3と、基材層4とを持つ。
【0033】
カバー層3は意匠層2の前面を覆う。カバー層3は、第1カバー層30と第2カバー層35とが多色成形されてなる。第1カバー層30は、透明樹脂材料の一種であるポリカーボネート樹脂からなり、透明である。第1カバー層30の後面側は、環形に陥没形成されている。この環形に陥没している部分の内部を窓部31と呼ぶ。
【0034】
第2カバー層35は、ポリカーボネート樹脂とカーボンブラックとの混合材料からなり、黒色である。第2カバー層35は、第1カバー層30の後面のなかで、窓部31よりも内周側の部分と、窓部31よりも外周側の部分とに形成されている。すなわち、第2カバー層35は、第1カバー層30の後面のなかで窓部31以外の部分を覆う。第2カバー層35のなかで、第1カバー層30の窓部31よりも内周側の後面を覆う部分を、内側第2カバー層350と呼ぶ。第2カバー層35のなかで、第1カバー層30の窓部31よりも外周側の後面を覆う部分を、外側第2カバー層351と呼ぶ。
【0035】
意匠層2は、カバー層3の後面にインジウムが蒸着されてなる。図2に示すように、意匠層2は、第2カバー層35の後面と、第1カバー層30の窓部31の内面とを、ともに覆っている。
【0036】
基材層4は意匠層2の後面を覆う。基材層4はAES樹脂からなる。AES樹脂の融点は、ポリカーボネート樹脂の融点よりも低い。基材層4は、意匠層2を挟んでカバー層3の後面全体を覆っている。基材層4のなかで窓部31の後面側に位置する部分は、環形の窓充填部41が突起形成されている。窓充填部41は、意匠層2を挟んで、窓部31に入り込んでいる。
【0037】
図1に示すように、実施例1の電波透過カバーは、上下方向の長さが左右方向の長さよりも長い矩形の板状をなす。基材層4もまた、上下方向の長さが左右方向の長さよりも長い矩形の板状をなす。
【0038】
図2および図3に示すように、第2カバー層35は、第1カバー層30に向けて陥没し左右方向に延びる溝部5を複数持つ。複数の溝部5は互いに隣接している。実施例1の電波透過カバーにおけるカバー側壁面50は、この溝部5の側壁面からなる。図3に示すように、各溝部5は前後方向かつ左右方向に延びる。前後方向は、第2カバー層350の後面と交差する方向であり、本発明における第1の方向に相当する。左右方向は、基材層4の前面の長手方向と交差する方向であり、本発明における第4の方向に相当する。したがって、各カバー側壁面50は、第1の方向と第4の方向とに延びる。実施例1の電波透過カバーにおいて、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離は、約0.5mmである。
【0039】
さらに、図2および図4に示すように、基材層4は、第2カバー層35に向けて突起する突部6を複数持つ。実施例1の電波透過カバーにおける基材側壁面60は、突部6の側壁面からなる。突部6は、それぞれ対応する溝部5と相補的な形状をなし、それぞれ対応する溝部5に入り込んでいる。このため、基材側壁面60は、カバー側壁面50と係合している。
【0040】
実施例1の電波透過カバーの製造方法を、以下に説明する。
【0041】
(中間体形成工程 1.カバー層成形工程)
第1カバー層30の前面を成形するための第1成形型(図略)と、第1カバー層30の後面を成形するための第2成形型(図略)と、第2カバー層35の後面を成形するための第3成形型(図略)とを準備した。そして、第1成形型の型面と第2成形型の型面との間にキャビティを形成した。このキャビティに、溶融したポリカーボネート樹脂を注入して、第1カバー層30を成形した。第1カバー層30を成形した後に、第2成形型を第3成形型に入れ替えた。そして、第1成形型の型面および第1成形型の内部に残存する第1カバー層30の後面と、第3成形型の型面と、の間にキャビティを形成した。このキャビティに、溶融したポリカーボネート樹脂とカーボンブラックとの溶融混合材料を注入して、第1カバー層30の後面に第2カバー層35を成形した。このカバー層成形工程で、第1カバー層30と第2カバー層35とが多色成形(実施例1では2色成形)されてなるカバー層3を得た。
【0042】
(中間体形成工程 2.意匠層形成工程)
カバー層成形工程で得られたカバー層3の前面と側面とをマスクして、カバー層3の後面にインジウムを蒸着し、意匠層2を形成した。この意匠層形成工程で、カバー層3と意匠層2とからなる電波透過カバーの中間体を得た。
【0043】
(基材層形成工程)
基材層4の後面を成形するための第4成形型(図略)を準備した。また、意匠層形成工程で得られた中間体(図略)を、上述した第1成形型に載置した。そして、第1成形型の型面および第1成形型に載置されている中間体の後面と、第4成形型の型面と、の間にキャビティを形成した。このキャビティに溶融したAES樹脂を注入して、意匠層2の後面に基材層4を成形した。以上の工程で、カバー層3と、意匠層2と、基材層4と、を持つ電波透過カバーを得た。
【0044】
図1に示すように、実施例1の電波透過カバーを前面側から見ると、窓部31の内部xには、意匠層2に由来する金属色が表示される。また、窓部31よりも内周側の部分yと外周側の部分zとには、第2カバー層35に由来する黒色が表示される。第2カバー層35は有色(黒色)であるため、第2カバー層35のカバー側壁面50と基材層4の基材側壁面60とは、電波透過カバーの前面側からは視認されない。このため、実施例1の電波透過カバーは意匠性に優れる。
