説明

電流遮断装置

【課題】回路遮断器の負荷側に接続された電気回路に雷の発生に起因する過電流が流れ込むのを未然に防ぐことができるようにした電流遮断装置(オートリセットブレーカ)を提供する。
【解決手段】電流遮断装置を、電気接点を強制的に開閉するための操作部110が設けられた回路遮断器100と、操作部110を操作するためのアクチュエータ200と、雷の発生を検知するための雷検知器300とを備えたものとして、雷検知器300が雷の発生を検知すると、アクチュエータ200によって操作部110が開操作されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷の発生を検知すると、回路遮断器に設けられた電気接点を自動的に開くことのできる電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路遮断器に設けられた操作部(ハンドル)にアクチュエータ(例えば、特許文献1を参照。)を取り付けて、回路遮断器を自動的に復旧することができるようにした電流遮断装置が提案されている。この種の電流遮断装置は、オートリセットブレーカ(ARB)と呼ばれており、その負荷側に接続された電気回路に過電流が流れ込むのを防止するだけでなく、該電気回路への電力の供給を人手によらずに自動的に復旧させることができるものとなっている。このオートリセットブレーカは、テレビ中継局など、人が常駐しない施設に備えるものとして好適であり、近年、その需要を着実に伸ばしてきている。
【0003】
しかし、従来のオートリセットブレーカは、回路遮断器の電気接点に過電流が実際に流れるまでは、該電気接点が開かない仕組みになっており、その負荷側に接続された電気回路に過電流が流れ込むのを未然に防ぐことができるものとはなっていなかった。このため、雷の発生などによって過電流が生じた場合には、回路遮断器の電気接点が開くよりも前に、その負荷側に接続された電気回路が焼損するおそれもあった。このことなどから、従来のオートリセットブレーカは、必ずしも過電流に対する保護機能が十分なものとはいえなかった。
【0004】
しかも、従来のオートリセットブレーカの多くは、過電流の原因が取り除かれていない場合であっても、回路遮断器の電気接点が開かれてから所定時間が経過すると、該電気接点を自動的に閉じるように設定されたものとなっており、該電気接点を再び閉じた際に、その負荷側に接続された電気回路に過電流を流すおそれがあるものとなっていた。過電流には、雷による電磁場の乱れなど、一時的な原因で生ずるものだけでなく、電気回路の故障による絶縁不良など、継続的な原因で生ずるものもある。過電流の原因を判断することができれば、その原因に応じた動作をオートリセットブレーカに行わせることも可能であるが、その原因を高い確度で判断することのできるオートリセットブレーカは見当たらなかった。
【0005】
ところで、特許文献2には、負荷側に接続された複数の電気回路(特許文献2では、「負荷」と記載されている。)に電力を供給する自家発電設備と、雷までの距離を測定する雷検知手段とを備え、雷検知手段が雷の接近を検知すると自家発電設備の発電電力が負荷電力よりも大きくなるように前記複数の電気回路を順次遮断した後、自家発電設備を電力系統(商用電源のことと思われる。)と解列して単独運転させる自家発電設備の運転装置が記載されている。これにより、雷が接近した際に、自家発電設備と前記電力系統との解列を円滑に行うことができるようになるとされている。
【0006】
特許文献2の自家発電設備の運転装置は、雷の発生などによって生じた過電流が負荷側に接続された電気回路に流れ込むのを未然に防ぐことができるものではあったが、解列遮断器(特許文献2の図1において符号4で示されている。)の切り替えをどのような機構によって行うのかが具体的に示されておらず、上述したオートリセットブレーカ(回路遮断器に設けられた操作部(ハンドル)にアクチュエータを取り付けて、回路遮断器を自動的に復旧することができるようにした電流遮断装置)を前記解列遮断器として用いることについては、何ら記載されていない。
【0007】
この他、雷検知器や避雷器は、特許文献3や特許文献4に記載されたものを始め、各種のものが提案されているが、これらの雷検知器や避雷器をオートリセットブレーカに接続して、上述した従来のオートリセットブレーカが抱える問題を解決したもの(負荷側に接続された電気回路に過電流が流れ込むのを未然に防ぐことができるようにしたオートリセットブレーカ)は見当たらない。
【0008】
【特許文献1】特開平07−130275号公報(従来の技術、図4、図5)
