説明

電源消費側装置、電源消費制御システム、電源消費制御方法および電源消費制御プログラム

【課題】運用系と予備系の機器あるいは装置を備え、複数の電源系統から電源の供給を受ける際に一部の電源系統が故障した場合でも、各電源系統に定格オーバが発生せずにシステムの運用を可能とする電源消費側装置、電源消費制御システム、方法およびプログラムを得ること。
【解決手段】電源消費側装置10の二重化手段11は、運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成である。障害時過電流要否判別手段13は、電源の供給に関する障害が発生したとき障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたとき予備系装置電源遮断手段14で予備系装置の必要数に対する電源の供給を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源消費側装置、電源消費制御システム、電源消費制御方法および電源消費制御プログラムに係わり、特に電源の過負荷を解消するために好適な電源消費側装置、電源消費制御システム、電源消費制御方法および電源消費制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の通信ネットワークの発展に伴って事業用のネットワーク装置をフロアに新たに設置する機会が増えている。このようなネットワーク装置の中には消費電力が比較的大きいものがある。消費電力の比較的大きなネットワーク装置を設置する場合には、高い電流値に耐えることのできる径の太い電源ケーブルを使用して工事が行われるのが一般的である。
【0003】
ところが、径の太い電源ケーブルを工事に使用すると、径の細い電源ケーブルと比較してケーブルの加工が困難になって、工事に手間取るという問題がある。また、太い電源ケーブルに大電流を流すことから、大規模で高価な電源設備が必要となる。この結果、フロアスペースを有効に活用することができなかったり、工事費用が高騰するといった各種の問題が発生する。
【0004】
そこで、本発明に関連する第1の関連技術として、ロードバランス(負荷分散)の手法を採用することが提案されている。この手法では、電源系統を複数に分割して、1系統あたりの電流値を低くして径の細い電源ケーブルを使用できるようにしている。
【0005】
図13は、第1の関連技術による電源消費制御方法を示したものである。同図(A)に示す第1のネットワーク機器101と、同図(B)に示す第2のネットワーク機器102が存在するものとする。これらのネットワーク機器101、102は共に消費電流が200A(アンペア)であるとする。
【0006】
同図(A)に示す第1のネットワーク機器101は、第1の電源設備103との間に1本の一次側電源ケーブル104を使用している。一次側電源ケーブル104は、200Aの定格を有する電源ケーブルである。
【0007】
同図(B)に示す第2のネットワーク機器102は、第2の電源設備105との間に4本(4系統)の一次側電源ケーブル1061〜1064を使用している。これらの一次側電源ケーブル1061〜1064は、共に50Aの定格を有する電源ケーブルである。すなわち、第2のネットワーク機器102は4本の一次側電源ケーブル1061〜1064を用いることで、合計で200Aの定格を達成している。
【0008】
同図(A)の一次側電源ケーブル104と同図(B)の一次側電源ケーブル1061〜1064を比較すると、一次側電源ケーブル1061〜1064の方が1本当たりに流す電流が少ないのでケーブルの太さをその分だけ細くできる。したがって、ケーブルの加工が容易であり、工事が簡単になって、太い電源ケーブルを使用する場合に生じる問題を解消することができる。
【0009】
ところが同図(B)に示すように負荷分散を行うために電源を多系統化すると、このうちの一部の電源系統に故障が発生したときに残りの電源系統に電源の負荷が集中するという新たな問題が発生する。この電源の負荷集中によって通信システムがダウンすると、通信の信頼性を確保することができなくなる。
【0010】
図14は、多系統化した電源の一部が故障した場合の状況を説明するためのものである。図13(B)と同様に、第2のネットワーク機器102と第2の電源設備105の間には4本(4系統)の一次側電源ケーブル1061〜1064が接続されている。図13(B)に示したように一次側電源ケーブル1061〜1064のそれぞれが50Aの電流を第2のネットワーク機器102に供給しており、これら4系統の電源でロードバランスされている。
【0011】
ある時点で、図14に「×」印111で示したように一次側電源ケーブル1061が故障して、第2の電源設備105から第2のネットワーク機器102への電源供給ができなくなったものとする。これ以後は3本の一次側電源ケーブル1062〜1064が第2のネットワーク機器102への電源供給のロードバランスを行う。この結果として、4本の一次側電源ケーブル1061〜1064のそれぞれに流れていた50Aの電流は、3本の一次側電源ケーブル1062〜1064でロードバランスを行う結果として1本当たり約66.7Aの電流に増加する。
【0012】
4本の一次側電源ケーブル1061〜1064の定格電流はそれぞれ50Aであるため、故障後の3本の一次側電源ケーブル1062〜1064を流れる電流は、定格を超えた状態となる。これにより、第2の電源設備105は3本の一次側電源ケーブル1062〜1064への電源供給を遮断する。すると、第2のネットワーク機器102は第2の電源設備105からの電源供給を完全に絶たれることになって、その動作を停止してしまう。
【0013】
図13および図14を用いて説明したように、多系統化した電源のうちの少なくとも1系統に故障が発生すると、残りの系統に負荷が集中する。この結果として、ネットワーク機器への電源供給が不可能になって、システムダウンを招くという問題が発生する。
【0014】
以上の問題に対しては、障害で使用できなくなった系統以外の系統だけを用いても過負荷とならないようにネットワーク機器等の電流を消費する側の装置の消費電流を抑える工夫が有効である。そこで本発明に関連する第2の関連技術として、1つの装置内での電源としてのバッテリと電気部品との関係の技術として、これらの電気部品に優先順位を付けて消費電力を制限する技術が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0015】
この第2の関連技術では、各電気部品が消費する各消費電力の和を求め、その積算値と供給可能な電力値とを比較するようにしている。比較の結果として、供給可能電力を消費電力の積算値が上回った時に、電力の制限が可能な電気部品が存在するか否かを判断する。このような電力制限可能な電気部品が存在する場合には、優先順位に応じてこれらの電気部品の消費電力を制限する。対象となるすべての電気部品の消費電力を制限しても供給可能電力を上回る場合には、コンピュータシステムの終了処理を行った後、そのノートパソコンをシャットダウンする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−034370号公報(第0036段落〜第0040段落、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この第2の関連技術では、消費電力の制限が可能な電気部品を見つけ出して、それらの電気部品の消費電力を優先順位に従って可能な範囲で制限するようにしている。しかしながら最近の多くの装置あるいは電気部品には、地球資源の有効利用の観点から消費電力を可能な限り低減する努力が既に払われている。したがって、電力制限を大幅に可能な電気部品を見つけることは一般に困難な場合が多い。
