説明

電球形蛍光ランプ及び照明装置

【課題】ランプ点灯によるグローブの色に経時変化が生じることなく、拡散膜が剥離し難く、グローブに破壊が生じた場合における飛散防止の効果の大きいグローブを有する電球形蛍光ランプを提供する。
【解決手段】バルブが屈曲されて構成されたバルブ体61と;バルブ体61を点灯させる点灯装置と;開口部を一部に有する包囲体であり、発光管を内包すると共に、内壁にシリコーン系樹脂を主成分とする光拡散膜が形成されたグローブ8と;点灯装置を収納し、一端側に口金が取り付けられ、グローブ8の開口部と連通するカバー体10と;を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管を覆うグローブを備えた電球形蛍光ランプ及び、この電球形蛍光ランプを用いて構成した照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のランプにおいては、光拡散性を施すためにグローブの内部にアクリル系樹脂を塗布したものが特許文献1に記載されている。しかしながら、アクリル系樹脂は点灯中に色変化が発生して黄色味を帯びる問題がある。
【0003】
これに対し、管の外側にポリウレタン樹脂拡散膜を塗布しガラス飛散防止効果を持たせるものが特許文献2に記載されているが、このものにあっては光拡散の効果はなく、外面に拡散膜を形成することから取扱時に拡散膜に傷を付けるなど拡散膜の破れが生じ易い問題がある。
【0004】
更に、ガラスグローブ内に、顔料をアクリルシリコーン共重合体エマルジョンに分散させたものを塗布した構成のものが特許文献3に示されている。しかし、このものについても、点灯中に色変色が発生し易く、品質向上のために改善する必要がある。
【0005】
また、水溶性アクリル系樹脂にフィラーとしてSi(珪素)を含んだもので形成した拡散膜を備えるものもあるが、拡散膜表面がポーラスであり、点灯中に拡散膜が剥がれ易く、ランプ内に析出した水分が拡散膜に染み込み、拡散膜の透過性が変化してしまう問題がある。
【0006】
【特許文献1】2001−14914号公報
【特許文献2】特開平2−273437号公報
【特許文献3】特公平6−66133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のようなランプグローブの現状に鑑みてなされたもので、その目的は、ランプ点灯によるグローブの色に経時変化が生じることなく、拡散膜の剥離も発生し難いグローブを有する電球形蛍光ランプおよびこれを用いた照明器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電球形蛍光ランプは、バルブが屈曲されて構成された発光管と;発光管を点灯させる点灯装置と;開口部を一部に有する包囲体であり、発光管を内包すると共に、内壁にシリコーン系樹脂を主成分とする光拡散膜が形成されたグローブと;点灯装置を収納し、一端側に口金が取り付けられ、グローブの開口部側が取り付けられるカバーと;を具備することを特徴とする。
【0009】
バルブの形状は、茄子形形状、円筒形状など各種の形状を許容する。シリコーン系樹脂は、加熱硬化性のシリコーン樹脂が製造工程の加工性の観点から好適である。シリコーン系樹脂は、シリコーン系エラストマーを許容する。拡散膜圧は5〜50μm程度が好適である。拡散膜には、紫外線吸収剤として、TiO2、C45693P,C20253Oなどの有機系化合物のうち、1つを含有することを許容する。これを含むことにより、グローブの変色が抑制される。
【0010】
本発明に係る電球形蛍光ランプは、シリコーン系樹脂には、燐酸系フィラー、珪素あるいは金属酸化物フィラーが含有されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る照明器具は、照明器具本体と;照明器具本体に取り付けられたソケットと;ソケットに装着された請求項1または2に記載の電球形蛍光ランプと;を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電球形蛍光ランプでは、グローブの内壁にシリコーン系樹脂の拡散膜を有するので、ランプ点灯の経時変化によっても色変色が生じることなく、拡散膜が剥がれ難く、破壊が生じた場合における飛散防止の効果が大きいものである。
【0013】
本発明に係る電球形蛍光ランプでは、燐酸系フィラー、珪素あるいは金属酸化物フィラーを含有することにより、拡散剤として作用し、所要の光拡散特性を得ることが可能である。
【0014】
