説明

電球型蛍光ランプ

【課題】熱伝導部の蛍光の透光率を外管バルブの拡散膜の透光率と近似したものとし、レンズ効果によりランプからの発光が分光して演色性が低下するのを抑制し、全体に亘って均一な拡散光を放出することができ、熱伝導性に優れ長寿命の電球型蛍光ランプを提供する。
【解決手段】蛍光を発光する発光管と、該発光管を包囲して設けられ内壁面に蛍光を拡散する拡散膜を有する外管バルブと、発光管の熱を外管バルブに伝導する熱伝導部を備える電球型蛍光ランプにおいて、熱伝導部はバインダー樹脂と、該バインダー樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する透光性の粉体とを含み、蛍光に対する透光率が拡散膜の透光率と近似している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電球型蛍光ランプに関し、より詳しくは、蛍光を発光する発光管からの発熱を充分に放熱することができ、外管バルブから全面に亘って均一な拡散光を発光することができる蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
電球型蛍光ランプは、省エネルギーを図るため、白熱電球の代替えとして、白熱電球のソケットをそのまま用いてこれに接続できるように、直管型の蛍光ランプを湾曲させ、あるいは螺旋状に屈曲して、これをソケットに接続可能な口金を有する外管バルブ内に配置した構造を有するものが開発されている。電球型蛍光ランプは、外管バルブを有することから、外管バルブ内に発光管等で発生する熱が蓄積されることにより発光管の温度が上昇し、これに伴い発光管内の水銀の蒸気圧が上昇しランプの効率が低下するため、発光管内部に導入する水銀をアマルガムにして発光効率を低減したり、発光管先端と外管バルブ間に、熱伝導性のシリコーン樹脂からなる熱伝導部を設け、発光管等で発生する熱を外管バルブへ効率よく伝導し外部への放出を図っている。更に、外管バルブの内壁面に拡散膜を形成し、発光管から放出される蛍光を外管バルブの拡散膜で拡散し、外管バルブから放出する蛍光の拡散を図った電球型蛍光ランプが開発されている。
【0003】
例えば、熱伝導性媒体としては、金属、合成樹脂、ゴム等を使用した光透過性に優れたもの、更に耐熱性に優れたシリコン樹脂を用いたもの(特許文献1)や、外管バルブ内に配置される点灯装置の熱を放出するために、熱伝導性のフィラーを添加した熱伝導性物質を点灯装置と口金側のカバー体間に設けたもの(特許文献2)等が報告されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2には、外管バルブに拡散膜を設けたことの記載はなく、外管バルブから放出される蛍光を拡散して放射するものではない。
【0005】
また、発光管の最冷点箇所に突出部を備え突出部のみが透光性の熱伝導性媒体を介してグローブに熱的に結合されている低圧水銀ランプ(特許文献3)、発光管の最冷点予定箇所と対向する外管の部分とが金属粉体が混合された熱伝導性媒体を介して接続された低圧水銀蒸気放電ランプ(特許文献4)等が報告されている。
【0006】
特許文献3に記載される低圧水銀ランプは、グローブの内周には発光管から発せられた光を拡散させるための拡散膜が塗布されており、グローブの下端部分に設けられる透光性の熱伝導性媒体に発光管を発光管に設けた突出部のみで接触させることにより、熱導電性媒体が接触してグローブに形成される透光部分から見透される発光管の面積を小さくすることができるものであって、グローブ管から発光される蛍光は全体に亘って均一に拡散されるものではない。内壁に拡散膜を設けた外管バルブの先端部が透明であると、外観が低下するのみならず、レンズ効果によりランプからの発光が分光による色分離を生じ演色性が低下し、また、配光が変化する傾向にある。
【0007】
特許文献4に記載される低圧水銀蒸気放電ランプは、熱伝導性媒体に金属粉体を含有することにより熱伝導性を向上させ、ランプの効率のばらつき幅を縮小させ、平均値を高めることができるが、充分な熱伝導性を得るために金属粉末の使用量を多くする必要があり、蛍光の透光率が低下することから、優れた熱導電性と高い蛍光の透光率とを兼備する熱伝導性媒体を得ることは困難である。
【0008】
その他、LEDチップをダイヤモンドカーボン粉末やセラミック粉末等の絶縁熱伝導性材料とシリコーン樹脂等の接着材料からなる接着体により基板に固着した発光ダイオード装置(特許文献5)等が開示されているが、電球型蛍光ランプの熱伝導部についての開示はない。
