説明

電源装置および交通管制システム機器

【課題】交通管制システム機器に用いられる電源装置として、配電網からの電力供給を必要とせず、独立して電力を安定して供給できる電源装置を提供する。
【解決手段】交通管制システム機器への電力を供給するため、前記交通管制システム機器を固定するための支柱またはアーム上に取り付けられて、該支柱またはアームの振動により発電を行う振動発電部と、振動発電部により発電された電力を蓄える蓄電部と、振動発電部により発電された電力および/または蓄電部に蓄えられた電力を、交通管制システム機器に供給する電力供給部とを備えた電源装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通標識や各種感知器など交通管制システムに用いられる機器への電力を供給するための電源装置、およびそれを用いた交通管制システム機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通信号機をはじめ交通管制システムを構成する機器として交通標識や表示板、あるいは車両感知器や凍結検知器などの各種感知器類などが用いられている。これらの機器の多くは電源としての電力として配電網により供給された交流電力を利用している。またこれらの機器は自動車からの視認性や車両、路面等の計測の必要性から、路側に立てられた支柱上や、支柱から道路上にせり出すように設けられたアーム上に取り付けられる場合が多い。そのため、これらの高所に電力を供給するために電力線がアーム先まで布設されている。
【0003】
一方、交通関係での電力供給についての別な手段も検討されている。太陽電池を備えた機器は既に一部で実用化されているところであり、その他例えば特許文献1には、道路の路面に設置した振動発電機により電力を得る発電システム開示されている。また風による振動を発光標識に用いたものが特許文献2に開示されている。これらの振動発電には圧電素子が用いられているが、振動発電機としては他に静電誘導型などもあり、車載発電装置として3方向の発電を行うものも知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−197704号公報
【特許文献2】特開2005−352298号公報
【特許文献3】特開2009−33809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電力供給方式では配電網からの電力を機器に伝えるための電源配線を必要とするため支柱までの地中配線や柱上までの立ち上げ配線など個々の機器に対応した配線を要する点で無駄が多い。また、近年のエコロジー指向の中で太陽電池の利用が望まれている。この場合は個々の機器に設けることを行えば配線の省略はできるが、太陽電池電源のみでは十分な電力を得るには太陽電池セルの面積を大きくとる必要があり、また天候により発電量が左右されるなどの問題があることから、安定した電源装置としては広く用いるには十分とは言えなかった。また従来、道路等の地面の震動、風力、あるいは自動車自体の振動を発電に利用するものはあったが、地面の震動では適用できる場所が限定され、風による振動は風圧を受ける羽などの構造物を設ける必要があること、また安定した電力供給が難しいなどの課題があった。そこで本発明は、交通管制システム機器に用いられる電源装置として、配電網からの電力供給を必要とせず、独立して電力を安定して供給できる新たな電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、交通管制システム機器が設置されている柱上やアーム上において交通流による地面の震動や風に起因する振動が大きいことに着目し、この振動により当該機器を駆動する電力を得ることに想到して本発明に至った。
【0007】
本願第1の発明は、交通管制システム機器への電力を供給するための電源装置であって、前記交通管制システム機器を固定するための支柱またはアーム上に取り付けられて、該支柱またはアームの振動により発電を行う振動発電部と、前記振動発電部により発電された電力を蓄える蓄電部と、前記振動発電部により発電された電力および/または前記蓄電部に蓄えられた電力を、前記交通管制システム機器に供給する電力供給部とを備えた電源装置である(請求項1)。
【0008】
このような構成により、支柱あるいはアームの振動を有効に電力として利用することができる。振動による発電電力量は一定ではないため蓄電池を備えることによって発電された電力を一定量蓄積し、対象機器に安定して電力を供給することが可能である。
【0009】
前記振動発電部は、その設置箇所の垂直方向をZ方向、水平面内で直交する2方向をX,Y方向とした場合に、X,Y,Zのいずれの方向の振動に対しても起電力を生じる構造を備えた三次元振動発電器とすることが好ましい(請求項2)。
【0010】
