説明

電源装置

【課題】積層体を用いて小型化及び低コスト化を図りつつ、アンテナ特性の劣化を防止可能な環境発電機能を有する電源装置を提供する。
【解決手段】本発明の電源装置は、絶縁層と導体層を交互に積層形成した積層体20を用いて構成され、外部からの電波を受信するアンテナ10aと、アンテナ10aの受信信号を入力する入力回路と、入力回路の出力交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路とが積層体20に構成される。積層体20の回路領域Rは、インダクタ及びコンデンサを配置した領域R1と、アンテナ10a等を配置した領域R2とを含む。積層体20の積層方向で、アンテナ10aが、領域R1とは重ならず、かつ第1の部品(ダイオードD1、D2)と重なる配置としたので、インダクタ及びコンデンサの電磁的干渉に起因するアンテナ性能の劣化を防止しつつ、電源装置の小型化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から到来する電波を受信して直流電力を取り出す環境発電機能を有する電源装置のうち、積層体に回路を構成した電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話などの携帯型の電子機器には二次電池が搭載され、ある程度使用した時点で二次電池の充電が必要になる。しかし、携帯電話等は、送信動作に比べて電力消費が小さい待ち受け動作の時間が長いのが通常である。また、アクセスが困難な施設等に設置され間欠的に動作するセンサ等の機器が知られているが、この種のセンサ等も電力消費は小さい。このように電力消費が小さい機器に対し、二次電池の搭載や電池交換あるいはケーブルの敷設などを不要にできれば、これらの機器の利用価値を高めることができる。そのため、従来から、自然環境に存在するエネルギーから電力を取り出す環境発電が注目されている。例えば、都市空間などで利用される電波を受信して直流電力を取り出す技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような技術により電波から取り出すことができる直流電力は小さいが、上述のような低消費電力の用途であれば十分に適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−33243号公報
【特許文献2】特開2003−88005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の環境発電機能を有する電源装置は、小型かつ低コストに構成することが望ましい。例えば、誘電体層と導体層を交互に積層した多層の積層体を用いてアンテナと各種回路を一体的に配置すれば、小型化及び低コスト化を実現することができる。しかしながら、上記電源装置の内部には高周波の信号が伝送されるため、小型の積層体のアンテナと回路が一体化されたときの電磁的干渉が問題となる。特に、積層体の異なる層間でアンテナと対向する領域にインダクタやコンデンサが存在する場合は、アンテナ特性に与える影響が大きい。すなわち、導体層の平面内で、インダクタを構成する導体パターンは比較的長い線長を有し、コンデンサの電極を構成する導体パターンは比較的大きな面積を有することから、いずれも積層方向で対向するアンテナに強い電磁的干渉を及ぼすため、アンテナ特性の劣化を招くことは避けられない。このようなアンテナ特性の劣化を防ぐため、外部のアンテナを取り付けたり、積層体自体のサイズを大きくするのでは、電源装置の小型化及び低コスト化を実現することができなくなる。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、アンテナと回路を積層体に一体的に配置して小型化及び低コスト化を図りつつ、インダクタやコンデンサの導体パターンとアンテナとの電磁的干渉に起因するアンテナ特性の劣化を防止し得る環境発電機能を有する電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の電源装置は、絶縁層と導体層を交互に積層形成した積層体を用いて構成される電源装置において、外部からの電波を受信するアンテナと、前記アンテナの受信信号を入力する入力回路と、前記入力回路の出力交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路と、がそれぞれ前記積層体に構成され、前記入力回路及び前記整流回路を配置した回路領域は、インダクタ及びコンデンサを配置した第1領域と、前記インダクタ及び前記コンデンサ以外の回路部品を配置した第2領域とを含み、前記アンテナは、前記第1領域とは前記積層体の積層方向で重ならず、前記第2領域のうち少なくとも第1の部品とは前記積層方向で重なることを特徴としている。