【0045】
さらに、第2カバー層35の主材料を第1カバー層30の材料と同じ透明樹脂材料にし、かつ第1カバー層30と第2カバー層35とを多色成形したことで、第1カバー層30と第2カバー層35とが部分的に相溶する。このため、第1カバー層30と第2カバー層35とは強固に一体化する。
【0046】
また、第2カバー層35のカバー側壁面50と基材層4の基材側壁面60とが係合しているため、第2カバー層35と基材層4とは機械的に一体化する。さらに、カバー側壁面50および基材側壁面60はそれぞれ複数存在し、複数のカバー側壁面50は互いに隣接し、かつ、複数の基材側壁面60もまた互いに隣接している。このためカバー側壁面50と基材側壁面60の係合箇所は複数形成され、かつこの係合箇所は、互いに隣接する。このため、カバー層3と基材層4とは強固に一体化し、相対的に位置ズレし難い。さらに、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離および隣接する基材側壁面60同士の最短距離は非常に小さいため、カバー層3と基材層4との相対的な位置ズレを信頼性高く抑制できる。よって、実施例1の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との剥離を抑制できる。
【0047】
ところで、実施例1の電波透過カバーにおける基材層4の上下方向の長さは、左右方向の長さよりも長い。このため基材層4は、上下方向(長手方向)に大きく収縮する。したがって、第2カバー層35と基材層4とは、上下方向に大きく位置ズレし易い。しかし、実施例1の電波透過カバーにおけるカバー側壁面50は左右方向に延び、基材側壁面60もまた左右方向に延びる。このためカバー側壁面50と基材側壁面60とは上下方向に係合し、第2カバー層35と基材層4との上下方向の位置ズレを効果的に抑制する。よって、実施例1の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0048】
なお、実施例1の電波透過カバーは、内側第2カバー層350と外側第2カバー層351とを同じ混合材料で形成したが、両者を異なる混合材料で形成しても良い。例えば、内側第2カバー層350を、カーボンブラック以外の着色材とポリカーボネート樹脂とを含む混合材料で形成しても良い。この場合には、内側第2カバー層350を外側第2カバー層351とは異なる色にできる。
【0049】
(実施例2)
実施例2の電波透過カバーは、カバー側壁面および基材側壁面の形状以外は実施例1の電波透過カバーと同じである。実施例2の電波透過カバーは、上記(1)〜(2)および(4)を備える。実施例2の電波透過カバーの製造方法は、上記(5)を備える。実施例2の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図を図5〜6に示す。詳しくは、図5は中間体形成工程を説明する説明図である。図6は基材層形成工程を説明する説明図である。以下、実施例2において、上、下、左、右、前、後とは、図5および図6に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0050】
実施例2の電波透過カバーの製造方法を、以下に説明する。
【0051】
(中間体形成工程 1.カバー層成形工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法におけるカバー層形成工程と同様の工程で、カバー層3を形成した。図5に示すように、カバー層形成工程後の第2カバー層35は、複数の溝部5を持つ。各溝部5は、前後方向かつ左右方向に延びる。カバー側壁面50は、溝部5の側壁面からなる。隣接する溝部5同士の距離は、溝部5の巾(すなわち上下方向の長さ)よりも小さい。したがって、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離には、溝部5の巾に相当する距離(約2.0mm)と、隣接する溝部5同士の距離に相当する距離(約0.5mm)との2種がある。図5に示すように、各カバー側壁面50は、前後方向かつ左右方向に延びる。
【0052】
(中間体形成工程 2.意匠層形成工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法における意匠層形成工程と同様の工程で、カバー層の後面に図略の意匠層を形成した。
【0053】
(3.基材層形成工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法における基材層形成工程と同様の工程で、意匠層の後面に基材層4を形成した。このとき、第4成形型(図略)のゲート9からキャビティ(図略)に注入された溶融AES樹脂は、図6中矢印方向に流動し、隣接するカバー側壁面50同士の間隙に注入された。
【0054】