【特許文献2】特開2005−006414号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献3】特許第3266884号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献4】特公平07−118361号公報(特許請求の範囲、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路に雷の発生に起因する過電流が流れ込むのを未然に防ぐことができるようにした電流遮断装置(オートリセットブレーカ)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、電気接点を強制的に開閉するための操作部が設けられた回路遮断器と、前記操作部を操作するためのアクチュエータと、雷(直撃雷だけでなく誘導雷をも含む概念であるとする。)の発生を検知するための雷検知器とを備え、雷検知器が雷の発生を検知すると、アクチュエータによって前記操作部が開操作されることを特徴とする電流遮断装置を提供することによって解決される。これにより、電流遮断装置の負荷側に接続された電気回路に、雷による電磁場の乱れに起因する過電流(雷サージ)が流れ込むのを未然に防ぐことが可能になる。
【0011】
また、この電流遮断装置は、回路遮断器の電気接点が開いた原因を判断することが可能なものとなっており、該電気接点が開いた後の動作(復旧動作など)をその原因に応じて変更することも可能なものとなっている。したがって、電流遮断装置をより高機能なものとして、その信頼性を高めることもできるようになっている。回路遮断器の電気接点が開いた原因は、前記操作部や雷検知器やアクチュエータの状態を検知することによって知ることができる。
【0012】
ここで、「電気接点を強制的に開閉するための操作部が設けられた回路遮断器」とは、その電気接点に過電流が流れると該電気接点を自動的に開く回路遮断器であって、前記電気接点を過電流の発生によることなく強制的に開閉することのできる操作部(ハンドルなど)が設けられたものをいう。いわゆるノーヒューズブレーカ(NFB)は、このような構造となっていることが多い。以下においては、この種の回路遮断器を「操作部付きの回路遮断器」と呼ぶことがある。操作部付きの回路遮断器は、その内部に設けられたバイメタルなど、過電流に反応して動作する過電流反応子の作用によってその電気接点が開かれる場合と、前記操作部が強制的に操作されることによってその電気接点が開かれる場合とがある。
【0013】
そして、「開操作」とは、回路遮断器の電気接点が開くように前記操作部を強制的に操作することをいう。「開操作」を行う主体は、あくまでアクチュエータである。すなわち、操作部付きの回路遮断器は、その電気接点に過電流が流れて該電気接点が自動的に開いた際に、その操作部が前記過電流反応子に連動してオン位置(前記電気接点を閉じる位置)から外れ、オフ位置(前記電気接点を開く位置)や、オン位置とオフ位置との中間位置に自動的に移動するものが一般的であるが、このように、前記操作部が前記過電流反応子の作用によって自動的に移動した場合は、「開操作」とは呼ばないこととする。以下においては、前記過電流反応子の作用により前記電気接点が開いた場合は、「開操作」と区別して「トリップ」と呼ぶことがある。
【0014】
上記の電流遮断装置において、回路遮断器の電気接点がアクチュエータの開操作によって開いた場合(雷検知器が雷の発生を検知して回路遮断器の電気接点が開いた場合)には、該電気接点が開いてから所定時間が経過すると、前記操作部がアクチュエータによって閉操作されるように設定しておくと好ましい。これにより、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路への電力の供給を自動的に再開することが可能になる。ここで、「閉操作」とは、回路遮断器の電気接点が閉じるように前記操作部を強制的に操作することをいう。「閉操作」を行う主体は、「開操作」と同様、あくまでアクチュエータである。
【0015】
一方、回路遮断器の電気接点がアクチュエータの開操作によることなく開いた場合(回路遮断器の電気接点に過電流が流れて該電気接点が開いた場合)には、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路に異常が生じていないかを判断し、該電気回路に異常が生じていないと判断した場合には、前記操作部をアクチュエータによって閉操作し、前記電気回路に異常が生じていると判断した場合には、前記操作部をアクチュエータによって閉操作しないように設定しておくと好ましい。回路遮断器の電気接点がアクチュエータの開操作によることなく開いた場合には、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路などに故障が生じている可能性が高く、回路遮断器の電気接点を再び閉じた際に、該電気回路の故障をさらに重篤なものとするおそれがあるためである。
【0016】