【0009】
熱伝導部の蛍光の透光率を外管バルブの拡散膜の透光率と近似したものとし、レンズ効果によりランプからの発光が分光して演色性が低下したり、配光が変化するのを抑制し、全体に亘って均一な拡散光を放出することができ、熱伝導性に優れ長寿命の電球型蛍光ランプが要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−263972
【特許文献2】特開2004−6204
【特許文献3】特開2004−311032
【特許文献4】特開2005−251449
【特許文献5】特開2009−33081
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、熱伝導部の蛍光の透光率を外管バルブの拡散膜の透光率と近似したものとし、レンズ効果によりランプからの発光が分光して演色性が低下したり、配光が変化するのを抑制し、全体に亘って均一な拡散光を放出することができ、熱伝導性に優れ長寿命の電球型蛍光ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、バインダー樹脂と屈折率の異なる粉体とを含み、蛍光に対する透光率を外管バルブの内壁面に設けられる拡散膜と近似したものとすることにより、熱伝導性に優れ長寿命であって、演色性に優れ、配光が変化するのを抑制し、外管バルブ全体から均一な拡散光が放出されることの知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、蛍光を発光する発光管と、該発光管を包囲して設けられ内壁面に蛍光を拡散する拡散膜を有する外管バルブと、発光管の熱を外管バルブに伝導する熱伝導部を備える電球型蛍光ランプにおいて、熱伝導部はバインダー樹脂と、該バインダー樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する透光性の粉体とを含み、蛍光に対する透光率が拡散膜の透光率と近似していることを特徴とする電球型蛍光ランプに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電球型蛍光ランプは、熱伝導部の蛍光の透光率を外管バルブの拡散膜の透光率と近似したものとし、レンズ効果によりランプからの発光が分光して演色性が低下するのを抑制し、全体に亘って均一な拡散光を放出することができ、熱伝導性に優れ長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電球型蛍光ランプを適用した一例を示す部分断面図である。
【図2】本発明の電球型蛍光ランプの一例の配光を比較例との比較において示す分光図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電球型蛍光ランプは、蛍光を発光する発光管と、該発光管を包囲して設けられ内壁面に蛍光を拡散する拡散膜を有する外管バルブと、発光管の熱を外管バルブに伝導する熱伝導部を備える電球型蛍光ランプにおいて、熱伝導部はバインダー樹脂と、該バインダー樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する透光性の粉体とを含み、蛍光に対する透光率が、拡散膜の透光率と近似していることを特徴とする。
【0017】
本発明の電球型蛍光ランプに用いる発光管としては、発光する蛍光を透過する材質で形成されるものであればいずれのものであってもよい。石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、その他、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス等を挙げることができる。
【0018】
上記発光管の形状としては、直管を湾曲させた湾曲型、あるいは螺旋状に屈曲した螺旋型いずれであってもよく、管径として、例えば、3mm〜16mm、長さとして、例えば、150mm〜200mmを挙げることができる。発光管の肉厚は適宜選択することができ、例えば、0.8mm〜2mmを挙げることができる。
【0019】
上記発光管内に封入される希ガスは、電極に始動電圧が印加されると発光管内に存在する電子、あるいは、エミッタから放出される電子により電離され、これらが電極に衝突し、2次電子を放出させる機能を有する。希ガスとしては、キセノン、アルゴンやネオン等を用いることができる。発光管に封入する希ガスの量としては、例えば、ランプの点灯時の発光管内における圧力が、1torr〜3torr等となるような量を挙げることができる。