実施例2の電波透過カバーおよびその製造方法において、第2カバー層35の材料であるポリカーボネート樹脂の軟化温度は、基材層4の材料であるAES樹脂の融点よりも低い。このため、第2カバー層35の一部は、溶融AES樹脂に熱せられて軟化した。さらに、第2カバー層のなかで隣接する溝部5同士を区画する部分(区画壁部55と呼ぶ)は、溶融AES樹脂の流動圧によって溶融AES樹脂の流動方向(図6中下方向)に倒れ込む。したがって、溝部5の側壁面からなるカバー側壁面50もまた変形する。よって、基材層形成工程後の電波透過カバー(すなわち実施例2の電波透過カバー)では、カバー側壁面50の一部が、基材層4の肉厚方向(図6中前後方向)と交差する方向に延びる。よって、カバー側壁面50は、基材層4の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなし、基材側壁面60もまた基材層4の肉厚方向に対してアンダーカット形状をなす。よって、実施例2の電波透過カバーでは、カバー側壁面50と基材側壁面60とは基材層4の肉厚方向に強固に係合する。よって、実施例2の電波透過カバーによるとカバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0055】
実施例2の電波透過カバーの製造方法では、基材用樹脂材料(すなわちAES樹脂)の流動圧によって、カバー側壁面50の少なくとも一部を変形させている。このため、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を形成する成形型に、スライドコア等の高価な構造を必要としない。よって、実施例2の電波透過カバーの製造方法によると、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を、容易かつ安価に形成できる。
【0056】
さらに、実施例2の電波透過カバーの製造方法では、透明樹脂材料(すなわち第2カバー層35の材料、ポリカーボネート樹脂)として、基材用樹脂材料(すなわちAES樹脂)の融点よりも軟化点の低いものを用いることで、第2カバー層35の一部を溶融AES樹脂の熱で軟化させた。このため、カバー側壁面50は、溶融AES樹脂の流動圧によって容易に変形した。したがって、実施例2の電波透過カバーの製造方法によると、カバー側壁面50を容易かつ信頼性高く変形させることができる。このため、実施例2の電波透過カバーの製造方法によると、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を持つ電波透過カバーを、容易かつ信頼性高く製造できる。
【0057】
(実施例3)
実施例3の電波透過カバーは、カバー側壁面および基材側壁面の形状以外は実施例1の電波透過カバーと同じである。実施例3の電波透過カバーは、上記(1)〜(4)を備える。実施例3の電波透過カバーの製造方法は、上記(5)を備える。実施例3の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図を図7〜8に示す。詳しくは、図7は中間体形成工程を説明する説明図である。図8は基材層形成工程を説明する説明図である。以下、実施例3において、上、下、左、右、前、後とは、図7および図8に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0058】
実施例3の電波透過カバーの製造方法を、以下に説明する。
【0059】
(中間体形成工程 1.カバー層成形工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法におけるカバー層形成工程と同様の工程で、カバー層3を形成した。図7に示すように、カバー層形成工程後の第2カバー層35は、複数の溝部5を持つ。各溝部5は、前後方向かつ左右方向に延びる。また、溝部5は、溝巾の長い部分(以下、長巾部500と呼ぶ)と、溝巾の短い部分(以下、短巾部501と呼ぶ)とが交互に連続してなる。このため、溝部5の側壁面からなるカバー側壁面50には、第1カバー側壁面51、第2カバー側壁面52、および第3カバー側壁面53の3種類が存在する。第1カバー側壁面51は、長巾部500の側壁からなり前後方向(第1の方向)と左右方向(第2の方向)とに延びる。第2カバー側壁面52は、短巾部501の側壁からなり前後方向(第1の方向)と左右方向(第2の方向)とに延びる。第3カバー側壁面53は、長巾部500と短巾部501との境界部分からなり前後方向(第1の方向)と上下方向(第3の方向)とに延びる。第1カバー側壁面51、第2カバー側壁面52、および第3カバー側壁面53は、それぞれ複数形成されている。隣接する第1カバー側壁面51同士の距離は、1.0mmであり、隣接する第2カバー側壁面52同士の距離は、0.5mmであり、隣接する第3カバー側壁面53同士の距離は、2.0mmであった。
【0060】
(中間体形成工程 2.意匠層形成工程)
実施例1の電波透過カバーの製造方法における意匠層形成工程と同様の工程で、カバー層の後面に図略の意匠層を形成した。
【0061】
(3.基材層形成工程)
実施例2の電波透過カバーの製造方法における基材層形成工程と同様の工程で、意匠層の後面に基材層4を形成した。このとき、第4成形型(図略)のゲート9からキャビティ(図略)に注入された溶融AES樹脂は、図8中矢印方向に流動し、隣接するカバー側壁面同士の間隙(隣接する第1カバー側壁面51同士の間隙、隣接する第2カバー側壁面52同士の間隙、および隣接する第3カバー側壁面53同士の間隙)に注入された。そして、第2カバー層35の一部は、溶融AES樹脂に熱せられて軟化し、第2カバー層のなかで隣接する溝部5同士を区画する部分(区画壁部55)は、溶融AES樹脂の流動圧によって溶融AES樹脂の流動方向(図8中下方向)に倒れ込んだ。よって、溝部5の側壁面からなるカバー側壁面(51〜53)もまた変形した。
【0062】