回路遮断器の電源側に避雷器を備えることも好ましい。これにより、回路遮断器の電気接点に異常な電圧が印加されるのを防止することが可能になり、該電気接点が焼きついたり、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路が故障したりするのを防止することが可能になる。
【0017】
避雷器が、表面に酸化皮膜が形成された金属からなる電極を介在させたものであることも好ましい。これにより、前記電気接点に印加される異常な電圧をより速やかに制限することが可能になり、前記電気接点が焼きついたり、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路が故障したりするのをより確実に防止することが可能になる。前記金属の素材は、特に限定されないが、モリブデンであると好ましい。この種の避雷器は、応答速度が速いことから、高速避雷器と呼ばれることもある。
【0018】
アクチュエータは、回路遮断器の操作部を開操作及び閉操作できるものであれば特に限定されないが、通常、原動機と、該原動機によって発生した動力を伝達するための動力伝達機構と、該動力伝達機構からの動力を前記操作部に作用させる作用部とを備え、該作用部によって前記操作部を開操作するようにしたものが用いられる。原動機としては、電気モータなどの回転機が例示され、動力伝達機構としては、回転機によって生じた回転動を往復動に変換するクランク機構などが例示される。
【0019】
上記電流遮断装置に、電流遮断装置に関する信号を出力するための信号出力部を備えることも好ましい。これにより、電流遮断装置に関する様々な情報を、電流遮断装置の外部に出力することが可能になる。ただし、「電流遮断装置に関する信号」とは、回路遮断器の操作部の位置や、アクチュエータの作用部の位置など、電流遮断装置の状態についての信号だけでなく、電流遮断装置(回路遮断器)の負荷側に接続された電気機器(電気回路)に故障が生じたことを知らせる警報信号など、電流遮断装置の周辺機器の状態についての信号をも含むものとする。
【0020】
上記電流遮断装置に、雷検知器が雷の発生を検知して前記電気接点が開いた回数をカウントするためのカウンタを備えることも好ましい。これにより、雷検知器が雷の発生を検知して前記電気接点が開いた回数を知ることが可能になり、雷害状況を把握することができるようになる。また、把握した雷害状況を、電流遮断装置の保守やメンテナンス、あるいは設計などに役立てることもできるようになる。雷検知器が雷の発生を検知して前記電気接点が開いた回数は、例えば、アクチュエータによる開操作や閉操作の回数を数えることによって知ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によって、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路に雷の発生に起因する過電流が流れ込むのを未然に防ぐことができるようにした電流遮断装置(オートリセットブレーカ)を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の電流遮断装置の好適な実施態様を、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、電流遮断装置の全体構成を示したブロック図である。図2は、回路遮断器100とアクチュエータ200とを示した斜視図である。図3は、回路遮断器100とアクチュエータ200とを図2におけるX−X面で切断した状態を示した断面図である。図4は、回路遮断器100とアクチュエータ200とを示した平面図である。図5は、アクチュエータ200の作用部232が回路遮断器100のオン位置にある操作部110に接触した状態を示した平面図である。図6は、アクチュエータ200の作用部232が回路遮断器100の操作部110をオフ位置まで押し込んだ状態を示した平面図である。図7は、アクチュエータ200の作用部232,233が回路遮断器100の操作部110をオフ位置まで押し込んだ後、初期位置まで戻った状態を示した平面図である。図8は、アクチュエータ200の作用部233が回路遮断器100のオフ位置にある操作部110に接触した状態を示した平面図である。図9は、アクチュエータ200の作用部233が回路遮断器100の操作部110をオン位置まで押し込んだ状態を示した平面図である。
【0023】
[全体構成]
本発明の電流遮断装置は、図1に示すように、電気接点を強制的に開閉するための操作部110(図2を参照)が設けられた回路遮断器100と、操作部110を操作するためのアクチュエータ200と、雷の発生を検知するための雷検知器300とを備え、雷検知器300が雷の発生を検知すると、アクチュエータ200によって操作部110が開操作されるものとなっている。本実施態様の電流遮断装置は、上記の構成の他、回路遮断器100の電気接点に異常な電圧が印加されるのを防止するための避雷器400と、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路に異常が生じていないかを検査するための電気回路検査手段500と、電流遮断装置に関する信号を出力するための信号出力部600と、電流遮断装置の各構成を制御するための制御手段700とを備えたものとなっている。雷検知器300が雷の発生を検知して回路遮断器100の電気接点が開いた回数をカウントするためのカウンタ(図示省略)を備えることも好ましい。
