説明

電源体の接続部材、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置

【課題】電源体同士を接続する際に短絡の可能性を排除しつつ良好な作業性を確保し、かつ製造コストを抑制することができる電源体の接続部材、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置を提供する。
【解決手段】一の電源体2Aの第一電極7Aと、他の電源体2Bの第二電極6Aとを電気的に接続する電源体の接続部材であって、第一電極7Aに一端側が接続され、第二電極6Aに他端側が接続される導電部材20と、導電部材20における一端側の端部26を被覆可能な一端側絶縁部材22と、導電部材20における他端側の端部27を被覆可能な他端側絶縁部材23と、導電部材20の中間部28を覆う中間絶縁部材21と、を備え、一端側絶縁部材22及び他端側絶縁部材23が、各端部26,27を被覆する被覆位置と、各端部26,27を露出させる露出位置との間を移動可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる電源装置における複数の電源体同士を電気的に接続する電源体の接続部材、電源装置を構成する電池集合体における電池同士を電気的に接続するバスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車などには、電動モータの駆動源としての電源装置が搭載されている。この電源装置は、一端に正の電極と他端に負の電極とが設けられた複数の電池から構成される電池集合体(電源体)を備え、所望の電圧を得るために複数の電池が直列に接続されている。これら複数の電池は、正の電極と負の電極とが互いに隣り合う状態で、一方向に沿って並べられている。
【0003】
前述した電源装置は、電池集合体の互いに隣り合う各電池の正の電極と負の電極とを接続する複数の接続部材(バスバー)を備え、それらの接続部材によって、電池集合体の複数の電池が直列に接続されている(例えば、特許文献1参照)。このような複数の接続部材は、絶縁性の合成樹脂などで構成された絶縁体枠に収容されたバスバーモジュールとして電池集合体に設置されることが一般的である。また、特許文献1記載の電源装置では、電池集合体が2列に分離され、各電池集合体における複数の電池の配列方向と直交した方向に並べて設置されている。
【0004】
一方、並べて設置された複数の電源体同士を電気的に接続する構造として、ワイヤハーネス(ケーブル)などを用いた接続構造が利用されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載の電源装置は、図5に示すように、互いに当接させずに並べた複数(2個)の電源体(バッテリ)Bを備え、互いの電源体Bにおける正負の電極端子C1,C2をワイヤハーネスWで接続している。ワイヤハーネスWは、導電性の芯線を絶縁体で被覆した電線部W1と、電線部W1の両端にて芯線に圧着された一対の端子(例えば、ちょうねじ端子や丸形端子等)W2と、芯線と端子W2との圧着部を覆って絶縁するターミナルカバーW3などを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−100619号公報
【特許文献2】特開2011−126396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献2に示されたような電源体の接続構造では、ワイヤハーネスWを用いて電源体Bの電極同士を接続することから、以下のような問題がある。
【0007】
先ず、ワイヤハーネスWが電線部W1や一対の端子W2、ターミナルカバーW3などで構成されるために、部品点数が多くなるとともに、圧着工程や絶縁工程などの工数が多くなって製作に手間が掛り、製造コストが高騰するという問題がある。
【0008】
次に、ワイヤハーネスWを電源体Bに接続する作業において、一方の端子W2を一方の電極端子C1に接続してから、他方の端子W2を他方の電極端子C2に接続することとなるが、この際、他方の端子W2が電源体Bの他の電極等に接触すると短絡の可能性がある。このため、ワイヤハーネスWの端子W2が電極端子C2以外に接触しないように適宜な対処を施しつつ接続作業を行う必要があり、作業手順の冗長化を招いて作業性が低下するという問題がある。ここで、短絡を防止するために、端子W2が絶縁性のハウジング等で覆われたコネクタを有したワイヤハーネスWを利用することが考えられる。しかしながら、そのようなワイヤハーネスWを用いる場合には、電源体Bの電極にもコネクタを設けなければならず、製造コストがさらに高騰するとともに、コネクタ同士を接続するためのスペースも必要となってしまう。
