説明

電源装置

【課題】ホールスラスタの放電振動発生の抑制や高効率での運用を図り、ホールスラスタの特性を長期間にわたって常に安定的かつ良好に維持できる電源装置を提供する。
【解決手段】イオン加速装置のアノード電極14へ印加されるアノード電圧Va、ガス流量系へのガス流量Q、磁場生成用コイル12,13に流れるコイル電流Icを制御する制御手段28を備えると共にアノード電極14に流れるアノード電流Iaを計測する電流計測手段29を有し、制御手段28は、一時的に磁場生成用コイル12,13へ流れるコイル電流Icを一定範囲内で変化させるとともに、そのコイル電流Icの変化に伴って電流計測手段29で計測されるアノード電流Iaの計測値に基づいて磁場生成用コイル12,13へ流すコイル電流Icが最適値となるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン加速を行うための放電機器であるイオン加速装置に用いる電源装置であって、特に人工衛星などに搭載される電気推進装置であるホールスラスタに好適に使用される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン加速を行うための放電機器であるイオン加速装置、特に人工衛星などに搭載される電気推進装置には、電磁加速型のホールスラスタや静電加速型のイオンスラスタなどがある。例えば、ホールスラスタは、環状の放電空間の一方からガスを導入し、放電空間内でガスをイオン化して加速し、放電空間の他方に出力する。このイオンの出力の反作用によってホールスラスタの推力が得られる。環状の放電空間には径方向に磁束が形成されており、この磁束によるホール効果のために、電子は環状の放電空間の周方向にドリフトし、軸方向の動きが抑制される。これによって、イオンのみを効率的に加速することができる。
【0003】
このようなホールスラスタを安定に動作させる上での問題の一つとして、放電振動現象の発生が挙げられる。放電振動現象に関しては、いくつかの種類の振動現象がある。その放電振動現象の内、10kHz前後の周波数で、アノード電流の電流波形が振動するという放電振動と呼ばれる現象がある。この放電振動は、ホールスラスタを搭載したシステムの安定性、信頼性および耐久性に重大な影響を及ぼす。そのため、この放電振動現象を抑制する制御方法が必要とされている。たとえば、特許文献1には放電振動を抑制するための制御方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−177639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1にも記載されているように、放電振動はアノード電圧Va、磁束密度B、ガス流量Qがある決まった関係にあるときに生じる。このため、放電振動は動作条件が変化した場合、例えばホールスラスタの点火立ち上げ時などで特に問題となる。すなわち、ホールスラスタの点火立ち上げ時には、アノード電圧Vaの上昇に伴って放電振動が発生する動作条件の領域を過渡的に通過し、放電振動によって例えば電源の保護が働いて正常な立ち上げができない場合がある。
【0006】
この放電振動は、アノード電圧Va、ガス流量Q、磁束密度B(コイル電流Ic)を適切に設定することで抑制が可能であることが既に知られている。つまり、アノード電圧Va,ガス流量Q,コイル電流Icの組み合わせで、放電振動の生じない安定動作領域が存在する。通常は、この安定動作領域内でアノード電圧Va,ガス流量Q,コイル電流Icを制御することで、ホールスラスタに放電振動の生じない安定な動作が可能になる。例えば、アノード電圧Vaおよびガス流量Qをある値に設定した場合、コイル電流Icを安定動作領域内に設定することで放電振動を抑制することが可能になる。
【0007】
しかしながら、この放電振動の生じない安定動作領域は、ホールスラスタのチャネルの状態に強く依存し、ホールスラスタを長時間動作させた場合、この安定動作領域が次第に変化する。この安定動作領域の経時変化の主要因は、ホールスラスタのチャネルの出射端における端面がイオンの衝突などで磨耗するためである。このように、ホールスラスタのチャネル経時変化に伴い、放電振動の生じない安定動作領域も次第に変化して振動発生を十分に抑制できなくなる。
【0008】
このことは、ホールスラスタの放電振動の問題だけではなく、ホールスラスタの推進効率についても同様に言えることである。すなわち、アノード電圧Vaおよびガス流量Qをある値に設定した場合、ホールスラスタの推進効率の最適点もコイル電流Icの値で最適点となるが、この特性もチャネルの経時変化に伴って変動し、高効率での運用ができなくなってしまう。