【0024】
また、図1には図示していないが、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路に非常用電源を接続することも好ましい。これにより、回路遮断器100の電気接点が開いた場合であっても、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路に電力を供給することが可能になり、該電気回路を安定して駆動することも可能になる。非常用電源としては、蓄電池などが例示される。
【0025】
[回路遮断器]
回路遮断器100は、操作部付きの回路遮断器であれば特に限定されない。本実施態様の回路遮断器100は、図2に示すように、レバーハンドル状の操作部110を備えたノーヒューズブレーカとなっている。この回路遮断器100は、その電気接点に過電流が流れると内部に設けられたバイメタル(過電流反応子)が作用して該電気接点が開かれると同時に(回路遮断器100がトリップすると同時に)、操作部110がオン位置とオフ位置との中間位置に自動的に移動するものとなっている。
【0026】
回路遮断器100の電気接点は、操作部110を操作することによって強制的に開閉することができるようになっている。すなわち、操作部110をオフ位置に押し込む(図6を参照)と前記電気接点が強制的に開かれ、操作部110をオン位置に押し込む(図9を参照)と前記電気接点が強制的に閉じられるようになっている。回路遮断器100がトリップして操作部110が中間位置に移動した場合には、操作部110を一旦オフ位置まで押し込んでからオン位置に押し込むと前記電気接点を閉じることができるようになっている。
【0027】
[アクチュエータ]
アクチュエータ200は、回路遮断器100の操作部110を開操作及び閉操作することができるものであれば特に限定されないが、図2と図3に示すように、回転機210と、回転機210によって生じた回転動を往復動に変換するクランク機構(クランク部材220)と、該クランク機構によって往復動する往復部材230(作用部232,233)とを備え、作用部232,233によって操作部110を開操作及び閉操作するものであると好ましい。これにより、開操作と閉操作を行うことのできるアクチュエータを簡素な構造で実現することが可能になる。このアクチュエータ200は、制御手段700から開操作の指示があると(図1のS2)、回路遮断器100の操作部110を開操作し(図1のS3)、制御手段700から閉操作の指示があると(図1のS2)、回路遮断器100の操作部110を閉操作(図1のS3)するように設定されている。
【0028】
回転機210は、回転動を生み出すことができるものであれば特に限定されないが、通常、サーボモータやステッピングモータなどの電気モータが用いられる。本実施態様の回転機210は、クランク部材220の中心シャフト221を軸A1(図3〜図9を参照)回りに回転駆動し、軸A1に対して偏心して設けられた偏心シャフト223を軸A1回りに回転駆動するものとなっている。中心シャフト221と偏心シャフト223は、連結部222によって一体的に連結されている。連結部222は、その形状を特に限定されず、棒状に形成されたものなどであってもよいが、本実施態様の連結部222は、後述する往復部材230を安定して支持することができるように円盤状に形成されている。
【0029】
クランク部材220の偏心シャフト223は、往復部材230の基端部に設けられたスライド孔231に遊挿されている。スライド孔231は、往復部材230の先端部と基端部とを結ぶ方向と平行に設けられている。作用部232,233は、往復部材230の先端部の幅方向に一定間隔を隔てて設けられている。作用部232,233の隙間からは、回路遮断器100の操作部110が突出されている。往復部材230は、その中央部を支持シャフト240によって回転可能に支持されている。このため、往復部材230は、回転機210が駆動してクランク部材220が軸A1回りに回転すると、図4〜図9に示すように、偏心シャフト223から回転力を受けて、軸A2回りに往復動(回転往復動)するようになっている。
【0030】
