説明

電源ユニット

【課題】複数のコンバータを並列に繋いで大きな負荷に対応する電源ユニットであって、各コンバータが安定した電流を出力できる電源ユニットを提供する。
【解決手段】電源ユニット10は、バッテリ12の電源電圧を降圧する複数のコンバータ(主コンバータ14とサブコンバータ18)と、コンバータを制御するコントローラ16を備える。主コンバータ14とサブコンバータ18の夫々の出力端は、負荷機器90に並列に接続されている。コントローラ16は、主コンバータ14とサブコンバータ18の夫々に対して異なる目標出力電圧を指令する。負荷機器90が要求する電流が小さい間は主コンバータ14だけが電流を供給し、負荷機器90が要求する電流が主コンバータの定格出力電流を超えると、サブコンバータ18から不足分が補われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷機器に電力を供給する電源ユニットに関する。負荷機器とは、様々なタイプの電力消費機器群でよく、その典型的な一例はモータである。
【背景技術】
【0002】
電源電圧を負荷機器に適した電圧に変換する(昇圧又は降圧する)コンバータには、ACDCコンバータとDCDCコンバータがある。ACDCコンバータは、交流電源を所望の電圧の直流に変換し、DCDCコンバータは直流電源の電圧を所望の電圧に変換する。本明細書では、ACDCコンバータとDCDCコンバータを「電圧コンバータ」あるいは単に「コンバータ」と総称する。
【0003】
様々な理由から、複数のコンバータを並列に繋いで用いることが提案されている(特許文献1〜4)。特許文献1の技術は、出力容量の小さい複数のDCDCコンバータを並列に接続して総出力容量の増大を図るがその際に各DCDCコンバータに適切に負荷を分散させる技術である。具体的には特許文献1の技術は、各コンバータの出力が所定の値となるように積極的に制御するものである。
【0004】
特許文献2の技術は、負荷の大きさに応じて並列に接続する電源モジュール(DCDCコンバータ)の個数を変えるものである。
【0005】
特許文献3の技術は、定電圧DCDCコンバータと定電流DCDCコンバータを並列接続し、システム起動時には定電流DCDCコンバータを先に起動し、後から定電圧DCDCコンバータを起動するというものである。この技術は、システム起動時には定電流DCDCコンバータのみを動作させ、システムに流れる電流値が所定の値を超えないようにする。特許文献1の技術は、システム起動時のサージ電流を抑制することを目的としている。
【0006】
特許文献4の技術は、ACDCコンバータ(第1の電源機器)とDCDCコンバータ(第2の電源機器)を並列に繋ぎ、ACDCコンバータは一定電圧を保持するように作動し、DCDCコンバータは、出力電流が大きくなるにつれて出力電圧が小さくなるように作動する。特許文献4の技術はさらに、第2の電源機器の出力電圧が定電圧を保つように、出力電流−出力電圧特性をシフトする調整手段を備える。特許文献4の技術は、上記特性を有する第2の電源機器と調整手段により、負荷の変動に対して一定電圧を保持することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−262593号公報
【特許文献2】特開2010−158098号公報
【特許文献3】特開2004−266951号公報
【特許文献4】特開2009−232674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンバータは出力容量が小さい方が低コストである。特許物件1や2の技術は、出力容量の大きな一つのコンバータの代わりに出力容量の小さい複数のコンバータを並列に接続して負荷容量に対応するものである。同じタイプのコンバータを並列に接続する場合、コンバータ毎の特性のばらつき、あるいは、コンバータと負荷の間のケーブルの特性のばらつきから、各コンバータが出力する電流が安定しない虞がある。例えば、一のコンバータの出力電流が低下すると、負荷の要求電流に応じて別コンバータの出力電流が増加する。