説明

電源回路制御システム

【課題】電源回路制御システムにおいて、DC/DCコンバータで変換した電力を定電圧電源回路により一定電圧に調整してランプ機器に供給する構成において、定電圧電源回路の故障時でもランプ機器へ安定して電力を供給することである。
【解決手段】電源回路制御システム10は、DC/DCコンバータ20で変換された直流電圧を、レギュレータ36を介してランプ機器32に供給する。電源回路制御システム10は、DC/DCコンバータ20とランプ機器32との間に接続され、スイッチ42を有するバイパス経路40と、ECU38とを備える。ECU38は、レギュレータ36の故障時に、スイッチ42のオンによりバイパス経路40を接続するとともに、DC/DCコンバータ20がランプ機器32供給用の電圧を出力するようにスイッチ42及びDC/DCコンバータ20を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電源の直流電圧を、DC/DCコンバータで変換して補機用低圧電源に供給するとともに、DC/DCコンバータで変換された直流電圧を、定電圧電源回路を介してランプ機器に供給する電源回路制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータを駆動源として走行する電気自動車または燃料電池車や、エンジンとモータとを駆動源として走行するハイブリッド車両等の電動車両が知られている。このような電動車両では、高圧電源である主バッテリを車両に搭載するとともに、主バッテリの電力をインバータで変換してモータに供給することが行われる。また、ヘッドランプ等のランプ機器への電力供給のために補機用低圧電源である補機バッテリが設けられている。補機バッテリの電圧は、主バッテリの電圧よりも低く、例えば12V等である。また、補機バッテリに、DC/DCコンバータを介して主バッテリを接続することも考えられる。例えば、主バッテリの出力電圧をDC/DCコンバータで降圧して、降圧した電圧を補機バッテリに供給することで、補機バッテリを充電する。このように主バッテリ、補機用バッテリ、DC/DCコンバータ、及びランプ機器を含む回路により、電源回路が構成され、電源回路と電源回路を制御する制御部とにより電源回路制御システムが構成される。
【0003】
また、補機バッテリの出力電圧を、定電圧電源回路であるレギュレータにより所望の定圧電圧に調節してヘッドランプ等のランプ機器に供給し、ランプ機器を点灯させることも考えられる。
【0004】
また、特許文献1には、主バッテリから出力された電力がDC/DCコンバータを介して補機バッテリに供給されるコンバータ制御装置であって、DC/DCコンバータの出力電圧が補機バッテリの温度が高いほど低くなるように制御されるとともに、電流センサによって検知される、補機バッテリに供給される電流である受け入れ電流値が大きいほど、DC/DCコンバータの出力電圧が高くなるように補正されるコンバータ制御装置が記載されている。補機バッテリは、エアコンやオーディオ等の補機類に主に供給される電力を蓄える機能を有する。また、特許文献1には、電流センサの故障時には、故障であると判断されない場合に比べて高くなるように、DC/DCコンバータの出力電圧を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−295785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、補機バッテリに、DC/DCコンバータを介して主バッテリを接続する場合で、補機バッテリからヘッドランプ等のランプ機器へ電力を供給する等の場合に、DC/DCコンバータで変換した電力をレギュレータにより一定電圧に調整してランプ機器に供給することが考えられる。ただし、DC/DCコンバータのランプ機器側への出力電圧と、レギュレータのランプ機器側への出力電圧とが異なっているため、レギュレータ故障時に安定してランプ機器へ電力を供給できない可能性がある。ランプ機器へ安定した電圧を供給できない場合、ランプ機器の不調を招くことなく、ランプ機器の性能を有効に発揮し続けるようにする面から改良の余地がある。これに対して、特許文献1には、DC/DCコンバータで変換した電力を定電圧電源回路により一定電圧に調整してランプ機器に供給する構成において、定電圧電源回路の故障時でもランプ機器へ安定して電力を供給することは開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、電源回路制御システムにおいて、DC/DCコンバータで変換した電力を定電圧電源回路により一定電圧に調整してランプ機器に供給する構成において、定電圧電源回路の故障時でもランプ機器へ安定して電力を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電源回路制御システムは、高圧電源の直流電圧を、DC/DCコンバータで変換して補機用低圧電源に供給するとともに、DC/DCコンバータで変換された直流電圧を、定電圧電源回路を介してランプ機器に供給する電源回路制御システムであって、DC/DCコンバータとランプ機器との間に接続され、スイッチを有するバイパス経路と、スイッチのオンオフ及びDC/DCコンバータの動作を制御する制御部とを備え、制御部は、定電圧電源回路の故障時に、スイッチのオンによりバイパス経路を接続するとともに、DC/DCコンバータがランプ機器供給用の電圧を出力するように制御することを特徴とする電源回路制御システムである。