図4〜図9を見ると、クランク部材220が1回転する間に、作用部232,233が1回往復していることが分かる。また、アクチュエータ200が図4から図6の状態に至るまでの間に、その作用部232によって回路遮断器100の操作部110がオン位置からオフ位置に切り替えられており(開操作されており)、アクチュエータ200が図7から図9の状態に至るまでの間に、その作用部233によって回路遮断器100の操作部110がオフ位置からオン位置に切り替えられている(閉操作されている)ことも分かる。以上のことから、本実施態様のアクチュエータ200が、一方向のみに回転する回転機210を用いたものであるにもかかわらず、開操作と閉操作との両方を実現できるものであることも分かる。
【0031】
[雷検知器]
雷検知器300は、雷の発生を検知できるものであれば特に限定されない。本実施態様の雷検知器300は、密閉された管の内部に設けられた一対の電極間に酸化皮膜で覆われた金属粉粒体を介在させたコヒーラと、該コヒーラに外部から機械的振動を与えるデコヒーラと、前記一対の電極に電圧を印加するコヒーラ用電源とを備えたものとなっている。前記管は、通常、エボナイトやガラスやプラスチックなどの絶縁性材料によって形成されたものが用いられる。また、前記金属粉粒体は、通常、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛、銅、銀、鉛、アルミニウム、白金などの金属粒子が用いられる。
【0032】
この雷検知器300は、雷の発生に起因する電磁波が前記コヒーラに印加されると、前記金属粉粒体が互いに密着(コヒーア)して導電状態に遷移し、前記一対の電極間に電流が流れるものとなっている。前記一対の電極間に流れた電流は、雷検知信号として後述する制御手段700に出力される(図1のS1)。前記金属粉粒体がコヒーアしたコヒーラは、前記デコヒーラによって振動を加えることで、再度、前記一対の電極間の絶縁性を回復することができる。
【0033】
雷検知器300のコヒーラには、専用のアンテナを取り付けてもよいが、本実施態様の雷検知器300のコヒーラは、図1に示すように、避雷器400の近くに配されており、回路遮断器100の電源側に接続された電線をアンテナとして利用するものとなっている。すなわち、雷が発生する直前には、前記電線と地面の電位が高周波で変化して、後述する避雷器400の一対の電極からマクスウェルの電磁理論で説明される電磁波が発生するが、本実施態様のコヒーラは、この電磁波から雷の発生を検知するものとなっている。これにより、回路遮断器100の電気接点に雷の発生に起因する過電流が流れるよりも前に、雷の発生を高い確度で検知することができるようになる。
【0034】
[避雷器]
避雷器400は、回路遮断器100の電気接点に異常な電圧が印加されるのを防止することができるものであれば特に限定されない。本実施態様の避雷器400は、表面に酸化皮膜が形成された金属(モリブデン)からなる一対の電極を介在させたものとなっている。前記一対の電極は、互いに接触又は非常に接近して配されるが、その表面に形成された酸化皮膜によって互いに絶縁された状態となっている。避雷器400は、図1に示すように、一方の電極が接地されており、他方の電極が回路遮断器100の電源側に接続された電線に接続されている。
【0035】
この避雷器400は、雷の発生に起因する過電流が前記電線を流れて前記一対の電極間の電位差が大きくなると、前記酸化皮膜が絶縁破壊を起こして前記一対の電極が導通し、前記過電流を地面に速やかに逃すことができるものとなっている。また、前記電線に過電流が流れなくなると、各電極の表面の酸化皮膜が速やかに再生して、前記一対の電極間の絶縁性が短時間で回復するものとなっている。
【0036】
[電気回路検査手段]
電気回路検査手段500は、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路に異常が生じていないかを検査することができるものであれば特に限定されない。本実施態様の電気回路検査手段500は、前記電気回路の電気抵抗値(該電気回路そのものの電気抵抗値だけでなく、絶縁抵抗値(該電気回路と接地又は筐体との間の電気抵抗値)をも含む概念であるものとする。)を計測するものとなっている。この電気回路検査手段500は、後述する制御手段700から計測データの送信要求があると(図1のS5)、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路の電気抵抗値を計測し(図1のS6)、その計測データを制御手段700に返すものとなっている(図1のS7)。本実施態様の電流遮断装置において、電気回路検査手段500によって計測された計測データが許容範囲内にあるかどうかは、制御手段700によって判断されるようになっている。
【0037】
[信号出力部]
信号出力部600の形態は、特に限定されないが、本実施態様の信号出力部600は、端子となっている。また、信号出力部600から出力する信号の種類も、特に限定されないが、本実施態様の信号出力部600からは、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路に異常が生じた際に制御手段700から発せられる警報信号(図1のS8)が出力されるようになっている。