場合によっては、その別のコンバータの出力増大が、先の一のコンバータの出力低下を促進してしまい、コンバータ間の出力の差が増大してしまう可能性もある。なお、特許文献1の技術は、そのようなコンバータ間のばらつきを抑制するように各コンバータの出力を積極的に制御するものである。しかしながらそのため、システムが複雑になりかえってコストが嵩んでしまう。なお、特許文献3や4の技術は、異なるタイプのコンバータ(定電圧コンバータと定電流コンバータ)を並列に接続し、それぞれのコンバータの特質を巧みに組み合わせて所望の目的を達成するものであるから、コンバータ間のばらつきという問題は生じない。
【0009】
本明細書は、複数のコンバータを並列に繋いで大きな負荷に対応する電源ユニットであって、特許文献1の技術とは全く正反対のアプローチにより、各コンバータが安定した電流を出力できるように工夫した電源ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許文献1の技術は、複数のコンバータに負荷を適切に分散させる点に特徴がある。これに対して本明細書が開示する技術では、複数のコンバータを並列接続するが、そのうちの一つ(主コンバータと称する)に積極的に負荷を集中させる。そして、主コンバータの出力の不足分を他のコンバータ(サブコンバータと称する)の出力で補う。そのようなストラテジを採用することにより、主コンバータは安定して定格出力電流を出力し続け、サブコンバータは不足分だけを出力する。従って、いずれのコンバータの出力も、特性のばらつきに依存した出力の不安定さを伴うことがない。
【0011】
本明細書が開示する電源ユニットは、具体的には、主コンバータと、出力電圧が主コンバータのそれよりも僅かに低いサブコンバータを並列接続する。より厳密には、主コンバータの目標出力電圧をサブコンバータの目標出力電圧よりも高く設定する。「目標出力電圧」とは、余力をもってコンバータが動作する状態、即ち、負荷容量(負荷が要求する電流)がコンバータの定格出力電流を下回る場合においてコンバータが出力する電圧を意味する。出力電圧可変のコンバータの場合は、「目標出力電圧」とはコントローラがコンバータに指令する出力電圧(出力電圧指令)に相当する。別言すれば、負荷容量(負荷が要求する電流)がコンバータの定格出力電流を上回る場合には、コンバータの出力電圧は目標出力電圧を下回ることになる。
【0012】
本明細書が開示する電源ユニットでは、並列に接続された主コンバータとサブコンバータが同時に作動するときに、主コンバータの目標出力電圧がサブコンバータの目標出力電圧よりも高く設定されればよい。本明細書が提示する技術は、後述するようにサブコンバータの出力を停止するときには、主コンバータの目標出力電圧を変更することを排除するものではない。例えば、主コンバータとサブコンバータを同時に使用するときのサブコンバータの目標出力電圧をVsubとした場合、主/サブコンバータ同時使用の場合は、主コンバータの目標出力電圧はVsubより高い値に設定するが、本明細書が開示する技術は、サブコンバータを停止する場合には、主コンバータの目標出力電圧をVsub以下とすることも許容することに留意されたい。
【0013】
なお、本明細書における「負荷容量」とは負荷が要求する電流を意味する。またコンバータの定格容量とは、コンバータが継続して出力することのできる最大電流を意味する。以下では、それらの技術的意味を明確に示すために、「負荷容量」を「負荷要求電流」と称し、「定格容量」を「定格出力電流」と称する場合がある。また、負荷が必要とする電圧を「負荷要求電圧」と称する場合がある。コンバータの目標出力電圧は、負荷要求電圧に近い値に設定される。後述するように、本明細書が開示する技術は、主/サブコンバータを同時に使用する際、主コンバータの目標出力電圧を負荷要求電圧よりも高めに設定する。
【0014】