【0009】
一方、従来のワイヤハーネスWに替えて接続用のバスバーを用いた接続構造も考えられる。しかし、接続用のバスバーによって各電源体Bの電極端子C1,C2同士を接続する場合であっても、接続作業中にバスバーの一部が電極端子C2以外に接触して短絡する可能性を排除することができず、依然として前述したような作業性低下の問題を解決することが難しい。さらに、電極端子C1,C2同士を接続した状態では、バスバー中間の導電部が露出することから、この導電部を覆うために絶縁性を有した別体の保護キャップ等を用いた場合には、部品点数や作業工数が増大して製造や部品管理に要するコストが増加してしまうこととなる。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑み、電源体同士を接続する際に短絡の可能性を排除しつつ良好な作業性を確保し、かつ製造コストを抑制することができる電源体の接続部材、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された本発明の電源体の接続部材は、一の電源体の第一電極と、他の電源体の第二電極とを電気的に接続する電源体の接続部材であって、導電性の金属板材からなり、前記第一電極に一端側が接続され、前記第二電極に他端側が接続される導電部材と、前記導電部材における前記一端側の端部を被覆可能な一端側絶縁部材と、前記導電部材における前記他端側の端部を被覆可能な他端側絶縁部材と、前記導電部材における前記一端側及び他端側の端部を除く中間部を覆う中間絶縁部材と、を備え、前記一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材が、それぞれ前記導電部材の一端側及び他端側の端部を被覆する被覆位置と、該端部を露出させる露出位置と、の間を移動可能に前記中間絶縁部材に支持されたことを特徴とする。
【0012】
上記構成により、一の電源体の第一電極と他の電源体の第二電極とを金属板材からなる導電部材で接続することで、従来のワイヤハーネスで接続した場合と比較して、導電部材の製造工程を簡単化することができる。また、中間絶縁部材で導電部材の中間部を覆うことによって中間部と電源体各部とが接触せず、一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材をそれぞれ被覆位置に位置させることで、導電部材の両端部も電源体各部から絶縁することができる。従って、導電部材の接続作業初期段階においては、各絶縁部材で導電部材の全体を被覆しておくことで、導電部材を介した短絡を防止することができる。次に、第一電極に対して導電部材の一端側を接続する際に、一端側絶縁部材を露出位置に移動させることで接続作業を円滑に実施できるとともに、その作業中において他端側絶縁部材を被覆位置に維持しておけば、導電部材の他端側端部が電源体に接触することを確実に防止することができる。導電部材の一端側を接続した後に、他端側絶縁部材を露出位置に移動させてから他端側の接続作業を実施することで、導電部材の脱落等が防止されることから、電源体における接触を想定していない部分(以下、接触非許容部と記すことがある)への導電部材の接触を防止することができ、接続作業中の短絡をさらに確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に記載された接続部材は、請求項1記載の接続部材において、前記一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材を各々の被覆位置及び露出位置において前記中間絶縁部材に対して位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材を位置決め部によって被覆位置に位置決めすることで、各絶縁部材が不意に露出位置に移動してしまうことがなく、電池集合体に対する接触を防止して短絡の可能性を確実に排除することができる。一方、一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材を位置決め部によって露出位置に位置決めすることで、導電部材の一端側及び他端側の各端部を電極に接続する際に、作業者が各絶縁部材を露出位置に維持させておく必要がなくなり、接続作業性をさらに良好にすることができる。
【0015】