【0007】
本発明の電源装置によれば、積層体に、アンテナと、入力回路と整流回路を配置した回路領域とをそれぞれ構成し、回路領域のうちインダクタ及びコンデンサを配置した第1領域がアンテナと積層方向で重ならないように配置したので、インダクタ及びコンデンサの導体パターンからアンテナへの電磁的干渉を抑制することができる。すなわち、回路領域において平面状の導体パターンを用いて構成されるインダクタやコンデンサは、平面方向に比べて積層方向で電磁的な結合が大きくなるが、本発明の場合は積層方向でアンテナがインダクタやコンデンサと対向配置されないので、アンテナ特性の劣化が小さくなる。一方、アンテナと第1の部品が積層方向で重なる配置となるので、小型の積層体のスペースを有効に活用することができる。従って、多層の積層体にアンテナと回路領域を一体的に配置し、良好なアンテナ特性を確保しつつ、配置面積を縮小して積層体を小型かつ低コストに構成可能な電源装置を実現することができる。
【0008】
本発明の電源装置には、前記積層体の構造に加えて、前記回路領域と前記積層体の積層方向の一方の側で対向配置されるグランドパターンを形成することが望ましい。これにより、このグランドパターンが前記回路領域のシールド板として機能する。
【0009】
前記入力回路は多様な回路で構成することができる。例えば、前記入力回路として、前記アンテナのインピーダンスを整合する整合回路を含めてもよく、あるいは、前記アンテナに接続される一次コイルと前記整流回路に接続される二次コイルとを有するトランスを含めてもよい。
【0010】
また、前記整流回路も多様な回路で構成することができる。例えば、前記整流回路として、整流素子としての一又は複数のダイオードを用いて構成してもよい。この場合、前記整流回路の一又は複数のダイオードを前記第1の部品として、前記アンテナと積層方向で重なる配置にしてもよい。また、前記第1の部品として、少なくとも前記一又は複数のダイオードを有する半導体チップを用いてもよい。
【0011】
前記積層体においては多様な配置と形態を採用することができる。例えば、前記アンテナを前記積層体の表面に実装し、前記第1の部品を前記積層体の裏面のうち前記アンテナと重なる領域に実装することができる。また、前記アンテナとして、前記積層体の表面に実装されるチップアンテナを用いてもよい。さらに、前記アンテナと、前記第1領域のインダクタ及びコンデンサとは、前記積層体の内層の導体パターンにより構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンテナと各種回路とを積層体に一体化して構成した電源装置において、アンテナが、インダクタ及びコンデンサを配置した第1領域と積層方向で重ならないようにしたので、インダクタ及びコンデンサの導体パターンからアンテナへの電磁的干渉に起因する悪影響を抑制し、アンテナ特性の劣化を防止することができる。一方、アンテナが回路領域の第1の部品とは積層方向で重なるので、各部品を小さい面積で配置し、積層体を小型かつ低コストに構成可能となる。これにより、環境発電の分野で携帯機器やセンサ等に電力を供給可能で、利便性が高く小型の電源装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の電源装置の回路構成の一例を示す図である。
【図2】第1実施形態の電源装置が構成される積層体の構造例を示す図である。
【図3】図2の積層体の各層の構造例を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態の電源装置の回路構成の一例を示す図である。
【図5】第2実施形態の電源装置が構成される積層体の構造例を示す図である。
【図6】積層体の構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下では、本発明を適用した2つの実施形態について順次説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電源装置1の回路構成の一例を示している。第1実施形態の電源装置1は多層の積層体に構成され、外部から到来する電波を受信して電力を取り出す環境発電機能を有する。図1に示すように、電源装置1は、アンテナ10と、アンテナ10のインピーダンスを整合する整合回路11と、整合回路11の出力交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路12を含んで構成される。