上記の構成によれば、負荷要求電流(負荷容量)が主コンバータの定格出力電流(定格容量)を下回る場合には、主/サブコンバータを同時に作動させても、主コンバータのみが電流を供給する。このとき、出力電圧が主コンバータよりも低いサブコンバータは電流を出力することはない(サブコンバータも電力を出力しようとするが主コンバータに抑えられてしまうからである)。この場合、サブコンバータには主コンバータから電流が逆流しようとするが、サブコンバータに高い内部抵抗(高出力インピーダンス)を与えておけば、サブコンバータに逆流する電流は、無視し得るほどの極めて僅かな量に抑えることができる。
【0015】
負荷要求電流が主コンバータの定格出力電流を上回る場合には、主コンバータは一定電圧を保持できなくなり、現実の出力電圧が低下する。主コンバータの出力電圧が低下し、サブコンバータの出力電圧と拮抗すると、主コンバータの出力電流では不足する分だけ([不足分]=[負荷が要求する電流]−[主コンバータの出力電流])、サブコンバータが電流を出力する。こうして、サブコンバータは、主コンバータでは不足する分の電流を安定して出力するように作動する。
【0016】
「主コンバータ」、「サブコンバータ」との名称が示唆するように、本明細書が開示する電源ユニットのコンセプトは、負荷容量が大きくないときは主コンバータのみで負荷容量を賄い、負荷容量が大きくなったときのみ、サブコンバータで不足分を補う、というものである、そのため、サブコンバータは、その容量(出力可能な電力)が主コンバータの容量よりも小さいものであってよい。
【0017】
上記の原理から明らかなように、主コンバータの目標出力電圧は負荷が要求する電圧(負荷電圧)よりも僅かに高い値が好ましく、サブコンバータの目標出力電圧は負荷電圧と同等であることが好ましい。また、一般に、負荷機器(モータやエアコンなど)は、負荷機器が要求する電圧に対して±10%程度の誤差のある電圧を許容するから、主コンバータの目標電圧出力は、サブコンバータの目標電圧出力(即ち負荷電圧)の1〜10%増程度であるのがよい。さらに、このことから容易に推論されるように、主コンバータの目標出力電圧を負荷電圧と同等に設定し、サブコンバータの目標出力電圧を主コンバータの目標出力電圧の1〜10%減程度に設定してもよい。結局、主コンバータの目標出力電圧とサブコンバータの目標出力電圧は、負荷電圧の±10%の範囲内で定めればよい(もちろん、主コンバータの目標出力電圧>サブコンバータの目標出力電圧となるように設定する)。
【0018】
負荷容量が変動することが予め想定される場合は、次の特徴を有するコントローラを備えているとよい。即ち、コントローラは、負荷容量(負荷の要求電流)が主コンバータの定格容量(定格出力電流)を下回っているときはサブコンバータの出力を停止する。即ち、主コンバータのみで負荷を賄えるときにはサブコンバータは休止させればよい。
【0019】
またコントローラは、次の処理を行うのがよい。負荷の要求電流が主コンバータの定格出力電流を下回っているときは、サブコンバータの出力を停止するとともに、主コンバータの目標出力電圧を第1電圧に調整する。負荷の要求電流が主コンバータの定格出力電流を上回っているときは、サブコンバータの出力を許可するとともに、主コンバータの目標出力電圧を第1電圧よりも高い第2電圧に調整する。第1電圧は、負荷電圧よりもわずかに高い電圧(負荷電圧の10%増以内)が好ましく、第2電圧は負荷電圧と同等が好ましい。
【0020】
本明細書が開示する電源ユニットの好適な適用先は、自動車(特にハイブリッド自動車や電気自動車)である。それらの自動車は、電源として電池(鉛電池、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、燃料電池、あるいは太陽電池)を搭載し、また、電気を消費する機器も多く搭載している。さらに、消費電力は、走行状態や環境に応じて大きく変化する。例えば、上り坂や加速時にはモータの消費電力(負荷容量)が急増する。また、エアコンを作動させることによっても消費電力(負荷容量)は顕著に増大する。本明細書が開示する電源ユニットは、そのような負荷変動の大きい負荷機器の電源ユニットとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の電源ユニットの模式的ブロック図である。