支柱またはアームの振動は、自動車など交通流による地面の震動が直接伝わることによる上下(垂直)方向の振動、および当該振動に起因する水平方向の振動、さらには風による水平あるいは垂直方向の振動など、いわゆる三次元的なあらゆる方向の振動が含まれる。よって、これらの振動を効率よく発電電力に換えるためには、三次元振動発電器を構成することが好ましい。
【0011】
前記三次元振動発電器は、垂直または水平のいずれか一方向への前記支柱またはアームの振動によって振動する可動部と、前記可動部の前記一方向への振動により発電可能に構成された第1の発電部とを備え、さらに前記第1の発電部自体は前記一方向と直交する方向への前記支柱またはアームの振動によって振動可能に保持されており、前記第1の発電部の振動により発電可能に構成された第2の発電部を備えたものとすることが出来る(請求項3)。
【0012】
垂直・水平のいずれの方向にも発電能力を持たせるためには、3つの振動発電器をそれぞれ直交方向に発電するように組み合わせて用いることが考えられる。しかし、3つの発電器を用いることは機器のコストアップにつながる。そこで本発明者は、新たな発電器構造として上記の構造を案出した。かかる構造の振動発電器によれば、一つの発電器内に、第1の発電部と第2の発電部を備えるため、1台の振動発電器よって三次元の振動発電が可能となり、効率的な電源装置を提供することが出来る。
【0013】
より具体的には、かかる三次元振動発電器として、前記可動部は第1の永久磁石であり、前記第1の発電部は、前記第1の永久磁石と、前記第1の永久磁石の振動により起電力を生じる位置に置かれた第1のコイルとを備え、前記第2の発電部は、前記第1の発電部の振動により振動する第2の永久磁石と、前記第2の永久磁石の振動により起電力を生じる位置に置かれた第2のコイルとを備えるようにすることができる。
【0014】
前記それぞれの電源装置は、交通管制システム機器としての車両感知器に用いることが好適である(請求項4)。車両感知器は路側の支柱からアームにより自動車の通行する車線上に位置するように取り付けられるものであり、支柱先端、さらにはアーム先端の振動が大きい。また車両感知器は太陽電池での駆動の可能性もあるなど、比較的小電力での駆動が可能な機器であり、配電網からの電力を要せずに独立電源としての振動発電器を用いることが好適な対象である。
【0015】
さらに、前記支柱またはアームに取り付けられた太陽電池セルを備え、前記蓄電部は前記振動発電部により発電された電力と前記太陽電池セルにより発電された電力の双方を蓄えるように構成するとよい(請求項5)。
【0016】
太陽電池セルと振動発電器を組み合わせることにより、それぞれの発電電力量の時間的な変動を補い、安定した発電電力と蓄電池を介してより安定した電力供給が可能となる。さらに、配電網からの電力も双補的に用いることで盤石の電源供給手段とすることができる。
【0017】
また、本発明は、上記記載の電源装置を備え、当該電源装置により供給される電力を駆動電源の全部または一部として用いるように構成された交通管制システム機器を提供する(請求項6)。
【発明の効果】
【0018】
上記のとおり本発明によれば、特に柱上やアーム上に設置される交通管制システム機器に好ましく用いられ、配電網からの電力供給を必要とせず、独立して電力を安定して供給できる電源装置、およびそれを用いた交通管制システム機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電源装置を交通管制システム機器に適用する構成を例示する概要図である。
【図2】本発明にかかる振動発電器の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の電源装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の電源装置の別な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の代表的な適用例を示すものである。支柱1は道路(図示せず)脇に略鉛直に立てられ、その上部から略水平に道路上に突き出す形でアーム2が設けられている。アーム2には交通管制システム機器の例として車両感知器20が固定されており、道路上を通行する車両の感知が可能となっている。なおこの図では車両感知器として光学式車両感知器を示しているが、超音波式車両感知器、画像式車両感知器、赤外線式車両感知器などいずれの方式の車両感知器であっても良い。当該車両感知器20の電源を供給する目的で、同じくアーム2上には電源装置10とそれに繋がれた太陽電池セル30が固定されている。ここで本発明の電源装置10は内部に振動発電器を内蔵している。
【0021】
