説明

電球形蛍光ランプ、照明装置および発光管の製造方法

【課題】発光効率と光束維持率を共に向上させることができる電極形蛍光ランプ、照明装置および発光管の製造方法を提供する。
【解決手段】口金を有するカバー3と;このカバーに取り付けられる一対の電極5i,5jが封装された屈曲形のガラスバルブ4g、このガラスバルブの内面に形成されたシリカ微粒子を主成分とする第1の保護膜、この第1の保護膜の内面に形成された第2の保護膜およびこの第2の保護膜の内面に形成された蛍光体膜を備えた発光管4と;カバー内に収容された点灯装置7と;を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電球形蛍光ランプ、この電球形蛍光ランプを具備した照明装置および発光管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電球形蛍光ランプは、JISに定義されている一般照明用電球に近い寸法に小形化されており、一般照明用電球に近似した外観を有する。
【0003】
この種の電球形蛍光ランプは、屈曲形のバルブを有する発光管、カバー本体の一端に口金を取り付け他端側で発光管を支持するカバー、このカバー内に収容される点灯装置、発光管を被覆してカバーの他端側に取り付けられるグローブ等を具備している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、近年では、グローブ内の狭隘な空間内に配設される屈曲バルブを螺旋形に形成して放電路長の増大を図ったものが提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。また、螺旋形発光管の製造方法の一例としては、ガラスバルブを螺旋形に屈曲形成した後、アルミナ等の保護膜を形成し、この保護膜の内面に蛍光体膜を形成する方法が知られている(特許文献4参照)。これはガラスバルブからNaやPb,K等の不純物が蛍光体膜に析出して劣化させるのを保護膜により抑制することにより、発光効率と光束維持率が低下することの抑制を図っている。
【特許文献1】特開2000−21351号公報
【特許文献2】特開2003−263972号公報
【特許文献3】特開2003−31179号公報
【特許文献4】特許第3669410号公報(段落[0025],図7,図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の螺旋形の電球形蛍光ランプでは、ガラスバルブを螺旋形に屈曲形成した後に、アルミナ等の保護膜を形成しているので、屈曲率の大きい屈曲部では保護膜と蛍光体膜が所定の膜厚範囲内でほぼ均等に形成し難いという課題がある。
【0006】
また、アルミナ等の保護膜は、膜としての緻密性が低いので、ガラスバルブから蛍光体膜に析出するNaやPb,K等の不純物の析出の抑制が不十分であり、蛍光体膜を劣化させ易いという課題がある。このために、蛍光体膜の発光効率と光束維持率が低いという課題がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、発光効率と光束維持率を共に向上させることができる電極形蛍光ランプ、照明装置および発光管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の電球形蛍光ランプは、口金を有するカバーと;このカバーに取り付けられる一対の電極が封装された屈曲形のバルブ、このバルブの内面に形成されたシリカ微粒子を主成分とする第1の保護膜、この第1の保護膜の内面に形成された第2の保護膜およびこの第2の保護膜の内面に形成された蛍光体膜を備えた発光管と;カバー内に収容された点灯装置と;を具備していることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の電球形蛍光ランプは、第2の保護膜は、アルミナ、リン酸カルシウムまたはリン酸ストロンチウムのうち少なくとも一種の微粒子を主成分とすることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の電球形蛍光ランプは、バルブは、螺旋形に屈曲形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の照明装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の電球形蛍光ランプと;電球形蛍光ランプが取り付けられる器具本体と;を具備していることを特徴する。