【図2】コントローラの制御フロー図である。
【図3】コントローラの制御による出力電圧指令や出力電流等の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して実施例の電源ユニットを説明する。本実施例の電源ユニット10は、車両(ハイブリッド車又は電気自動車)の電気機器用の電源として用いられるものである。図1に電源ユニット10の模式的ブロック図を示す。符号90が示すブロックは、車両に搭載された電気機器を総称する。以下、車両に搭載された電気機器を負荷機器90と称する。負荷機器90は、モータを駆動/制御するのに必要な電気/電子機器であり、いわゆる補器と呼ばれる機器と、ヘッドライト、パワーウインドウ、ワイパー、エアコンなど、車両(エンジン車含む)が通常備えている電気機器を含む。補器の具体的な例は、駆動系のコンピュータ(ECUと称されることがある)やセンサ等である。本明細書では、それらの機器は12V電源を必要とするとする。即ち、電源ユニット10の出力は、12Vである。
【0023】
本明細書の電源ユニット10は、バッテリ12、主コンバータ14、サブコンバータ18、及び、パワーコントローラ16を備える。バッテリ12は、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、あるいは燃料電池である。バッテリ12は、車両を走行させるモータの電源も兼ねており、その出力電圧は200Vである。即ち、この電源ユニット10は200Vの直流電源電圧を12Vに降圧して供給する装置である。
【0024】
主コンバータ14とサブコンバータ18はともにDCDCコンバータである。DCDCコンバータの作動原理はよく知られているのでその説明は省略する。主コンバータ14とサブコンバータ18はともに、200Vを入力電圧とし、12Vの電圧を出力する能力を備える。ただし、主コンバータ14、サブコンバータ18ともに、パワーコントローラ16からの指令に基づいて出力電圧を変更することができる。
【0025】
主コンバータ14の入力端子Vin1とサブコンバータ18の入力端子Vin2は、バッテリ12に並列に接続されている。主コンバータ14の出力端子Vout1の一方(正極端子)とサブコンバータ18の出力端子Vout2の一方(正極端子)は、負荷機器90の各機器に電源を供給するバスバーの入力端子VBの正極に並列に接続されている。主コンバータ14の出力端子Vout1の他方(負極端子)とサブコンバータ18の出力端子Vout2の他方(負極端子)は、共にグランドに接続している。バスバーの入力端子VBの負極もグランドに接続している。なお、グランドとは、具体的には車両のシャシに相当する。以上の結線により、2個のコンバータ(主コンバータ14とサブコンバータ18)は、それらの入力側端子(Vin1、Vin2)が電源(バッテリ12)に並列に接続しており、それらの出力端子(Vout1、Vout2)が負荷機器90に並列に接続している。
【0026】
主コンバータ14の定格容量(与えられた目標出力電圧の下で継続して出力することのできる最大電流であり、本明細書では定格出力電流とも称する)をIdc1_maxで表し、サブコンバータ18の定格容量をIdc2_maxで表す。目標出力電圧が同じである場合、主コンバータ14の定格容量Idc1_maxは、サブコンバータ18の定格容量Idc2_maxよりも大きい。例えば、主コンバータ14の定格容量Idc1_maxは30[A]であり、サブコンバータ18の定格容量Idc2_maxは5[A]である。主コンバータ14の定格容量Idc1_maxは、少なくともサブコンバータ18の定格容量Idc2_maxの2倍以上である。
【0027】
なお、出力容量のいう場合は、通常、出力可能な電力を意味するが、2個のコンバータで目標出力電圧が同じであれば、出力可能な電力は出力可能な電流に等価である。即ち、サブコンバータ18の定格容量が主コンバータ14の定格容量よりも小さいということは、サブコンバータ18の出力容量が主コンバータ14の出力容量よりも小さいということと等価である。