請求項3に記載された接続部材は、請求項1又は2記載の接続部材において、前記導電部材が金属板材から平面屈曲状に形成され、この屈曲部分を含む該導電部材の前記中間部を覆って前記中間絶縁部材が設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、屈曲部分を含んだ導電部材の中間部を覆って中間絶縁部材を設けることで、屈曲部分に引っ掛かることから導電部材に対する中間絶縁部材の移動が規制され、中間絶縁部材を導電部材に固定又は係止するための部位や部品などを省略することができる。さらに、導電部材に対する移動が規制された中間絶縁部材に一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材が支持されているので、各絶縁部材の被覆位置及び露出位置における位置精度を高めることができ、被覆位置に移動させた際の絶縁を確実にするとともに、露出位置に移動させた状態での接続作業性を確保することができる。
【0017】
請求項4に記載された本発明のバスバーモジュールは、複数の電池が重ねられた一の電池集合体と複数の電池が重ねられた他の電池集合体とを電気的に接続するバスバーモジュールであって、前記一の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第一バスバー、及び該複数の第一バスバーを収容する第一絶縁体枠を有した第一接続体と、前記他の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第二バスバー、及び該複数の第二バスバーを収容する第二絶縁体枠を有した第二接続体と、前記一の電池集合体における所定電池の第一電極と、前記他の電池集合体における所定電池の第二電極とを接続する第三接続体と、を備え、前記第三接続体が、請求項1〜3の何れか一項に記載の接続部材で構成されたことを特徴とする。
【0018】
上記構成により、前述した電源体の接続部材と同様に、第三接続体における導電部材の構造や製造工程を簡単化することができるとともに、一及び他の電池集合体同士を導電部材で接続する作業中や接続後において、導電部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【0019】
請求項5に記載された本発明の電源装置は、複数の電池が重ねられた一の電池集合体と、複数の電池が重ねられた他の電池集合体と、前記各電池集合体における複数の電池同士及び該一及び他の電池集合体の所定電池同士を接続する請求項4記載のバスバーモジュールと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
上記構成により、前述したバスバーモジュールと同様に、導電部材の構造及び製造工程を簡単化することができるとともに、一及び他の電池集合体同士を導電部材で接続する作業中や接続後において、導電部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、導電部材の構造及び製造工程を簡単化することができるので、製造コストを抑制することができる。また、接続作業中の適宜な時期において、一端側及び他端側の絶縁部材によって導電部材と電源体の接触非許容部との接触を防止することができるので、短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保することができる。また、金属板材からなる導電部材によって一及び他の電源体を接続することで、接続前の段階で電源体同士に位置ずれがあった場合でも、この位置ずれを導電部材によって矯正することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、各絶縁部材を被覆位置と露出位置とに位置決めすることで、絶縁を確実にして短絡を防止するとともに、導電部材の接続作業性の向上を図ることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、導電部材に対する中間絶縁部材の移動を規制することで、中間絶縁部材に支持された一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材の位置精度を高めることができ、確実な絶縁と良好な作業性の両方を向上させることができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、前述と同様に導電部材の製造コストを抑制するとともに、導電部材を介した短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保することができる。