図2は、当該電源装置10の内部構成を示すブロック図である。電源装置10は、振動発電部12,電力供給部14,および蓄電部16の大きく3つの部分で構成されている。もちろん筐体等の一般的な共通部分は省略している。振動発電部12は、電源装置に加わる振動によって起電力を生じる仕組みを備えた発電器である。電力供給部14は、振動発電部12によって発電された電力の交通管制システム機器20への供給と蓄電部16への充放電制御を行う電気回路である。電力供給部14は必要に応じて整流、開閉、電圧変換、過電流防止などを行う機能を備えた一般的な電源回路であり特に限定されるものではない。蓄電部16は充放電可能な二次電池であり、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池など一般に流通している二次電池を利用することが可能である。
【0022】
本例では、太陽電池セル30の出力を同じく電力供給部14に接続して振動発電部により発電された電力と共に利用する構成としている。このように構成することで、常に安定してエネルギーが得られるとは限らない振動による発電電力を、太陽電池セルによる発電電力が補い、また逆に夜間や曇天に十分な発電ができない太陽電池セルによる電力を振動発電が補う形で、平準化された電力を得ることが可能となる。一方、太陽電池セルは必須ではなく、振動により十分な発電電力が得られれば、図3に示すような構成によって振動発電部のみの構成も可能である。図3は、振動発電部12,電力供給部14,蓄電部16からなる電源装置のみで構成した例である。いずれの図にも示さないが、もちろん、配電網からの電力をさらに電力供給部に接続して、振動や太陽光による電力供給の不測の事態補う構成も可能である。いずれの場合も、振動発電や太陽電池セルによる発電を主電力として用いるためには、負荷機器へ安定した電圧、電流の供給のために蓄電部16は必要である。なお、本例では電源装置10を点線で囲んだ1つの筐体に納めた構成を示しているが、蓄電部16のみを異なる筐体に納めたり、振動発電部12のみを振動を受けやすい場所に別個の筐体で取り付けたりすることは可能である。また、太陽電池セルを電源装置の筐体に取り付けるとアーム等への取り付けスペースが少なくなる点で好ましい。
【0023】
振動発電部12を構成する振動発電器について説明する。振動発電の原理としては、圧電型、静電誘導型、電磁誘導型が知られている。本発明の振動発電器としては、柱上での振動により発電できるものであればいずれの方式を用いても良い。本発明が対象とする振動はおよそ数10Hz以下の比較的低周波であり、振幅は数mmから数cm、場合によっては10数cm程度までが対象となる。柱上のような建造物の振動を捉えやすく、交通管制システム機器に必要とされる電力を効率良く発電可能な方式としては、圧電型や電磁誘導型が好ましく用いられる。磁石とコイルにより構成される電磁誘導型は圧電型に比べて素子寿命の点で好ましく、また電磁誘導型は静電誘導型よりも大きな電力を得やすい。
【0024】
柱上、特にアーム上に生じる振動は、上下(垂直)方向および水平面内方向のいずれの方向にも生じる。ここではこれを三次元の振動と呼び、このいずれの方向の振動によっても起電力を生じる発電器を三次元振動発電器と呼ぶことにする。図4は、本発明にかかる三次元振動発電器の構造を説明する図である。図4(a)は当該三次元振動発電器の構造全体を示し、図4(b)は図4(a)に含まれる水平発電部100の構造を示す図である。図中では鉛直方向をZ方向、水平面内に直交するX,Y方向をとっている。
【0025】
三次元振動発電器の筐体110は図では単に四角で囲って表しているが、実際には円筒や直方体等の任意の形状の箱体である。筐体110内にはバネ113によってZ方向に振動可能に取り付けられた水平発電部100が設けられている。バネ113はコイルバネに限らず、板バネやゴム等樹脂製の弾性体などが用いられる。水平発電部100には永久磁石112が固定されている。この図では水平発電部の筐体の外周にリング状の磁石を設けているが、これに限定されず、例えば外周に棒状の磁石を1つまたは複数個並べるなどでも良い。当該永久磁石112を囲むようにコイル111が設けられ、当該コイルの両端を引き出し線114として外部に引き出している。かかる構成により、水平発電部100のZ方向の振動により、永久磁石112がZ方向に振動し、コイル111の内部を移動するため、コイル111を貫通する磁場が変化してコイル111に起電力を生ずることができる。以上の構成により垂直発電部が構成されている。
【0026】
図4(b)を参照して、水平発電部100は円筒形状の箱体に収納された永久磁石102とコイル101,ベアリング103、引き出し線104を主な構成要素としている。永久磁石102は筐体内にてX−Y方向に自由に移動可能なように、ベアリング103上に置かれている。永久磁石102の上方にはコイル101が設けられており、永久磁石のX−Y面内の移動伴う磁場変化によって起電力を生じる。生じた電力は引き出し線104により外部に取り出される。図ではベアリングを単純にボール形状で示したが、特に形状は限定されず、水平面方向に滑らかに移動可能に永久磁石を支持する構成に置き換えることができる。永久磁石を上下から挟んでZ方向には振動しないように固定したり、逆に上下方向には振動自由なように上下からバネで支持したりしても良い。上下方向にバネで支持することにより、X−Y方向に加えてZ方向の振動に対してもコイル101に起電力を生じることも可能である。