上記の特許文献1に記載の従来技術では、このようなホールスラスタのチャネルの経時変化に伴う最適点の変化について十分に考慮されておらず、その対策が不十分であった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ホールスラスタの振動発生の抑制や、高効率での運用、またホールスラスタの摩耗抑制を図ることが可能で、ホールスラスタの特性を長期間にわたって常に安定的かつ良好に維持することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、次の事象に着目したものである。すなわち(a)ホールスラスタの経時変化によってコイル電流Ic(磁束密度B)の最適点が変化する、(b)そのコイル電流Icの最適点は、アノード電流Ia、またはチャンネル構成材の飛散量、あるはイオンビームの発散角を計測することで予測することができる。
【0011】
そこで、本発明は上記事象を配慮し、アノード電極、ガス流量系、および磁場生成用コイルを有するイオン加速装置を駆動制御する電源装置において、上記アノード電極へ印加されるアノード電圧、上記ガス流量系へのガス流量、上記磁場生成用コイルに流れるコイル電流を制御する際、振動マップからの経験則、およびこれまでの最適値の履歴に基づき、一時的にコイル電流Icを一定範囲内で変化させ、その変化に伴うアノード電流Ia、または飛散物の飛散量、あるいはイオンビームの発散角の変化を計測することで、コイル電流Icの最適点を追尾するようにしたものである。
【0012】
すなわち、具体的な構成として、第1の発明では、アノード電極に流れる電流を計測する電流計測手段を備え、上記制御手段は、一時的に上記磁場生成用コイルへ流れるコイル電流を一定範囲内で変化させるとともに、そのコイル電流の変化に伴って上記電流計測手段で計測される計測信号に基づいてアノード電流の平均値、またはアノード電流の振幅、あるいはアノード電流の標準偏差が最小になるように磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するようにしたものである。
【0013】
また、第2の発明では、上記イオン加速装置のイオンビーム噴射端の近傍にチャネル構成材の飛散量を光学的に計測する光学的計測手段を設け、上記制御手段は、一時的に磁場生成用コイルへ流れるコイル電流を一定範囲内で変化させるとともに、そのコイル電流の変化に伴って上記光学的計測手段で得られる計測信号に基づいて上記チャネル構成材の飛散量が最小になるよう上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するようにしたものである。
【0014】
また、第3の発明では、上記イオン加速装置のイオンビームの発散角を計測する発散角計測手段を設け、上記制御手段は、一時的に上記磁場生成用コイルへ流れるコイル電流を一定範囲内で変化させるとともに、そのコイル電流の変化に伴って上記発散角計測手段で得られる計測信号に基づいて上記イオンビームの発散角が最小になるように上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一時的にコイル電流Icを一定範囲内で変化させ、その変化に伴うアノード電流Ia、またはチャネル構成材の飛散量、あるいはイオンビームの発散角を計測することで、コイル電流Icの最適点を追尾するので、ホールスラスタの振動発生の抑制や、高効率での運用、またホールスラスタの摩耗抑制を図ることが可能となり、ホールスラスタの特性を長時間にわたって常に安定的かつ良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるホールスラスタおよびその電源装置を示す構成図である。
【図2】アノード電圧、ガス流量、およびコイル電流で決まる安定動作領域、およびコイル電流の変化に対するアノード電流の変化の関係を示す特性図である。
【図3】安定動作領域の経時変化の説明図である。
【図4】コイル電流を変化させた場合に、これに伴うアノード電流(平均値)の変化の一例を示す特性図である。
【図5】コイル電流を変化させた場合に、これに伴うアノード電流(平均値)の変化を示す他の一例を示す特性図である。
【図6】コイル電流を変化させた場合に、これに伴うアノード電流(平均値)の変化を示すさらに他の一例を示す特性図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるホールスラスタおよびその電源装置を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態3におけるホールスラスタおよびその電源装置を示す構成図である。
【図9】ホールスラスタおよびその電源装置の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1におけるホールスラスタおよびその電源装置を示す構成図である。
【0018】