さらに、第一及び第二接続体と導電部材を含む第三接続体とを備えたバスバーモジュールによって、一及び他の電池集合体の各々における電池同士を接続するとともに、各電池集合体の所定電池を接続することができる。従って、バスバーモジュール各部の構造や接続方法を共通化することができるので、異種の接続構造(例えば、ワイヤハーネス等を用いたもの)を併用する場合と比較して、各部構造や接続手順の標準化を図ることができ、製造コスト削減と作業効率向上とを一層促進させることができる。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、前述のバスバーモジュールと同様に、導電部材の製造コストを抑制するとともに、導電部材を介した短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保して、電源装置の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置を分解して示す斜視図である。
【図2】前記電源装置の要部を拡大して示す平面図である。
【図3】前記電源装置における接続部材を示す斜視図である。
【図4】前記接続部材を示す断面図であり、(A)は図3のA−A線断面図、(B)は図3のB−B線断面図である。
【図5】従来の電源装置の一形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態にかかる電源装置を、図1〜図4を参照して説明する。本実施形態の電源装置1は、電動モータの駆動力によって走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとの双方の駆動力で走行するハイブリッド車などに搭載され、電動モータに電力を供給するものである。
【0028】
電源装置1は、図1に示すように、複数(本実施形態では、2個)の電池集合体2(2A,2B)と、電池集合体2の上面に取り付けられるバスバーモジュール3と、を備えている。各電池集合体2A,2Bは、それぞれ一方向(図1中の矢印Xで示す方向)に並べて重ねられる複数の電池4を備え、これらの電池4が図示しない固定部材によって束ねられて固定されている。2個の電池集合体2A,2Bは、電池4を重ねた方向と直交する方向(図1中の矢印Yで示す方向)に並設されており、図示しない連結部材やベース枠などによって電池集合体2A,2B同士が連結されている。
【0029】
なお、以下、本明細書では、電池4同士が重ねられた方向(矢印Xの方向)を縦列方向Xと記し、この縦列方向Xに直交して電池集合体2A,2B同士が並設された方向(矢印Yの方向)を横列方向Yと記し、縦列方向X及び横列方向Yに直交する方向を高さ方向Zと記す。また、以下では、2個の電池集合体2A,2Bのうち、図1中の横列方向Yの左上側に示された電池集合体2Aを一の電池集合体(一の電源体)とし、図1中の横列方向Yの右下側に示された電池集合体2Bを他の電池集合体(他の電源体)として説明する。
【0030】
複数の電池4は、それぞれ方体状の電池本体5と、正の電極(以下、正極と記す)6と、負の電極(以下、負極と記す)7と、を備えている。正極6は、電池本体5の横列方向Yに沿った一端側に設けられ、負極7は、電池本体5の横列方向Yに沿った他端側に設けられている。これらの正極6及び負極7は、導電性の金属からなるボルト等によって構成され、円柱状の軸部を電池本体5から上方に突出させて設けられている。また、各々の正極6及び負極7には、導電性の金属からなるナット等によって構成された固定部材8が螺合可能になっている。また、図1に示すように、隣り合う電池4同士は、互いの正極6と負極7とが隣り合うように並べられている。即ち、複数の電池4は、正極6と負極7とが縦列方向Xに沿って交互に正負逆となる状態で重ねられている。
【0031】
ここで、以下の説明を簡明にするために、電池集合体2Aにおいて、図1中の左上側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第一電極列E1と記し、その右下側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第二電極列E2と記す。さらに、電池集合体2Bにおいて、図1中の左上側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第三電極列E3と記し、その右下側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第四電極列E4と記す。また、第二電極列E2のうち、図1中の縦列方向X右端の1個の負極7を第一電極としての接続用負極7Aとし、第三電極列E3のうち、図1中の縦列方向X右端の1個の正極6を第二電極としての接続用正極6Aとする。さらに、第一電極列E1のうち、図1中の縦列方向X左端の1個の正極6を出力用正極6Bとし、第四電極列E4のうち、図1中の縦列方向X左端の1個の負極7を出力用負極7Bとし、これらの出力用正極6B及び出力用負極7Bが前記電動モータに接続される。