【0028】
主コンバータ14、サブコンバータ18はともに、一定電圧を維持するように作動する定電圧型のDCDCコンバータである。その出力電圧は、パワーコントローラ16からの指令(目標出力電圧)で設定される。図1の符号a2、a3が示す矢印が、パワーコントローラ16から各コンバータへの信号線を示している。主コンバータ14は、信号線a2を介してパワーコントローラ16から目標出力電圧Vdc1を受け取る。主コンバータ14は実際の出力電圧が目標出力電圧Vdc1に一致するように作動する。一般に、定電圧コンバータは、電圧を一定に保つように作動するので、その出力電流は負荷が要求する電流(負荷容量)に依存して変化する。ただし、負荷容量がコンバータの定格容量を超えてしまうと、電圧を一定に保つことができなくなり、出力電圧が低下する。従って主コンバータ14の出力電圧は、負荷容量が定格容量Idc1_maxを下回っている間は目標出力電圧Vdc1にほぼ一致するが、負荷容量が定格容量Idc1_maxを上回ると目標出力電圧Vdc1よりも低くなる。
【0029】
パワーコントローラ16は、負荷機器90の作動状態の情報を受け取り、負荷機器90が要求する電流(負荷容量)を特定する(推定する)。図1の符号a4が、負荷機器90の情報が流れる信号線を示している。個々の負荷機器の定格電力は既知であるので、パワーコントローラ16は、例えば各機器が動作中であるか停止中であるかが分かれば、負荷容量を特定できる(推定できる)。即ち、符号a4が示す信号線は、例えば、個別の負荷機器が動作中であるか否かを示す信号を伝えるものである。
【0030】
パワーコントローラ16は、負荷容量に基づいて各コンバータへの目標出力電圧を決定する。図2にパワーコントローラ16が実行する制御フローを示す。図2の制御フローは、制御周期(例えば2msec)毎に実行される。図2、及び、後述する図3に記した記号を説明する。Irqは負荷容量(負荷要求電流)を表す。Idc1_maxは、前述したように、主コンバータ14の定格出力電流である。Vdc1、Vdc2はそれぞれ、主コンバータ16への目標出力電圧、サブコンバータ18への目標出力電圧である。目標出力電圧は、パワーコントローラ16から各コンバータへ指示される。Vrqは、負荷機器90が要求する電圧(負荷要求電圧)である。前述したように、本実施例の場合、Vrqは12[V]である。dVは、主コンバータ14への目標出力電圧を嵩上げするオフセット値であり、その技術的意味は後に説明する。オフセット電圧dVは、例えば1[V]である。定性的には、オフセット電圧dVは負荷要求電圧の10%程度あるいはそれ以下に設定される。
【0031】
図2の説明に戻る。パワーコントローラ16は、負荷要求電流Irqが、主コンバータ場14の定格出力電流Idc1_maxを超えているか否かをチェックする(S2)。負荷要求電流Irqが定格出力電流Idc1_maxを超えていない場合(S2:NO)、パワーコントローラ16は、主コンバータ14に対する目標出力電圧Vdc1に、負荷要求電圧Vrqを設定し、サブコンバータ18に対する目標出力電圧Vdc2に、ゼロを設定する(S4)。すなわちこの場合、パワーコントローラ16は、サブコンバータ18の出力を停止する。他方、負荷要求電流Irqが定格出力電流Idc1_maxを超えている場合(S2:YES)、パワーコントローラ16は、主コンバータ14に対する目標出力電圧Vdc1に、負荷要求電圧Vrq+オフセット電圧dVを設定し、サブコンバータ18に対する目標出力電圧Vdc2に、負荷要求電圧Vrqを設定する(S6)。別言すれば、このとき、パワーコントローラ16は、サブコンバータ18の目標出力電圧に負荷要求電圧Vrqを設定し、主コンバータ14に対する目標出力電圧には、サブコンバータ18の目標出力電圧よりもわずかに高い値を設定する。
【0032】