ホールスラスタ1は、磁場生成用コイルとして互いに同心状に配置された内部コイル11と外部コイル12、両コイル11,12の間に配置された円環状のアノード電極14、円環状のイオン加速領域を形成する内部リング15と外部リング16、各リング15,16の解放端側に設けられた磁束密度調整用のポールピース17、およびガス流量系を構成するためのガス流量調節器18を有する。そして、内部リング15と外部リング16の間に囲まれた空間にイオン加速領域となる円環状のチャネル19が形成されている。内部リング15および外部リング16はいわゆるSPT(Stationary Plasma Thruster)型のホールスラスタではセラミックで構成されている。また、内部コイル11と外部コイル12とはコア10に巻装されて電磁石が構成されている。さらに、このホールスラスタ1に対しては電子を供給してイオンを加速するための陰極であるホローカソード3が設けられている。
【0019】
そして、チャネル19の底面側からガスが供給されてチャネル19内でガスがイオン化され、ホローカソード3とアノード電極14との間に印加された電圧によってイオンが加速され、チャネル19の解放端側にイオンビームとして噴射されることで推力を得る。その場合の印加電圧がアノード電圧Va、そのときに流れる電流がアノード電流Iaである。
【0020】
その際、イオンのみを効率的に加速するために、内部コイル11と外部コイル12を備えた電磁石によって形成された磁場によるホール効果で、電子は円環状のチャネル19内に閉じ込められる。また、ポールピース17によって、円環の半径方向にほぼ均一に磁場が印加されるように、また、ポールピース17などの磁気回路の設計によってチャネル19の出射端付近の磁束密度Bが最も高くなるようにそれぞれ設計されている。また、内部コイル11と外部コイル12に流れるコイル電流を調整することで磁束密度を変化させる。
【0021】
一方、電源装置2は、ホールスラスタ1およびホローカソード3を駆動制御するもので、アノード電極14に所定の電圧を印加するためのアノード電源21、内部コイル11に所定のコイル電流を流すための内部コイル電源22、外部コイル12に所定のコイル電流を流すための外部コイル電源23、ガス流量調節器18によるガス流量を制御するガス流量制御装置25、ホローカソード3に供給するガス流量を制御するガス流量制御装置31、ホローカソード3を加熱するヒータ電源26、ホローカソード3に所定の電圧を印加して電子の流れを安定化するためのキーパ電源27、およびこれらの動作を制御する制御手段としての制御器28を備えている。そして、制御器28は、主制御回路28aおよびチャネル19に最適磁場が生成されるように調整する最適磁場制御回路28bを有する。
【0022】
また、この実施の形態1では、アノード電源21からアノード電極14に流れるアノード電流Iaを計測する電流計測手段としての電流計29が設けられており、この電流計29で計測されたアノード電流が最適磁場制御回路28bに入力されている。
【0023】
主制御回路28aは、ホローカソード3に対するガス流量制御装置31、ヒータ電源26、およびキーパ電源27を制御する。また、主制御回路28aは、ガス流量制御装置25によるガス流量Q、アノード電源21からアノード電極14に加えるアノード電圧Va、内部コイル電源22により内部コイル11に流すコイル電流、および外部コイル電源23により外部コイル12に流すコイル電流を制御するための指令を与える。
【0024】
最適磁場制御回路28bは、主制御回路28aから与えられるコイル電流の制御指令に基づいて、内部コイル電源22と外部コイル電源23とを制御して一時的に内部コイル11と外部コイル12に供給するコイル電流Icを一定範囲内で変化させる。そして、最適磁場制御回路28bは、その変化に伴って電流計29で得られるアノード電流Iaを計測することで、後に詳述するようなコイル電流の最適点を追尾する制御を行う。なお、ここでは、説明の便宜上、内部コイル11に流す内部コイル電流Iciと外部コイル12に流す外部コイル電流Icoとは同じ値のコイル電流Ic(=Ici=Ico)であるとする。
【0025】
コイル電流Icを流す内部コイル電源22と外部コイル電源23は、一般には直流の定電流源であるが、最適磁場制御回路28bの制御に基づいてコイル電流Icを変化させると、これに伴ってチャネル19の内部に形成される磁束密度Bが変化し、その結果、電流計29で得られるアノード電流Iaにも変化が現れる。図2はそのような関係を示す特性図である。
【0026】
図2(A)において、縦軸はアノード電圧Vaおよびガス流量Q、横軸はコイル電流Ic(つまり磁束密度B)をとり、これらのアノード電圧Va、ガス流量Q、およびコイル電流Icで決まる放電振動の生じない安定動作領域Aを示したものである。このような図を振動マップと呼ぶ。この安定動作領域Aは、磁束密度Bの2乗に依存した形状の領域となる。このことは、振動の大きさでも、電力についてもほぼ同様である。また、図2(B)はコイル電流Icの変化に伴うアノード電流Iaの変化の関係を示す特性図で、図2(A)の破線の値にガス流量Qとアノード電圧Vaが設定されている場合に、コイル電流Icの変化に依存してアノード電流Iaが変化する状態を示したものである。
【0027】