【0016】
アンテナ10は、積層体に実装される構造を有し、外部から到来する電波を受信するアンテナ素子である。アンテナ10の周波数帯域は特に制約されないが、使用環境下においてある程度の電界強度が得られる周波数帯域であることが望ましい。例えば、数MHz〜数GHz程度の広い周波数範囲の電波のうち、特に携帯電話用の周波数帯域や放送用の周波数帯域などは電界強度が強く利用に適している。また、アンテナ10を実装する積層体は小型であるため、積層体の表面に搭載可能なチップアンテナや、積層体の導体パターンを用いて構成されるパターンアンテナなど小型のアンテナ素子を用いることが望ましい。
【0017】
入力回路としての整合回路11は、入力側のアンテナ10の給電点と、出力側のノードN1との間に配置され、コンデンサC1とインダクタL1とにより構成される。コンデンサC1は、アンテナ10の給電点とノードN1との間に接続され、インダクタL1は、コンデンサC1の一端とグランド電位との間に接続される。整合回路11は、アンテナ10のインピーダンスを整合し、アンテナ10から後段の整流回路12に伝送される受信信号の損失を低減する役割がある。なお、整合回路11の回路構成は図1の例には制約されず、コンデンサとインダクタを組み合わせた多様な形態で構成することができる。
【0018】
整流回路12は、入力側のノードN1と、出力側の外部端子Toとの間に配置され少なくとも、2つのダイオードD1、D2とコンデンサC2とにより構成される。ダイオードD1は、アノードがノードN1に接続され、カソードが外部端子Toに接続される。ダイオードD2は、アノードがグランド電位に接続され、カソードがノードN1に接続される。コンデンサC2は、外部端子Toとグランド電位との間に接続される。整流回路12は、アンテナ10から整合回路11を通ってノードN1に伝送された交流電圧を入力し、ダイオードD1、D2の整流作用により得られた直流電圧を外部端子Toに出力する役割がある。整流回路12において、ノードN1の交流電圧が正のサイクルにあるときは、ノードN1からダイオードD1を介してコンデンサC2が充電され、外部端子Toに直流電圧が現れる。なお、図1の整流回路12は半波整流回路の一例であるが、これには制約されず、多様な部品を用いて全波整流回路等を含む多様な整流回路12を構成することができる。また、整流回路12に含まれるダイオードの個数は2個に限られず、1個あるいは3個以上であってもよい。
【0019】
整流回路12により得られた直流電圧は、外部端子Toに接続される負荷(不図示)に供給される。接続可能な負荷としては、例えば、無線通信機能を有する携帯機器や、独自の電源を持たないセンサ端末等の各種電子・電気機器が想定される。電源装置1により供給可能な電力は小さいため、例えば、携帯電話機等の待ち受け時の電力供給や、定期的に作動する低消費電力型の独立センサへの電力供給などの用途に有効である。また、外部の機器に二次電池が搭載される場合には、電源装置1を用いて二次電池を充電してもよい。このように電源装置1は外部の機器に電力を供給する発電モジュールとして機能する。
【0020】
次に、第1実施形態の電源装置1が構成される積層体の構造例について図2及び図3を参照して説明する。第1実施形態の電源装置1は、回路素子の導体パターンを形成した複数の誘電体層からなる積層体に構成される。図2(A)は、電源装置1を構成した積層体20の表面の平面配置を示す図であり、図2(B)は、図2(A)の積層体20の断面構造を示す図である。
【0021】
図2(A)に示すように、上方から見た積層体20の平面内の大部分が回路領域Rとなっている。この回路領域Rは、インダクタ及びコンデンサを配置した領域R1と、他の回路部品を配置した領域R2とを含んでいる。領域R1には、図1のインダクタL1及びコンデンサC1、C2が積層体20の内層の導体パターン及びビア導体を用いて構成されている。領域R2には、図1のアンテナ10としてのチップアンテナ10aが積層体20の表面に実装されるとともに、図1の整流回路12の2つのダイオードD1、D2が積層体20の裏面に実装されている。なお、回路領域Rにおいて、積層体20の表面及び裏面のうちの領域R1と重なる部分については、上記2つの領域R1、R2にいずれにも含まれないが、この部分を領域R1、R2のいずれか一方に含めて考えてもよい。例えば、図2(A)の積層体20は、30mm×30mmの方形状に形成される。
【0022】