本発明に係る照明装置では、請求項1または2に記載の電球形蛍光ランプを備えるので、ランプ点灯の経時変化によっても色変色が生じることなく、拡散膜が剥がれ難いグローブを有するランプを備えた照明装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明に係る電球形蛍光ランプおよびそれを用いた照明装置の実施例を説明する。各図において、同一の構成要素には、同一の符号を伏して重複する説明を省略する。電球形蛍光ランプは、図1に示す一部切欠側面図と、図2に示す電球型蛍光ランプのグローブ8を外した斜視図に明らかなように、蛍光ランプ6と電源装置を実装した回路基板9が、グローブ8とグローブ8の上側に設けられたカバー体10内に内蔵された構成を有し、カバー体10の上側には口金13が設けられている。蛍光ランプ6はガラス製の屈曲したバルブ体61を有し、バルブ体61内面には、例えば3波長発光形の蛍光体層が形成され、アルゴンなどの希ガスが封入されている。本実施の形態では、封入ガス比率が99%以上のアルゴンガスが封入圧力300〜800Paで封入されている。
【0016】
バルブ体61は、例えば管外径7〜9mmの直管形バルブの中間部をU字状に屈曲させることにより一対の直線部51および屈曲部62を形成した4本のバルブ63a、63b、63c、63dを有している。
【0017】
各バルブ63a、63b、63c、63dは、連結管64a及び図示しない連結管64b、64cにより順次連結され、放電路長が400mm〜700mm、好しくは400mm〜500mmであり、始動電圧の上限値が2KV〜3KV、好しくは2.5KV〜3KVであり、ランプ電圧が120V〜200V、好しくは150V〜200Vとなっている。
【0018】
4本のバルブ63a、63b、63c、63dのうち、電極が封入されない中間のバルブ63bの少なくとも1つの端部には、バルブ63a、63b、63c、63dよりも細径のガラス製バルブにて構成されるロングチップ方式の細管64が封着されている。この細管64は、先端に主アマルガム65を封入する水銀封入用であると共に、排気管としても使用される。
【0019】
細管64は図1に示されるように、カバー体10の内壁に当接しないように先端がやや内側に位置するように2箇所で屈曲された屈曲形状を有している。細管64の先端に封入される主アマルガム65は、ビスマス(Bi)が50〜65%、錫(Sn)が35〜50質量%からなる合金を基体とし、この合金に対して水銀を12〜25質量%含有させたものである。
【0020】
また蛍光ランプ6を保持するホルダ31には、蛍光ランプ6が挿通される図示しない複数の取付孔が形成され、これら取付孔に蛍光ランプ6のバルブ63a、63b、63c、63dの各端部が挿通された状態で、例えば図示しないシリコーン樹脂などの接着剤で固定されている。ホルダ31における蛍光ランプ6側とは反対側には回路基板9が配置されている。
【0021】
回路基板9は略円板状であり、回路基板9にはワンパッケージスイッチが実装される他、細管64の位置に対応して細管64が挿通される貫通孔が形成されており、この貫通孔を介して細管の先端が口金13側まで延在されている。回路基板9の両面には、電源装置を構成する素子が実装されるが、回路基板9の口金13側である面14には、耐熱裕度が低い面実装部品、特にワンパッケージスイッチが実装される。この結果、最も熱量の大きな熱源である蛍光ランプ6からの放射熱が上記口金13側である面14に実装された部品に伝わりにくく、品質の向上が期待される。なお、上記口金13側である面14にサブ基板を設けて、これにワンパッケージスイッチ12などの耐熱裕度が低い面実装部品を実装する構成を採用することも可能である。
【0022】
本発明に係る電球形蛍光ランプの実施形態に係る回路構成図は図3の如くである。電球形蛍光ランプは、交流電源1を整流して倍電圧を得る倍電圧整流回路2を備える。この倍電圧整流回路は、直列に接続されたコンデンサC1、C2とダイオードD1、D2により構成されており、交流電源1の一方の端子は、ダイオードD1のアノードに接続され、交流電源1の他方の端子は、コンデンサC1、C2の接続点に接続されている。ダイオードD1、D2は同じ方向性に直列接続され、ダイオードD1のカソードがコンデンサC1と接続され、ダイオードD2のアノードがコンデンサC2に接続されている。
【0023】
インバータ回路3は直列接続されたコンデンサC1、C2の両端から出力を得ており、電解効果トランジスタなどのスイッチング素子Q1、Q2によりハーフブリッジのインバータ回路が構成される。スイッチング素子Q1、Q2は駆動回路4により交互にオンオフされ、出力はスイッチング素子Q1、Q2の接続点から得られる。なお、インバータ回路は、互いに直列に接続されたスイッチング素子を2対以上有する例えばフルブリッジ形のものであってもよい。