アノード電流Iaの測定によって得たい情報は、アノード電流Iaの平均的な大きさ、つまりDC成分と、アノード電流Iaの振動成分、つまりAC成分である。図の点線ではアノード電圧Vaは一定であるので、アノード電流Iaの平均値はすなわち消費電力(=Va×Ia)に比例する。つまり、アノード電流IaのDC成分とAC成分とを測定することによって、消費電力と放電振動の状態を観測することができる。
【0028】
図2(B)では、アノード電流Iaの平均値|Ia|と、標準偏差σIaを示している。ここで、平均値|Ia|と標準偏差σIaは、それぞれDC成分およびAC成分に対応している。なお、このように平均値|Ia|と標準偏差σIaといった統計学的な数値を用いたのは定義が容易だからである。
【0029】
例えば、アノード電流Iaを一定の時間周期で計測し、この計測値に基づいて制御にフィードバックさせる場合、離散的なサンプリング値から、アノード電流Iaの時間的平均値と標準偏差を求めることが可能である。ここで、時間平均や標準偏差を求めるための時間幅は、放電振動の周期(10kHz=0.1ms程度)よりも十分に長いものとする。なお、デジタル的にアノード電流Iaを測定するのではなくて回路的に行うことも可能であり、その場合はそれぞれアノード電流IaのDC成分とAC成分として定義することができる。以下では平均値|Ia|と標準偏差σIaを用いて説明を行うこととする。
【0030】
図2(B)に示すように、ある一定のアノード電圧Vaおよびガス流量Qの条件では、コイル電流Ic(つまり磁束密度B)の変化にしたがって、平均値|Ia|と標準偏差σIaはいずれかの箇所で最小値を持つ。この最小値を与えるコイル電流Icの値は、平均値|Ia|と標準偏差σIaとでは一般に一致していないが、共にアノード電圧Vaやガス流量Qに対して依存性を持つ。
【0031】
アノード電圧Vaおよびガス流量Qは、ホールスラスタ1の推力指令や運用方法によって決まってくる。運用の条件によってアノード電圧Vaを高めに設定するか、ガス流量Qを高めに設定するかは変わってくるが、アノード電圧Vaとガス流量Qとで推力はほぼ決まる。したがって、あるアノード電圧Vaおよびガス流量Qで駆動の条件を決めた場合、コイル電流Icはホールスラスタ1の安定性や推進効率を決める調整パラメータとなる。平均値|Ia|を最小にすると、消費電力を最小にすることができる。一方、標準偏差σIaを最小にすると放電振動が最も小さくなり、安定な動作が可能になる。仮に放電振動の許容範囲が決められているのであれば、これに対応する標準偏差σIaの許容範囲内で、平均値|Ia|を最小にするような制御を行えば、放電振動の抑制と消費電力の低減化を両立させることができる。
【0032】
次に、ホールスラスタ1を長時間動作させた場合にイオン衝突などの磨耗に起因してその特性が経時変化した場合について説明する。
【0033】
図3は、縦軸をアノード電圧Vaおよびガス流量Q、横軸をコイル電流Icとした場合において、放電振動が最小となる安定動作領域の経時変化の状態(振動マップ)を示すものである。図から分かるように、同じアノード電圧Vaおよびガス流量Qの条件下でも、初期状態の安定動作領域A1を与える最適なコイル電流と、経時変化後の状態の安定動作領域A2を与える最適なコイル電流とではその値が異なってきて、最適なコイル電流Icが変化する。
【0034】
図3のように、安定動作領域がA1からA2に経時変化する場合でも最適なコイル電流Icを見つけ出すため、最適磁場制御回路28bは次の処理を行う。
すなわち、最適磁場制御回路28bは、主制御回路28aからの指令に基づき、図4および図5に示すように、経時変化前の初期段階においてコイル電流Icを通常の運用状態では一定値に保つ。いまこの値をIc1とする。ホールスラスタ1の経時変化に伴う安定動作領域の変化に追従して最適なコイル電流Icを見つけ出すため、最適磁場制御回路28bは、一時的にコイル電流IcをIc1から一定範囲内にわたって増減させる。そして、このコイル電流Icの変化に伴って電流計29で得られるアノード電流Iaを計測し、その平均値|Ia|や標準偏差σIaを求める。なお、ここではコイル電流Icは正弦波を重畳させたような形で増減させているが、必ずしも正弦波である必然性はなく、直線状に変化させたり、三角波状に変化させてもよい。
【0035】
図4に示すように、例えばコイル電流IcをIc1から時刻t1〜t2の期間にわたって増減させ、そのときのアノード電流Iaの平均値|Ia|を観測した場合、|Ia|が一定値から増加している。このとき、Ic1は最小の|Ia|を与えるコイル電流Icであることが分かり、電力最小の運用を行っている場合にはここが最適点であることが確認できる。
【0036】
また、図5に示すように、例えばコイル電流IcをIc1から時刻t1〜t2の期間にわたって増減させ、そのときのアノード電流Iaの平均値|Ia|を観測する。アノード電流Iaの平均値|Ia|が、あるところでIc1のときよりも小さい値となった場合、電力最小を与えるコイル電流Icの値はIc1ではなく、この最小の平均値|Ia|を与えるIc、つまりIc2であることが分かる。このようにして、平均値|Ia|をモニタすることで、ホールスラスタ1の経時変化に伴う安定動作領域の変化に追従して電力最小を与える最適なコイル電流Icを見つけ出して運用することができる。