【0032】
バスバーモジュール3は、図1に示すように、第一電極列E1に取り付けられる第一構成体3Aと、接続用負極7Aを除いた第二電極列E2に取り付けられる第一接続体としての第二構成体3Bと、接続用正極6Aを除いた第三電極列E3に取り付けられる第二接続体としての第三構成体3Cと、第四電極列E4に取り付けられる第四構成体3Dと、接続用負極7A及び接続用正極6Aに取り付けられる第三接続体であり接続部材としての第五構成体3Eとを備える。
【0033】
第一構成体3A及び第四構成体3Dは、互いに略同一構成とされ、それぞれ縦列方向Xに沿って長尺枠状に形成されたバスバー収容枠10と、このバスバー収容枠10に収容される複数のバスバー11とを備えている。第二構成体3B及び第三構成体3Cは、互いに略同一構成とされ、それぞれ縦列方向Xに沿って長尺枠状に形成されたバスバー収容枠12,13と、このバスバー収容枠12,13に収容される複数のバスバー14,15とを備えている。ここで、第二構成体3Bのバスバー収容枠12によって第一絶縁体枠が構成され、複数のバスバー14によって複数の第一バスバーが構成される。また、第三構成体3Cのバスバー収容枠13によって第二絶縁体枠が構成され、複数のバスバー15によって複数の第二バスバーが構成される。
【0034】
バスバー収容枠10,12,13は、それぞれポリプロピレン樹脂などの絶縁性の合成樹脂で構成され、バスバー11,14,15を保持して下方に露出させる開口を有した底面部16と、この底面部16の四周を囲んで立設された側壁部17とを備えて形成されている。バスバー11,14,15は、それぞれ導電性の金属板材で構成されている。出力用正極6Bに取り付けられるバスバー11Aと出力用負極7Bに取り付けられるバスバー11Bとを除き、他のバスバー11,14,15には、それぞれ挿通孔18が2つずつ形成され、各挿通孔18に正極6または負極7とが挿通され、これらの正極6と負極7とを直列に接続するように構成されている。一方、バスバー11A,11Bは、出力用正極6Bまたは出力用負極7Bを挿通させる挿通孔18が1つ形成され、図示しない出力端子やワイヤハーネス等を介して電動モータに接続されている。
【0035】
一方、バスバーモジュール3の第五構成体3Eは、図2〜図4にも示すように、導電部材としての接続用バスバー20と、中間絶縁部材としての中間カバー21と、一端側絶縁部材としての第一端部カバー22と、他端側絶縁部材としての第二端部カバー23とを備えている。この第五構成体3Eは、接続用バスバー20によって接続用負極7Aと接続用正極6Aとを接続することで、電池集合体2Aと電池集合体2Bとを電気的に直列に接続するものである。
【0036】
接続用バスバー20は、導電性の金属板材からなり、一端側である電池集合体2A側の第一直線部20Aと、他端側である電池集合体2B側の第二直線部20Bと、これらを略直角に連結する屈曲部20Cとを有し、平面視で全体略L字形に形成されている。第一直線部20Aの先端側には、接続用負極7Aを挿通させる挿通孔24が設けられ、第二直線部20Bの先端側には、接続用正極6Aを挿通させる挿通孔25が設けられている。この接続用バスバー20は、各挿通孔24,25に接続用負極7A及び接続用正極6Aを挿通させた状態で、屈曲部20Cが縦列方向Xの外側に向かって突出する向きで取り付けられる。
【0037】
接続用バスバー20において、第一直線部20Aの先端部であって固定部材8が重なる挿通孔24の周辺部分によって一端側の端部26が構成され、第二直線部20Bの先端部であって固定部材8が重なる挿通孔25の周辺部分によって他端側の端部27が構成されている。また、端部26を除いた第一直線部20Aと、端部27を除いた第二直線部20Bと、屈曲部20Cとによって、接続用バスバー20の中間部28が構成されている。
【0038】
中間カバー21、第一端部カバー22及び第二端部カバー23は、それぞれポリプロピレン樹脂などの絶縁性の合成樹脂で構成されている。中間カバー21は、接続用バスバー20の中間部28を覆って設けられ、接続用バスバー20の屈曲部20Cと同様に略直角に屈曲した平面視で全体L字形に形成されている。中間カバー21の一端側被覆部21A及び他端側被覆部21Bは、それぞれ接続用バスバー20の第一直線部20A及び第二直線部20Bよりも短く形成され、即ち、中間カバー21は、接続用バスバー20の端部26,27を露出させるように構成されている。