【0012】
請求項5記載の発光管の製造方法は、屈曲形バルブの内面に蛍光体膜が形成された発光管の製造方法であって、直管状のバルブの内面にシリカ微粒子を主成分とする第1の保護膜を形成する工程と;この後、バルブを屈曲形成する工程と;次に、第1の保護膜の内面に、アルミナ、リン酸カルシウムまたはリン酸ストロンチウムのうち少なくとも一種の微粒子を主成分とする第2の保護膜を形成する工程と;この後、第2の保護膜の内面に蛍光体膜を形成する工程と;バルブに一対の電極を封装する工程と;バルブ内を排気し、その後、放電媒体をバルブ内に封入する工程と;を具備していることを特徴する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の電球形蛍光ランプによれば、バルブ内面を第1,第2の保護膜により2重に被覆することにより、蛍光体膜を2重に保護しているので、保護膜が単層である場合に比して、ガラスバルブ内面から蛍光体膜に析出するNaやPb,K等の不純物の析出量の抑制効果を向上させることができる。このために、ガラスバルブからの不純物による蛍光体膜の劣化を抑制することができるので、発光効率と光束維持率を向上させることができる。
【0014】
また、第1の保護膜がシリカ微粒子を主成分とするので、この第1の保護膜の緻密性を向上させることができる。このために、バルブ内面からNaやPb,K等の不純物が析出されるのを高緻密性のシリカ製第1の保護膜により抑制する不純物の析出量の抑制効果を向上させることができる。
【0015】
さらに、このシリカ製第1の保護膜を通してアルミナ等の第2の保護膜に到達した上記不純物は、このアルミナ等の第2の保護膜によっても、蛍光体膜への析出を抑制することができる。これにより、発光効率と光束維持率を向上させることができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、アルミナ等の第2の保護膜は、光反射機能を有するので、蛍光体膜で発光した光を再び蛍光体膜に反射して再度発光させることができる。このために、発光効率を向上させることができる。
【0017】
請求項3記載の電極形蛍光ランプによれば、屈曲バルブが螺旋形であるので、一般に、屈曲率の大きい箇所や屈曲部が多いが、このバルブの内面を第1,第2の保護膜により2重に被覆するので、バルブからの上記不純物の析出量を2重に抑制することができる。
【0018】
また、ガラスバルブ内面に直接形成される第1の保護膜がシリカ製であるので、上述したように、その高い緻密性により不純物の抑制効果をさらに向上させることができる。
【0019】
請求項4記載の照明装置によれば、請求項1ないし3のいずれか一の電極形蛍光ランプを具備しているので、これら電極形蛍光ランプの作用効果を有する照明装置を提供することができる。
【0020】
請求項5記載の発光管の製造方法によれば、シリカ微粒子を主成分とする第1の保護膜は、バルブが屈曲前の直管時に形成されるので、この第1のシリカ保護膜を所定厚でほぼ均等に形成することができる。また、この第1のシリカ保護膜のバルブへの固着強度を増強することができる。このために、この後のバルブ屈曲工程でバルブを屈曲する際に、第1の保護膜がバルブから剥離等の破損が発生するのを抑制することができる。
【0021】
また、この直管バルブの屈曲により、仮に、第1のシリカ保護膜に局所的な剥離やクラック等の破損が発生した場合でも、第1のシリカ保護膜上に第2の保護膜を塗布したときに、この第2の保護膜の一部を第1の保護膜のクラック等破損箇所に充填して修復することができる。
【0022】
このために、バルブからの不純物の析出を第1,第2の保護膜により2重に抑制することができるので、発光効率と光束維持率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、複数の添付図面中、同一または相当部分には、同一符号を付している。