【0038】
この信号出力部600には、各種の出力機器を接続することができる。信号出力部600に接続する出力機器としては、ライトや、スピーカや、バイブレータなどが例示される。回路遮断器100を人が常駐しない施設に設ける場合には、これらの出力機器を回路遮断器100が設けられた施設から離れた場所に設けると好ましい。これにより、回路遮断器100の動作状態や負荷側に接続された電気回路の異常を離れた場所で知ることができるようになる。携帯電話や無線機などを出力機器として用いることもできる。
【0039】
[制御手段]
制御手段700は、電流遮断装置の各構成に所望の動作を行わせることのできるものであれば特に限定されない。本実施態様の電流遮断装置においては、制御手段700としてシーケンサを用いている。この制御手段700は、後述する処理P1や処理P2を実行するように設定されており、回路遮断器100の電気接点が閉じた原因に応じた適切な制御を行うことができるものとなっている。
【0040】
[処理P1]
まず、処理P1について説明する。図10は、制御手段700が実行する処理P1を示したフロー図である。本実施態様の電流遮断装置において、この処理P1は、雷検知器300から制御手段700に雷検知信号(図1のS1)が入力されたことを条件に開始されるように設定されている。
【0041】
制御手段700は、図10に示すように、処理P1を開始すると(処理P1.1)、アクチュエータ200に開操作を行わせ、回路遮断器100の電気接点を開く(処理P1.2)。回路遮断器100の電気接点が開くと、制御手段700は、雷検知器300が雷の発生を最後に検知してから所定時間Tが経過するまで待機する(処理P1.3)。
【0042】
所定時間Tは、予め設定された固定時間であってもよいし、状況に応じて変化する可変時間であってもよい。本実施態様の電流遮断装置においては、所定時間Tを8分(固定時間)に設定している。雷の発生を最後に検知してから8分経過すれば、80%以上の確率で雷が10km以上離れた位置まで遠ざかるという実験報告がなされているためである。一方、所定時間Tを可変時間とする場合には、雷検知器300が検知した雷検知信号などを基に計算した雷までの距離や速度に応じて所定時間Tを変化させることもできる。
【0043】
雷検知器300が雷の発生を最後に検知してから所定時間Tが経過すると、制御手段700は、アクチュエータ200に閉操作を行わせ、回路遮断器100の電気接点を閉じ(処理P1.4)、処理P1を終了する(処理P1.5)。
【0044】
[処理P2]
続いて、処理P2について説明する。図11は、制御手段700が実行する処理P2を示したフロー図である。本実施態様の電流遮断装置において、処理P2は、回路遮断器100がトリップしたことを条件に開始されるように設定されている。
【0045】
ところで、回路遮断器100のトリップは、操作部110やアクチュエータ200や雷検知器300の状態を監視することによって検知することができる。例えば、アクチュエータが操作部110を開操作していないにもかかわらず、操作部110がオン位置から外れた場合や、雷検知器300から雷検知信号が出力されていないにもかかわらず、操作部110がオン位置から外れた場合などには、回路遮断器100がトリップしたと判断することができる。本実施態様の電流遮断装置においては、操作部110がオン位置から外れたことを検知することができるように、回路遮断器100にマイクロスイッチ(図示省略)を取り付けている。
【0046】
制御手段700は、図11に示すように、処理P2を開始すると(処理P2.1)、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路に異常が生じていないかどうかを判断する(処理P2.2)。該電気回路に異常が生じていないと判断した場合には、制御手段700は、アクチュエータ200に閉操作を行わせて回路遮断器100の電気接点を閉じた後(処理P2.3)、処理P2を終了する(処理P2.4)。
【0047】
一方、回路遮断器100の負荷側に接続された電気回路に異常が生じていると判断した場合には、制御手段700は、該電気回路が故障していると判断し、信号出力部600に警報信号を出力し(処理P2.5)、処理P2を終了する(処理P2.4)。この際、アクチュエータ200は閉操作されず、回路遮断器100の電気接点は、前記電気回路の検査作業や修復作業が終わった後、作業員などによって手動で閉じられるまでは開かれたままとなっている(永久遮断)。
【0048】
[用途]