上述した中間体形成工程〜基材層形成工程で得られた実施例3の電波透過カバーは、実施例2の電波透過カバーと同様に、それぞれ対応するカバー側壁面と基材側壁面とが基材層4の肉厚方向に強固に係合する。このため、実施例3の電波透過カバーによると、実施例2の電波透過カバーと同様に、カバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0063】
さらに、実施例3の電波透過カバーでは、第1カバー側壁面51および第2カバー側壁面52が左右方向(第2の方向)に延び、第3カバー側壁面53が上下方向(第3の方向)に延びる。第1カバー側壁面51と相補的な形状をなす第1基材側壁面61は左右方向に延び、第2カバー側壁面52と相補的な形状をなす第2基材側壁面62もまた左右方向に延びる。第3カバー側壁面53と相補的な形状をなす第3基材側壁面63は上下方向に延びる。このため、第1カバー側壁面51と第1基材側壁面61とは上下方向に係合し、第2カバー側壁面52と第2基材側壁面62とは上下方向に係合し、第3カバー側壁面53と第3基材側壁面63とは左右方向に係合する。よって、実施例3の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との相対的な位置ズレを上下方向と左右方向との2方向で抑制できる。よって、実施例3の電波透過カバーによると、カバー層3と基材層4との剥離をより一層抑制できる。
【0064】
実施例3の電波透過カバーの製造方法は、実施例2の電波透過カバーの製造方法と同様に、アンダーカット形状をなすカバー側壁面50を持つ電波透過カバーを、容易かつ安価に形成できる。
【0065】
なお、実施例1〜実施例3の電波透過カバーにおけるカバー側壁面(50〜53)は溝部5の側壁面からなるが、本発明の電波透過カバーにおけるカバー側壁面の形状はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、第2カバー層35に突起7を形成し、この突起7の外周面をカバー側壁面50としても良い。あるいは、図10に示すように、第2カバー層35に穴8を形成し、この穴8の内周面をカバー側壁面50としても良い。
【0066】
さらに、図11に示すように、本発明の電波透過カバーは、複数のカバー側壁面50からなるカバー側壁面群550を2以上持っても良い。この場合、隣接するカバー側壁面50同士の最短距離とは、同じカバー側壁面群550a(または550b)に属し互いに隣接するカバー側壁面50同士の最短距離を指す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1の電波透過カバーを前側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図2】実施例1の電波透過カバーを図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。
【図3】実施例1の電波透過カバーにおけるカバー層を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図4】実施例1の電波透過カバーを模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図5】実施例2の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図6】実施例2の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図7】実施例3の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図8】実施例3の電波透過カバーを製造している様子を説明する説明図である。
【図9】本発明の電波透過カバーにおける基材側壁面の他の例を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図10】本発明の電波透過カバーにおける基材側壁面の他の例を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図11】本発明の電波透過カバーにおける基材側壁面の他の例を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
2:意匠層 3:カバー層 4:基材層
30:第1カバー層 35:第2カバー層 50〜53:カバー側壁面
60〜63:基材側壁面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電波レーダ装置の前側に配設される電波透過カバーであって、
意匠層と、該意匠層の前面を覆う板状のカバー層と、該意匠層の後面を覆う板状の基材層と、を持ち、
該カバー層は、透明樹脂材料からなる第1カバー層と、該透明樹脂材料と着色材とを含む混合材料からなり該第1カバー層の後面の一部を覆う第2カバー層と、が多色成形されてなり、
該第2カバー層は、互いに隣接し該第2カバー層の後面と交差する方向に延びる複数のカバー側壁面を持ち、
該基材層は、該透明樹脂材料とは融点の異なる樹脂材料からなり、該カバー側壁面と相補的な形状をなす複数の基材側壁面を持ち、
それぞれ対応する該カバー側壁面と該基材側壁面とは、互いに係合していることを特徴とする電波透過カバー。
【請求項2】