【0018】
特に図13および図14を用いて説明したような例のような場合には、一次側電源ケーブル1061〜1064のうちのわずか1本が故障しても、全体に必要とする200Aのうちの4分の1の50Aが不足することになる。したがって、第2の関連技術で示されたバックライトの電力消費の制限やCD−ROMドライブの駆動開始時時の制御による電力消費の制限の程度では、複数系統のうちの少なくとも1系統が故障した場合の供給電力の減少に対処できないという問題がある。
【0019】
システムダウンも招く恐れのあるこのような電源供給についての問題は、特に重要な機器あるいは装置において深刻である。通信等に使用する多くの重要な機器あるいは装置を用いたシステムでは、機器あるいは装置を運用系と予備系に二重化することで、一方の機器あるいは装置の障害の発生に対処している。しかしながら、これら二重化されたシステムであっても、運用系と予備系の機器あるいは装置の双方に電源の供給が正常に行われるのが大前提となっている。電源の供給不足が発生すれば、運用系と予備系の機器あるいは装置を有効に動作させることができない。
【0020】
そこで本発明の目的は、運用系と予備系の機器あるいは装置を備え、かつ複数の電源系統から電源の供給を受ける場合に一部の電源系統が故障した場合でも、各電源系統に定格オーバが発生せずにシステムの運用を可能とする電源消費側装置、電源消費制御システム、電源消費制御方法および電源消費制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明では、(イ)運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段と、(ロ)外部から複数系統の電源ケーブルによってそれぞれ定格電流の範囲で供給された電源を足し合わせてこの二重化手段全体の電源として供給するロードバランス型電源供給手段と、(ハ)前記した複数系統の電源ケーブルの一部に前記したロードバランス型電源供給手段に対する電源の供給に関する障害が発生したとき残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別手段と、(ニ)この障害時過電流要否判別手段が前記した残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したとき前記したロードバランス型電源供給手段による前記した二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断手段とを電源消費側装置が具備する。
【0022】
また、本発明では、(イ)請求項1〜請求項8いずれかに記載の電源消費側装置と、(ロ)この電源消費側装置に前記した複数系統の電源ケーブルを使用して電源を供給する電源設備とを電源消費制御システムが具備する。
【0023】
更に本発明では、(イ)運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する障害発生検出ステップと、(ロ)この障害発生検出ステップで障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別ステップと、(ハ)この障害時過電流要否判別ステップで定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記した二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断ステップとを電源消費制御方法が具備する。
【0024】
更にまた、本発明では、運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置のコンピュータに、電源消費制御プログラムとして、(イ)この電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する障害発生検出処理と、(ロ)この障害発生検出処理で障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別処理と、(ハ)この障害時過電流要否判別処理で定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記した二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、電源の供給に関する障害が発生して電源ケーブルに定格を超える電流が流れる可能性がある間、従来から一体として電源の供給の対象とされてきた運用系装置と予備系装置のうちの予備系装置の少なくとも一部について電源の供給を遮断することにした。これにより、実際の運用を確保した状態で電源ケーブルに定格を超える電流が流れる事態を回避できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の電源消費側装置のクレーム対応図である。
【図2】本発明の電源消費制御システムのクレーム対応図である。
【図3】本発明の電源消費制御方法のクレーム対応図である。
【図4】本発明の電源消費制御プログラムのクレーム対応図である。
【図5】本発明の実施の形態における電源消費制御システムの構成の概要を表わしたブロック図である。
【図6】本実施の形態における一次側電源ケーブルの1つに故障が発生した際の電源消費制御システムの動作の概要を表わした説明図である。
【図7】本実施の形態における電源装置の構成の概要を表わしたブロック図である。
【図8】本実施の形態の電源装置による障害発生時の消費電力制御の様子を表わした流れ図である。
【図9】本実施の形態における休止する予備系サーバを特定する処理の様子を表わした流れ図である。
【図10】本発明の変形例における電源消費制御システムの構成の概要を表わしたブロック図である。
【図11】変形例における電源装置による障害発生時の消費電力制御の様子を表わした流れ図である。
【図12】変形例における第1の予備系サーバの機能的な構成を表わしたブロック図である。
【図13】第1の関連技術による電源消費制御方法を示した説明図である。
【図14】第1の関連技術で多系統化した電源の一部が故障した場合の状況を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の電源消費側装置のクレーム対応図を示したものである。本発明の電源消費側装置10は、二重化手段11と、ロードバランス型電源供給手段12と、障害時過電流要否判別手段13と、予備系装置電源遮断手段14を備えている。ここで、二重化手段11は、運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされている。ロードバランス型電源供給手段12は、外部から複数系統の電源ケーブルによってそれぞれ定格電流の範囲で供給された電源を足し合わせてこの二重化手段11全体の電源として供給する。障害時過電流要否判別手段13は、前記した複数系統の電源ケーブルの一部にロードバランス型電源供給手段12に対する電源の供給に関する障害が発生したとき残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する。予備系装置電源遮断手段14は、障害時過電流要否判別手段13が前記した残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したときロードバランス型電源供給手段12による前記した二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する。