本発明の電流遮断装置は、その用途を特に限定されるものではなく、一般家庭から工場などの大規模な施設まで、幅広い場所に備えることができる。なかでも、テレビ中継局や移動無線中継局など、人が常駐しない施設や無人の施設に備えるものとして好適である。これらの施設における電源の復旧作業には、作業員を派遣する必要がある分、多くの労力やコストがかかるが、本発明の電流遮断装置を備えることによって、その労力やコストを大幅に低減することができるためである。また、テレビ中継局や移動無線中継局は、山の上など、高い場所に設けられていることが多く、雷害を受ける可能性が高いこともその理由の一つである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】電流遮断装置の全体構成を示したブロック図である。
【図2】回路遮断器100とアクチュエータ200とを示した斜視図である。
【図3】回路遮断器100とアクチュエータ200とを図2におけるX−X面で切断した状態を示した断面図である。
【図4】回路遮断器100とアクチュエータ200とを示した平面図である。
【図5】アクチュエータ200の作用部232が回路遮断器100のオン位置にある操作部110に接触した状態を示した平面図である。
【図6】アクチュエータ200の作用部232が回路遮断器100の操作部110をオフ位置まで押し込んだ状態を示した平面図である。
【図7】アクチュエータ200の作用部232,233が回路遮断器100の操作部110をオフ位置まで押し込んだ後、初期位置まで戻った状態を示した平面図である。
【図8】アクチュエータ200の作用部233が回路遮断器100のオフ位置にある操作部110に接触した状態を示した平面図である。
【図9】アクチュエータ200の作用部233が回路遮断器100の操作部110をオン位置まで押し込んだ状態を示した平面図である。
【図10】制御手段700が実行する処理P1を示したフロー図である。
【図11】制御手段700が実行する処理P2を示したフロー図である。
【符号の説明】
【0050】
100 回路遮断器
110 操作部
200 アクチュエータ
210 回転機(原動機)
220 クランク部材(クランク機構(動力伝達機構))
221 中心シャフト
222 連結部
223 偏心シャフト
230 往復部材
231 スライド孔
232 作用部(開操作用)
233 作用部(閉操作用)
240 支持シャフト
300 雷検知器
400 避雷器
500 電気回路検査手段
600 信号出力部
700 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接点を強制的に開閉するための操作部が設けられた回路遮断器と、前記操作部を操作するためのアクチュエータと、雷の発生を検知するための雷検知器とを備え、雷検知器が雷の発生を検知すると、アクチュエータによって前記操作部が開操作されることを特徴とする電流遮断装置。
【請求項2】
前記電気接点がアクチュエータの開操作によって開いた場合には、該電気接点が開いてから所定時間が経過すると、前記操作部がアクチュエータによって閉操作される請求項1記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記電気接点がアクチュエータの開操作によることなく開いた場合には、回路遮断器の負荷側に接続された電気回路に異常が生じていないかを判断し、該電気回路に異常が生じていないと判断した場合には、前記操作部をアクチュエータによって閉操作し、前記電気回路に異常が生じていると判断した場合には、前記操作部をアクチュエータによって閉操作しない請求項1又は2いずれか記載の電流遮断装置。
【請求項4】
回路遮断器の電源側に避雷器を備えた請求項1〜3いずれか記載の電流遮断装置。
【請求項5】
避雷器が、表面に酸化皮膜が形成された金属からなる電極を介在させたものである請求項4記載の電流遮断装置。
【請求項6】
アクチュエータが、原動機と、該原動機によって発生した動力を伝達するための動力伝達機構と、該動力伝達機構からの動力を前記操作部に作用させる作用部とを備え、該作用部によって前記操作部を開操作及び閉操作するようにした請求項1〜5いずれか記載の電流遮断装置。
【請求項7】
電流遮断装置に関する信号を出力するための信号出力部を備えた請求項1〜6いずれか記載の電流遮断装置。
【請求項8】
雷検知器が雷の発生を検知して前記電気接点が開いた回数をカウントするためのカウンタを備えた請求項1〜7いずれか記載の電流遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−115411(P2007−115411A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302325(P2005−302325)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000180069)山陽電子工業株式会社 (21)
【出願人】(505387864)合資会社平川研究所 (2)
【Fターム(参考)】