【0024】
スイッチング素子Q1、Q2の接続点には、コンデンサC3を介してオートトランス5のタップbが接続されている。オートトランス5の両端子ac間には、蛍光ランプ6が接続されるが、この場合、端子cと蛍光ランプ6の一端側には、バラストチョークコイル7が接続されている。更に、蛍光ランプ6の両端間には始動用のコンデンサC4が接続されている。
【0025】
上記のインバータ回路3には、ソフトスタート機能を行う構成が含まれていても良い。このソフトスタート機能は始動時においてインバータ回路3のスイッチング素子Q1、Q2のスイッチングオン時間を通常時より短く設定して蛍光ランプ6の両電極を十分予熱してから始動電圧が印加されるように制御するものであり、電極の予熱が不十分な状態で蛍光ランプ6に大きな始動電圧が印加されることにより電極のエミッタ等の物質がスパッタにより飛散してランプ寿命が短くなることを抑制するものである。
【0026】
以上のように構成された電球形蛍光ランプにおいては、図3における蛍光ランプ6を除く回路と素子により構成される電源装置と、蛍光ランプ6とが図1の器具本体100に内包されている。そして、始動時となると交流電源1の出力である交流は、倍電圧整流回路2によって倍圧整流されると共に平滑化され、コンデンサC1、C2による直列接続回路の両端間の電圧が直列接続されたスイッチング素子Q1、Q2に与えられる。
【0027】
インバータ回路3では、駆動回路4によりスイッチング素子Q1、Q2のスイッチングが行われ、インバータ回路3の出力がコンデンサC3を介してオートトランス5のタップbに与えられる。オートトランス5においては、端子ab間にある分路巻線の巻線数と端子bc間にある直列巻線の巻線数の比によって決定される昇圧比(1.3〜2倍)で昇圧され、バラストチョークコイル7を介して蛍光ランプ6の両端間に与えられる。
【0028】
以上のように構成されて倍電圧整流回路2により交流電源1の電圧が倍の電圧とされ、更にオートトランス5により昇圧され、蛍光ランプ6の点灯に必要な電圧(始動電圧の上限値が2KV〜3KV、ランプ電圧が120V〜200V)とされるので、必要十分な電圧をトランスの大型化を伴わずに実現することができる。
【0029】
上記の電球形蛍光ランプにおいて、グローブ8は、開口部を一部に有するガラス製の包囲体であり、発光管であるバルブ体61を内包すると共に、その内面にシリコーン系樹脂の拡散膜80が塗布形成されたものである。この拡散膜80は、ジメチルシリコーンやフェニルシリコーンなどのシリコーンゴム系の樹脂を主成分として、拡散膜フィラーとして、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ハロ燐酸カルシウムのいずれか1つ以上を含有するか、珪素あるいは金属の酸化物であるSiO2,ZnO,Al23のいずれか1つ以上を含有する。また、上記拡散膜には、紫外線吸収剤として、TiO2、C45693P,C20253Oなどの有機系化合物のうち、1つを含有する。塗布した拡散膜の拡散膜圧は5〜50μm程度が好適である。
【0030】
<試作品>
発明者らは、シリコーン樹脂を主成分とし、ピロ燐酸カルシウム(Ca3(PO42)をフィラーとして含有した拡散膜をグローブ8の内壁に塗布して硬化させた試作品1〜5を作成した。この拡散膜の厚さは、グローブ8のトップ部分(開口と対向する部分)において16μm、最大径部において12μm、口金13に近い根本部14μmであった。また、シリコーン樹脂が99重量%に対し、ピロ燐酸カルシウム(Ca3(PO42)を1重量%含有したものを用いた。
【0031】
上記の試作品1〜5について、6000時間の継続点灯を行っても変色は生じなかった。また、試作品1〜5とアクリル系樹脂を塗布した五個の従来品について、重量8gの鉄球を図4に示す高さから落下させて、破壊試験を行った。この図4では、グローブの最大径部分に鉄球を落下させた場合を「サイド」と表記し、グローブのトップ部分(開口と対向する部分)に鉄球を落下させた場合を「トップ」と表記している。
【0032】