第1実施形態の積層体20は、アンテナ10としてのチップアンテナ10aが、積層体20の積層方向で領域R1と重ならないという第1の条件と、積層体20の積層方向で第1の部品であるダイオードD1、D2と重なるという第2の条件とを満たす構造を有している。領域R2は、積層体20の表面のチップアンテナ10aと、積層体20の裏面のダイオードD1、D2を含む範囲に設定され、他の回路素子は含んでいない。一方、領域R1は、上述したように積層体20の内層のコンデンサC1、C2及びインダクタL1を含んでいる。従って、図2の積層方向の位置関係は、チップアンテナ10aが領域R1と重ならないで、ダイオードD1、D2とは重なるという上記2つの条件を満たすことになる。
【0023】
なお、図2の配置は一例であって、上記2つの条件を満たす限り領域R1、R2の配置を自在に変更できる。すなわち、回路領域R内において、領域R2はチップアンテナ10aを含むより狭い範囲に設定でき、あるいは領域R1と重ならない限り、より広い範囲に設定できる。また、回路領域R内において、領域R1は、領域R2による制約を受けない限り、より広い範囲あるいはより狭い範囲に設定できる。また、図2の積層体20の表面に実装されるチップアンテナ10aとダイオードD1、D2についても多様な変形例があるが、詳細は後述する。
【0024】
第1実施形態では、アンテナ10が領域R1と積層方向で重ならないように配置するという第1の条件により、領域R1内のインダクタ及びコンデンサの各導体パターンからアンテナ10への電磁的干渉に起因する悪影響を抑制することができる。すなわち、第1実施形態では、アンテナ10を構成する素子が平面内に広がり、かつ領域R1のコンデンサ及びインダクタも主に平面状に広がる導体パターンで構成されるので、両者の間の電磁的な結合は、平面方向に並ぶ配置に比べて積層方向で対向配置される場合に強くなる。そのため、第1実施形態の配置を採用すれば、アンテナ10が領域R1と積層方向で直接対向しないので両者の電磁的な結合が小さくなり、インダクタ及びコンデンサからアンテナ10への電磁的干渉を抑制するという効果を得られる。これに加えて、第1実施形態では、アンテナ10が第1の部品としてのダイオードD1、D2と積層方向で重なるように配置するという第2の条件により、小さい配置スペースに回路部品を高密度に配置し、積層体20を小型化するという効果を得られる。以上のように、第1実施形態の電源装置1は、アンテナ10の放射特性や周波数特性の劣化防止と、積層体20の小型化との両立が可能である。
【0025】
図3は、図2の積層体20の各層の構造例を示す斜視図である。積層体20の内部には、下層から順に5層の誘電体層M1〜M5が積層されている。これらの誘電体層M1〜M5は、例えばセラミックを用いて形成される。誘電体層M1〜M5には、グランドパターン30、40と、回路素子を構成する複数の導体パターン31〜39と、各層の導体パターン同士を接続するために積層方向に貫通する複数のビア導体V1〜V6が形成されている。誘電体層M1〜M5の各々は、図2と同様の領域R1、R2に区分されるものとする。図3に示すように、領域R2においては、最上層の誘電体層M5の表面に図2のチップアンテナ10aが実装されるとともに、最下層の誘電体層M1の裏面に図2のダイオードD1、D2が実装され、チップアンテナ10aとダイオードD1、D2が積層方向で対向する位置関係であることがわかる。
【0026】
最上層の誘電体層M5に実装されたチップアンテナ10aは、給電点である導体パターン39に接続され、導体パターン39はビア導体V6を介して誘電体層M4の導体パターン38と誘電体層M3の導体パターン35にそれぞれ接続されている。誘電体層M4の導体パターン38は、ビア導体V5、誘電体層M3の導体パターン36、ビア導体V4、誘電体層M2の導体パターン34、ビア導体V1の順に接続されてインダクタL1を構成する。ビア導体V1の下端は、最下層の誘電体層M1の広い領域を覆うグランドパターン30に接続されている。一方、誘電体層M3の導体パターン35は、対向配置される誘電体層M2の導体パターン33とコンデンサC1を構成する。
【0027】
誘電体層M2の導体パターン33は、ビア導体V2を介して最下層の誘電体層M1の導体パターン31に接続される。この導体パターン31は図1のノードN1に対応し、誘電体層M1の裏面のダイオードD1のアノード及びダイオードD2のカソードのそれぞれに接続される。ダイオードD2のアノードは誘電体層M1のグランドパターン30に接続されている。また、ダイオードD1のカソードは誘電体層M1の導体パターン32に接続され、導体パターン32の端部が外部端子Toの側面電極となっている。また、導体パターン32はビア導体V3を介して誘電体層M4の導体パターン37に接続される。この導体パターン37は最上層の誘電体層M5のグランドパターン40に対向配置され、コンデンサC2を構成する。
【0028】