【0020】
上記発光管内に封入される水銀は、上記電離した希ガスにより生成される2次電子により生じるグロー放電により励起され、253.7nmを含む紫外線を発生する。発光管に封入する水銀は、水銀又はアマルガムとすることもできる。水銀の量としては、例えば、ランプの点灯時の発光管内における水銀の蒸気圧が例えば、0.1Pa〜1Pa等となるような量を挙げることができる。
【0021】
上記発光管内壁には蛍光体層が設けられる。蛍光体層は、水銀原子から放射される253.7nm等の紫外線を励起光として可視光を発光する蛍光体をランプの使用目的に応じて適宜選択して用いることができる。具体的には、水銀から放射される253.7nmの紫外線により励起され、それぞれ緑色、赤色、青色領域の可視光を発光する各蛍光体を含む3波長型蛍光体を挙げることができる。3波長型蛍光体としては、水銀からの紫外線によって励起され蛍光を発光する蛍光体の他、蛍光体から発光される蛍光により励起され蛍光を発生する蛍光体を用いることもできる。水銀からの紫外線により励起され赤色光を発光する蛍光体として、Y23:Eu、3.5MgO・0.5MgF・GeO2:Mn、緑色光を発光するLaPO4:Ce,Tb、青色光を発光するBaMg2Al1627:Eu、(Mn)5(PO43Cl:Eu、(Sr,Ca,Ba)5(PO43Cl:Eu等を挙げることができる。
【0022】
また、蛍光体から発光される蛍光により励起されて蛍光を発光する蛍光体として、例えば、YVO4:Eu、LaPO4:Ce,Tb、(Ba,Eu)MgAl1017、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017、Sr10(PO46l2:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46l2:Eu等を挙げることができる。
【0023】
また、3波長型蛍光体として、ハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(PO46FCl:Sb,Mnを含んでいてもよい。ハロリン酸カルシウム蛍光体は、発光管からの発光を均一に拡散させることができ、輝度の向上を図ることができる。
【0024】
これらの蛍光体を適宜組み合わせて使用することにより、水銀から放射される253.7nmの紫外線により励起され、各蛍光体から緑色、赤色、青色領域の可視光を発光させ、演色に優れた白色光を得るようにすることが好ましい。
【0025】
このような蛍光体の使用量としては、1cm2当たり0.3mg〜1.1mgであることが適度な発光強度が得られることから、好ましい。
【0026】
上記蛍光体の一次粒子として、5〜30μm程度であることが好ましく、3〜5μmであることが好ましい。蛍光体は一次粒子径が大きい程、発光効率がよいが、平均粒子径が過大になると、粒子密度が低下し、発光強度が低下することになる。
【0027】
上記発光管内の両端部には水銀原子から紫外線を放射させるための放電を発生させるための電極が設けられる。かかる電極としては、例えば、バリウム、カルシウム、ストロンチウム等の酸化物等のエミッタ物質を塗布したタングステンコイル等からなる電極を挙げることができる。電極間に電圧が印加されると、エミッタから放出される電子により希ガスを電離させ、この希ガスのイオンが電極に衝突してグロー放電を生起させ、水銀を励起して紫外線を放出させる。
【0028】
更に、発光管には、後述する外管バルブに設けられる熱伝導部との接続を容易にし、発光管の熱を効率よく熱伝導部に伝導するための突出部を有するものであってもよい。突出部の形状としては、熱伝導部との接続を容易にする形状であれば、いずれであってもよい。
【0029】
上記外管バルブは、上記発光管を包囲して設けられ、内壁面に蛍光を拡散する拡散膜を有する。
【0030】
上記外管バルブは、蛍光に対して透光率が高いものが好ましく、その材質としては上記発光管の材質と同様のものを具体的に例示することができる。外管バルブの形状としては、バルブ状であればよく、その大きさとしては、例えば、最大径40mm〜60mm、長さ50mm〜100mmを挙げることができる。
【0031】
上記外管バルブの内壁面に設けられる拡散膜は、発光管からの蛍光を拡散し、外管バルブから放射される蛍光を均一に拡散するものであり、透光性に優れたものであればよい。拡散膜の蛍光の透光率としては、例えば、拡散膜を設けない場合の外管バルブからの発光を基準とすると70%〜95%とすることができる。
【0032】