【0028】
図2は、本発明の電源消費制御システムのクレーム対応図を示したものである。本発明の電源消費制御システム20は、電源消費側装置21と、電源設備22を備えている。ここで、電源消費側装置21は、請求項1〜請求項8いずれかに記載の装置である。電源設備22は、電源消費側装置21に複数系統の電源ケーブルを使用して電源を供給する。
【0029】
図3は、本発明の電源消費制御方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の電源消費制御方法30は、障害発生検出ステップ31と、障害時過電流要否判別ステップ32と、予備系装置電源遮断ステップ33を備えている。ここで、障害発生検出ステップ31では、運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する。障害時過電流要否判別ステップ32では、障害発生検出ステップ31で障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する。予備系装置電源遮断ステップ33では、障害時過電流要否判別ステップ32で定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記した二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する。
【0030】
図4は、本発明の電源消費制御プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の電源消費制御プログラム40は、運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置のコンピュータに、障害発生検出処理41と、障害時過電流要否判別処理42と、予備系装置電源遮断処理43を実行させるようにしている。ここで、障害発生検出処理41では、前記した電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する。障害時過電流要否判別処理42では、障害発生検出処理41で障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する。予備系装置電源遮断処理43では、障害時過電流要否判別処理42で定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記した二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する。
【0031】
<発明の実施の形態>
【0032】
次に本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
図5は、本発明の実施の形態における電源消費制御システムの構成の概要を表わしたものである。本実施の形態の電源消費制御システム200は、ネットワーク機器201と、このネットワーク機器201に電源を供給する電源設備202を備えている。ネットワーク機器201と電源設備202は、互いに同一のフロアまたは近隣のフロアに設置されている。ネットワーク機器201と電源設備202の間には、4本の一次側電源ケーブル2031〜2034が接続されている。
【0034】
ネットワーク機器201は二重化されており、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114と、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124およびこれらに電源を供給する電源装置(PEM:Power Equipment Module)213を備えている。第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124はサービスを提供しておらず、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114からなる運用系のいずれかのサーバが故障した際に代替となる装置である。
【0035】
電源装置213には電源設備202にそれぞれ一端を接続した4本の一次側電源ケーブル2031〜2034の他端が接続されている。第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114と第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124は、電源端子P11〜P14、P21〜P24のうちの対応するものから電源の供給を受けるようになっている。また、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114と第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124は、電源装置213から電源制御信号21411〜21414、21421〜21424のうちの対応するものの供給を受けて、自サーバ内の電源を制御するようになっている。
【0036】
電源装置213は電源に関する障害を検出すると、障害の内容を表わした修理要求信号216をネットワーク機器201の外部に送出するようになっている。修理要求信号216はネットワークの管理者あるいは契約先の保守会社に通知され、電源消費制御システム200の必要な点検や故障個所の修理が行われる。
【0037】
このような電源消費制御システム200で、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114および第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124は、それぞれ25Aの消費電力となっている。したがって、ネットワーク機器201の全体の消費電力は200Aである。電源装置213は、1次側電源系統を4系統で等しくパワーバランスする機能を持っている。
【0038】
一次側電源ケーブル2031〜2034には、ネットワーク機器201の全体の消費電力が200Aであるので、これを4分割した50Aずつの電流が流れる。一次側電源ケーブル2031〜2034は、それぞれが50Aの定格を有している。
【0039】
電源設備202は、一次側電源ケーブル2031〜2034のそれぞれを流れる電流を検出して、これらが定格オーバとなると、安全を確保するために対応する電源の供給を遮断する図示しないブレーカを備えている。
【0040】
図5に示した状態では、一次側電源ケーブル2031〜2034のそれぞれが50Aずつの電流を流しており、前記したブレーカは作動していない。この状態で電源装置213は電源に関する障害が発生していないことを判別しており、電源制御信号21411〜21414、21421〜21424のすべてを「電源動作」の信号内容にしている。この状態で、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114と第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124には、電源装置213が電源を25Aずつ供給している。
【0041】
図6は、一次側電源ケーブルの1つに故障が発生した際の電源消費制御システムの動作の概要を表わしたものである。ここでは「×」印221で示したように一次側電源ケーブル2031に断線等の故障が発生したものとする。これにより、電源装置213は電源設備202から一次側電源ケーブル2031を介して供給されていた電流が供給されなくなる。この結果、1次側の電源系統は3系統に減少し、合計で150Aとなる。