【0024】
図1は本発明の第1の実施形態に係る電球形蛍光ランプの一部を縦断面で示す正面図、図2は図1で示す発光管の正面図、図3は図2のIII部拡大縦断面図、図4は同発光管の平面図である。
【0025】
図1に示すように電球形蛍光ランプ1は、その高さ方向(管軸方向)の一端(図1では下端)に口金2を有するカバー3、このカバー3の他端(図1では上端)側に支持された発光管4、この発光管4の一端側を支持するカバー3に取り付けられたホルダ5、発光管4を覆うとともに一端側でホルダ5の周囲も覆ってカバー3に取り付けられたグローブ6、口金2およびカバー3の内側に収納された点灯装置7を備えている。そして、定格電力が例えば40Wタイプ、60Wタイプ、100Wタイプの白熱電球などの一般照明用電球に近い寸法と外観に形成されている。この一般照明用電球とは、JIS C 7501に定義されている。
【0026】
口金2は、エジソンタイプのE26形などで、ねじ山を備えた筒状のシェル2a、このシェル2aの一端側の頂部に絶縁部2bを介して設けられたアイレット2cを備えている。シェル2aは、その他端側をカバー3の一端部に被せて接着剤またはかしめなどにより固定されている。
【0027】
カバー3は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)などの耐熱性合成樹脂により図1中下方に向けて漸次縮径する逆円錐台状部と円筒状部を一体に連成したカバー本体3aを有し、このカバー本体3aの一端(図1中下端)側には口金2のシェル2aが取り付けられ、カバー本体3aの他端側(図1中上端側)には、取付端部である環状の開口取付端部3bが形成されている。
【0028】
この取付端部3b内には、カバー本体3aの円錐台状部と円筒部との連結部内側の環状凸状段部3c上にて、ホルダ5の下部円筒状開口端を載置し固着している。
【0029】
すなわち、ホルダ5は例えばPBT等の耐熱性合成樹脂により有蓋円筒状に形成され、その蓋部をなす円板状の基板部5aの図中下面周縁部に、一端(図1では下端)側に突出する円筒状の円筒部5bを一体に連成し、この円筒部5bの図1中開口下端を、カバー本体3aの凸状段部3c上に載置し接着剤等により固着している。
【0030】
ホルダ5は、基板部5a上に、発光管4の一対の電極封止端部4a,4bを載置させて支持する支持凹部と、これら電極封止端部4a,4b同士の間隙内に突出して、その径方向のずれを規制する筒状突部5cを突設している。基板部5aは、その筒状突部5cの外側にて、挿通孔5d,5eをそれぞれ形成し、これら挿通孔5d,5eには、発光管4の一対の電極封止端部4a,4bからその外方へ突出する細管4cと図2で示すアウタワイヤ4d,4dをそれぞれ挿通させるようになっている。
【0031】
グローブ6は、透明または光拡散性を有するガラスや合成樹脂などの材質により、白熱電球などの一般照明用電球のガラス球の形状に近い滑らかな曲面状に形成されている。すなわち、グローブ6は、ほぼ球状に形成された球状部6aの図1中下端部に、この球状部6aの直径よりも小径に漸次縮径されたほぼ円筒状の縮径部6bを一体に連成しており、球状部6aはグローブ6の最大径を示す最大径部6cを有する。縮径部6bは、グローブ6の一端部(図1中下端部)に開口端部6dが形成され、この開口端部6dの縁部がカバー3の開口取付端部3bの内側に嵌合されて例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの接着剤により接着固定されている。
【0032】
そして、グローブ6は、発光管4の中心軸Oと同軸のグローブ6の中心軸上で、図6中、左半部6X1と右半部6X2とに縦割りで分割されている。
【0033】
すなわち、このグローブ6が、例えば非分割の一体から形成されている場合には、発光管4の最大外径部4kの外径の方がグローブ6の開口端部6dよりも大きいので、この開口端部6dからグローブ6内に発光管4を挿入できない。
【0034】
そこで、このグローブ6はその中心軸O上で左,右半部6X1,6X2とに分割されているので、発光管4をホルダ5上にそれぞれ立設した後、この発光管4の外側を、その側方からグローブ6の左,右半部6X1,6X2によりそれぞれ被せ、これら左,右半部6X1,6X2を一体に突き合わせた状態でカバー3に取り付けることができる。