かかる拡散膜は炭酸カルシウム等で形成することができる。拡散膜の厚さとしては、1μm〜50μmであることが好ましい。
【0033】
このような外管バルブの先端部には熱伝導部を有する。熱伝導部は、バインダー樹脂と、該バインダー樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する透光性の粉末とを含む。バインダー樹脂とこれに含有される粉末との屈折率の差が大きい程、蛍光の拡散効果が大きく、好ましい。例えば、バインダー樹脂の屈折率が1.40の場合、粉末の屈折率が1.45以上を有することが好ましい。
【0034】
バインダー樹脂としては、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等を用いることが好ましい。シリコーン樹脂は0.1〜0.3W/mKの熱伝導率を有し、熱伝導性に優れ、蛍光に対する透光率が高く、水銀に対して劣化を受けにくく、また、耐熱性に優れることから好ましい。シリコーン樹脂の屈折率は、例えば、有機基とケイ素のモル比、有機基の種類等を調整して、所望の屈折率を得ることができる。バインダー樹脂の屈折率は、屈折計によるVブロック法、臨界角法、プリズムカップリング法等の測定方法による測定値を採用することができる。
【0035】
熱伝導部に含まれる粉体はバインダー樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する。これにより、外管バルブから発光する蛍光の拡散を図ることができる。バインダー樹脂として、シリコーン樹脂を用いた場合、粉体の屈折率は1.45以上であることが好ましい。
【0036】
また、上記粉体は透光性を有する。透光性を有する粉体は、異なる屈折率を有するバインダー樹脂に含有されることにより、発光管からの蛍光を熱伝導部において拡散しつつ、透過させることができる。
【0037】
上記粉体は熱伝導性に優れ、その熱伝導率として0.8W/mK以上250W/mK以下であることが好ましい。
【0038】
熱伝導部に含有される粉体としては、SiO2、Al23、AlN、SiCのいずれか一種以上を含有することが好ましい。これらの粉体は、熱伝導性に優れ、バインダー樹脂と屈折率が異なるものを容易に得ることができる。これらの粉体の熱伝導率は、具体的には、SiO2が0.8〜1.16W/mK、Al23が1〜20W/mK、AlNが150〜250W/mK、SiCが67〜167W/mKを挙げることができる。
これらの粉体の粒子径としては、例えば、10μm以上50μm以下であるものを用いることが好ましい。粒子径としては、レーザー回折による粒度分布測定装置を用いた測定値を採用することができる。
【0039】
上記粉末の熱伝導部中の含有量は、熱伝導部の蛍光に対する透光率が、外管バルブの拡散膜の透光率と近似した範囲とするため、適宜選択する。具体的には、バインダー樹脂100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、15質量部25質量部以下であることが、蛍光に対する透光率が優れたものとできることから好ましい。
【0040】
上記外管バルブに設けられる熱伝導部は、蛍光に対する透光率が外管バルブの拡散膜と近似したものである。熱伝導部の蛍光に対する透光率は、具体的には、70%〜95%を挙げることができる。
【0041】
熱伝導部は、蛍光に対し外管バルブの拡散膜と近似した透光率を有し、拡散膜と同様の外観を備えることから、熱伝導部を設けた部分から外管バルブの内部が見透されることはなく、レンズ効果による蛍光の分光を抑制し、外管バルブの全体に亘って均一に蛍光を発光することができる。
【0042】
熱伝導部は、拡散膜と近似した蛍光の透過率を有することから、拡散膜に替えて外管バルブの内壁面全体に設けることも可能であるが、具体的には、例えば、軸方向の長さが50mmの外管バルブに対し、高さ3mm〜5mm等に設けることができる。外管バルブの内壁面積に対し、5%〜10%の範囲、あるいは、容積として1.5〜5ml等が熱伝導性とコストを勘案して、好ましい。
【0043】
上記電球型蛍光ランプは、上記外管バルブに包囲される上記発光管を支持する基板の裏面に点灯回路を設け、これを被覆するケースに口金を接続したものであってもよい。外部電源に接続されるソケットに口金を挿入することにより点灯回路を介して発光管内の電極に電源が供給され、発光管内に放電が発生され、発光管から蛍光が放射するようになっている。
【0044】