【0037】
コイル電流Icを変動させる幅は、大きければ確実に最良点を見つけることができる。しかし、その一方であまりに磁場の値を大きく変化させてしまうと、一時的とはいえホールスラスタ1や電源の動作が不安定になる可能性がある。したがって、コイル電流Icの変動幅は、装置の安定な動作に影響を与えない程度にしなければならない。この場合、平均値|Ia|のコイル電流Icの依存性が大きく変化していた場合は、最適点を見つけ出せない可能性がある。その場合は、少しずつ最適点に近づいていく、いわゆる「山登り法」を用いることができる。図6はこの様子を示している。
【0038】
図6において、まず、時刻t1〜t2の期間において一度コイル電流Icをある幅で変化させている。このときアノード電流の平均値|Ia|を観測すると、コイル電流Icの変動のピーク値以外の箇所で極値を持たない。つまり平均値|Ia|の最小を示すピークが2つ現れないため、最小点を見出せなかったことを意味している。この場合は、続いて、コイル電流Icの値をIc1から、先の変動の最大値Ic3まで変化させた後(時刻t3)、時刻t4〜t5の期間においてコイル電流Ic3を中心として再度ある幅で変動させる。なお、この手順は何度繰り返しても良い。
【0039】
そして、時刻t4〜t5の期間においてコイル電流Ic3を中心として再度ある幅で変動させた際、平均値|Ia|の最小を示すピークが2つ現れたときには、その2つの極値を与えるIc4が平均値|Ia|を最小にするコイル電流Icとなる。最適磁場制御回路28bは、最終的にこのIc4を各コイル電源22,23から各コイル11,12に供給する新たなコイル電流Icの設定値として選定する。
【0040】
この「山登り法」を用いれば、コイル電流Icを僅かな変動幅で少しずつ最適値に近づけていくことができるので、装置の安定性を保つ上で望ましい。また、本発明で問題にしているのは主に経時変化という非常に時定数の長い現象であるので、コイル電流Icを一時的に変化させてその最適値の探索を行うための実行頻度は、安定動作領域を示す振動マップの変化の経験則、およびこれまでのコイル電流Icの最適値の履歴などを考慮して決定することにより、十分に小さい変動幅で、かつ十分に少ない探索回数で、最適値を見出すことが可能である。
【0041】
なお、上記の説明では、ホールスラスタ1の経時変化に伴う安定動作領域の変化に追従して電力最小を与える最適なコイル電流Icを選定するため、アノード電流Iaの平均値|Ia|を最小にするということを目標にした制御について説明したが、放電振動を最小に抑える上で、アノード電流Iaの変動成分である標準偏差σIaを最小にする場合についても同様の処理を行うことができる。
【0042】
以上のように、この実施の形態1は、ホールスラスタ1の経時変化によってコイル電流Ic(磁束密度B)の最適点が変化するので、これに応じて、図3に示したような安定動作領域を示す振動マップの変化の経験則、およびこれまでの最適値の履歴に基づき、一時的にコイル電流Icの値の近辺でコイル電流Icを一定範囲内で変化させる。そして、コイル電流Icの一定範囲内での変化に伴うアノード電流Iaの変化を測定することで、コイル電流Icの最適点を追尾することができる。これにより、ホールスラスタ1の経時劣化によってコイル電流Icの最適値が変化することを常に把握し、常に最適なコイル電流Icで制御することが可能なる。その結果、ホールスラスタ1の振動発生の抑制や、高効率での運用を図ることが可能となり、ホールスラスタ1の特性を長期間にわたって常に安定的かつ良好に維持することができる。
【0043】
その場合、アノード電流Iaの計測、およびそのデータの収集と解析を十分に詳細に行えば、あるいは他の方法にあってはその計測を的確に行えば、常にどんな運用においても最適なコイル電流Icの値を選定して駆動することが可能になる。具体的には上述のような、いわゆる「山登り法」に加えて、データを解析して計測値のトレンドを記憶、管理して予測制御を行う、あるいは学習制御を行えば、経時変化に対するコイル電流Icの最適値の変化もある程度予測することができる。このような高度なデータの収集と管理と、制御へのフィードバックを行うためには、デジタル的な制御電源が適している。
【0044】
また、この実施の形態1では、ホールスラスタ1の内部コイル11に流す内部コイル電流Iciと外部コイル12に流す外部コイル電流Icoとは同じ値Ic(=Ici=Ico)であるとした。この場合、電源は単一のものでよいので、電源の簡略化が可能であるが、一方、内部コイル11と外部コイル12の各電流Ici,Icoを個別に制御するように各電源を構成することも可能である。その場合、電流の制御系が少なくとも2つ必要になるものの、この構成を採用すればイオンの加速方向の制御などを行うことが可能になる。
【0045】