以上のように、チップアンテナ10aは、領域R1のインダクタL1及びコンデンサC1、C2を構成する各導体パターン33〜38とは積層方向で重ならない位置関係にある。また、領域R2内で、最上層のチップアンテナ10aが最下層のダイオードD1、D2と積層方向で重なる位置関係にある。このような第1実施形態の積層体20の構造により、上述した効果を得ることができる。なお、図3の例では、ダイオードD1、D2に加えて、コンデンサ及びインダクタを構成しない導体パターン31、39もチップアンテナ10aと積層方向で重なっている。
【0029】
ここで、誘電体層M1のグランドパターン30に着目すると、最下層のグランドパターン30は、その上層で領域R1のそれぞれの回路素子と対向配置され、最上層のグランドパターン40は、その下層で領域R1のそれぞれの回路素子と対向配置されている。よって、グランドパターン30、40は、領域R1の各回路素子を外部から遮断してアイソレーションを向上させるシールド板として機能する。ただし、グランドパターン30、40の一方のみが存在する場合でも、領域R1のシールド板としてある程度の効果を得ることができる。また、図3の例では、内層の誘電体層M2〜M4に所定のグランドパターンを形成して、領域R1の各回路素子と対向配置することも可能であるが、かかる構造ではグランドパターンを挟んで両側に各回路素子が存在することになってシールド板としては機能しなくなる。
【0030】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の電源装置1の回路構成の一例を示している。第2実施形態の電源装置1は、基本的な機能は第1実施形態と共通するが、回路構成と構造に違いがある。図4に示すように、第2実施形態の電源装置1は、アンテナ10と、アンテナ10の給電点とノードN2との間に配置されるトランス13と、トランス13の出力交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路12aとを含んで構成される。
【0031】
入力回路としてのトランス13は、アンテナ10の給電点に接続される一次コイルと、ノードN2に接続される二次コイルとを有し、アンテナ10の受信信号を、一次コイルと二次コイルの巻数比に応じた電圧振幅の交流電圧に変換する。例えば、トランスの巻数比が1対10であれば、アンテナ10の受信信号は10倍の電圧振幅に拡大される。トランス13の一次コイルと二次コイルは、それぞれの一端がグランドに接続されている。
【0032】
整流回路12aは、入力側がノードN2に接続され、出力側が外部端子Toに接続され、2つのダイオードD1、D2と2つのコンデンサC2、C3とにより構成される。このうち、ダイオードD1、D2及びコンデンサC2の回路部分の構成及び動作は、図1の整流回路12と同様である。一方、入力側のコンデンサC3は、ノードN2と2つのダイオードD1、D2の接続点との間に挿入されている。これにより、ノードN2の交流電圧が負のサイクルにあるときは、ダイオードD2によってコンデンサC3が充電され、ノードN2の交流電圧が正のサイクルにあるときは、充電されたコンデンサC3からダイオードD1を介してコンデンサC2が充電され、外部端子Toに直流電圧が現れる。
【0033】
第2実施形態の電源装置1の基本的な機能は第1実施形態の場合と同様であるが、整合回路11をトランス13で置き換えたことにより使用形態には若干の違いがある。すなわち、第2実施形態の電源装置1はトランス13の巻数比により電圧振幅を拡大できるので、第1実施形態に比べ、微弱な電波環境での使用に適している。また、トランス13の周波数特性の制約があることから、第1実施形態に比べ、比較的低い周波数帯域における使用に適している。
【0034】
次に、第2実施形態の電源装置1が構成される積層体20の構造例について図5を参照して説明する。第2実施形態の電源装置1は、第1実施形態と比べると、複数の誘電体層からなる積層体20に構成される点は共通であるが、部品配置に違いがある。図5(A)は、第2実施形態の電源装置1を構成した積層体20の表面の平面配置を示す図であり、図5(B)は、図5(A)の積層体20の断面構造を示す図である。
【0035】
図5(A)に示すように、積層体20の平面内の領域区分は第1実施形態と同様であるが、積層体20の表面のうち領域R1と重なる位置に、図4のトランス13が実装されている。また、図5の例では、図2の2つのダイオードD1、D2に代えて、積層体20の裏面の全体に半導体チップ14が実装されている。半導体チップ14は回路部品の一例であって、第1実施形態と同様の配置で2つのダイオードD1、D2を配置してもよい。半導体チップ14には、ダイオードD1、D2を含む整流回路12を構成する場合のほか、入力回路やその他の回路の一部又は全部を構成してもよい。なお、領域R2のチップアンテナ10aについては、第1実施形態と同様に配置されている。