このような電球型蛍光ランプを製造する方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。直管状のガラス管を所望の形状に成形する。ガラス管の成形は、ガラスの軟化点以上の雰囲気において、軟化したガラス管内にガスを送風させて管径が潰れることを抑制しつつ、冶具に押し当て、例えば、螺旋形に形成する。ガラス管を軟化点以下に冷却、硬化させ、冶具を外し、所望の形状のガラス管を得る。その後、螺旋形状の頂点部分を局所的にガラスの軟化点以上に加熱し、突出部状の凹部を有する突出部形成用冶具を当て、ガラス管にガスを送風し、凹部にガラスを進入させた後、冷却、硬化させ、所望の形状の突出部を形成する。
【0045】
蛍光体層を形成するための蛍光体物質を分散した分散液を調製する。分散媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン等を、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。分散媒中に含有される蓄光蛍光体物質の含有量は分散液の比重が1.05〜1.8となるような範囲が好ましい。分散液にはその他、上記の物質の機能を阻害しない範囲において、分散剤、エチルセルロースや硝化綿等の粘度調整剤、結着剤等の添加剤を含有させることができる。得られた分散液を成形したガラス管内に吸い上げガラス管内壁に塗工し、乾燥して蛍光体層を設ける。乾燥は、25〜90℃、1〜30分で加熱して行うことができる。両端部にエミッタ物質を塗布したタングステンコイル等からなる電極を配置し、コイルに接続されたリード線を貫通した封止部材でガラス管の両端を密封し、内部に水銀及び希ガスを導入して発光管を形成する。
【0046】
得られた発光管と点灯回路を基板の表裏に配置し、発光管のリード線と点灯回路、点灯回路と口金とを接続し、発光管を包囲する外管バルブを固定する工程を残し前段階までを終了した蛍光ランプを調製する。
【0047】
一方、外管バルブの拡散膜を形成するため、炭酸カルシウムを含有する分散液を調製する。分散媒としては、アルコールを用い、分散液中の炭酸カルシウム濃度は3質量%とすることができる。得られた分散液を外管バルブの内壁面に塗布し、80℃の条件により乾燥厚さ10μm〜50μmの拡散膜を形成する。
【0048】
この外管バルブに、未硬化シリコーン樹脂と酸化アルミニウム等の粉末とを混合し、粉末濃度5質量%の混合物を調製する。混合物には、その他、シリコーン樹脂や粉末の機能を阻害しない範囲において、添加物を含有していてもよい。拡散膜を形成し、開口周囲に接着剤を塗布した外管バルブの先端に混合物を流し込み、その状態で蛍光ランプの発光管を外管バルブへ挿入し発光管の突出部をシリコーン樹脂へ挿入し、外管バルブを基板に接着すると共に、シリコーン樹脂を硬化して、熱伝導部を作製し、電球型蛍光ランプを得る。
【0049】
本発明の電球型蛍光ランプを適用した一例を、図1の一部断面図に示す。図1に示す電球型蛍光ランプ10はガラス製の螺旋形の発光管11を有する。発光管の内壁面の略全体に亘って蛍光体層が設けられ、発光管の内部の両端部の近傍にはそれぞれ電極が設けられ、電極に接続されるリード線12を貫通する気密部材によって封止され、発光管の内部には水銀と希ガスが保持される。発光管の外面の先端部には突出部13が形成され、両端部が基板14上に設けられるホルダー15によって位置決め、固定され外管バルブ16に挿入される。外管バルブの内壁面には炭酸カルシウムを含有する拡散膜17が設けられ、先端内部には熱伝導部18が設けられ、熱伝導部18に発光管の外面先端部に設けられる突出部が挿入され、固定される。基板の裏面にはリード線に接続されて点灯回路19が設けられ、点灯回路は口金20が設けられるケース21に収納されてリード線22によって口金の接続部に接続される。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の電球型蛍光ランプを詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
[実施例1]
管径8mm、長さ200mmの直管ガラス管を、軟化点以上に加熱し、ガスを吹き込みながら、2重螺旋形に成形した。頂点部分に長さ6mm、外径6mmの突出部を形成した。3波長蛍光体を酢酸ブチルに分散させ、蛍光体濃度10質量%の蛍光体層形成用分散液を調製し、得られた分散液を、螺旋形に成形したガラス管の内壁面に浸漬塗布し、約40℃〜50℃、20分乾燥し、約30μm厚さの蛍光体層を作製した。ガラス管の両端部をタングステンコイルの電極を配置し封止部材で封止し、ガラス管の内部空間に、希ガスを280Pa水銀を5mg導入し発光管を作製した。