【0035】
なお、グローブ6は横方向(水平方向)に2分割してもよい。この場合は、図1中、破線で示すように発光管4の最大外径部4kの中心線Oaを水平分割線として図1中、上下方向に2分割6Y1,6Y2してもよい。これによれば、水平分割線が発光管4の最大外径部4kの中心線Oaであるので、上下一対のグローブ6Y1,6Y2により発光管4の全体を被覆することができる。
【0036】
発光管4は、その図1,図2中、上部の螺旋形部4eと、下部の一対の直状部4f,4fとを有し、これらを一体に連結している。これら一対の直状部4f,4fは、その各一端部に一対の電極4i,4iをそれぞれ封装して一対の電極封止端部4a,4bをそれぞれ形成している。
【0037】
螺旋形部4eは、外径が例えば10mmの直状円管状のガラスバルブ4gをほぼ等分の2つ折りに折曲し、その等分位置の折返し部4hを頂端として図示しない金型に巻き付けて2重螺旋形にモールド成形することにより形成される。
【0038】
すなわち、図4に示すように螺旋形部4eは、ガラスバルブ4gの一方の電極封止端部、例えば4aから旋回軸O回りに旋回しながら図1中上方の頂端部である折返し部4hに至る第1の旋回部Aと、この折返し部4hの他端から旋回軸O回りに旋回しながら他方の電極封止端部、例えば4bに至る第2の旋回部Bとを有する2重螺旋形状を有し、例えばほぼ3周旋回(ターン数)している。したがって、螺旋形部4eは螺旋ピッチが密の密ピッチ部に形成され、放電路長が長い長放電路部に形成されている。なお、螺旋形部4eの頂端部である折返し部4hは、そのバルブ直径を第1,第2の旋回部A,Bの直径よりも大径の膨出部に形成し、この膨出部に最冷部を形成するように形成してもよい。
【0039】
一対の電極4i,4jは、例えばタングステン製のコイル電極が使用されており、例えばビーズガラスにより仮止めされた状態でガラスバルブ4gの両端部に封着されている。
【0040】
そして、図3に示すようガラスバルブ4gは、そのほぼ全内面に、膜厚0.05〜1.0μmの第1の保護膜4p1を形成し、この第1の保護膜4p1のほぼ全内面に、膜厚0.1〜1.0μmの第2の保護膜4p2を形成し、さらに、この第2の保護膜4p2のほぼ全内面に、希土類等の蛍光体膜4p3を形成している。
【0041】
第1の保護膜4p1は、平均粒径が10〜100nmの超微粒子のシリカ(SiO)を主成分としてなり、その粒子形状は略球状である。
【0042】
第2の保護膜4p2は、アルミナ(Al)、リン酸カルシウム(Ca)またはリン酸ストロンチウム(Sr)のうち、少なくとも一種の微粒子(平均粒径50〜500nm)含んでいる。
【0043】
ガラスバルブ4g内には、アルゴンやクリプトンガス等の放電媒体が封入されており、一対の電極封止端部4a,4bの外面には、その内部に連通する細管4cが突設されている。細管4c内には水銀またはアマルガムが収容されている。
【0044】
螺旋形部4eは、グローブ6の最大径部6cを有する頂端6d側の球状部6a内に収容され、その螺旋径を、グローブ6の球状部6aの内面形状に対応して頂端の折返し部4hから最大径部6cに向けて漸次拡径して行き、グローブ6の最大径部6cで螺旋径を最大とし、さらに、グローブ6の球状部6a下半部の縮径に対応して螺旋径を漸次縮径して行って直状部4fの図1中上端部に一体に連成されている。
【0045】
直状部4fは螺旋形部4eの一対の螺旋終端部において、一対の電極封止端部4a,4b側のガラスバルブ4gの図1中下部を、グローブ6の円筒状部6bの軸方向下方に向けてほぼ直角に折曲し、直状の一対の電極封止端部4a,4bをほぼ平行に並設してホルダ5の支持用凹部内に挿入している。直状部4fのバルブ外径は7〜9mmに形成され、螺旋形部4eのバルブ外径(例えば8〜10mm)よりも小径に形成されている。なお、直状部4fは、ガラスバルブ4gを螺旋形部4eの旋回方向に合わせるように若干湾曲させて螺旋状に形成してもよい。
【0046】