【0039】
第一端部カバー22は、中間カバー21の一端側被覆部21Aを囲んで設けられ、この一端側被覆部21Aに沿って進退自在に支持されている。具体的に第一端部カバー22は、図3(A)に示すように、一端側被覆部21Aの先端方向に前進して接続用バスバー20の端部26を被覆する被覆位置と、図3(B)に示すように、一端側被覆部21Aの基端側に後退して接続用バスバー20の端部26を露出させる露出位置と、の間をスライド移動可能に構成されている。
【0040】
第二端部カバー23は、中間カバー21の他端側被覆部21Bを囲んで設けられ、この他端側被覆部21Bに沿って進退自在に支持されている。具体的に第二端部カバー23は、図3(A)に示すように、他端側被覆部21Bの先端方向に前進して接続用バスバー20の端部27を被覆する被覆位置と、図3(B)に示すように、他端側被覆部21Bの基端側に後退して接続用バスバー20の端部27を露出させる露出位置と、の間をスライド移動可能に構成されている。
【0041】
中間カバー21の一端側被覆部21A及び他端側被覆部21Bには、図3に示すように、露出位置にスライドさせた第一端部カバー22及び第二端部カバー23にそれぞれ当接する当接突起31が形成されている。さらに、一端側被覆部21A及び他端側被覆部21Bの各先端縁近傍には、図4に示すように、被覆位置及び露出位置にて第一端部カバー22及び第二端部カバー23をそれぞれ位置決めする係止突起32が形成されている。第一端部カバー22及び第二端部カバー23には、被覆位置にて係止突起32に係止される係止孔33と、露出位置にて係止突起32に係止される係止孔34とが形成されている。即ち、係止突起32及び係止孔33,34によって位置決め部が構成され、係止孔33が係止突起32に係止されることで、第一端部カバー22及び第二端部カバー23がそれぞれ被覆位置に位置決めされ、係止孔34が係止突起32に係止されることで、第一端部カバー22及び第二端部カバー23がそれぞれ露出位置に位置決めされる。
【0042】
以下、前述した構成の電源装置1の組立方法について説明する。
【0043】
先ず、予め、バスバーモジュール3のバスバー収容枠10,12,13、バスバー11,14,15、接続用バスバー20、中間カバー21、第一端部カバー22及び第二端部カバー23などを別々に製造しておく。一方、電池集合体2A,2Bを横列方向Yに並べて適宜な治具や固定部材で固定しておく。
【0044】
次に、2個のバスバー収容枠10内に各々複数のバスバー11を嵌め込み、バスバー収容枠12内に複数のバスバー14を嵌め込み、バスバー収容枠13内に複数のバスバー15を嵌め込むことで、第一〜第四の構成体3A〜3Dを構成する。さらに、中間カバー21内に接続用バスバー20を挿入するとともに、中間カバー21に第一端部カバー22及び第二端部カバー23を取り付けて、第五構成体3Eを構成する。なお、各バスバー11,14,15は、バスバー収容枠10,12,13にインサート成形することによって一体的に設けられていてもよく、接続用バスバー20は、中間カバー21にインサート成形することによって一体的に設けられていてもよい。
【0045】
次に、第一〜第四の構成体3A〜3Dを、それぞれ電池集合体2A,2Bの第一〜第四の電極列E1〜E4に重ねて載置し、各々対応する位置の正極6及び負極7をバスバー11,14,15の挿通孔18に挿通させる。さらに、接続用正極6A及び接続用負極7A以外の正極6及び負極7に固定部材8を螺合し、固定部材8でバスバー11,14,15を挟み込むことで、第一〜第四の構成体3A〜3Dを電池集合体2A,2Bに固定する。
【0046】
次に、図3(A)に示すように、第一端部カバー22及び第二端部カバー23をそれぞれ被覆位置にスライドさせ、接続用バスバー20の略全体を各カバー21,22,23で被覆した第五構成体3Eを電池集合体2A,2B上に位置させる。この際、第一端部カバー22及び第二端部カバー23は、それぞれの係止孔33が係止突起32に係止されることで、中間カバー21に対して被覆位置に位置決めされ、接続用バスバー20の端部26,27が被覆されている。
【0047】
次に、第一端部カバー22を押圧して係止突起32による係止孔33の係止を外し、露出位置まで第一端部カバー22をスライドさせて当接突起31に当接させるとともに、係止孔34を係止突起32に係止させる。これにより第一端部カバー22を露出位置に位置決めするとともに、接続用バスバー20の端部26を露出させる。次に、露出した端部26の挿通孔24に接続用負極7Aを挿通させて、接続用バスバー20を電池集合体2Aに仮止めする。