【0042】
ネットワーク機器201内の全消費電流を3系統の一次側電源ケーブル2032〜2034で賄うとした場合、従来行われていたロードバランス方式を用いると、図14で説明したように一次側電源ケーブル2032〜2034のそれぞれを流れる電流は約66.7Aとなり、定格をオーバする。
【0043】
本実施の形態では、このような定格オーバの事態を防止するためにネットワーク機器201内の電源装置が特別の構成となっている。
【0044】
図7は、電源装置の構成の概要を表わしたものである。図5と共に説明する。
【0045】
電源装置213はCPU(Central Processing Unit)231と、このCPU231が実行するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)等のメモリ232を有する主制御部233を備えている。主制御部233は、データバス等のバス234を介して電源装置213内の各部と接続されている。
【0046】
このうちの一次側電源ケーブル障害検出部235は、図5に示した一次側電源ケーブル2031〜2034のそれぞれの電流の値を監視して、これらの障害の発生を検出する。
【0047】
サーバ運用系・予備系配置テーブル236は、電源装置213が電源を供給するサーバの数と、どのサーバが運用系であり、どのサーバが予備系であるかを一覧表にして監理している。本実施の形態では第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114が運用系のサーバとして、また第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124が予備系のサーバとして記録されている。
【0048】
電源制御信号生成部237は、電源制御信号21411〜21414、21421〜21424の生成を行う。これら電源制御信号21411〜21414、21421〜21424は、一次側電源ケーブル障害検出部235が一次側電源ケーブル2031〜2034の何系統について障害を検出したかという障害情報と、サーバ運用系・予備系配置テーブル236における各サーバの配置情報とに基づいて生成される。生成される電源制御信号21411〜21414、21421〜21424は、該当するサーバを動作状態とするか休止状態とするかを示す内容となる。
【0049】
図6に示した例では、第1および第2の予備系サーバ2121、2122に対してこれらを休止状態とする電源制御信号21421、21422が供給されており、これらのサーバが休止状態となっている。第1および第2の予備系サーバ2121、2122は予備系のサーバなので、ネットワーク機器201の運用に影響しない。休止状態に関する制御については、後に説明する。
【0050】
修理要求信号通信部238は、予め定めた内容の障害が発生したとき修理要求信号216を生成し、ネットワークの管理者あるいは契約先の保守会社等の予め定めた宛先にこれを通知するようになっている。修理要求信号216には、現時点で電源が供給されている運用系サーバ211や予備系サーバ212のリストが添付されていてもよい。これにより通知を受信した者は修理の緊急度を判別することができる。
【0051】
系切替履歴・優先度記憶部239は、サーバ運用系・予備系配置テーブル236に記された第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114と第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124について、それぞれの系の切り替えの履歴と、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114の優先度を記憶するようになっている。ここで系の切り替えの履歴は、次に系の切り替えが行われるサーバを予測するのに使用される。優先度は、第1〜第4の系統について予備系をより必要とする系のサーバを判別する資料となる。また、系の切り替えの履歴は、次に系の切り替えが発生しにくいと判別される統計的な順位を判別する資料となる。
【0052】
なお、図7に示した電源装置213を構成する一次側電源ケーブル障害検出部235等の各部はハードウェアによって構成してもよいし、少なくとも一部をCPU231がプログラムを実行することで実現するソフトウェア機能部で構成してもよい。
【0053】
図8は、電源装置による障害発生時の消費電力制御の様子を表わしたものである。図6および図7と共に説明する。
【0054】
電源装置213の主制御部233は一次側電源ケーブル障害検出部235が一次側電源ケーブル2031〜2034のいずれかについて電源供給の障害を検出するのを待機している(ステップS301)。一次側電源ケーブル2031〜2034のいずれかの障害が検出されると(Y)、主制御部233はこの障害により現時点で電源設備202からネットワーク機器201に対して電源を供給できないケーブルの本数を特定する(ステップS302)。たとえば図6に示すように1本の一次側電源ケーブル2031に障害が検出された場合、この本数は「1」となる。
【0055】
次に主制御部233は、ステップS303で判別した本数と障害の発生した一次側電源ケーブル203に割り当てられた電流値を基にして、一次側電源ケーブル2031〜2034の全部に定格電流が流れる場合から減少する消費電流の値を算出する(ステップS303)。一次側電源ケーブル2031〜2034はそれぞれ50Aの定格を有しているので、合計200Aの電流を流すことができる。一次側電源ケーブル2031が使用できなくなったので、残りの一次側電源ケーブル2032〜2034に過電流を流さないと仮定した場合、減少する消費電流は50Aとなる。
【0056】
システムによっては一次側電源ケーブル203の本数に定格値を掛けた値よりも少ない電流を電源装置213が必要としている場合がある。たとえば電源装置213が180Aの消費電流であった場合、一次側電源ケーブル2031が使用できなくなったときの減少する消費電流は30Aとなる。
【0057】
主制御部233は、ステップS303で減少する消費電流を算出したら、これに対応させて何台のサーバを休止すればよいかを算出する(ステップS304)。第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114と第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124が共に1台で25Aの消費電流であるとすると、減少する消費電流が50Aのときは2台となる。消費電流が30Aのときも算出結果は2台となるが、ここでは電源装置213の全体の消費電流が200Aであることを前提に話を進める。
【0058】
主制御部233は、次に算出したこのサーバの休止すべき台数がサーバ運用系・予備系配置テーブル236に記されている予備系サーバ212の総数以下であるかを判別する(ステップS305)。これは、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の一部または全部を休止させてこれらの消費電流をゼロにすることで、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114のすべてを省電力モードに移行させないで済むか否かの判別である。
【0059】