【0036】
第2実施形態では、アンテナ10が領域R1と積層方向で重ならないように配置するという第1の条件は、第1実施形態と同様に満たしているので、電磁的干渉に起因する悪影響を抑制する効果は共通である。この場合、インダクタやコンデンサに加えて、アンテナ10がトランス13と積層方向で重ならないことから、トランス13の一次コイルや二次コイルからアンテナ10への電磁的干渉に起因する悪影響についても抑制することができる。一方、第2実施形態では、アンテナ10が第1の部品としての半導体チップ14と積層方向で重なるように配置するという第2の条件についても満たしている。この場合の積層体20の小型化の効果については、第1実施形態と共通である。
【0037】
第2実施形態では、各層の構造例(図3)については省略するが、導体パターン及びビア導体を用いた基本構造は第1実施形態と共通である。ただし、第2実施形態では、最上層の誘電体層M5にトランス13を実装するとともに、コンデンサC1及びインダクタL1をコンデンサC3で置き換えて、かつダイオードD1、D2を半導体チップ14で置き換えて構成する必要がある。また、第2実施形態においても、最下層及び最上層のグランドパターン30、40の役割については第1実施形態と同様である。
【0038】
[変形例]
以上の第1及び第2実施形態の電源装置1は、回路構成と積層体20の構造の両面で多様な変形例がある。例えば、電源装置1の回路構成については、図1及び図4に限られることなく多様な回路構成を採用することができる。例えば、アンテナ10の給電点と整流回路12の入力側の間に配置される入力回路は、第1実施形態の整合回路11(図1)や第2実施形態のトランス13(図4)に限られることなく、各種回路を直列に接続して入力回路を構成することができる。入力回路には、例えば、所定の周波数帯域の成分を選択的に通過させる同調回路を含めてもよい。また例えば、図1の整合回路11と図4のトランス13を直列接続して入力回路を構成してもよい。この場合、整合回路11とトランス13の接続順序は問わない。また例えば、3つ以上の多数の回路を直列接続して入力回路を構成してもよく、その中にはフィルタ回路などを含めてもよい。さらに、電源装置1の回路構成において、整流回路12と外部端子Toとの間に、例えば、フィルタ回路、昇圧回路、制御回路などの各種回路を挿入してもよい。この場合、電源装置1で得られた電力の一部を内部の回路に供給することも可能である。
【0039】
次に、電源装置1が構成される積層体20の構造の変形例について説明する。上記積層体20としては第1実施形態の図2の構造例と第2実施形態の図5の構造例を示したが、かかる構造例に限らず、回路部品や配置を変更することができる。図6は、第1実施形態の積層体20に対応する各種変形例を示している。なお、以下では、第1実施形態の積層体20に対し適用する場合を例にとって説明するが、図6の変形例は、トランス13が実装された第2実施形態の積層体20に対しても同様に適用可能である。
【0040】
図6(A)に示すように、アンテナ10として、チップアンテナ10aに代え、積層体20の表面の導体パターンにより構成したパターンアンテナ10bを用いてもよい。パターンアンテナ10bは、例えば、ミアンダ状の導体パターンにより構成される。なお、図6の変形例では、図5の構造例と同様、図2の2つのダイオードD1、D2に代えて積層体20の裏面の全体に半導体チップ14が実装されている。半導体チップ14の役割は図5の場合と同様である。なお、積層体20の半導体チップ14をダイオードD1、D2に置き換えた場合であっても、図6の変形例を適用することができる。また、図6(B)に示すように、パターンアンテナ10bを積層体20の内層の導体パターンにより構成してもよい。図6(A)、(B)に示すパターンアンテナ10bは、積層体20に実装される部品点数を削減して低コスト化を図る場合に適している。
【0041】
一方、図6(C)に示すように、インダクタ及びコンデンサを配置した領域R1を、積層体20の積層方向の中間位置Pcから下層側のみに構成してもよい。これにより、チップアンテナ10aが領域R1と積層方向で重ならないことに加えて、チップアンテナ10aと領域R1との相対的な距離が大きくなるので、領域R1のインダクタ及びコンデンサからチップアンテナ10aへの電磁的な結合を一層小さくすることができる。なお、図6(C)のチップアンテナ10aを、積層体20の表面のパターンアンテナ10b(図6(A))に置き換える場合も同様の効果が得られる。