【0048】
次に、第二端部カバー23を押圧して係止突起32による係止孔33の係止を外し、露出位置まで第二端部カバー23をスライドさせて当接突起31に当接させるとともに、係止孔34を係止突起32に係止させる。これにより第二端部カバー23を露出位置に位置決めするとともに、接続用バスバー20の端部27を露出させる。次に、接続用負極7Aを中心として接続用バスバー20を回動させつつ、露出した端部27の挿通孔25に接続用正極6Aを挿通させる。
【0049】
次に、接続用正極6A及び接続用負極7Aのそれぞれに固定部材8を螺合し、固定部材8で接続用バスバー20を挟み込むことで、第五構成体3Eを電池集合体2A,2Bに固定する。以上によりバスバーモジュール3の全体が電池集合体2A,2Bに取り付けられ、電源装置1が組み立てられる。また、接続用バスバー20を接続した後に、バスバーモジュール3の全体、あるいは第一〜第五の構成体3A〜3Eの各々の上側を覆うように、図示しない絶縁カバーなどを取り付けてもよい。
【0050】
本実施形態によれば、並設される電池集合体2A,2Bを直列に接続する際に、導電性の金属板材からなる接続用バスバー20を用いることで、従来のワイヤハーネスを用いた接続構造と比較して接続部材の製造コストを低減させることができる。また、第五構成体3Eの接続用バスバー20で接続用正極6Aと接続用負極7Aとを接続した後において、接続用バスバー20の中間部28が中間カバー21で覆われているので、別体の被覆カバーを取り付ける必要がなく、部品点数及び作業工数を削減することができる。さらに、第五構成体3Eによる接続作業中において、必要に応じて接続用バスバー20の端部26,27を第一端部カバー22及び第二端部カバー23で覆ったり、第一端部カバー22及び第二端部カバー23をスライドさせて端部26,27を露出させたりすることで、接続用バスバー20の端部26,27が不意に接続用正極6Aや接続用負極7A以外の接触非許容部に接触することが防止できる。従って、簡単な構造の接続用バスバー20による製造コストの抑制とともに、接続作業中の短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保可能な電源装置1を提供することができる。
【0051】
また、第一端部カバー22及び第二端部カバー23が係止孔33,34を介して中間カバー21の係止突起32に係止され、被覆位置又は露出位置に位置決めされる。これにより、被覆位置に位置決めした状態においては、接触非許容部に対する接触を確実に防止することができ、露出位置に位置決めした状態においては、接続用正極6Aや接続用負極7Aへの取り付け作業を容易に実施することができる。
【0052】
また、並設される電池集合体2A,2B間において、重ねて並べた各電池4ごとの厚み寸法の誤差や重ね合わせる際の誤差の積算などにより、電池集合体2A,2Bの縦列方向Xの長さに差異が生じて、接続用正極6Aと接続用負極7Aとが位置ずれした場合であっても、接続用バスバー20の回動角度を適宜に調整して接続することで、位置ずれを吸収することができる。さらに、電池集合体2A,2B間の位置ずれが大きい場合には、金属板材からなる接続用バスバー20によって接続用正極6Aと接続用負極7Aとを引き寄せるなどして、電池集合体2A,2B間の位置ずれを矯正し、所定の公差内に電池集合体2A,2Bを位置させることができる。
【0053】
なお、前記実施形態では、電池集合体2A,2Bによって一及び他の電源体を構成したが、電源体としては単体の電池で構成されるものであってもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、電源体(電池集合体2A,2B)同士を電気的に直列に接続した電源装置1を説明したが、電源体同士を電気的に並列に接続する場合にも本発明の接続構造を適用することができる。
【0055】
さらに、本発明の接続構造は、バスバーモジュール3として利用されるものに限らず、前記実施形態における接続用バスバー20、中間カバー21、第一端部カバー22及び第二端部カバー23を備えた第五構成体3Eの部分が独立して構成された接続部材としても利用可能である。
【0056】
また、前記実施形態では、導電部材としての接続用バスバー20を平面視L字形の金属板材から構成したが、導電部材の形状や素材は任意に選択可能である。このような導電部材の形状などに伴い、中間絶縁部材(中間カバー21)や一端側絶縁部材(第一端部カバー22)、他端側絶縁部材(第二端部カバー23)の形状なども適宜に変更することができる。