点灯装置7は、点灯回路パターンを形成した縦基板7aをホルダ5内面の一対の縦溝内に嵌入して固定している。すなわち、ホルダ5は、その内面に、その直径方向で対向する一対の縦溝をホルダ5の軸方向に形成し、この縦溝内に縦基板7aの幅方向両側縁部を嵌入させて固定している。縦基板7aは片面または両面基板に構成され、その実装面には、電解コンデンサ等のリード部品やトランジスタ等のチップ部品等の点灯回路部品である複数の電子部品7b,7b,…が実装されている。
【0047】
このように構成された電球形蛍光ランプ1の具体的構成の一例は、次の通りである。すなわち、発光管4の発光管最大外径(螺旋外径)φ2が54mm、発光管4の高さh1が64±1mm、発光管4の最大径部4kの水平中心軸から一対の電極封止端部4a,4bの外面までの高さh2が39.93mmである。一対の電極4i,4j同士間の放電路長は360〜610mmであり、ガラスバルブ4gのバルブ径に応じて相違する。例えばガラスバルブ4gの径(バルブ径)が8mmのとき、放電路長が476mm、バルブ径が9mmのとき、放電路長が374mmである。また、口金2の外径φ3が26mmであり、発光管最大外径φ2(30.5mm)の約1.17倍である。
【0048】
したがって、この電球形蛍光ランプ1によれば、一般照明用電球近似の外観を得ることができる。
【0049】
また、発光管4の螺旋形部4eは、グローブ6の最大径部6cを含む比較的大容量の球状部6a内に収容されているので、バルブ径と螺旋径を共に大径化することができる。このために、螺旋形部4eの放電路長の延伸を図ることができるので、螺旋形部4eにおける光束の増大と発光効率の向上を共に図ることができる。
【0050】
また、グローブ6の狭隘な縮径部6b側内に収容された発光管4の直状部4f,4fは、そのバルブ外径Cが螺旋形部4eのバルブ外径Dよりも細いので、グローブ縮径部6b内での直状部4f,4f周りの間隙を増大させることができる。このために、螺旋形部4eと直状部4f,4fからの発光が直状部4f,4f自体により遮光される遮光量を減少させることができる。これにより、発光効率を向上させることができる。
【0051】
さらに、螺旋形部4eでは、バルブ径と螺旋径を共に大径化できるので、金型を使用したモールド成形によりガラスバルブ4gを螺旋形に成形する際の容易性を向上させることができ、さらに、その螺旋成形時のクラックや歪みを低減することができる。その結果、螺旋形部4eを有するガラスバルブ4gの量産性と歩留りを共に向上させることができる。
【0052】
また、発光管4としての放電路長の多くを分担する螺旋形部4eのバルブ径が大径であるので、発光管4の始動電圧とランプ電圧を低下させることができる。このために、点灯装置7の出力電圧を高くする必要がなくなり、また使用部品の耐圧性を低くすることができるので、コスト低減を図ることができ、さらに、点灯装置7の大形化を防止または抑制することができる。
【0053】
さらに、発光管4の螺旋形部4eはガラスバルブ4gを螺旋形に形成しているので、この螺旋形部4eの内側で発光した光は、その螺旋形のガラスバルブ4g自体の内面に遮光され易く、この螺旋形部4eの外側に放射される光束は低下するが、直状部4fはグローブ6の縮径部6b内で、その軸方向へほぼ平行に延在し、バルブ外径Cも細いので、直状部4f,4fにより遮光される部分が少ない。このために、螺旋形部4eの内側および直状部4fの内側で発光した光がグローブ6の縮径部側(図1中下部側)から外部へ放射される光束を増大させることができる。
【0054】
また、ガラスバルブ4gの内面を第1,第2の保護膜4p1,4p2により2重に被覆することにより、蛍光体膜4p3を2重に保護しているので、保護膜が単層である場合に比して、ガラスバルブ4gの内面から蛍光体膜4p3に析出するNaやPb,K等の不純物の析出量の抑制効果を向上させることができる。このために、ガラスバルブ4gからの不純物による蛍光体膜4p3の劣化を抑制することができるので、発光効率と光束維持率を向上させることができる。
【0055】
さらに、ガラスバルブ4gの内面に直接形成される第1の保護膜4p1は、シリカにより形成されるので、その膜の緻密性を向上させることができる。このために、ガラスバルブ4g内面からNaやPb,K等の不純物が析出されるのを高緻密性のシリカ製第1の保護膜4p1により抑制する不純物の析出の抑制効果を向上させることができる。