【0042】
以上、第1及び第2実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができる。例えば、積層体20の材料はセラミックに限られず、多様な誘電体材料を用いることができ、その形状、サイズも自在に設定可能である。また、電源装置1の回路形式は、図1や図4には限られず、同様の機能を実現する多様な回路形式を採用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…電源装置
10…アンテナ
10a…チップアンテナ
10b…パターンアンテナ
11…整合回路
12、12a…整流回路
13…トランス
14…半導体チップ
20…積層体
30、40…グランドパターン
31〜39…導体パターン
C1〜C3…コンデンサ
D1、D2…ダイオード
L1…インダクタ
M1〜M5…誘電体層
R…回路領域
R1、R2…領域
To…外部端子
V1〜V6…ビア導体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と導体層を交互に積層形成した積層体を用いて構成される電源装置において、
外部からの電波を受信するアンテナと、
前記アンテナの受信信号を入力する入力回路と、
前記入力回路の出力交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路と、
がそれぞれ前記積層体に構成され、
前記入力回路及び前記整流回路を配置した回路領域は、インダクタ及びコンデンサを配置した第1領域と、前記インダクタ及び前記コンデンサ以外の回路部品を配置した第2領域とを含み、
前記アンテナは、前記第1領域とは前記積層体の積層方向で重ならず、前記第2領域のうち少なくとも第1の部品とは前記積層方向で重なることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記アンテナの給電点が前記入力回路の入力側に接続され、前記入力回路の出力側が前記整流回路の入力側に接続され、前記整流回路の出力側が外部端子に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記積層体の所定の導体層にはグランドパターンが形成され、
前記グランドパターンは、前記回路領域と前記積層体の積層方向の一方の側で対向配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記入力回路は、前記アンテナのインピーダンスを整合する整合回路を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
前記入力回路は、前記アンテナに接続される一次コイルと前記整流回路に接続される二次コイルとを有するトランスを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項6】
前記整流回路は、整流素子としての一又は複数のダイオードを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電源装置。
【請求項7】
前記第1の部品は、前記一又は複数のダイオードであることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記第1の部品は、少なくとも前記一又は複数のダイオードを有する半導体チップであることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項9】
前記アンテナは前記積層体の表面に実装され、前記第1の部品は前記積層体の裏面に実装されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電源装置。
【請求項10】
前記アンテナは、チップアンテナであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電源装置。
【請求項11】
前記第1領域のインダクタ及びコンデンサは、前記積層体の内層の導体パターンにより構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電源装置。
【請求項12】
前記アンテナは、前記積層体の内層の導体パターンにより構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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