【0057】
また、前記実施形態では、一端側絶縁部材(第一端部カバー22)及び他端側絶縁部材(第二端部カバー23)を中間絶縁部材(中間カバー21)にスライド移動可能に支持させたが、スライド移動に限らず、中間絶縁部材に対して一端側絶縁部材及び他端側絶縁部材を回動可能に支持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る電源体の接続構造、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる電動モータに電力を供給する駆動源として利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 電源装置
2,2A,2B 電池集合体(電源体)
3 バスバーモジュール
3B 第二構成体(第一接続体)
3C 第三構成体(第二接続体)
3E 第五構成体(第三接続体、接続部材)
4 電池
6A 接続用正極(第二電極)
7A 接続用負極(第一電極)
12 バスバー収容枠(第一絶縁体枠)
13 バスバー収容枠(第二絶縁体枠)
14 バスバー(第一バスバー)
15 バスバー(第二バスバー)
20 接続用バスバー(導電部材)
20C 屈曲部(屈曲部分)
21 中間カバー(中間絶縁部材)
22 第一端部カバー(一端側絶縁部材)
23 第二端部カバー(他端側絶縁部材)
26,27 端部
28 中間部
32 係止突起(位置決め部)
33,34 係止孔(位置決め部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の電源体の第一電極と、他の電源体の第二電極とを電気的に接続する電源体の接続部材であって、
導電性の金属板材からなり、前記第一電極に一端側が接続され、前記第二電極に他端側が接続される導電部材と、
前記導電部材における前記一端側の端部を被覆可能な一端側絶縁部材と、
前記導電部材における前記他端側の端部を被覆可能な他端側絶縁部材と、
前記導電部材における前記一端側及び他端側の端部を除く中間部を覆う中間絶縁部材と、を備え、
前記一端側絶縁部材及び前記他端側絶縁部材が、それぞれ前記導電部材の一端側及び他端側の端部を被覆する被覆位置と、該端部を露出させる露出位置と、の間を移動可能に前記中間絶縁部材に支持されたことを特徴とする電源体の接続部材。
【請求項2】
前記一端側絶縁部材及び前記他端側絶縁部材を各々の被覆位置及び露出位置において前記中間絶縁部材に対して位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする請求項1記載の接続部材。
【請求項3】
前記導電部材が金属板材から平面屈曲状に形成され、この屈曲部分を含む該導電部材の前記中間部を覆って前記中間絶縁部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の接続部材。
【請求項4】
複数の電池が重ねられた一の電池集合体と複数の電池が重ねられた他の電池集合体とを電気的に接続するバスバーモジュールであって、
前記一の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第一バスバー、及び該複数の第一バスバーを収容する第一絶縁体枠を有した第一接続体と、
前記他の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第二バスバー、及び該複数の第二バスバーを収容する第二絶縁体枠を有した第二接続体と、
前記一の電池集合体における所定電池の第一電極と、前記他の電池集合体における所定電池の第二電極とを接続する第三接続体と、を備え、
前記第三接続体が、請求項1〜3の何れか一項に記載の接続部材で構成されたことを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項5】
複数の電池が重ねられた一の電池集合体と、複数の電池が重ねられた他の電池集合体と、前記各電池集合体における複数の電池同士及び該一及び他の電池集合体の所定電池同士を接続する請求項4記載のバスバーモジュールと、を備えたことを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62103(P2013−62103A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199070(P2011−199070)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】