また、図2および図3に示した安定動作領域を示す振動マップにおいて、縦軸はガス流量Qおよびアノード電圧Vaである。そして、これらのガス流量Qやアノード電圧Vaを具体的にどのように設定するかは、ホールスラスタ1の運用によって決まる。すなわち、ガスを節約したいときは同じ推力を与えるアノード電圧Vaとガス流量Qとの組み合わせで、より一層ガス流量Qの小さい条件を用いればよい。本発明を用いれば、どのようなアノード電圧Vaおよびガス流量Qの組み合わせでも、最適なコイル電流Icで駆動を行うことができるので、求められる運用条件にしたがってガス流量Qとアノード電圧Vaの組み合わせを選定することができる。
【0046】
さらに、例えばガス流量系を単なるオリフィスにしてしまい、ガス流量Qを一定値に固定することも考えられる。こうすると、ガス流量Qの制御系がなくなるため、ホールスラスタ1の構造を単純化でき、装置を小型軽量化できる。この場合の推力はアノード電圧Vaとホールスラスタ1の噴射時間とで制御されることになる。
【0047】
一方、アノード電圧Vaを一定に保ちつつ、ガス流量Qを変化させることも考えられる。例えば、衛星の太陽電池のパドルからのDC出力をそのまま変換せずにアノード電極14に直結し、あるいは衛星のDCバスをそのままアノード電極14に直結し、アノード電極14に一定のアノード電圧Vaを印加し、推力をガス流量Qで制御することができる。
【0048】
このように、アノード電極14をDCバスやパドルに直結すると、アノード電圧Vaが一定になって変化させることができなくなるが、アノード電源21がなくなる分、装置の大幅な小型軽量化が可能になる。
【0049】
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2におけるホールスラスタおよびその電源装置を示す構成図であり、図1に示した実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0050】
この実施の形態2では、ホールスラスタ1のチャネル19のイオンビーム噴射側に、チャネル構成材の飛散量を計測する光学的計測手段4が設けられている。この場合の光学的計測手段4としては、例えばレーザ発振器41、左右一対のミラー42、および検出器43からなる共振器が適用される。その内容については、例えば次の引用文献1に記載されている。
【0051】
引用文献1:Naoji YAMAMOTO,Azer P.YALIN,Lei TAO,Timothy B.SMITH,Alec D.GALLIMOREandYoshihiro ARAKAWA,“Development of Real−timeBoron Nitride Erosion Monitoring System for Hall Thrusters by Cavity Ring−Down Spectroscopy” TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES,SPACE TECHNOLOGY JAPAN,Vol.7(2009),ists26,Pb1〜Pb6
【0052】
上記の実施の形態1の最適磁場制御回路28bは、アノード電流Iaを検出してホールスラスタ1のコイル電流の最適点を追尾する制御を行っていた。一方、この実施の形態2の最適磁場制御回路28bは、内部コイル電源22と外部コイル電源23とを制御して一時的に内部コイル11と外部コイル12に供給するコイル電流Icを一定範囲内で変化させ、その変化に伴って上記の光学的計測手段4で計測されるチャネル構成材の飛散量を計測することで、コイル電流の最適点を追尾する制御を行う。
【0053】
前述のように、ホールスラスタ1の特性の経時変化の要因は、主にチャネル19を構成するイオンビーム噴射側の材料の端面がイオンの衝突などで磨耗することである。よって、光学的計測手段4でチャネル構成材の飛散量を計測することでホールスラスタ1のチャネル構成材がどのような速度で削られていくかをリアルタイムで観測することができる。
【0054】
そして、最適磁場制御回路28bによって一時的に内部コイル11と外部コイル12に供給するコイル電流を一定範囲内で変化させ、その変化に伴って光学的計測手段4でチャネル構成材の飛散量を計測し、チャネル構成材の飛散量が最小(つまりチャネル19の削られていく量が最小)となるように、コイル電流Icの最適点を追尾する制御を行う。この場合の制御動作は、基本的に実施の形態1で説明した場合と同様である。
【0055】
なお、その際、特に内部コイル11のコイル電流Iciと外部コイル12のコイル電流Icoとを個別に制御するようにすれば、プラズマの生成位置やイオン加速方向を制御でき、チャネル構成材の磨耗を最小に抑える制御をより一層的確に行うことが可能である。
【0056】
以上のように、この実施の形態2によれば、一時的にコイル電流Icを一定範囲内で変化させ、その変化に伴うチャネル構成材の飛散量を計測することで、コイル電流Icの最適点を追尾するので、ホールスラスタ1の摩耗抑制を図ることが可能となり、ホールスラスタ1の特性を長期間にわたって常に安定的かつ良好に維持することができる。
【0057】
実施の形態3.