【0009】
また、本発明に係る電源回路制御システムにおいて、好ましくは、DC/DCコンバータが出力するランプ機器供給用の電圧は、定電圧電源回路の正常時にランプ機器側へ出力される電圧と同じである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電源回路制御システムによれば、、DC/DCコンバータで変換した電力を定電圧電源回路により一定電圧に調整してランプ機器に供給する構成において、定電圧電源回路の故障時でもDC/DCコンバータからランプ供給用の電圧をランプ機器へ安定して供給し、ランプ機器へ安定して電力を供給できる。このため、ランプ機器の不調を招くことなく、ランプ機器の性能を有効に発揮し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施の形態の1例の電源回路制御システムを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例を示している。図1に示すように、本実施の形態の電源回路制御システム10は、例えば、エンジンとモータとを駆動源として走行するハイブリッド車両や、モータを駆動源として走行する電気自動車や燃料電池車等に設けられるモータ12を駆動するために使用される。例えば、モータ12は三相交流モータとする。また、モータ12として、発電機の機能も有するモータジェネレータを使用することもできる。
【0013】
電源回路制御システム10は、高圧電源である主バッテリ14と、システムリレー(SMR)16と、インバータ18及びモータ12とを備える。主バッテリ14は、システムリレー16を介してインバータ18に接続されており、インバータ18にモータ12が接続されている。したがって、システムリレー16が接続される、すなわちオンされると、インバータ18に直流電力が供給される。インバータ18では、直流電力が例えば三相の交流電力に変換され、三相の交流電力によりモータ12が駆動する。
【0014】
なお、モータ12が車両の走行用モータとして使用される場合の、車両の制動時には、モータ12が発電機として機能して、発電した交流電力がインバータ18で直流電力に変換され、主バッテリ14に供給されることで、主バッテリ14を充電することもできる。
【0015】
主バッテリ14は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等であり、複数のバッテリセルを直列接続したバッテリモジュールにより、または複数のバッテリセルにより構成されることができる。また、主バッテリ14の代わりとして、高圧電源である燃料電池を用いることもできる。この場合、燃料電池に充電することは行わない。また、高圧電源としてキャパシタを用いることもできる。なお、システムリレー16とインバータ18との間に昇圧コンバータや昇降圧コンバータを設けて、主バッテリ14の出力電圧を昇圧してインバータ18に供給することもできる。また、システムリレー16とインバータ18との間に、インバータ18と並列に別の第2インバータを接続し、第2インバータに第2モータ(例えば第2モータジェネレータ)を接続することもできる。
【0016】
主バッテリ14は、DC/DCコンバータ20を介して補機用低圧電源である補機バッテリ22に接続されている。補機バッテリは、例えば鉛蓄電池である。補機バッテリ22は、主バッテリ14の電圧よりも低く、例えば12V等である。なお、補機バッテリ22は充電状態等により、電圧が例えば14.5V等に変動する場合がある。このように構成されるので、主バッテリ14の電圧をDC/DCコンバータ20で降圧して補機バッテリ22に供給し、補機バッテリ22を充電することができる。補機バッテリ22は、電子制御ブレーキ(以下、「ECB」という。)24や、電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)26や、ヘッドランプ28、ブレーキランプ30等を含むランプ機器32、またはその他の1以上の補機である別補機34に電力を供給するために使用される。
【0017】
このため、ECB24、EPS26、及び別補機34は、補機バッテリ22に接続されている。また、ECB24、EPS26、及び別補機34と補機バッテリ22とは、DC/DCコンバータ20の低圧側に接続されている。
【0018】
また、DC/DCコンバータ20の低圧側と、補機バッテリ22とは、定電圧電源回路であるレギュレータ36を介して、ヘッドランプ28及びブレーキランプ30を含むランプ機器32に接続されている。このため、正常な使用状態では、DC/DCコンバータ20及び補機バッテリ22の一方または両方からの電圧がレギュレータ36で一定電圧(例えば13.9V)に調整され、調整後の電圧がランプ機器32に供給されて、ランプ機器32を点灯させることができる。なお、図示は省略するが、ランプ機器32には、それぞれの点灯・消灯を切り換えるためのそれぞれに対応するスイッチやリレーを設けることができる。また、DC/DCコンバータ20は、制御部であるECU(Electronic Control Unit)38により動作が制御される。ECU38は、CPU、メモリ等の記憶部を有するマイクロコンピュータを含む。