【0056】
さらにまた、このシリカ製第1の保護膜4p1を通してアルミナ等の第2の保護膜4p2に到達した上記不純物は、このアルミナ等の第2の保護膜4p2によっても、蛍光体膜4p3への不純物の析出を抑制することができる。これにより、発光効率と光束維持率を向上させることができる。
【0057】
また、アルミナ等の第2の保護膜4p2は、光反射機能を有するので、蛍光体膜4p3で発光した光を再び蛍光体膜4p3側へ反射して再度発光させることができる。このために、発光効率を向上させることができる。
【0058】
次に、上記発光管4の製造方法を説明する。
【0059】
まず、螺旋形に屈曲形成する前の直管状のガラスバルブ4gのほぼ全内面に、超微粒子のシリカの水を主体とした溶液を塗布し、所要の高温度で加熱処理する。これにより、シリカよりなる第1の保護膜4p1がガラスバルブ4gの内面に直接強固に固着される。
【0060】
また、シリカの第1の保護膜4p1を所定の高温度(例えば650℃以上)により加熱するので、このシリカの第1の保護膜4p1上に、第2の保護膜4p2と蛍光体膜4p3の溶液を塗布したとき等の水分再吸収を防止または抑制することができる。すなわち、吸湿状態のシリカのケイ素原子(Si)の多くは4つのOH基と結合しているので、このシリカを例えば650℃以上の温度により加熱すると、OH基が外れ、Siは2つのOと結合して脱水されたシリカ(SiO)となる。このとき、水分(HO)は外部に排出される。
【0061】
このように高温で脱水処理されたシリカの結合は非常に強く、水分(HO)を再び吸収しにくくなる。このために、シリカの加熱後は水分と再結合しないので、上記水分再吸収を防止または抑制することができる。
【0062】
このシリカの第1の保護膜4p1の形成後、直管状ガラスバルブ4gを加熱軟化されたときにシリカも同時に高温脱水され、図示しない金型に巻き付けて2重螺旋形にモールド成形する。
【0063】
次に、この螺旋形のガラスバルブ4g内に、アルミナやリン酸カルシウムまたはリン酸ストロンチウム等を含有した溶液を注入し、この溶液を第1の保護膜4p1のほぼ全内面上に塗布する。
【0064】
これにより、ガラスバルブ4gを螺旋形に屈曲したときに、第1の保護膜4p1に発生した微小なクラックや剥離等の破損箇所に第2の保護膜4p2の溶液が充填される。この後、このガラスバルブ4gを所要温度により加熱処理する。これにより、所定厚の第2の保護膜4p2が第1の保護膜4p1のほぼ全内面に、第1の保護膜4p1の破損部を埋めた状態で形成される。
【0065】
この後、ガラスバルブ4g内に、蛍光体膜の懸濁液を注入し、次いで、加熱処理して第2の保護膜4p2のほぼ全内面に蛍光体膜4p3を形成する。
【0066】
この後のガラスバルブ4g内の排気、水銀やアルゴンガス等放電媒体の封入、一対の電極4i,4jの封着等の工程については、従来と同じ方法であるので、その説明は省略する。
【0067】
この発光管4の製造方法によれば、第1の保護膜4p1は、ガラスバルブ4gが屈曲前の直管時に形成されるので、この第1の保護膜を所定厚でほぼ均等に形成することができる。また、この第1の保護膜4p1のガラスバルブ4gへの固着強度を増強することができる。このために、この後のガラスバルブ4gの屈曲工程でガラスバルブ4gを屈曲する際に、第1の保護膜4p1がガラスバルブ4gから剥離等の破損が発生するのを抑制することができる。
【0068】
また、この直管ガラスバルブ4gの屈曲により仮に、第1の保護膜4p1に局所的な剥離やクラック等の破損が発生した場合でも、第1の保護膜4p1上に第2の保護膜4p2を塗布したときに、この第2の保護膜4p2の一部を第1の保護膜4p1のクラック等破損箇所に充填して修復することができる。
【0069】
このために、ガラスバルブ4gからの不純物の析出を第1,第2の保護膜4p1,4p2により2重に抑制することができるので、発光効率と光束維持率を向上させることができる。
【0070】