図8は本発明の実施の形態3におけるホールスラスタおよびその電源装置を示す構成図であり、図1に示した実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0058】
この実施の形態3では、ホールスラスタ1から噴射されるイオンビームの発散角の広がりを計測する発散角計測手段としてのイオンコレクタ5が設けられている。この場合のイオンコレクタ5は、ホールスラスタ1のチャネル19のイオンビーム噴射端の近傍に配置されている。
【0059】
なお、イオンコレクタ5の配置位置は、上記のような位置に限らず、例えば、ホールスラスタ1のイオンビーム噴射端から離れた箇所にある太陽光パドルの近傍でも構わない。また、イオンコレクタ5の数は単体でも複数設けてもよい。また、このイオンコレクタ5以外にも、例えばホールスラスタ1のイオンビームの発光をカメラで観測して発散角を計測するなどの方法も可能である。
【0060】
上記の実施の形態1の最適磁場制御回路28bは、アノード電流Iaを検出してホールスラスタ1のコイル電流Icの最適点を追尾する制御を行っていた。一方、この実施の形態3の最適磁場制御回路28bは、内部コイル電源22と外部コイル電源23とを制御して一時的に内部コイル11と外部コイル12に供給するコイル電流を一定範囲内で変化させ、その変化に伴って上記のイオンコレクタ5で計測されるイオンビームの発散角の広がりを計測することで、コイル電流Icの最適点を追尾する制御を行う。
【0061】
ホールスラスタ1は、イオンビームを噴射して推力を得るものであるから、イオンビームはできるだけ一方向に噴射されることが望ましい。しかし、原理的に一方向のみ噴射することは極めて難しく、ある程度の発散角をもって出力される。イオンビームの発散角は、ホールスラスタ1および衛星の運用にも大きく影響し、例えばホールスラスタ1の噴射端付近に太陽光パドルなどのイオンビームが当たって欲しくない構造物が存在する場合には、イオンビームの発散角をある一定値以下に制御することが必要になる。
【0062】
このイオンビームの発散角は、ホールスラスタ1の磨耗によってイオンビーム噴射端のチャネル19の形状が変化するのに伴って大きく変化し、また、ホールスラスタ1のイオンビーム噴射端での磁束密度分布によっても変化する。そして、ホールスラスタ1のイオンビーム噴射端の磁束密度分布は、内部コイル11と外部コイル12の各コイル電流を変化させることである程度の調整が可能である。
【0063】
そこで、イオンコレクタ5をチャネル19のイオンビーム噴射端の近傍に配置してイオンコレクタ5で微小電流を検出することでホールスラスタ1から出力されるイオンビームの発散角を計測する。
【0064】
そして、最適磁場制御回路28bによって一時的に内部コイル11と外部コイル12に供給するコイル電流Icを一定範囲内で変化させ、その変化に伴ってイオンコレクタ5でイオンビームの発散角を計測する。そして、このイオンビームの発散角が常に最適な状態となるように、コイル電流Icの最適点を追尾してホールスラスタ1のイオン噴射端の磁束密度分布を調整する制御を行う。この場合の制御動作は、基本的に実施の形態1で説明した場合と同様である。
【0065】
以上のように、この実施の形態3では、一時的にコイル電流Icを一定範囲内で変化させ、その変化に伴うイオンビームの発散角を測定することで、コイル電流Icの最適点を追尾してホールスラスタ1のイオン発散角を調整する制御を行うので、ホールスラスタ1の特性を長期間にわたって常に安定的かつ良好に維持することができる。
【0066】
上記の各実施の形態1〜3に示したホールスラスタ1では、内部コイル11と外部コイル12とを備えているが、ホールスラスタ1の構造としては、このような構造に限らない。例えば、図9に示すように、ホールスラスタ1の構造として3つ目のコイルが設けられることもある。すなわち、図9では、内部コイル11と外部コイル12に加えて、アノード電極14の裏側で外部コイル12と内部コイル11をつなぐ磁気回路の内側に、さらにトリムコイルが設けられている。このトリムコイル13は、チャネル19内部の磁束密度の分布を調整することでイオンの加速方向や推進効率などホールスラスタ1の性能向上を行うものである(例えば、下記の引用文献2参照)。
【0067】
引用文献2:Hirokazu Tahara,Tsuyoshi Fujita and Yudai shimizu,”Performance Prediction in Long Operation for Magnetic−Layer−type Hall Thrusters”,The 31st International Electric Propulsion Conference,IEPC−2009−140(2009)
【0068】
このようなトリムコイル13を設けたホールスラスタ1についても、本発明を適用することができる。その場合、上記の各実施の形態1〜3と同様、内部コイル11のコイル電流Ici、外部コイル12のコイル電流Ico、およびトリムコイル13のコイル電流Ictを全て同一の値にして制御することもできる。一方で、各コイルに対して個別の電源22〜24を設け、各コイル電流Ici,Ico,Ictを個別に制御すれば、イオンの加速方向や推進効率などのより高度な制御が可能になる。なお、トリムコイル13は、図9に示した構成のもの以外に、外部コイル12のさらに外側に設けるなど、いくつもの配置が考案されている。
【0069】
上記の実施の形態1ではアノード電流Iaを測定することにより最低電力制御(効率最大)や電流振動最小制御(電流の安定性最大)を行い、また、実施の形態2ではレーザなど光学的計測手段4によるチャネル構成材の飛散量を計測することによりチャネル構成材の飛散量の最小制御(寿命最大)を行い、また、実施の形態3ではイオンコレクタ5によるイオンビーム発散角を計測することにより発散角最小制御を行っている。しかし、本発明は、これらの各実施の形態1〜3で示した個別の制御に限らず、これらの制御を組み合わせて、コイル電流Icを一定期間ごとに変化させるというような方法で常に最適点を追従することでホールスラスタ1の特性を長期間にわたって常に安定的かつ良好に維持することが可能である。その場合、衛星の運用時において、効率重視、安定性とノイズ重視、寿命重視、発散角重視といった方針に対応することができ、また的確に制御を切り替えることが可能になる。
【0070】
本発明は、上記の実施の形態1〜3に示したように、特に、ホールスラスタ1の振動現象を抑制して最適な磁場の制御方法を行うためのものであり、ホールスラスタ1に適用することが有効である。したがって、上記の各実施の形態1〜3では、イオン加速装置としてのホールスラスタ1という人工衛星の推進装置について説明している。特にチャネルの磨耗が問題となるのは、チャネルの内壁15および外壁16がセラミックで構成されている、いわゆるSPT(Stationary Plasma Thruster)型のホールスラスタであり、本発明の適用に適している。