【0019】
このように構成されるので、主バッテリ14の直流電圧が、DC/DCコンバータ20で変換されて補機バッテリ22に供給されるとともに、DC/DCコンバータ20で変換された直流電圧である変換後電圧や、補機バッテリ22の出力電圧が、レギュレータ36を介してランプ機器32に供給される。
【0020】
また、本実施の形態では、DC/DCコンバータ20の補機バッテリ22接続側とランプ機器32との間に、バイパス経路40が接続されている。バイパス経路40の途中には、トランジスタ等の半導体スイッチング素子等により構成されるスイッチ42が設けられている。スイッチ42の開閉、すなわちオンオフは、ECU38により制御される。また、ランプ機器32とレギュレータ36及びスイッチ42との間には、電圧センサ44が設けられており、電圧センサ44で検知されたランプ機器32の入力電圧は、ECU38に入力されている。また、レギュレータ36からは正常に動作しているか否かを知らせる信号がECU38に入力されている。
【0021】
また、ECU38は、レギュレータ36が故障していると判定した場合、すなわちレギュレータ36の故障時に、スイッチ42がオンし、バイパス経路40がスイッチ42を含めて接続されるように、スイッチ42を制御する。これとともに、ECU38は、レギュレータ36の故障時に、DC/DCコンバータ20がランプ機器32用の電圧であり、レギュレータ36の正常時にランプ機器32側へ出力される電圧(例えば13.9V)と同じ大きさの変換後電圧Voが出力されるように、DC/DCコンバータ20を制御する。ECU38では、予めDC/DCコンバータ20に主バッテリ14側から入力される電圧が設定されているので、電圧センサ44の検出電圧を用いて、変換後電圧Voを所望値に制御することができる。なお、DC/DCコンバータ20は自身で変換後電圧Voを取得できるので、その変換後電圧Voが所望値になるように制御されることもでき、その場合には、ランプ機器32とレギュレータ36及びスイッチ42との間から電圧センサ44を省略することもできる。
【0022】
このような電源回路制御システム10によれば、DC/DCコンバータ20で変換した電力をレギュレータ36により一定電圧に調整してランプ機器32に供給する構成において、レギュレータ36の故障時には、バイパス経路40が接続されるとともに、DC/DCコンバータ20の出力電圧である変換後電圧Voがランプ機器32への供給用の電圧に調整される。このため、補機バッテリ22やDC/DCコンバータ20からレギュレータ36をバイパスしてランプ機器32に適切な電圧が供給される。したがって、レギュレータ36の故障時でも、DC/DCコンバータ20からランプ供給用の変換後電圧Voをランプ機器32へ安定して供給することができ、ランプ機器32へ安定して電力を供給できる。この場合、仮に、補機バッテリ22の電圧が変換後電圧Vo(例えば13.9V)よりも高い電圧(例えば14.5V)となる場合でも、補機バッテリ22の電圧がDC/DCコンバータ20の変換後電圧Voと一致するように瞬時に低下し、電圧が異なる状態は瞬時に解消されるので、問題は発生しない。この結果、本実施の形態によれば、ランプ機器32の不調を招くことなく、ランプ機器32の性能を有効に発揮し続けることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 電源回路制御システム、12 モータ、14 主バッテリ、16 システムリレー(SMR)、18 インバータ、20 DC/DCコンバータ、22 補機バッテリ、24 電子制御ブレーキ(ECB)、26 電動パワーステアリング装置(EPS)、28 ヘッドランプ、30 ブレーキランプ、32 ランプ機器、34 別補機、36 レギュレータ、38 ECU、40 バイパス経路、42 スイッチ、44 電圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧電源の直流電圧を、DC/DCコンバータで変換して補機用低圧電源に供給するとともに、DC/DCコンバータで変換された直流電圧を、定電圧電源回路を介してランプ機器に供給する電源回路制御システムであって、
DC/DCコンバータとランプ機器との間に接続され、スイッチを有するバイパス経路と、
スイッチのオンオフ及びDC/DCコンバータの動作を制御する制御部とを備え、
制御部は、定電圧電源回路の故障時に、スイッチのオンによりバイパス経路を接続するとともに、DC/DCコンバータがランプ機器供給用の電圧を出力するように制御することを特徴とする電源回路制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電源回路制御システムのおいて、
DC/DCコンバータが出力するランプ機器供給用の電圧は、定電圧電源回路の正常時にランプ機器側へ出力される電圧と同じであることを特徴とする電源回路制御システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−205345(P2012−205345A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65737(P2011−65737)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】