算出したサーバの台数がサーバ運用系・予備系配置テーブル236に記されている予備系サーバ212の総数以下であると判別した場合(ステップS305:Y)、主制御部233は第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の中から休止させるサーバを特定する(ステップS306)。減少する消費電流が50Aの場合、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124から2台のサーバを特定すればよいことになる。
【0060】
図9は、休止させる予備系サーバを特定する処理の様子を表わしたものである。図7と共に説明する。
【0061】
主制御部233は系切替履歴・優先度記憶部239に記憶された情報を読み出して、電源消費制御システム200の管理者が第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114について障害時の二重化について優先度を設定しているかどうかをチェックする(ステップS321)。電源消費制御システム200の管理者は、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124について事前に優先度あるいは優先順位を設定してこれを系切替履歴・優先度記憶部239に記憶させることができる。
【0062】
優先度の設定が行われていれば(ステップS321:Y)、優先度の高い運用系サーバ211に対応する予備系サーバ212ほど休止状態に移行しないように、必要台数の予備系サーバ212について休止を決定して(ステップS322)、休止する予備系サーバ212を特定する処理を終了する(エンド)。
【0063】
ステップS321で優先度の設定が行われていないと判別した場合、主制御部233は系切替履歴・優先度記憶部239に記憶されているそれぞれの系の切り替えの履歴情報を読み出す。そして、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の中で、系の切り替えが発生する可能性が最も低い予備系サーバ212から順に休止を決定して(ステップS323)、休止する予備系サーバ212を特定する処理を終了する(エンド)。
【0064】
図8に戻って電源装置213による障害発生時の消費電流の制御の続きを説明する。ステップS306で休止する予備系サーバ212を特定したら、電源制御信号生成部237はこれらに対する電源制御信号214を動作状態を指示する信号内容から休止状態を指示する信号内容に切り替える。そして、切り替え後の休止状態を指示する電源制御信号214を該当する予備系サーバ212に送出する(ステップS307)。該当する予備系サーバ212は電源制御信号214によって休止状態となり、これらの消費電流はゼロとなる。予備系サーバ212が休止状態となっても、ネットワーク機器201の運用自体に直接的な影響は生じない。
【0065】
主制御部233は該当する予備系サーバ212に休止状態を指示する電源制御信号214を送出させた後、修理要求信号通信部238に修理要求信号216の送信を行わせる(ステップS308)。以上により、供給電流の減少分を予備系サーバ2121〜2124の全部または一部の休止によって帳尻をとるようにした一次側電源ケーブル2031〜2034の障害発生時における消費電流の制御の処理を終了する(エンド)。
【0066】
図6に示した例では第1および第2の予備系サーバ2121、2122が休止の対象として特定され(ステップS306)、電源制御信号21421、21422が休止状態を指示する信号としてこれらの予備系サーバ2121、2122に送出されたことになる(ステップS307)。
【0067】
修理要求信号216が電源消費制御システム200の管理者あるいは契約先の保守会社に直ちに通知されるので、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114が運用されている状態で一次側電源ケーブル2031の障害が復旧する可能性が高い。障害が復旧すれば、図示しない制御によってネットワーク機器201は電源制御信号21421、21422を動作状態に切り替えて第1および第2の予備系サーバ2121、2122の休止状態を解除することになる。
【0068】
次に、4本の一次側電源ケーブル2031〜2034の幾本かの障害による供給電流の減少分が全予備系サーバ2121〜2124の休止によってはカバーされない場合を説明する。これは、ステップS304で算出したサーバの台数がサーバ運用系・予備系配置テーブル236に記されている予備系サーバ212の総数を超える場合である(ステップS305:N)。この場合、主制御部233は電源制御信号生成部237を指示して、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の全部に対して休止を指示する電源制御信号21421〜21424を送出させる(ステップS309)。
【0069】
続いて主制御部233は電源制御信号生成部237を指示して、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114の全部に対して省電力モードへの移行を指示する電源制御信号21411〜21414を送出させる(ステップS310)。ここで第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114のそれぞれが省電力モードで節約する消費電流は、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の全部が休止してこれらの消費電流がゼロになったことを考慮すると、更に必要とする節約分の4分の1の量となる。
【0070】
以上のような指示を行って、電源装置213による障害発生時の消費電流の制御が終了する(エンド)。
【0071】
なお、図5および図6に示した例で、4本の一次側電源ケーブル2031〜2034のうちの2本が同時に故障するという統計的に確率が低い場合であっても、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の全部を休止状態とすれば消費電流の不足は解消する。したがって、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114を省電力モードでの運用に移行させる確率はかなり低くなる。
【0072】
以上説明したように本実施の形態によれば、運用系と予備系の2つの系を備えるシステムで、電源設備202からネットワーク機器201に与える電源を複数の一次側電源ケーブル203を使用して複数系統で供給することにした。しかも本実施の形態では、二重化の要請のために本来は常に電源の供給が行われる予備系サーバ212をまず休止させて消費電流を抑えることにした。
【0073】
これにより、複数の一次側電源ケーブルの一部に障害が発生して電源の供給が部分的に絶たれても、ロードバランスの手法によるロードバランス型電源装置213を採用して、ネットワーク機器201の動作に影響を与えずに、電流に関する定格オーバの事態の発生を効果的に防止することができる。
【0074】
しかも本実施の形態では、一次側電源ケーブルに障害が発生すると修理要求信号216が出力される。したがって、一次側電源ケーブルに障害が発生して一時的に運用系サーバ211のみの運用が行われるようになっても、予備系サーバ212を必要とする時点までに修理が行われる可能性が高い。
【0075】
更に、本実施の形態では第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の一部を休止状態とするとき、優先度や系の切り替えの履歴を参考にして休止するサーバを選定できるようにした。これにより、運用系から予備系に系の切り替えが行われる場合でも、運用の停止を最小限にすることができる。
【0076】