【0071】
しかしながら、本発明は、これに限らずホールスラスタ1と同様の装置をイオン源装置として用いる場合などに適用することができる。また、本発明は、円環状のイオン源装置だけではなく、電圧によってイオンを加速し、磁場によって電子の動きを制限するような一般的な電気推進装置やイオン加速装置、たとえばイオンスラスタなどにも適用が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ホールスラスタ、11 内部コイル、12 外部コイル、13 トリムコイル、
14 アノード電極、18 ガス流量調節器、2 電源装置、21 アノード電源、
22 内部コイル電源(磁場生成用コイル)、
23 外部コイル電源(磁場生成用コイル)、24 トリムコイル電源、
25 ガス流量制御装置、28 制御器(制御手段)、28a 主制御回路、
28b 最適磁場制御回路、29 電流計(電流計測手段)、4 光学的計測手段、
5 イオンコレクタ(発散角計測手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極、ガス流量系、および磁場生成用コイルを有するイオン加速装置を駆動制御する電源装置であって、
上記アノード電極へ印加されるアノード電圧、上記ガス流量系へのガス流量、および上記磁場生成用コイルに流れるコイル電流を制御する制御手段と、上記アノード電極に流れる電流を計測する電流計測手段とを備え、上記制御手段は、一時的に上記磁場生成用コイルへ流れるコイル電流を一定範囲内で変化させるとともに、そのコイル電流の変化に伴って上記電流計測手段で計測される計測信号に基づいて上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するものである電源装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記コイル電流を変化させたときにこれに伴って上記電流計測手段で計測される計測信号に基づくアノード電流の平均値が常に最小になるように、上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流値を決定するものである請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記コイル電流を変化させたときにこれに伴って上記電流計測手段で計測される計測信号に基づくアノード電流の振幅、あるいは上記アノード電流の標準偏差が常に最小になるように、上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流値を決定するものである請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記コイル電流を変化させたときにこれに伴って上記電流計測手段で計測される計測信号に基づくアノード電流の振幅、あるいは上記アノード電流の標準偏差が予め設定された許容範囲内で、上記アノード電流の平均値が常に最小になるように、上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流値を決定するものである請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
アノード電極、ガス流量系、および磁場生成用コイルを有するイオン加速装置を駆動制御する電源装置であって、
上記アノード電極へ印加されるアノード電圧、上記ガス流量系へのガス流量、および上記磁場生成用コイルに流れるコイル電流を制御する制御手段と、上記イオン加速装置のイオンビーム噴射端の近傍にチャネル構成材の飛散量を光学的に計測する光学的計測手段とを備え、上記制御手段は、一時的に上記磁場生成用コイルへ流れるコイル電流を一定範囲内で変化させるとともに、そのコイル電流の変化に伴って上記光学的計測手段で得られる計測信号に基づいて上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するものである電源装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記コイル電流の変化に伴って上記光学的計測手段で得られる計測信号に基づいて上記チャネル構成材の飛散量が最小になるように上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するものである請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
アノード電極、ガス流量系、および磁場生成用コイルを有するイオン加速装置を駆動制御する電源装置であって、
上記アノード電極へ印加されるアノード電圧、上記ガス流量系へのガス流量、および上記磁場生成用コイルに流れるコイル電流を制御する制御手段と、上記イオン加速装置のイオンビームの発散角を計測する発散角計測手段とを備え、上記制御手段は、一時的に上記磁場生成用コイルへ流れるコイル電流を一定範囲内で変化させるとともに、そのコイル電流の変化に伴って上記発散角計測手段で得られる計測信号に基づいて上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するものである電源装置。
【請求項8】
上記制御手段は、上記コイル電流の変化に伴って上記発散角計測手段で得られる計測信号に基づいて上記イオンビームの発散角が最小になるように上記磁場生成用コイルへ流すコイル電流を調整するものである請求項7に記載の電源装置。
【請求項9】
上記磁場生成用コイルは内側コイルと外側コイルを有し、上記制御手段は上記各コイルに流れるコイル電流の値を個別に制御するものである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項10】
上記ガス流量系のガス流量が一定値に固定されている請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項11】
上記アノード電極に印加されるアノード電圧が一定値に固定されている請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項12】
上記イオン加速装置は、ホール効果を用いたイオン加速装置である請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−149617(P2012−149617A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10456(P2011−10456)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)