図5は本発明の第2の実施形態に係る照明装置11の概略構成図である。この照明装置11は、例えばダウンライト等の照明装置であり、照明器具本体12を有する。この照明器具本体12内にはソケット13および反射体14が取り付けられ、ソケット13には上記電球形蛍光ランプ1の口金2がねじ込みにより装着される。
【0071】
この照明装置11によれば、電球形蛍光ランプ1の高光束、高発光効率の螺旋形部4eが図5中下方に向いているので、直下照度を向上させることができる。
【0072】
また、電球形蛍光ランプ1の口金2側へ放射される光束を増大させる直状部4fが照明器具本体12の反射体14側に位置して対向しているので、この反射体14により反射される反射光を増加させることができる。
【0073】
なお、上記実施形態では、ガラスバルブ4gを螺旋形に屈曲形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、U形やダブルU形、W形鞍形、H形等屈曲形であればよい。また、上記グローブ6は省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電球形蛍光ランプの一部を縦断面で示す正面図。
【図2】図1で示す発光管の正面図。
【図3】図2のIII部拡大縦断面図。
【図4】図1で示す発光管の平面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る照明装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0075】
1…電球形蛍光ランプ、2…口金、3…カバー、3a…カバー本体、3b…カバーの開口取付端部、4…発光管、4a,4b…一対の電極封止端部、4e…発光管の螺旋形部、4f…発光管の直状部、4g…ガラスバルブ、4h…折返し部、4k…発光管の最大外径部、4p1…第1の保護膜、4p2…第2の保護膜、4p3…蛍光体膜、5…ホルダ、5a…ホルダの基板部、5c…ホルダの筒状支持部、5d,5e…ホルダの取付孔、6…グローブ、6a…グローブの開口端部、6b…グローブの縮径部、、7…点灯装置、7a…点灯装置の縦基板、7b…点灯装置の電子部品、11,15…照明装置、12…照明器具本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口金を有するカバーと;
このカバーに取り付けられる一対の電極が封装された屈曲形のバルブ、このバルブの内面に形成されたシリカ微粒子を主成分とする第1の保護膜、この第1の保護膜の内面に形成された第2の保護膜およびこの第2の保護膜の内面に形成された蛍光体膜を備えた発光管と;
カバー内に収容された点灯装置と;
を具備していることを特徴とする電球形蛍光ランプ。
【請求項2】
第2の保護膜は、アルミナ、リン酸カルシウムまたはリン酸ストロンチウムのうち少なくとも一種の微粒子を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の電球形蛍光ランプ。
【請求項3】
バルブは、螺旋形に屈曲形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電球形蛍光ランプ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一記載の電球形蛍光ランプと;
電球形蛍光ランプが取り付けられる器具本体と;
を具備していることを特徴する照明装置。
【請求項5】
屈曲形バルブの内面に蛍光体膜が形成された発光管の製造方法であって、
直管状のバルブの内面にシリカ微粒子を主成分とする第1の保護膜を形成する工程と;
この後、バルブを屈曲形成する工程と;
次に、第1の保護膜の内面に、アルミナ、リン酸カルシウムまたはリン酸ストロンチウムのうち少なくとも一種の微粒子を主成分とする第2の保護膜を形成する工程と;
この後、第2の保護膜の内面に蛍光体膜を形成する工程と;
バルブに一対の電極を封装する工程と;
バルブ内を排気し、その後、放電媒体をバルブ内に封入する工程と;
を具備していることを特徴する発光管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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