説明

電流検出用半導体装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半田付けによって回路接合されたチップ抵抗体を含む電流検出用半導体装置に関し、特にチップ抵抗体の半田付け接続抵抗値の変化(ドリフト)に対する影響を無くして高精度化を実現した電流検出用半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は従来の電流検出用半導体装置を示す平面図であり、図において、1はトランジスタ等のパワー素子(図示せず)が接続されたリードフレーム、2はリードフレーム1上に半田付けにより接合された半導体素子即ち制御ICである。3は両端の電極部3a及び3bを介してリードフレーム1間に半田付けされたチップ抵抗体であり、制御IC2と協動して電流検出用抵抗体として機能する。4はリードフレーム1と制御IC2とを電気的に接続する金線のワイヤである。
【0003】図5は図4の電流検出用半導体装置の具体的構成例を示す回路図であり、Rはチップ抵抗体3の抵抗値である。5はパワー素子として機能するトランジスタであり、エミッタがチップ抵抗体3の一端に接続され、ベースが制御IC2に接続されている。6はトランジスタ5のコレクタに接続された電流検出用の高電位側入力端子、7はチップ抵抗体3の他端に接続された電流検出用の低電位側入力端子、8はトランジスタ5のベースに接続された制御端子である。
【0004】次に、図4を参照しながら、図5に示した従来の電流検出用半導体装置の動作について説明する。まず、リードフレーム1上に制御IC2及びチップ抵抗体3を半田付けにより接合し、続いて、リードフレーム1と制御IC2とをワイヤ4でボンディグし、制御IC2とチップ抵抗体3とを電気的に接続する。
【0005】このように一体成型により組立てられた電流検出用半導体装置において、制御端子8又は制御IC2から制御信号を印加してトランジスタ5をオンさせると、検出対象となる電流は、高電位側入力端子6からトランジスタ5及びチップ抵抗体3を介して、低電位側入力端子7に流れる。従って、制御IC2は、チップ抵抗体3の両端間の電圧値に基づいて、入力端子6から供給された電流を検出することができる。
【0006】ところで、電流検出用のチップ抵抗体3の抵抗値Rは、通常30mΩ程度の低い値に設定されているが、半田疲労や各部品間の応力疲労等により、リードフレーム1との間の接触抵抗値が変化することがある。又、例えば検出電流の許容差が±5%の電流検出用半導体装置の場合、30mΩの抵抗値Rに対する許容変化量(ドリフト量)は1.5mΩ以下となる。
【0007】従って、上記のような半田付けによるチップ抵抗体3の接合構造においては、ワイヤ4が半田付け部分を介して制御IC2及びチップ抵抗体3を接続しているので、チップ抵抗体3を用いた電流検出は、正規の抵抗値Rと半田付け部分の接触抵抗値のドリフト量とを含めた抵抗値に基づいて行われることになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の電流検出用半導体装置は以上のように、チップ抵抗体3をリードフレーム1に半田付けにより接続しているのみなので、半田付け接続抵抗値のドリフト量の影響を顕著に受け、製品としての初期の歩留りが悪いうえ、長期間の使用に対して電流検出レベルが変動して満足した特性が得られず、高精度化を実現することができないという問題点があった。
【0009】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、チップ抵抗体の半田付け接続部の抵抗値が変化しても検出精度を損なうことのない高精度の電流検出用半導体装置を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係る電流検出用半導体装置は、制御ICとチップ抵抗体の電極部とをワイヤボンディングにより接続したものである。
【0011】又、この発明の請求項2に係る電流検出用半導体装置は、チップ抵抗体を、第1及び第2の電極部間に形成された中間電極部と、第1及び第2の電極部間に形成された第1のチップ抵抗体と、第1の電極部と中間電極部に形成された第2のチップ抵抗体、及び、中間電極部と第2の電極部との間に形成された第3のチップ抵抗体からなる並列抵抗体とにより構成し、制御ICと中間電極部及び第3の電極部とをワイヤボンディングにより接続したものである。
【0012】
【作用】この発明の請求項1においては、チップ抵抗体と制御ICとの回路接合を半田付け及びワイヤボンディングの併用で行い、チップ抵抗体とリードフレームとの半田付け接触抵抗値のドリフト量の影響を軽減することにより、高精度に且つ安定にチップ抵抗体を形成する。
【0013】又、この発明の請求項2においては、第2及び第3のチップ抵抗体からなる並列抵抗体を並設することにより、第1のチップ抵抗体の抵抗値を大きく設定できるようにし、半田付け接触抵抗値のドリフト量の影響を更に軽減する。
【0014】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の実施例1を図について説明する。図1はこの発明の実施例1を示す平面図であり、1〜4は前述と同様のものである。この場合、制御IC2とチップ抵抗体3とを接続するワイヤ4は、チップ抵抗体3の電極部3a及び3b上に直接ボンディングされている。
【0015】図1に示したこの発明の実施例1の動作については、前述と同様なのでここでは説明しない。しかし、制御IC2とチップ抵抗体3との回路接合は、半田付けのみならず、ワイヤ4を介しているので、半田付け接触抵抗値のドリフトの影響を軽減することができる。従って、チップ抵抗体3の抵抗値Rに基づいて高精度に電流検出を行うことができる。