上記したパワーコトローラ16の処理による効果を、図3を参照して説明する。図3の(A)は、負荷要求電流Irqの時間変化を示す。負荷要求電流Irqは、車両の運転状態や環境に依存して変化する。例えばエアコンを作動させると負荷要求電流Irqは大幅に増大する。図3の(B)は、主コンバータ14の出力電流Idc1の変化を示す。出力電流Idc1の最大値は、定格出力電流Idc1_maxである。図3の(C)は、主コンバータ14へ送られる目標出力電圧Vdc1の時間変化である。図3の(D)は、サブコンバータ18の出力電流Idc2の変化を示す。図3の(E)は、サブコンバータ18へ送られる目標出力電圧Vdc2の時間変化である。
【0033】
図3の時間軸上の期間Taと期間Tbは、負荷要求電流Irqが主コンバータ14の定格出力電流Idc1_maxを超えている期間を示している。期間TaとTb以外では、負荷要求電流Irqは定格出力電流Idc1_maxを下回る。期間TaとTb以外、すなわち、負荷要求電流Irqが定格出力電流Idc1_maxを下回っている期間では、主コンバータ14の目標出力電圧Vdc1には負荷要求電圧Vrqが設定され、サブコンバータ18の目標出力電圧Vdc2にはゼロが設定される(図2のステップS4)。即ちこの期間ではサブコンバータ18は停止しており、主コンバータ14だけが動作する。この期間では、負荷要求電流Irqは主コンバータ14の定格出力電流Idc1_maxを下回るので、主コンバータ14だけで負荷機器90の全ての電力を賄える。
【0034】
期間TaとTbでは、すなわち、負荷要求電流Irqが定格出力電流Idc1_maxを上回っている期間では、主コンバータ14の目標出力電圧Vdc1には負荷要求電圧Vrq+オフセット電圧dVが設定され、サブコンバータ18の目標出力電圧Vdc2には負荷要求電圧Vrqが設定される(図2のステップS6)。即ちこの期間では、主コンバータ14とサブコンバータ18が並列に負荷機器90に電力を供給する構成となる。ただし、主コンバータ14の目標出力電圧Vdc1がサブコンバータ18の目標出力電圧Vdc2よりも高いので、主コンバター14から優先的に電流が供給されることになる。その結果、主コンバータ14は定格出力電流Idc1_maxの電流を出力する(期間TaとTbにおける図3(B)のグラフ参照)。このとき、負荷要求電流Irqは定格出力電流Idc1_maxを超えているので、主コンバータ14の出力電流だけでは足りない。負荷機器90は電流を必要としているので電力供給源(即ち電源ユニット10)から電流を引き出そうとする。その力に屈して主コンバータ14の出力電圧は目標出力電圧(Vrq+dV)よりも低下する。主コンバータ14の出力電圧がサブコンバータ18の出力電圧を上回っている間は、主コンバータ14の出力によってサブコンバータ18の電流出力は抑えられる。主コンバータ14の出力電圧がサブコンバータ18の出力電圧と同程度に低下すると、サブコンバータ18が負荷機器90へ向けて電流を供給し始める。すなわち、主コンバータ14の出力電流では不足する分(=[負荷要求電流Irq]−[主コンバータ14の定格出力電流Idc1_max])を、サブコンバータ14が出力する(期間TaとTbにおける図3(D)のグラフ参照)。図3の(B)のグラフ(主コンバータ14の出力電流)と図3(D)のグラフ(サブコンバータ18の出力電流)を加算したものが、図3(A)のグラフ(負荷要求電流)に一致する。こうして、期間Ta、Tbでは、主コンバータ14は安定して定格出力電流を出力し、その不足分をサブコンバータ18が出力する。このように電源ユニット10では、主コンバータ14とサブコンバータ18の機能が明確に区別され、それぞれの出力が不確定となることがない。
【0035】
なお、サブコンバータ18の出力電圧が主コンバータの出力電圧よりも低い間は、主コンバータ14の出力端子からサブコンバータ18の出力端子へ電流が流れ込もうとする。しかし、サブコンバータ18はその内部抵抗が高くなるように回路が組まれているので、サブコンバータ18へは電流はほとんど流れることはない。
【0036】
本明細書が開示する技術の留意点を述べる。図2のステップS2に処理における符号「≧」は、「>」であってもよい。ステップS2において等号を含むか否かは、本明細書が開示する技術に本質的ではない点に留意されたい。
【0037】