図4から明らかな通り、シリコーン樹脂を主成分とし、上記のフィラーを含有させた拡散膜を内壁に有する試作品1〜5が「サイド」において従来品より概ね1.5乃至2倍の落下距離であり、また「トップ」においては従来品より概ね2倍程度の落下距離であり、いずれの試作品も強度の点において従来品より遥かに優れていることが分かる。また、グローブの最大径部分に鉄球を落下させた破壊後の飛散状態を図5に示す。アクリル系樹脂を塗布した従来品では、図5(a)に示すようにガラス小片の飛散が激しいのに対し、試作品は図5(b)に示すように二つに割れたものの、ガラス小片の飛散は見られなかった。試作品の拡散膜は、シリコーン系エラストマーであり、ある程度の弾性を有するためであると思料推定される。
【0033】
試作品に係るグローブの拡散膜について、赤外線吸収スペクトル分析(ATR法)により得られた吸収スペクトル分布図を図6に示す。図6のポイントP1の吸収は、1000cm-1(10μm)で、Si−Oのシリコーン結合に起因するものであり、図6のポイントP2の吸収は、750cm-1(13μm程度)で、Si−Cのシリコーン結合に起因するものであると特定できる。また、図6のポイントP3の吸収は、1250cm−1(8μm程度)で、ジメチル基の存在に起因するものであり、ジメチルシリコーン樹脂を主成分とするものであると特定できた。
【0034】
また、蛍光X線分析(XRF)によりCa、Pが検出され、拡散剤(フィラー)はピロ燐酸カルシウム(Ca3(PO42)と推定された。また、シリコーン樹脂について、付加型シリコーン樹脂と縮合型シリコーン樹脂とがあり、このうち付加型シリコーン樹脂については、熱硬化し易い傾向にあり、加熱して硬化が進行するか否かに基づき付加型シリコーン樹脂と縮合型シリコーン樹脂のいずれであるかを判定可能である。
【0035】
なお、上記の実施例では、グローブの内部に蛍光ランプを収納したものを示したが、LEDや有機EL等の発光体を収納したものとしても良い。
【0036】
上記の電球形蛍光ランプ或いはLEDや有機EL等の発光体を上記グローブに収納したランプ50を図7に示されるように、一般照明用電球の照明器具71を用いた場合に、電球形蛍光ランプ50の配光が一般照明用電球の配光に近似することで、照明器具71内に配設されたソケット72近傍の反射体73への光放射量が十分に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る電球形蛍光ランプの実施例に係る一部切欠側面図。
【図2】本発明に係る電球形蛍光ランプの実施例に係るグローブを外した斜視図。
【図3】本発明に係る電球形蛍光ランプの実施例の回路構成を示す図。
【図4】本発明に係る電球形蛍光ランプの試作品とアクリル系樹脂を塗布した従来品について、鉄球落下による破壊試験の結果を示す図。
【図5】本発明に係る電球形蛍光ランプの試作品とアクリル系樹脂を塗布した従来品について、鉄球落下による破壊後の状態を示す図。
【図6】本発明に係る電球形蛍光ランプの試作品に係るグローブの拡散膜について、赤外線吸収スペクトル分析(ATR法)により得られた吸収スペクトル分布図。
【図7】本発明に係る電球形蛍光ランプを用いて構成した照明装置を示す側面図。
【符号の説明】
【0038】
1 交流電源
2 倍電圧整流回路
3 インバータ回路
4 駆動回路
5 オートトランス
6 蛍光ランプ
7 バラストチョーク
8 グローブ
9 回路基板
10 カバー体
13 口金
31 ホルダ
50 電球形蛍光ランプ
51 直線部
61 バルブ体
62 屈曲部
63a〜63b バルブ
71 照明器具
100 器具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブが屈曲されて構成された発光管と;
発光管を点灯させる点灯装置と;
開口部を一部に有する包囲体であり、発光管を内包すると共に、内壁にシリコーン系樹脂を主成分とする光拡散膜が形成されたグローブと;
点灯装置を収納し、一端側に口金が取り付けられ、グローブの開口部側が取り付けられるカバーと;
を具備することを特徴とする電球形蛍光ランプ。
【請求項2】
シリコーン系樹脂には、燐酸系フィラー、珪素あるいは金属酸化物フィラーが含有されていることを特徴とする請求項1に記載の電球形蛍光ランプ。
【請求項3】
照明器具本体と;
照明器具本体に取り付けられたソケットと;
ソケットに装着された請求項1または2に記載の電球形蛍光ランプと;
を具備することを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−235119(P2008−235119A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75679(P2007−75679)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】