【0051】
基板に固定されたホルダーに発光管の端部を固定し、その裏面に高周波点灯回路を配置してこれらをリード線で接続し、点灯回路と口金を接続し、外管バルブを装着する前段階の蛍光ランプを調製した。
【0052】
炭酸カルシウム粉末を酢酸ブチルに分散し、炭酸カルシウム濃度5質量%の分散液を調製し、最大径60mm、長さ60mmのガラスバルブに塗布し、約40℃〜50℃、20分乾燥し、約20μm厚さの拡散膜を形成した。屈折率1.4のシリコーン樹脂3gと屈折率1.45の平均粒子径30μmの酸化アルミニウム粉末0.1gとを混合し、拡散膜を作成したガラスバルブへ流し入れた。そこへ、蛍光ランプを挿入し、60℃〜80℃、30分硬化して、高さ5mmの熱伝導部を形成し、60W用白熱電球の代替用の13W用電球型蛍光ランプを調製した。発光管は突出部を含め熱伝導部へ5mm接触していた。
【0053】
外管バルブと同じ材質のガラス上に、同じ条件で拡散膜と、熱伝導部とを作製し、それぞれについて、蛍光の透光率を、日本電飾工業製VSS400を使用し全光線透過率を測定した。透光率は、それぞれ78%、80%であった。
【0054】
得られた電球型蛍光ランプに交流電圧を印加して点灯させた。電球型蛍光ランプから放出される蛍光は分光は見られず外管バルブ全体に亘って均一であった。熱伝導部から外管バルブの内部は見透されず、外観上好ましく、意匠性に優れていた。点灯1時間後の電球型蛍光ランプの外面温度は67℃であった。また、この時の電球型蛍光ランプの配光を測定した。結果を図2に示す。
【0055】
[比較例1]
熱伝導部に、酸化アルミニウムを含有させなかった他は実施例1と同様に電球型蛍光ランプを調製した。
【0056】
得られた電球型蛍光ランプに交流電圧を印加して点灯させたところ、電球型蛍光ランプから放出される蛍光は分光していた。熱伝導部から外管バルブの内部が見透され、外観は好ましいものではなく、意匠性に劣るものであった。点灯1時間後の電球型蛍光ランプの温度は70℃であった。この時の電球型蛍光ランプの配光を測定した。結果を図2に示す。
【0057】
[比較例2]
熱伝導部に、酸化アルミニウムに変えて導熱剤を含有した他は実施例1と同様に電球型蛍光ランプを調製した。この時の電球型蛍光ランプの配光を測定した、結果を図2に示す。
【0058】
結果より、本発明の電球型蛍光ランプはレンズ効果は見られず、外管バルブ全体に亘って均一な蛍光を放出することができ、熱伝導性に優れ、優れた意匠性を有することが分かる。
【符号の説明】
【0059】
10 電球型蛍光ランプ
11 発光管
16 外管バルブ
17 拡散膜
18 熱伝導部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光を発光する発光管と、該発光管を包囲して設けられ内壁面に蛍光を拡散する拡散膜を有する外管バルブと、発光管の熱を外管バルブに伝導する熱伝導部を備える電球型蛍光ランプにおいて、熱伝導部はバインダー樹脂と、該バインダー樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する透光性の粉体とを含み、蛍光に対する透光率が拡散膜の透光率と近似していることを特徴とする電球型蛍光ランプ。
【請求項2】
熱伝導部に含まれる粉体の熱伝導率が、0.8W/mK以上250W/mK以下であることを特徴とする請求項1記載の電球型蛍光ランプ。
【請求項3】
熱伝導部の蛍光に対する透光率が、70%以上95%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の電球型蛍光ランプ。
【請求項4】
粉体の含有量が、バインダー樹脂100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の電球型蛍光ランプ。
【請求項5】
粉体がSiO2、Al23、AlN、SiCのいずれか一種以上を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の電球型蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−262775(P2010−262775A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110989(P2009−110989)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】