【0027】
以上のように構成することにより、当該振動発電器はX−YおよびZのいずれの方向の振動に対しても起電力を生じる三次元振動発電器として機能する。ここで、永久磁石とコイルの構成による電磁誘導型の構成を、何らかの質量と圧電素子による圧電型や、電荷を持った物質と電極による静電誘導型に置き換えることにより、他の三次元振動発電器を構成することが可能である。
【0028】
前述の電源装置を電力供給機器として備えた交通管制システム機器は、例えば図1に示した車両感知器のように、配電網からの電力供給配線を必ずしも必要とせず、環境に優しい機器として使用することができる。供給できる電力は振動発電器の構成、台数、太陽電池セル等他の発電器や電力供給源との併用などにより設計可能である。適用対象は設置場所と必要な電力によるが、発光式交通標識、各種検知器類、通信機器、信号機など交通管制システムに用いられ、屋外特に柱上等の高所に設置される機器として提供することができる。
【0029】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、図1や図2に示した電源装置は交通管制システム機器である車両感知器とは別体の筐体に収納された構成としているが、同じ筐体に組み込まれることも可能であり、さらには支柱やアームに内蔵することも可能であるなど、具体的な構成にかかわらず本発明の範囲に含まれる。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0030】
1 支柱
2 アーム
10 電源装置
12 振動発電部
14 電力供給部
16 蓄電部
20 交通管制システム機器(車両感知器)
30 太陽電池セル
100 水平発電部
101 コイル
102 永久磁石
103 ベアリング
104 引き出し線
111 コイル
112 永久磁石
113 バネ
114 引き出し線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通管制システム機器への電力を供給するための電源装置であって、
前記交通管制システム機器を固定するための支柱またはアーム上に取り付けられて、該支柱またはアームの振動により発電を行う振動発電部と、
前記振動発電部により発電された電力を蓄える蓄電部と、
前記振動発電部により発電された電力および/または前記蓄電部に蓄えられた電力を、前記交通管制システム機器に供給する電力供給部とを備えた電源装置。
【請求項2】
前記振動発電部は、
その設置箇所の垂直方向をZ方向、水平面内で直交する2方向をX,Y方向とした場合に、X,Y,Zのいずれの方向の振動に対しても起電力を生じる構造を備えた三次元振動発電器である、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記三次元振動発電器は、
垂直または水平のいずれか一方向への前記支柱またはアームの振動によって振動する可動部と、
前記可動部の前記一方向への振動により発電可能に構成された第1の発電部とを備え、
さらに前記第1の発電部自体は前記一方向と直交する方向への前記支柱またはアームの振動によって振動可能に保持されており、
前記第1の発電部の振動により発電可能に構成された第2の発電部
を備えたことを特徴とする、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記交通管制システム機器は車両感知器である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
さらに、前記支柱またはアームに取り付けられた太陽電池セルを備え、
前記蓄電部は前記振動発電部により発電された電力と前記太陽電池セルにより発電された電力の双方を蓄えるように構成されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電源装置を備え、当該電源装置により供給される電力を駆動電源の全部または一部として用いるように構成された交通管制システム機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−101541(P2011−101541A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255638(P2009−255638)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】