隣接する前記カバー側壁面同士の最短距離は、0.5mm以下である請求項1に記載の電波透過カバー。
【請求項3】
複数の前記カバー側壁面の少なくとも一つは、その少なくとも一部が前記基材層の肉厚方向と交差する方向に延びる請求項1または請求項2に記載の電波透過カバー。
【請求項4】
前記カバー側壁面の少なくとも一つは、前記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、該第1の方向と交差する第2の方向とに延び、
前記カバー側壁面の他の少なくとも一つは、該第1の方向と、該第2の方向と交差する第3の方向とに延びる請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の電波透過カバー。
【請求項5】
前記基材層と前記第2カバー層との少なくとも一方は長短のある形状をなし、
前記カバー側壁面の少なくとも一つは、前記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、前記基材層の長手方向と前記第2カバー層の長手方向との少なくとも一方と交差する第4の方向とに延びる請求項1〜請求項4の何れか一つに記載の電波透過カバー。
【請求項6】
請求項3に記載の電波透過カバーを製造する方法であって、
前記カバー層と前記意匠層とを持つ中間体を形成する中間体形成工程と、
該中間体の後面側に溶融した前記基材層用の樹脂材料を注入して前記基材層を形成する基材層形成工程と、を持ち、
該基材層形成工程において、前記基材層用の樹脂材料の流動圧によって、前記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させることを特徴とする電波透過カバーの製造方法。
【請求項7】
前記透明樹脂材料の軟化温度は、前記基材層用の樹脂材料の溶融温度よりも低く、
前記基材層形成工程において、前記第2カバー層の少なくとも一部を軟化させつつ前記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させる請求項6に記載の電波透過カバーの製造方法。
【請求項1】
車両用電波レーダ装置の前側に配設される電波透過カバーであって、
意匠層と、該意匠層の前面を覆う板状のカバー層と、該意匠層の後面を覆う板状の基材層と、を持ち、
該カバー層は、透明樹脂材料からなる第1カバー層と、該透明樹脂材料と着色材とを含む混合材料からなり該第1カバー層の後面の一部を覆う第2カバー層と、が多色成形されてなり、
該第2カバー層は、互いに隣接し該第2カバー層の後面と交差する方向に延びる複数のカバー側壁面を持ち、
該基材層は、該透明樹脂材料とは融点の異なる樹脂材料からなり、該カバー側壁面と相補的な形状をなす複数の基材側壁面を持ち、
それぞれ対応する該カバー側壁面と該基材側壁面とは、互いに係合していることを特徴とする電波透過カバー。
【請求項2】
隣接する前記カバー側壁面同士の最短距離は、0.5mm以下である請求項1に記載の電波透過カバー。
【請求項3】
複数の前記カバー側壁面の少なくとも一つは、その少なくとも一部が前記基材層の肉厚方向と交差する方向に延びる請求項1または請求項2に記載の電波透過カバー。
【請求項4】
前記カバー側壁面の少なくとも一つは、前記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、該第1の方向と交差する第2の方向とに延び、
前記カバー側壁面の他の少なくとも一つは、該第1の方向と、該第2の方向と交差する第3の方向とに延びる請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の電波透過カバー。
【請求項5】
前記基材層と前記第2カバー層との少なくとも一方は長短のある形状をなし、
前記カバー側壁面の少なくとも一つは、前記第2カバー層の後面と交差する第1の方向と、前記基材層の長手方向と前記第2カバー層の長手方向との少なくとも一方と交差する第4の方向とに延びる請求項1〜請求項4の何れか一つに記載の電波透過カバー。
【請求項6】
請求項3に記載の電波透過カバーを製造する方法であって、
前記カバー層と前記意匠層とを持つ中間体を形成する中間体形成工程と、
該中間体の後面側に溶融した前記基材層用の樹脂材料を注入して前記基材層を形成する基材層形成工程と、を持ち、
該基材層形成工程において、前記基材層用の樹脂材料の流動圧によって、前記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させることを特徴とする電波透過カバーの製造方法。
【請求項7】
前記透明樹脂材料の軟化温度は、前記基材層用の樹脂材料の溶融温度よりも低く、
前記基材層形成工程において、前記第2カバー層の少なくとも一部を軟化させつつ前記カバー側壁面の少なくとも一つを変形させる請求項6に記載の電波透過カバーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−88579(P2009−88579A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251504(P2007−251504)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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