もちろん、本実施の形態では高い信頼性を保ちながらネットワーク機器の1次電源を多系統化するので、1系統あたりの電源ケーブルの定格値を下げることができ、電源ケーブルの径の太さが細くなった分だけ工事が容易になる。したがって、電源ケーブルの接続を行う機器の設置の自由度も向上し、機器を設置するフロアのスペースの有効利用を図ることも可能になる。
【0077】
<発明の変形可能性>
【0078】
図10は、本発明の変形例における電源消費制御システムの構成の概要を表わしたものである。この図10で図5と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この変形例では、一次側電源ケーブル203の比較的多い本数が同時に障害を発生したような場合にも、定格オーバが発生せずにシステムの運用を続行できるようになっている。
【0079】
この変形例の電源消費制御システム200Aで、ネットワーク機器201A内の電源装置213Aは、一次側電源ケーブル2031〜2034のいずれかについて電源供給に関する障害が検出されると、減少する消費電流の量を判別する。この判別した消費電流の量が第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の一部または全部の休止状態の移行によって帳尻がとられる場合、電源装置213Aは、予備系サーバ212に対して電源制御信号214Aとして休止状態を指示する内容の信号を出力する。この制御は、先の実施の形態と同様である。
【0080】
図10で「×」印221〜223として例示したように一次側電源ケーブル2031〜2033の3本が同時に故障して電源の供給ができなくなった場合を考える。この場合には、ネットワーク機器201Aの全体の消費電流が200Aであったのに対して、電源設備202はこのうちの50Aしか賄うことができない。したがって、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124のすべてを休止させても、依然として50Aの消費電流が不足する。
【0081】
このとき、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114をすべて一般的な省電力モードにしても、全体として100Aの消費電流を50Aまで低下させることは困難な場合が多い。また、実施の形態の場合のように一律に省電力モードを定義して実行しようとすると、消費電流の不足が結果的に軽微なときであっても大幅な省電力を行うように設定しておかざるを得なくなり、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114の動作に問題が生じる場合がある。この一方で消費電流の不足がかなりの電流量の場合には定格オーバの事態が発生する。
【0082】
そこで、この変形例の電源消費制御システム200Aでは、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124のすべてを休止させても消費電流が不足する場合には、その不足量を第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114の1台当たりの量として演算することにしている。演算した1台当たりの不足量は、電源装置213Aが電源制御信号214Aとして第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114に指示する。これにより、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114は消費電流の低減を最適な値で行うことができる。
【0083】
図11は、図8に対応するもので、この変形例における電源装置による障害発生時の消費電力制御の様子を表わしたものである。図7および図10と共に説明する。ただし、図7で主制御部233は主制御部233Aに置き換え、電源制御信号生成部237は、電源制御信号生成部237Aに置き換える。また、電源制御信号21411〜21424は、電源制御信号21411A〜21424Aに置き換える。更に、図11で図8と同一の処理を行う場合には、同一のステップ番号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
【0084】
電源装置213Aの主制御部233Aは一次側電源ケーブル障害検出部235が一次側電源ケーブル2031〜2034のいずれかについて電源供給についての障害を検出するのを待機している(ステップS301)。障害が検出されると(Y)、主制御部233Aはこの障害により現時点で電源設備202からネットワーク機器201に対して電源を供給できない一次側電源ケーブル203の本数を特定する(ステップS302)。図10に示す場合には3本の一次側電源ケーブル2031〜2033に障害が検出されたので、この本数は「3」となる。
【0085】
次に主制御部233Aは、ステップS303で判別されたケーブルの本数にその障害の発生した一次側電源ケーブル203に割り当てられた電流値を基にして、一次側電源ケーブル2031〜2034の全部に定格電流が流れる場合から今回減少する消費電流を算出する(ステップS303)。一次側電源ケーブル2031〜2034はそれぞれ50Aの定格を有しているので、合計200Aの電流を流すことができる。3本の一次側電源ケーブル2031〜2033が使用できなくなったので、減少する消費電流は150Aとなる。
【0086】
主制御部233Aは、ステップS303で減少する消費電流を算出したら、これに対応させて何台のサーバを休止すればよいかを算出する(ステップS304)。第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114と第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124が共に1台で25Aの消費電流であるとすると、減少する消費電流が50Aのときは2台となる。消費電流が30Aのときも算出結果は2台となるが、ここでは電源装置213Aの全体の正常運転時の消費電流が200Aであることを前提に話を進める。
【0087】
この例の場合、算出したサーバの台数がサーバ運用系・予備系配置テーブル236に記されている予備系サーバ212の総数を超えることになる。この場合(ステップS305:N)、主制御部233Aは電源制御信号生成部237を指示して、第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の全部に対して休止を指示する電源制御信号21421A〜21424Aを送出させる(ステップS309)。
【0088】
続いて主制御部233Aは第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の全部が動作を休止してこれらの消費電流がゼロになった場合における第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114の1台当たりの消費電流の低減すべき量を算出する(ステップS401)。これは、ステップS303で算出した消費電流の全体の削減量である150Aから第1〜第4の予備系サーバ2121〜2124の全部が休止したことによる削減量100Aを引いた値を第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114に割り振った値である。これは1台当たり12.5Aとなる。
【0089】