【0016】実施例2.尚、上記実施例では、従来と同様の30mΩ程度のチップ抵抗体3を用いたが、チップ抵抗体3と一体に並列抵抗体を形成した構造のチップ抵抗体を用いてもよい。
【0017】図2は並列抵抗体を併用したチップ抵抗体を含むこの発明の実施例2を示す平面図である。30は並列抵抗体併用型のチップ抵抗体であり、中間電極部3cを有し、電極部3aと3bとの間のチップ抵抗体31と、電極部3aと中間電極部3cとの間のチップ抵抗体32と、中間電極部3cと電極部3bとの間のチップ抵抗体33とから構成されている。ここで、チップ抵抗体31は前述のチップ抵抗体3に対応し、チップ抵抗体32及び33は並列抵抗体を構成している。
【0018】図3は図2の具体的回路構成例を示す回路図であり、各チップ抵抗体31〜33の抵抗値は、それぞれ、R1、R2及びR3に設定されている。この場合、並列抵抗値R2及びR3が追加されているので、半田付け接触抵抗値のドリフトに直接影響されるチップ抵抗値R1を従来より大きく設定することができる。従って、30mΩの場合に±1.5mΩの初期許容抵抗値を要するのに対し、抵抗値を大きくすれば、許容範囲を広げても±5%の検出電流許容公差を得ることができる。
【0019】又、実施例2の構成においても、半田付け接触抵抗値のドリフトの影響を受けにくくなる。更に、チップ抵抗体30に対して抵抗値の調整用トリミングを行う場合においても、抵抗値R1が大きいので、測定プローブの接触抵抗値のバラツキを抑制することができる。
【0020】上記各実施例では、チップ抵抗体に接続される半導体素子が制御IC2の場合を示したが、他の半導体素子又はパワー素子等の場合でも同等の効果を奏することは言うまでもない。
【0021】
【発明の効果】以上のようにこの発明の請求項1によれば、制御ICとチップ抵抗体の電極部とをワイヤボンディングにより接続し、チップ抵抗体と制御ICとの回路接合を半田付け及びワイヤボンディングの併用で行い、チップ抵抗体とリードフレームとの半田付け接触抵抗値のドリフト量の影響を軽減するようにしたので、チップ抵抗体の半田付け接続部の抵抗値が変化しても検出精度を損なうことのない高精度の電流検出用半導体装置が得られる効果がある。
【0022】又、この発明の請求項2によれば、チップ抵抗体を、第1及び第2の電極部間に形成された中間電極部と、第1及び第2の電極部間に形成された第1のチップ抵抗体と、第1の電極部と中間電極部に形成された第2のチップ抵抗体、及び、中間電極部と第2の電極部との間に形成された第3のチップ抵抗体からなる並列抵抗体とにより構成すると共に、制御ICと中間電極部及び第3の電極部とをワイヤボンディングにより接続し、第1のチップ抵抗体の抵抗値を大きく設定できるようにしたので、半田付け接触抵抗値のドリフト量の影響を更に軽減することができ、チップ抵抗体の半田付け接続部の抵抗値が変化しても検出精度を損なうことのない高精度の電流検出用半導体装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1を示す平面図である。
【図2】この発明の実施例2を示す平面図である。
【図3】この発明の実施例2の具体的回路構成例を示す回路図である。
【図4】従来の電流検出用半導体装置を示す平面図である。
【図5】従来の電流検出用半導体装置の具体的回路構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
1 リードフレーム
2 制御IC(半導体素子)
3、30〜33 チップ抵抗体
3a、3b 電極部
3c 中間電極部
4 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 リードフレーム上に電極部を介して半田付けされたチップ抵抗体と、このチップ抵抗体に電気的に接続された半導体素子とを有する電流検出用半導体装置において、前記半導体素子と前記チップ抵抗体の電極部とをワイヤボンディングにより接続したことを特徴とする電流検出用半導体装置。
【請求項2】 リードフレーム上に第1及び第2の電極部を介して半田付けされたチップ抵抗体と、このチップ抵抗体に電気的に接続された半導体素子とを有する電流検出用半導体装置において、前記チップ抵抗体は、前記第1及び第2の電極部間に形成された中間電極部と、前記第1及び第2の電極部間に形成された第1のチップ抵抗体と、前記第1の電極部と前記中間電極部に形成された第2のチップ抵抗体、及び、前記中間電極部と前記第2の電極部との間に形成された第3のチップ抵抗体からなる並列抵抗体と、を備え、前記半導体素子と前記中間電極部及び前記第3の電極部とをワイヤボンディングにより接続したことを特徴とする電流検出用半導体装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2824360号
【登録日】平成10年(1998)9月4日
【発行日】平成10年(1998)11月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−115942
【出願日】平成4年(1992)5月8日
【公開番号】特開平5−312847
【公開日】平成5年(1993)11月26日
【審査請求日】平成8年(1996)4月10日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【参考文献】
【文献】特開 平4−84773(JP,A)
【文献】特開 平5−250051(JP,A)