実施例の電源ユニット10は直流電源(バッテリ)を電源とした。電源は交流電源でもよい。その場合、コンバータにはACDCコンバータが採用される。また、本明細書が開示する技術に基づく電源ユニットは、ACDCコンバータとDCDCコンバータを含む複数のコンバータを有していてもよい。
【0038】
実施例の電源ユニット10は2個のコンバータを備えていた、電源ユニットが備える並列接続のコンバータは2個以上であればいくつであってもよい。
【0039】
実施例の電源ユニット10は、一つのバッテリから複数のコンバータへ電源を供給する構成を採用している。電源ユニットが有する各コンバータは夫々別の電源から電力の供給を受けるものであってもよい。例えば、第1のコンバータは商用交流電源から電力の供給を受け、第2のコンバータは一つのバッテリから電力の供給を受ける構成であってもよい。
【0040】
実施例の電源ユニット10はバッテリ12を含んでいる。請求項でいう「電源ユニット」には必ずしもバッテリ(電源そのもの)を含む必要はない。例えば、発電所から供給される交流電源を電源とする場合、本明細書が開示する電源ユニットはその交流電源供給元(即ち変電所)を含まなくともよい。その場合、電源ユニットは、複数のコンバータ(ACDCコンバータ)とそれら複数のコンバータを制御するコントローラで構成されていればよい。
【0041】
図2のステップS4においてVdc1に設定されるVrqが、請求項でいう「第1電圧」に相当する。図2のステップS6においてVdc1に設定されるVrq+dVが、請求項でいう「第2電圧」に相当する。
【0042】
電源ユニット10は、バッテリ12の電源電圧を降圧する複数のコンバータ(主コンバータ14とサブコンバータ18)と、夫々のコンバータを制御するコントローラ16を備える。主コンバータ14とサブコンバータ18の夫々の出力端は、負荷機器90に並列に接続されている。コントローラ16は、主コンバータ14とサブコンバータ18の夫々に対して異なる目標出力電圧を指令する。負荷機器90が要求する電流が小さい間は主コンバータ14だけが電流を供給し、負荷機器90が要求する電流が主コンバータの定格出力電流を超えると、サブコンバータ18から不足分が補われる。
【0043】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10:電源ユニット
12:バッテリ
14:主コンバータ
16:パワーコントローラ
18:サブコンバータ
90:負荷機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を昇圧又は降圧するコンバータであって目標出力電圧が異なる複数のコンバータを備えており、複数のコンバータの夫々の出力端が負荷機器に並列に接続されていることを特徴とする電源ユニット。
【請求項2】
主コンバータと、出力容量が主コンバータよりも小さいサブコンバータを備えており、主コンバータの目標出力電圧がサブコンバータの目標出力電圧よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電源ユニット。
【請求項3】
負荷機器の要求電流が主コンバータの定格出力電流を下回っているときはサブコンバータの出力を停止するコントローラをさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の電源ユニット。
【請求項4】
前記コントローラは、
負荷機器の要求電流が主コンバータの定格出力電流を下回っているときは、サブコンバータの出力を停止するとともに、主コンバータの目標出力電圧を第1電圧に調整し、
負荷機器の要求電流が主コンバータの定格出力電流を上回っているときは、サブコンバータの出力を許可するとともに、主コンバータの目標出力電圧を第1電圧よりも高い第2電圧に調整することを特徴とする請求項3に記載の電源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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