そこで、主制御部233Aは電源制御信号生成部237を指示して、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114の全部に対して1台当たり12.5Aの削減を指示する電源制御信号21411〜21414を送出させる(ステップS402)。以上のような指示を行った後、修理要求信号の送信を行って(ステップS308)、電源装置213Aによる障害発生時の消費電流の制御が終了する(エンド)。
【0090】
図12は、第1の予備系サーバの機能的な構成を表わしたものである。第2〜第4の予備系サーバ2122〜2124も第1の予備系サーバ2121と同一の構成となっている。また、第1〜第4の運用系サーバ2111〜2114の構成も同一である。
【0091】
第1の予備系サーバ2121は、所定の制御プログラムで制御を行う主制御部501を備えている。主制御部501は、電源制御信号受信部502、消費電流削減テーブル503、コア数制御部504、ディスク装置数制御部505およびネットワークポート数制御部506の制御を行うようになっている。
【0092】
このうち電源制御信号受信部502は、電源装置213Aから自装置の削減すべき消費電流の通知を受ける。消費電流削減テーブル503は、削減すべき消費電流に対して自装置の採るべき制御内容をテーブル化している。その内容は、自装置のマルチコア・プロセッサのコア数の削減を行う制御や、複数のディスク装置の一部を停止させる制御および複数のネットワークポートの一部を停止させる制御の単独あるいは組み合わせである。これらの具体的な制御は、コア数制御部504、ディスク装置数制御部505およびネットワークポート数制御部506に対する主制御部501の指示によって行われる。
【0093】
たとえばコア数制御部504は、第1の予備系サーバ2121がその運転時に1024コアで駆動されるのを、消費電流の50パーセント削減時に半分の512コアあるいは所定数のコアを停止させる制御を行う。ディスク装置数制御部505は、たとえば第1の予備系サーバ2121が64基のディスク装置を搭載している場合、消費電流の削減に見合った所定数を停止させる制御を行う。ネットワークポート数制御部506は、たとえば第1の予備系サーバ2121が16ポートの10ギガイーサポートを搭載している場合、消費電流の削減に見合った所定数を停止させる制御を行う。
【0094】
第1の予備系サーバ2121は、以上のような消費電流の削減の代わりに、あるいはこれらの削減策と併せて、複数の機能部を時分割的に動作させることでピークの消費電流を所定の値に抑えるような制御を行うことも可能である。また、第1の予備系サーバ2121等のサーバのデータ処理がリアルタイム性を要求されるか否かによって消費電流の削減の手法を予め考慮しておくことは当然である。
【0095】
以上説明した実施の形態および変形例では、「消費電流」という用語を主として使用したが、これを「消費電力」という用語に置き換えてもよいことは当然である。
【0096】
また、実施の形態および変形例ではネットワーク機器における運用系装置と予備系装置に関して説明したが、ネットワーク機器以外の運用系装置と予備系装置を備えた装置としての電源消費側装置に対して本発明を同様に適用することができることは、もちろんである。
【0097】
以上説明した実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0098】
(付記1)
運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段と、
外部から複数系統の電源ケーブルによってそれぞれ定格電流の範囲で供給された電源を足し合わせてこの二重化手段全体の電源として供給するロードバランス型電源供給手段と、
前記複数系統の電源ケーブルの一部に前記ロードバランス型電源供給手段に対する電源の供給に関する障害が発生したとき残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別手段と、
この障害時過電流要否判別手段が前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したとき前記ロードバランス型電源供給手段による前記二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断手段
とを具備することを特徴とする電源消費側装置。
(付記2)
前記予備系装置は複数設けられており、前記予備系装置電源遮断手段は、前記障害時過電流要否判別手段が前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したとき、定格を超えない電流の範囲で最小限の数の前記予備系装置に対して電源の供給を遮断する遮断予備装置選別手段を具備することを特徴とする付記1記載の電源消費側装置。
(付記3)
前記遮断予備装置選別手段は、予備系装置のそれぞれに予め設定されている優先度に基づいて必要数の予備系装置を選別することを特徴とする付記2記載の電源消費側装置。
(付記4)
前記遮断予備装置選別手段は、前記運用系装置と前記予備系装置の過去の系の切り替えに関する情報に基づいて系の切り替えが発生しにくいと判別される順位で必要数の予備系装置を選別することを特徴とする付記2記載の電源消費側装置。
(付記5)
前記予備系装置電源遮断手段が前記予備系装置の全部に対する電源の供給を遮断しても前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要があるとき、前記運用系装置に対して予め定めた省電力モードへの移行を指示する省電力モード移行指示手段を具備することを特徴とする付記2記載の電源消費側装置。
(付記6)
前記予備系装置電源遮断手段が前記予備系装置の全部に対する電源の供給を遮断しても前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要があるとき、前記運用系装置の1台当たりの電流を削減すべき量を算出する削減電流算出手段と、この削減電流算出手段の算出した削減電流を前記運用系装置のそれぞれに通知する削減電流通知手段とを更に具備することを特徴とする付記2記載の電源消費側装置。
(付記7)
前記運用系装置は、前記削減電流通知手段の通知を受信する削減電流通知受信手段と、この削減電流通知受信手段の受信した削減電流の分だけ自装置の消費する電流を削減する削減実行手段とを具備することを特徴とする付記6記載の電源消費側装置。
(付記8)
前記削減実行手段は、前記運用系装置がマルチコア・プロセッサを有するときそのコア数を削減することを特徴とする付記7記載の電源消費側装置。
(付記9)
前記予備系装置電源遮断手段が前記予備系装置の少なくとも一部に対する電源の供給を遮断したとき、これを外部に通知する通知手段を具備することを特徴とする付記1記載の電源消費側装置。
(付記10)
付記1〜付記9いずれかに記載の電源消費側装置と、
この電源消費側装置に複数系統の電源ケーブルを使用して電源を供給する電源設備
とを具備することを特徴とする電源消費制御システム。
(付記11)
運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する障害発生検出ステップと、
この障害発生検出ステップで障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別ステップと、
この障害時過電流要否判別ステップで定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断ステップ
とを具備することを特徴とする電源消費制御方法。
(付記12)
前記予備系装置は複数設けられており、前記障害時過電流要否判別ステップで前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したとき、これらの電源ケーブルが定格を超えない範囲で最小限となる予備系装置の遮断台数を算出する遮断予備系装置台数算出ステップを更に具備することを特徴とする付記10記載の電源消費制御方法。
(付記13)
運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置のコンピュータに、
この電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する障害発生検出処理と、
この障害発生検出処理で障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別処理と、
この障害時過電流要否判別処理で定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断処理
とを実行させることを特徴とする電源消費制御プログラム。
(付記14)
前記予備系装置は複数設けられており、前記障害時過電流要否判別処理で前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したとき、これらの電源ケーブルが定格を超えない範囲で最小限となる予備系装置の遮断台数を算出する遮断予備系装置台数算出処理を更に前記コンピュータに実行させることを特徴とする付記12記載の電源消費制御プログラム。
【符号の説明】
【0099】
10 電源消費側装置
11 二重化手段
12 ロードバランス型電源供給手段
13 障害時過電流要否判別手段
14 予備系装置電源遮断手段
20、200、200A 電源消費制御システム
21 電源消費側装置
22、202 電源設備
30 電源消費制御方法
31 障害発生検出ステップ
32 障害時過電流要否判別ステップ
33 予備系装置電源遮断ステップ
40 電源消費制御プログラム
41 障害発生検出処理
42 障害時過電流要否判別処理
43 予備系装置電源遮断処理
201 ネットワーク機器
203 一次側電源ケーブル
211、211A 運用系サーバ
212、212A 予備系サーバ
213、213A 電源装置
214 電源制御信号
231 CPU
232 メモリ
233、501 主制御部
235 一次側電源ケーブル障害検出部
236 サーバ運用系・予備系配置テーブル
237 電源制御信号生成部
238 修理要求信号通信部
239 系切替履歴・優先度記憶部
502 電源制御信号受信部
503 消費電流削減テーブル
504 コア数制御部
505 ディスク装置数制御部
506 ネットワークポート数制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段と、
外部から複数系統の電源ケーブルによってそれぞれ定格電流の範囲で供給された電源を足し合わせてこの二重化手段全体の電源として供給するロードバランス型電源供給手段と、
前記複数系統の電源ケーブルの一部に前記ロードバランス型電源供給手段に対する電源の供給に関する障害が発生したとき残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別手段と、
この障害時過電流要否判別手段が前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したとき前記ロードバランス型電源供給手段による前記二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断手段
とを具備することを特徴とする電源消費側装置。
【請求項2】
前記予備系装置は複数設けられており、前記予備系装置電源遮断手段は、前記障害時過電流要否判別手段が前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じたと判別したとき、定格を超えない電流の範囲で最小限の数の前記予備系装置に対して電源の供給を遮断する遮断予備装置選別手段を具備することを特徴とする請求項1記載の電源消費側装置。
【請求項3】
前記遮断予備装置選別手段は、予備系装置のそれぞれに予め設定されている優先度に基づいて必要数の予備系装置を選別することを特徴とする請求項2記載の電源消費側装置。
【請求項4】
前記遮断予備装置選別手段は、前記運用系装置と前記予備系装置の過去の系の切り替えに関する情報に基づいて系の切り替えが発生しにくいと判別される順位で必要数の予備系装置を選別することを特徴とする請求項2記載の電源消費側装置。
【請求項5】
前記予備系装置電源遮断手段が前記予備系装置の全部に対する電源の供給を遮断しても前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要があるとき、前記運用系装置に対して予め定めた省電力モードへの移行を指示する省電力モード移行指示手段を具備することを特徴とする請求項2記載の電源消費側装置。
【請求項6】
前記予備系装置電源遮断手段が前記予備系装置の全部に対する電源の供給を遮断しても前記残りの系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要があるとき、前記運用系装置の1台当たりの電流を削減すべき量を算出する削減電流算出手段と、この削減電流算出手段の算出した削減電流を前記運用系装置のそれぞれに通知する削減電流通知手段とを更に具備することを特徴とする請求項2記載の電源消費側装置。
【請求項7】
前記運用系装置は、前記削減電流通知手段の通知を受信する削減電流通知受信手段と、この削減電流通知受信手段の受信した削減電流の分だけ自装置の消費する電流を削減する削減実行手段とを具備することを特徴とする請求項6記載の電源消費側装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7いずれかに記載の電源消費側装置と、
この電源消費側装置に複数系統の電源ケーブルを使用して電源を供給する電源設備
とを具備することを特徴とする電源消費制御システム。
【請求項9】
運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する障害発生検出ステップと、
この障害発生検出ステップで障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別ステップと、
この障害時過電流要否判別ステップで定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断ステップ
とを具備することを特徴とする電源消費制御方法。
【請求項10】
運用系装置と予備系装置の2系統の装置構成とされた二重化手段を備えた電源装置のコンピュータに、
この電源装置に対して定格電流の範囲でそれぞれ電源を供給する複数系統の電源ケーブルの一部に電源の供給に関する障害が発生したときこれを検出する障害発生検出処理と、
この障害発生検出処理で障害が検出されたとき、この障害による電流の供給の減少で残りの障害の発生していない系統の電源ケーブルに定格を超える電流を流す必要が生じるか否かを判別する障害時過電流要否判別処理と、
この障害時過電流要否判別処理で定格を超える電流を流す必要が生じると判別したとき前記二重化手段内の予備系装置の少なくとも一部への電源の供給を遮断する予備系装置電源遮断処理
とを実行させることを特徴とする電源消費制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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